説明

コネクタ、コネクタハウジング及び壁部

【課題】短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となり、且つ、貫通孔から雄端子が抜け難いコネクタ、コネクタハウジング及び壁部を提供する。
【解決手段】コネクタ1は、線材を用いて製造された複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、コネクタハウジング2と、を備える。コネクタハウジング2は、複数の雄端子を支持する壁部22を有する。複数の雄端子は、壁部22に形成された複数の貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)に挿入される。そして、それぞれの貫通孔は、雌端子7及び雄端子の接続方向Eに対して、傾いた方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄端子を支持するコネクタ、並びに、これに用いられるコネクタハウジング及び壁部に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の基板用コネクタの例が記載されている。特許文献1の基板用コネクタにおいて、コネクタハウジングの高さ方向中間部には隔壁が形成されており、この隔壁の挿入孔には、複数のピン状端子が挿入されている。また、端子の中間部の両側には、一対のストッパが突出形成されている。そして、相手コネクタとの接続時に、摩擦又は位置ずれにより、相手端子によって雄端子が押されたとしても、この一対のストッパが隔壁に引っ掛るために、挿入孔から雄端子が抜け出ることが防止される。
【0003】
また、特許文献1に記載されているような、抜け止め用のストッパを有する雄端子は、通常、金属板に対してプレス加工を行なうことにより製造される(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−216870号公報
【特許文献2】特開2004−192916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の例のように、金属板に対するプレス加工により雄端子を製造する場合には、金属板プレス加工用の金型が必要となる。そして、通常、金属板プレス加工用の金型の製造には数ヶ月かかるため、雄端子を含むコネクタ全体の製造期間が長期化する。また、金型の製造コストが大きいために、雄端子を含むコネクタ全体の製造コストが増大する。
【0006】
さらに、プレス加工により雄端子を製造する場合には、金属板から雄端子を除いた部分が、スクラップになってしまう(例えば、特許文献2の図7のプレス片14を参照)。近年、材料費が高騰しているため、金属製部品の製造に関して、スクラップの発生量を減少させることが望ましい。
【0007】
一方、金属板を用いずに、線材を用いて雄端子を製造することもできるが、線材を用いて製造された雄端子の場合には、ハウジングの挿入孔から、雄端子が抜け出やすい。線材から製造した雄端子に、抜け防止のための表面加工を施すこともできるが、その分だけ雄端子の製造コストが増大してしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となり、且つ、貫通孔から雄端子が抜け難いコネクタ、コネクタハウジング及び壁部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るコネクタは、雌端子を有する相手側コネクタに対して電気的に接続されるコネクタであって、線材を用いて製造され、前記雌端子に対して電気的に接続される雄端子と、前記雄端子を支持する壁部を有するコネクタハウジングと、を備え、前記雄端子は、前記壁部に形成された貫通孔に挿入され、前記雄端子には、前記貫通孔に挿入される挿入部と、前記壁部から突出し、前記雌端子に接続される端子接続部と、が形成されており、前記貫通孔は、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されている。
【0010】
この構成によると、線材を用いて雄端子を製造することにより、金属板プレス加工用の金型が不要になる。そのため、雄端子を短期間で製造でき、さらに、雄端子の製造コストが低くなる。
【0011】
また、この構成によると、雄端子が挿入される貫通孔が、雌端子及び雄端子の接続方向に対して傾いた方向に沿って形成されている。そのため、コネクタと相手側コネクタとの接続時に、摩擦(雌端子及び雄端子の摩擦)又は位置ずれ(雄端子位置に対する雌端子の位置ずれ)に起因して、雌端子によって雄端子が押された場合であっても、雄端子が貫通孔の内面に押し付けられる。その結果、貫通孔に沿った雄端子のスライド移動が抑制されるので、壁部の貫通孔から雄端子が抜け難くなる。
