説明

コジェネレーションシステム

【課題】燃料が有する潜在的なエネルギを充分効率的に利用可能なコジェネレーションシステムを提供する。
【解決手段】高圧液化された燃料を気化部13にて気化させ、気化された燃料を発電部14のエンジン14aへ供給して発電機14bを駆動するとともに、エンジン14aの廃熱を冷却水循環回路30にて回収して給湯水の加熱に利用する。加えて、気化部13にて気化する燃料の蒸発潜熱によって冷却用熱媒体回路20を循環する熱媒体を冷却して冷熱を回収するとともに、NOX処理機17を設けることで、エンジン14aを高い作動効率を発揮させて燃料の有する潜在的エネルギを有効に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コジェネーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、燃料を燃焼させて得られるエネルギを効率的に利用することを狙ったコジェネレーションシステムが開示されている。
【0003】
この特許文献1のコジェネレーションシステムでは、内燃機関にて燃料を燃焼させて得られる回転駆動力(機械的エネルギ)によって発電機を駆動して電気エネルギを出力させるとともに、内燃機関にて燃料を燃焼させた際の廃熱(熱エネルギ)によって給湯水を加熱することで、燃料を燃焼させて得られるエネルギの効率的な利用を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−229885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のコジェネレーションシステムでは、燃料を内燃機関にて燃焼させて得られるエネルギの一部を電気エネルギを出力させるために利用し、さらに、別の一部を給湯水を加熱するために利用しているだけなので、燃料が有する潜在的なエネルギを充分効率的に利用できていない。
【0006】
例えば、特許文献1のコジェネレーションシステムでは、内燃機関へ供給される前の燃料について考慮されていないので、燃焼する前の燃料の有する潜在的なエネルギを効率的に利用できていない。さらに、燃焼後の排ガスについて考慮されていないので、排ガスに含まれる大気汚染物質が大気に放出されてしまうことを抑制するために、低い作動効率で内燃機関を作動させなければならないことがある。
【0007】
なお、燃料が有する潜在的なエネルギとは、燃料を燃焼させた際、すなわち燃料を酸素と化学反応させた際に理論的に生じる熱量のみを意味するものではなく、この熱量に加えて、燃焼前の燃料が有する内部エネルギ等も含まれる意味である。
【0008】
上記点に鑑み、本発明は、燃料が有する潜在的なエネルギを充分効率的に利用可能なコジェネレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、液化された燃料を気化する燃料気化手段(13)と、燃料気化手段(13)にて気化された燃料を燃焼させることによって機械的エネルギを出力する内燃機関(14a)と、内燃機関(14a)から出力された機械的エネルギを電気エネルギに変換する発電手段(14b)と、燃料気化手段(13)にて燃料を気化させた際に生じる冷熱を回収する冷熱回収部(20)と、内燃機関(14a)にて燃料を燃焼させた際に生じる廃熱を回収する廃熱回収部(30)と、内燃機関(14a)にて燃料を燃焼させた際に発生する排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化手段(17)とを備え、燃料として、排ガス浄化手段(17)へ供給された際に窒素酸化物と反応して窒素酸化物を水と窒素とに還元するものが採用されているコジェネレーションシステムを特徴としている。
【0010】
これによれば、発電手段(14b)を備えているので、燃料を燃焼させて得られる機械的エネルギを電気エネルギへ変換して利用できるとともに、廃熱回収部(30)を有しているので、内燃機関(14a)にて燃料を燃焼させた際の廃熱を利用することができ、燃料を燃焼させて得られるエネルギを効率的に利用できる。
【0011】
さらに、冷熱回収部(20)を備えているので、内燃機関(14a)へ供給される前の燃料の有する潜在的なエネルギの一部である内部エネルギの変化によって生じる冷熱を利用することができる。
