説明

コネクタ

【課題】検知部材が検知位置に到達したことを確実に判別できるようにする。
【解決手段】第1ハウジング10の外面に、待機位置にある検知部材30の後端部を露出させる覆い部13を形成し、覆い部13に、覆い部13の外面に露出した形態であって、検知部材30の移動方向と交差する方向に弾性撓み可能な可撓検知部21を形成し、検知部材30に、検知部材30が待機位置から検知位置側へ移動する過程では可撓検知部21を弾性撓みさせ、検知部材30が検知位置に到達するのに伴い可撓検知部21を弾性復帰させる干渉部37を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1ハウジングと第2ハウジングが正規に嵌合されたか否かを検知するための検知部材を備えたコネクタが開示されている。検知部材は、第1ハウジングに取り付けられ、待機位置と検知位置との間で前後方向にスライドできるようになっている。両ハウジングが正規嵌合に到達しない半嵌合の状態では、検知部材は待機位置から検知位置への移動を規制され、両ハウジングが正規の嵌合状態に到達すると、検知部材が待機位置から検知位置への移動を許容される。これにより、検知部材が検知位置へ移動し得るか否かに基づいて、両ハウジングの嵌合状態を検知するようになっている。
【特許文献1】特開2006−253073公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のコネクタでは、検知部材が待機位置と検知位置のいずれに位置していても、検知部材の全体が第1ハウジングの外面に露出した状態となっていて、検知部材を常に目視で確認することができるようになっている。そのため、一見すると検知部材の位置を判別し易いように思われるのであるが、検知部材が待機位置と検知位置のいずれの位置にあっても、見かけ上検知部材の形状や大きさは変化しないため、検知部材の位置を瞬時に判別することは難しい。
【0004】
この対策としては、第1ハウジングに検知部材の一部を覆い隠すための覆い部を設ける構造が考えられる。この構造によれば、検知部材の見かけ上の形状と大きさが、待機位置にあるときと検知位置にあるときとで変化するので、検知部材の位置の判別をし易くなることが期待される。
【0005】
しかしながら、コネクタが小型化された場合には、それに伴って検知部材の移動距離も小さくなるため、見かけ上の検知部材の形状と大きさの変化は僅かとなってしまう。このような僅かな変化の有無を目視確認することは困難であるため、検知部材の位置は、依然として判別し難いといえる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、検知部材が検知位置に到達したことを確実に判別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、第1ハウジングと、前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、前記第1ハウジングに設けられ、待機位置と、前記待機位置よりも前方の検知位置との間での移動を可能とされており、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合途中の状態では、前記検知部材が前記待機位置から前記検知位置への移動を規制され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが正規の嵌合状態に至ると、前記検知部材が前記待機位置から前記検知位置への移動を許容されるようになっているコネクタにおいて、前記第1ハウジングの外面には、前記検知部材が前記待機位置にある状態では前記検知部材の少なくとも後端部を露出させ、且つ前記検知部材が前記検知位置にある状態では前記検知部材の少なくとも一部を覆い隠す覆い部が形成され、前記覆い部には、前記覆い部の外面に露出した形態であって、前記検知部材の移動方向と交差する方向に弾性撓み可能な可撓検知部が形成され、前記検知部材には、前記検知部材が前記待機位置から前記検知位置に向かって移動する過程では前記可撓検知部を当接させることにより弾性撓みさせ、前記検知部材が前記検知位置に到達するのに伴い前記可撓検知部を弾性復帰させる干渉部が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記検知部材が前記検知位置にある状態では、前記検知部材の後端が、前後方向において前記覆い部の後端と同じ位置又は前記覆い部の後端よりも前方の位置に配されるようになっているