説明

コネクタの取付構造

【課題】コネクタが正規の取付方向に対して傾いた姿勢となることを規制する。
【解決手段】本発明は、コネクタ10とこのコネクタ10を遊動可能に支持するブラケット30とを備えた電気部品1をケースRに組み付けることにより、コネクタ10をケースRにおける取付孔R2に取り付けるためのコネクタ10の取付構造であって、取付孔R2に取り付けられたコネクタ10の軸心と平行をなす軸をZ軸と定義したときに、ブラケット30は、コネクタ10と一対の当接部A1〜A3,B1〜B3で接する傾き規制部32A,32B,34を有し、傾き規制部32A,32B,34を両当接部A1〜A3,B1〜B3を結ぶ方向とは交差する方向に一対備えており、両傾き規制部32A,32B,34は、コネクタ10の軸心がZ軸に対して傾くことを規制しつつ、コネクタ10がZ軸と交差する平面に沿う方向へ移動することを許容する構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタを相手側部材における所定の装着箇所に取り付けるためのコネクタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のオートマチックトランスミッション等に用いられる電気部品として、コネクタとブラケットを備え、コネクタがブラケットによって遊動可能に支持されている構成のものがある(例えば下記特許文献1)。このコネクタは、電気部品を相手側部材に組み付けることにより、相手側部材の取付孔に取り付けられるようになっている。このような電気部品によると、コネクタが支持部材に対して遊動可能に支持されているから、コネクタを取付孔へ取り付ける途中で、コネクタに無理な力が加わることを防ぐことができる。
【特許文献1】特開2006−4840公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記コネクタの取付構造では、コネクタがブラケットに対して遊動可能に支持されているから、コネクタの取付開始前に、コネクタが正規の取付方向に対して傾いた姿勢となりやすく、コネクタの軸心を取付孔に向ける作業が困難になる。かといって、コネクタがブラケットに対して遊動することを規制してしまうと、コネクタの取付完了後、他の部品等をブラケット側に取り付ける際に、取付位置の微調整ができなくなる。したがって、コネクタが取付孔に取り付けられた後においては、取付位置の微調整を可能にすべくブラケット側がコネクタに対して遊動可能であることが望ましい。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタが正規の取付方向に対して傾いた姿勢となることを規制しつつ、正規の取付方向とは交差する方向へ移動することを許容することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、コネクタとこのコネクタを遊動可能に支持する支持部材とを備えた電気部品を相手側部材に組み付けることにより、コネクタを相手側部材における所定の装着箇所に取り付けるためのコネクタの取付構造であって、所定の装着箇所に取り付けられたコネクタの軸心と平行をなす軸をZ軸と定義したときに、支持部材は、コネクタと一対の当接部で接する傾き規制部を有し、傾き規制部を両当接部を結ぶ方向とは交差する方向に一対備えており、両傾き規制部は、コネクタの軸心がZ軸に対して傾くことを規制しつつ、コネクタがZ軸と交差する平面に沿う方向へ移動することを許容する構成としたところに特徴を有する。
【0005】
このような構成によると、コネクタを所定の装着箇所へ取り付ける際に、両当接部を結ぶ方向とは交差する方向に配置された両傾き規制部がそれぞれコネクタに当接すると共に、各傾き規制部において両当接部がコネクタに当接するから、コネクタが正規の取付方向に対して傾くことが規制される。したがって、コネクタの軸心を所定の装着箇所に向けてコネクタを所定の装着箇所に対して芯合わせする作業が容易になる。また、コネクタを所定の装着箇所に取り付けた後においては、支持部材側をコネクタに対して正規の取付方向と交差する方向へ移動させることができる。したがって、他の部品等を支持部材側に取り付ける際に、その取付位置の微調整が可能になる。
【0006】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
