説明

コネクタ

【課題】端子金具に負荷をかけることなく相手側のコネクタとの位置ずれを吸収でき、かつ、相手側のコネクタと衝突した際の破損を防止できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、電気接触部21と、機器接続部22と、電気接触部21と機器接続部22とを連結する連結部23と、を有した端子金具2と、コネクタハウジング3とを備えている。コネクタハウジング3は、アウタハウジング30とインナハウジング40とコイルばね50とを備えている。アウタハウジング30は、機器接続部22を収容するアウタ本体31と、アウタ本体31に連なる筒部32とを備えている。インナハウジング40は、筒部32内に嵌合方向Xに沿って移動自在に収容され、電気接触部21を収容する。コイルばね50は、アウタ本体31とインナハウジング40との間に配され、弾性変形することでインナハウジング40を相手側のコネクタ9に向かって付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具と、端子金具を収容するコネクタハウジングとを備え、例えば電子機器に取り付けられて当該電子機器に電力等を供給するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、多種多様な電子機器が搭載されている。例えば、電気自動車やハイブリッド車には、モータ、モータに電力を供給するバッテリや、モータとバッテリの双方と接続し、バッテリからの直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ等の電子機器が搭載されている。これら電子機器同士を接続するために、例えば、図10に示すように、各電子機器にそれぞれコネクタを取り付けることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、従来のコネクタ101の断面図である。コネクタ101は、端子金具102と、端子金具102を収容するコネクタハウジング103とを備えている。端子金具102は、相手側の電子機器のコネクタと接続する電気接触部121と、電気接触部121と別体に設けられかつ電子機器と接続する機器接続部122と、電気接触部121と機器接続部122とを連結する可撓性を有した連結部123と、を備えている。
【0004】
電気接触部121と機器接続部122とは、板金にプレス加工を施して得られる。連結部123は、編組電線で構成され、導電性の編組線123aと、編組線123aを被覆する絶縁性の被覆部123bとを備えている。連結部123は、両端部に露出した編組線123aがそれぞれ電気接触部121及び機器接続部122の加締め片に加締められて、一端部が電気接触部121と電気的かつ機械的に接続し、他端部が機器接続部122と電気的かつ機械的に接続している。
【0005】
コネクタハウジング103は、アウタハウジング130と、ホルダ160と、インナハウジング140とを備えている。アウタハウジング130は、絶縁性の合成樹脂で構成され、端子金具102の機器接続部122を収容する箱状のアウタ本体131と、アウタ本体131の端面に連なる筒状の筒部132とを備えている。
【0006】
ホルダ160は、絶縁性の合成樹脂で構成され、筒部132内に収容される筒状のホルダ本体161と、ホルダ本体161に連なり筒部132のアウタ本体131から離れた端面に重ねられて固定されるフランジ部162と、ホルダ本体161に連なり当該ホルダ本体161内に収容されるインナハウジング140と係合する一対の弾性アーム163(一方のみ図示)とを備えている。
【0007】
インナハウジング140は、絶縁性の合成樹脂で構成され、端子金具102の電気接触部121を収容しかつホルダ本体161内に収容される箱状のインナ本体141と、インナ本体141に連なりホルダ160の弾性アーム163と係合する一対の第2弾性アーム142と、を備えている。第2弾性アーム142が弾性アーム163と係合して、インナハウジング140はホルダ160内に係止している。
【0008】
前述したコネクタ101は、ホルダ160の弾性アーム163やインナハウジング140の第2弾性アーム142が弾性変形することで、インナ本体141、即ちインナ本体141内に収容された電気接触部121がホルダ160内で変位可能であり、また、電気接触部121が変位すると連結部123が撓んでこの変位に追従する。このため、電子機器同士を接続する際に、コネクタ101と相手側のコネクタとが位置ずれしていても、端子金具102に大きな応力をかけることなく電気接触部121が変位して前記位置ずれを吸収して調芯でき、電子機器同士を確実に接続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2009-73127号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば前述したコネクタ101がモータに取り付けられ、相手側のコネクタが重量の大きなインバータに取り付けられた場合、インバータをモータに重ねてコネクタ101と相手側のコネクタとを嵌合しようとすると、相手側のコネクタが勢いよくインナハウジング140に衝突して、弾性アーム163や第2弾性アーム142が破損してインナハウジング140がホルダ160から脱落したり、ホルダ160から脱落したインナハウジング140がアウタハウジング130と衝突したりして、インナハウジング140が破損する虞があった。