【0012】
以上のように、この構成によると、短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となる。また、貫通孔から雄端子が抜け難いコネクタが得られる。
【0013】
なお、本構成では、貫通孔が、接続方向に対して傾いた方向に沿って形成されているため、貫通孔は、雄端子の端子接続部と挿入部との間の位置において曲げられている。また、「雌端子及び雄端子の接続方向」は、相手側コネクタハウジングと、コネクタハウジングとが接続される方向(ハウジング接続方向)に等しくてもよいし、端子の接続方向とハウジング接続方向とは一致していなくてもよい。
【0014】
また、コネクタハウジングは、雄端子を支持する壁部を有する部材であり、このコネクタハウジングは、壁部に加えて、本体部、及び、本体部に取り付けられるカバーハウジングを有していてもよい。
【0015】
また、コネクタハウジングは、壁部を含めて、全体が一体的に形成されたものであってもよいし、コネクタハウジングの本体部と壁部とが別物品であってもよい。この場合に、本体部及び壁部の材料が異なっていてもよいし、同一であってもよい。また、コネクタは基板を内部に有していてもよく、この場合に、壁部が基板に取り付けられていてもよく、また、壁部がコネクタの本体部に取り付けられていてもよい。
【0016】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るコネクタハウジングは、雌端子を有する相手側コネクタに対して電気的に接続されるコネクタに用いられる、コネクタハウジングであって、前記雌端子に対して電気的に接続される、線材を用いて製造された雄端子を支持する壁部を有し、前記壁部には、前記雄端子が挿入される貫通孔が形成され、前記貫通孔は、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されている。
【0017】
この構成によると、線材から製造した雄端子を、コネクタに利用できるようになるので、短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となる。また、貫通孔から雄端子が抜け難いコネクタハウジングが得られる。
【0018】
なお、「雌端子及び雄端子の接続方向」は、相手側コネクタハウジングと、コネクタハウジングとが接続される方向(ハウジング接続方向)に等しくてもよいし、端子の接続方向とハウジング接続方向とは一致していなくてもよい。
【0019】
また、コネクタハウジングは、雄端子を支持する壁部を有する部材であり、このコネクタハウジングは、壁部に加えて、本体部、及び、本体部に取り付けられるカバーハウジングを有していてもよい。
【0020】
また、コネクタハウジングは、壁部を含めて、全体が一体的に形成されたものであってもよいし、コネクタハウジングの本体部と壁部とが別物品であってもよい。この場合に、本体部及び壁部の材料が異なっていてもよいし、同一であってもよい。また、コネクタは電子基板を内部に有していてもよく、この場合に、壁部が電子基板に取り付けられていてもよく、また、壁部がコネクタの本体部に取り付けられていてもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る壁部は、雌端子を有する相手側コネクタに対して電気的に接続されるコネクタのコネクタハウジングに含まれる壁部であって、前記雌端子に対して電気的に接続される、線材を用いて製造された雄端子を支持するために、前記雄端子が挿入される貫通孔が形成され、前記貫通孔は、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されている。
【0022】
この構成によると、線材から製造した雄端子を、コネクタに利用できるようになるので、短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となる。また、貫通孔から雄端子が抜け難い壁部が得られる。
【0023】
