説明

コネクタ

【課題】コネクタは、配管Pが正規の接続位置に接続されたことを確認する検知性能に優れ、シール部材を保持するための部材の回転初期位置への復帰が容易であること。
【解決手段】コネクタ10は、ハウジング20、シール部材40、回転リング50および摺動リング60を備える。リテーナ70は、仮止位置から検知位置へ移動することで配管Pが正規の接続位置にあることを検知する。リテーナ70は、リテーナ70の仮止め段部78が回転リング50の規制突起56に干渉することで、リテーナ70が仮止位置から検知位置へ移動することを規制する。また、摺動リング60は、配管PのPaで押されることでガイド機構により回転リング50を回転完了位置へ回転し、係合爪63が回転リング50に干渉して弾性変形を変更することで着脱を容易にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に環状突起を有する配管の接続に用いられるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタは、クイックコネクタとも称されて配管接続の簡便化を目的として種々提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献のコネクタは、ハウジングに装着するリテーナ自体に、ハウジングの挿入孔への配管の挿入未了の状態ではリテーナの装着完了を妨げる検知爪を備える。この検知爪は、ハウジングにおけるリテーナ装着孔に係合しており、挿入孔への配管挿入に伴って環状突起に干渉して当該突起より外側に撓むことで検知爪の係合が解除されて、リテーナの装着ができるようにされている。
【0003】
上記した特許文献1で提案されたコネクタでは、検知爪の係合解除がなされない限りリテーナの装着ができず、検知爪の係合解除には、リテーナの検知爪を配管の環状突起により外側に撓ませることが不可欠である。また、この検知爪の外側への撓み確保の上からは検知爪を細く形成する必要があるので、検知爪の剛性が低くなるという課題がある。
【0004】
他の従来の技術として、特許文献2に記載されているように、ハウジングの接続孔内に回転することで装着されるリングスペーサを備えた構成が知られている。しかし、リングスペーサでは、ハウジングの接続孔に嵌合させた後に、再度の接続作業のために配管を抜くと、スペースリングがハウジング内に残ってしまい、再度の接続作業面倒であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−172161号公報
【特許文献2】特開2005−214416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、配管が正規の接続位置に接続されたことを確認する検知性能に優れ、シール部材を保持するための部材の回転初期位置への復帰が容易であるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
適用例1は、環状突起で形成されたフランジ部と、該フランジ部の先端側にシール面とを有する配管を接続するためのコネクタにおいて、
上記配管を接続するとともに該配管が軸方向に挿入される接続孔を有するハウジングと、
上記接続孔内に配置され、上記シール面と上記接続孔の内壁面との間に介在することで該配管の通路と外部とをシールするシール部材と、
上記接続孔内に回転初期位置から回転完了位置の範囲で回転可能に配置され上記シール部材を保持するための環状のリング本体を有する回転リングと、
上記回転リングの内周側で軸方向へ移動可能に支持されたリング本体と、該リング本体の端部の両側から軸方向に突設され上記フランジ部に係合する係合爪とを有する摺動リングと、
上記ハウジングに外装され、仮止位置から上記軸方向と直角方向への検知位置へ移動することで、上記配管が正規の接続位置への接続完了したことを確認するための部材であり、リテーナ操作部と、該リテーナ操作部の両端から上記ハウジングの外周面の一部を囲むようにそれぞれ突設された係合腕と、上記係合腕の内側に形成され上記接続孔内に突入して上記フランジ部に係合することで上記配管を抜止めする抜止片とを有するリテーナと、
上記ハウジング、回転リングおよび摺動リングに連携して設けられ、上記配管の軸方向の移動力を、上記摺動リングが受けて軸方向に移動することで上記回転リングが上記接続孔内で回転する力に変換するカム機構と、
上記ハウジング、上記回転リング、摺動リングおよびリテーナに連携して設けられ、上記回転リング、摺動リングおよびリテーナの動きを規制する規制機構と、