また、相手側のコネクタが勢いよくホルダ160に衝突して、ホルダ160が破損する虞があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、端子金具に負荷をかけることなく相手側のコネクタとの位置ずれを吸収でき、かつ、相手側のコネクタと衝突した際の破損を防止できるコネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、相手側のコネクタと接続する一方の電気接触部と、前記一方の電気接触部よりも前記相手側のコネクタから離れた他方の電気接触部と、これら電気接触部よりも可撓性の大きな材料で構成されかつこれら電気接触部同士を互いに連結する連結部と、を有した端子金具と、前記端子金具を収容するコネクタハウジングと、を備えたコネクタにおいて、前記コネクタハウジングが、前記他方の電気接触部を収容する本体部と、前記本体部に連なりかつ前記連結部を収容する筒部と、を有したアウタハウジングと、前記筒部内に前記相手側のコネクタとの嵌合方向に沿って移動自在に収容され、前記一方の電気接触部を収容するインナハウジングと、前記本体部と前記インナハウジングとの間に配され、弾性変形することで前記インナハウジングを前記相手側のコネクタに向かって付勢する弾性部材と、を備えたことを特徴としたコネクタである。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載されたコネクタにおいて、前記弾性部材が、コイルばねとされたことを特徴としたコネクタである。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載されたコネクタにおいて、前記弾性部材が、弾性材料で構成されたことを特徴としたコネクタである。
【0015】
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載されたコネクタにおいて、前記筒部内に収容されかつ当該筒部の前記相手側のコネクタと相対する側の端部に取り付けられて、前記インナハウジングを収容しかつ当該インナハウジングを前記筒部内に係止するホルダを備え、前記ホルダが、金属材料で構成され、かつ、前記筒部に前記相手側のコネクタとの嵌合方向と交差する方向に沿って移動自在に取り付けられたことを特徴としたコネクタである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された発明によれば、コネクタ同士が嵌合する際にインナハウジングが相手側のコネクタと衝突すると、インナハウジングは、弾性部材が弾性変形して本体部側に移動した後に、弾性部材の弾性復元力によって相手側のコネクタ側に押し戻される。このため、インナハウジングが本体部や相手側のコネクタと衝突して破損することを防止できる。さらに、コネクタ同士が嵌合した後は、弾性部材が弾性変形することによって、コネクタや相手側のコネクタが取り付けられた機器の振動を吸収でき、端子金具同士の接触不良等を防止できる。また、可撓性を有した連結部が電気接触部同士を互いに連結しているので、端子金具に負荷をかけることなくコネクタ同士の位置ずれを吸収して、コネクタ同士を確実に嵌合させることができ、機器の振動を吸収できる。
【0017】
請求項2に記載された発明によれば、コイルばねが確実に弾性変形して、インナハウジングの破損を防止でき、またコネクタや相手側のコネクタが取り付けられた機器の振動を吸収できる。
【0018】
請求項3に記載された発明によれば、弾性材料で構成された弾性部材が確実に弾性変形して、インナハウジングの破損を防止でき、またコネクタや相手側のコネクタが取り付けられた機器の振動を吸収できる。
【0019】
請求項4に記載された発明によれば、ホルダが金属材料で構成されて強度が高いので、コネクタ同士が嵌合する際にホルダが相手側のコネクタと衝突しても、ホルダが破損することを防止できる。また、ホルダが相手側のコネクタとの嵌合方向に交差する方向に移動することによって、コネクタ同士の位置ずれを吸収して、コネクタ同士を確実に嵌合させることができる。また、ホルダがインナハウジングを筒部内に係止するので、弾性部材に付勢されたインナハウジングを所定位置に確実に配することができ、筒部外に飛び出すことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるコネクタを示す断面斜視図である。
【図2】図1中のII−II線に沿ったコネクタ全体の断面図である。
【図3】図1に示されたコネクタの全体の上面図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図2に示されたコネクタが相手側のコネクタと嵌合し始めた状態を示す断面図である。
【図6】図5に示されたインナハウジングが相手側のコネクタと衝突して移動した状態を示す断面図である。
【図7】図6に示されたインナハウジングが押し戻されてコネクタ同士が完全に嵌合した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかるコネクタを示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態にかかるコネクタを示す断面図である。
【図10】従来のコネクタを示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施形態にかかるコネクタを図1ないし図7を参照して説明する。本発明の第1の実施形態にかかるコネクタ1は、図1に示すように、例えば電気自動車やハイブリッド車のモータ7に取り付けられて、このモータ7に直結されるインバータ8に取り付けられた相手側のコネクタ9と嵌合することによって、モータ7に電力等を供給する。
【0022】
モータ7は、合成樹脂で構成されて各種の電気部品を収容したケース71と、コネクタ1と電気的に接続する接続端子(図示せず)等を備えている。ケース71は、モータ7の外殻をなしている。ケース71には、コネクタ受け孔71aが開口している。
【0023】
コネクタ受け孔71aは、ケース71の上壁を貫通し、コネクタ1の外形に沿った形状に形成されている。コネクタ受け孔71aを通して、ケース71内にコネクタ1が進入する。また、コネクタ受け孔71aの外縁部には、ナットの埋設されたコネクタ1固定用のボルト孔(図示せず)が設けられている。