なお、「雌端子及び雄端子の接続方向」は、相手側コネクタハウジングと、コネクタハウジングとが接続される方向(ハウジング接続方向)に等しくてもよいし、端子の接続方向とハウジング接続方向とは一致していなくてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタの全体構成を示す側面概略図である。図2は、コネクタの斜視図である。図3は、コネクタの概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。図4は、図3のA−A’断面図である。図5は、壁部の概略図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のB−B’断面図である。図6は、コネクタハウジングの本体部の斜視図である。図7は、コネクタハウジングの本体部の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。図8は、ハウジングカバーの斜視図である。図9は、基板の斜視図である。図10は、雄端子付き壁部が、基板に取り付けられた状態を示す斜視図である。図11は、壁部付き基板の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は背面図、(e)は右側面図、(f)は(b)のC−C’断面図である。図12は、コネクタの組み立て工程の一部を示す概略図であり、(a)は挿入工程後の状態、(b)は曲げ工程後の状態を示す。
【0025】
(全体構成)
まず、図1を用いて、電気的接続装置の全体構成について説明する。本実施形態に係る電気的接続装置は、コネクタ1と、相手側コネクタ5とを有する。コネクタ1は、ECU(Electronic Control Unit)として機能し、コネクタ1を有する電気的接続装置は、自動車などにおいて利用される。相手側コネクタ5は、図示しない電源装置に対して電気的に接続されており、コネクタ1と相手側コネクタ5との接続が完了すると、コネクタ1内部の基板4上の電子部品(図示せず)へ、電源装置からの電力が供給されるようになっている。
【0026】
相手側コネクタ5は、合成樹脂製の相手側ハウジング6と、複数の雌端子7とを有する。コネクタ1と相手側コネクタ5との接続が完了した状態では、コネクタ1のコネクタハウジング2に対して、相手側ハウジング6が連結される。その結果、コネクタ1の複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、相手側コネクタ5の複数の雌端子7とが電気的に接続され、コネクタ1と相手側コネクタ5とが電気的に接続される。また、複数の雌端子7及び複数の雄端子は、図1に示す矢印E方向に沿って接続される。以下、矢印E方向を接続方向とする。
【0027】
(コネクタ)
コネクタ1は、複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、コネクタハウジング2と、基板4とを有する(図1乃至図4参照)。また、上記のように、コネクタ1は、複数の雌端子7を有する相手側コネクタ5に対して電気的に接続される。
【0028】
コネクタ1において、それぞれの雄端子は、基板4に対して、SMT(Surface Mount Technology ;表面実装技術)により取り付けられており、(図4参照)それぞれの雄端子は、基板4の表面側で半田付けされている。なお、それぞれの雄端子は、基板に対して、スルーホール方式(DIP方式;ピン挿入方式)により取り付けられていてもよい。具体的には、雄端子は、リード部(基板接続部)を基板に貫通させた上で、基板の裏面側で半田付けされていてもよい。
【0029】
(コネクタハウジング)
コネクタハウジング2は、合成樹脂材料から形成されており、本体部21と、壁部22と、カバーハウジング26とを有する(図4参照)。また、コネクタハウジング2においては、本体部21と壁部22とカバーハウジング26とが別物品となっている。しかし、これらは一体的に形成されていてもよい。
【0030】
(壁部)
まず、壁部22について説明する。壁部22は、複数の雄端子を支持する部材であり、壁部22は、本体部21の内部に配置されており、また、基板4に取り付けられている(図4参照)。また、壁部22には、複数の貫通孔が形成されている(図5(a)参照)。「複数の貫通孔」には、複数の貫通孔23、複数の貫通孔24、及び、複数の貫通孔25が含まれる。また、複数の貫通孔は、三列に並べて配置されており、一列目(図5(a)における最上列)には複数の貫通孔23が配置されており、二列目には複数の貫通孔24が、三列目には複数の貫通孔25が配置されている。
【0031】
そして、壁部22におけるそれぞれの貫通孔には、雄端子が挿入される。具体的には、貫通孔23には雄端子31が挿入され、貫通孔24には雄端子32が挿入され、貫通孔25には雄端子33が挿入される(図4参照)。
【0032】
また、壁部22の両面には、三列の溝部22dが形成されている(図5(a)、図5(b)参照)。また、複数の貫通孔のそれぞれは、壁部22の両面において、溝部22dの位置で開口するように形成されている(図5(c)参照)。
【0033】
また、貫通孔23、貫通孔24、及び貫通孔25は、雄端子31、雄端子32、及び雄端子33を支持するために形成されている。また、貫通孔23、貫通孔24、及び貫通孔25は、雌端子7及び雄端子の接続方向Eに対して、傾いた方向に沿って形成されている(図4及び図5(c)参照)。