【0012】
さらに、燃料を供給することで窒素酸化物を浄化する排ガス浄化手段(17)を備えているので、内燃機関(14a)に高い作動効率を発揮させることを優先して排ガス中の窒素酸化物濃度が増加したとしても、これを自律的に浄化することができる。従って、内燃機関(14a)にて、燃料の有する潜在的なエネルギを効率的に機械的エネルギへ変換できる。
【0013】
その結果、請求項1に記載の発明によれば、燃料が有する潜在的なエネルギを充分効率的に利用可能なコジェネレーションシステムを提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のコジェネレーションシステムにおいて、燃料として、水素を含有する化合物が採用されており、燃料を改質して水素を発生させる改質手段(16)を備え、改質手段(16)にて発生した水素が、内燃機関(14a)へ供給されることを特徴とする。
【0015】
これによれば、燃焼速度の速い水素を内燃機関(14a)へ供給することができるので、内燃機関(14a)の起動時等に、内燃機関(14a)を速やかに暖機して、高い作動効率を発揮させながら運転させることができる。さらに、内燃機関(14a)のシリンダ内へ積極的に水素を供給することで、内燃機関(14a)の失火を抑制しつつ、その回転数および出力を上昇させることができるので、より一層、内燃機関(14a)の作動効率を向上させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のコジェネレーションシステムにおいて、燃料と発熱を伴いながら化学反応するとともに、燃料と可逆反応する発熱剤が収容された蓄熱手段(15)を備え、燃料を蓄熱手段(15)へ供給することによって生じる反応熱が、内燃機関(14a)および燃料気化手段(13)のうち少なくとも一方へ供給され、内燃機関(14a)にて燃料を燃焼させた際に生じる廃熱が蓄熱手段(15)へ供給されることによって、発熱剤が再生されることを特徴とする。
【0017】
これによれば、蓄熱手段(15)を備えているので、燃料と発熱剤とを反応させた際に生じる反応熱を有効に利用することができる。例えば、反応熱を燃料気化手段(13)へ供給することで、燃料気化手段(13)における気化を促進できる。また、反応熱を内燃機関(14a)へ供給することで、内燃機関(14a)の暖機を促進できる。
【0018】
さらに、廃熱回収部(30)にて回収された熱によって発熱剤を自律的に再生でき、再生された燃料を燃料気化手段(13)あるいは内燃機関(14a)へ供給して有効に利用することができる。
【0019】
なお、本請求項における「反応熱が、前記燃料気化手段(13)および前記内燃機関(14a)のうち少なくとも一方へ供給され、」とは、燃料気化手段(13)あるいは内燃機関(14a)自体を加熱するように反応熱を供給することのみを意味するものではなく、燃料気化手段(12)あるいはエネルギ出力手段(EG)へ供給される燃料を加熱するように反応熱を供給すること等を含む意味である。
【0020】
また、本請求項における「内燃機関(14a)にて燃料を燃焼させた際に生じる廃熱」には、「廃熱回収部(30)にて回収された熱」も含まれる。
【0021】
さらに、請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のコジェネレーションシステムにおいて、具体的に、燃料としてアンモニアを採用してもよい。
【0022】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態のコジェネレーションシステムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図1は、定置型の発電装置として構成された本実施形態のコジェネレーションシステム10の全体構成図である。まず、コジェネレーションシステム10は、加圧されて液化された高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段としての高圧タンク11を備えている。
【0025】
この高圧タンク11に貯蔵される燃料は、後述する発電部14のエンジン14aにて燃料として燃焼させるために可燃性を有し、さらに、その製造コストを低減させるために高圧下においては常温(15℃〜25℃程度)でも液化させやすい燃料であることが望ましい。
