説明

コネクタ

【課題】端子金具の圧入部分の間で亀裂が入るのを未然に防止する。
【解決手段】相手コネクタとの嵌合凹部21Aの奥面となる中間壁23には、ジョイント端子10におけるタブ12が圧入される圧入孔28が一列に並んで設けられる。同圧入孔28の列設領域の上下両側には肉抜き部形成領域32Mが設定されるが、同領域32Mのうち、並び方向において隣り合う圧入孔28同士の中間位置の上下に対応する位置では、肉抜き部が設けられることなくハウジング20を形成する合成樹脂材料が連続した材料連続部35が設けられる。タブ12が圧入孔28に圧入される際、左右の圧入孔28の間の樹脂材に対して左右両側から圧縮力xが作用するが、両圧入孔28の中間位置の上下両側は材料連続部35となっているから、肉抜き部30がある場合と違って上下方向の引張力は作用せず、その結果、両圧入孔28の間の樹脂材に亀裂が入ることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具をコネクタハウジングに対して圧入して保持する形式のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタの一例として、特許文献1等に記載されたジョイントコネクタが知られている。このジョイントコネクタは、図8に示すように、厚肉の仕切壁3を挟んで両端に相手コネクタが嵌合される嵌合凹部2が開口された合成樹脂製のコネクタハウジング1を備えるとともに、仕切壁3に、複数の圧入孔4が所定のピッチで一列に並びかつ例えば上下二段に分かれて形成されており、各圧入孔4に、両端をタブ部とした端子金具の中央部が圧入され、両タブ部を両側の嵌合凹部2内にそれぞれ突出させた状態で保持されている。また、上記の仕切壁3における圧入孔4の列設領域の側方の領域では、ひけ防止のために肉抜き部5が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−32220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、多極化に伴い端子金具間のピッチが狭小になると、端子金具(圧入孔4)間の樹脂部分に亀裂が入る現象が見られるようになった。そこで本発明者等が原因を探求したところ、以下のようなことが判明した。
図8の拡大部分に示すように、圧入孔4に端子金具が圧入されると、両圧入孔4の間の樹脂材に対して左右から圧縮力xが作用する。このとき仕切壁3に肉抜き部5が形成されていると、その肉抜き部5に樹脂材が逃げようとして同樹脂材に上下への引張力yが作用し、これにより亀裂kが入ると考えられる。
【0005】
本発明は上記のような知見に基づいて完成されたものであって、その目的は、端子金具の圧入部分の間で亀裂が入るのを未然に防止するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、合成樹脂製のコネクタハウジングに形成された端子保持部には、端子金具が圧入される複数の圧入孔が一列に並んで設けられるとともに、前記端子保持部における前記圧入孔が列設された領域と並列した領域には肉抜き部が形成されるようにしたコネクタであって、前記肉抜き部形成領域のうち、並び方向において隣り合う前記圧入孔同士の中間位置の側方に対応する位置では、肉抜き部が設けられることなく前記コネクタハウジングを形成する合成樹脂材料が連続した材料連続部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、隣り合う圧入孔同士の中間位置の少なくとも一方の側方には、肉抜き部がなくて材料連続部が配されているから、圧入孔に端子金具が圧入されて両圧入孔の間の樹脂材に対して圧縮力が作用した場合に、少なくとも材料連続部がある側には引張力が作用せず、その結果、両圧入孔の間の樹脂材に亀裂が入ることが防止される。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記材料連続部は、前記圧入孔同士の前記中間位置を挟んだ両側に一対設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、両圧入孔の間で圧縮された樹脂材は、両側方に逃げることができず、すなわち引張力が作用することがないから、亀裂の発生がより確実に防止される。
【0009】
前記各端子金具は、キャリアの側縁から並んで突設されている構成としてもよい。
このような構成によると、各端子金具は一括して対応する圧入孔に圧入でき、コネクタの組付作業が簡単となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子金具の圧入部分の間で亀裂が入るのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタの正面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】図1のB−B線断面図
【図4】図1の領域Iの拡大図
【図5】実施形態2のコネクタの正面図
【図6】図5の領域IIの拡大図
【図7】図5の領域III の拡大図
【図8】従来例のコネクタハウジングの正面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4の図面を参照しながら説明する。本実施形態では、ジョイントコネクタを例示している。
本実施形態のジョイントコネクタは、合成樹脂製のコネクタハウジング20(以下、ハウジング20という)を有しており、このハウジング20は、外形は直方体状をなしており、長さ方向の両端面には、それぞれ雌側の相手コネクタ(図示せず)が嵌合される嵌合凹部21が、互いに反対側を向いて形成されている。以下では、図2の右側を第1嵌合凹部21A、同左側を第2嵌合凹部21Bとする。
