説明

コエンザイムQ10含有化粧料用組成物およびそれを含有する化粧料

【課題】コエンザイムQ10を水等に均一分散させ、且つ結晶化を抑制でき、強分散性乳化装置などを用いずに調製でき、紫外線の照射により劣化して黄色が退色しやすいコエンザイムQ10に対して、紫外線による劣化を防止する効果もしくは劣化を抑制する効果を有する組成物で、かつ化粧料として皮膚へ塗布した場合、コエンザイムQ10の経皮吸収効果が優れること等の課題を解決できるコエンザイムQ10含有化粧料用組成物、並びに前記組成物を含有する化粧料の提供。
【解決手段】(A)コエンザイムQ10 0.01〜5.0重量%、(B)ポリグリセリン中の環状体含有量が25重量%以下であり、HLB値が10〜18であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含む界面活性剤 20〜50重量%、(C)25℃における溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜10.5である液状油 0.1〜30重量%、(D)多価アルコール 15〜35重量%からなる化粧料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10を水等に容易に均一分散するために用いられるコエンザイムQ10含有化粧料用組成物及び該組成物を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10に代表されるような脂溶性物質は生体にとって必須もしくは重要な役割を示すものが多く、これを化粧料に適用することには大きな需要がある。その利用を妨げている要因としては脂溶性物質の水性媒体や油性媒体への分散性が悪いこと、および結晶化しやすいことが挙げられるが、特許文献1では有機酸の存在下で増粘多糖類等の水溶性物質と保護コロイドを形成させることにより乳化させる製剤が、特許文献2では平均重合度の異なる2種のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて水中油型エマルジョンを形成させる組成物が開示されている。
【0003】
一方、製品中で脂溶性物質の結晶化が進行すると内容の不均一化、生体への吸収性阻害、皮肌感触の悪化、見た目の悪化を引き起こし、製品価値を大きく低下させてしまうこととなることから、強分散性の乳化装置を用いる手法が、脂溶性の高結晶性物質を水中に均一、かつ経時的に安定分散させる上で望まれている。特許文献3では、高圧乳化機等の強分散性の乳化装置を使用し乳化処理を行なうことで、脂溶性物質を水中に均一、かつ経時的に安定に分散させる手法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−55203号公報
【特許文献2】特開2004−196781号公報
【特許文献3】特開2003−238396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
増粘多糖類やポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる手法は、脂溶性物質を容易に乳化させることが出来るので優れているが、得られる組成物等の乳化安定性は十分でははい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンは、従来、脱水重合法により製造され、グリセリンの環状体を多く含んでいるが、グリセリン環状体が多いポリグリセリン脂肪酸エステルを用いると、脂溶性物質を安定して水中へ分散することが困難となる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン中の環状体について着目した手法はない。
【0005】
一方、強分散性の高圧乳化機を用いる手法は、いかなる生産ラインにも高圧乳化機が設置されているとは限らず、汎用性が低く、設置されていたとしても原料の混合釜からラインを通じて高圧乳化機まで混合原料を移送させる必要があり、その間にラインコンタミネーションの可能性が高まることによる品質の劣化、それに伴うクレーム発生の危険性が高い。また高圧で乳化させるため、エネルギーの消費は高く、必ずしも生産性の高い装置であるとはいい難い。
【0006】
また、結晶性が高く、かつ紫外線の影響を受けやすいコエンザイムQ10を均一かつ安定に製剤化しても、紫外線による劣化を防ぐ、もしくは劣化を抑制して黄色の退色を防ぐことは困難であり、品質低下や吸収阻害が生じやすい。
【0007】
従って、本発明の課題は、コエンザイムQ10を水等に均一分散させること、分散後の結晶化を抑制すること、強分散性乳化装置などを用いずに調製できること、紫外線の照射により劣化して黄色が退色しやすいコエンザイムQ10に対して、紫外線による劣化を防止する効果、もしくは劣化を抑制する効果を有している組成物であること、かつ化粧料として皮膚へ塗布した場合、コエンザイムQ10の経皮吸収効果が優れること等の課題を解決できるコエンザイムQ10含有化粧料用組成物、ならびに前記組成物を含有する化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、強分散性の乳化装置を用いなければ、均一かつ経時的に安定なコエンザイムQ10の可溶化製剤を調製することが難しい等の従来技術に鑑みて、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、特別な乳化装置を用いずとも容易にコエンザイムQ10を含有し、乳化後に結晶析出などが経時的に起こらず、安定な調製が可能であることを見出して本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、
〔1〕 (A)コエンザイムQ10 0.01〜5.0重量%、
