説明

コネクタ、回路基板ユニット、回路基板装置及び回路基板装置の製造方法

【課題】 2枚の対向する回路基板に挟まれ、この2枚の回路基板を電気的に接続するコネクタにおいて、コネクタを回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防止する。
【解決手段】 コネクタ1は、複数のピン11と、複数のピンを保持する保持部12と、保持部の両端を支持し、第一回路基板21と第二回路基板22の間隔を規定する間隔規定部13と、2つの間隔規定部の間に、保持部と一体成型された壁部14とを備え、コネクタ1は、第一回路基板21の端部24に取り付けられ、壁部14は、保持部の端部側とは逆側であって、第二回路基板の方へ延在し、複数のピンと第二回路基板の接合部50と所定の間隔をもって形成され、第二回路基板と壁部の距離は、第二回路基板と保持部の距離より短いコネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及びそのコネクタを実装した回路基板ユニット、回路基板装置及び回路基板装置の製造方法に関し、特に、2枚の対向する回路基板を複数のピンにより電気接続するためのコネクタ、及びそのコネクタを実装した回路基板ユニット、回路基板装置及び回路基板装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップやコネクタ等の電子部品がハンダや接着剤で表面に実装される回路基板において、小型化や狭小化に伴う表面実装の高密度化に対応するために、回路基板の上に電子部品やもう一枚の回路基板を重層的に取り付けることは広く知られている。このような回路基板の製造工程において、回路基板と電子部品(又はもう一枚の回路基板)の間にハンダボールや余分な接着剤が入り込むと、回路基板自体の品質に影響を与えるため、そのような異物を入り込まないようにすることが重要となる。特にハンダボールは、回路基板に電子部品をハンダ付けする際に発生するため、ハンダボールが回路基板や電子部品などの間に入り込んでしまうと、実装後にそのハンダボールを確認するのは難しい。また、実装後にハンダ付けを行った部分の近辺にハンダボールが付着などしていないかどうか検査しやすくすることが重要となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、回路基板に低コストでリワークし易い構造をもたせるため、電子部品と回路基板とを接合した接着部材が塗布された隅で、回路基板と電子部品との間に位置し、接着部材が塗布された隅をL字状に囲んで、接着部材が回路基板と電子部品の間に侵入しないように設けられた接着部材侵入防止用部品を有する回路基板が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、端子とランドとの間のハンダ付け状態を容易に検査できるようにするため、コネクタのハウジングと回路基板との間に、端子とランドとの間のハンダ付け部のハンダ付け状態をハウジングの前方から視認可能な隙間を設けた、コネクタと回路基板の実装構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−192939号公報
【特許文献2】特開2004−192983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、2枚の対向する回路基板に挟まれ、この2枚の回路基板を電気的に接続するコネクタにおいて、コネクタを回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防ぎ、かつ、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できるコネクタ、及びそのコネクタを実装した回路基板ユニット、回路基板装置及び回路基板装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、対向する第一回路基板と第二回路基板との間に配置され、その第一回路基板とその第二回路基板とを電気接続するためのコネクタであって、そのコネクタは、複数のピンと、その複数のピンを保持する保持部と、その保持部と一体成型された壁部と、を備え、そのコネクタは、その第一回路基板の端部に取り付けられ、その壁部は、その保持部の端部側とは逆側に形成され、かつ、その第二回路基板の方へ延在しながら、その複数のピンとその第二回路基板の接合部と所定の間隔をもって形成され、その第二回路基板とその壁部の距離は、その第二回路基板とその保持部の距離より短いコネクタが提供される。
これによれば、2枚の対向する回路基板に挟まれ、この2枚の回路基板を電気的に接続するコネクタにおいて、コネクタを回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防ぎ、かつ、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できるコネクタを提供できる。
