説明

コネクタ

【課題】大きな嵌合力が必要とされる場合にも適用可能な倍力機構を有するコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、相手コネクタ90と嵌合可能なハウジング20と、相手コネクタ90との嵌合時にハウジング20に対して嵌合方向と交差する方向に移動するスライド手段によって嵌合を進めるスライド倍力機構と、相手コネクタ90との嵌合時にハウジング20に対して回転中心周りに回動する回動手段によって嵌合を進める回転倍力機構とを備える。スライド倍力機構と回転倍力機構は、それぞれ別々に動作するものであって、単一のレバー40に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
相手コネクタと嵌合可能なハウジングに、スライド部材と回動レバーの両方を取り付けたコネクタが知られている。例えば、特許文献1に記載のものでは、回動レバーの回動に伴ってハウジングと相手コネクタとの嵌合が進むと、回動レバーの動作に連動してスライド部材も強制的に駆動し、もってハウジングと相手コネクタが互いに低操作力で嵌合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−329583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合、嵌合動作の全体に亘って回動レバーが回動する構成であるため、回動レバーの回転角を十分に確保できないと、操作力が増大するという事情がある。そのため、相手コネクタとの嵌合時に大きな嵌合力が必要とされるものには適用し難いという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、大きな嵌合力が必要とされる場合にも適用可能な倍力機構を有するコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、相手コネクタと嵌合可能なハウジングと、前記相手コネクタとの嵌合時に前記ハウジングに対して嵌合方向と交差する方向に移動するスライド手段によって嵌合を進めるスライド倍力機構と、前記相手コネクタとの嵌合時に前記ハウジングに対して回転中心周りに回動する回動手段によって嵌合を進める回転倍力機構とを備え、前記スライド倍力機構と前記回転倍力機構がそれぞれ別々に動作するものであり、前記スライド倍力機構と前記回転倍力機構が単一のレバーに構成され、前記レバーには、前記相手コネクタに設けられたフォロアピンと係合して前記相手コネクタとの嵌合を進める前記スライド倍力機構用のスライド溝と、前記フォロアピンと係合して前記相手コネクタとの嵌合を進める前記回転倍力機構用の回動溝とが設けられ、前記スライド溝と前記回動溝が互いに連通している構成としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記スライド倍力機構に続いて前記回転倍力機構が動作し、動作過程では前記フォロアピンが前記スライド溝から前記回動溝へと移行するようになっており、前記レバーは、前記ハウジングに対して、前記スライド倍力機構によって移動開始位置と移動完了位置との間を移動可能とされると共に、前記回転倍力機構によって回転開始位置と回転完了位置との間を回動可能とされ、前記移動開始位置では、前記レバーの端部が前記ハウジングから離間して配置され、前記移動完了位置では、前記レバーの端部が前記ハウジングに近接して配置されるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記レバーと前記ハウジングのいずれか一方には前記レバーの回転中心となる軸部が設けられ、他方には前記軸部が嵌る軸受け部が設けられており、前記軸受け部は、前記スライド倍力機構の動作過程で前記軸部の変位を許容するべく前記スライド倍力機構の動作方向に延びる長溝として構成され、前記レバーと前記ハウジングのいずれか一方には、前記長溝と平行して、前記スライド倍力機構の動作方向に延びるガイド溝が設けられ、他方には、前記軸部とは別に、前記スライド倍力機構による動作過程で前記ガイド溝の溝面を摺動するガイドピンが設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
スライド倍力機構と回転倍力機構がそれぞれ別々に動作するから、嵌合動作の一部がスライド倍力機構によって賄われ、その分、回転倍力機構の設定に余裕をもたせられる。その結果、回転倍力機構の回転角を大きくとることで、大きな嵌合力が必要とされる場合にも対応することが可能となる。
