説明

コイル部品、トランス、及びコイル部品の製造方法

【課題】両面粘着テープ上において巻線が固定され巻線の位置が安定しているコイル部品、トランス、及び当該コイル部品の製造方法の提供。
【解決手段】略円筒形状部21に巻回された1次巻線51上には1次巻線51を覆うように絶縁テープ22が設けられている。絶縁テープ22上には、所定の幅を有する帯状の両面粘着テープ24が絶縁テープ22に直接貼付られて設けられている。2次巻線52の巻回部52Aは、略円筒形状部21の軸方向に略直交する方向に指向して絶縁テープ22上に直接巻回されている。折曲げ引出し部52Bは、当該巻回部52Aの一端52AAから端子金具42に継線された2次巻線52の一端部に至るまでの部分からなり、折曲げ引出し部52Bの一部であって巻回部52Aに接続されている部分52BAは、両面粘着テープ24上において両面粘着テープ24の厚さ方向へ沈み込んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品、トランス、及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボビンとコアと1次巻線及び2次巻線とを有するコイル部品たるトランスが従来より知られている。1次巻線及び2次巻線は絶縁被覆された銅線により構成されている。ボビンは絶縁材料からなる略筒形状部を有しており、略筒形状部の外周面には1次巻線が巻回されている。更に、略筒形状部に巻回された1次巻線を略筒形状部の全周にわたって覆うように両面粘着テープが設けられており、2次巻線は略筒形状部の両面粘着テープ上に1次巻線と同軸的に巻回されている。このようなトランスは、例えば、特開平7−240324号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−240324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のコイル部品では、両面粘着テープの粘着力が十分ではなく、1次巻線、2次巻線を略筒形状部に巻回しているときに、両面粘着テープ上においてこれらの巻線を固定することができず、巻線の位置を安定させることが困難である。
【0005】
そこで本発明は、両面粘着テープ上において巻線が固定され巻線の位置が安定しているコイル部品、トランス、及び当該コイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、絶縁材料からなり外周面と内周面とを有する略筒形状部を備えるボビンと、該外周面に巻回され一の導線と他の導線とを有する少なくとも2本の導線と、該内周面により画成される空間に挿入されたコアと、該外周面に移動不能に対向配置された両面粘着テープと、を備え、該一の導線は、該略筒形状部の外周面に巻回された巻回部と、該巻回部に接続され該両面粘着テープ上において該巻回部から折曲げられ引出された折曲げ引出し部とを有し、該折曲げ引出し部の一部であって該巻回部に接続されている部分は、該両面粘着テープ上において該両面粘着テープの厚さ方向へ沈み込んでいるコイル部品を提供している。
【0007】
略筒形状部の外周面に移動不能に対向配置された両面粘着テープを備え、一の導線は、略筒形状部の外周面に巻回された巻回部と、巻回部に接続され両面粘着テープ上において巻回部から折曲げられ引出された折曲げ引出し部とを有し、折曲げ引出し部の一部であって巻回部に接続されている部分は、両面粘着テープ上において両面粘着テープの厚さ方向へ沈み込んでいるため、折曲げ引出し部の一部であって巻回部に接続されている部分は、両面粘着テープの粘着剤とより広い面積で接触し、折曲げ引出し部を両面粘着テープに強固に固定することができる。
【0008】
このため、コイル部品の製造工程において、折曲げ引出し部を両面粘着テープに沈み込ませた後に巻回部を略筒形状部に巻回するときに、折曲げ引出し部の位置を安定させることができ、このため巻回部を安定して略筒形状部に巻回することができる。また、コイル部品の製造工程において、巻回部を略筒形状部に巻回し折曲げ引出し部を両面粘着テープに沈み込ませた後に端子電極に折曲げ引き出し部を継線するときに、折曲げ引出し部の位置を安定させることができ、このため略筒形状部に巻回された巻回部がほどけることを防止することができる。
【0009】
ここで、該両面粘着テープは該外周面に直接貼付けられていることが好ましい。両面粘着テープは外周面に直接貼付けられているため、略筒形状部の外周面上に直接巻回される導線について、折曲げ引出し部を両面粘着テープに強固に固定することができる。