支持部材は、コネクタを遊動可能に支持する取付片と、取付片の両側に対向配置された一対の規制片とを備え、両規制片の先端縁部に両傾き規制部が設けられ、両傾き規制部は、両規制片の先端外周縁と、両規制片の先端縁部から側方に突出する一対の突部の外周面とから構成されているものにおいて、コネクタは、両規制片の先端外周縁と当接可能な一対の被当接面と、両被当接面から突出して設けられ両規制片と対向配置された一対の撓み片と、両撓み片に貫通して設けられ両突部の外周面と当接可能な内周面を有する一対の規制孔とを備えている構成としてもよい。
このような構成によると、支持部材の規制片の先端外周縁がコネクタの被当接面に当接し、支持部材の規制片の突部の外周面がコネクタの撓み片の規制孔の内周面に当接することにより、コネクタの傾きが規制される。
【0007】
コネクタは、支持部材に対して正規位置と端部位置との間を幅方向に移動可能とされており、コネクタは、端部位置にあるときに両規制孔の内周面の一方が突部の外周面と非接触状態となり、一方の規制孔の内周面に替わって規制片の先端外周縁と当接可能となる補助突部を幅方向両側に一対備えている構成としてもよい。
このような構成においてコネクタが正規位置から端部位置に移動すると、両規制孔の内周面の一方が突部の外周面と非接触状態となるものの、これに替わって補助突部が規制片の先端外周縁と当接するから、コネクタの傾きが規制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コネクタが正規の取付方向に対して傾いた姿勢となることを規制しつつ、正規の取付方向とは交差する方向へ移動することを許容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8の図面を参照しながら説明する。本実施形態では、自動車のオートマチックトランスミッションのケース(図示せず)内に配される電気部品1が、ケース(本発明の「相手側部材」の一例)Rを介して外部回路に対して電気的に接続されるものを示す。尚、以下の説明において、幅方向とは図1の矢線方向を基準とし、前後方向とは図2の左右方向を基準として図示左側を前側とし、上下方向とは図1や図2の上下方向を基準とする。
【0010】
ケースRは合成樹脂製のプレートR1を有しており、このプレートR1には、外部回路と接続される外部回路用接続部(図示せず)と、電気部品1と接続される電気部品用接続部(図示せず)とが設けられている。この電気部品用接続部は、図1に示すように、プレートR1の一面(下面)に開口する取付孔(本発明の「所定の装着箇所」の一例)R2の内部に設けられている。また、取付孔R2の開口縁には、外方(図示Z方向下方)に向けて間口が次第に大きくなる傾斜面を有する案内面R3が周設されている。尚、取付孔R2には、次述するコネクタ10が挿入可能である。
【0011】
電気部品1は、コネクタ10と、コネクタ10の下端部に取り付けられたブラケット(本発明の「支持部材」の一例)30とを備えている。コネクタ10は、ブラケット30によって遊動可能に支持された状態となっている。この状態で、電気部品1をケースRに組み付けることにより、コネクタ10がケースRの取付孔R2に取り付けられる。
【0012】
ブラケット30は、金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されている。ブラケット30は、前後方向に延びる平板状の基底部31と、基底部31の前縁から上方に立ち上がる取付片33と、基底部31の幅方向両側縁から上方に立ち上げられて取付片33の両側に対向配置された一対の規制片32とを備えている。
【0013】
取付片33は、その上端部を幅広に形成した第1幅広部33Aと、その第1幅広部33Aよりも下側(基底部31側)に形成された第2幅広部33Bとを備えている。第2幅広部33Bは、第1幅広部33Aよりもやや幅広に設定されており、かつ、上下方向の寸法が第1幅広部33Aよりも長めに設定されている。また、取付片33において第1幅広部33Aの下端と第2幅広部33Bの上端との間は、第1幅広部33Aよりも幅狭に形成された第1幅狭部33Cとされ、取付片33において第2幅広部33Bの下端と連なる部分は、第2幅広部33Bよりも幅狭に形成された第2幅狭部33Dとされている。
【0014】
また、取付片33において第1幅狭部33Cから第2幅狭部33Dにかけての範囲には、抜止孔33Eが取付片33の板厚方向に貫通して形成されている。抜止孔33Eは、その上端側が幅狭に形成されている。
【0015】
