説明

コネクタ端子

【課題】コネクタハウジングを小型化することができると共に、係止ランスによる保持力を向上することができるコネクタ端子を提供する。
【解決手段】コネクタハウジング3の端子収容室5に収容され、端子収容室5内に撓み可能に設けられた係止ランス7と係合され、端子収容室5の開口9側に配置され筒状に設けられた接続部11と、この接続部11に設けられ係止ランス7の係合突部13が挿入され係合突部13に係合される被係合口15とを有するコネクタ端子1において、被係合口15に、接続部11が端子収容室5から抜ける方向に移動されたときに係止ランス7の係合突部13に当接され、係合突部13が被係合口15から挿入解除方向へ移動することを規制する規制手段17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタハウジングの端子収容室に収容され、端子収容室内に撓み可能に設けられた係止ランスと係合されるコネクタ端子としては、端子収容室としてのキャビティの開口側に配置され筒状に設けられた接続部と、この接続部に設けられ係止ランスの係合突部としての係止部が挿入され係止部に係合される被係止部が設けられた被係合口としての係止孔とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このコネクタ端子では、接続部の外面にキャビティの内壁に設けられた挿通溝を通してコネクタ端子の挿入動作を案内するスタビライザが突設されている。そして、係止ランスの係止部は、接続部の被係止部をほぼ全幅に亘って係止可能に設けられ、この係止部より後方でかつ係止部と幅方向に重なる部分には、挿通溝と連通してスタビライザの突入を許容する逃し凹部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−259363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなコネクタ端子では、コネクタハウジングの係止ランスの係止部がコネクタ端子の接続部の被係止部をほぼ全幅に亘って係止可能に設けられるなど、比較的係止ランスの周囲にスペースがある場合に有効である。
【0006】
しかしながら、コネクタハウジングの小型化を進める場合、係止ランスの周囲にスペースを確保することができない、もしくは係止ランス自体が小型化されるなど、係止ランスによるコネクタ端子の保持力が低下する恐れがあった。
【0007】
そこで、この発明は、コネクタハウジングを小型化することができると共に、係止ランスによる保持力を向上することができるコネクタ端子の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、コネクタハウジングの端子収容室に収容され、前記端子収容室内に撓み可能に設けられた係止ランスと係合されるコネクタ端子であって、前記端子収容室の開口側に配置され筒状に設けられた接続部と、この接続部に設けられ前記係止ランスの係合突部が挿入され前記係合突部に係合される被係合口とを有し、前記被係合口には、前記接続部が前記端子収容室から抜ける方向に移動されたときに前記係止ランスの係合突部に当接され、前記係合突部が前記被係合口から挿入解除方向へ移動することを規制する規制手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
このコネクタ端子では、被係合口に接続部が端子収容室から抜ける方向に移動されたときに係止ランスの係合突部に当接され、係合突部が被係合口から挿入解除方向へ移動することを規制する規制手段が設けられているので、コネクタ端子に端子収容室から抜ける方向の外力が加わったとしても、係合突部と被係合口との係合が解除されることがなく、係止ランスによるコネクタ端子の保持力を向上することができる。
【0010】
従って、コネクタハウジングの係止ランスにコネクタ端子の保持力を向上する構造を必要とすることがなく、コネクタハウジングを小型化することができると共に、係止ランスによる保持力を向上することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコネクタ端子であって、前記規制手段は、前記被係合口の縁部が鋭角に形成され前記係止ランスの係合突部に食い込む鋭角部を有することを特徴とする。
【0012】
このコネクタ端子では、規制手段が被係合口の縁部が鋭角に形成され係止ランスの係合突部に食い込む鋭角部を有するので、コネクタ端子に端子収容室から抜ける方向の外力が加わると、鋭角部が係合突部により食い込まれ、係合突部と被係合口との係合解除を防止することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のコネクタ端子であって、前記規制手段は、前記筒状の接続部の外部に向けて突設された突出部を有することを特徴とする。