【0034】
なお、図5(c)は、図5(a)のB−B’断面のみ(すなわち、貫通孔25の断面のみ)を示しているが、図4に示すように、貫通孔23及び貫通孔24の形状についても、図5(c)の貫通孔25と同様となっている。
【0035】
(貫通孔について)
貫通孔についてより詳しく説明する。貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)の形成方向は、接続方向Eに対して平行でないことに加えて、この接続方向Eに対して垂直でないことが望ましい。すなわち、貫通孔の形成方向と接続方向Eとの間の角度(以下、この角度を形成角度とする。図5(c)の角度α参照)は、1度乃至89度の範囲内にあることが望ましい。本実施形態においては、形成角度が45度となっている。
【0036】
形成角度が0度に近いと、接続方向Eと、貫通孔の形成方向とがほぼ一致するために、雄端子が抜け易くなってしまう。一方、形成角度が90度に近いと、雄端子の挿入が困難になり、また、雄端子の挿入部(壁部内に挿入された部分)の長さが長くなるため、壁部を、高さ方向(図5(b)の上下方向)に長くする必要が生じる。そして、結果的に、コネクタが大型化してしまう。以上から、貫通孔の形成角度は、20度〜70度の範囲内にあることがより望ましい。
【0037】
(本体部)
次に、本体部21について説明する。本体部21の内部には、内部空間21sが形成されている(図4、図7(b)、図7(c)参照)。壁部22及び基板4は、この内部空間21sに収容される。
【0038】
本体部21には、相手側コネクタ5との接続時における接続口となる、開口部21bが形成されている。また、本体部21の先端部分には、断面が四角形状の、先端部21cが形成されており、開口部21bは、先端部21cの内部に形成されている(図6及び図7参照)。
【0039】
また、本体部21のうち、内部空間21sが形成されている部分(壁部22及び基板4が収容されている部分)は、下方に向かって開口している(図7(c)参照)。また、本体部21には、天板部21fと、二つの側壁部21wと、側壁部21vとが形成されている。また、二つの側壁部21w及び側壁部21vには、後述するカバーハウジング26の移動を制限するための、突出部21gが形成されている(図6及び図7参照)。
【0040】
(カバーハウジング)
次に、カバーハウジング26について説明する。カバーハウジング26は、本体部21に対して取り付けられる蓋部材である。カバーハウジング26は、底板部26bと、側壁部26vと、二つの側壁部26wとを有する。本体部21にカバーハウジング26が取り付けられた状態では、側壁部21v及び二つの側壁部21wの外面と、側壁部26v及び二つの側壁部21wの内面とが対向する。(図2、図3(b)等参照)また、この状態において、カバーハウジング26の側壁部26v及び二つの側壁部26wの先端部は、本体部21の突出部21gに対向するため、突出部21gによって、カバーハウジング26の本体部21に対する移動が制限される。
【0041】
(基板)
図9を用いて、基板4について説明する。基板4は、プリント基板(プリント配線板)である。本実施形態においては、基板4はリジッド基板(硬質な絶縁体基材を用いたもの;ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板など)となっている。しかし、基板は、フレキシブル基板(薄く柔軟性のある絶縁体基材を用いたもの;ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムなど)や、リジッドフレキシブル基板(硬質な材料と柔軟性のある材料とを複合したもの)であってもよい。
【0042】
基板4には、複数の基板貫通孔42が形成されている(図9参照)。また、基板4の表面には、複数の基板端子41が配置されている(図9参照)。また、基板4上には、コンデンサなどの電子部品(図示せず)が配置される。
【0043】
また、上記のように、基板4には壁部22が取り付けられる。図10及び図11は、基板4に壁部22が取り付けられた状態を示している。
【0044】
(雄端子)
コネクタ1は複数の雄端子を有しており、それぞれの雄端子は線材を用いて製造されている。「複数の雄端子」には、複数の雄端子31、複数の雄端子32、及び、複数の雄端子33が含まれる。そして、雄端子31は、貫通孔23に挿入され、雄端子32は、貫通孔24に挿入され、雄端子33は、貫通孔25に挿入される(図4等参照)。また、コネクタ1において、雄端子31、雄端子32、及び雄端子33は、それぞれ、十二本ずつ設けられている。また、それぞれの雄端子は、相手側コネクタ5の雌端子7に対して電気的に接続される。
