説明

コネクタおよびそのコネクタの製造方法

【課題】コネクタを簡素化し、1次成形部の変形を防止して防水性を確保し、コネクタの品質向上を提供する。
【解決手段】コネクタ10は、導体21と被覆部22とから成るワイヤーハーネス20の導体21の露出する部分を覆うように固定されている。コネクタ10は、端子30と1次成形部40と2次成形部50とから成る。端子30は、ターミナル部31と接合部32とから成る。1次成形部40は、本体41と先端部42とから成る。本体41は、導体21とターミナル部31及び接合部32とを覆うように射出成形により成形され、先端部42は、被覆部22を覆うように成形されている。2次成形部50は、1次成形部40のほぼ全体とターミナル部31の一部を覆うように射出成形方法により成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されワイヤーハーネスに一体固定されるコネクタおよびそのコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されワイヤーハーネスに一体固定されるコネクタおよびそのコネクタの製造方法は知られている。この種のコネクタの一例を図4に示す(特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来のコネクタを示す断面図である。コネクタ100は、ワイヤーハーネス200の末端に設けられ、ワイヤーハーネス200の導体210と接合する端子300と、導体210と被覆部220を覆う1次成形部400と、1次成形部400と被覆部220とを覆う2次成形部500と、から成る。また、1次成形部400と被覆部220の接合部分に配置され、ここを封止する第1封止部材Aと、2次成形部500と被覆部220の接合部分に配置され、ここを封止する第2封止部材Bとを備えている。1次成形部400と2次成形部500は、金型に絶縁性の樹脂を加圧して射出、充填する加工法、いわゆる射出成形により成形されることが開示されている。
【0004】
1次成形部400は、端子300と被覆部220のそれぞれの隣接部分を一体に覆い、この部分の耐絶縁性、防水性及び防塵性を向上させている。さらに、1次成形部400は、導体210の露出している部分と、端子300の導体210に接合している部分を覆っている。導体210の露出している部分が全て1次成形部400で覆われることにより、導体210の露出している部分も同様に、耐絶縁性が確保されている。また、2次成形部500が1次成形部400とワイヤーハーネス200とを一体に覆っているので、1次成形部400がワイヤーハーネス200に対して相対的に変位することが抑えられる。更に、粘性を有する液状のシール材、例えばシリコーンからなる第1封止部材Aと第2封止部材Bとにより、1次成形部400または2次成形部500と被覆部220との隙間を通ってくる水が、コネクタ100内部へ侵入することを防止することにより、防水構造の耐久性を図っていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−269858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のコネクタ100では、その防水性を確保するため第1封止部材Aと第2封止部材Bが必要となる。1次成形部400を成形した後、第1封止部材Aの組み付けが必要となり、また、2次成形部500を成形した後、第2封止部材Bの組み付けが必要となる。従って、作業工程が増えると共に部品点数の増加となり、構造が複雑でありコストアップと成る欠点を生じていた。
【0007】
そこで本出願人は、特許文献1記載のコネクタ100構造の第1封止部材Aと第2封止部材Bとを廃止し、1次成形部400と2次成形部500とにより防水を確保できる構造と方法を工夫した。図3に基づいて、先行発明としてのコネクタ100Sと、そのコネクタ100Sの製造方法について説明する。
【0008】
図3(A)はコネクタの断面図、図3(B)は成形時の金型を含む断面図である。
【0009】
先行発明のコネクタ100Sは、ワイヤーハーネス200Sの導体210Sが露出している近傍に配置され、ワイヤーハーネス200Sの被覆部220Sの先端を覆う1次成形部400Sと、1次成形部400Sの略全体と導体210Sの露出部分および導体210Sと電気的に接合する端子300Sの一部を覆う2次成形部500Sと、から成る。1次成形部400Sを被覆部220S上に成形した後、2次成形部500Sを成形する。その際、金型600Sによって1次成形部400Sを支持固定する。金型600Sと端子300Sと1次成形部400Sとにより設けられた空間部610S内にゲート620Sから2次成形部500Sを成形するための樹脂材が射出され、2次成形部500Sが形成される。