【0024】
インバータ8は、合成樹脂で構成されて各種の電気部品を収容したケース81と、相手側のコネクタ9と電気的に接続する接続端子(図示せず)等を備えている。ケース81は、インバータ8の外殻を形成している。ケース81には、コネクタ受け孔81aが開口している。
【0025】
コネクタ受け孔81aは、ケース81の底壁を貫通し、相手側のコネクタ9の外形に沿った形状に形成されている。コネクタ受け孔81aを通して、ケース81外に相手側のコネクタ9が突出する。また、コネクタ受け孔81aの外縁部には、ナットの埋設された相手側のコネクタ9固定用のボルト孔(図示せず)や、コネクタ1の後述するフランジ部33を内側に位置付ける凹部81bが形成されている。
【0026】
相手側のコネクタ9は、端子金具91と、端子金具91を収容するコネクタハウジング92とを備えている。端子金具91は、コネクタ1寄りに配されてコネクタ1と接続する電気接触部93と、ケース81内に配されてインバータ8と接続する機器接続部94と、これら電気接触部93と機器接続部94とを互いに連結する連結部95と、を備えている。なお、機器接続部94及び連結部95は、コネクタ1の後述する端子金具2の機器接続部22及び連結部23と略同一構造であるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
電気接触部93は、板金にプレス加工を施して得られ、機器接続部94と別体で設けられている。電気接触部93は、長方形板状の平板部93aと、平板部93aに連なる弾性片93b及び加締め片93cと、を備えている。
【0028】
弾性片93bは、平板部93aの一端部に設けられ、平板部93aの幅方向両端に連なって一対設けられている。弾性片93bは、平板部93aとの間にコネクタ1の端子金具2を挟んで、端子金具2、91同士を電気的かつ機械的に接続する。加締め片93cは、平板部93aの他端部に設けられ、平板部93aの幅方向両端に連なって一対設けられている。加締め片93cは、平板部93aとの間に連結部95を加締めて、電気接触部93と連結部95とを電気的かつ機械的に接続する。
【0029】
コネクタハウジング92は、絶縁性の合成樹脂で構成されている。コネクタハウジング92は、箱状のハウジング本体96と、ハウジング本体96の外周に連なる角筒状のアウタ部97と、アウタ部97の外周面から立設したフランジ部98とを一体に備えている。
【0030】
ハウジング本体96には、端子収容室96aが設けられている。端子収容室96aは、後述する嵌合方向X(図1等に矢印Xで示す)に沿って延びた直線孔状に形成され、ハウジング本体96を貫通している。端子収容室96aは、端子金具91の電気接触部93を収容する。アウタ部97は、ハウジング本体96のコネクタ1から離れた側の一端部側を内側に収容し、ハウジング本体96の他端部側をアウタ部97外に突出させた格好で、ハウジング本体96と一体に形成されている。
【0031】
フランジ部98は、アウタ部97の長手方向中央部の外周面からアウタ部97の外方向に突出し、アウタ部97の全周に亘って形成されている。フランジ部98は、ハウジング本体96とアウタ部97の一部がコネクタ受け孔81aを通してケース81外に位置付けられると、ケース81の内面と重なる。フランジ部98には、ケース81のボルト孔と連通してボルトがねじ込まれるボルト孔(図示せず)が貫通している。
【0032】
コネクタ1は、図1及び図2に示すように、端子金具2と、端子金具2を収容するコネクタハウジング3とを備えている。端子金具2は、相手側のコネクタ9寄りに配されて相手側のコネクタ9と接続する電気接触部21(一方の電気接触部に相当する)と、電気接触部21よりも相手側のコネクタ9から離れて配されてモータ7と接続する機器接続部22(他方の電気接触部に相当する)と、これら電気接触部21と機器接続部22とを互いに連結する連結部23と、を備えている。
【0033】
電気接触部21は、板金にプレス加工を施して得られ、機器接続部22と別体で設けられている。電気接触部21は、図2に示すように、長方形板状の平板部21aと、平板部21aに連なる加締め片(図示せず)とを備えている。平板部21aの長手方向一端部は、後述するホルダ60内に突出し、相手側のコネクタ9の端子金具2と接続する。平板部21aの他端部は、後述するインナハウジング40内に収容される。この他端部には、インナハウジング40の後述する係止ランス40dと係合する係合孔21cが貫通している。
【0034】
加締め片は、平板部21aの他端部に設けられ、平板部21aの幅方向両端に連なって一対設けられている。一対の加締め片は、平板部21aとの間に連結部23を加締めて、電気接触部21と連結部23とを電気的かつ機械的に接続する。
【0035】
機器接続部22は、板金にプレス加工を施して得られる。機器接続部22は、長方形板状の平板部22aと、平板部22aに連なる加締め片(図示せず)とを備えている。平板部22aは、後述するアウタハウジング30内に収容されている。また、平板部22aの長手方向一端部側の表面は、コネクタ1外に露出し、モータ7の接続端子が重ねられる。この一端部には、モータ7の接続端子のボルト孔と連通するボルト孔22cが貫通している。連通したボルト孔22cと接続端子のボルト孔とにボルトをねじ込んで、端子金具2がモータ7の接続端子と電気的かつ機械的に接続する。また、平板部22aの他端部には、後述する端子収容室31aの内面と密着してアウタハウジング30と機器接続部22との間を水密に保つパッキン24(図2)が取り付けられている。
【0036】
加締め片は、平板部22aの他端部に設けられ、平板部22aの幅方向両端に連なって一対設けられている。一対の加締め片は、平板部22aとの間に連結部23を加締めて、機器接続部22と連結部23とを電気的かつ機械的に接続する。