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、幅方向における前記覆い部の形成領域が、前記検知部材をその全幅に亘って覆う範囲となっており、前記覆い部には、前記検知部材が前記検知位置にある状態で前記覆い部内の前記検知部材の一部を露出させる切欠部が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記切欠部が、前記覆い部の後端から前方へ切欠したスリット状の形態であって、幅方向に間隔を空けて対をなすように配されており、前記対をなす切欠部の間の部分が、前記可撓検知部となっているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記検知部材が前記検知位置へ移動して前記可撓検知部が弾性復帰した状態では、前記干渉部が前記可撓検知部に対して前方から係止することにより、前記検知部材の前記待機位置側への移動が規制されるようになっているところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のものにおいて、前記検知部材の後端部には、前記干渉部よりも後方の位置に配され、後方からの押圧操作を可能とする操作部が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
検知部材が待機位置と検知位置のうちいずれの位置にあるかについては、検知部材のうち覆い部の後端から露出する部分の前後長に基づいて判別することができる。さらに、検知部材が待機位置から前方へ移動して検知位置に到達する過程では、可撓検知部が一旦弾性撓みした後に弾性復帰するという動作を、目視確認することができるので、検知部材が検知位置に到達したことを確実に判別することができる。
【0013】
<請求項2の発明>
検知部材が待機位置にある状態では、検知部材の少なくとも後端部が覆い部から露出しているのに対し、検知部材が検知位置に移動すると、検知部材の後端部が覆い部内に潜り込んで露出しない状態となるので、検知部材の後端部を目視し得るか否かに基づいて、検知部材の位置を判別することができる。
【0014】
<請求項3の発明>
検知部材が検知位置に移動して覆い部内に潜り込んだ状態では、覆い部の外部から切欠部を通して検知部材の一部を目視確認できるので、検知部材が第1ハウジングに取り付けられていない状態との識別を行うことが可能である。
【0015】
<請求項4の発明>
可撓検知部を形成するためのスリットが、切欠部としての機能を兼ね備えているので、可撓検知部を形成するためのスリットとは別に切欠部を形成する場合に比べると、覆い部の形状の簡素化を図ることができる。
【0016】
<請求項5の発明>
可撓検知部と干渉部とは、検知部材の待機位置側への移動を規制するロック機能を兼ね備えているので、専用のロック手段を設ける場合に比べると、第1ハウジングや検知部材の形状の簡素化を図ることができる。
【0017】
<請求項6の発明>
操作部を干渉部よりも後方に配置したので、後方から操作部に対して押圧操作を行うときに、干渉部や可撓検知部が操作の妨げになる虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図15を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、互いに嵌合・離脱が可能な第1ハウジング10と第2ハウジング50とを備えて構成され、検知部材30により、両ハウジング10,50が正規の嵌合状態に至っているか否かを検知することができるようになっている。
【0019】
第1ハウジング10は、合成樹脂製であり、端子収容部11と、端子収容部11における略前半領域を全周に亘って包囲する筒形嵌合部12とを一体に形成したものである。筒形嵌合部12は、その後端部において端子収容部11の外周に連なり、第1ハウジング10の前方(図1〜8における左方)へ突出した形態となっている。端子収容部11内には後方から周知形態の雌端子金具(図示せず)が挿入されている。
【0020】
筒形嵌合部12を構成する周壁部のうち上面壁は、その全体が水平な板状をなす覆い部13となっている。また、覆い部13の左右両側縁と端子収容部11の外周との間には、左右一対の側壁14が形成されている。端子収容部11の上面と覆い部13と左右両側壁14とによって囲まれた空間は、前後両端が開放された収容空間15となっている。また、第1ハウジング10には、端子収容部11内において前後方向(検知部材30の移動方向と平行な方向)に延びるガイド突部16が、上方へ突出した形態で形成されている。