【0010】
また、該略筒形状部に巻回された該他の導線を該略筒形状部の全周にわたって覆うように絶縁性テープが設けられ、該両面粘着テープは該絶縁性テープ上に直接貼付けられ、該一の導線は該絶縁性テープ上に巻回されていることが好ましい。
【0011】
略筒形状部に巻回された他の導線を略筒形状部の全周にわたって覆うように絶縁性テープが設けられ、両面粘着テープは絶縁性テープ上に直接貼付けられているため、絶縁性テープ上に直接巻回される導線について、折曲げ引出し部を両面粘着テープに強固に固定することができる。
【0012】
また、該両面粘着テープは該略筒形状部に巻回された他の該導線上に直接貼付けられていることが好ましい。両面粘着テープは略筒形状部に巻回された他の導線上に直接貼付けられているため、略筒形状部に巻回された他の導線上に直接巻回される導線について、折曲げ引出し部を両面粘着テープに強固に固定することができる。
【0013】
また、該折曲げ引出し部の一部であって該巻回部に接続されている部分は、該巻回部に接続されている接続点部分が最も沈み込んでいることが好ましい。
【0014】
折曲げ引出し部の一部であって巻回部に接続されている部分は、巻回部に接続されている接続点部分が最も沈み込んでいるため、巻回部に最も近い接続点部分を両面粘着テープに強固に固定することができる。このため巻回部をより安定して保持することができ、巻回部の位置をより安定させ位置ずれが生ずることを防止することができる。
【0015】
また、本発明は、該少なくとも2本の導線は1次巻線と2次巻線とを有し、請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のコイル部品からなるトランスを提供している。
【0016】
少なくとも2本の導線は1次巻線と2次巻線とを有し、請求項1乃至請求項4のいずれか一記載のコイル部品からなるトランスを構成するため、一の導線の折曲げ引出し部が両面粘着テープに強固に固定されたトランスとすることができる。このため、一の導線が2次巻線であり他の導線が1次巻線である場合には、1次巻線と2次巻線との絶縁距離を所望の値で確保することを容易とすることができる。
【0017】
また、本発明は、略筒形状部を有し該略筒形状部の内周面により画成される空間にはコアが挿入され該略筒形状部の外周面には少なくとも2本の導線が巻回されるボビンの該略筒形状部の外周面に、該略筒形状部に対して移動不能に両面粘着テープを対向配置する工程と、一の該導線を折曲げることにより、該一の導線の一部であって該略筒形状部の外周面に巻回される部分を巻回部とし、該一の導線の一部であって該巻回部に接続され該巻回部から折曲げられ引出された部分を折曲げ引出し部とする工程と、該折曲げ引出し部の一部であって該巻回部に接続されている部分を該両面粘着テープの厚さ方向へ該両面粘着テープに対して押圧することにより該両面粘着テープに沈みこませる工程と、を有するコイル部品の製造方法を提供している。
【0018】
略筒形状部を有し略筒形状部の内周面により画成される空間にはコアが挿入され略筒形状部の外周面には少なくとも2本の導線が巻回されるボビンの略筒形状部の外周面に、略筒形状部に対して移動不能に両面粘着テープを対向配置する工程と、一の導線を折曲げることにより、一の導線の一部であって略筒形状部の外周面に巻回される部分を巻回部とし、一の導線の一部であって巻回部に接続され巻回部から折曲げられ引出された部分を折曲げ引出し部とする工程と、折曲げ引出し部の一部であって巻回部に接続されている部分を両面粘着テープの厚さ方向へ両面粘着テープに対して押圧することにより両面粘着テープに沈みこませる工程と、を有するため、折曲げ引出し部を両面粘着テープに強固に固定することができる。
【0019】
このため、折曲げ引出し部を両面粘着テープに沈み込ませた後に巻回部を略筒形状部に巻回するときに、折曲げ引出し部の位置を安定させることができ、このため巻回部を安定して略筒形状部に巻回することができる。また、巻回部を略筒形状部に巻回し折曲げ引出し部を両面粘着テープに沈み込ませた後に端子電極に折曲げ引き出し部を継線するときに、折曲げ引出し部の位置を安定させることができ、このため略筒形状部に巻回された巻回部がほどけることを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上により本発明は、両面粘着テープ上において巻線が固定され巻線の位置が安定しているコイル部品、トランス、及び当該コイル部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態によるコイル部品たるトランスを示す概略分解正面図。