【0037】
連結部23は、電気接触部21や機器接続部22を構成する板金よりも可撓性の大きな材料で構成され、本実施形態では編組電線で構成されている。連結部23は、導電性の編組線23aと、絶縁性の被覆部23bとを備えている。編組線23aは、銅等で構成された素線が網目状に編まれて形成され、帯状に形成されている。被覆部23bは、絶縁性の合成樹脂で構成され、編組線23aの外周を被覆している。被覆部23bは、屈曲しやすいように肉薄に形成されている。被覆部23bは、連結部23の両端部で皮剥きされ、編組線23aを露出している。
【0038】
連結部23をこのような編組電線とすることで、複数の素線が撚られた(または一本の素線からなる)芯線と当該芯線を被覆する被覆部とを備えた被覆電線よりも可撓性を大きくできる。また、連結部23は、コネクタハウジング3内に収容された電気接触部21と機器接続部22との間の距離よりも長尺に形成され、コネクタハウジング3内で撓んだ(弛んだ)状態となっている。連結部23は、両端部に露出した編組線23aが前述のように加締め片に加締められて、一端部が電気接触部21と電気的かつ機械的に接続し、他端部が機器接続部22と電気的かつ機械的に接続して、電気接触部21と機器接続部22とを連結している。
【0039】
コネクタハウジング3は、図1及び図2に示すように、アウタハウジング30と、インナハウジング40と、弾性部材としてのコイルばね50と、ホルダ60とを備えている。アウタハウジング30は、絶縁性の合成樹脂で構成されている。アウタハウジング30は、本体部としてのアウタ本体31と、アウタ本体31に連なる筒部32と、筒部32に連なるフランジ部33とを一体に備えている。
【0040】
アウタ本体31は、箱状に形成されている。アウタ本体31には、図2に示すように、端子収容室31aと、ばね収容溝31bと、端子露出部31cと、ボルト孔31dとが設けられている。端子収容室31aは、嵌合方向Xに沿って延びた直線孔状に形成され、アウタ本体31を貫通している。端子収容室31aは、端子金具2の機器接続部22を収容する。
【0041】
ばね収容溝31bは、アウタ本体31の相手側のコネクタ9と相対する側の端面(即ち、アウタ本体31のインナハウジング40と相対する側の端面)から凹に形成されている。ばね収容溝31bは、平面視環状に形成され、端子収容室31aの開口を中心に位置付けている。ばね収容溝31bは、コイルばね50の一端部を内側に収容する。
【0042】
端子露出部31cは、アウタ本体31の相手側のコネクタ9から離れた端部を切り欠いて形成され、端子収容室31a内に収容された機器接続部22の一方の表面をコネクタ1外に露出する。ボルト孔31dは、アウタ本体31の機器接続部22の他方の表面が重なる表面から凹に形成され、ナット34が埋設されて機器接続部22のボルト孔22cと連通する。
【0043】
筒部32は、角筒状に形成され、アウタ本体31の相手側のコネクタ9と相対する側の端面から相手側のコネクタ9に向かって(嵌合方向Xに沿って)延びている。筒部32は、ホルダ60と、(端子金具2の電気接触部21を収容した)インナハウジング40と、端子金具2の連結部23と、コイルばね50とを内側に収容している。
【0044】
また、筒部32には、ホルダ60を取り付けるための取付凹部35が設けられている。取付凹部35は、筒部32の相手側のコネクタ9と相対する側の端面から凹に形成され、筒部32の内縁部を当該筒部32の全周に亘って切り欠いて形成されている。取付凹部35の底面35aは、嵌合方向Xと直交する方向に沿って平坦に形成されている。取付凹部35の底面35aには、ホルダ60の後述するフランジ部62が重ねられる。この底面35aには、ホルダ60をねじ留めするためのねじ孔35b(図4)が一対形成されている。
【0045】
フランジ部33は、筒部32の相手側のコネクタ9と相対する側の端部に設けられている。フランジ部33は、筒部32の外周面から筒部32の外方向に突出し、筒部32の全周に亘って形成されている。フランジ部33は、アウタ本体31及び筒部32がコネクタ受け孔71aを通してモータ7のケース71内に位置付けられると、ケース71の外表面に重なる。
【0046】
また、フランジ部33には、パッキン取付溝33aと、アウタハウジング30即ちコネクタ1をケース71にボルト留めするためのブラケット部(図示せず)とが設けられている。パッキン取付溝33aは、フランジ部33のケース71に重なる下面と、前記下面と反対側の上面とに設けられ、フランジ部33の全周に亘って形成されている。前記下面のパッキン取付溝33aには、モータ7のケース71と密着して当該コネクタハウジング3とケース71との間を水密に保つ環状のパッキン36が取り付けられている。また、前記上面のパッキン取付溝33aには、インバータ8のケース81と密着して当該コネクタハウジング3とケース81との間を水密に保つ環状のパッキン36が取り付けられている。
【0047】
インナハウジング40は、絶縁性の合成樹脂で構成されている。インナハウジング40は、アウタハウジング30の筒部32の内径よりも小さな外径の箱状に形成され、筒部32内に嵌合方向Xに沿って移動自在に収容されている。また、インナハウジング40は、相手側のコネクタ9と相対する一端部側がホルダ60内に収容可能な大きさに形成され、他端部側が前記一端部側よりも大きく形成されてホルダ60内に収容不可能な大きさに形成されている。そして、前記一端部と前記他端部の間の外周面には、ホルダ60の端面に係止する係止面40aが形成されている。係止面40aは、嵌合方向Xと直交する方向に沿って平坦に形成されている。
【0048】
また、インナハウジング40には、端子収容室40bと、ばね収容溝40cとが設けられている。端子収容室40bは、直線孔状に形成され、インナハウジング40を貫通している。端子収容室40bは、端子金具2の電気接触部21を収容する。端子収容室40b内には、電気接触部21の係合孔21cに係止して電気接触部21を端子収容室40b内に係止する係止ランス40dが突出している。