【0013】
両嵌合凹部21A,21Bの奥面同士の間には、厚肉の中間壁23(本発明の端子保持部に相当)が形成されており、この中間壁23には、ジョイント端子10が上下3段にわたって圧入されている。
ジョイント端子10は、図2に示すように、細長いキャリア11の両側縁から、例えば5本ずつのタブ12,13が一定ピッチで直角に突設されている。ここで一側のタブ12の方が、他側のタブ13に比べて長く形成されている。長い方のタブ12におけるキャリア11と接続された根元部分では、所定長さ領域が幅広に形成されて圧入部15とされている。圧入部15における前側(同図の右側)は、先細りのテーパ縁16となっている。
このような構造になるジョイント端子10が、3個準備されている。
【0014】
ハウジング20の中間壁23には、ジョイント端子10の装着部25が、所定間隔を開けて上下3段にわたって形成されている。装着部25は、ジョイント端子10を第2嵌合凹部21B側から圧入できる構造となっており、図2に示すように、第2嵌合凹部21Bの奥面に相当する面に、ジョイント端子10をほぼ緊密に挿入可能な挿入溝26がほぼ全幅にわたって切られている。この挿入溝26は、奥側が中間壁23の中央厚さ位置で行き止まりとされ、キャリア11が収まる奥行寸法となっている。挿入溝26の入口には、先拡がりのテーパ状となったガイド27が形成されている。
【0015】
挿入溝26の行き止まり面には、ジョイント端子10のタブ12が圧入状態で貫通可能な圧入孔28が、都合5個タブ12と同じピッチで形成され、第1嵌合凹部21Aの奥面に開口している。言い換えると、第1嵌合凹部21Aの奥面には、タブ12が奥側から圧入状態で挿通される圧入孔28が、5個ずつ横一列に並び、上下3段にわたって形成されている。各圧入孔28は、中間壁23の厚さのほぼ半分の深さを有している。また、圧入孔28の出口部分を各段ごとに繋ぐようにして、凹溝29が形成されている。
【0016】
さて、ハウジング20には、ひけ防止のための肉抜き部30が形成されている。第1嵌合凹部21Aの奥面では、3段に分かれた圧入孔28の列設領域のそれぞれの間に位置する2つの中間領域32Mに、小型の第1肉抜き部30Sが形成され、また、上段の圧入孔28の列設領域の上側の領域32Uと、下段の圧入孔28の列設領域の下側の領域32Dとには、それぞれ大型の第2肉抜き部30Lが形成されている。
各中間領域32Mは、タブ12の厚さの4倍程度の高さ(縦幅)を有し、上側領域32Uと下側領域32Dとは、さらに大きな高さ(縦幅)を有している。
【0017】
第1肉抜き部30Sは、タブ12の厚さよりやや大きい縦幅と、同タブ12の幅の2倍程度の横幅を持ち、かつ中間壁23の厚さの半分強の深さを持った横長の溝状に形成されている。
この第1肉抜き部30Sが、各中間領域32Mにおいて5個ずつ、圧入孔28と同じピッチで、かつ圧入孔28と横幅方向の中心同士を揃えた形態で並んで形成されている。言い換えると、隣り合う第1肉抜き部30Sの間の位置と、並び方向の両端の第1肉抜き部30Sの外側の位置には、当該ハウジング20を形成する合成樹脂材料が連続した材料連続部35が設けられている。
なお、第1肉抜き部30Sの裏側には、図3に示すように、第1肉抜き部30Sとは正面形状は同じであるが、深さが1/4程度の溝状の第3肉抜き部30Xが、壁を挟んで第2嵌合凹部21Bの奥面に開口した形態で形成されている。
【0018】
第2肉抜き部30Lは、上記の第1肉抜き部30Sの2倍強の縦幅を持ち、かつ第2嵌合凹部21Bの奥面に開口した貫通孔として形成されている。ただし、横幅については3つの種類に寸法が異なっている。
このような第2肉抜き部30Lが、上側領域32Uと下側領域32Dとにおいて、概ね圧入孔28の側方に対応する位置ごとに、互いに間隔を開けて並んで形成されている。この隣り合う第2肉抜き部30Lの間の部分は、同様に当該ハウジング20を形成する合成樹脂材料が連続した材料連続部35となっていて、それぞれ隣り合う圧入孔28の間の位置の側方に対応している。
【0019】
上記を要すると、第1嵌合凹部21Aの奥面には、圧入孔28の列が3段に分かれて形成され、各段の圧入孔28の列設領域の両側には肉抜き部30が設けられてはいるものの、各段において並び方向において隣り合う圧入孔28同士の中間位置の上下両側には、肉抜き部が設けられることなく当該ハウジング20を形成する合成樹脂材料が連続した材料連続部35が設けられた構造となっている。
【0020】
なお、両嵌合凹部21A,21Bの側面には、同嵌合凹部21A,21Bに嵌合された相手コネクタとの間をロックすることに用いるロック孔37が開口されている。また、ハウジング20の上面には、ボディや機器等に設けられたブラケットに差し込まれて、当該ハウジング20を取り付けることに用いるソケット部38が設けられている。
【0021】
本実施形態の作用及び効果は以下のようである。
ジョイント端子10をハウジング20に対して装着するに当たっては、ジョイント端子10は、長い方のタブ12側から第2嵌合凹部21B内に入れられて、対応する装着部25に向けて挿入される。挿入が進むと、各長い方のタブ12が挿入溝26を通ったのち対応する圧入孔28に挿通され、挿入の終盤近くになると、タブ12の根元側の圧入部15が圧入孔28の入口に臨む。さらに押し込まれると、圧入部15はテーパ縁16側から圧入孔28の両側壁に食い込むようにして圧入され、キャリア11が挿入溝26に嵌ってその奥面に突き合ったところで押し込みが停止される。
これによりジョイント端子10は、各段において、キャリア11を中間壁23の第2嵌合凹部21B側内に埋設し、かつ長い方のタブ12を第1嵌合凹部21A内に、短い方のタブ13を第2嵌合凹部21B内にそれぞれ突出させた状態で保持される。