【図2】本発明の実施の形態によるコイル部品の製造方法において、巻回部を略筒形状部に巻回する前に、押圧冶具により折曲げ引出し部を両面粘着テープに対して押圧している様子を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態によるコイル部品の製造方法において、巻回部を略筒形状部に巻回した後に、押圧冶具により折曲げ引出し部を両面粘着テープに対して押圧している様子を示す断面図。
【図4】従来のコイル部品たるトランスを示す概略分解正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態によるコイル部品たるトランスについて図1に基づき説明する。図1に示されるようにコイル部品たるトランス1は、コア10と、ボビン20と、導線50とを備えている。なお、説明の便宜上、図1においては、後述の図4と同様に、導線50については一本の1次巻線51と一本の2次巻線52とのみを図示し、他の巻線については図示を省略している。また、後述の2次巻線52の巻回部52Aについては一部のみ図示している。以下、図1に示すトランス1の上方を上方と定義し、下方を下方と定義し、左方を左方と定義し、右方を右方と定義して説明する。
【0023】
コア10は同一形状で一対設けられている。コア10は、底壁部10Aと、当該底壁部10Aの右端と左端とからそれぞれ他方のコア10の方向へ延出する一対の側壁部10Bと、他方のコア10の方向へ延出する方向へ当該底壁部10Aの中央部から延出する中央壁部10Cとをそれぞれ有し、全体として略E字形状をなしている。一方のコア10の一対の側壁部10B、中央壁部10Cの延出端は、それぞれ他方のコア10の側壁部10Bと、中央壁部10Cの延出端と面で当接している。
【0024】
ボビン20は、絶縁樹脂により構成され略筒形状をなしその軸方向一端たる下端に端子台40が設けられた略円筒形状部21を有している。略円筒形状部21は、トランス1が図示せぬ実装基板に実装されたときに、その軸方向が図示せぬ実装基板の表面に垂直に指向しており、略円筒形状部21の内周面により画成される空間にはコア10の中央壁部10Cが挿入される。
【0025】
端子台40は、略円筒形状部21と同一の絶縁樹脂により構成された端子支持部41を有している。端子支持部41は、それぞれ略円筒形状部21の軸方向に垂直の方向たる左右方向に延出しており、その中央部分が略円筒形状部21の下端に一体接続されている。略円筒形状部21は略筒形状部に相当する。
【0026】
端子支持部41の下部には金属端子たる端子金具42が複数設けられている。図1に示す左側の3つの端子金具42は1次巻線51が電気的に接続されて継線され、図1に示す右側の3つの端子金具42は2次巻線52が電気的に接続されて継線される。端子金具42の下端部は、図示せぬ実装基板上の導電パターンに電気的に接続される。
【0027】
図1に示す端子支持部41の正面には、紙面の裏側から表側へ向かって突出する巻線ガイド凸部43が複数設けられている。巻線ガイド凸部43に導線50の後述する折曲げ引出し部52Bがそれぞれ掛けられることにより、導線50の折曲げ引出し部52Bは端子支持部41の正面において位置決めされるように構成されている。
【0028】
導線50は、1次巻線51と2次巻線52とを有しており、それぞれ絶縁被覆が施された銅線からなる絶縁被覆ワイヤにより構成されている。2次巻線52は一の導線に相当し、1次巻線51は他の導線に相当する。
【0029】
1次巻線51は、その一端部が最も左側に配置された端子金具42に電気的に接続されて継線されており、巻線ガイド凸部43に掛けられ、略円筒形状部21の外周面上に直接巻回されている。ここで、略円筒形状部21の外周面に巻回されている1次巻線51の部分は、後述する絶縁テープ22により覆われているため、図1には現れていない。そして、図示は省略しているが、1次巻線51の他端寄りの部分が巻線ガイド凸部43に掛けられ、1次巻線51の他端部は端子金具42に電気的に接続されて継線されている。
【0030】