【0021】
収容空間15内には、ガイド突部16の前端から前方へ片持ち状に延出した形態のロックアーム17が形成されている。ロックアーム17は、その前端部に上下に貫通するロック孔18が形成されており、後端部(ガイド突部16の前端)を略支点として上下方向(両ハウジング10,50の嵌合方向と交差する方向)へ弾性撓みすることが可能となっている。
【0022】
覆い部13には、その左右両端縁(側壁14部)に沿って覆い部13の後端縁から前方へ直線状に切欠した形態の左右対称な一対のスリット状をなす第1切欠部19と、覆い部13の両端縁(側壁14部)に近い位置において覆い部13の後端縁から前方へ第1切欠部19と平行に直線状に切欠した形態の左右対称な一対のスリット状をなす第2切欠部20とが形成されている。この第1切欠部19と第2切欠部20は、いずれも、覆い部13の上面(外面)から下面(収容空間15に臨む内面)まで貫通されている。第1切欠部19と第2切欠部20の前後方向の寸法は、互いにほぼ同じ寸法であって、覆い部13の全長のほぼ1/3の寸法である。
【0023】
覆い部13のうち第1切欠部19と第2切欠部20との間の前後方向に細長い領域は、後方へ片持ち状に延出した形態であって、上下方向(検知部材30の移動方向と交差する方向)へ弾性撓み可能な可撓検知部21となっている。可撓検知部21は、弾性撓みしない自由状態では、検知部材30の移動方向と平行をなしている。可撓検知部21の下面(収容空間15に臨む面)には、その後端部から下方へ突出した形態の係止突起22が形成されている。
【0024】
また、覆い部13のうち一対の第2切欠部20の間の領域は、略方形をなすとともに後方へ片持ち状に延出した形態の庇部23となっている。庇部23の厚さ寸法(上下寸法)は、可撓検知部21の板厚寸法と係止突起22の突出寸法とを併せた寸法であり、殆ど弾性撓みを生じないような高い剛性を有している。また、庇部23の後端縁は、可撓検知部21の後端縁に対して面一状をなすように並んでいる。
【0025】
第1ハウジング10には検知部材30が取り付けられている。検知部材30は、合成樹脂製であり、全体として水平に向けた方形をなす板状本体部31と、板状本体部31の後端部に形成した左右対称な一対の脚部32とを有する。脚部32は、板状本体部31の左右両側縁から下方へ延出してているとともにもに、その延出端部(下端部)を内側へ略直角に屈曲させた略L字形をなしている。
【0026】
かかる検知部材30は、板状本体部31をガイド突部16の上面に摺接させるとともに、一対の脚部32をガイド突部16の左右両側面に摺接させることにより、待機位置(図2及び図4を参照)と、待機位置よりも前方の検知位置(図1及び図6を参照)との間で前後方向(両ハウジング10,50の嵌合・離脱方向と平行な方向)へ移動(スライド)し得るようになっている。検知部材30の待機位置と検知位置との間の移動範囲内においては、検知部材30のうち少なくとも前端部が、収容空間15内に収容されて、覆い部13の下方(内側)に潜り込んだ状態となる。
【0027】
板状本体部31には、その前端縁から後方に切欠した一対のスリット部が形成されていて、板状本体部31のうち一対のスリット部の間の部分は可撓アーム部33となっている。可撓アーム部33は、上下方向に弾性撓み可能であり、可撓アーム部33の前端部には、その下面(ロックアーム17の上面と対向する面)から突出する規制突起34が形成されている。
【0028】
板状本体部31には、その後端縁に沿って上方へリブ状に突出した形態の操作部35が、板状本体部31の全幅に亘って連続して形成されている。同じく板状本体部31には、その左右両側縁に沿って上方へリブ状に突出した形態の左右対称な一対の側面壁36が形成されている。側面壁36の前後方向における形成領域は、板状本体部31の前後方向におけるほぼ中央位置から、板状本体部31の後端に亘る範囲であり、側面壁36の後端は操作部35の左右両端に連なっている。また、側面壁36と操作部35は、同じ高さ寸法とされている。
【0029】
板状本体部31の上面(覆い部13との対向面)には、左右対称な一対の干渉部37が形成されている。干渉部37は、側面壁36の内面から幅方向内側へ突出した形態であり、側方から視ると板状本体部31の上面からドーム状に突出した突起状をなしている。干渉部37の前後方向における形成位置は、側面壁36の前後方向中央位置よりも僅かに後方寄りの位置となっている。板状本体部31の上面における干渉部37と操作部35との間の凹み部分は、左右対称な一対の係止凹部38となっている。
【0030】