を備え、
上記規制機構は、
上記回転リングが回転初期位置にあるときに、上記リテーナの仮止め段部が上記回転リングの規制突起に干渉することで上記リテーナが仮止位置から検知位置へ移動することを規制し、一方、上記回転リングが回転完了位置にあるときに、上記干渉を解除して上記リテーナの検知位置への移動を許容するリテーナ移動規制部と、
上記回転リングが上記回転完了位置から上記回転初期位置に戻るまでは、係合爪が上記フランジ部から外れないように弾性変形を規制し、上記回転初期位置に戻ったときに、上記係合爪が上記フランジ部から外れるように弾性変形を許容する復帰部と、
を有すること、を特徴とする。
【0009】
適用例1において、ハウジングに、シール部材、回転リングおよび摺動リング、さらにリテーナを組み付けて、配管を挿入する前の状態に仮組付をするには、以下の作業により行なう。シール部材および回転リングおよび摺動リングを接続孔に挿入する。そして、リテーナを仮止位置にセットする。この状態にて、規制機構のリテーナ規制部にて、リテーナの仮止め段部を回転リングの規制突起に干渉することから、リテーナが仮止位置から上記検知位置へ移動することを規制する。
【0010】
そして、配管をハウジングの接続孔内に挿入すると、配管のフランジ部が摺動リングを押して、回転リングを回転初期位置から回転完了位置まで回転する。そして、リテーナを検知位置へ移動することにより、回転規制部に回転リングの回転が規制された状態で、配管が正規の接続位置にて接続される。このとき、回転リングが回転完了位置へ回転したときに、該干渉を解除して、リテーナを検知位置へ移動可能にしている。回転リングは、カム機構により配管の軸方向の移動量を、回転方向への大きな移動量に変換しているから、干渉面積を大きくできるとともに剛性も大きくできるから、検知精度を向上させるとともに耐久性を向上させることができる。
【0011】
配管を外すときには、復帰部の規制壁により、第1および第2係合爪が上記ストッパリングの回転完了位置から回転初期位置に戻るまでは、第1および第2係合爪が上記フランジ部から外れないよう弾性変形するのを規制し、上記回転初期位置に戻ったときに、上記第1および第2係合爪が上記フランジ部から外れるよう弾性変形を許容するから、ストッパリングが元の位置に確実に戻り、復帰のための操作性に優れている。
【0012】
[適用例2]
適用例2のカム機構は、上記リング本体に形成され上記配管の挿入時に上記フランジ部から軸方向の力を受ける押圧面と、上記回転リングと摺動リングとに設けられかつ軸方向に対して傾斜したガイド溝とガイド突起とから構成され、上記押圧面が上記フランジ部から軸方向の力を受けたときに上記回転リングを上記接続孔内で回転させるようガイドするように構成することができる。
【0013】
[適用例3]
適用例3のリテーナ規制部は、係合腕に形成され、仮止位置で上記ハウジングに係合する第1ロック爪と、検知位置でハウジングに係合する第2ロック爪とを備えた構成をとることができる。
【0014】
[適用例4]
適用例4の回転リングは、上記リング本体の外周部に環状突起を備え、該環状突起は、上記接続孔の内壁に形成された位置決め凹所に圧入嵌合することで、ハウジングに対して、回転可能でありかつ軸方向への抜止めとなっている構成をとることができる。回転リングは、環状突起により、ハウジングの位置決め凹所に回転可能に嵌合しているから、回転リングに内圧が加わった場合に、環状突起に均一に圧力を受ける。よって、回転リングが傾くような力を受けて、回転リングの端部が部分的に大きな力を受けることによる耐久性の低下を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例にかかるコネクタに配管を接続した状態を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるコネクタを分解して示す斜視図である。
【図3】ハウジングを示す斜視図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】回転リング、摺動リングおよびハウジングの一部を示す斜視図である。
【図6】リテーナをハウジングに組み付ける前の状態を示す斜視図である。
【図7】リテーナを示す斜視図である。
【図8】コネクタを組み付ける前の状態を示す説明図である。
【図9】コネクタの接続作業を説明する説明図である。
【図10】図9に続く接続作業を説明する説明図である。