【0045】
また、複数の雄端子には、雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33の、三種類の雄端子が含まれる。雄端子31と、雄端子32と、雄端子33とでは、長さが異なっており、雄端子31が最も長く、雄端子33が最も短い(図4等参照)。
【0046】
また、雄端子31には、挿入部31bと、端子接続部31cと、基板接続部31dとが形成されている(図4及び図12(b)参照)。また、雄端子32にも、雄端子31と同様に、挿入部32bと、端子接続部32cと、基板接続部32dとが形成されている。また、雄端子33にも、挿入部33bと、端子接続部33cと、基板接続部33dとが形成されている。
【0047】
挿入部31bは、貫通孔23に挿入され、貫通孔23の内面と接触する部分である(図4及び図12(b)参照)。挿入部32bは、貫通孔24に挿入され、貫通孔24の内面と接触する部分である。挿入部33bは、貫通孔25に挿入され、貫通孔25の内面と接触する部分である。
【0048】
端子接続部31c、端子接続部32c、及び、端子接続部33cは、壁部22から突出し、雌端子7に接続される部分である(図4及び図12(b)参照)。また、端子接続部31c、端子接続部32c、及び、端子接続部33cは、コネクタ1において、その軸方向が接続方向Eに沿うように配置される。すなわち、雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33は、壁部22よりも接続方向手前側では、接続方向Eに沿うように配置されている。
【0049】
また、基板接続部31d、基板接続部32d、及び、基板接続部33dは、基板4に接続される部分である(図4参照)。基板接続部31d、基板接続部32d、及び、基板接続部33dの先端は、それぞれ、基板貫通孔42に挿入される。
【0050】
また、上記のように、貫通孔23、貫通孔24、及び貫通孔25が、雌端子7及び雄端子31の接続方向Eに対して傾いた方向に沿って形成されている。その結果、貫通孔23内部において、挿入部31b、挿入部32b、及び、挿入部33bは、接続方向Eに対して傾いた方向に沿うように配置されている(図4及び図12(b)参照)。
【0051】
(組み立て方法)
次に、コネクタ1の組み立て方向について説明する。まず、雄端子の素材である線状雄端子を準備する。具体的には、リールに巻かれた金属線材(図示せず)を、三種類の長さ(雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33のそれぞれの長さ)に切断する(切断工程)。次に、切断された金属線材の両端の先端部を、プレス加工により尖頭処理する(プレス工程)。切断工程及びプレス工程を経た三種類の金属線材は、それぞれ、線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pとなる(図12(a)参照)。線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pは、それぞれ、曲げ加工前の、雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33に相当する。
【0052】
次に、線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pを、それぞれ、壁部22の貫通孔23、貫通孔24、及び、貫通孔25へ挿入する(挿入工程;図12(a)参照)。このとき、線状雄端子31p、線状雄端子32p、線状雄端子33pは、それぞれ、貫通孔へ圧入される(強い圧力で押し込まれる)。
【0053】
次に、線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pに対して、曲げ加工を行なう(曲げ工程)。具体的には、図12(b)の線状雄端子31pを用いて説明すると、線状雄端子31pに対して、図12(b)に示すD1、D2、D3の三箇所において、曲げ加工を実施する。線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pに対しても同様に曲げ加工を実施する。
【0054】
図12(b)は、複数の雄端子が、壁部22に取り付けられた状態を示している。この状態の壁部を、「雄端子付き壁部」とする。壁部22の端子接続部側(D1参照)において雄端子が曲げられることにより、雄端子付き壁部が本体部21に取り付けられた状態において、端子接続部が接続方向Eに沿った方向となる。
【0055】
また、雄端子が、図12(b)のD3の位置で曲げられることにより、雄端子付き壁部が本体部21に取り付けられた状態において、基板接続部の先端の方向が、基板4に対して垂直な方向となる。