また、板状本体部31の上面には左右対称な一対の抜止め突起39が形成されている。抜止め突起39は、干渉部37と同様、側面壁36の内面から幅方向内側へ突出した形態であり、側方から視ると板状本体部31の上面からドーム状に突出した突起状をなしている。抜止め突起39の前後方向における形成位置は、干渉部37よりも前方であり、側面壁36の前端部と対応する位置となっている。また、抜止め突起39と干渉部37との間の凹み部分は、逃がし凹部40となっている。
【0031】
干渉部37と抜止め突起39の幅寸法は、可撓検知部21の幅寸法とほぼ同じ寸法であり、検知部材30を第1ハウジング10に取り付けた状態において、干渉部37と抜止め突起39は可撓検知部21と対応するように配置される。また、干渉部37の板状本体部31からの突出寸法と、抜止め突起39の板状本体部31からの突出寸法は、同じ寸法であり、側面壁36及び操作部35の高さ寸法と同じ寸法である。
【0032】
また、図4〜6に示すように、幅方向における覆い部13の形成領域(即ち、左右両側壁14の内面間の距離であって、収容空間15及び覆い部13の幅寸法)は、検知部材30の幅寸法よりも僅か(収容空間15内において検知部材30の移動を許容するためのクリアランスに相当する寸法分)に大きい寸法とされている。換言すると、覆い部13の形成領域は、検知部材30をその全幅に亘って覆う範囲となっている。
【0033】
両ハウジング10,50が離脱されて検知部材30が待機位置にあるときには、図2及び図4に示すように、検知部材30の後端部が覆い部13の後端縁よりも後方に位置し、検知部材30の後端部が覆い部13よりも後方の領域において外部に露出した状態、即ち上方から目視可能な状態となる。換言すると、検知部材30のうち、干渉部37と係止凹部38と操作部35が覆い部13の後方において露出され、干渉部37よりも前方の領域は覆い部13の下方(収容空間15内)に潜り込んでいる。
【0034】
また、検知部材30が待機位置にある状態では、図示は省略するが、可撓アーム部33の規制突起34がロックアーム17のロック孔18の前端縁に対して後方から係止することにより、検知部材30の第1ハウジング10に対する前方への相対移動が規制される。また、図2に示すように、抜止め突起39が覆い部13の係止突起22に対して前方から係止することにより、検知部材30の第1ハウジング10に対する後方への相対移動が規制される。即ち、検知部材30は、待機位置において前後方向への移動不能にロックされる。
【0035】
また、両ハウジング10,50が離脱されて検知部材30が検知位置にあるときには、図1に示すように、係止突起22が係止凹部38に嵌合することにより、検知部材30の第1ハウジング10に対する前方及び後方への相対移動が規制され、検知位置において移動不能にロックされる。また、可撓アーム部33の規制突起34はロックアーム17よりも前方に位置し、図1及び図6に示すように、検知部材30の後端縁(操作部35の後面)は、前後方向において覆い部13(可撓検知部21及び庇部23)の後端縁と同じ位置にある。つまり、前後方向において検知部材30の前端から後端に亘る全領域が、覆い部13の下方(収容空間15内)に潜り込んだ状態となっている。
【0036】
第2ハウジング50は、合成樹脂製であり、端子保持部51と、端子保持部51から第2ハウジング50の前方(図1〜3における右方)へ突出するフード部52とを一体形成したものであり、端子保持部51には、雄端子金具53が保持されていて、その前端部がフード部52によって包囲されている。フード部52を構成する上面板には、その上面(外面)から突出するロック突起54が形成されている。
【0037】
第1ハウジング10と第2ハウジング50を嵌合する際には、検知部材30を待機位置に保持した状態で、フード部52を端子収容部11の筒形嵌合部12との間の空間内に進入させる。嵌合の過程では、ロックアーム17の前端部がロック突起54に乗り上がることにより、ロックアーム17が上方へ弾性撓みさせられる。また、検知部材30の可撓アーム部33の前端部がロックアーム17の上面に当接しているので、ロックアーム17が上方へ弾性撓みするのに伴い、可撓アーム部33も上方へ弾性撓みさせられる。但し、板状本体部31における可撓アーム部33を除いた領域は、ガイド突部16に嵌合されているので、変位することはない。
【0038】
両ハウジング10,50の嵌合が進むと、ロック突起54の一部がロック孔18と対応する状態となり、このロック突起54の一部はロック孔18内に係止している可撓アーム部33の規制突起34の下に潜り込む。この状態は、両ハウジング10,50が正規の嵌合状態に至るまで維持される。
