説明

コイル及び放電灯点灯装置

【課題】 巻線をコアに密着させて巻回することが容易なコイルを提供する。
【解決手段】 磁性体からなり巻線の延長方向に交差する方向に長い係合溝11が外周面に設けられたコア1と、コア1の係合溝11に係入しコア1とともに巻線が巻回される被係合部21を有する台座2とを備える。台座2は、巻線が巻回される際に保持される直方体形状の被保持部22を有する。係合溝11に被係合部21が係入することでコア1の台座2に対する回転が抑制されるから、巻線をコア1に巻回する際には被保持部22を保持することでコア1の姿勢が安定するので、巻線をコア1に密着させて巻回することが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル及び該コイルを用いた放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁性体からなるコアと、コアの周囲に巻回された巻線とを有するコイルが提供されている。
【0003】
従来のコイルは、コアが挿通される筒状のボビンを備え、巻線はボビンに巻回されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−130135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コイルにおいて効率を向上する方法として、ボビンを用いずにコアに直接巻線を巻回することにより巻線と磁性体とを密着させて磁気的な結合を強めるという方法がある。
【0005】
コアに直接巻線を巻回する場合、巻線がコアの角によって断線しないように、コアは巻線が巻回される外周面に角を有さない円柱形状や楕円柱形状とすることが望ましい。しかし、円柱形状や楕円柱形状の磁性体は、巻線を巻回する際に回転しやすいため、巻線を密着させて巻回することが難しかった。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、巻線をコアに密着させて巻回することが容易なコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、磁性体からなるコアに巻線が巻回されたコイルであって、コアにおいて巻線が巻回される面には巻線の軸方向に延長された係合溝が設けられ、係合溝に係合しコアとともに巻線が巻回される被係合部、並びに、巻線の軸方向での被係合部の両端にそれぞれ連結されコアに巻線が巻回される際に保持される被保持部を有する台座を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、係合溝と被係合部との係合によってコアの台座に対する回転が抑制されるから、コアに巻線を巻回する際には台座の被保持部を保持することでコアの姿勢が安定するので、巻線をコアに密着させて巻回することが容易である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、巻線の軸方向でのコアの両端面にはそれぞれ係合溝の深さ方向に長い凹部又は凸部からなる被ガイド部が設けられ、台座には係合溝を被係合部に誘導するように各被ガイド部をそれぞれガイドするガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、係合部を容易に被係合部に係合させることができる。また、ガイド部と被ガイド部とにより、コアが台座に対してより回転しにくくなり、巻線をコアに密着させて巻回することがより容易となる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のコイルを用いたインダクタとトランスとの少なくとも一方を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、係合溝と被係合部との係合によってコアの台座に対する回転が抑制されるから、コアに巻線を巻回する際には台座の被保持部を保持することでコアの姿勢が安定するので、巻線をコアに密着させて巻回することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態は、図2に示すように、磁性体からなり略円柱形状であって側面に巻線10が巻回されるコア1を備える。コア1の材料としては、例えばニッケル−亜鉛合金や、マンガン−亜鉛合金を用いることができる。以下、上下方向は図2を基準とし、図2の左上−右下方向を左右方向と呼び、図2の左下−右上方向を前後方向と呼ぶ。
【0015】
コア1の下端には、図1に示すように、巻線10の軸方向たる左右方向の全長にわたって延長され左右両側に開放された係合溝11が設けられている。また、本実施形態は、係合溝11に全長にわたって係合する被係合部21を有する台座2を有する。台座2の材料としては、例えばフェノール樹脂を用いることができる。台座2は、それぞれ略直方体形状であってコア1を左右両側から挟み巻線10の巻回時に保持される2個の被保持部22を有する。2個の被保持部22は、被係合部21の左右の端にそれぞれ連結されている。巻線10は、係合溝11に収納された被係合部21の上から、巻線10の延長方向をコア1の周方向として巻回される。ここで、被係合部21は係合溝11からコア1の径方向(下方)へは突出しない寸法形状としてある。従って、台座2の存在に関わらず、巻線10をコア1に略全周にわたって密着させて巻回することができる。
【0016】
また、被係合部21の左右方向の中央の下側には、前後に長い分割部23が設けられており、巻線10は分割部23の左右それぞれに巻回される。さらに、分割部23の前後両端部には、一方ずつの巻線10の一端が巻き付けられるピン23aが下方へ突設されている。また、各被保持部22の上面には、それぞれ巻線10の他端が巻きつけられるピン22aが上方へ突設されている。
【0017】
さらに、コア1の両底面にはそれぞれ底面の中心を通過して係合溝11の深さ方向たる上下方向に長く上下に開放されたガイド溝12が設けられている。また、各被保持部22においてコア1の底面に対向する面には、それぞれ上下に長くガイド溝12に導入されるガイド突起22bが突設されている。すなわち、ガイド溝12にガイド突起22bを導入することにより、被係合部21が係合溝11に導入される位置までコア1が台座2に対してガイドされる。
【0018】
上記構成によれば、被係合部21と係合溝10との係合で台座2に対するコア1の回転が抑制されていることにより、コア1に巻線10を巻回する際には台座2の被保持部22を保持すればコア1の姿勢が安定するから、コア1に巻線10を密着させて巻回することが容易である。
【0019】