【0056】
なお、本実施形態においては、雄端子は、D1、D2、D3の三箇所で曲げられているが、雄端子はこのような曲げ方には限られない。例えば、D1、D3の二箇所で曲げられていてもよい。また、雄端子は、壁部22付近では、一箇所(D1)のみにおいて曲げられているが、雄端子が、壁部22を挟んだ二箇所において曲げられていてもよい。
【0057】
次に、雄端子付き壁部を、基板4に対して取り付ける(基板取り付け工程)。この状態の基板を、「壁部付き基板」とする(図10及び図11参照)。この取り付け方法としては、接着剤により両者を接着してもよいし、両者をネジ止めにより固定してもよい。またh、凹部と凸部とを両者に形成しておき、これらの連結により両者を固定してもよい。
【0058】
次に、壁部付き基板に対して、本体部21を取り付け、次に、カバーハウジング26を本体部21に対して取り付ける(ハウジング組み立て工程)。ハウジング組み立て工程を経たものがコネクタ1となる。以上のようにして、コネクタ1の組み立てが完了する。
【0059】
なお、これらの工程は、複数段階に分けて行なってもよい。例えば、曲げ工程までを実施し、雄端子付き壁部の状態で出荷し、他の組み立て業者において、残りの組み立て工程(基板取り付け工程、及び、ハウジング組み立て工程)を実施してもよい。
【0060】
以上のように、本実施形態では、コネクタ1の雄端子が、線材を用いて製造されるために、金属板に対するプレス加工が不要となる。そのため、金属板プレス加工用の金型の製造コストが不要となり、雄端子の製造コストを低くすることができる。また、金属板プレス加工用の金型が不要であるために、金型の製造期間が不要となり、コネクタ全体の製造期間を短縮できる。
【0061】
(効果)
次に、本実施形態に係る、コネクタ1、コネクタハウジング2及び壁部22の効果について説明する。本実施形態に係るコネクタ1は、複数の雌端子7を有する相手側コネクタ5に対して電気的に接続されるものであって、線材を用いて製造され、複数の雌端子7に対して電気的に接続される複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、複数の雄端子を支持する壁部22を有するコネクタハウジング2と、を備え、複数の雄端子は、壁部22に形成された複数の貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)に挿入され、それぞれの雄端子には、貫通孔に挿入される挿入部(挿入部31b、挿入部32b、挿入部33b)と、壁部22から突出し、雌端子7に接続される端子接続部(端子接続部31c、端子接続部32c、端子接続部33c)と、が形成されており、それぞれの貫通孔は、雌端子7及び雄端子の接続方向Eに対して、傾いた方向に沿って形成されている。
【0062】
この構成によると、線材を用いて雄端子(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)を製造することにより、金属板プレス加工用の金型が不要になる。そのため、雄端子を短期間で製造でき、さらに、雄端子の製造コストが低くなる。
【0063】
また、この構成によると、雄端子が挿入される貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)が、雌端子7及び雄端子の接続方向Eに対して傾いた方向に沿って形成されている。そのため、コネクタ1と相手側コネクタ5との接続時に、摩擦(雌端子7及び雄端子の摩擦)又は位置ずれ(雄端子位置に対する雌端子7の位置ずれ)に起因して、雌端子7によって雄端子が押された場合であっても、雄端子が貫通孔の内面に押し付けられる。その結果、貫通孔に沿った雄端子のスライド移動が抑制されるので、壁部22の貫通孔から雄端子が抜け難くなる。
【0064】
以上のように、この構成によると、短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となる。また、貫通孔から雄端子が抜け難いコネクタが得られる。
【0065】
また、本実施形態に係るコネクタハウジング2は、複数の雌端子7を有する相手側コネクタ5に対して電気的に接続されるコネクタ1に用いられるものであって、複数の雌端子7に対して電気的に接続される、線材を用いて製造された複数の雄端子を支持する壁部22を有し、壁部22には、複数の雄端子が挿入される複数の貫通孔が形成され、それぞれの貫通孔は、雌端子7及び雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されている。
【0066】