略円筒形状部21に巻回された1次巻線51上には、略円筒形状部21の全周にわたって1次巻線51を覆うように絶縁テープ22が設けられている。絶縁テープ22上であって略円筒形状部21の軸方向の一端近傍及び他端近傍に相当する部分には、それぞれ略円筒形状部21の軸方向において所定の幅を有する帯状のバリアテープ23が、絶縁テープ22に直接貼付られて設けられている。バリアテープ23は、略円筒形状部21の全周に渡って設けられている。絶縁テープ22、バリアテープ23は絶縁性テープに相当する。
【0031】
また、絶縁テープ22上には、略円筒形状部21の軸方向における一端近傍に相当する部分から他端近傍に相当する部分にかけて、所定の幅を有する帯状の両面粘着テープ24が、絶縁テープ22に直接貼付られて設けられている。両面粘着テープ24は、基材の両面に粘着剤が設けられて構成されており、略円筒形状部21の軸方向における一端近傍に相当する部分、他端近傍に相当する部分においては、バリアテープ23上に直接貼付られている。従って、両面粘着テープ24は略円筒形状部21の外周面に対して移動不能に対向配置された状態をなす。
【0032】
2次巻線52は、巻回部52Aと折曲げ引出し部52Bとを有している。巻回部52Aは、略円筒形状部21の軸方向に略直交する方向に指向して、上側のバリアテープ23と下側のバリアテープ23との間の絶縁テープ22上に直接巻回されている。巻回部52Aの一端52AA及び図示せぬ他端部は絶縁テープ22上に直接貼付けられた両面粘着テープ24上に配置されている。
【0033】
折曲げ引出し部52Bは、当該巻回部52Aの一端52AA、図示せぬ他端から端子金具42に継線された2次巻線52の一端部、他端部に至るまでの部分からなる。折曲げ引出し部52Bは、巻回部52Aの一端52AAに繋がっており両面粘着テープ24上において巻回部52Aの指向する方向に対して直交する方向たる下方へ折曲げられ、巻線ガイド凸部43に掛けられ、端子金具42へと引き出されている。また図示してはいないが、図示せぬ折曲げ引出し部52Bは、巻回部52Aの図示せぬ他端に繋がっており両面粘着テープ24上において巻回部52Aから直交する方向たる下方へ折曲げられ、巻線ガイド凸部43に掛けられ、端子金具42へと引き出されている。
【0034】
折曲げ引出し部52Bの一部であって巻回部52Aに接続されている部分52BAは、両面粘着テープ24上において両面粘着テープ24の厚さ方向へ両面粘着テープ24の粘着剤に沈み込んでいる。更に、折曲げ引出し部52Bの一部であって巻回部52Aの一端52AA、図示せぬ他端の近傍部分は最も沈み込んでいる。これは、後述のコイル部品の製造方法において押圧冶具90により当該部分を両面粘着テープ24に対して押圧することにより生ずる。このように沈みこむことにより、折曲げ引出し部52Bの一部であって巻回部52Aに接続されている部分は、両面粘着テープ24の粘着剤とより広い面積で接触し、両面粘着テープ24にしっかりと固定され位置決めされている。巻回部52Aの一端52AA、他端に接続されている折曲げ引出し部52Bの端は接続点に相当する。
【0035】
次に、コイル部品の製造方法について図1乃至図3に基づき説明する。以下に説明するコイル部品の製造方法では、図示せぬ自動機により各工程が行われる。先ずコイル部品の製造方法では、ボビン20を用意し図示せぬ自動機に保持する。次に、ボビン20の端子金具42に1次巻線51の一端部を巻付けて固定する。次に、1次巻線51を巻線ガイド凸部43に掛けるようにして引出し、ボビン20を略円筒形状部21の軸心を中心として回転させることにより略円筒形状部21の外周面上に1次巻線51を直接巻回する。次に、1次巻線51を巻線ガイド凸部43に掛けるようにして引出し、ボビン20の端子金具42に1次巻線51の他端部を巻付けて固定する。そして、ボビン20の端子金具42に巻付けられ固定された1次巻線51の一端部、他端部を、それぞれ端子金具42に電気的に接続して継線する。
【0036】
次に、略円筒形状部21に巻回された1次巻線51上に、略円筒形状部21の全周にわたって1次巻線51を覆うように絶縁テープ22を直接貼付けて巻回する。次に、絶縁テープ22上であって略円筒形状部21の軸方向の一端近傍及び他端近傍に相当する部分に、バリアテープ23を直接貼付けて巻回する。次に、絶縁テープ22上及びバリアテープ23上に、略円筒形状部21の軸方向における一端近傍に相当する部分から他端近傍に相当する部分にかけて、両面粘着テープ24を直接貼付ける。
【0037】