【0039】
そして、両ハウジング10,50が正規の嵌合状態に至ると、ロック突起54の全体がロック孔18と対応するようになるので、ロックアーム17が下方へ弾性復帰し、ロック孔18の前縁がロック突起54に係止する。この係止作用により、両ハウジング10,50が離脱を規制された状態にロックされる。このとき、図2に示すように、規制突起34はロック突起54に乗り上がったままなので、可撓アーム部33は上方へ弾性撓みした状態に保たれる。
【0040】
このように、両ハウジング10,50が正規嵌合されてロックアーム17が弾性復帰した状態では、ロックアーム17の上面とロック突起54の上面とが、ほぼ同じ高さで前後に並ぶように配置される。これにより、規制突起34とロック孔18との係止が解除されるので、待機位置の検知部材30は検知位置(前方)への移動が許容される。
【0041】
この後は、操作部35の後面を指で押して、検知部材30を前方の検知位置へ移動させる。このとき、可撓検知部21の規制突起34は、ロック突起54の上面を前方へ摺動し、次いでロックアーム17の前端部上面に乗り移って、このロックアーム17の前端部上面を前方へ摺動する。また、検知部材30の移動が開始した直後は、可撓検知部21の係止突起22が逃がし凹部40内を移動するので、可撓検知部21は弾性撓みせずに自由状態に保たれる。
【0042】
そして、検知部材30の移動が進むと、干渉部37が、係止突起22に当接してこの係止突起22を押し上げる。これにより、図3に示すように、可撓検知部21が上方へ弾性撓みさせられ、覆い部13のうち可撓検知部21のみが庇部23よりも上方へ突出した状態となる。この可撓検知部21の上方への弾性撓みの様子は、覆い部13(第1ハウジング10)の上方(外面側)から目視によって容易に確認することができる。
【0043】
そして、検知部材30が検知位置に到達すると、干渉部37が係止突起22を通過するので、可撓検知部21が下方へ弾性復帰し、図1に示すように、係止突起22が係止凹部38に嵌合されて、係止突起22と係止凹部38とが前後方向において係止した状態となる。この係止作用により、検知部材30が検知位置にロックされる。また、可撓検知部21が下方へ弾性復帰する様子は、上方へ弾性撓みするときと同様、覆い部13(第1ハウジング10)の上方(外面側)から目視によって容易に確認することができる。尚、可撓アーム部33の規制突起34は、ロックアーム17の前端部上面を通過するので、可撓アーム部33が下方へ弾性復帰する。
【0044】
上述のように本実施形態においては、第1ハウジング10の外面に、検知部材30が待機位置にある状態では検知部材30の後端部を露出させ、且つ検知部材30が検知位置にある状態では検知部材30の前後方向における全領域を覆い隠す覆い部13を形成している。また、覆い部13には、覆い部13の外面に露出した形態であって、検知部材30の移動方向と交差する上下方向に弾性撓み可能な可撓検知部21を形成している。また、検知部材30には、検知部材30が待機位置から検知位置に向かって移動する過程では可撓検知部21を当接させることにより弾性撓みさせ、検知部材30が検知位置に到達するのに伴い可撓検知部21を弾性復帰させる干渉部37を形している。
【0045】
このような構成としたことにより、検知部材30が待機位置と検知位置のうちいずれの位置にあるかについては、検知部材30のうち覆い部13の後端から露出する部分の前後長に基づいて判別することができる。しかも、検知部材30が待機位置から前方へ移動して検知位置に到達する過程では、可撓検知部21が一旦弾性撓みした後に弾性復帰するという動作を、目視確認することができるので、検知部材30が検知位置に到達したことを確実に判別することができる。
【0046】
また、検知部材30が待機位置にある状態では、検知部材30の後端部が覆い部13から露出しているのに対し、検知部材30が検知位置に移動すると、検知部材30の後端が前後方向において覆い部13の後端と同じ位置に配され、検知部材30の後端部が覆い部13内に潜り込んで露出しない状態となる。これにより、検知部材30の後端部を目視し得るか否かに基づいて、検知部材30の位置を判別することができる。
【0047】