【0014】
このコネクタ端子では、規制手段が筒状の接続部の外部に向けて突設された突出部を有するので、係止ランスの係合突部が被係合口から挿入解除方向へ移動しようとしても、突出部が位置されて係合突部に当接され、係合突部と被係合口との係合解除を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コネクタハウジングを小型化することができると共に、係止ランスによる保持力を向上することができるコネクタ端子を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係るコネクタ端子が収容されるコネクタハウジングの正面図である。(b)は図1(a)のA−A断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態に係るコネクタ端子が雌コネクタ端子であるときの斜視図である。(b)は図2(a)の正面図である。(c)は図2(b)のB−B断面図である。
【図3】(a)は本発明の第1実施形態に係るコネクタ端子が雄コネクタ端子であるときの斜視図である。(b)は図3(a)の正面図である。(c)は図3(b)のC−C断面図である。
【図4】(a)は図2(c)のD−D断面図である。(b)は本発明の第1実施形態に係るコネクタ端子の要部断面図である。
【図5】(a)は本発明の第1実施形態に係るコネクタ端子をコネクタハウジングに収容したときの断面図である。(b)は本発明の第1実施形態に係るコネクタ端子が端子収容室から抜ける方向に移動されたときの断面図である。
【図6】(a)は本発明の第2実施形態に係るコネクタ端子の要部断面図である。(b)は本発明の第2実施形態に係るコネクタ端子が端子収容室から抜ける方向に移動されたときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図6を用いて本発明の実施の形態に係るコネクタ端子について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1〜図5を用いて第1実施形態について説明する。
【0019】
本実施の形態に係るコネクタ端子1は、コネクタハウジング3の端子収容室5に収容され、端子収容室5内に撓み可能に設けられた係止ランス7と係合される。
【0020】
また、コネクタ端子1は、端子収容室5の開口9側に配置され筒状に設けられた接続部11と、この接続部11に設けられ係止ランス7の係合突部13が挿入され係合突部13に係合される被係合口15とを有する。
【0021】
そして、被係合口15には、接続部11が端子収容室5から抜ける方向に移動されたときに係止ランス7の係合突部13に当接され、係合突部13が被係合口15から挿入解除方向へ移動することを規制する規制手段17が設けられている。
【0022】
また、規制手段17は、被係合口15の縁部が鋭角に形成され係止ランス7の係合突部13に食い込む鋭角部19を有する。
【0023】
なお、ここでは、後述する雌コネクタ端子1aと雄コネクタ端子1bのうち雌コネクタ端子1aを用いることとし、雌コネクタ端子1aをコネクタ端子1として説明する。
【0024】
図1に示すように、コネクタハウジング3は、端子収容室5と、一対の端子支持部21,23と、係止ランス7とを備えている。端子収容室5は、コネクタハウジング3の長さ方向に延設されており、挿入口25側からコネクタ端子1が挿入され、開口9側にコネクタ端子1の接続部11側が配置される。この端子収容室5にコネクタ端子1を収容することによって、コネクタハウジング3を相手ハウジング(不図示)と嵌合することにより、開口9側の接続部挿入口27から相手端子となる雄コネクタ端子1bのタブ51(図3参照)が挿通され、コネクタ端子1の接続部11と相手端子とが接続される。このような端子収容室5に収容されたコネクタ端子1の接続部11側は、一対の端子支持部21,23によって支持される。
【0025】
一対の端子支持部21,23は、端子収容室5の両側壁29,31から互いに近接するように端子収容室5の幅方向に延設されると共に、開口9側から係止ランス7に向けて端子収容室5の長さ方向に延設されている。この一対の端子支持部21,23は、端子収容室5内にコネクタ端子1が収容された状態で、コネクタ端子1の接続部11側の幅方向両側の下面を支持する。このような一対の端子支持部21,23よりも挿入口25側には、係止ランス7が設けられている。
【0026】
係止ランス7は、下面33と端子収容室5の内壁面35との間に形成された可撓空間37に撓み可能に設けられている。また、係止ランス7には、撓み方向の上方に突出してランス係止面39が形成された係合突部13が設けられている。この係止ランス7は、挿入口25側から端子収容室5内にコネクタ端子1が収容されたときに、傾斜面41がコネクタ端子1の先端部と当接することによって下方に撓まされる。この状態からコネクタ端子1を開口9側に向けて挿入し、コネクタ端子1の接続部11側が一対の端子支持部21,23によって支持されたときに、係止ランス7が上方に復元する。このとき、係合突部13がコネクタ端子1の被係合口15に挿入され、コネクタ端子1の端子収容室5からの抜けが防止される。