【0008】
さらに、その壁部は、その保持部からその第二回路基板に略平行に延在する第一延在部と、その第一延在部からその第二回路基板に略垂直に延在する第二延在部とを備えることを特徴としてもよい。
これによれば、単純な構造を有する壁部により、ハンダボールが2枚の回路基板の間に侵入することを防ぐコネクタを提供できる。
【0009】
さらに、その壁部は、その第一延在部と第二延在部の間に、略平行と略垂直の中間の角度を有する第三延在部を備えることを特徴としてもよい。
これによれば、自由度の高い構造を有する壁部により、ハンダボールが2枚の回路基板の間に侵入することを防ぐコネクタを提供できる。
【0010】
さらに、その壁部の端面は、その第二回路基板に当接することを特徴としてもよい。
平面精度の高い回路基板に取り付ける場合、これによれば、確実にハンダボールが2枚の回路基板の間に侵入することを防ぐコネクタを提供できる。
【0011】
さらに、その保持部の両端を支持し、その第一回路基板と第二回路基板の間隔を規定する間隔規定部とをさらに有し、その壁部は、2つの間隔規定部の間でその保持部と一体成型されていることを特徴としてもよい。
これによれば、2つの回路基板の間隔を確実に規定でき、壁部が2つの間隔規定部の間で保持部と一体成型されていることにより、さらに確実にハンダボールが2枚の回路基板の間に侵入することを防ぐコネクタを提供できる。
【0012】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、上記のコネクタと第一回路基板を有する回路基板ユニットであって、そのコネクタは、その第一回路基板の端部に備えられ、そのコネクタの壁部は、その端部から遠ざかるように形成されたことを特徴とする回路基板ユニットが提供される。
これによれば、上記コネクタを有する回路基板ユニットであって、この回路基板ユニットを対向する回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防ぎ、かつ、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できる回路基板ユニットを提供できる。
【0013】
また、別の観点によれば、上記課題を解決するために、上記の回路基板ユニットが、そのコネクタにより電気接続する第二回路基板に取り付けられた、2枚の対向する回路基板を有する回路基板装置が提供される。
これによれば、上記回路基板ユニットを有する回路基板装置であって、この回路基板ユニットを対向する回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防ぎ、かつ、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できることにより、品質の高い回路基板装置を提供できる。
【0014】
また、別の観点によれば、上記課題を解決するために、複数のピンを備えるコネクタにより電気接続する、2枚の対向する回路基板を有する回路基板装置の製造方法あって、その複数のピンを保持する保持部と一体成型されて、その保持部から延在する壁部を備えるそのコネクタを、第一回路基板の端部に、その壁部がその端部から遠ざかり、第二回路基板の方へ延在するように取り付け、その複数のピンの一端をその第一回路基板のスルーホールにハンダ付けする工程と、その第一回路基板をその第二回路基板に対向させて、その複数のピンの他端を、第二回路基板のスルーホールにハンダ付けする工程と、を有する製造方法が提供される。
これによれば、回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防ぎ、かつ、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できることにより、品質の高い回路基板装置の製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、2枚の対向する回路基板に挟まれ、この2枚の回路基板を電気的に接続するコネクタにおいて、コネクタを回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防ぎ、かつ、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できるコネクタ、及びそのコネクタを実装した回路基板ユニット、回路基板装置及び回路基板装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るコネクタの第一実施例を示す、(A)側面図、(B)斜視図、(C)第二回路基板に取り付けた時の斜視図。(間隔規定部と第一回路基板は図示せず)
【図2】本発明に係るコネクタの第一実施例の変形例1を示す、(A)側面図、(B)斜視図。(間隔規定部は図示せず)