【0049】
端子収容室40bの長手方向に沿って、コネクタ1は相手側のコネクタ9と嵌合する。コネクタ1が相手側のコネクタ9と嵌合する際にコネクタ1、9同士が相対的に接離する(近づいたり離れたりする)方向を矢印Xで示し、相手側のコネクタ9との嵌合方向X(嵌合方向X)と呼ぶ。
【0050】
ばね収容溝40cは、インナハウジング40のアウタ本体31と相対する側の端面から凹に形成されている。ばね収容溝40cは、平面視環状に形成され、端子収容室40bの開口を中心に位置付けている。ばね収容溝40cは、コイルばね50の他端部を内側に収容する。
【0051】
コイルばね50は、中心軸方向が嵌合方向Xと平行となる向きで、筒部32内に収容されている。コイルばね50は、アウタ本体31とインナハウジング40との間に配されて、アウタ本体31とインナハウジング40とに挟まれている。コイルばね50は、一端部がアウタ本体31のばね収容溝31b内に位置付けられ、他端部がインナハウジング40のばね収容溝40c内に圧入されている。コイルばね50は、弾性変形することでインナハウジング40をアウタ本体31側に移動させるとともに、弾性復元力によってインナハウジング40を相手側のコネクタ9に向かって付勢する。このように、コイルばね50は、筒部32内のインナハウジング40を嵌合方向Xに沿って移動自在に支持する。
【0052】
なお、相手側のコネクタ9と嵌合する前のコネクタ1においては、図2に示すように、コイルばね50の弾性復元力によってインナハウジング40が付勢され、インナハウジング40の係止面40aがホルダ60の端面に当接した状態となっている。また、このとき、インナハウジング40の相手側のコネクタ9と相対する側の端面は、コネクタ1、9同士が完全に嵌合したときの前記端面の位置よりも相手側のコネクタ9側に配されている。
【0053】
ホルダ60は、アウタハウジング30やインナハウジング40を構成する合成樹脂よりも硬質な材料で構成され、金属材料で構成されている。ホルダ60は、板金にプレス加工を施して得られる。ホルダ60は、ホルダ本体61と、ホルダ本体61の端部に連なるフランジ部62とを備えている。
【0054】
ホルダ本体61は、角筒状に形成され、アウタハウジング30の筒部32の内径よりも小さな外径に形成されている。ホルダ本体61は、インナハウジング40の一端部側よりも大きな内径で、かつ他端部側よりも小さな内径に形成されている。フランジ部62は、ホルダ本体61の相手側のコネクタ9と相対する側の端部に設けられている。フランジ部62は、ホルダ本体61の外周面からホルダ本体61の外方向に突出し、ホルダ本体61の全周に亘って形成されている。
【0055】
前述したホルダ60は、ホルダ本体61がインナハウジング40の一端部側を内側に収容し、ホルダ本体61のフランジ部62から離れた側の端面が係止面40aに係止して、インナハウジング40の他端部側をホルダ本体61外に位置付ける。また、ホルダ60は、ホルダ本体61が筒部32内に収容され、フランジ部62が取付凹部35の底面35aに重ねられた状態で、筒部32の相手側のコネクタ9と相対する側の端部にねじ留めされて、アウタハウジング30に取り付けられる。こうして、ホルダ60は、アウタハウジング30に取り付けられて、インナハウジング40をアウタハウジング30の筒部32内に係止する。
【0056】
また、前述したホルダ60には、図3及び図4に示すように、アウタハウジング30の取付凹部35に留め具66を用いてねじ留めするための孔63が形成されている。孔63は、フランジ部62の外縁部を切り欠いて形成され、ホルダ60の中心軸を互いの間に位置付けるように一対設けられている。孔63は、平面視長方形状に形成され、一対の孔63の並ぶ方向に直交する方向(図3中では上下方向)に延びている。
【0057】
留め具66は、板金にプレス加工を施して得られる。留め具66は、図3に示すように、全体としての平面形状が、孔63よりも長い長方形状に形成されている。留め具66は、図4に示すように、孔63よりも小さな長方形板状の重ね片66aと、重ね片66aの長手方向両端から互いに同方向に立設した一対の立設片66bと、一対の立設片66bの端部から互いに離れる方向(重ね片66aの長手方向)に延びた一対の係止片66cとを備えている。
【0058】
重ね片66aの中央には、ねじ68を通すねじ孔66dが貫通している。また、図4に示すように、重ね片66aの取付凹部35の底面35aに重ねられる表面と、係止片66cの前記底面35aと相対する表面との間の間隔は、フランジ部62の厚さよりも大きく、係止片66cの前記表面がフランジ部62の表面と接触しないようになっている。
【0059】
前述した留め具66でホルダ60をアウタハウジング30に取り付ける際には、ホルダ60のホルダ本体61をアウタハウジング30内に挿入してフランジ部62を取付凹部35の底面35aに重ねた後に、留め具66の重ね片66aを、孔63から露出した取付凹部35の底面35aに重ねる。このとき、留め具66の長手方向と孔63の長手方向とが平行になるようにする。その後、重ね片66aのねじ孔66dと取付凹部35のねじ孔35bとを連通させ、連通した孔35b、66dにワッシャー67を介してねじ68をねじ込んで、ホルダ60をアウタハウジング30に取り付ける。
【0060】
こうしてアウタハウジング30に取り付けられたホルダ60は、孔63の外縁部が取付凹部35の底面35aと留め具66の係止片66cとの間に位置付けられて、アウタハウジング30から脱落することがない。一方、留め具66の重ね片66aが孔63よりも小さく、また係止片66cがフランジ部62の表面と接触していないので、ホルダ60は、孔63の内縁部が重ね片66aに当接しない範囲内で底面35a上を摺動自在であり、底面35aと平行な方向、例えば図3に示す矢印H1方向や矢印H2方向(即ち、嵌合方向Xと直交(交差)する方向)に移動自在である。このように、ホルダ60は、矢印H1方向や矢印H2方向に沿って移動自在にアウタハウジング30に取り付けられる。