規制片32の先端縁部(上端縁部)は、やや後方に突出した形状をなしている。詳細には、規制片32の先端縁部は、その上端を構成する上部水平面32Aと、上部水平面32Aの後端縁から下方に延びる鉛直面と、鉛直面の下端縁から前方に延びて水平面32Aと平行をなす下部水平面32Bと、下部水平面32Bの前端縁から斜め下前方に延びる傾斜面32Cとを備えている。尚、上部水平面32Aと鉛直面と下部水平面32Bと傾斜面32Cとは、本発明の「規制片の先端外周縁」を構成している。
【0016】
規制片32の先端縁部における外側面には、円柱状をなす突部34が幅方向に突出して設けられている。尚、突部34の外周面、上部水平面32A、下部水平面32Bは、本発明の「傾き規制部」の一例である。
【0017】
コネクタ10は上方に開口した円筒状をなす本体部11を有し、本体部11内部における奥端(下端)には、雄タブ(図示せず)が上方に突出して設けられている。本体部11の外周面における上端部には、カム溝12がらせん状に形成されている。一方、電気部品用接続部は回動部材(図示せず)を有し、この回動部材(図示せず)に設けられたカムピン(図示せず)がカム溝12内部に進入可能となっている。このため、コネクタ10を取付孔R2内部に挿入させカムピンをカム溝12内部に進入させた後、回動部材を回動させることによりコネクタ10が取付孔R2の奥方(上方)へ引き込まれる。そして、コネクタ10が取付孔R2内部の正規の挿入位置まで挿入されると、コネクタ10が電気部品用接続部と正規嵌合する。
【0018】
本体部11の外周面においてカム溝12の下方には、ゴム栓取付溝13が周設されている。このゴム栓取付溝13には、ゴムリング40が装着されており、本体部11が取付孔R2内部に挿入されると、ゴムリング40が取付孔R2の内周面とゴム栓取付溝13を構成する周面との間で全周方向に亘って密着した状態となる。このため、取付孔R2の外部から内部に水が浸入することが規制される。
【0019】
本体部11の下端部における前縁には、ブラケット30の取付片33と接続されるブラケット接続部14が垂下形成されている。また、本体部11の下端部における幅方向両側には、平坦な被当接面11Aがそれぞれ形成されている。両被当接面11Aは、コネクタ10がブラケット30に対して遊動可能に装着された状態では両規制片32の上部水平面32Aと当接可能である。
【0020】
ブラケット接続部14は、取付片33の第1幅広部33Aが挿通される第1挿通溝15と、取付片33の第2幅広部33Bが挿通される第2挿通溝16とを備え、第1挿通溝15が第2挿通溝16の上方に配置されている。また、ブラケット接続部14は両挿通溝15,16の前後両側にそれぞれ配置された一対の保護壁17を備えており、これにより両挿通溝15,16が外部の衝撃によって損傷することが規制されている。
【0021】
ブラケット接続部14において第1挿通溝15の上方には、第1幅広部33Aを収容可能とする第1収容空間18Aが形成されている。第1収容空間18Aは、その前後寸法が第1幅広部33Aの前後寸法よりも大きめに設定され、その幅寸法が第1幅広部33Aの幅寸法よりも幅広に設定されている。このため、第1収容空間18A内部に収容された第1幅広部33Aは、両保護壁17間で前後方向及び幅方向に自由に移動可能である。
【0022】
尚、第1収容空間18Aは、保護壁17を略T字形に切り欠くことにより形成された切り欠き部17Aにおいて幅方向に延びる開口部から前方に臨んでいる。この切り欠き部17Aにおいて上下方向に延びる開口部の下端には、保護壁17の板厚方向(前後方向)に撓み可能な係止片19が上方に突出して設けられている。
【0023】
ブラケット接続部14において第1挿通溝15の下端と第2挿通溝16の上端との間には、第2幅広部33Bを収容可能とする第2収容空間18Bが形成されている。第2収容空間18Bは、その前後寸法が第2幅広部33Bの前後寸法よりも大きめに設定され、その幅寸法が第2幅広部33Bの幅寸法よりも幅広に設定されている。このため、第2収容空間18B内部に収容された第2幅広部33Bは、両保護壁17間で前後方向及び幅方向に自由に移動可能である。
【0024】
取付片33において第1幅広部33Aと第2幅広部33Bとの間には、両幅広部33A,33Bよりも幅狭の第1幅狭部33Cが形成されている。第1幅狭部33Cは、第1挿通溝15の両溝部の幅方向内側に配置されており、両保護壁17間で前後方向及び幅方向に自由に移動可能である。また、取付片33において第2幅広部33Bの下方には、第2幅広部33Bよりも幅狭の第2幅狭部33Dが形成されている。第2幅狭部33Dは、第2挿通溝16の両溝部の幅方向内側に配置されており、両保護壁17間で前後方向及び幅方向に自由に移動可能である。