【0026】
そこで、本実施形態では、可燃性を有するとともに、常温であっても1.5MPa以下で液化する燃料として、アンモニア(NH3)を採用している。さらに、アンモニアは水素を含有する燃料(化合物)であるから、改質することによって可燃性を有する水素ガスを生成することもできる。
【0027】
この他にも同等の性質を有する燃料として、ジメチルエーテル、アルコール含有燃料等を採用することもできる。さらに、水素を含有する燃料であって、同燃料の分子中に、硫黄(S)、酸素(O)、窒素(N)およびハロゲンのうち少なくとも1種の原子が含まれるものであり、かつ、分子間にて水素結合が発現するものを採用してもよい。
【0028】
高圧タンク11の燃料流出口には、第1、第2流量調整弁12a、12bを介して、燃料を気化させる燃料気化手段としての気化部13、燃料と可逆的に化学反応する発熱剤が収容された蓄熱手段としての蓄熱部15、および、エンジン14aにて燃料を燃焼させた際に発生する排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化手段としての浄化部17が接続されている。
【0029】
第1、第2流量調整弁12a、12bは、それぞれ燃料通路内に配置された弁体を有し、この弁体によって燃料通路の開度を調整することによって、高圧タンク11から流出した液体燃料を減圧させながら、気化部13側へ流出させる冷媒流量、並びに、蓄熱部15および浄化部17側へ流出させる燃料流量を調整するものである。
【0030】
さらに、第1、第2流量調整弁12a、12bの弁体は、いずれも燃料通路を遮断して高圧タンク11から燃料が流出することを禁止する全閉機能を有している。なお、第1、第2流量調整弁12a、12bは、それぞれ後述するシステム制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0031】
気化部13は、高圧タンク11から流出した液相状態の燃料(液体燃料)を気化させる第1気化部13a、および、第1気化部13aから流出した液体燃料あるいは気液二相状態の燃料(二相燃料)を気化させる第2気化部13bが設けられた気化用熱交換器によって構成されている。
【0032】
より具体的には、第1気化部13aは、高圧タンク11から流出した液体燃料と後述する冷却用熱媒体回路20を循環する第1熱媒体とを熱交換させることによって、液体燃料を加熱して気化させる熱交換部である。また、第2気化部13bは、第1気化部13aから流出した液体燃料あるいは二相燃料と後述する冷却水循環回路30を循環するエンジン14aの冷却水とを熱交換させることによって、液体燃料あるいは二相燃料を加熱して気化させる熱交換部である。
【0033】
本実施形態では、冷却水循環回路30を循環するエンジン14aの冷却水の温度が、冷却用熱媒体回路20を循環する第1熱媒体の温度よりも高く設定されており、高圧タンク11から流出した燃料を第1気化部13a→第2気化部13bの順に通過させることで、第1気化部13aにおける燃料と第1熱媒体との温度差および第2気化部13bにおける冷却水との温度差を確保して効率的な燃料の気化を行うようにしている。
【0034】
さらに、本実施形態では、発電部14の通常作動時には、気化部13から流出する燃料が確実に過熱度を有する気体燃料となるように、第1気化部13aおよび第2気化部13bの熱交換能力が調整されている。
【0035】
ところで、エンジン14aの起動時等のように、冷却水の温度が第1熱媒体の温度に対して充分に高くなっていない場合には、気化部13から流出する燃料を過熱度を有する気体燃料となるまで昇温できないことが懸念される。これに対して、本実施形態では、蓄熱部15から第2気化部13bへ熱を供給することによって、気化部13から流出する燃料が確実に過熱度を有する気体燃料となるようにしている。
【0036】
この蓄熱部15は、燃料と可逆的に化学反応する発熱剤が収容された反応容器を有し、発熱剤としては、具体的に、ハロゲン化金属である塩化ストロンチウム(SrCl2)を採用している。
【0037】
塩化ストロンチウムは、以下の化学式に示すように、燃料であるアンモニアと発熱を伴いながら可逆的に化学反応する。従って、この化学反応によって生成される化学反応物であるアンモニア・塩化ストロンチウム(SrCl2・8NH3)は、吸熱することによって再びアンモニアと塩化ストロンチウムとに再生される。
