説明

コネクタ端子への電線の接続方法及び圧着成形型

【課題】設備費を抑えつつ容易に自動化して生産性を向上させることが可能なコネクタ端子への電線の接続方法及び圧着成形型を提供すること。
【解決手段】コネクタ端子10を下型42に配置させ、コネクタ端子10のバレル部21に外被13から芯線12を露出させた電線11の端部を配置させる配置工程と、バレル部21へクリンパ53を押し付けて加締めるとともに、下型42に上型43を重ね合わせ、加締めたバレル部21及び電線11の端部の周囲に射出空間を形成し、射出空間へ樹脂を注入してバレル部21及び電線11の端部を覆う樹脂モールド15を成形する圧着成形工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ端子へ電線を接続する接続方法及び圧着成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーブルの端部に接続されるコネクタ端子に防水性を持たせるために、上下型からなる成形金型の内部に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端末接続部を収容してセットする成型空洞のモールド部が設けられ、モールド部に溶融状態のモールド樹脂を射出注入して端末接続部を被覆成形することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−162647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、圧着接続部分をモールドしたコネクタ端子では、電線を圧着する圧着工程を行った後、圧着機から取り外して成形機へ配置させ、この成形機でモールド樹脂を注入して樹脂モールドを成形する成形工程を行うこととなる。このため、圧着工程及び成形工程をそれぞれ行う別々の設備が必要であり、設備費が嵩んでしまう。また、このように、別々の設備で圧着工程及び成形工程を行う場合、自動化による生産性の向上が困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、設備費を抑えつつ容易に自動化して生産性を向上させることが可能なコネクタ端子への電線の接続方法及び圧着成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子への電線の接続方法は、下記(1)を特徴としている。
(1) 電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手端子と導通されるタブ端子部とを備え、前記バレル部と前記電線の端部との接続箇所が、樹脂モールドによって覆われて防水されるコネクタ端子における前記電線の接続方法であって、
前記コネクタ端子を下型に配置させ、前記コネクタ端子の前記バレル部に外被から導体を露出させた前記電線の端部を配置させる配置工程と、
前記バレル部へクリンパを押し付けて加締めるとともに、前記下型に上型を重ね合わせ、加締めた前記バレル部及び前記電線の端部の周囲に射出空間を形成し、前記射出空間へ樹脂を注入して前記バレル部及び前記電線の端部を覆う前記樹脂モールドを成形する圧着成形工程と、
を含むこと。
【0007】
上記(1)のコネクタ端子への電線の接続方法では、電線の圧着及び樹脂モールドの成形を同一工程で行うので、電線を圧着させたコネクタ端子を移動させるような煩雑な作業を省くことができ、作業の簡略化を図ることができる。また、電線の圧着と樹脂モールドの成形を、圧着機と成形機とで別々に行う場合と比較して、設備費の低減を図ることができ、また、容易に自動化して生産性の向上を図ることができる。
【0008】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る圧着成形型は、下記(2)を特徴としている。
(2) 電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手端子と導通されるタブ端子部とを備え、前記バレル部と前記電線の端部との接続箇所が、樹脂モールドによって覆われて防水されるコネクタ端子へ前記電線を接続する際に用いられる圧着成形型であって、
前記コネクタ端子を収容する端子収容凹部を有する下型と、
前記端子収容凹部に収容され、外被から導体が露出された前記電線の端部が前記バレル部に配置された前記コネクタ端子の前記バレル部を押圧して加締めるクリンパを備え、前記下型に重ね合わされることにより、前記バレル部及び前記電線の端部の周囲に、樹脂を注入可能な射出空間を形成する上型と、
を備えること。
【0009】