また、幅方向における覆い部13の形成領域が、検知部材30をその全幅に亘って覆う範囲となっており、覆い部13には、検知部材30が検知位置にある状態で覆い部13内の検知部材30の一部を露出させる第1切欠部19と第2切欠部20が形成されている。したがって、検知部材30が検知位置に移動して覆い部13内に潜り込んだ状態においても、覆い部13の外部から第1切欠部19と第2切欠部20を通して検知部材30の一部を目視確認できる。これにより、検知部材30が第1ハウジング10に取り付けられていて検知位置にある状態と、検知部材30が第1ハウジング10に取り付けられていない状態との識別を行うことが可能となっている。
【0048】
また、第1切欠部19と第2切欠部20が、覆い部13の後端から前方へ切欠したスリット状の形態であって、幅方向に間隔を空けて対をなすように配されており、この対をなす第1切欠部19と第2切欠部20の間の部分が可撓検知部21となっている。このように、可撓検知部21を形成するためのスリットが、覆い部13内の検知部材30の存在を目視確認するための切欠部19,20としての機能を兼ね備えているので、可撓検知部21を形成するためのスリットとは別に目視確認用の専用の切欠部を形成する場合に比べると、覆い部13の形状の簡素化を図ることができる。
【0049】
また、検知部材30が検知位置へ移動して可撓検知部21が弾性復帰した状態では、干渉部37が可撓検知部21の係止突起22に対して前方から係止することにより、検知部材30の待機位置側への移動が規制されるようになっている。このように、可撓検知部21と干渉部37とは、検知部材30の待機位置側への移動を規制するロック機能を兼ね備えているので、専用のロック手段を設ける場合に比べると、第1ハウジング10や検知部材30の形状の簡素化を図ることができる。
【0050】
また、検知部材30の後端部には、干渉部37と、この干渉部37よりも後方の位置に配されて後方からの押圧操作を可能とするための操作部35とが設けられている。このように、本実施形態では、操作部35を干渉部37よりも後方に配置したので、後方から操作部35に対して押圧操作を行うときに、干渉部37や可撓検知部21が操作の妨げになる虞がない。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では検知部材が待機位置にある状態で検知部材の前端側部分が覆い部によって隠れるようにしたが、待機位置にある状態において検知部材の前端側部分が覆い部の前方に露出するようにしてもよい。
(2)上記実施形態では検知部材が検知位置にある状態で検知部材の前端側部分が覆い部によって隠れるようにしたが、検知位置にある状態において検知部材の前端側部分が覆い部の前方に露出するようにしてもよい。
(3)上記実施形態では可撓検知部は後方へ片持ち状に延出する形態であったが、可撓検知部は、前方へ片持ち状に延出する形態でもよく、検知部材の移動方向と直交する幅方向へ片持ち状に延出する形態であってもよい。
(4)上記実施形態では検知部材が検知位置にある状態で検知部材の後端が覆い部の後端と同じ位置にあるようにしたが、検知部材が検知位置にある状態において、検知部材の後端は、覆い部の後端よりも前方の位置にあってもよく、覆い部の後端よりも後方に露出した位置にあってもよい。
(5)上記実施形態では幅方向における覆い部の形成領域が検知部材をその全幅に亘って覆う範囲としたが、幅方向における覆い部の形成領域は、検知部材の少なくとも一方の側縁部を覆わずに露出させる範囲であってもよい。
(6)上記実施形態では覆い部のうち幅方向における一部のみを可撓検知部としたが、幅方向における覆い部の全体を可撓検知部として弾性撓みさせるようにしてもよい。
(7)上記実施形態では覆い部内に潜り込んでいる検知部材を目視確認するための切欠部をスリット状(細長く延びた形状)としたが、切欠部は、方形状や円形状等であってもよい。
(8)上記実施形態では覆い部内に潜り込んでいる検知部材を目視確認するための切欠部を、覆い部の後端に開口された形態としたが、切欠部は、覆い部の後端に開口せずに、全周に亘って閉じた形態の窓孔状であってもよい。
(9)上記実施形態では可撓検知部を形成するためのスリットが、切欠部としての機能を兼ね備えるようにしたが、切欠部を、可撓検知部を形成するためのスリットとは別に形成してもよい。
(10)上記実施形態では可撓検知部と干渉部が、検知部材の待機位置側への移動を規制するロック機能を兼ね備えるようにしたが、可撓検知部及び干渉部とは別に、検知部材の待機位置側への移動を規制するための専用のロック手段を設けてもよい。
(11)上記実施形態では干渉部を検知部材の後端部に配置したが、干渉部は、検知部材の前端部や、前後方向における略中央位置に配置してもよい。