【0025】
コネクタ10のブラケット接続部14がブラケット30の取付片33に取り付けられた状態では、図1に示すように、第1幅広部33Aが第1収容空間18A内に収容され、第1幅狭部33Cが第1挿通溝15の両溝部間に配置され、第2幅広部33Bが第2収容空間18B内に収容され、第2幅狭部33Dが第2挿通溝16の両溝部間に配置されている。このため、コネクタ10は、図1に示す正規位置と、図5に示す端部位置との間で、幅方向に移動することが許容される。また、コネクタ10は、図2に示す正規位置と、図7に示す後端位置及び図8に示す前端位置との間で、前後方向に移動することが許容される。
【0026】
さて、本実施形態では、取付孔R2に挿入されたコネクタ10の軸心と平行をなす軸をZ軸と定義したときに、コネクタ10の軸心がZ軸に対して傾くことを規制しつつ、コネクタ10がZ軸と交差する平面に沿う方向(すなわち幅方向及び前後方向)へ移動することを許容する構成が採られている。以下、この構成について詳細に説明する。
【0027】
本体部11の両被当接面11Aの外縁部には、下方に突出する形態をなす一対の撓み片11Bが形成されている。両撓み片11Bは、幅方向に対向配置されており、幅方向外側に撓み可能である。両撓み片11Bには、幅方向に貫通し前後方向に長い長孔形状をなす一対の規制孔11Cが形成されている。コネクタ10が正規位置にある状態では、図1に示すように、両突部34の先端部が両規制孔11C内に嵌まり込んだ状態となる。尚、規制孔11Cの前後寸法は突部34の直径より大きいため、コネクタ10が、図7に示すように、後端位置へ平行移動することを許容すると共に、図8に示すように、前端位置へ平行移動することを許容する。
【0028】
両突部34の先端部が両規制孔11C内に嵌り込んだ状態で、コネクタ10が左方に傾こうとすると、右側の規制孔11Cの内周面下部が右側の突部34の外周面下部に当接すると共に、左側の規制孔11Cの内周面上部が左側の突部34の外周面上部に当接し、あるいは、左側の被当接面11Aが左側の規制片32の上部水平面32Aに当接する。いずれの当接状態であっても、コネクタ10は、両規制片32に対して幅方向両側で当接した状態に保持されるため、コネクタ10の回転モーメントに対抗しコネクタ10が左方に傾くことが規制される。
【0029】
また、コネクタ10が右方に傾こうとすると、左側の規制孔11Cの内周面下部が左側の突部34の外周面下部に当接すると共に、右側の規制孔11Cの内周面上部が右側の突部34の外周面上部に当接し、あるいは、右側の被当接面11Aが右側の規制片32の上部水平面32Aに当接する。いずれの当接状態であっても、コネクタ10は、両規制片32に対して幅方向両側で当接した状態に保持されるため、コネクタ10の回転モーメントに対抗しコネクタ10が右方に傾くことが規制される。
【0030】
一方、正規位置においてコネクタ10が後方に傾こうとすると、図3に示すように、規制孔11Cの内周面下部が突部34の外周面下部に当接すると共に、被当接面11Aが規制片32の上部水平面32Aの後端に当接する。このように、コネクタ10は、規制片32に対して前後2点の当接部A1,B1で当接した状態に保持されるため、コネクタ10の回転モーメントに対抗しコネクタ10が後方に傾くことが規制される。
【0031】
また、正規位置においてコネクタ10が前方に傾こうとすると、図4に示すように、被当接面11Aが規制片32の上部水平面32Aの前端に当接すると共に、規制孔11Cの内周面下部が突部34の外周面下部に当接する。このように、コネクタ10は、規制片32に対して前後2点の当接部A2,B2で当接した状態に保持されるため、コネクタ10の回転モーメントに対抗しコネクタ10が前方に傾くことが規制される。
【0032】
上述したように正規位置におけるコネクタ10は、前後2点の当接部A1,B1もしくはA2,B2で規制片32の先端縁部に当接する。また、正規位置におけるコネクタ10は、両規制片32の先端縁部が両当接部A1,B1もしくはA2,B2を結ぶ方向(前後方向)とは交差する方向(幅方向)に配置されることで、幅方向両側で両規制片32の先端縁部に当接する。したがって、正規位置におけるコネクタ10は、前後左右に傾くことが規制される。尚、上記の説明はコネクタ10が正規位置にある場合における動作説明であるものの、コネクタ10が前端位置もしくは後端位置に平行移動した場合であっても、前後左右に傾くことが規制されるのはいうまでもなく、正規位置における動作と同様の説明となるためそれらの説明を省略する。