【図11】図10に続く接続作業を説明する説明図である。
【図12】図11に続く接続作業を説明する説明図である。
【図13】図12に続く接続作業を説明する説明図である。
【図14】図13の14−14線に沿った断面図である。
【図15】図14に続く接続作業を説明する説明図である。
【図16】図15に続く接続作業を説明する説明図である。
【図17】図16に続く接続作業を説明する説明図である。
【図18】図17に続く接続作業を説明する説明図である。
【図19】図18の19−19線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1) コネクタ10の概略構成
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例にかかるコネクタ10に配管Pを接続した状態を示す断面図、図2は本発明の一実施例にかかるコネクタ10を分解して示す斜視図である。
【0017】
図1および図2において、コネクタ10は、金属製または樹脂製の配管Pを合成樹脂製のチューブTbに接続するためのものであり、ハウジング20と、Oリングからなるシール部材40と、回転リング50と、摺動リング60と、リテーナ70と、を備えている。配管Pは、金属製または樹脂製の丸パイプ材から形成され、配管先端面から所定距離を隔てた位置の外周面上に、環状に突出したバルジ部からなるフランジ部Paを備える。そして、この配管Pは、フランジ部Paから先端側を接続部Pbとし、その外周面をシール部材40によりシールされるシール面としている。ハウジング20内に、シール部材40、回転リング50および摺動リング60を挿入し、リテーナ70を仮止位置に装着し、さらに配管Pを正規の接続位置まで挿入し、リテーナ70を仮止位置から軸方向と直角方向への検知位置へ移動することで、配管Pが正規の接続位置へ接続を完了したことを確認することができる。
【0018】
(2) コネクタ10の各部の構成
(2)−1 ハウジング20
図3はハウジング20を示す斜視図、図4は図3の4−4線に沿った断面図である。ハウジング20は、筒状の樹脂成型品であり、チューブTb(図1)が圧入装着されるタケノコ状のチューブ接続部22と、チューブ接続部22に一端に形成され配管P(図1)を接続するための管接続部24とを備えている。なお、以下、コネクタ10の管接続部24の側を前側、チューブ接続部22の側を後側として、以下の説明を行なう。
【0019】
図4において、ハウジング20は、筒内部に、後側から前側に向かって多段の接続孔26を備えている。接続孔26は、第1ないし第4の接続孔26a〜26dから構成されている。第1接続孔26aは、チューブTbに至る流路であり、第2接続孔26bは、配管Pの接続部Pbが挿入される孔である。第3接続孔26cは、シール部材40、回転リング50の先端を装着するための孔である。この場合、第3接続孔26c内にて、シール部材40が回転リング50の端部で保持される。第4接続孔26dは、回転リング50および摺動リング60を収納するとともに、配管Pの挿入に伴いフランジ部Paが入り込んで当該フランジ部を取り囲み、リテーナ70の一部が入り込む孔である。第4接続孔26dの傾斜壁の外周部であり、管接続部24の内壁には、回転リング50を回転可能に位置決めするための位置決め凹所27が形成されている。また、管接続部24には、摺動リング60を軸方向へガイドするピン溝28および回転リング50を回転方向にガイドするための突起溝29が軸方向にそれぞれ形成されている。
【0020】
また、管接続部24の前側には、リテーナ70の装着のためのリテーナ装着部30が形成されている。リテーナ装着部30は、その両側にリテーナガイド部32がそれぞれ形成されている。リテーナガイド部32には、リテーナ70を仮止位置および検知位置でそれぞれ保持するための第1係合部33および第2係合部34が形成されている。
【0021】
(2)−2 回転リング50