次に、ボビン20の端子金具42に2次巻線52の一端部を巻き付けて固定する。次に、2次巻線52を巻線ガイド凸部43に掛けるようにして引出す。次に、図2に示すように、先端部にコの字状部91を有する押圧冶具90を図1の左方から右方へと移動させ、コの字状部91を両面粘着テープ24に対向する位置に配置させる。そして、図2に示すように、当該コの字状部91の内側部分に2次巻線52を掛け直交する方向へ引き寄せると共に、当該コの字状部91を両面粘着テープ24に対して押圧する。コの字状部91を押圧する両面粘着テープ24の位置は、下側のバリアテープ23上に貼付けられている両面粘着テープ24の領域内であって絶縁テープ22上に貼付けられている両面粘着テープ24の領域の近傍位置である。
【0038】
このことにより2次巻線52が図1に示すように略直角に折り曲げられ、当該折り曲げられた部分を含めて、折り曲げられた部分よりも2次巻線52の一端寄りの部分が折曲げ引出し部52Bとされ、それよりも他端寄りの部分が巻回部52Aとされる。また、折曲げ引出し部52Bの一部であって巻回部52Aに接続されている部分52BAが両面粘着テープ24に沈みこみ、両面粘着テープ24に固定される。
【0039】
次に、押圧冶具90を退避させ、ボビン20を略円筒形状部21の軸心を中心として回転させることにより略円筒形状部21の絶縁テープ22上に2次巻線52の巻回部52Aを直接巻回する。
【0040】
所望の巻回数分2次巻線52を巻回した後に、押圧冶具90を図1の左方から右方へと移動させコの字状部91を両面粘着テープ24に対向する位置に配置させる。そして図3に示すように、当該コの字状部91の外側部分に2次巻線52を掛け直交する方向へ引き寄せると共に、両面粘着テープ24に対して押圧する。コの字状部91を押圧する両面粘着テープ24の位置は、先ほどコの字状部91を押圧した位置と同様に、下側のバリアテープ23上に貼付けられている両面粘着テープ24の領域内であって絶縁テープ22上に貼付けられている両面粘着テープ24の領域の近傍位置である。
【0041】
このことにより2次巻線52が略直角に折り曲げられ、当該折り曲げられた部分を含めて、折り曲げられた部分よりも2次巻線52の図示せぬ他端寄りの部分が折曲げ引出し部52C(図3)とされ、それよりも一端寄りの部分であって先ほど形成された折曲げ引出し部53B以外の部分が巻回部52Aとされる。また、折曲げ引出し部52Cの一部であって巻回部52Aに接続されている部分が両面粘着テープ24に沈みこみ、両面粘着テープ24に固定される。
【0042】
次に、2次巻線52を巻線ガイド凸部43に掛けるようにして引出す。次に、ボビン20の端子金具42に2次巻線52の図示せぬ他端部を巻付けて固定する。そして、ボビン20の端子金具42に巻付けられ固定された2次巻線52の図示せぬ一端部、他端部を、それぞれ端子金具42に電気的に接続して継線する。1次巻線51、2次巻線52については、所望の本数分前述した1次巻線51、2次巻線52についての工程を行う。そして最後に、コア10を装着してコイル部品が製造される。
【0043】
略円筒形状部21の外周面に移動不能に対向配置された両面粘着テープ24を備え、2次巻線52は、略円筒形状部21の外周面に巻回された巻回部52Aと、巻回部52Aに接続され両面粘着テープ24上において巻回部52Aから折曲げられ引出された折曲げ引出し部52Bとを有し、折曲げ引出し部52Bの一部であって巻回部52Aに接続されている部分は、両面粘着テープ24上において両面粘着テープ24の厚さ方向へ沈み込んでいるため、折曲げ引出し部52Bを両面粘着テープ24に強固に固定することができる。
【0044】
このため、コイル部品の製造工程において、折曲げ引出し部52Bを両面粘着テープ24に沈み込ませた後に巻回部52Aを略円筒形状部21に巻回するときに、折曲げ引出し部52Bの位置を安定させることができ、このため巻回部52Aを安定して略円筒形状部21に巻回することができる。また、コイル部品の製造工程において、巻回部52Aを略円筒形状部21に巻回し図示せぬ折曲げ引出し部を両面粘着テープ24に沈み込ませた後に端子金具42に折曲げ引き出し部を継線するときに、図示せぬ折曲げ引出し部の位置を安定させることができ、このため略円筒形状部21に巻回された巻回部52Aがほどけることを防止することができる。
【0045】
また、略円筒形状部21に巻回された1次巻線51を略円筒形状部21の全周にわたって覆うように絶縁テープ22が設けられ、両面粘着テープ24は絶縁テープ22上に直接貼付けられているため、絶縁テープ22上に直接巻回される2次巻線52について、折曲げ引出し部52Bを両面粘着テープ24に強固に固定することができる。
