説明

コネクタ

【課題】ショート端子を装着したコネクタの小型化を図る。
【解決手段】ショート端子40は、互いに対向する一対の弾性片42A、42Bと、この両弾性片42A、42Bの端部同士を互いに連ねる連結片41とからなる。両弾性片42A、42Bは、それぞれ、第1端子金具70に対する接点部46と、この接点部46から先端へ行くにしたがい次第に接近する内向きに傾いて延びることで短絡解除片52の誘い込みをなす案内部47とを有する。両ハウジング10、30の嵌合に伴って両短絡解除片52がそれぞれ案内部47を摺動することにより、両弾性片42A、42Bがそれぞれ内向きに弾性変形して、接点部46が両端子金具70から離間する。両弾性片42A、42Bの案内部47は、それぞれ、両ハウジング10、30の嵌合方向に位置ずれして設けられ、両弾性片42A、42Bの弾性変位によって案内部47同士が互いに接触しないようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エアバッグ装置に接続されたコネクタでは、相手コネクタとの嵌合前に、ハウジングに収容された一対の端子金具間に生じた電位差に起因して誤作動をおこさないように、両端子金具間を短絡するショート端子を設けるようにしている。例えば、特許文献1に記載のコネクタは、ハウジング内において高さ方向で隣接する端子金具間にショート端子が装着されている。このショート端子は、互いに対向する一対の弾性片と、この両弾性片の端部同士を互いに連ねる連結片とからなり、全体として略V字形をなしている。両弾性片は、それぞれ、端子金具と接触する接点部と、接点部から先端に向けて次第に接近する内向きに傾いて延びる案内部とを有する。一方、相手コネクタには両弾性片と対応する一対の短絡解除片が設けられている。両コネクタの嵌合に伴い両弾性片がそれぞれ案内部を摺動すると、両弾性片がそれぞれ内向きに弾性変形して、接点部が両端子金具から離間し、これにより、端子金具同士の短絡状態が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−31516公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合、両弾性片の弾性変位によって両案内部の先端が互いに接近する構成であり、両案内部の先端同士の接触を回避するために、ハウジング内には両弾性片の弾性変位を許容する撓み空間を広く確保しておかねばならなかった。このため、ハウジングの高さ寸法の増大化を招き、コネクタ小型化の要請に応えることが困難になっていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ショート端子を装着したコネクタの小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジングと、前記第1ハウジングに収容される複数の端子金具と、前記第1ハウジングに収容され、対をなす前記端子金具と接触することで、この端子金具同士を互いに短絡させるショート端子と、前記第2ハウジングに設けられ、前記両ハウジングの嵌合に伴い前記ショート端子と前記両端子金具との間に分け入って、前記両端子金具の短絡状態を解除する一対の短絡解除片とを備え、前記ショート端子は、互いに対向する一対の弾性片と、この両弾性片の端部同士を互いに連ねる連結片とからなり、前記両弾性片は、それぞれ、前記端子金具に対する接点部と、この接点部から先端へ行くにしたがい次第に接近する内向きに傾いて延びることで前記短絡解除片の誘い込みをなす案内部とを有し、前記両ハウジングの嵌合に伴って前記両短絡解除片がそれぞれ前記案内部を摺動することにより、前記両弾性片がそれぞれ前記連結片との連結側を支点として前記内向きに弾性変形して、前記接点部が前記両端子金具から離間するようになっており、前記両弾性片の前記案内部は、それぞれ、前記両ハウジングの嵌合方向に位置ずれして設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記両弾性片の案内部は、前記短絡解除片によって短絡状態が解除されたときに、前記両弾性片の撓み方向で互いにラップしているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
両ハウジングの嵌合に伴い一対の短絡解除片がそれぞれ案内部を摺動して、両弾性片が互いに内向きに弾性変位しても、両弾性片の案内部がそれぞれ嵌合方向に位置ずれして設けられているから、第1ハウジングに両弾性片の撓み空間を大きく確保しなくとも、案内部同士の接触を回避できる。このため、コネクタの小型化を図ることができる。
【0009】
<請求項2の発明>
案内部同士が撓み方向でラップするから、ラップ量の分、撓み空間を小さくでき、さらなるコネクタの小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るコネクタにおいて、両ハウジングの嵌合により短絡解除部がショート端子に接触する直前の状態を示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】両ハウジングが正規嵌合され、短絡解除部が端子金具とショート端子との間に分け入って、端子金具同士の短絡が解除された状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図1ないし図3によって説明する。本実施形態に係るコネクタは、車両のドア側に搭載されるエアバッグ用コネクタを例示するものであり、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジング10、30を備えている。なお、以下の説明において前後方向については両ハウジング10、30の嵌合面側を前方とする。