図5は回転リング50、摺動リング60およびハウジング20の一部を示す斜視図である。回転リング50は、接続孔26内に回転初期位置から回転完了位置の範囲で回転可能に配置され、シール部材40を保持するための部材であり、リング収納孔50Pを有するリング本体52を備えている。リング本体52には、突起、溝および切欠きなどが形成されている。すなわち、リング本体52の外周部には、環状突起52aが全周に形成されている。環状突起52aは、位置決め凹所27(図4)に圧入・嵌合されることで回転リング50を管接続部24に対して回転可能であるが、軸方向への抜止めとしている。リング本体52の端部には、ガイド溝54が切欠き形成されている。ガイド溝54は、軸方向溝54aと、傾斜した周方向溝54bとを連続して形成しており、摺動リング60を軸方向へ移動するものである。また、リング本体52の内周部には、撓み用凹所55が形成されている。さらに、リング本体52の外周部には、規制突起56が形成されている。規制突起56は、片持ちの規制片56aと、この規制片56aから外周方向に突出した規制段部56bを備えている。なお、リング本体52に形成された溝、突起などは、他の部材と連携することから、その部材との関連で後述する。
【0022】
(2)−3 摺動リング60
摺動リング60は、回転リング50の内周側のリング収納孔50Pで軸方向へ移動可能に支持されたリング本体62と、該リング本体62の端部の両側から軸方向に突設され配管Pのフランジ部Paに係合する係合爪63とを備えている。リング本体62の内周部に沿って、配管Pのフランジ部Paに押圧される押圧面62aが形成されている。また、押圧面62aの一部は、係合爪63が突出する箇所が切欠き62bとなっており、係合爪63の弾性変形を容易にしている。係合爪63は、リング本体62の端部から片持ちで形成された係合片63aと、係合片63aの先端に形成された爪部63bとを備えている。また、リング本体62の外周部には、回転リング50のガイド溝54でガイドされるガイドピン64が突設されている。なお、リング本体62に形成された溝、突起などは、他の部材と連携することから、その部材との関連で後述する。
【0023】
(2)−4 リテーナ70
図6はリテーナ70をハウジング20に組み付ける前の状態を示す斜視図、図7はリテーナ70を示す斜視図である。リテーナ70は、ハウジング20に外装され、仮止位置から軸方向と直角方向への検知位置へ移動することで、配管Pの正規の接続位置への接続完了を確認するための部材であり、リテーナ操作部71と、該リテーナ操作部71の両端からハウジング20の外周面の一部を囲むようにそれぞれ突設された係合腕72と、係合腕72の内側に形成され接続孔26内に突入してフランジ部Paに係合することで配管Pを抜止めする抜止片76とを有する。なお、リテーナ70に形成された突起などの作用について、他の部材と連携することから、その部材との関連で後述する。
【0024】
(2)−5 カム機構
図8はコネクタ10を組み付ける前の状態を示す説明図である。図5および図8において、カム機構は、ハウジング20、回転リング50および摺動リング60に連携して設けられており、つまりリング本体62に形成され配管Pの挿入時にフランジ部Paから軸方向の力を受ける押圧面62aと、ガイド機構とを備えている。ガイド機構は、回転リング50のリング本体52の一端部から切欠きされたガイド溝54と、摺動リング60のリング本体62に突設されたガイドピン64とを備えている。ガイド溝54は、軸方向に形成された軸方向溝54aと、軸方向に対して傾斜した周方向溝54bとを備えている。このカム機構の構成により、摺動リング60の押圧面62aが配管Pのフランジ部Paから軸方向の力を受けたときに、摺動リング60は、ピン溝28で回転が規制されて、ガイドピン64が回転リング50の周方向溝54bの溝端を押すから、回転リング50が接続孔26内で回転する。
【0025】
(2)−6 規制機構
規制機構は、ハウジング20、回転リング50、摺動リング60およびリテーナ70に連携して設けられ、回転リング50、摺動リング60およびリテーナ70の動きを規制する。規制機構は、リテーナ移動規制部と、復帰部とを備えている。
【0026】
図5および図6において、リテーナ移動規制部は、回転リング50に形成された規制突起56と、リテーナ70に形成された仮止め段部78とを備えている。仮止め段部78は、回転リング50が回転初期位置にあるときに、リテーナ装着部30の貫通孔38に挿入されている状態にて、回転リング50の規制突起56に当たることで、リテーナ70が仮止位置から検知位置へ移動することを規制している(図13、図14参照)。一方、回転リング50が回転完了位置にあると、仮止め段部78は、規制突起56に当たらないから、リテーナ70の検知位置への移動を許容している(図18、図19参照)。
【0027】