この構成によると、線材から製造した雄端子を、コネクタに利用できるようになるので、短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となる。また、貫通孔から雄端子が抜け難いコネクタハウジングが得られる。
【0067】
また、本実施形態に係る壁部22は、複数の雌端子7を有する相手側コネクタ5に対して電気的に接続されるコネクタ1のコネクタハウジング2に含まれる壁部22であって、複数の雌端子7に対して電気的に接続される、線材を用いて製造された複数の雄端子を支持するために、複数の雄端子が挿入される複数の貫通孔が形成され、それぞれの貫通孔は、雌端子7及び雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されている。
【0068】
この構成によると、線材から製造した雄端子を、コネクタに利用できるようになるので、短期間且つ低コストで雄端子の製造が可能となる。また、貫通孔から雄端子が抜け難い壁部が得られる。
【0069】
また、コネクタ1において、雄端子は、両コネクタの接続時に、雌端子7によって押される方向、すなわち、接続方向Eの奥側に抜け難くなっている。なお、例えば、壁部22の挿入方向奥側で雄端子を曲げれば、雄端子は、接続方向Eの手前側に抜け難くなる。
【0070】
また、コネクタ1によると、雄端子に対して曲げ加工を施すという簡易な手段により、貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)から雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)が抜け難い構造を実現できる。
【0071】
また、コネクタ1の製造においては、金属板プレス加工用の金型を使用せずに、線材により雄端子を製造するため、金属板に対するプレス加工により雄端子を製造する場合に比べて、柔軟にコネクタの仕様を変更できる。
【0072】
また、本実施形態においては、雄端子が線材から作られるために、雄端子の製造時に、スクラップが発生しない。そのため、無駄な材料費を削減できる。スクラップは、鍍金されていることが多く、その場合には、取引価格が安価になってしまうため、製造コストの面から、スクラップの発生量が低減されることは望ましい。
【0073】
また、極数(雄端子の数)が多くなるほど、コネクタの製造コストの低減効果が、金属板に対するプレス加工により雄端子を製造する場合に比べて、顕著なものとなる。
【0074】
コネクタ1は、L字接続型(接続方向Eと、基板4への接続方向とが垂直となっているタイプ)のコネクタである。このような、L字接続型のコネクタにおいては、雄端子を一箇所で垂直に折り曲げることが考えられる(図12(b)の破線部に示す、参考例に係る雄端子931参照)。このような雄端子931に比べて、本実施形態のコネクタ1では、雄端子31の端子長が短くなる(雄端子32、雄端子33についても同様)。そのため、雄端子の電気抵抗が小さくなり、雄端子における発熱量が減少し、コネクタの性能の低下を防止できる。また、雄端子の端子長が短くなることにより、高周波電気信号の遅延を低減できる。
【0075】
また、貫通孔が、接続方向Eに沿って形成されている場合には、線材から製造した雄端子の移動を抑制するためには、壁部を厚くして貫通孔を長くし、摩擦力の作用を増大させる必要がある。一方、本構成によると、接続方向Eに関して、端子接続部33cの奥側に、貫通孔の内面が位置することになるため、貫通孔の形成方向が接続方向Eに一致している場合に比べて、雄端子の移動が、壁部の貫通孔によって、より顕著に抑制される。そのため、本構成によると、壁部を厚くすることなく、雄端子の移動を抑制することができる。
【0076】
なお、上記のように、コネクタ1は、L字接続型のコネクタであるが、コネクタはL字接続型でなくてもよく、例えば、接続方向Eと、基板等に対する接続方向とは一致していてもよい。この場合には、例えば、雄端子が、D1及びD2の二箇所で、又は、壁部22を挟んだ二箇所で、折り曲げられていればよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲内において様々に変更して実施することができる。
【0078】
例えば、上記の実施形態においては、本発明に係るコネクタが、自動車のECUとして機能しているが、本発明の用途はECUには限られず、一般的な基板接続用、電源接続用、又は、中継用のコネクタに適用できる。また、本発明は、EFI(Electronic Fuel Injection;燃料噴射制御)用のECUとして用いられてもよい。また、本発明は、防水型コネクタ、非防水型コネクタのいずれにも適用できる。
【0079】