【0012】
第2ハウジング30は合成樹脂製であって、図1に示すように、第2端子金具90を収容可能なブロック状の端子収容部31と、端子収容部31の前端周縁から前方へ突出する筒状のフード部32とからなり、全体として高さ方向に細長い形状をなしている。端子収容部31には第2端子金具90が後方から挿入可能な複数の第2キャビティ33が前後方向に沿って設けられている。第2端子金具90は導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形され、図2に示すように、前方に突出する雄タブ91を有し、かつ図示しない電線の端末にかしめ接続されている。
【0013】
フード部32には、円柱状のカムフォロア34が突出して設けられている。また、フード部32内には、雄タブ91の先端部を位置決めして貫通させるムービングプレート35が組み付けられている。ムービングプレート35は、両ハウジング10、30の嵌合前はフード部32の奥面(端子収容部31の前面)から離れて配され、両ハウジング10、30の嵌合後は第1ハウジング10に押し込まれてフード部32の奥面に近接して配される。
【0014】
また、第2ハウジング30には、高さ方向で隣接する第2キャビティ33間に第2収容部36が前後方向に設けられ、ここに短絡解除部50が挿入固定されている。短絡解除部50は合成樹脂製であって、高さ方向に沿って配される平板状の本体部51と、本体部51の前端の高さ方向両端から前方へ突出する一対の短絡解除片52とからなる。本体部51は第2収容部36内に収容され、両短絡解除片52がフード部32内に突出して配されている。両短絡解除片52は、ムービングプレート35に設けられた位置決め孔37に後方から一括して貫通されている。なお、両短絡解除片52はその突出寸法がほぼ同じとされ、その先端位置がほぼ同じ前後位置に揃えられている。
【0015】
第1ハウジング10は同じく合成樹脂製であって、全体としてブロック状をなすハウジング本体11を備えている。ハウジング本体11の外面には後方からゴム製のグロメット12が被せ付けられ、さらにグロメット12の外面には後方から合成樹脂製のグロメットカバー13が被せ付けられる。グロメット12は、前方に開放されたブーツ状をなし、第1ハウジング10の後面から引き出される図示しない電線群を内包してなる。グロメットカバー13は、前方に開放されたキャップ状をなし、その外面には回動可能なレバー80が装着されている。レバー80は第2ハウジング30側のカムフォロア34と係合可能なカム溝81を有しており、カム溝81がカムフォロア34と係合した状態でレバー80が回動されることにより、カム作用が発揮されて、両ハウジング10、30が低嵌合力で嵌合されるようになっている。なお、ハウジング本体11の外面には、グロメット12及びグロメットカバー13が引っ掛け係止される係止突部14が設けられている。
【0016】
ハウジング本体11には第1端子金具70が後方から挿入可能な複数の第1キャビティ15が前後方向に沿って設けられている。第1端子金具70は導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形され、図2に示すように、前方に雄タブ91を受容する角筒状の接続部71を有し、かつ図示しない電線の端末にかしめ接続されている。接続部71内には、雄タブ91と弾性的に接触する舌片72が撓み可能に設けられている。
【0017】
第1ハウジング10には、高さ方向で隣接する第1キャビティ15間に連通するとともに、第2ハウジング30側の第2収容部36に対向する第1収容部16が前後方向に設けられ、ここにショート端子40が後方から挿入固定されている。第1収容部16と隣接する第1キャビティ15との間に位置する一対の隔壁18には高さ方向の連通孔17が設けられている。
【0018】
また、第1収容部16内には、両ハウジング10、30の嵌合に伴い前方から一対の短絡解除片52が挿入される。第1収容部16の前壁には、両短絡解除片52のそれぞれを誘い込むテーパ状の一対の挿入孔19が設けられ、第1収容部16(隔壁18)の内面には、その前端から後方へ向かう所定領域にかけて、短絡解除片52が摺動可能な摺動可能面20が設けられている。
【0019】
さて、ショート端子40は導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形され、高さ方向に延びる連結片41と、連結片41の両端から前方へ向けて互いに対向しつつ延びる一対の弾性片42A、42Bとからなる。詳しくは両弾性片42A、42Bは、連結片41の両端に対して略直角に連なって前方へ真直ぐ延びる基端部43と、基端部43の前端から前方へ行くにしたがい次第に接近する内向きに傾いて延びる中間傾斜部44と、中間傾斜部44の前端から前方へ行くにしたがい次第に離間する外向きに傾いて延びたあと屈曲され、その屈曲部位から前端(先端)にかけて次第に接近する内向きに傾いて延びる山型の先端屈曲部45とからなる。さらに先端屈曲部45は、その屈曲部位にて連通孔17を貫通して第1端子金具70の接続部71と弾性的に接触する接点部46と、接点部46の前方に位置して、挿入孔19から進入する短絡解除片52に押動され、両弾性片42A、42Bの内方への撓み動作を誘導する案内部47とを有している。
【0020】