【0061】
前述した構成のコネクタ1を組み立てる際には、まず、インナハウジング40のばね収容溝40c内にコイルばね50の他端部を圧入し、端子収容室40b内に端子金具2の電気接触部21を挿入して、インナハウジング40にコイルばね50と端子金具2を取り付ける。また、端子金具2の機器接続部22にパッキン24を取り付け、アウタハウジング30のパッキン取付溝33aにパッキン36を取り付ける。
【0062】
そして、これらを、機器接続部22側からアウタハウジング30の筒部32内に挿入していき、機器接続部22をアウタ本体31の端子収容室31a内に挿入し、コイルばね50の一端部をばね収容溝31b内に位置付ける。その後、ホルダ60のホルダ本体61をアウタハウジング30の筒部32内に挿入していき、内側にインナハウジング40の一端部を収容するとともに、ホルダ本体61の端面でインナハウジング40の係止面40aを押圧してコイルばね50を弾性変形させて、フランジ部62を取付凹部35の底面35aに重ねる。そして、前述のようにホルダ60をアウタハウジング30にねじ留めする。こうして、コネクタ1が組み立てられる。
【0063】
組み立てられたコネクタ1は、アウタハウジング30のアウタ本体31側からコネクタ受け孔71aを通してケース71内に挿入される。そして、アウタハウジング30のフランジ部33をケース71の外表面に重ねてケース71にボルト留めして、コネクタ1をモータ7に取り付ける。その後、コネクタ1外に露出した(即ち、ケース71内に露出した)端子金具2の機器接続部22にモータ7の接続端子を接続して、コネクタ1とモータ7とを接続する。
【0064】
そして、モータ7に取り付けられたコネクタ1と、インバータ8に取り付けられた相手側のコネクタ9とを嵌合する。インバータ8を上方から嵌合方向Xに沿ってモータ7に近づけていき、図5に示すように、相手側のコネクタ9のハウジング本体96をコネクタ1のホルダ本体61内に挿入していく。このとき、ハウジング本体96とホルダ本体61とが位置ずれしている場合には、ホルダ60が矢印H1方向や矢印H2方向に移動して、位置ずれを吸収できる。そして、コネクタ1の電気接触部21が相手側のコネクタ9の電気接触部93の平板部93aと弾性片93bの間に進入していく。
【0065】
そして、インバータ8をモータ7に重ね合わせる。すると、図6に示すように、重量の大きなインバータ8が重ねられた衝撃によって、ハウジング本体96の先端面がインナハウジング40の先端面と衝突してコイルばね50が弾性変形し、インナハウジング40がアウタ本体31側に移動する。しかし、コイルばね50によって、インナハウジング40はアウタ本体31と衝突することがない。
【0066】
その後、図7に示すように、コイルばね50の弾性復元力によってインナハウジング40が相手側のコネクタ9に向かって付勢されて、インナハウジング40の先端面がハウジング本体96の先端面と当接し、コネクタ1の電気接触部21が平板部93aと弾性片93bの間に挟まれて、端子金具2、91同士が接続する。こうして、コネクタ1、9同士が完全に嵌合して、モータ7とインバータ8とが接続する。
【0067】
本実施形態によれば、コネクタ1、9同士が嵌合する際に相手側のコネクタ9のハウジング本体96がインナハウジング40と衝突すると、インナハウジング40は、コイルばね50が弾性変形してアウタ本体31側に移動した後に、コイルばね50の弾性復元力によって相手側のコネクタ9側に押し戻される。このため、インナハウジング40がアウタ本体31やハウジング本体96と衝突して破損することを防止できる。さらに、コネクタ1、9同士が嵌合した後は、コイルばね50が弾性変形することによって、モータ7やインバータ8の振動を吸収でき、端子金具2、91同士の接触不良等を防止できる。また、コネクタ1を、モータ7とインバータ8を接続する従来のモータケーブルの代替とすることができ、車体を軽量化してCO2の発生を低減できる。また、連結部23が電気接触部21と機器接続部22とを連結しているので、端子金具2、91に負荷をかけることなくコネクタ1、9の位置ずれを吸収してコネクタ1、9同士を嵌合させることができ、モータ7とインバータ8の振動を吸収できる。
【0068】
また、ホルダ60が金属材料で構成されて強度が高いので、ホルダ60にハウジング本体96が衝突しても、ホルダ60が破損することを防止できる。また、ホルダ60が矢印H1方向や矢印H2方向に移動することによって、コネクタ1、9同士の位置ずれを吸収して、コネクタ1、9同士を確実に嵌合させることができる。また、ホルダ60がインナハウジング40を筒部32内に係止するので、コイルばね50に付勢されたインナハウジング40を所定位置に確実に配することができ、インナハウジング40が筒部32外に飛び出すことを防止できる。
【0069】
次に、本発明の第2の実施形態にかかるコネクタ201を、図8を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。本発明の第2の実施形態にかかるコネクタ201は、図8に示すように、コイルばね50のかわりに弾性部材250を備えている点が第1の実施形態のコネクタ1と大きく異なる。
【0070】
コネクタ201は、図8に示すように、3つの端子金具2と、これら端子金具2を収容するコネクタハウジング203とを備えている。コネクタハウジング203は、アウタハウジング230と、インナハウジング240と、弾性部材250と、ホルダ60とを備えている。
【0071】