【0046】
また、折曲げ引出し部52Bの一部であって巻回部52Aに接続されている部分は、巻回部52Aに接続されている接続点部分が最も沈み込んでいるため、巻回部52Aに最も近い接続点部分を両面粘着テープ24に強固に固定することができる。このため巻回部52Aをより安定して保持することができ、巻回部52Aのより位置を安定させ位置ずれが生ずることを防止することができる。
【0047】
また、上述のように折曲げ引出し部52Bを両面粘着テープ24に強固に固定することができるため、1次巻線51と2次巻線52との絶縁距離を所望の値で確保することを容易とすることができる。より具体的には、例えば図4に示すように、2次巻線152が本実施の形態のような巻回部52Aと折曲げ引出し部52Bとを有する構成ではない場合には、巻線ガイド凸部43から引出された2次巻線152は、巻線ガイド凸部43から左上方向へ斜めに引出されて略円筒形状部21に巻回されることになる。このように2次巻線152が引出されると、当該斜めに引出された2次巻線152の部分と巻線ガイド凸部43に掛けられた1次巻線51の部分との絶縁距離が短くなり、所望の絶縁距離を確保することができない。しかし、本実施の形態のように2次巻線52が巻回部52Aと折曲げ引出し部52Bとを有する構成とされ、斜めに引出されることが防止されるため、絶縁距離を所望の値で確保することができる。
【0048】
本発明のトランスは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施の形態では、絶縁テープ22上に両面粘着テープ24が直接貼付られて設けられ、両面粘着テープ24に2次巻線52の折曲げ引出し部52Bが固定されていたが、これに限定されない。
【0049】
例えば、1次巻線51が巻回部と折曲げ引出し部とを有する構成として、両面粘着テープ24が略円筒形状部21の外周面に直接貼付けられ、1次巻線51の折曲げ引出し部が両面粘着テープ24に固定されてもよい。このようにすることで、略円筒形状部21の外周面上に直接巻回される1次巻線51について、折曲げ引出し部を両面粘着テープ24に強固に固定することができる。
【0050】
同様に、略円筒形状部21に2次巻線を巻回した上に別の2次巻線を巻回する場合には、先に巻回された2次巻線上に両面粘着テープ24が直接貼付けられ、当該別の2次巻線の折曲げ引出し部が両面粘着テープ24に固定されてもよい。このようにすることで、先に巻回された2次巻線上に直接巻回される当該別の2次巻線について、折曲げ引出し部を両面粘着テープ24に強固に固定することができる。
【0051】
また、折曲げ引出し部52Bは両面粘着テープ24上において巻回部52Aの指向する方向に対して直交する方向へ折曲げられていたが、一の導線と他の導線の絶縁距離を所望の値で確保できるのであれば、直交する方向に限定されず、所定角度をなす方向へ折曲げられていてもよい。例えば、一の導線、他の導線がそれぞれ折曲げ引出し部と巻回部とを有する構成の場合には、一の導線の折曲げ引出し部と他の導線の折曲げ引出し部とが平行に配置されるようになるのであれば、巻回部の指向する方向に対して所定角度をなす方向へ折曲げられていてもよい。
【0052】
また、2次巻線52は一の導線に相当し、1次巻線51は他の導線に相当したが、これに限定されない。また、本実施の形態では本発明をトランス1に応用したが、トランスに限定されず、例えばコモンモードフィルタ等の他のコイル部品に応用してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では巻回部52Aを略円筒形状部21に巻回する工程の前と後とにおいて折曲げ引出し部を押圧字具により両面粘着テープ24に押圧したが、これに限定されず、巻回部52Aを略円筒形状部21に巻回する工程の前にのみ押圧してもよく、また、巻回部52Aを略円筒形状部21に巻回する工程の後にのみ押圧してもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、1次巻線51が巻回された略円筒形状部21の外周面上に2次巻線52が巻回され、1次巻線51と2次巻線52とは略円筒形状部21の半径方向において層状をなしたが、このように巻回されることに限定されない。例えば、略円筒形状部21の外周面が1次巻線51を巻回する領域と2次巻線52を巻回する領域とに別けられ、1次巻線51、2次巻線52が略円筒形状部21の外周面上に直接巻回されてもよい。