【0022】
ここで、各段において、ジョイント端子10の各タブ12が、対応する圧入孔28に一斉に圧入される際、図1の領域Iを拡大した図4に示すように、隣り合う左右の圧入孔28の間の樹脂材に対して左右両側から圧縮力xが作用するが、その両圧入孔28の間の位置の上下両側は、肉抜き部が設けられることなく合成樹脂材料が連続した材料連続部35となっているから、肉抜き部30がある場合と違って上下方向の引張力は作用しない。その結果、両圧入孔28の間の樹脂材に亀裂が入ることが防止される。
【0023】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図5ないし図7の図面を参照しながら説明する。
この実施形態2では、上記実施形態1に対し、2つの中間領域32Mに形成される第1肉抜き部30Saの形状に変更が加えられている。
すなわち、実施形態2の第1肉抜き部30Saは、実施形態1の第1肉抜き部30Sに対して横幅のみが大きく変更されており、したがって各中間領域32Mにおいて、図示3個の第1肉抜き部30Saが間隔を開けて並んで形成されている。第1肉抜き部30Saの横幅を大きくしたのは、同第1肉抜き部30Saを形成する金型のピンを極力大きくして、その増強を図ることを意図している。
【0024】
上記構造の結果、両中間領域32Mにおける隣り合う圧入孔28の間の位置の上または下に対応する位置のうちで、第1肉抜き部30Saが存在する位置が一部でできることとなる。
しかしながら、下段における左から2番目と3番目の2個の圧入孔28の形成範囲(図5の領域II)では、図6に拡大して示すように、上記の実施形態1と同様に、タブ12の圧入に伴い隣り合う左右の圧入孔28の間の樹脂材に対して左右両側から圧縮力xが作用した場合も、その両圧入孔28の間の位置の上下両側は、肉抜き部が設けられることなく合成樹脂材料が連続した材料連続部35となっているから、上下方向の引張力は作用せず、両圧入孔28の間の樹脂材に亀裂が入ることが防止される。
【0025】
また、上段における左から3番目と4番目の2個の圧入孔28の形成範囲(図5の領域III )では、図7に拡大して示すように、左右の圧入孔28の中間位置の下側では、第1肉抜き部30Saが存在するも、上側では肉抜き部が設けられることなく材料連続部35となっているから、タブ12の圧入に伴い隣り合う左右の圧入孔28の間の樹脂材に対して左右両側から圧縮力xが作用した場合も、下側にしか引張力yは作用せず、したがって両圧入孔28の間の樹脂材に亀裂が入るには至らない。
したがって実施形態2においても、トータルして見ると、樹脂材に亀裂が入ることが有効に防止される。
【0026】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態に示したタブの並び方向の数や段数はあくまでも一例であって、他の並び数や段数に設定されたものにも、本発明は同様に適用可能である。
【0027】
(2)本発明は、上記実施形態に例示したジョイントコネクタに限らず、2つのコネクタ間を接続する中継コネクタであって、タブ状の端子金具を圧入により装着した形態のものにも、同様に適用可能である。なお中継コネクタの場合は、隣り合う端子金具が分離されていることがあるが、このようなものでも、特に治具等を利用して並んだ複数の端子金具を一斉に圧入する場合には、同様に亀裂の問題が生じるため、本発明は有効な解決手段となり得る。
(3)また本発明は、同様に多数のタブ状の端子金具を圧入により装着した構造になる基板用コネクタにも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10…ジョイント端子
11…キャリア
12…タブ(端子金具)
15…圧入部
20…コネクタハウジング
21A,21B…嵌合凹部
23…中間壁(端子保持部)
25…装着部
28…圧入孔
30,30S,30Sa,30L…肉抜き部
32M,32U,32D…肉抜き部形成領域
35…材料連続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のコネクタハウジングに形成された端子保持部には、端子金具が圧入される複数の圧入孔が一列に並んで設けられるとともに、前記端子保持部における前記圧入孔が列設された領域と並列した領域には肉抜き部が形成されるようにしたコネクタであって、
前記肉抜き部形成領域のうち、並び方向において隣り合う前記圧入孔同士の中間位置の側方に対応する位置では、肉抜き部が設けられることなく前記コネクタハウジングを形成する合成樹脂材料が連続した材料連続部が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記材料連続部は、前記圧入孔同士の前記中間位置を挟んだ両側に一対設けられていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記各端子金具は、キャリアの側縁から並んで突設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−210739(P2011−210739A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162056(P2011−162056)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2006−340983(P2006−340983)の分割
【原出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】