アウタハウジング230は、アウタ本体31に3つの端子収容室31aと2つのばね収容溝31bが設けられている以外は、第1の実施形態のアウタハウジング30と同一構成である。3つの端子収容室31aは、互いに間隔をあけて複数設けられている。各端子収容室31aは、1つの端子金具2の機器接続部22を収容している。端子収容室31aは、機器接続部22同士を互いに絶縁された状態で収容している。ばね収容溝31bは、3つの端子収容室31aのうち両端の2つの端子収容室31aの開口をそれぞれ中心に位置付けるように、2つ設けられている。
【0072】
インナハウジング240は、3つの端子収容室40bと2つのばね収容溝40cが設けられている以外は、第1の実施形態のインナハウジング40と同一構成である。3つの端子収容室40bは、互いに間隔をあけて複数設けられている。各端子収容室40bは、1つの端子金具2の電気接触部21を収容している。端子収容室40bは、電気接触部21同士を互いに絶縁された状態で収容している。ばね収容溝40cは、3つの端子収容室40bのうち両端の2つの端子収容室40bの開口をそれぞれ中心に位置付けるように、2つ設けられている。
【0073】
弾性部材250は、ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料で構成され、全体として筒状に形成されている。弾性部材250は2つ設けられ、各弾性部材250は3つの端子金具2のうち両端の端子金具2の連結部23をそれぞれ内側に通している。弾性部材250は、筒状に形成された一対の筒状部251と、一対の筒状部251同士を互いに連結する蛇腹状の蛇腹筒部252とを一体に備えている。一方の筒状部251はアウタハウジング230のばね収容溝31b内に位置付けられ、他方の筒状部251はインナハウジング240のばね収容溝31b内に圧入されている。
【0074】
本実施形態においても、前述した実施形態と同様に、相手側のコネクタ9のハウジング本体96がインナハウジング240と衝突すると、インナハウジング240は、弾性部材250が弾性変形してアウタ本体31側に移動した後に、弾性部材250の弾性復元力によって押し戻されるので、インナハウジング240の破損を防止できる。さらに、弾性部材250が弾性変形することによって、振動を吸収でき、端子金具2、91同士の接触不良等を防止できる。また、ホルダ60が金属材料で構成されて強度が高いのでホルダ60の破損を防止でき、ホルダ60が移動することによってコネクタ201、9同士の位置ずれを吸収できる。
【0075】
次に、本発明の第3の実施形態にかかるコネクタ301を、図9を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。本発明の第3の実施形態にかかるコネクタ301は、図9に示すように、ホルダ60を備えていない点と、端子金具2と異なる形状の端子金具302を備えている点が、第1の実施形態のコネクタ1と大きく異なる。
【0076】
コネクタ301は、端子金具302と、コネクタハウジング303とを備えている。端子金具302は、電気接触部321(一方の電気接触部に相当する)と、機器接続部22と、これら電気接触部321と機器接続部22とを互いに連結する連結部23とを備えている。
【0077】
電気接触部321は、板金にプレス加工を施して得られ、断面L字状のL字板部321aと、L字板部321aに連なる加締め片(図示せず)とを備えている。L字板部321aの一端部は、後述するインナハウジング340の端子収容凹部340aに収容されてコネクタ301外に露出し、相手側のコネクタ309と接続する。この一端部には、相手側のコネクタ309の端子金具391をボルト留めするためのボルト孔321dが貫通している。L字板部321aの前記一端部と直交する他端部は、インナハウジング340の端子収容室40b内に収容されている。この他端部には、インナハウジング340の係止ランス40dと係合する係合孔321cが貫通している。
【0078】
コネクタハウジング303は、アウタハウジング30と、インナハウジング340と、コイルばね50とを備えている。インナハウジング340は、絶縁性の合成樹脂で構成されている。インナハウジング340は、箱状に形成され、アウタハウジング30の筒部32内に収容可能な大きさに形成されている。また、インナハウジング340には、端子収容室40bと、ばね収容溝40cと、端子収容凹部340aと、ボルト孔340bとが設けられている。
【0079】
端子収容凹部340aは、インナハウジング340の相手側のコネクタ309と相対する側の端面から凹に形成され、端子金具302のL字板部321aの一端部を収容するとともに、L字板部321aの一端部の一方の表面をコネクタ301外に露出する。ボルト孔340bは、端子収容凹部340aの底面から凹に形成され、ナット341が埋設されてL字板部321aのボルト孔321dと連通する。
【0080】
なお、相手側のコネクタ309と嵌合する前のコネクタ301においては、コイルばね50は弾性変形していない中立状態であり、インナハウジング340の相手側のコネクタ309と相対する側の一部は、モータ7のケース71の表面から突出した状態となっている。
【0081】
相手側のコネクタ309は、端子金具391と、コネクタハウジング392とを備えている。端子金具391は、板金にプレス加工を施して得られる。端子金具391は、コネクタ301と接続する電気接触部393と、電気接触部393に連なりインバータ8と接続する機器接続部394とを一体に備えている。
【0082】
電気接触部393は、断面L字状に形成されている。電気接触部393の一端部には、コネクタハウジング392の係止ランス392dと係合する係合孔393aが貫通している。また、電気接触部393の前記一端部と直交する他端部は、コネクタ309外に露出し、コネクタ301の端子金具302に重ねられる。この他端部には、端子金具302のボルト孔321dと連通するボルト孔393bが貫通している。連通したボルト孔321d、393bにボルト395をねじ込んで、端子金具302、391同士が電気的かつ機械的に接続する。