【0010】
このような先行発明には、まず、ワイヤーハーネス200Sの被覆部220Sと金型600Sとの間で隙間Dを生じることがある。これは、ワイヤーハーネス200Sの被覆部220Sの寸法バラツキにより1次成形部400Sの一部を金型600Sで押さえることができないことによる。また、2次成形部500Sの射出成形時、射出圧力が1次成形部400Sの端面に加わり1次成形部400Sを変形させてしまうことがある。これは、1次成形部400Sの端面に加わった圧力が1次成形部400Sの内部を伝わる結果、1次成形部400Sの一部が金型600Sから変形して飛び出すことによる(図3(B)の矢印Y1→Y2→Y3参照)。
【0011】
従って、先行発明のコネクタ100Sでは、2次成形部500Sを成形する際に、射出時の樹脂温度、射出圧力、保持圧の圧力により1次成形部400Sの形状が変形して、防水機能を損なう恐れがあることが分かった。また、2次成形部500Sの形状が複雑な場合、成形条件のみでは1次成形部400Sの変形を抑制できない可能性もあり、同時に2次成形部500Sにヒケ等の不具合が発生するなどの問題点があることも分かった。
【0012】
以上のように先行発明のコネクタおよびその製造方法では、2次成形部の成形時に1次成形部の変形を生じ、コネクタの防水性を確保できないという課題があった。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コネクタを簡素化し、1次成形部の変形を防止して防水性を確保し、コネクタの品質向上を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタおよびそのコネクタの製造方法は、下記(1)〜(2)を特徴としている。
(1) ワイヤーハーネスの末端に一体固定されるコネクタであって、
前記コネクタは、端子と1次成形部と2次成形部とを備え、
前記端子は、ターミナル部と、前記ワイヤーハーネスの導体と電気的接合する接合部とを備え、
前記1次成形部は、本体と、前記本体から延びる、該本体よりも細い先端部と、を有し、
前記本体は、前記端子の前記ターミナル部の一部、前記接合部、及び前記ワイヤーハーネスの被覆部から露出する前記導体の一部を覆うように形成され、
前記先端部は、前記ワイヤーハーネスの前記被覆部を覆うように形成され、
前記2次成形部は、前記本体、前記先端部の一部、及び前記端子のターミナル部の一部を覆うように形成されている、
こと。
(2) ワイヤーハーネスの末端に一体固定されるコネクタの製造方法であって、
前記ワイヤーハーネスの導体と端子の接合部とを電気的に接合し、
前記端子のターミナル部の一部、前記接合部、及び前記ワイヤーハーネスの被覆部から露出する前記導体の一部とを本体によって、前記ワイヤーハーネスの前記被覆部を前記本体よりも細い先端部で、それぞれ覆うように1次成形部を射出成形し、
前記1次成形部の前記本体、前記1次成形部の先端部の一部、及び前記端子の前記ターミナル部の一部と、を覆うように2次成形部を射出成形する、
こと。
【0015】
上記(1)の構成のコネクタによれば、本体によって端子、導体、被覆部の位置関係が安定し、2次成形部の成形時に発生する射出圧が1次成形部の先端部に作用することを抑制し、1次成形部の先端部の変位を防止できる。従って、1次成形部の先端部が被覆部に密着し、先端部と被覆部との間で生じる水の浸透を防止でき、防水性の優れたコネクタを提供できる。
上記(2)の構成のコネクタの製造方法によれば、1次成形部を端子と導体と被覆部とに密着固定させた後、1次成形部の略全域を覆い隠すように2次成形部を成形するため、2次成形部の成形時に射出圧による1次成形部の先端部の変形または移動を防止し、成形後の1次成形部とワイヤーハーネスとの密着力を高め、防水性の優れたコネクタを製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2次成形部の成形時に、1次成形部の本体により確実に1次成形部の先端部の変形を抑制でき、更に、2次成形部が1次成形部を圧接した状態となり、1次成形部とワイヤーハーネスとの密着力が強化になり、防水性の優れたコネクタおよびその製造方法を提供できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施例1のコネクタを示し、図1(A)は断面図、図1(B)は金型を含む断面図である。
【図2】図1に係るコネクタの他の実施形態を示し、図2(A)は実施例2の断面図、図2(B)は実施例3の断面図である。
【図3】先行発明に係るコネクタを示し、図3(A)は断面図、図3(B)は金型を含む断面図である。
【図4】従来のコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
[実施例1]