図5において、復帰部は、回転リング50のリング本体52の内周部に形成された撓み用凹所55を備えている。撓み用凹所55は、摺動リング60が回転リング50に組み付けられた状態にて、回転リング50が回転初期位置にあるときに、配管Pのフランジ部Paが係合爪63の爪部63bを押したときに、係合爪63の係合片63aが弾性変形することを許容している。一方、回転リング50が回転完了位置にあるとき、係合爪63の係合片63aは、リング本体52の内壁に当たることで弾性変形することを規制している。
【0028】
(3) コネクタ10の組付けおよび接続作業
上記のように構成されたコネクタ10は、以下のように使用される。
(3)−1 仮組付作業
ハウジング20に、シール部材40、回転リング50、摺動リング60、リテーナ70を組み付けて、配管Pを挿入する前の状態に仮組付をするには、以下の作業により行なう。図9に示すように、シール部材40を、第4接続孔26dを通じて第3接続孔26cに挿入する。次に、回転リング50を、第4接続孔26dに挿入する。すなわち、回転リング50の規制突起56をハウジング20の突起溝29に合わせて、回転リング50を第4接続孔26dに挿入し、さらに回転リング50の先端外周の環状突起52aを位置決め凹所27に圧入する。これにより、図10に示すように、回転リング50は、ハウジング20に対して、規制突起56が突起溝29内で移動する範囲、つまり図示の突起溝29の上側である回転初期位置Psらその右端側である摺動完了位置Peの範囲で回動可能に支持される。
【0029】
次に、摺動リング60を回転リング50内に組み付ける。すなわち、摺動リング60のガイドピン64を、ハウジング20のピン溝28に位置合わせし、摺動リング60を軸方向に移動する。これにより、ガイドピン64は、ハウジング20のピン溝28にガイドされつつ回転リング50のガイド溝54の軸方向溝54aに挿入され、図11に示すように摺動リング60が回転リング50内に組み付けられる。また、摺動リング60の係合爪63は、回転リング50の撓み用凹所55に位置合わせされ、片持ちで径方向外方へ弾性変形可能な状態にセットされる。
【0030】
図12において、リテーナ70をハウジング20に仮止位置で組み付けるには、リテーナ70の抜止片76をハウジング20の差込孔36に位置合わせするとともに、仮止め段部78を貫通孔38に位置合わせし、さらに係合腕72の第1係合部33および第2係合部34を挿入溝32aに位置合わせし、リテーナ70を下方へ押し込む。図13はハウジング20にリテーナ70を仮止位置に組み付けた状態を示す斜視図である。これにより、図14に示すように、リテーナ70は、仮止位置となり、つまり抜止片76が差込孔36に挿入されるとともに、係合腕72の第1ロック爪73が第1係合部33に係合して、リテーナ70がハウジング20に対して抜止めされる。なお、この状態にて、リング押さえ77が摺動リング60のリング本体62に当たって、摺動リング60が第4接続孔26dから抜止めされる。このとき、図13に示すように、仮止め段部78が回転リング50の規制突起56に当たって、リテーナ70が仮止位置から下方へ移動するのが規制される。
【0031】
(3)−2 配管Pの接続作業
配管Pをコネクタ10に接続するには、摺動リング60内に配管Pを押し入れることにより行なう。図15において、配管Pのフランジ部Paを係合爪63の爪部63bに当たって係合爪63を径方向外方へ(撓み用凹所55の方向)へ片持ち状態にて撓ませ、さらに図16に示すように、フランジ部Paが爪部63bを乗り越え、フランジ部Paで押圧面62aを押す。これにより、図17に示すように、回転リング50のガイド溝54に挿入されているガイドピン64は、軸方向の奥側へ移動した後に周方向溝54bの傾斜縁を押すので、摺動リング60の軸方向の力は、回転リング50を摺動完了位置まで回転させる。この状態にて、係合爪63は、撓み用凹所55(図15参照)の位置から外れて、リング本体52の内壁に当たっているから、径方向の外方への弾性変形が規制され、その爪部63bにフランジ部Paに係合する。このような摺動リング60の摺動完了位置への回転により規制突起56がリテーナ70の仮止め段部78の位置より待避する。
【0032】
そして、回転リング50の規制突起56が回転して仮止め段部78から待避しているから、図18に示すようにリテーナ70のリテーナ操作部71を下方へ押し込むと、仮止め段部78が規制突起56に当たらないで、リテーナ70は、ハウジング20に対して検知位置に移動し、第2ロック爪74が、第2係合部34に係合して、リテーナ70の装着方向への移動が規制された抜止状態になる。そして、図18に示すように、リテーナ70の抜止状態にて、抜止片76が配管Pに対してフランジ部Paの反挿入側、すなわち前側において係合し、配管Pは、抜け方向の移動が規制され、ハウジング20に対して抜止めされてコネクタ10への接続が完了する。