【0027】
図2,図3に示すように、コネクタ端子1は、導電性材料からなり、雌コネクタ端子1aと雄コネクタ端子1bとを有し、電線固定部43と接続部11と被係合口15とを備えている。電線固定部43は、雌コネクタ端子1aと雄コネクタ端子1b共に、被覆電線(不図示)の芯線が導通して加締められる芯線固定部45と、被覆電線の被覆部を加締めて被覆電線を固定する被覆固定部47とを有する。この電線固定部43に被覆電線が固定されることにより、被覆電線に接続された電子部品(不図示)などとコネクタ端子1とが電気的に接続される。
【0028】
接続部11は、四角形状の角筒状に形成され、雌コネクタ端子1aは内部に弾性変形可能なバネ49を有し、雄コネクタ端子1bはコネクタハウジング3の接続部挿入口27に挿入可能なタブ51を有する。この接続部11は、雌コネクタ端子1aの接続部11内に雄コネクタ端子1bのタブ51を挿入させることにより、タブ51にバネ49が弾性的に接触され、雌コネクタ端子1aと雄コネクタ端子1bとが電気的に接続される。このような接続部11には、コネクタ端子1を端子収容室5内に係止させるためのランスホールからなる被係合口15が設けられている。
【0029】
なお、以下では、雌コネクタ端子1aをコネクタ端子1として被係合口15について説明するが、雄コネクタ端子1bをコネクタ端子1とした場合でも雄コネクタ端子1bの被係合口15は雌コネクタ端子1aと同様に機能し、得られる効果は同様である。
【0030】
図4,図5に示すように、被係合口15は、接続部11の壁部53に接続部11の内部と外部とを連通するように設けられている。この被係合口15は、係止ランス7の係合突部13が挿入され、コネクタ端子1に挿入口25側に向けて端子収容室5から抜ける方向に外力が加わると、被係合口15の縁部が係合突部13のランス係止面39に当接され、コネクタ端子1の端子収容室5からの抜けを防止する。このような被係合口15の縁部には、規制手段17が設けられている。
【0031】
規制手段17は、係合突部13のランス係止面39に当接される被係合口15の縁部が鋭角に形成された鋭角部19を有する。この鋭角部19は、コネクタ端子1の接続部11が端子収容室5から抜ける方向に移動されたときに係合突部13のランス係止面39に食い込む。この鋭角部19のランス係止面39への食い込みにより、係合突部13が被係合口15から挿入解除方向へ移動すること規制することができ、係合突部13と被係合口15との係合解除を防止することができる。
【0032】
ここで、被係合口15のランス係止面39に当接される縁部が無加工、あるいは面取り程度の加工であるようなフラット形状である場合、コネクタ端子1に挿入口25側に向けて端子収容室5から抜ける方向に外力が加わったとき、被係合口15の縁部では水平方向、もしくは上方向(接続部11の内部方向)の角度をもってせん断が開始される。このため、鋭角部19は、被係合口15の縁部において下面側の端部が鋭角に形成されており、せん断の開始によって鋭角部19がランス係止面39に食い込み、係合突部13のより深い部分に鋭角部19を食い込ませることができる。この鋭角部19により、係合突部13が被係合口15に挿入された状態で、被係合口15の縁部と係合突部13のランス係止面39とのせん断距離を長くすることができ、せん断強度を向上、すなわち係止ランス7によるコネクタ端子1の保持力を向上することができる。
【0033】
なお、係止ランス7の係合突部13とコネクタ端子1の被係合口15との係合解除は、まず、図5(b)に示す鋭角部19が係合突部13に食い込んだ状態からコネクタ端子1を開口9側に移動させ、図5(a)に示す鋭角部19の係合突部13への食い込みを解除した状態とさせる。次に、コネクタハウジング3の開口9側に設けられた治具挿入口55から解除治具(不図示)を挿入し、係止ランス7の先端部に設けられた治具解除部57に解除治具を当接して係止ランス7を下方に撓ませる。この係止ランス7の下方への撓みにより、係合突部13と被係合口15との係合が解除され、端子収容室5からコネクタ端子1を取り出すことができる。
【0034】
このようなコネクタ端子1では、被係合口15に接続部11が端子収容室5から抜ける方向に移動されたときに係止ランス7の係合突部13に当接され、係合突部13が被係合口15から挿入解除方向へ移動することを規制する規制手段17が設けられているので、コネクタ端子1に端子収容室5から抜ける方向の外力が加わったとしても、係合突部13と被係合口15との係合が解除されることがなく、係止ランス7によるコネクタ端子1の保持力を向上することができる。