【図3】本発明に係るコネクタの第一実施例の変形例2を示す、(A)側面図、(B)斜視図。(間隔規定部は図示せず)
【図4】本発明に係るコネクタの第一実施例の変形例3を示す、(A)側面図、(B)斜視図。(間隔規定部は図示せず)
【図5】本発明に係るコネクタの第一実施例の変形例4を示す、(A)側面図、(B)斜視図。(間隔規定部は図示せず)
【図6】本発明に係るコネクタの第一実施例の変形例5を示す、(A)側面図、(B)斜視図。(間隔規定部は図示せず)
【図7】本発明に係るコネクタの第二実施例を示す、(A)上面図、(B)正面図、(C)底面図、(D)側面図、(E)断面図、(F)斜視図。
【図8】本発明に係るコネクタの第二実施例において、コネクタを回路基板にハンダ付けした場合を示す断面図。
【図9】本発明に係るコネクタの第二実施例における回路基板ユニットと回路基板装置の斜視図。
【図10】本発明に係るコネクタの第二実施例における回路基板ユニットと回路基板装置の製造方法を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
(第一実施例)
図1は、本発明に係る第一実施例におけるコネクタ1aを示す。なお、保持部と壁部に焦点を当てて説明するため、本図では第一回路基板は図示していない。
【0018】
コネクタ1aは、ピン11a、保持部12a、及び壁部14aを備える。ピン11aは、回路基板を電気接続するための導電性の線材であり、側面視本図(A)においてコネクタ1aの上下位置に配される回路基板のスルーホール(図示せず)に挿入され、ハンダ付けされる。コネクタ1aは、複数のピン11aを備える。ピン11aの本数は、回路基板を電気的に接続するために適宜選択される。また、複数のピン11aは一列をなすが、これに限定されず、波形、鉤形、曲形などに形成されてもよい。また、本実施例のように、複数のピン11aは等間隔に配されなくともよい。
【0019】
保持部12aは、複数のピン11aを保持する。保持部12aは、側面視で長方形をなし、また、斜視図(B)に示すように、側面視長方形と同じ形状を以って奥行きをなし、全体として直方体をなしている。後述するように、形態は様々なものが考えられ、特に限定されない。材質は、一般に成型の容易性から非導電性の樹脂等であるが、非導電性である限り特に限定されない。
【0020】
壁部14aは、側面視で長方形をなし、また、斜視図(B)に示すように、側面視長方形と同じ形状を以って奥行きをなし、全体として直方体をなしている。また、壁部14aは、保持部12aの長手方向に同じ長さに亘って、保持部12aと一体成型されている。従って、通常材質は保持部12aと同じだが、特に限定されない。
【0021】
保持部12aは、保持部12aの上面及び下面に対して垂直にピン11aを保持するが、後述するように、これに限定されない。保持部12aと壁部14aは、壁部14aのピン11a側の面が保持部12aの上面とほぼ垂直をなし、壁部14aのピン11aと反対側の面が保持部12aの側面がひとつの面となるように、一体成型されている。後述するように、これに限定されない。
【0022】
本図(C)は、コネクタ1aを第二回路基板22aに取り付けた時の斜視図である。壁部14aの端面16aは、第二回路基板22aに当接してもよいし、第二回路基板22aとの間に隙間があってもよい。例えば、第二回路基板22aが反りなどのない平面精度の高い回路基板である場合、端面16aは第二回路基板22aに当接すると、ハンダボールの侵入を確実に防ぐことができる。また、第二回路基板22aに反りなどがあることが想定される回路基板である場合、ハンダボールが侵入しない程度のわずかな隙間がある方が取り付け容易となる。
【0023】
本図(C)に示すように、複数のピン11aは、第二回路基板22aとハンダ51aでハンダ付けされる。このハンダ付けの際に、ハンダボールが散乱する場合がある。しかし、たとえハンダボールが散乱したとしても、壁部14aがその散乱するハンダボールを壁部14aの後方に散乱することを防止することができる。逆に言えば、本発明における保持部と壁部の形態は、ピンと第二回路基板のハンダ付けによる接合部から散乱するハンダボールを、壁部の後ろ側に散乱することを防止することができる形態すべてである。以下に、本実施例における保持部と壁部の形態の変形例を説明する。
【0024】
図2は、変形例1を示す。なお、保持部と壁部に焦点を当てて説明するため、本図では間隔規定部や回路基板は図示していない。これは、以下、図6まで同様である。また、図1に示される実施例との異なる部分のみを説明する。
【0025】
コネクタ1bは、ピン11b、保持部12b、及び壁部14bを備える。上記実施例との違いは、上記実施例では壁部14aが保持部12aの片側に一つのみ形成されていたが、当変形例では壁部14bが保持部12bの上下両側に2つ形成されている点である。これにより、片側の回路基板の接合部からのハンダボールの散乱だけでなく、両側の回路基板の接合部からのハンダボールの散乱を防止することができる。