【0038】
【化1】

従って、本実施形態では、エンジン14aの起動時等のように、冷却水の温度が第1熱媒体の温度に対して充分に高くなっていない場合には、反応容器内へ燃料を供給して上記の発熱反応を生じさせ、この際に生じる熱を第2気化部へ供給することによって、気化部13から流出する燃料が確実に過熱度を有する気体燃料となるようにしている。
【0039】
また、システムの通常作動時には、後述する加熱用熱媒体回路40を循環する第2熱媒体を介して、エンジン14aの廃熱を反応容器内の化学反応物(アンモニア・塩化ストロンチウム)へ供給することで、アンモニアと塩化ストロンチウムとを再生させるようにしている。
【0040】
次に、気化部13から流出した気体燃料の流れは、図1に示すように、2つの流れに分岐され、分岐された一方の気体燃料は、発電部14のエンジン14aの吸気ポートへ供給され、分岐された他方の気体燃料は、気体燃料を改質して水素ガスを発生させる改質器(リフォーマ)16へ供給される。
【0041】
発電部14は、気化部13にて気化された燃料を燃焼させることによって回転駆動力(機械的エネルギ)を出力するエンジン(内燃機関)14aと、エンジン14aから出力された回転駆動力によって駆動されて、機械的エネルギを電気エネルギに変換する発電手段である発電機14bを有して構成されている。
【0042】
エンジン14aは、いわゆるレシプロ型エンジンで構成されており、システム制御装置によってその作動が制御される。また、エンジン14aの回転軸は発電機14bの回転軸に直結されており、発電機14bでは、エンジン14aが作動を開始することによって、発電を開始する。
【0043】
リフォーマ16は、気体燃料を触媒下で改質可能温度まで加熱して改質反応させることによって、水素ガスを発生させる改質手段である。具体的には、本実施形態では、燃料としてアンモニアを採用しているので、燃料を350℃以上となるまで加熱して、触媒下にて改質反応をさせて水素ガスを発生させている。
【0044】
リフォーマ16にて発生した水素ガスは、補助燃料として吸気に混合されてエンジン14aの吸気ポートより気体燃料とともに燃焼室へ供給される。水素は、アンモニアに対して燃焼速度が速いので、補助燃料として水素をアンモニアとともに混燃させることによって、エンジン14aの失火等を抑制できる。
【0045】
エンジン14aにて燃焼した気体燃料および水素ガスの排ガスは、エンジン14aの排気ポートから排出されて排ガス浄化手段としてのNOX処理機17へ流入する。NOX処理機17は、触媒下でエンジン14aの排気ポートから排出された排ガスに含まれる窒素酸化物とアンモニアとを選択的に反応させて、窒素酸化物を水と窒素とに分解して浄化するものである。NOX処理機17によって窒素酸化物が浄化された排ガスは、大気に排気される。
【0046】
次に、冷却用熱媒体回路20、冷却水循環回路30および加熱用熱媒体回路40について説明する。
【0047】
冷却用熱媒体回路20は、気化部13の第1気化部13aにて燃料が気化する際に気化潜熱を吸熱されて冷却される第1熱媒体(例えば、水、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路である。換言すると、冷却用熱媒体回路20は、気化部13の第1気化部13aにて燃料が気化する際に生じる冷熱を第1熱媒体に回収させる回路である。従って、この冷却用熱媒体回路20は、特許請求の範囲に記載された冷熱回収部を構成している。
【0048】
具体的には、この冷却用熱媒体回路20は、熱媒体圧送用の第1水ポンプ20a、気化部13の第1気化部13a内に形成された第1熱媒体通路20b、第1熱媒体と室内に送風される送風空気とを熱交換させる冷却用室内熱交換器21を順次配管にて環状に接続して構成されている。また、第1水ポンプ20aは、システム制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0049】