(B)ポリグリセリン中の環状体含有量が25重量%以下であり、HLB値が10〜18であるポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも1種含む界面活性剤 20〜50重量%、
(C)25℃における溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜10.5である液状油 0.1〜30重量%、
(D)多価アルコール 15〜35重量%、及び
(E)水 5〜40重量%
を含有するコエンザイムQ10含有化粧料用組成物、ならびに
〔2〕 前記〔1〕記載の組成物を含有する化粧料
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によりコエンザイムQ10を水等に容易にかつ安定に分散させることが可能となり、もって価値の高い化粧料の提供が可能となる。また、本発明の組成物は、紫外線によるコエンザイムQ10の劣化を防止、もしくは抑制することで黄色の退色を防ぐことができ、かつコエンザイムQ10の経皮吸収性を高めることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のコエンザイムQ10含有化粧料用組成物は、(A)コエンザイムQ10 0.01〜5.0重量%、(B)界面活性剤 20〜50重量%、(C)液状油 0.1〜30重量%、(D)多価アルコール 15〜35重量%、ならびに(E)水 5〜40重量%、を含有し、界面活性剤が特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも1種含む点に1つの特徴を有する。
【0012】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合物であるポリグリセリンと脂肪酸のエステル化合物である。このポリグリセリンを従来法の一つである脱水重合法で合成した場合には、グリセリンの環状体が多く含まれるが、グリシドール法で合成した場合には、グリセリン環状体の含有量を25重量%以下に制御することが出来る。本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、詳細な理由は不明なるも、グリセリン環状体が多いポリグリセリン脂肪酸エステルを用いると、コエンザイムQ10を安定して水中へ分散することが困難となり、グリセリン環状体の含有量が25重量%以下であるポリグリセリンを原料としたポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることにより、コエンザイムQ10を水等に安定して分散できることが判明した。
【0013】
また、本発明の組成物は、界面活性剤と油と水を含有することにより、油相と水相が界面活性剤を介して両連続構造(バイコンティニュアス構造)を有していると考えられる。高結晶性の物質を含有する組成物が両連続構造を有する場合、強力な撹拌力が無くても容易にナノミセルを形成することが可能となるだけでなく、高結晶性の物質を同時にナノミセル中にカプセル化(包含)することが可能になると推定される。従来、高結晶性のコエンザイムQ10をそのまま化粧料中へ配合する場合には、コエンザイムQ10は結晶析出しない程度にしか配合することができず、コエンザイムQ10のさらなる高含有化粧料を調製することは不可能であった。しかし、本組成物はバイコンティニュアス構造を有しているので、化粧料中の水相等へ安定かつ、透明性を有した状態でコエンザイムQ10を分散配合することが可能になり、さらにはナノカプセル化することにより、コエンザイムQ10をそのまま化粧料中へ配合するのに比べて経皮吸収効果が高くなり、コエンザイムQ10を容易に皮膚中へ浸透させることが可能となり、もって付加価値の高い化粧料を調製することが可能であることが判明した。なお、組成物が両連続構造を有しているかどうかは、界面活性剤と水相と油相で3成分系の相図を作成することで容易に識別することができる。
【0014】
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、その構成成分であるポリグリセリン中の環状体含有量がコエンザイムQ10の安定な水分散性の観点から、25重量%以下であり、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜20重量%である。本明細書において、環状体含有量とは液体クロマトグラフ−質量分析計(LC/MS)で検出されるグリセリン環状体の含有量のことをいい、後述の実施例に記載の方法により算出される。
【0015】
環状体含有量が25重量%以下であるポリグリセリンは、例えば、グリシドール開環重合法などにより合成することができる。この製法により、環状体含有量は25重量%以下に抑えることが出来る。
【0016】
ポリグリセリンの平均重合度は3以上100未満が好ましく、3〜30がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。本明細書において、重合度は、後述の実施例に記載の方法により算出される。
【0017】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一つの構成成分である脂肪酸としては、炭素数12〜18の、飽和あるいは不飽和、直鎖あるいは分岐の脂肪酸、即ち、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の他、分子中に水酸基を有するリシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びこれらの縮合物などが挙げられるが、なかでも組成物の透明性の観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸が好ましい。エステル化度については特に限定するものではないが、1以上10以下が好ましい。
【0018】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、上記の通り合成されたポリグリセリンと脂肪酸とを、反応温度200℃以上でエステル化反応させることにより製造することができる。