【0026】
図3は、変形例2を示す。コネクタ1cは、ピン11c、保持部12c、及び壁部14cを備える。保持部12cは、側面視でほぼ正方形をなし、また、斜視図(B)に示すように、側面視正方形と同じ形状を以って奥行きをなし、全体として直方体をなしている。壁部14cは、側面視で鉤形をなし、また、斜視図(B)に示すように、側面視鉤形と同じ形状を以って奥行きをなし、保持部12cの長手方向に同じ長さに亘って、保持部12cと一体成型されている。
【0027】
即ち、壁部14cは、保持部12cから側面視でほぼ垂直に延在する第一延在部17cと、第一延在部17cから側面視でほぼ垂直に上方に、即ち第二回路基板(図示せず)の方へ延在する第二延在部18cとを備える。また、コネクタ1cが保持部12cの上面に対してほぼ平行に第二回路基板に取り付けられることを鑑みれば、換言すれば、壁部14cは、保持部12cから第二回路基板にほぼ平行に延在する第一延在部17cと、第一延在部17cから第二回路基板にほぼ垂直に第二回路基板の方へ延在する第二延在部18cとを備える。
【0028】
図4は、変形例3を示す。コネクタ1dは、ピン11d、保持部12d、及び壁部14dを備える。保持部12dは、側面視でほぼ正方形をなし、また、斜視図(B)に示すように、側面視正方形と同じ形状を以って奥行きをなし、全体として直方体をなしている。壁部14dは、側面視で台形をなし、また、斜視図(B)に示すように、側面視台形と同じ形状を以って奥行きをなし、保持部12dの長手方向に同じ長さに亘って、保持部12dと一体成型されている。
【0029】
上記変形例との違いは、上記変形例では、壁部のピン側の面がピンとほぼ平行又は保持部の上面とほぼ垂直であるが、当変形例では壁部のピン側の面がピンと平行ではない又は保持部の上面と垂直ではないで点である。保持部と壁部の構造において、このような形態であっても、ピンと第二回路基板の接合部から散乱するハンダボールを、壁部の後ろ側に散乱することを防止することができる。
【0030】
図5は、変形例4を示す。コネクタ1eは、ピン11e、保持部12e、及び壁部14eを備える。保持部12eは、側面視でほぼ長方形をなし、また、斜視図(B)に示すように、側面視長方形と同じ形状を以って奥行きをなし、全体として直方体をなしている。壁部14eは、側面視で長方形と扇型が結合した形をなし、また、斜視図(B)に示すように、その形と同じ形状を以って奥行きをなし、保持部12eの長手方向に同じ長さに亘って、保持部12eと一体成型されている。
【0031】
上記変形例との違いは、上記変形例では、壁部は平面により形成されていたが、当変形例では壁部の一部が曲面により形成されている点である。即ち、壁部14eは、変形例2における第一延在部17eと第二延在部18eの間に、第二回路基板に平行でも垂直でもない中間の角度を有する第三延在部19eとを備える。保持部と壁部の構造において、このような形態であっても、ピンと第二回路基板の接合部から散乱するハンダボールを、壁部の後ろ側に散乱することを防止することができる。
【0032】
図6は、変形例5を示す。コネクタ1fは、ピン11f、保持部12f、及び壁部14fを備える。保持部12fは、側面視で長方形ではない多角形をなし、また、斜視図(B)に示すように、この多角形と同じ形状を以って奥行きをなした形態をなしている。壁部14fは、側面視で長方形ではない多角形をなし、また、斜視図(B)に示すように、その多角形と同じ形状を以って奥行きをなし、保持部12fの長手方向に同じ長さに亘って、保持部12fと一体成型されている。上記変形例との違いは、上記変形例では、保持部の上面と壁部の端面は、保持部の下面と平行だったが、当変形例では保持部12fの上面と壁部14fの端面16fは第二回路基板とは平行ではない点である。
【0033】
即ち、コネクタ1fが保持部12fの上面に対してほぼ平行に第二回路基板に取り付けられることを鑑みれば、上記変形例では、第二回路基板とほぼ平行であったが、当変形例では保持部12fの上面と壁部14fの端面16fは第二回路基板とは平行ではない点である。保持部と壁部の構造において、このような形態であっても、端面16fの最も第二回路基板に近い部分と第二回路基板との間にハンダボールが侵入しない程度の隙間がある、又は端面16fの最も第二回路基板に近い部分が第二回路基板に当接する場合には、ピンと第二回路基板の接合部から散乱するハンダボールを、壁部の後ろ側に散乱することを防止することができる。
【0034】
(第二実施例)
図7は、本発明に係る第二実施例におけるコネクタ1を示す。コネクタ1は、ピン11、保持部12、間隔規定部13、壁部14、位置決め部15を備える。ピン11は、回路基板を電気接続するための導電性の線材であり、コネクタ1の上下位置に配される回路基板のスルーホール(図示せず)に挿入され、ハンダ付けされる。本実施例では、ピン11は、保持部の下方において二か所で折れ曲がっている。この折れ曲がっている方が、第一回路基板のスルーホールに挿入され、反対側の折れ曲がっていない方が、第二回路基板のスルーホールに挿入される。