【0033】
(3)−3 配管Pの抜き取り作業
コネクタ10から配管Pの接続を解くには、まず、図18に示すリテーナ70の第2ロック爪74をハウジング20の第2係合部34から外して、リテーナ70を引き抜く。次いで、配管Pを軸方向の手前へ引っ張れば、図17から図15の工程、つまりフランジ部Paが係合爪63の爪部63bを介して摺動リング60に抜く方向の力を加えて、摺動リング60が軸方向の手前へ移動する。このとき、ガイドピン64は、ガイド溝54を移動するときに、周方向溝54bの溝縁を押して、回転リング50に回転する力を加え、回転リング50を回転初期位置に戻す。さらに、配管Pの引き抜け作業を続ければ、フランジ部Paは、係合爪63を撓み用凹所55に入り込むように大きく撓ませて係合爪63から外れ、配管Pをコネクタ10から外すことができる。
【0034】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(4)−1 シール部材40を保持するための構成として、配管Pのフランジ部Paの軸方向の力を受ける摺動リング60の他に、回転リング50を設けている。図1に示すように、回転リング50は、環状突起52aにより、ハウジング20の位置決め凹所27に回転可能に嵌合しているから、回転リング50に内圧が加わった場合に、環状突起52aに均一に圧力を受ける。よって、回転リング50が傾くような力を受けて、回転リング50の端部が部分的に大きな力を受けることによる耐久性の低下を招くことがない。
【0035】
(4)−2 図13および図18に示すように、リテーナ70が仮止位置から検知位置への移動を規制する構成として、リテーナ70の仮止め段部78を回転リング50の規制突起56に干渉させ、回転リング50が回転完了位置へ回転したときに、該干渉を解除して、リテーナ70を検知位置へ移動可能にしている。回転リング50は、カム機構により配管Pの軸方向の移動量を、回転方向への大きな移動量に変換しているから、干渉面積を大きくできるとともに剛性も大きくできるから、検知精度を向上させるとともに耐久性を向上させることができる。
【0036】
(4)−3 図5において、リテーナ70を仮止位置に戻して、配管Pを軸方向に抜けば、フランジ部Paが係合爪63に係合して、摺動リング60が回転リング50を回転させることで、元の状態に戻る。しかも、摺動リング60の係合爪63は、回転初期位置に戻るまでは、係合爪63の係合片63aが、回転リング50の内壁に当たって拡径する方向への弾性変形が規制されているから、フランジ部Paから外れず、配管Pと一体に抜き方向へ移動する。よって、摺動リング60および回転リング50を回転初期位置に確実に戻すことができる。すなわち、再度の配管Pの接続作業の際に、配管Pを抜いたときに、摺動リング60が配管Pと一体に回転するとともに、軸方向に移動して、最初の状態に戻すことができる。よって、摺動リング60および回転リング50をハウジング20から取り出す作業が簡単で、再度の接続作業が容易になる。
【0037】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…コネクタ
20…ハウジング
22…チューブ接続部
24…管接続部
26…接続孔
26a…第1接続孔
26b…第2接続孔
26c…第3接続孔
26d…第4接続孔
27…位置決め凹所
28…ピン溝
29…突起溝
30…リテーナ装着部
32,31…リテーナガイド部
32a…挿入溝
33…第1係合部
34…第2係合部
36…差込孔
38…貫通孔
40…シール部材
50…回転リング
50P…リング収納孔
52…リング本体
52a…環状突起
54…ガイド溝
54a…軸方向溝
54b…周方向溝
55…撓み用凹所
56…規制突起
56a…規制片
56b…規制段部
60…摺動リング
62…リング本体
62a…押圧面
62b…切欠き
63…係合爪
63a…係合片
63b…爪部
64…ガイドピン
70…リテーナ
71…リテーナ操作部
72…係合腕
73…第1ロック爪
74…第2ロック爪
76…抜止片
77…リング押さえ
78…仮止め段部
P…配管
Pa…フランジ部
Pb…接続部
Tb…チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状突起で形成されたフランジ部(Pa)と、該フランジ部(Pa)の先端側にシール面とを有する配管(P)を接続するためのコネクタにおいて、