図1に基づいて、本発明の実施例1であるコネクタ10を説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る実施例1のコネクタを示し、図1(A)は断面図、図1(B)は金型を含む断面図である。コネクタ10は、ワイヤーハーネス20の末端に配置されている。ワイヤーハーネス20は、導体21と被覆部22とから成り、導体21の露出する部分(ワイヤーハーネス20の末端)を覆うようにコネクタ10が固定されている。一方、コネクタ10は、端子30と1次成形部40と2次成形部50とから成る。
【0022】
端子30は、略直線上に伸びるターミナル部31と、ターミナル部31から延びる接合部32と、から成る。端子30の接合部32は、導体21の先端と電気的に接合している。
【0023】
1次成形部40は、熱硬化性樹脂系エラストマーから成り、大径状で断面略角型形状の本体41と、本体41から延びる、本体41よりも細い筒状の先端部42と、から成る。本体41は、導体21の露出部分と、端子30のターミナル部31の一部と、接合部32とを、それぞれの全周を覆うように射出成形することにより環状に形成されている。また、先端部42は、被覆部22の末端から該被覆部22に沿いつつ後方(端子30とは反対方向)に向かって延びており、被覆部22の全周を覆うように射出成形することにより環状に成形されている。
【0024】
本体41は、耐絶縁性を強化して接合部32の外方向に大きく突出するように形成されている。先端部42は、被覆部22と先端部42との間に浸透する水を防止するために、被覆部22に沿って本体41よりも細く形成されている。1次成形部40によって、端子30とワイヤーハーネス20の絶縁性が確保され、双方の相対的位置関係が定まる。
【0025】
2次成形部50は、ポリエステル系樹脂やポリアミド樹脂等の変形し難い絶縁性樹脂から成り、1次成形部40の先端部42の一部を除き、1次成形部40のほぼ全体と端子30のターミナル部31の一部を覆うように射出成形することにより環状に成形されている。即ち、2次成形部50は、1次成形部40の密着性を高めるため、1次成形部40全体を押圧するように形成されている。更に、本体41と先端部42との外径による相違によって、高さ方向での段差が形成されている。このため、2次成形部50の成形時の射出圧を先端部42に作用させ難くしているため、先端部42での変形を抑制できている。また、2次成形部50は、コネクタ10のハウジングとしての機能も備えている。
【0026】
コネクタ10は、以下の手順で形成される(図1(B)参照)。
【0027】
ステップ1:端子30と導体21を電気的に接合し、端子30の接合部32と、導体21の露出部分と、被覆部22の一部と、を覆い隠すように1次成形部40を射出成形により環状に成形する。その際、1次成形部40の本体41は、ターミナル部31の一部、接合部32、及び導体21を覆い先端部42よりも太く形成され、先端部42は、被覆部22を覆い被覆部22に沿って本体41よりも細い筒状に形成される。
【0028】
ステップ2:被覆部22と端子30及び1次成形部40とを金型(キャビティ・コア)60で挟持する。その際、金型60と、端子30と1次成形部40とで金型60内に空間部61が形成される。
【0029】
ステップ3:金型60の樹脂射出用ゲート62を通って空間部61内に2次成形樹脂材料が射出され、2次成形部50が成形される。
【0030】
射出成形時、1次成形部40に射出圧が加わるが、本体41により射出圧が先端部42に作用する力が抑制され、先端部42の先端部42の変形を防止できる。従って、1次成形部40の被覆部22への密着状態が保持され、1次成形部40と被覆部22との間で生じる水の浸透を防止できる。また、2次成形部50が1次成形部40を取り囲むように成形され、その接触面積が大きくなり、エラストマーからなる1次成形部40が弾性的に圧接される結果、1次成形部40をワイヤーハーネス20に対してより密着させることができる。
【0031】
[実施例2]
図2(A)は実施例2を示す断面図である。1次成形部40の本体41は断面略円型形状を成している。2次成形部50の射出成形時、射出圧が均等に分散し、1次成形部の変形を極力防止できる。
【0032】
[実施例3]
図2(B)は実施例3を示す断面図である。1次成形部40の先端部42と反対側の端面、及び2次成形部50のターミナル部31側に位置する端面は、端子30のターミナル部31の一部を覆うとともに、凹凸のないフラットな面として形成されている。このような構成のコネクタ10は、実施例1及び2のコネクタ10と比して小型化することができる。
【0033】