【0033】
次に、コネクタ10が正規位置から図5に示す右側の端部位置へ平行移動した場合には、左側の規制片32の突部34は、左側の撓み片11Bの規制孔11C内に嵌り込んだ状態のままであるものの、右側の規制片32の突部34は、右側の撓み片11Bの規制孔11Cから外れた状態となる。このままでは、コネクタ10が左方に傾く事態が発生してしまう。
【0034】
そこで本願発明では、このような事態を防ぐための措置が施されている。すなわち、コネクタ10において両規制片32の内側には、一対の補助突部20が両規制片32側に突出して設けられ、右側の補助突部20が、図6に示すように、右側の規制片32の下部水平面32Bに当接するようになっている。このとき、詳細には、右側の被当接面11Aが右側の規制片32の上部水平面32Aの前端に当接すると共に、右側の補助突部20の上面が右側の規制片32の下部水平面32Bに当接する。つまり、コネクタ10は、規制片32に対して前後2点の当接部A3,B3で当接した状態に保持されるため、コネクタ10の回転モーメントに対抗しコネクタ10が前方に傾くことが規制されると共に、コネクタ10が左方に傾くことが規制される。尚、コネクタ10が後方及び右方に傾こうとしたときには、左側の規制孔11Cの内周面下部が左側の突部34の外周面下部に当接するため、コネクタ10が後方及び右方に傾くことが規制される。
【0035】
さらに、コネクタ10が左側の端部位置へ平行移動した場合であっても、前後左右に傾くことが規制されるのはいうまでもなく、右側の端部位置における動作と同様であるためその説明を省略する。
【0036】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、コネクタ10をブラケット30に装着する。コネクタ10のブラケット接続部14に対してブラケット30の取付片33を挿入していくと、係止片19が抜止孔33Eに弾性的に嵌り込む。これと併行して、両撓み片11Bが幅方向外側に開き変形しつつ両突部34を乗り越えると、両撓み片11Bが弾性的に復帰して両突部34が両規制孔11C内に嵌り込む。この状態では、第1幅広部33Aが第1収容空間18Aに収容され、第1幅狭部33Cが第1挿通溝15の両溝部間に位置し、第2幅広部33Bが第2収容空間18Bに収容され、第2幅狭部33Dが第2挿通溝16の両溝部間に位置する。さらに、両突部34が前後方向に長い長孔形状をなす両規制孔11C内に位置し、両撓み片11Bの内側面と両規制片32の外側面との間には所定の間隔が確保されているため、コネクタ10は、幅方向及び前後方向に自由に移動することが許容される。
【0037】
ここで、電気部品1をケースRへ組み付ける際の組付環境によっては、電気部品1を種々の方向に傾けながらコネクタ10を取付孔R2の開口縁部へ近づけていく必要がある。このとき、作業者はブラケット30側を持ってケースRへ組み付けを行う必要があり、コネクタ10がブラケット30の陰になって見えない場合がある。そのような場合に、コネクタ10がブラケット30に対して傾いた姿勢となっていると、取付孔R2に対してコネクタ10が傾いた姿勢のまま押し込まれることになり、コネクタ10の先端部が取付孔R2の開口縁部に干渉しコネクタ10の先端部を取付孔R2の内部に差し込むことができなくなる。
【0038】
しかしながら、本実施形態では、コネクタ10がブラケット30に対して傾くことが規制されているから、コネクタ10の軸心が正規の取付方向(Z軸方向)を向いた状態に保持することができ、コネクタ10を取付孔R2に対して芯合わせし易くなっている。具体的には、正規位置にあるコネクタ10は、前側当接部A1,A2において被当接面11Aが規制片32の上部水平面32Aに当接すると共に、後側当接部B1,B2において規制孔11Cの内周面が突部34の外周面に当接しているため、コネクタ10がブラケット30に対して前方及び後方に傾くことが規制される。また、正規位置にあるコネクタ10は、幅方向一方側において被当接面11Aが規制片32の上部水平面32Aに当接すると共に、同他方側において規制孔11Cの内周面が突部34の外周面に当接するから、コネクタ10がブラケット30に対して幅方向に傾くことが規制される。