上記(2)の構成の圧着成形型では、電線の圧着及び樹脂モールドの成形を同一工程で容易に行うことができ、電線を圧着させたコネクタ端子を移動させるような煩雑な作業を省いて、作業の簡略化を図ることができる。また、電線の圧着と樹脂モールドの成形を、圧着機と成形機とで別々に行うものと比較して、設備費の低減を図ることができ、また、容易に自動化して生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設備費を抑えつつ容易に自動化して生産性を向上させることが可能なコネクタ端子への電線の接続方法及び圧着成形型を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コネクタ端子の側面図である。
【図2】樹脂モールドが設けられたコネクタ端子の側面図である。
【図3】本実施形態に係る圧着成形型の斜視図である。
【図4】圧着成形型を用いたコネクタ端子への電線の接続の工程を説明する図であって、図4(a)から図4(e)は、それぞれ圧着成形型の斜視図である。
【図5】圧着成形型の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、コネクタ端子の側面図、図2は、樹脂モールドが設けられたコネクタ端子の側面図、図3は、本実施形態に係る圧着成形型の斜視図、図4は、圧着成形型を用いたコネクタ端子への電線の接続の工程を説明する図であって、図4(a)から図4(e)は、それぞれ圧着成形型の斜視図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る接続方法によって電線11が接続されるコネクタ端子10は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工することにより形成されたもので、バレル部21及びタブ端子部31を有している。
【0016】
このコネクタ端子10が接続される電線11は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線(導体)12と、この芯線12の周囲に押出し被覆された外被13とを有している。
【0017】
バレル部21は、芯線圧着部22と、外被圧着部23とを有している。芯線圧着部22は、電線11の端部で露出された芯線12を圧着する。これにより、電線11の芯線12とコネクタ端子10とが導通接続される。また、外被圧着部23は、電線11の端部における外被13部分を圧着する。これにより、電線11の外被13部分がコネクタ端子10に固定される。
【0018】
また、コネクタ端子10は、バレル部21及び電線11の端部の周囲が樹脂モールド15で覆われている。このように、コネクタ端子10では、バレル部21と電線11との接続箇所が樹脂モールド15で覆われるので、電線11の接続箇所が確実に防水される。本例のように、銅または銅合金からなるコネクタ端子10に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線12を有する電線11を接続すると、接続箇所が被水することによる異種金属接触腐食などの電食が生じやすいが、接続箇所が樹脂モールド15で覆われているので、接続箇所における高い耐食性を得ることができる。
【0019】
次に、上記のコネクタ端子10へ電線11を接続する圧着成形型について説明する。
【0020】
本実施形態では、図3に示すように、圧着成形型41を用いてコネクタ端子10へ電線11を接続する。この圧着成形型41は、下型42と、この下型42に重ね合わされる上型43とを有している。
【0021】
下型42には、端子収容凹部45が形成されている。また、下型42における一端側には、端子収容凹部45に連通する電線収容溝部46が形成されている。下型42の端子収容凹部45は、電線収容溝部46側がモールド成形室47とされており、このモールド成形室47側にバレル部21を配置した状態でコネクタ端子10が収容可能とされている。
【0022】
上型43は、下型42に対して昇降可能とされている。この上型43には、下型42に形成された端子収容凹部45のモールド成形室47と連通するゲート孔51を有している。
【0023】
また、この上型43には、表裏に貫通する平面視矩形状の連通孔52が形成されており、この連通孔52には、クリンパ53が挿通可能とされている。即ち、上型43は、クリンパ53を備えている。クリンパ53は、下型42側の面に、クリンパ部54が形成されている。また、上型43には、電線収容溝部46と対向する位置に電線保持溝部55が形成されている。
【0024】
そして、この上型43は、その連通孔52にクリンパ53を挿入して収容した状態で下型42に重ね合わせると、モールド成形室47の上方側が塞がれ、よって、圧着成形型41に射出空間が形成される。
【0025】