冷却水循環回路30は、エンジン14aにて燃料が燃焼する際の廃熱を吸熱して加熱される冷却水(例えば、水、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路である。換言すると、冷却水循環回路30は、エンジン14aにて燃料を燃焼させた際に生じる廃熱を冷却水に回収させる回路である。従って、本実施形態の冷却水循環回路30は、特許請求の範囲に記載された廃熱回収部を構成している。
【0050】
具体的には、この冷却水循環回路30は、冷却水圧送用の第2水ポンプ30a、エンジン14a内に形成された第1冷却水通路30b、気化部13の第2気化部13b内に形成された第2冷却水通路30c、冷却水−水熱交換器31、冷却水と室内に送風される送風空気とを熱交換させる加熱用室内熱交換器32を順次配管にて環状に接続して構成されている。
【0051】
冷却水−水熱交換器31は、冷却水通路31aを流通する冷却水と水通路を流通する給湯水とを熱交換させて給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。冷却水−水熱交換器31にて加熱された給湯水は、図示しない貯湯タンクに蓄えられる。また、第2水ポンプ30aは、システム制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0052】
加熱用熱媒体回路40は、エンジン14aにて燃料が燃焼する際の廃熱を吸熱して加熱された第1熱媒体(例えば、水、エチレングリコール水溶液)の有する熱を蓄熱部15の反応容器内の化学反応物へ供給するための回路である。
【0053】
より具体的には、加熱用熱媒体回路40は、熱媒体圧送用の第3水ポンプ40a、エンジン14a内に形成された第2熱媒体通路40b、蓄熱部15の反応容器内に形成された第3熱媒体通路40cを順次配管にて環状に接続して構成されている。また、第3水ポンプ40aは、システム制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0054】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。システム制御装置(図示せず)は、制御処理や演算処理を行うCPUおよびプログラムやデータ等を記憶するROMおよびRAM等の記憶回路を含む周知のマイクロコンピュータ、各種制御対象機器への制御信号、制御電圧等を出力する出力回路、各種センサの検出信号が入力される入力回路、並びに、電源回路等から構成されている。
【0055】
システム制御装置の出力側には、前述した各種制御対象機器12a、12b、14a、20a〜40a等が接続され、システム制御装置はこれらの制御対象機器の作動を制御する。また、システム制御装置の入力側には、各種制御対象機器の作動を制御するために用いられる物理量を検出するシステム制御用センサ群が接続されている。
【0056】
具体的には、システム制御用センサ群として、発電機14bから出力される電力の消費量を検出する電力計、エンジン14aの回転数を検出する回転数センサ、エンジン14aから流出した冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ(いずれも図示せず)等が設けられている。
【0057】
なお、本実施形態の冷却水温度センサでは、具体的に、冷却水循環回路30の第1冷却水通路30bから流出した冷却水の温度を検出しているが、この冷却水の温度と同等となる加熱用熱媒体回路40の第2熱媒体通路40bから流出した第2熱媒体の温度を検出するようにしてもよい。
【0058】
さらに、システム制御装置の入力側には、コジェネレーションシステム10を起動あるいは停止させるスタートスイッチ、給湯水の温度を設定する温度設定スイッチ等が設けられた図示しない操作パネルが接続されており、この操作パネルから各種スイッチ群の操作信号が入力される。
【0059】
また、システム制御装置は、上述した各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、システム制御装置のうち各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。従って、これらの制御手段を別々の制御装置によって構成してもよい。
【0060】
次に、上記構成における本実施形態のコジェネレーションシステム10の作動について説明する。まず、スタートスイッチが投入(ON)されると、システム制御装置が、その記憶回路に記憶されたシステム制御プログラムを実行する。このシステム制御プログラムでは、システムの作動状態に応じて、各種制御対象機器の作動を制御する。