【0019】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、コエンザイムQ10の水相への分散性の観点から、10〜18であり、12〜16が好ましく、13〜16がより好ましい。なお、ここでいうHLB値は、下記式:
HLB=20×(1−S/A)
(式中、S:エステルのけん化価、A:構成脂肪酸の酸価である)
により算出した値のことをいう。
【0020】
本発明に用いられる界面活性剤は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも1種、好ましくは1〜3種含有するのが望ましい。また、界面活性剤は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよく、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤としては、親水基がイオン化していない非イオン性界面活性剤が挙げられ、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリコシド等が例示される。前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの総含有量は、界面活性剤中、90〜100重量%が好ましく、95〜100重量%がより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0021】
界面活性剤の含有量は、本発明の組成物中、20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%、より好ましくは30〜40重量%である。
【0022】
本発明に用いるコエンザイムQ10としては、天然物から抽出されたもの、人工的に合成されたもの等が挙げられるが、生態系及び人体への安全性の観点から、発酵法によって得られたコエンザイムQ10が好ましく、市販品として「カネカコエンザイムQ10」(鐘淵化学工業社製)を好適に用いることができる。
【0023】
コエンザイムQ10の含有量は、本発明の組成物中、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0024】
本発明に用いる液状油は、低温安定性の観点から、25℃における溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜10.5、好ましくは9.0〜10.0、より好ましくは9.2〜9.7である。SP値が8.0より低い液状油や10.5より高い液状油は、コエンザイムQ10の溶解性が著しく低くなるので好ましくない。なお、ここでいう溶解度パラメータ SPとは、液体の蒸発エネルギーEと分子容積Vから、SP=(E/V)1/2で与えられる物質定数である(篠田耕三著「溶液と溶解度 第3版」(丸善株式会社、1991年発行)78〜83頁参照)。
【0025】
溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜10.5である液状油の具体例としては、D-リモネン(9.4)、ジデカン酸プロピレングリコール(9.5)、2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(9.2)、スクワレン(8.33)、2-エチルヘキサン酸2-ブチルプロパンジオール(8.2)、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール(8.6)、モノカプリン酸プロピレングリコール(9.1)などが挙げられるが、コエンザイムQ10の油相への安定溶解の観点から、ジデカン酸プロピレングリコールが好ましい。
【0026】
液状油の含有量は、本発明の組成物中、0.1〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%である。
【0027】
本発明に用いる多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ソルビトール、マルチトール等が挙げられるが、保湿性及びコエンザイムQ10の溶解性の観点から、グリセリン、プロピレングリコールが好ましい。
【0028】
多価アルコールの含有量は、本発明の組成物中、15〜35重量%、好ましくは15〜30重量%、より好ましくは20〜25重量%である。
【0029】
本発明に用いる水としては、化粧料に配合できる水であれば特に限定はなく、例えば、イオン交換水、蒸留水等の精製水等が挙げられる。かかる水の含有量は、本発明の組成物中、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜20重量%である。
【0030】
また、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の成分以外に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、ハンドリング性の向上、組成物の安定性向上、水分散時の安定性向上を目的として媒体となるものが挙げられ、具体的には、エタノール、プロパノールといった低級アルコール類が含有されてもよい。また、本発明の組成物の製品価値を向上させる観点から、香料や色素の他、ビタミン類、多価不飽和脂肪酸等の機能性油脂類、抗酸化剤、ミネラル等も好適に含有することができる。
【0031】
本発明の組成物は、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む界面活性剤を液状油に添加後、60〜90℃で攪拌混合し、次いでコエンザイムQ10を添加した後に多価アルコールと水を加えて更に撹拌することによって得ることが出来る。なお、ここでいう攪拌とは、手撹拌やプロペラ撹拌などの弱い撹拌力を示すもので、強分散性のホモミキサーやコロイドミル、高圧乳化装置等の特別な乳化装置を必要としないものである。