また、上記の実施形態では、コネクタ1の内部に基板4が配置されているが、コネクタの構成はこのようなものには限られず、例えば、基板はコネクタの内部ではなく、コネクタ以外の他の装置に配置されていてもよく、コネクタは、電源供給用の相手側コネクタと、基板を有する他の装置とを、中継接続するものであってもよい。
【0080】
また、上記の実施形態では、壁部が複数の雄端子を支持できるように構成されているが、壁部は一本の雄端子のみを支持するものであってもよい。また、壁部には、複数の貫通孔が三列に並べて配置されているが、壁部には、複数の貫通孔が、一列に並べられていてもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、貫通孔が一つの直線に沿って形成されているが、貫通孔は、曲線に沿って形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタの全体構成を示す側面概略図である。
【図2】コネクタの斜視図である。
【図3】コネクタの概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【図4】図3のA−A’断面図である。
【図5】壁部の概略図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のB−B’断面図である。
【図6】コネクタハウジングの本体部の斜視図である。
【図7】コネクタハウジングの本体部の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【図8】ハウジングカバーの斜視図である。
【図9】基板の斜視図である。
【図10】雄端子付き壁部が、基板に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図11】壁部付き基板の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は背面図、(e)は右側面図、(f)は(b)のC−C’断面図である。
【図12】コネクタの組み立て工程の一部を示す概略図であり、(a)は挿入工程後の状態、(b)は曲げ工程後の状態を示す。
【符号の説明】
【0083】
1 コネクタ
2 コネクタハウジング
21 本体部
21b 開口部
21c 先端部
21f 天板部
21g 突出部
21s 内部空間
21v 側壁部
21w 側壁部
22 壁部
22d 溝部
23、24、25 貫通孔
26 カバーハウジング
26b 底板部
26v 側壁部
26w 側壁部
31、32、33 雄端子
31b、32b、33b 挿入部
31c、32c、33c 端子接続部
31d、32d、33d 基板接続部
4 基板
41 基板端子
42 基板貫通孔
5 相手側コネクタ
6 相手側ハウジング
7 雌端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌端子を有する相手側コネクタに対して電気的に接続されるコネクタであって、
線材を用いて製造され、前記雌端子に対して電気的に接続される雄端子と、
前記雄端子を支持する壁部を有するコネクタハウジングと、を備え、
前記雄端子は、前記壁部に形成された貫通孔に挿入され、
前記雄端子には、前記貫通孔に挿入される挿入部と、前記壁部から突出し、前記雌端子に接続される端子接続部と、が形成されており、
前記貫通孔は、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
雌端子を有する相手側コネクタに対して電気的に接続されるコネクタに用いられる、コネクタハウジングであって、
前記雌端子に対して電気的に接続される、線材を用いて製造された雄端子を支持する壁部を有し、
前記壁部には、前記雄端子が挿入される貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されていることを特徴とするコネクタハウジング。
【請求項3】
雌端子を有する相手側コネクタに対して電気的に接続されるコネクタのコネクタハウジングに含まれる壁部であって、
前記雌端子に対して電気的に接続される、線材を用いて製造された雄端子を支持するために、前記雄端子が挿入される貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して、傾いた方向に沿って形成されていることを特徴とする壁部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−15913(P2010−15913A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176458(P2008−176458)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】