また、両弾性片42A、42Bは、中間傾斜部44の長さの短い第1弾性片42Aと、中間傾斜部44の長さの長い第2弾性片42Bとによって構成されている。第1弾性片42Aの先端屈曲部45は、第2弾性片42Bの先端屈曲部45よりも後方(第1ハウジング10の奥側)に控えて位置し、したがって、第1弾性片42Aの接点部46及び案内部47は、第2弾性片42Bの接点部46及び案内部47よりも後方に控えて位置している。
【0021】
次に、本実施形態に係るコネクタの作用効果を説明する。
第1ハウジング10のフード部32内に第2ハウジング30のハウジング本体11を嵌合すると、図2に示すように、両短絡解除片52は、第1収容部16の挿入孔19に臨み、第1、第2弾性片42A、42Bの案内部47との間に前後方向の間隔をあけて対向位置する。このとき、隣接する第1キャビティ15内に収容された第1、第2端子金具70、90は、それぞれ、第1収容部16に装着されたショート端子40の接点部46に接触することにより、このショート端子40を介して互いに短絡状態に保たれる。また、第1、第2弾性片42A、42Bの案内部47の先端部は、両弾性片42A、42Bの撓み空間を挟んで高さ方向に離れて位置している。
【0022】
両ハウジング10、30の嵌合の進行により両短絡解除片52が第1収容部16内に深く入り込むと、図3に示すように、両短絡解除片52の先端部がそれぞれ案内部47と摺動して、第1、第2弾性片42A、42Bがそれぞれ基端部43の前端(中間傾斜部44の後端)を支点として内向き(撓み空間側)に弾性変位し、それに伴って第1、第2弾性片42A、42Bの接点部46がそれぞれ対応する第1端子金具70の接続部71から離間して、この接続部71と接点部46との間に両短絡解除片52のそれぞれが割って入る。これにより、第1、第2端子金具70、90の短絡状態が解除され、かつ両ハウジング10、30が正規嵌合されて、第1、第2端子金具70、90が正規深さで導通接続される。この状態では、両弾性片42A、42Bの案内部47の先端部は、撓み空間内にて前後方向(嵌合方向)で互いに離間し、かつ高さ方向(撓み方向)で互いにラップする位置に配されるが、相互に非接触状態に保たれている。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、両ハウジング10、30の嵌合に伴い一対の短絡解除片52がそれぞれ案内部47を摺動して、第1、第2弾性片42A、42Bが互いに内向き(撓み空間側)に撓み変形する。このとき、両弾性片42A、42Bの接点部46及び案内部47がそれぞれ嵌合方向に位置ずれして設けられることにより、両弾性片42A、42Bの案内部47が高さ方向で互いにラップしつつも非接触状態に保たれるから、両弾性片42A、42Bのそれぞれの撓み量以上の高さ寸法をもって撓み空間を構成する必要がなく、撓み空間の高さ寸法を小さく抑えることができる。したがって、第1ハウジング10の低背化を図れ、ひいてはコネクタの小型化を図ることができる。
【0024】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)短絡解除部は第2ハウジングに一体に形成されていてもよい。
(2)両短絡解除片は、第1弾性片の接点部と対応する相対的に長さの長い第1解除片と、第2弾性片の接点部と対応する相対的に長さの短い第2解除片とからなり、両解除片によって接点部の両端子金具からの離間タイミングがほぼ同時に設定される構成としてもよい。
(3)連結部が略点状をなし、ショート端子全体として略V字形をなしていてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10…第1ハウジング
30…第2ハウジング
40…ショート端子
42A、42B…弾性片
42A…第1弾性片
42B…第2弾性片
46…接点部
47…案内部
52…短絡解除片
70…第1端子金具(端子金具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な第1、第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに収容される複数の端子金具と、
前記第1ハウジングに収容され、対をなす前記端子金具と接触することで、この端子金具同士を互いに短絡させるショート端子と、
前記第2ハウジングに設けられ、前記両ハウジングの嵌合に伴い前記ショート端子と前記両端子金具との間に分け入って、前記両端子金具の短絡状態を解除する一対の短絡解除片とを備え、
前記ショート端子は、互いに対向する一対の弾性片と、この両弾性片の端部同士を互いに連ねる連結片とからなり、
前記両弾性片は、それぞれ、前記端子金具に対する接点部と、この接点部から先端へ行くにしたがい次第に接近する内向きに傾いて延びることで前記短絡解除片の誘い込みをなす案内部とを有し、
前記両ハウジングの嵌合に伴って前記両短絡解除片がそれぞれ前記案内部を摺動することにより、前記両弾性片がそれぞれ前記連結片との連結側を支点として前記内向きに弾性変形して、前記接点部が前記両端子金具から離間するようになっており、
前記両弾性片の前記案内部は、それぞれ、前記両ハウジングの嵌合方向に位置ずれして設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記両弾性片の案内部は、前記短絡解除片によって短絡状態が解除されたときに、前記両弾性片の撓み方向で互いにラップしていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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