【0032】
本発明の組成物は、コエンザイムQ10を水等に容易にかつ安定に分散させることが可能となることから、皮膚に適用した際の経皮吸収性が向上する。例えば、本発明の組成物をコエンザイムQ10吸収性試験に供した場合、塗布3時間後におけるコエンザイムQ10吸収量は、好ましくは1重量%以上40重量%未満、より好ましくは15〜35重量%である。また、塗布9時間後におけるコエンザイムQ10吸収量は、好ましくは40重量%以上100重量%未満、より好ましくは60〜95重量%である。なお、本明細書における吸収性試験とは、本発明の組成物中のコエンザイムQ10含有量が0.03重量%未満の場合はコエンザイムQ10含有量が0.03重量%になるよう組成物を濃縮したものを、0.03重量%の場合は組成物そのままを、0.03重量%を超える場合は水、化粧水等で適宜希釈してコエンザイムQ10の含有量が0.03重量%となるよう調製した水溶液を、皮膚モデルとして3次元培養皮膚モデル等に塗布して吸収量を調べる試験のことをいう。
【0033】
また、本発明の組成物は黄色を呈しているが、紫外線によるコエンザイムQ10の劣化を防止、もしくは抑制することで黄色の退色を防ぐことができる。例えば、本発明の組成物をコエンザイムQ10劣化試験に供した場合、コエンザイムQ10残存量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは35〜50重量%である。なお、本明細書における劣化試験とは、上記の吸収性試験と同様にして用意したコエンザイムQ10含有量が0.03重量%である試料(淡い黄色を呈している)に、290nmの紫外線を96時間照射した際の残存量を調べる試験のことをいう。従って、本発明の組成物そのものは遮光せずに放置しておいても、黄色が退色するという外観の変化がほとんど認められないものである。
【0034】
本発明の組成物は、コエンザイムQ10を水等に容易にかつ安定に分散させることができ、かつ紫外線によるコエンザイムQ10の劣化を防止、もしくは抑制することで黄色の退色を防ぐことができることから、そのまま肌へ塗布することにより、コエンザイムQ10の生体への補給剤として使用することができる。従って、本発明はまた、前記組成物を含有する化粧料を提供する。
【0035】
本発明の化粧料としては、コエンザイムQ10補給を目的とした化粧水、乳液、クリーム等が挙げられる。また、剤型は特に限定されるものではなく、溶液、乳液、クリーム剤、ジェル剤、軟膏剤、液剤、パウダー剤、ペースト剤、パップ剤、プラスター剤、エアゾール剤等、外用適用可能な様々な剤型とすることができる。
【0036】
本発明の化粧料における前記組成物の含有量は、透明性の観点から、0.01〜5重量%が好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。
【0037】
本発明の化粧料には、本発明の組成物が含有されていれば特に限定はなく、公知の化粧料の任意成分として、例えば、油性成分が含有されていてもよい。
【0038】
油性成分としては、油脂類、ロウ類、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、低級アルコール類、多価アルコール類、精油類、シリコーン油類などを挙げることができる。
【0039】
油脂類としては、例えば大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油、ならびにミリスチン酸グリセリド、2-エチルヘキサン酸トリグリセリド等の合成トリグリセリド等が挙げられる。
【0040】
ロウ類としては、例えばカルナバロウ、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン等が;炭化水素類としては、例えば流動パラフィン、ワセリン、パラフィンマイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、ブリスタン等が;高級脂肪酸類としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等が;高級アルコール類としては、例えばラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、2-ヘキシルデカノール等が挙げられる。
【0041】
低級アルコール類としては、例えばエタノール、イソプロパノール等が;多価アルコール類としてはポリオキシエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-へキシレングリコール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
【0042】
エステル類としては、例えばオクタン酸セチル、オクタン酸トリグリセライド、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレステロール、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0043】
精油類としては、例えばハッカ油、ジャスミン油、ショウ脳油、ヒノキ油、トウヒ油、リュウ油、テレピン油、ケイ皮油、ベルガモット油、ミカン油、ショウブ油、パイン油、ラベンダー油、ベイ油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、タイム油、ペパーミント油、ローズ油、セージ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、カンファー、チモール、スピラントール、ピネン、リモネン、テルペン系化合物等が;シリコーン油類としては、例えばジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0044】