さらに、コア1に被ガイド部としてのガイド溝12が設けられ、ガイド溝11に導入されるガイド部としてのガイド突起22bが台座2に設けられていることにより、コア1の軸周りでの回転が抑制されるから、図3及び図4のようにガイド溝12やガイド突起22bを設けない場合に比べ、台座2に対するコア1の姿勢がより安定するので、コア1への巻線10の巻回がより容易となっている。
【0020】
本実施形態は、例えば図5に示す放電灯点灯装置に用いることができる。
【0021】
この放電灯点灯装置は、直流電源DCの出力電圧を降圧するDC−DCコンバータ回路3と、放電灯Laの始動時に高電圧を生成するイグナイタ回路4と、DC−DCコンバータ回路3の出力を一定に維持する駆動・制御部5とを備える。
【0022】
詳しく説明すると、DC−DCコンバータ回路3は、直流電源DCの出力端間に接続されるダイオードD1とスイッチング素子Q1との直列回路と、ダイオードD1の両端間に接続されたインダクタL1とコンデンサC1との直列回路とを有する周知の降圧形コンバータである。駆動・制御部5は、DC−DCコンバータ回路3の出力電流及び出力電圧を検出し、所定の電力が出力されるようにデューティ比を変化させながらスイッチング素子Q1をオンオフ駆動する。
【0023】
また、イグナイタ回路4は、DC−DCコンバータ回路3のコンデンサC1の両端間に接続された抵抗R1と第1コンデンサC2との直列回路と、一端が抵抗R1と第1コンデンサC2との接続点に接続されたサイダックSSSと、サイダックSSSと1次巻線との直列回路が第1コンデンサC2の両端間に接続された昇圧トランスT1と、昇圧トランスT1の2次巻線の両端間に接続されたダイオードD2と第2コンデンサC3との直列回路と、この第2コンデンサC3の一端に接続された放電ギャップSGと、1次巻線が放電ギャップSGに直列に第2コンデンサC3の両端間に接続されたパルストランスPTとを備える。パルストランスPTの2次巻線は、放電灯Laに直列に、DC−DCコンバータ回路3のコンデンサC1の両端間に接続される。
【0024】
図5の放電灯点灯装置の動作を説明する。電源が投入されると、まず抵抗R1を通じて第1コンデンサC2が充電される。第1コンデンサC2の充電電圧がサイダックSSSのブレークオーバー電圧を超えると、サイダックSSSがオンされ、第1コンデンサC2に蓄積された電荷が昇圧トランスT1の1次巻線を通じて放電される。すると、昇圧トランスT1の2次巻線に誘導電流が発生し、この誘導電流により第2コンデンサC3が充電される。そして、第2コンデンサC3の充電電圧が、放電ギャップSGのブレークオーバー電圧を超えると、放電ギャップSGにおいて放電が発生しパルストランスPTの1次巻線に急激に電流が流れ、パルストランスPTの2次巻線の両端間には高電圧が発生し、この高電圧によって放電灯Laが始動する。ここで、抵抗R1の抵抗値は、サイダックSSSがオンされて放電灯Laが始動した後、サイダックSSSに流れる電流が速やかに保持電流以下となるように設定されている。放電灯Laの始動後は、DC−DCコンバータ回路3からパルストランスPTの2次巻線を介して放電灯Laに電力が供給される。
【0025】
本実施形態が使用される放電灯点灯装置の回路の別の例を図6に示す。この回路は、基本的な構成は図5の回路と共通であって、4個のスイッチング素子Q2〜Q5からなるフルブリッジ回路により放電灯Laに交流電流を供給する点と、パルストランスPTに1次巻線と2次巻線とが2組設けられて1次巻線が互いに並列に接続され2次巻線が放電灯Laの両側に分けて配置されている点と、放電灯LaとパルストランスPTの2次巻線との直列回路に並列にコンデンサC4が接続されている点とが図5の回路と異なる。放電灯LaとパルストランスPTの2次巻線との直列回路は、それぞれDC−DCコンバータ回路3のコンデンサC1の両端間に接続されたスイッチング素子Q2,Q3の接続点とスイッチング素子Q4,Q5の接続点との間に接続されている。スイッチング素子Q2〜Q5は、駆動・制御部5により、互いに対角に位置するスイッチング素子Q2〜Q5が同時に且つ互いに直列に接続されたスイッチング素子Q2〜Q5が交互にオンオフするように駆動される。
【0026】
本実施形態は、図5及び図6の回路において、インダクタL1やトランスT1やパルストランスPTに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態におけるコアと台座とを示す分解斜視図である。
【図2】同上を示す斜視図である。
【図3】同上の比較例を示す分解斜視図である。
【図4】同上の比較例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態が用いられる放電灯点灯装置の一例を示す回路図である。
【図6】本発明の実施形態が用いられる放電灯点灯装置の別の例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0028】
1 コア
2 台座
11 係合溝
12 ガイド溝
21 被係合部
22 被保持部
22b ガイド突起
L1 インダクタ
PT パルストランス
T1 昇圧トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなるコアに巻線が巻回されたコイルであって、
コアにおいて巻線が巻回される面には巻線の軸方向に延長された係合溝が設けられ、
係合溝に係合しコアとともに巻線が巻回される被係合部、並びに、巻線の軸方向での被係合部の両端にそれぞれ連結されコアに巻線が巻回される際に保持される被保持部を有する台座を備えることを特徴とするコイル。
【請求項2】
巻線の軸方向でのコアの両端面にはそれぞれ係合溝の深さ方向に長い凹部又は凸部からなる被ガイド部が設けられ、台座には係合溝を被係合部に誘導するように各被ガイド部をそれぞれガイドするガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のコイル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のコイルを用いたインダクタとトランスとの少なくとも一方を備えることを特徴とする放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−173633(P2007−173633A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371025(P2005−371025)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】