(12)上記実施形態では操作部を干渉部よりも後方に配置したが、操作部を、干渉部よりも前方に配置してもよく、前後方向において干渉部と同じ位置に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態1において両ハウジングが正規嵌合して検知部材が検知位置へ移動した状態をあらわす断面図
【図2】両ハウジングが正規嵌合し、検知部材が待機位置にある状態をあらわす断面図
【図3】両ハウジングが正規嵌合し、検知部材が待機位置から検知位置へ移動する途中の状態をあらわす断面図
【図4】両ハウジングが正規嵌合し、検知部材が待機位置にある状態をあらわす平面図
【図5】両ハウジングが正規嵌合し、検知部材が待機位置から検知位置へ移動する途中の状態をあらわす平面図
【図6】両ハウジングが正規嵌合して検知部材が検知位置へ移動した状態をあらわす平面図
【図7】第1ハウジングの平面図
【図8】図7のX−X線断面図
【図9】第1ハウジングの正面図
【図10】第1ハウジングの背面図
【図11】検知部材の平面図
【図12】検知部材の側面図
【図13】検知部材の断面図
【図14】検知部材の正面図
【図15】検知部材の背面図
【符号の説明】
【0053】
10…第1ハウジング
13…覆い部
19…第1切欠部
20…第2切欠部
21…可撓検知部
30…検知部材
35…操作部
37…干渉部
50…第2ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに設けられ、待機位置と、前記待機位置よりも前方の検知位置との間での移動を可能とされており、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合途中の状態では、前記検知部材が前記待機位置から前記検知位置への移動を規制され、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが正規の嵌合状態に至ると、前記検知部材が前記待機位置から前記検知位置への移動を許容されるようになっているコネクタにおいて、
前記第1ハウジングの外面には、前記検知部材が前記待機位置にある状態では前記検知部材の少なくとも後端部を露出させ、且つ前記検知部材が前記検知位置にある状態では前記検知部材の少なくとも一部を覆い隠す覆い部が形成され、
前記覆い部には、前記覆い部の外面に露出した形態であって、前記検知部材の移動方向と交差する方向に弾性撓み可能な可撓検知部が形成され、
前記検知部材には、前記検知部材が前記待機位置から前記検知位置に向かって移動する過程では前記可撓検知部を当接させることにより弾性撓みさせ、前記検知部材が前記検知位置に到達するのに伴い前記可撓検知部を弾性復帰させる干渉部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記検知部材が前記検知位置にある状態では、前記検知部材の後端が、前後方向において前記覆い部の後端と同じ位置又は前記覆い部の後端よりも前方の位置に配されるようになっていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
幅方向における前記覆い部の形成領域が、前記検知部材をその全幅に亘って覆う範囲となっており、
前記覆い部には、前記検知部材が前記検知位置にある状態で前記覆い部内の前記検知部材の一部を露出させる切欠部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記切欠部が、前記覆い部の後端から前方へ切欠したスリット状の形態であって、幅方向に間隔を空けて対をなすように配されており、
前記対をなす切欠部の間の部分が、前記可撓検知部となっていることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記検知部材が前記検知位置へ移動して前記可撓検知部が弾性復帰した状態では、前記干渉部が前記可撓検知部に対して前方から係止することにより、前記検知部材の前記待機位置側への移動が規制されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記検知部材の後端部には、前記干渉部よりも後方の位置に配され、後方からの押圧操作を可能とする操作部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−277359(P2009−277359A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124587(P2008−124587)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】