これら上述の油性成分は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ、これらのなかでは、ミリスチン酸グリセリド、2-エチルヘキサン酸トリグリセリド、ラノリン、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンマイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール、エタノール、1,3-ブタンジオール、オクタン酸セチル、オクタン酸トリグリセライド、ミリスチレン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸コレステロール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール水添ヒマシ油、ハッカ油、トウヒ油、ケイ皮油、ローズ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ゲラニオール、ピネン、リモネン及びジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0045】
かかる油性成分の含有量は、化粧料の剤型(形態)に応じて適宜選定することができ、通常、化粧料中、0.1〜95重量%とすることが好ましい。
【0046】
さらに、本発明の化粧料には、上記油性成分の他に医薬品や化粧品の各種製剤において使用されている界面活性剤、増粘剤、溶剤、保湿剤、収斂剤、脂肪分解促進剤、高分子化合物、紫外線吸収剤、抗炎症剤、殺菌剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、ビタミン類、色素、香料等の任意成分を配合することができる。
【0047】
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、天然、合成のいずれの界面活性剤も使用できるが、皮膚に対する刺激性を考慮すると非イオン性のものを使用することが好ましい。非イオン性界面活性剤としては、前述した非イオン性界面活性剤が同様に挙げられる。
【0048】
保湿剤としてはアミノ酸、トレハロースなどの糖類、植物エキス、ユビキノン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等が挙げられる。増粘剤としては、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0049】
色素としては、黄色4号、青色1号、黄色202号等の厚生省令に定められたタール色素別表I及びIIの色素、クロロフィル、リボフラビン、クロシン、紅花、アントラキノン等の食品添加物として認められている天然色素等が挙げられる。
【0050】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等とそれらの各種誘導体が挙げられる。
【0051】
本発明の組成物を含有する化粧料は、本発明の組成物に、必要に応じて前記任意成分を加え、常法に従って製造することができる。本発明の組成物の添加時期や添加方法については特に限定はない。
【0052】
本発明の組成物はコエンザイムQ10が安定に乳化若しくは可溶化されているので、コエンザイムQ10の析出による白濁等がない。特に化粧水等は透明であるものがほとんどであるが、本発明の組成物を含有する化粧水等の外観は、従来のものと遜色がない程度の透明性を有する。このように、本発明の組成物によれば、化粧水等の化粧料の外観を悪化させることなく、コエンザイムQ10を化粧水等の化粧料に安定に高配合することができる。また従来の化粧料に比べて、紫外線による品質劣化防止効果、もしくは抑制効果が高く、化粧品など皮膚上に塗布された後に、紫外線をあびるような剤型であっても、品質上の劣化が少ない。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0054】
実施例1〜20及び比較例1〜9
表1、2、3又は4に示す界面活性剤及び液状油をビーカーに入れ、80℃に加温した後、ホモミキサーを用いて6000r/minで攪拌して混合した。得られた混合物に表1、2、3又は4に示すコエンザイムQ10(カネカコエンザイムQ10、鐘淵化学工業社製)を加え、さらに攪拌して混合した。コエンザイムQ10が完全に溶解し、溶液が透明になっていることを目視にて確認後、予め別のビーカーにて80℃に加温しておいた水を加え、さらに多価アルコールを加えた。溶液が透明になるまで攪拌混合を続け、実施例1〜20及び比較例1〜9の組成物を得た。
【0055】
なお、用いたポリグリセリン脂肪酸エステルの環状体の含有量及び重合度は、以下に示す条件で液体クロマトグラフ−質量分析計(LC/MS)を用いて分析した。
【0056】
<LC/MS条件>
イオン化モード:APCI、negative
測定範囲:90〜2000 m/z
カラム:TSKgel α-2500(7.8×300mm)
カラム温度:40℃
溶離液:H2O/アセトニトリル=70/30
流量:0.8mL/min
注入量:10μL(100ppm)
分析時間:20分
【0057】
試験例1〔乳化安定性〕
得られた実施例1〜20及び比較例1〜9の組成物を遮光瓶に充填後、密栓した。各組成物について、5℃、25℃及び50℃にて1週間保存後の混合状態を透明容器に移して目視で確認し、以下の評価基準より乳化安定性を評価した。結果を表1〜4に示す。
【0058】
<乳化安定性の評価基準>
◎:結晶析出や濁りを認めず、透明である
○:結晶が少し析出する、もしくは濁りを少し認める
×:結晶が多く析出し、完全に分相する
なお、◎を合格品とする。
【0059】
試験例2〔光安定性〕