【0039】
また、右側の端部位置にあるコネクタ10は、前側当接部A3において右側の被当接面11Aが右側の規制片32の上部水平面32Aに当接すると共に、後側当接部B3において右側の補助突部20の上面が右側の規制片32の下部水平面32Bに当接するため、ブラケット30に対して前方に傾くことが規制される。また、右側の端部位置にあるコネクタ10は、左側の被当接面11Aが左側の規制片32の上部水平面32Aに当接し、あるいは、左側の規制孔11Cの内周面が左側の突部34の外周面と当接すると共に、右側の補助突部20の上面が右側の下部水平面32Bに当接するため、ブラケット30に対して右方に傾くことが規制される。尚、右側の端部位置にあるコネクタ10が後方及び左方に傾こうとした場合の動作については正規位置にあるコネクタ10の動作と同様であるためその説明を省略する。また、左側の端部位置にあるコネクタ10の動作については右側の端部位置にあるコネクタ10の動作と同様であるためその説明を省略する。
【0040】
こうして、コネクタ10の芯合わせ作業を行いつつ電気部品1をケースRへ組み付けることにより、コネクタ10を取付孔R2に挿入することができる。このとき、電気部品1をケースRに向けて押し込む力の方向がZ軸方向に対してずれるおそれがあるものの、コネクタ10がブラケット30に対して前後左右に自由に移動することが許容されているから、上記力の方向をZ軸方向に修正可能である。これに加えて、コネクタ10のブラケット30に対する組み付け誤差を吸収することができ、コネクタ10の取付孔R2に対する円滑な挿入動作を確保することができる。
【0041】
さらに、コネクタ10を取付孔R2へ取り付けた後に、ブラケット30側に他の部品等を組み付ける場合がある。このような場合であっても、ブラケット30がコネクタ10に対して前後左右に自由に移動可能となっているから、取付位置の微調整を行うことができ、他の部品等を容易に取り付けることができる。
【0042】
以上のように本実施形態では、コネクタ10を取付孔R2へ挿入する際に、両規制片32の先端縁部が幅方向両側でコネクタ10の下面部に当接し、かつ、各規制片32において規制片32の先端縁部が前後2点の当接部A1〜A3、B1〜B3でコネクタ10に当接するから、コネクタ10が正規の取付方向に対して傾いた姿勢となることが規制される。したがって、コネクタ10の軸心を取付孔R2に一致させて芯合わせする作業が容易になる。また、コネクタ10を取付孔R2に挿入した後においては、ブラケット30側をコネクタ10に対して正規の取付方向と交差する方向へ移動させることができる。したがって、他の部品等をブラケット30側に取り付ける際に、その取付位置の微調整が可能になる。
【0043】
具体的には、ブラケット30の規制片32の上部水平面32Aがコネクタ10の被当接面11Aに当接し、ブラケット30の規制片32の突部34の外周面がコネクタ10の撓み片11Bの規制孔11Cの内周面に当接することにより、コネクタ10の傾きが規制される。また、コネクタ10が端部位置にあるときには、両規制孔11Cの内周面の一方が突部34の外周面と非接触状態となるものの、補助突部20の上面が一方の規制孔11Cの内周面に替わって規制片32の下部水平面32Bと当接することにより、コネクタ10の傾きが規制される。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では本体部11の被当接面11Aと規制孔11Cの内周面とでブラケット30の規制片32の先端縁部と当接するようにしているものの、本発明によると、規制片32の先端縁部に一対の突部34を前後に配置し、両突部34が共に規制孔11Cに嵌り込むようにしてもよいし、両突部34が独立して設けられた一対の規制孔11Cに嵌り込むようにしてもよい。この場合、規制孔11Cの前後寸法を両突部34間の距離よりも長めに設定することにより、コネクタ10の前後方向における自由な移動を確保することができる。
【0045】
(2)本実施形態ではブラケット30の取付片33をコネクタ10のブラケット接続部14に装着することでコネクタ10がブラケット30に対して遊動可能に支持されているものの、本発明によると、取付片33及びブラケット接続部14を設けなくてもよい。すなわち、本体部11の被当接面11Aと規制孔11Cの内周面をブラケット接続部14として機能させ、規制片32の先端縁部を取付片33として機能させてもよい。