次に、上記の圧着成形型41を用いてコネクタ端子10に電線11を接続する場合について説明する。
【0026】
(配置工程)
まず、図4(a)に示すように、下型42の端子収容凹部45にコネクタ端子10を収容し、このコネクタ端子10のバレル部21に、芯線12を露出させた電線11の端部を配置させる。
【0027】
(圧着成形工程)
この状態で、図4(b)に示すように、クリンパ53を下降させ、このクリンパ53を、端子収容凹部45のコネクタ端子10のバレル部21へ押圧させる。すると、このクリンパ53のクリンパ部54によってバレル部21が電線11に加締められ、バレル部21に電線11が接続される。さらに、図4(c)に示すように、上型43を下降させる。このとき、クリンパ53は、上型43に干渉することなく、上型43に形成された連通孔52に入り込む。そして、図4(d)に示すように、上型43を下型42に重ね合わせる。これにより、上型43の連通孔52がクリンパ53によって閉塞された状態となる。
【0028】
そして、このように、下型42に上型43を重ね合わせると、端子収容凹部45が塞がれるとともに、モールド成形室47とクリンパ53とで射出空間が形成される。
【0029】
また、電線11は、下型42の電線収容溝部46と上型43の電線保持溝部55とで隙間なく保持される。
【0030】
この状態で、射出空間内へゲート孔51から溶融状態の樹脂を射出して注入し、所定時間の経過後、樹脂が硬化したら、図4(e)に示すように、クリンパ53とともに上型43を上昇させる。
【0031】
(脱型工程)
その後、電線11が接続され、バレル部21と電線11との接続箇所が樹脂モールド15によって覆われたコネクタ端子10を下型42の端子収容凹部45から取り外す。
【0032】
以上、説明したように、本実施形態によれば、電線11の圧着及び樹脂モールド15の成形を同一工程で行うので、電線11を圧着させたコネクタ端子10を移動させるような煩雑な作業を省くことができ、作業の簡略化を図ることができる。また、電線11の圧着と樹脂モールド15の成形を、圧着機と成形機とで別々に行う場合と比較して、設備費の低減を図ることができ、また、容易に自動化して生産性の向上を図ることができる。
【0033】
なお、上記の実施形態では、圧着成形型41を構成する上型43に、樹脂の注入用のゲート孔51を形成したが、図5に示すように、ゲート孔51は、下型42に形成しても良い。
【0034】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0035】
10 コネクタ端子
11 電線
12 芯線(導体)
13 外被
15 樹脂モールド
21 バレル部
31 タブ端子部
41 圧着成形型
42 下型
43 上型
53 クリンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手端子と導通されるタブ端子部とを備え、前記バレル部と前記電線の端部との接続箇所が、樹脂モールドによって覆われて防水されるコネクタ端子における前記電線の接続方法であって、
前記コネクタ端子を下型に配置させ、前記コネクタ端子の前記バレル部に外被から導体を露出させた前記電線の端部を配置させる配置工程と、
前記バレル部へクリンパを押し付けて加締めるとともに、前記下型に上型を重ね合わせ、加締めた前記バレル部及び前記電線の端部の周囲に射出空間を形成し、前記射出空間へ樹脂を注入して前記バレル部及び前記電線の端部を覆う前記樹脂モールドを成形する圧着成形工程と、
を含むことを特徴とするコネクタ端子への電線の接続方法。
【請求項2】
電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手端子と導通されるタブ端子部とを備え、前記バレル部と前記電線の端部との接続箇所が、樹脂モールドによって覆われて防水されるコネクタ端子へ前記電線を接続する際に用いられる圧着成形型であって、
前記コネクタ端子を収容する端子収容凹部を有する下型と、
前記端子収容凹部に収容され、外被から導体が露出された前記電線の端部が前記バレル部に配置された前記コネクタ端子の前記バレル部を押圧して加締めるクリンパを備え、前記下型に重ね合わされることにより、前記バレル部及び前記電線の端部の周囲に、樹脂を注入可能な射出空間を形成する上型と、
を備えることを特徴とする圧着成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−43378(P2013−43378A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182992(P2011−182992)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】