実施例1〜20及び比較例1〜9の組成物をコエンザイムQ10濃度が0.03重量%となるよう精製水で希釈し、希釈溶液を調製した。得られた希釈溶液について、25℃、UV灯(波長290nm)照射下で96時間保存後の残存率をHPLCにより測定した。結果を表1〜4に示す。なお、HPLC条件は以下の通りである。
【0060】
<HPLC条件>
(1) 測定装置
測定装置:Waters 2695(Waters社製)
検出器:Waters 2996(Waters社製)
(2) 測定条件
カラム:Capcellpak C18 UG120 5μm 4.6×150mm
ガードカラム:Guard Cartridge Capcell C18 UG120 5μm 2.0×10mm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/ヘキサン=85/15
流量:1.0mL/min
検出波長:275nm
注入量:10μL
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
実施例21、22及び比較例10
表5に示す成分を攪拌混合し、実施例21の水溶液A、実施例22の化粧水B及び比較例10の化粧水Cを得た。いずれの試料も淡い黄色を呈していた。なお、実施例21及び22で用いた組成物は実施例3の組成物であり、比較例10で用いたコエンザイムQ10は実施例3に配合したものと同じ(カネカコエンザイムQ10、鐘淵化学工業社製)である。
【0066】
【表5】

【0067】
試験例4〔経皮吸収性〕
実施例21の水溶液、ならびに実施例22及び比較例10の化粧料について、3次元培養皮膚モデル(LSE-high003、東洋紡(株)製)におけるコエンザイムQ10の経時的な透過率をHPLCにより測定した。結果を表6に示す。なお、HPLC条件は以下の通りである。
【0068】
<HPLC条件>
(1) 測定装置
測定装置:Waters 2695(Waters社製)
検出器:Waters 2996(Waters社製)
(2) 測定条件
カラム:Capcellpak C18 UG120 5μm 4.6×150mm
ガードカラム:Guard Cartridge Capcell C18 UG120 5μm 2.0×10mm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/ヘキサン=85/15
流量:1.0mL/min
検出波長:275nm
注入量:10μL
【0069】
【表6】

【0070】
試験例5〔外観〕
実施例21の水溶液、実施例22及び比較例10の化粧水を用いて、光照射による外観の変化を評価した。即ち、各試料について、25℃、UV灯(波長290nm)照射下で96時間保存後の着色状態を目視で観察し、以下の評価基準より外観を評価した。結果を表7に示す。
【0071】
<外観の評価基準>
◎:退色が認められない
○:やや退色が認められる
×:完全に退色し、透明である
【0072】
【表7】

【0073】
以上の結果より、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルにて調製されたコエンザイムQ10含有組成物は、加速保存においても良好な乳化状態を維持することが判明した。これは特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、エンザイムQ10が安定的に乳化あるいは可溶化されているものと考えられる。また、実施例の組成物は紫外線照射後のコエンザイムQ10の残存率が最大で40%もあり、紫外線による劣化を比較例よりも抑制することが可能であった。さらに、組成物自身を希釈したり組成物を化粧料へ配合したりすることによって、効果的にコエンザイムQ10を3次元培養皮膚モデルにて浸透させることができた。また、実施例の組成物を配合した化粧料は、光に対する外観の変化が認められず、遮光処理を要しないものであった。これによりコエンザイムQ10含有組成物を含む化粧品を調製するにあたり、何ら困難を伴うことなく化粧品へ汎用されることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のコエンザイムQ10含有化粧料用組成物は、コエンザイムQ10を水等に対して安定して均一分散させることが出来るため、化粧料などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)コエンザイムQ10 0.01〜5.0重量%、
(B)ポリグリセリン中の環状体含有量が25重量%以下であり、HLB値が10〜18であるポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも1種含む界面活性剤 20〜50重量%、
(C)25℃における溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜10.5である液状油 0.1〜30重量%、
(D)多価アルコール 15〜35重量%、及び
(E)水 5〜40重量%
を含有するコエンザイムQ10含有化粧料用組成物。
【請求項2】
コエンザイムQ10吸収性試験におけるコエンザイムQ10吸収量が塗布3時間後において1重量%以上40重量%未満であり、かつ、塗布9時間後において40重量%以上100重量%未満である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
コエンザイムQ10劣化試験において290nmの紫外線を96時間照射した際に、コエンザイムQ10残存量が30重量%以上である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の組成物を含有する化粧料。


【公開番号】特開2008−106012(P2008−106012A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291736(P2006−291736)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】