【0083】
機器接続部394は、平板状に形成され、電気接触部393の一端部から電気接触部393の他端部と離れる方向に延びている。機器接続部394には、インバータ8の接続端子が重ねられる。機器接続部22には、前記接続端子のボルト孔と連通するボルト孔394aが貫通している。連通したボルト孔394aと接続端子のボルト孔とにボルトをねじ込んで、端子金具391がインバータ8の接続端子と電気的かつ機械的に接続する。
【0084】
コネクタハウジング392は、絶縁性の合成樹脂で構成され、箱状に形成されている。コネクタハウジング392には、端子収容室392aと、端子収容凹部392bと、ボルト孔392cとが設けられている。
【0085】
端子収容室392aは、孔状に形成されて嵌合方向Xに開口し、端子金具391の電気接触部393を収容する。端子収容室392aには、電気接触部393を端子収容室392a内に係止する係止ランス392dが突出している。また、端子収容室392a内に収容された電気接触部393の他端部は、端子収容室392aのコネクタ301と相対する側の開口を覆うように配されて、コネクタ309外に露出する。
【0086】
端子収容凹部392bは、コネクタハウジング392のコネクタ301から離れた側の端面から凹に形成され、端子金具391の機器接続部394を収容する。ボルト孔392cは、端子収容凹部392bの底面から凹に形成され、ナット396が埋設されて機器接続部394のボルト孔394aと連通する。
【0087】
前述したコネクタ301と相手側のコネクタ309とを嵌合させる際には、インバータ8を嵌合方向Xに沿ってモータ7に近づけていき、相手側のコネクタ309の端子金具391の電気接触部393を、コネクタ301の端子金具302の電気接触部321に重ねる。
【0088】
すると、電気接触部321、393同士が衝突して、インナハウジング340は、コイルばね50が弾性変形してアウタ本体31側に移動した後に、コイルばね50の弾性復元力によって相手側のコネクタ309に向かって付勢されて、電気接触部321、393同士が重なり合う。その後、電気接触部321、393のボルト孔321d、393b同士を連通させ、連通したボルト孔321d、393bにボルト395をねじ込んで、端子金具302、391同士を接続する。
【0089】
本実施形態においても、前述した実施形態と同様に、端子金具302、391同士が衝突すると、インナハウジング340は、コイルばね50が弾性変形してアウタ本体31側に移動した後に、コイルばね50の弾性復元力によって押し戻されるので、インナハウジング340の破損を防止できる。さらに、コイルばね50が弾性変形することによって、振動を吸収でき、端子金具302、391同士の接触不良等を防止できる。
【0090】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 コネクタ
2 端子金具
3 コネクタハウジング
9 相手側のコネクタ
21 電気接触部(一方の電気接触部)
22 機器接続部(他方の電気接触部)
23 連結部
30 アウタハウジング
31 アウタ本体(本体部)
32 筒部
40 インナハウジング
50 コイルばね(弾性部材)
60 ホルダ
201 コネクタ
203 コネクタハウジング
230 アウタハウジング
240 インナハウジング
250 弾性部材
301 コネクタ
302 端子金具
303 コネクタハウジング
309 相手側のコネクタ
321 電気接触部(一方の電気接触部)
340 インナハウジング
H1,H2 嵌合方向と直交(交差)する方向
X 相手側のコネクタとの嵌合方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側のコネクタと接続する一方の電気接触部と、前記一方の電気接触部よりも前記相手側のコネクタから離れた他方の電気接触部と、これら電気接触部よりも可撓性の大きな材料で構成されかつこれら電気接触部同士を互いに連結する連結部と、を有した端子金具と、
前記端子金具を収容するコネクタハウジングと、を備えたコネクタにおいて、
前記コネクタハウジングが、
前記他方の電気接触部を収容する本体部と、前記本体部に連なりかつ前記連結部を収容する筒部と、を有したアウタハウジングと、
前記筒部内に前記相手側のコネクタとの嵌合方向に沿って移動自在に収容され、前記一方の電気接触部を収容するインナハウジングと、
前記本体部と前記インナハウジングとの間に配され、弾性変形することで前記インナハウジングを前記相手側のコネクタに向かって付勢する弾性部材と、を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記弾性部材が、コイルばねとされたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記弾性部材が、弾性材料で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記筒部内に収容されかつ当該筒部の前記相手側のコネクタと相対する側の端部に取り付けられて、前記インナハウジングを収容しかつ当該インナハウジングを前記筒部内に係止するホルダを備え、
前記ホルダが、金属材料で構成され、かつ、前記筒部に前記相手側のコネクタとの嵌合方向と交差する方向に沿って移動自在に取り付けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−34935(P2011−34935A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183151(P2009−183151)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】