【0061】
まず、コジェネレーションシステム10の起動時には、システム制御装置が、予め定めた所定流量の燃料が気化部13へ供給されるように第1流量調整弁12aの弁開度を制御するとともに、それぞれ予め定めた所定流量の燃料が蓄熱部15およびNOX処理機17へ供給されるように第2流量調整弁12bの弁開度を制御する。さらに、それぞれ所定の圧送能力を発揮できるように第1、第2水ポンプ20a、30aを作動させた状態で、発電部14のエンジン14aを起動させる。
【0062】
これにより、第1流量調整弁12aを介して気化部13の第1気化部13aへ供給された燃料が、冷却用熱媒体回路20の第1熱媒体通路20bを流通する第1熱媒体と熱交換して気化する。一方、燃料が気化する際に気化潜熱を奪われて冷却された第1熱媒体は、冷却用室内熱交換器21へ流入して室内へ送風される送風空気と熱交換する。これにより送風空気が冷却される。
【0063】
第1気化部13aにて気化された燃料は、第2気化部13bへ流入する。ここで、コジェネレーションシステム10の起動時には、冷却水循環回路30を循環する冷却水が充分に昇温していない。そのため、第2気化部13bへ流入した燃料を、第2冷却水通路30cを流通する冷却水と熱交換させても、第2気化部13bへ流入した燃料の気化を促進することができない。
【0064】
これに対して、本実施形態では、第2流量調整弁12bを介して蓄熱部15へ燃料が供給されるので、蓄熱部15の反応容器内にて、上述したように燃料と発熱剤が発熱反応する。そして、この反応熱が気化部13の第2気化部13bへ供給されて、第2気化部13bへ流入した燃料の気化が促進される。
【0065】
さらに、気化部13の第2気化部13bには、第2冷却水通路30cが配置されているので、反応熱が第2冷却水通路30cを流通する冷却水に供給されることによって、冷却水の温度を速やかに上昇させて、エンジン14aの暖機を促進できる。
【0066】
なお、本実施形態では、具体的に、冷却水温度センサによって検出された冷却水の温度が、予め定めた第1基準温度KT1(本実施形態では、40℃)以下である場合に、エンジン14aの起動時としている。その後、冷却水温度センサによって検出された冷却水の温度が、予め定めた第2基準温度KT2(本実施形態では、90℃)以上となった際には、エンジン14aの起動時ではなくなったものとして、通常作動に移行する。
【0067】
気化部13から流出した気体燃料は、発電部14のエンジン14aとリフォーマ16へ供給される。エンジン14aでは、燃料を燃焼させて回転駆動力(機械的エネルギ)を出力する。この回転駆動力は発電機14bへ伝達されて、発電機14bから電気エネルギが出力される。リフォーマ16では、燃料が改質されて水素が生成される。生成された水素は、エンジン14aにて燃料とともに燃焼する。
【0068】
エンジン14aから流出した燃料の排ガスは、浄化部17へ供給される。浄化部17では、第2流量調整弁12bを介して供給された燃料と排ガスが反応して、窒素酸化物が還元される。そして、窒素酸化物が還元されて浄化された排ガスは大気に放出される。
【0069】
次に、コジェネレーションシステム10が通常作動へ移行すると、システム制御装置が、電力計によって検出された消費電力の増加に伴って気化部13へ供給される燃料流量を増加させるように第1流量調整弁12aの弁開度を制御して、エンジン14aの回転数を制御する。
【0070】
さらに、蓄熱部15への燃料供給を遮断し、電力計によって検出された消費電力の増加に伴ってNOX処理機17へ供給される燃料流量を増加させるように第2流量調整弁12bの弁開度を制御する。また、それぞれ所定の圧送能力を発揮できるように第1〜第3水ポンプ20a〜40aを作動させる。
【0071】
通常作動時には、気化部13の第1気化部13aでは、起動時と同様に燃料が気化し、第2気化部13bへ流入する。通常作動時には、冷却水循環回路30の第1冷却水通路30bから流出した冷却水の温度が第2基準温度KT2以上に上昇しているので、第2気化部13bへ流入した燃料は、第2冷却水通路30cを流通する冷却水によって加熱され気化が促進される。
【0072】