【0035】
コネクタ1は、複数のピン11を備える。ピン11の本数は、回路基板を電気的に接続するために適宜選択される。また、複数のピン11は一列をなすが、これに限定されず、波形、鉤形、曲形などに形成されてもよい。また、本実例のように複数のピン11は等間隔に配されなくともよい。
【0036】
保持部12は、複数のピン11を保持する。また、保持部12は、本図(E)の断面視で長方形をなし、その形と同じ形状を以って長手方向に形成され、全体として直方体をなしている。材質は、一般に成型の容易性から非導電性の樹脂等であるが、非導電性である限り特に限定されない。
【0037】
間隔規定部13は、保持部12の長手方向の両端を支持し、コネクタ1が取り付けられる第一回路基板と第二回路基板(図示せず)の間隔を、間隔規定部13の高さにより規定する。間隔規定部13は、2つの基板の間隔を規定するために必要な厚みと強度を適宜備える。また、コネクタ1が取り付けられる時に第一回路基板上で転倒しないために必要な、保持部12長手方向と垂直方向の巾を適宜備える。なお、本実施例では、間隔規定部13は保持部12の両端に2つ備えられるが、これに限定されず、例えば、保持部12の中間にさらに一つ備えてもよい。間隔規定部13は、保持部12と一体成型されているので、その材質は保持部12と通常同じだが、特に限定されない。
【0038】
位置決め部15は、第一回路基板の周辺部に設けられる孔に挿入され、第一回路基板上において、コネクタ1の取付け位置を決めるものである。位置決め部15は、間隔規定部13の図示下側(第一回路基板側)に結合し2つ形成されている。位置決め部15は、間隔規定部13と一体成型されているので、材質は間隔規定部13と通常同じだが、特に限定されない。
【0039】
壁部14は、保持部12の長手方向の両端を支持する2つの間隔規定部13の間に亘り、保持部12と一体成型され、形成されている。これにより、コネクタ1を回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを確実に防ぐことができる。
【0040】
壁部14は、保持部12の側面の一方(断面図(E)において、保持部12の左側)に、保持部12の側面にほぼ垂直に突出するように延在する第一延在部17を備える。コネクタ1が保持部12の上面に対してほぼ平行に第二回路基板に取り付けられることを鑑みれば、第一延在部17は、第二回路基板にほぼ平行に延在する。また、壁部14は、第一延在部17から第二回路基板に近づくように(断面図(E)において、上の方)延在する第三延在部19を備える。また、さらに壁部14は、第三延在部19から保持部12の側面やピン11と平行になるように、即ち、第二回路基板にほぼ垂直となるように延在する第二延在部18を備える。そうすると、第三延在部19は、第一延在部17と第二延在部18の間に、保持部12の側面、第一回路基板及び第二回路基板に平行でもなく垂直でもない中間の角度を以って形成される。
【0041】
壁部14(第二延在部18)の端面16は、保持部12の側面とほぼ垂直になるように形成され、換言すれば、第二回路基板にほぼ水平になるように形成れている。端面16は、間隔規定部13の第二回路基板と当接する部分(断面図(E)において、間隔規定部13の上端部)の位置より低い位置に形成されている。これにより、第二回路基板との間に隙間ができ、第二回路基板に反りなどがあっても、容易にコネクタ1を第二回路基板に取り付けることが可能となる。一方、この隙間は、ハンダ付けの際にハンダボールが壁部のピン11側と反対側に散乱しないように、大きな隙間ではない。
【0042】
図8は、回路基板にハンダ付けされたコネクタ1、コネクタ1を第一回路基板21にハンダ付けした回路基板ユニット3、及び、回路基板ユニット3がコネクタ1により電気的に接続された第二回路基板22に取り付けられた回路基板装置4を、断面を以って示す図である。図7と比べ、コネクタ1の上下が入れ替わっている。
【0043】
位置決め部15は、第一回路基板21の孔に挿入され、第一回路基板21の所定の位置に配置される。この所定の位置とは、第一回路基板21の周縁部付近である端部24である。第一回路基板21の端面25を示すが、第一回路基板21の端部24とは、より具体的には、本図において示す第一回路基板21の端面25から一定の距離内であることを言う。あまり端面25から離れ、2つの回路基板に挟まれた奥の方に取り付けられると、例えば、図示Aのような位置から、コネクタと回路基板(特に第二回路基板22)とのハンダの結合状態を容易に目視で確認することができなくなるからである。従って、第一回路基板21の端面25から一定の距離とは、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できる範囲であればよい。この範囲は、2つの回路基板の間の距離、即ち、間隔規定部13の高さにより変化する。