【0046】
(3)本実施形態では両撓み片11Bを両規制片32の幅方向外側に配置しているものの、本発明によると、両撓み片11Bを両規制片32の幅方向内側に配置してもよい。
【0047】
(4)本実施形態ではコネクタ10側に補助突部20を設けているものの、本発明によると、ブラケット30側に補助突部を設け、この補助突部と当接可能な被当接面をコネクタ10側に設けてもよい。同様に、本実施形態ではブラケット30側に突部34を設けているものの、本発明によると、コネクタ10の撓み片11B側に突部を設け、この突部と当接可能な被当接面をブラケット30の規制片32の先端縁部に設けてもよい。
【0048】
(5)本実施形態ではコネクタ10が端部位置へ移動したときに一方の突部34が規制孔11Cから外れるようになっているものの、本発明によると、コネクタ10が端部位置へ移動したときでも両突部34が両規制孔11C内に嵌り込んだ状態としてもよく、この場合には、補助突部20を設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態においてコネクタが正規位置にある状態を示した正面図
【図2】そのコネクタが正規位置にある状態を示した一部切り欠き側面図
【図3】その正規位置においてコネクタが後方に傾くことを規制する様子を示した一部切り欠き側面図
【図4】その正規位置においてコネクタが前方に傾くことを規制する様子を示した一部切り欠き側面図
【図5】そのコネクタが端部位置にある状態を示した正面図
【図6】その端部位置においてコネクタが前方に傾くことを規制する様子を示した一部切り欠き側面図
【図7】そのコネクタが後端位置にある状態を示した一部切り欠き側面図
【図8】そのコネクタが前端位置にある状態を示した一部切り欠き側面図
【符号の説明】
【0050】
1…電気部品
10…コネクタ
11A…被当接面
11B…撓み片
11C…規制孔
20…補助突部
30…ブラケット(支持部材)
32…規制片
32A…上部水平面(傾き規制部)
32B…下部水平面(傾き規制部)
33…取付片
34…突部(傾き規制部)
A1〜A3,B1〜B3…当接部
R…ケース(相手側部材)
R2…取付孔(所定の装着箇所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタとこのコネクタを遊動可能に支持する支持部材とを備えた電気部品を相手側部材に組み付けることにより、前記コネクタを前記相手側部材における所定の装着箇所に取り付けるためのコネクタの取付構造であって、
前記所定の装着箇所に取り付けられた前記コネクタの軸心と平行をなす軸をZ軸と定義したときに、
前記支持部材は、前記コネクタと一対の当接部で接する傾き規制部を有し、前記傾き規制部を前記両当接部を結ぶ方向とは交差する方向に一対備えており、
前記両傾き規制部は、前記コネクタの軸心が前記Z軸に対して傾くことを規制しつつ、前記コネクタが前記Z軸と交差する平面に沿う方向へ移動することを許容することを特徴とするコネクタの取付構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記コネクタを遊動可能に支持する取付片と、前記取付片の両側に対向配置された一対の規制片とを備え、前記両規制片の先端縁部に前記両傾き規制部が設けられ、前記両傾き規制部は、前記両規制片の先端外周縁と、前記両規制片の先端縁部から側方に突出する一対の突部の外周面とから構成されているものにおいて、
前記コネクタは、前記両規制片の先端外周縁と当接可能な一対の被当接面と、前記両被当接面から突出して設けられ前記両規制片と対向配置された一対の撓み片と、前記両撓み片に貫通して設けられ前記両突部の外周面と当接可能な内周面を有する一対の規制孔とを備えている請求項1に記載のコネクタの取付構造。
【請求項3】
前記コネクタは、前記支持部材に対して正規位置と端部位置との間を幅方向に移動可能とされており、前記コネクタは、前記端部位置にあるときに前記両規制孔の内周面の一方が前記突部の外周面と非接触状態となり、一方の前記規制孔の内周面に替わって前記規制片の先端外周縁と当接可能となる補助突部を幅方向両側に一対備えている請求項2に記載のコネクタの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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