さらに、第2冷却水通路30cから流出した冷却水は、冷却水−水熱交換器31へ流入して給湯水と熱交換する。これにより給湯水が加熱される。冷却水−水熱交換器31から流出した冷却水は、加熱用室内熱交換器32へ流入して室内へ送風される送風空気と熱交換する。これにより送風空気が加熱される。
【0073】
また、通常作動時の蓄熱部15では、加熱用熱媒体回路40の第3熱媒体通路40cを流通する第2熱媒体によって、反応容器内の化学反応物が加熱されて、アンモニアと塩化ストロンチウムが再生される。発電部14、リフォーマ16、NOX処理機17における作動は起動時と同様である。
【0074】
本実施形態のコジェネレーションシステム10は、上記の如く作動するので、発電部14にて発電された電力を利用することができるとともに、廃熱回収部を構成する冷却水循環回路30を備えているので、エンジン14aにて燃料を燃焼させた際の廃熱を、冷却水−水熱交換器31では給湯水を加熱するために有効に利用でき、加熱用室内熱交換器32では室内暖房のために有効に利用することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、冷熱回収部を構成する冷却用熱媒体回路20を備えているので、エンジン14aへ供給される前の燃料の有する潜在的なエネルギの一部である内部エネルギの変化によって生じる冷熱を、冷却用室内熱交換器21にて室内冷房のために有効に利用することができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、排ガス浄化手段であるNOX処理機17を備えているので、高い作動効率を発揮させることを優先して排ガス中の窒素酸化物濃度が増加したとしても、これを外部からのエネルギ供給を受けることなく自律的に浄化することができる。従って、エンジン14aに高い作動効率を発揮させることを優先して、燃料の有する潜在的なエネルギを効率的に機械的エネルギへ変換できる。
【0077】
さらに、本実施形態では、リフォーマ16を備えているので、燃焼速度の速い水素をエンジン14aへ供給することができる。従って、エンジン14aの起動時等に、エンジン14aを速やかに暖機して、エンジン14aの作動効率を速やかに向上させることができる。また、暖機終了後にもエンジン14aのシリンダ内に、積極的に水素を供給することで、エンジン14aの失火を抑制しつつ、その回転数および出力を向上させることができるので、より一層、エンジン14aの作動効率を向上させることができる。
【0078】
さらに、本実施形態では、蓄熱部15を備えているので、蓄熱部15にて燃料と発熱剤とを反応させた際に生じる反応熱を気化部13の第2気化部13bへ供給することによって、第2気化部13bにおける燃料の気化を促進できる。さらに、反応熱を発電部14のエンジン14aへ供給することによって、エンジン14aの暖機を促進できる。
【0079】
しかも、30にてエンジン14aの廃熱を回収して、燃料と発熱剤との化学反応物へ供給することによって、外部から熱の供給を受けることなく自律的に燃料と発熱剤とを再生することができ、再生された燃料を有効に利用することができる。
【0080】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0081】
(1)上述の実施形態では、燃料タンク11から気化部13、蓄熱部15およびNOX処理機17へ供給される燃料流量を調整する流量調整手段として、第1、第2流量調整弁12a、12bを採用した例を説明したが、流量調整手段はこれに限定されない。例えば、燃料タンク11に3つの燃料流出ポートを設け、それぞれに気化部13、蓄熱部15およびNOX処理機17へ供給される燃料流量を調整する流量調整弁を配置してもよい。
【0082】
(2)上述の実施形態では、蓄熱部15から燃料と発熱剤とを反応させた際に生じる反応熱を第2気化部へ供給する反応熱供給手段の詳細に言及していないが、冷却用熱媒体回路20あるいは加熱用熱媒体回路40と同様に、熱媒体回路を設けて熱媒体を介して反応熱を燃料に供給してもよい。さらに、蓄熱部15を構成する反応容器を第2気化部13bの気化空間内に配置してもよい。
【0083】
(3)上述の実施形態では、燃料と発熱剤との化学反応物を再生することによって得られた燃料について言及していないが、もちろん、再生された燃料を発電部14のエンジン14aへ供給してもよいし、NOX処理機17へ供給してもよい。