【0044】
間隔規定部13の高さは、第一回路基板21と第二回路基板22の対向する面の距離を規定する。また、2つの回路基板に挟まれることにより固定された間隔規定部13は、保持部12を両側から支持するので、結果的に、保持部12が保持するピン11を固定することができる。
【0045】
保持部12により保持されたピン11の屈曲した側(図で保持部12の上側)は、第一回路基板21のスルーホール23’に挿入され、ハンダ51’によりハンダ付けされる。後述するように、通常、コネクタ1と第一回路基板21のハンダ付けは、コネクタ1と第二回路基板22のハンダ付けより先に行われる。この際、コネクタ1は、壁部14が保持部12の端部側とは逆側であって、第二回路基板22の方へ延在するように、第一回路基板21に取り付けられる。即ち、壁部14は、保持部12から、第一回路基板21の端面25から遠ざかるように、換言すれば、第一回路基板21と第二回路基板22の間に挟まれた中心領域Sの方へ、かつ、第二回路基板22の方へ近づくように、延在する。
【0046】
また、壁部14の、第二回路基板22と最も近い距離にある端面16は、コネクタ1が第二回路基板22に取り付けられた時には、第二回路基板22とわずかな隙間を形成する。この隙間は、ピン11が第二回路基板22のスルーホール23に挿入され、ハンダ51によりハンダ付けされる際に、その結合部50からハンダボールが散乱しても侵入しない程度の隙間である。
【0047】
この隙間の大きさは、ハンダボールは接合部から一定の角度を以って散乱するので、接合部50と壁部14の距離に依存する。即ち、接合部50と壁部14の距離が大きければ、この隙間は大きくてもよく、接合部50と壁部14の距離が小さければ、この隙間も小さくなる。従って、壁部14は、接合部50と所定の間隔を以って形成されることにより、ハンダボールが壁部14の後ろ側(換言すれば、第一回路基板21と第二回路基板22の間に挟まれた中心領域Sの方)に散乱することを防止し、かつ、第二回路基板22に反りなどがあっても、容易にコネクタ1を第二回路基板22に取り付けることが可能となる。
【0048】
さらに、壁部14は、保持部12の側面であって、第一回路基板21の端部24と反対側(換言すれば、第一回路基板21と第二回路基板22の間に挟まれた中心領域Sの方)にほぼ垂直に突出するように延在する第一延在部17を備えるので、接合部50を避けるように形成されている。また、保持部12の接合部50に対向する面(図示保持部12の下の面)と第一延在部17の接合部50に対向する面は、連続した面を形成している。
【0049】
そして、このような第一延在部17から、第三延在部19を経て、第二延在部18が形成されているので、第二回路基板22と保持部12の最短距離は、第二回路基板22と壁部14(第二延在部18又は端面16)までの最短距離より大きい。逆にいえば、第二回路基板22と壁部14の最短距離は、第二回路基板22と保持部12の最短距離より短い。このような形態となることにより、第一回路基板21の端部24側から目視することにより、容易に接合部50の結合状態を確認することができ、また、壁部14により散乱がブロックされたハンダボールがある場合には容易に視認し、取り除くことができる。
【0050】
上述したコネクタ1を端部24に備えた第一回路基板21は、コネクタ1と共に回路基板ユニット3を構成する。また、かかる回路基板ユニット3をコネクタ1により電気接続し取り付けられた第二回路基板22は、回路基板ユニット3と共に回路基板装置4を構成する。かかる回路基板ユニット3と回路基板装置4は、コネクタ1を回路基板にハンダ付けする際に発生するハンダボールが、2枚の回路基板の間に侵入することを防ぎ、かつ、コネクタと回路基板とのハンダの結合状態を容易に目視で確認できる、品質の高いものとなる。
【0051】
図9は、回路基板ユニット3と回路基板装置4の斜視図である。回路基板ユニット3は、第一回路基板21とその端部に4つのコネクタ1を備える。また、回路基板装置4は、第二回路基板22とそのおよそ中央部に回路基板ユニット3を備える。むろん、回路基板ユニット3は、第二回路基板22のいずれの位置に配置されてもよい。かかる回路基板装置4においては、第二回路基板22と第一回路基板21の間に挟まれた領域Sにはハンダボールが存在せず、品質の高い回路基板装置4が提供できる。
【0052】
図10は、本実施例のコネクタ1を使用した回路基板ユニット3と回路基板装置4の製造方法を示す斜視図である。まず、位置決め部15を第一回路基板21の端部にある孔に挿入し、コネクタ1の壁部14が端部24から遠ざかり、第二回路基板の方へ延在するように取り付け、コネクタ1の第一回路基板21上の位置を確定する。
【0053】