以上、本発明のコネクタ10は、端子30と1次成形部40と2次成形部50とから成り、ワイヤーハーネス20の末端近傍に固定されるものである。1次成形部40は、ワイヤーハーネス20の被覆部22に沿って形成された細長の先端部42と、端子30のターミナル部31の一部と接合部32及び導体21とを覆うように形成された、先端部42より太い本体41とから成る。また、2次成形部50は、本体41を覆い、先端部42と端子30のそれぞれ一部を覆うように形成されている。
【0034】
この構成によれば、本体41によって端子30、導体21、被覆部22の相対的位置関係が安定し、また、2次成形部50の成形時に発生する射出圧が先端部42に作用することを抑制することによって、1次成形部40の先端部42の変位を防止できる。従って、1次成形部40の先端部42が被覆部22に密着し、先端部42と被覆部22との間で生じる水の浸透を防止でき、防水性の優れたコネクタ10を提供できる。
【0035】
また、本発明のコネクタ10は、本体41が、接合部32の外方に向かって大きく突出し、断面略角形状または円形状をしているものを含む。従って、2次成形部50の成形時における1次成形部40の上下左右の移動を抑制させることができる。
【0036】
また、本発明のコネクタ10の製造方法は、まず、ワイヤーハーネス20の導体21と端子30の接合部32を電気的に接合させる。次に、端子30のターミナル部31の一部と接合部32と導体21とを大径の本体41で、ワイヤーハーネス20の被覆部22を細長い形状の先端部42で、それぞれ覆い隠すように1次成形部40を射出成形する。そして、1次成形部40の先端部42の一部を残して1次成形部40ほぼ全体と、端子30のターミナル部31の一部とを、覆い隠すように2次成形部50を射出成形することを特徴としている。
【0037】
この製造方法によれば、1次成形部40を端子30と導体21と被覆部22とに密着固定させた後、1次成形部40の略全域を覆い隠すように2次成形部50を成形するため、2次成形部50の成形時に射出圧による1次成形部40の変形または移動を防止し、成形後の1次成形部40とワイヤーハーネス20との密着力を高め、防水性の優れたコネクタ10を製造できる。
【0038】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
1次成形部40の本体41を、実施形態では角形状または円形状として説明したが、本体41の外径が先端部42よりも大きく形成されていることにより、先端部42の変形が防止される。従って、角形状や円形状に限定されものではなく、種々の変形が可能である。
【0040】
本発明の実施形態では、一つの端子30、一つのワイヤーハーネス20について詳述したが、複数(例えば、並列状に配置)あっても良い。
【符号の説明】
【0041】
10 コネクタ
20 ワイヤーハーネス
21 導体
22 被覆部
30 端子
31 ターミナル部
32 接合部
40 1次成形部
41 本体
42 先端部
50 2次成形部
60 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスの末端に一体固定されるコネクタであって、
前記コネクタは、端子と1次成形部と2次成形部とを備え、
前記端子は、ターミナル部と、前記ワイヤーハーネスの導体と電気的接合する接合部とを備え、
前記1次成形部は、本体と、前記本体から延びる、該本体よりも細い先端部と、を有し、
前記本体は、前記端子の前記ターミナル部の一部、前記接合部、及び前記ワイヤーハーネスの被覆部から露出する前記導体の一部を覆うように形成され、
前記先端部は、前記ワイヤーハーネスの前記被覆部を覆うように形成され、
前記2次成形部は、前記本体、前記先端部の一部、及び前記端子のターミナル部の一部を覆うように形成されている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
ワイヤーハーネスの末端に一体固定されるコネクタの製造方法であって、
前記ワイヤーハーネスの導体と端子の接合部とを電気的に接合し、
前記端子のターミナル部の一部、前記接合部、及び前記ワイヤーハーネスの被覆部から露出する前記導体の一部とを本体によって、前記ワイヤーハーネスの前記被覆部を前記本体よりも細い先端部で、それぞれ覆うように1次成形部を射出成形し、
前記1次成形部の前記本体、前記1次成形部の先端部の一部、及び前記端子の前記ターミナル部の一部と、を覆うように2次成形部を射出成形する、
ことを特徴とするコネクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−41677(P2013−41677A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176084(P2011−176084)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】