【0084】
(4)上述の実施形態では、冷却用熱媒体回路20にて回収した冷熱を室内冷房に利用した例を説明したが、冷熱の利用はこれに限定されない。例えば、冷蔵庫内や冷凍庫内を冷却するために利用してもよい。また、加熱用熱媒体回路40にて回収された廃熱についても、室内暖房や給湯水の加熱に限定されることなく、床暖房システム等に利用してもよい。
【0085】
(5)上述の実施形態では、冷却水循環回路30と加熱用熱媒体回路40とを別々に構成した例を説明したが、冷却水循環回路30と加熱用熱媒体回路40と一つの熱媒体循環回路として構成してもよい。例えば、第2水ポンプ30a、第1冷却水通路30b、第3熱媒体通路40c、第2冷却水通路30c、冷却水−水熱交換器31、加熱用室内熱交換器32を順次環状に接続して構成された熱媒体循環回路として構成してもよい。
【0086】
(6)上述の実施形態では、通常作動時に電力計によって検出された消費電力の増加に伴って気化部13へ供給される燃料流量を増加させた例を説明したが、気化部13へ供給される燃料流量の制御はこれに限定されない。例えば、発電部14の発電機14bから出力される電力を蓄えるバッテリを設け、このバッテリの蓄電残量の低下に伴って気化部13へ供給される燃料流量を増加させてエンジン14aの回転数を制御してもよい。
【符号の説明】
【0087】
13 気化部
13a、13b 第1、第2気化部
14 発電部
14a エンジン
14b 発電機
15 蓄熱部
16 リフォーマ
17 NOX処理機
20 冷却用熱媒体回路
30 冷却水循環回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化された燃料を気化する燃料気化手段(13)と、
前記燃料気化手段(13)にて気化された前記燃料を燃焼させることによって機械的エネルギを出力する内燃機関(14a)と、
前記内燃機関(14a)から出力された機械的エネルギを電気エネルギに変換する発電手段(14b)と、
前記燃料気化手段(13)にて前記燃料を気化させた際に生じる冷熱を回収する冷熱回収部(20)と、
前記内燃機関(14a)にて前記燃料を燃焼させた際に生じる廃熱を回収する廃熱回収部(30)と、
前記内燃機関(14a)にて前記燃料を燃焼させた際に発生する排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化手段(17)とを備え、
前記燃料として、前記排ガス浄化手段(17)へ供給された際に前記窒素酸化物と反応して前記窒素酸化物を還元するものが採用されていることを特徴とするコジェネレーションシステム。
【請求項2】
前記燃料として、水素を含有する化合物が採用されており、
前記燃料を改質して水素を発生させる改質手段(16)を備え、
前記改質手段(16)にて発生した水素が、前記内燃機関(14a)へ供給されることを特徴とする請求項1に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項3】
前記燃料と発熱を伴いながら化学反応するとともに、前記燃料と可逆反応する発熱剤が収容された蓄熱手段(15)を備え、
前記燃料を前記蓄熱手段(15)へ供給することによって生じる反応熱が、前記内燃機関(14a)および前記燃料気化手段(13)のうち少なくとも一方へ供給され、
前記内燃機関(14a)にて前記燃料を燃焼させた際に生じる廃熱が前記蓄熱手段(15)へ供給されることによって、前記発熱剤が再生されることを特徴とする請求項1または2に記載のコジェネレーションシステム。
【請求項4】
前記燃料は、アンモニアであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のコジェネレーションシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−246773(P2012−246773A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116760(P2011−116760)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】