【0035】
従って、コネクタハウジング3の係止ランス7にコネクタ端子1の保持力を向上する構造を必要とすることがなく、コネクタハウジング3を小型化することができると共に、係止ランス7による保持力を向上することができる。
【0036】
また、規制手段17は、被係合口15の縁部が鋭角に形成され係止ランス7の係合突部13に食い込む鋭角部19を有するので、コネクタ端子1に端子収容室5から抜ける方向の外力が加わると、鋭角部19が係合突部13により食い込まれ、係合突部13と被係合口15との係合解除を防止することができる。
【0037】
(第2実施形態)
図6を用いて第2実施形態について説明する。
【0038】
本実施の形態に係るコネクタ端子101は、規制手段103は、筒状の接続部11の外部に向けて突設された突出部105を有する。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、得られる効果は同一である。
【0039】
図6に示すように、規制手段103は、係合突部13のランス係止面39に当接される被係合口15の縁部が筒状の接続部11の外部に向けて突設された突出部105を有する。この突出部105の突出方向は、係止ランス7の係合突部13の被係合口15に対する挿入解除方向となっている。ここで、係合突部13と被係合口15の縁部との間では、上述したように、コネクタ端子101に挿入口25側に向けて端子収容室5から抜ける方向に外力が加わったとき、水平方向、もしくは上方向(接続部11の内部方向)の角度をもってせん断が開始される。このため、突出部105は、接続部11の外部に向けて突出されているので、せん断の開始によって突出部105の先端がランス係止面39に食い込み、係合突部13のより深い部分に突出部105の先端を食い込ませることができる。この突出部105により、係止ランス7によるコネクタ端子101の保持力を向上することができる。
【0040】
このようなコネクタ端子101では、規制手段103が筒状の接続部11の外部に向けて突設された突出部105を有するので、係止ランス7の係合突部13が被係合口15から挿入解除方向へ移動しようとしても、突出部105が位置されて係合突部13に当接され、係合突部13と被係合口15との係合解除を防止することができる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態に係るコネクタ端子では、規制手段の突出部の先端がフラット形状となっているが、突出部の先端を鋭角に形成して鋭角部を設けてもよい。この場合には、コネクタ端子に端子収容室から抜ける方向に外力が加わったとき、突出部の先端の鋭角部が係止ランスの係合突部により食い込み、係止ランスによるコネクタ端子の保持力をさらに向上することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,101…コネクタ端子
3…コネクタハウジング
5…端子収容室
7…係止ランス
9…開口
11…接続部
13…係合突部
15…被係合口
17,103…規制手段
19…鋭角部
105…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの端子収容室に収容され、前記端子収容室内に撓み可能に設けられた係止ランスと係合されるコネクタ端子であって、
前記端子収容室の開口側に配置され筒状に設けられた接続部と、この接続部に設けられ前記係止ランスの係合突部が挿入され前記係合突部に係合される被係合口とを有し、
前記被係合口には、前記接続部が前記端子収容室から抜ける方向に移動されたときに前記係止ランスの係合突部に当接され、前記係合突部が前記被係合口から挿入解除方向へ移動することを規制する規制手段が設けられていることを特徴とするコネクタ端子。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタ端子であって、
前記規制手段は、前記被係合口の縁部が鋭角に形成され前記係止ランスの係合突部に食い込む鋭角部を有することを特徴とするコネクタ端子。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコネクタ端子であって、
前記規制手段は、前記筒状の接続部の外部に向けて突設された突出部を有することを特徴とするコネクタ端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199069(P2012−199069A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62388(P2011−62388)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】