上記配管(P)を接続するとともに該配管(P)が軸方向に挿入される接続孔(26)を有するハウジング(20)と、
上記接続孔(26)内に配置され、上記シール面と上記接続孔(26)の内壁面との間に介在することで該配管(P)の通路と外部とをシールするシール部材(40)と、
上記接続孔(26)内に回転初期位置から回転完了位置の範囲で回転可能に配置され上記シール部材(40)を保持するための環状のリング本体(52)を有する回転リング(50)と、
上記回転リング(50)の内周側で軸方向へ移動可能に支持されたリング本体(62)と、該リング本体(62)の端部の両側から軸方向に突設され上記フランジ部(Pa)に係合する係合爪(63)とを有する摺動リング(60)と、
上記ハウジング(20)に外装され、仮止位置から上記軸方向と直角方向への検知位置へ移動することで、上記配管(P)が正規の接続位置への接続完了したことを確認するための部材であり、リテーナ操作部(71)と、該リテーナ操作部(71)の両端から上記ハウジング(20)の外周面の一部を囲むようにそれぞれ突設された係合腕(72)と、上記係合腕(72)の内側に形成され上記接続孔(26)内に突入して上記フランジ部(Pa)に係合することで上記配管(P)を抜止めする抜止片(76)とを有するリテーナ(70)と、
上記ハウジング(20)、回転リング(50)および摺動リング(60)に連携して設けられ、上記配管(P)の軸方向の移動力を、上記摺動リング(60)が受けて軸方向に移動することで上記回転リング(50)が上記接続孔(26)内で回転する力に変換するカム機構と、
上記ハウジング(20)、上記回転リング(50)、摺動リング(60)およびリテーナ(70)に連携して設けられ、上記回転リング(50)、摺動リング(60)およびリテーナ(70)の動きを規制する規制機構と、
を備え、
上記規制機構は、
上記回転リング(50)が回転初期位置にあるときに、上記リテーナ(70)の仮止め段部(78)が上記回転リング(50)の規制突起(56)に干渉することで上記リテーナ(70)が仮止位置から検知位置へ移動することを規制し、一方、上記回転リング(50)が回転完了位置にあるときに、上記干渉を解除して上記リテーナ(70)の検知位置への移動を許容するリテーナ移動規制部と、
上記回転リング(50)が上記回転完了位置から上記回転初期位置に戻るまでは、係合爪(63)が上記フランジ部(Pa)から外れないように弾性変形を規制し、上記回転初期位置に戻ったときに、上記係合爪(63)が上記フランジ部(Pa)から外れるように弾性変形を許容する復帰部と、
を有すること、を特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
上記カム機構は、
上記リング本体(62)に形成され上記配管(P)の挿入時に上記フランジ部(Pa)から軸方向の力を受ける押圧面(62a)と、
上記回転リング(50)と摺動リング(60)とに設けられかつ軸方向に対して傾斜したガイド溝とガイド突起とから構成され、上記押圧面(62a)が上記フランジ部(Pa)から軸方向の力を受けたときに上記回転リング(50)を上記接続孔(26)内で回転させるようガイドするように構成したコネクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコネクタにおいて、
上記リテーナ規制部は、係合腕(72)に形成され、仮止位置で上記ハウジング(20)に係合する第1ロック爪(73)と、検知位置でハウジング(20)に係合する第2ロック爪(74)とを備えたコネクタ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコネクタにおいて、
上記回転リング(50)は、上記リング本体(52)の外周部に環状突起(52a)を備え、該環状突起(52a)は、上記接続孔(26)の内壁に形成された位置決め凹所(27)に圧入嵌合することで、ハウジング(20)に対して、回転可能でありかつ軸方向への抜止めとなっているコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−74990(P2011−74990A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226059(P2009−226059)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】