【0055】
また、本実施の形態におけるトランス1は、トランス1が図示せぬ実装基板に実装されたときに、略円筒形状部21の軸方向が図示せぬ実装基板の表面に垂直に指向するいわゆる縦型トランスであるが、これに限定されず、略円筒形状部の軸方向が図示せぬ実装基板の表面に平行に指向するいわゆる横型トランスに応用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のコイル部品は、1次巻線と2次巻線との絶縁距離を所望の値で確保することが要求されるトランスの分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 トランス
10 コア
20 ボビン
21 略円筒形状部
22 絶縁テープ
24 両面粘着テープ
50 導線
51 1次巻線
52 2次巻線
52A 巻回部
52AA 巻回部の一端
52B 折曲げ引出し部
52BA 折曲げ引出し部の一部であって巻回部に接続されている部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなり外周面と内周面とを有する略筒形状部を備えるボビンと、
該外周面に巻回され一の導線と他の導線とを有する少なくとも2本の導線と、
該内周面により画成される空間に挿入されたコアと、
該外周面に移動不能に対向配置された両面粘着テープと、を備え、
該一の導線は、該略筒形状部の外周面に巻回された巻回部と、該巻回部に接続され該両面粘着テープ上において該巻回部から折曲げられ引出された折曲げ引出し部とを有し、
該折曲げ引出し部の一部であって該巻回部に接続されている部分は、該両面粘着テープ上において該両面粘着テープの厚さ方向へ沈み込んでいることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
該両面粘着テープは該外周面に直接貼付けられていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
該略筒形状部に巻回された該他の導線を該略筒形状部の全周にわたって覆うように絶縁性テープが設けられ、
該両面粘着テープは該絶縁性テープ上に直接貼付けられ、
該一の導線は該絶縁性テープ上に巻回されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項4】
該両面粘着テープは該略筒形状部に巻回された他の該導線上に直接貼付けられていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項5】
該折曲げ引出し部の一部であって該巻回部に接続されている部分は、該巻回部に接続されている接続点部分が最も沈み込んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一記載のコイル部品。
【請求項6】
該少なくとも2本の導線は1次巻線と2次巻線とを有し、
請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のコイル部品からなるトランス。
【請求項7】
略筒形状部を有し該略筒形状部の内周面により画成される空間にはコアが挿入され該略筒形状部の外周面には少なくとも2本の導線が巻回されるボビンの該略筒形状部の外周面に、該略筒形状部に対して移動不能に両面粘着テープを対向配置する工程と、
一の該導線を折曲げることにより、該一の導線の一部であって該略筒形状部の外周面に巻回される部分を巻回部とし、該一の導線の一部であって該巻回部に接続され該巻回部から折曲げられ引出された部分を折曲げ引出し部とする工程と、
該折曲げ引出し部の一部であって該巻回部に接続されている部分を該両面粘着テープの厚さ方向へ該両面粘着テープに対して押圧することにより該両面粘着テープに沈みこませる工程と、を有することを特徴とするコイル部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−119444(P2011−119444A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275363(P2009−275363)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】