これと共に、コネクタ1の屈曲した側(保持部12を介して壁部14と反対側)のピン11を、第一回路基板21の端部にあるスルーホール23’に挿入し、リフロー方式でハンダ付けする。これにより、コネクタ1を使用した回路基板ユニット3が作製される。この段階では、コネクタ1は、第一回路基板21にのみハンダ付けされている状態なので、ハンダ付けの部分の目視は容易に行うことが可能である。
【0054】
次に、コネクタ1が取り付けられた第一回路基板21を、第二回路基板22に対向させて、ピン11のもう一方側の端を、第二回路基板22の挿入すべきスルーホール23に挿入し、フロー方式でハンダ付けする。これにより、回路基板ユニット3を使用した回路基板装置4が作製される。
第一回路基板21と第二回路基板22の間に挟まれた領域に、フロー方式のハンダ付けによりハンダボールが散乱した場合、目視により確認しにくくなるが、本発明に係るコネクタ1を用いた上記製造方法によれば、第一回路基板21と第二回路基板22の間に挟まれた領域にはハンダボールが散乱しないので、品質の高い回路基板装置4が提供できる。
【0055】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 コネクタ
2 回路基板
3 回路基板ユニット
4 回路基板装置
11 ピン
12 保持部
13 間隔規定部
14 壁部
15 位置決め部
16 端面
17 第一延在部
18 第二延在部
19 第三延在部
21 第一回路基板
22 第二回路基板
23 スルーホール
24 端部
25 第一回路基板の端面
50 接合部
51 ハンダ
S 回路基板に挟まれる領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第一回路基板と第二回路基板との間に配置され、前記第一回路基板と前記第二回路基板とを電気接続するためのコネクタであって、
前記コネクタは、
複数のピンと、
前記複数のピンを保持する保持部と、
前記保持部と一体成型された壁部と、
を備え、
前記コネクタは、前記第一回路基板の端部に取り付けられ、
前記壁部は、前記保持部の前記端部側とは逆側に形成され、かつ、前記第二回路基板の方へ延在しながら、前記複数のピンと前記第二回路基板の接合部と所定の間隔をもって形成され、
前記第二回路基板と前記壁部の距離は、前記第二回路基板と前記保持部の距離より短い、コネクタ。
【請求項2】
前記壁部は、前記保持部から前記第二回路基板に略平行に延在する第一延在部と、前記第一延在部から前記第二回路基板に略垂直に延在する第二延在部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記壁部は、前記第一延在部と第二延在部の間に、略平行と略垂直の中間の角度を有する第三延在部を備えることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記壁部の端面は、前記第二回路基板に当接することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記保持部の両端を支持し、前記第一回路基板と第二回路基板の間隔を規定する間隔規定部とをさらに有し、
前記壁部は、2つの前記間隔規定部の間で前記保持部と一体成型されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載のコネクタと前記第一回路基板を有する回路基板ユニットであって、
前記コネクタは、前記第一回路基板の端部に備えられ、
前記コネクタの前記壁部は、前記端部から遠ざかるように形成された、
ことを特徴とする回路基板ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の回路基板ユニットが、前記コネクタにより電気接続する第二回路基板に取り付けられた、2枚の対向する回路基板を有する回路基板装置。
【請求項8】
複数のピンを備えるコネクタにより電気接続する、2枚の対向する回路基板を有する回路基板装置の製造方法あって、
前記複数のピンを保持する保持部と一体成型されて、前記保持部から延在する壁部を備える前記コネクタを、第一回路基板の端部に、前記壁部が前記端部から遠ざかり、第二回路基板の方へ延在するように取り付け、前記複数のピンの一端を前記第一回路基板のスルーホールにハンダ付けする工程と、
前記第一回路基板を前記第二回路基板に対向させて、前記複数のピンの他端を、第二回路基板のスルーホールにハンダ付けする工程と、
を有する製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195056(P2012−195056A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56021(P2011−56021)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】