また、スライド倍力機構と回転倍力機構が単一のレバーに構成されているから、各機構に対応してそれぞれレバーが設けられるよりも構成を簡素化できる。
さらに、スライド溝と回動溝の両溝と係合する部材として、相手コネクタにフォロアピンを設けるだけでよいから、相手コネクタの構成を簡素化できる。
しかも、スライド溝と回動溝が互いに連通しているから、スライド溝用と回動溝用に個別のフォロアピンを用意しなくて済むと共に、倍力動作の連続性が担保される。
【0010】
<請求項2の発明>
スライド倍力機構に続いて回転倍力機構が動作するから、嵌合力が小さい嵌合初期の段階をスライド倍力機構が担い、嵌合力が大きい嵌合終盤の段階を回転倍力機構が担うこととなり、嵌合効率に優れる。
【0011】
<請求項3の発明>
軸受け部はスライド倍力機構の動作方向に延びる長溝とされ、この長溝によって軸部の変位が許容されるから、スライド手段の移動の円滑性が担保される。
また、スライド倍力機構による動作過程でガイド溝の溝面にガイドピンが摺動するから、スライド倍力機構の動作が案内される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1において、両ハウジングを嵌合する前の状態を示す一部破断側面図
【図2】両ハウジングを軽く嵌合した状態を示す一部破断側面図
【図3】レバーを移動完了位置に移動した状態を示す一部破断側面図
【図4】レバーを回動完了位置に回動した状態を示す一部破断側面図
【図5】レバーの側断面図
【図6】レバーの側面図
【図7】レバーの正面図
【図8】(A)移動開始位置におけるガイドピンと軸部を示す側面図 (B)移動完了位置におけるガイドピンと軸部を示す側面図 (C)回動途中位置におけるガイドピンと軸部を示す側面図
【図9】実施形態2において、フォロアピンが移行領域を通過する状態を要部拡大した一部破断側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。本実施形態のコネクタ10は、相手コネクタ90と嵌合可能なハウジング20と、ハウジング20に取り付けられるレバー40とを備えている。
【0014】
相手コネクタ90は雌端子金具(図示せず)を収容可能な合成樹脂製の雌ハウジング80を備えている。雌ハウジング80は、図1に示すように、縦長(図示左右方向に長い)ブロック状の端子収容部81と端子収容部81の後部に取り付けられるキャップ状の電線カバー82とからなり、雌ハウジング80の両側面の長さ方向中央部には一対のフォロアピン83が突設されている。フォロアピン83は、前後方向(嵌合方向)に沿って細長い長円形の断面形状をなしている。また、電線カバー82の両側外面には、レバー40を保持する一対のレバーロック部84が突設されている。
【0015】
ハウジング20は合成樹脂製であって、雄端子金具(図示せず)を収容可能なハウジング本体21とハウジング本体21の前面外周から前方へ突出する縦長筒状のフード部22とを備えている。フード部22内には、雄端子金具のタブが突出して配置されると共に、タブを保護しつつ嵌合に伴って雌ハウジング80により押圧されて後退変位するムービングプレート23が組み込まれている。
【0016】
ムービングプレート23は、板状をなし、フード部22の奥面と対向する前壁24と前壁24の外周から前方に突出する周壁25とを備え、周壁25の外面がフード部22の内面を摺動可能となっている。そして、周壁25の両側にはフォロアピン83を受け入れ可能な一対の導入溝26が周壁25の前端に開口しつつ前後方向に延出して設けられている。また、周壁25の両側には、導入溝26の途中に橋渡しされた一対のアーチ部27が設けられている。アーチ部27の内側にはフォロアピン83の組付け空間が開放されており、この組付け空間内にフォロアピン83が嵌合することにより、アーチ部27とフォロアピン83が合体して一体的に挙動するようになっている。なお、フード部22の両側壁の前端縁には、フォロアピン83とアーチ部27が進入可能な切欠溝(図示せず)が切り欠いて設けられている。
【0017】
そして、ハウジング20の両側外面の略中央部には、ハウジング本体21の前端寄りの位置に、一対の軸部28が突設されている。軸部28は、円柱状であってレバー40の回転中心に位置している。
また、ハウジング20の両側外面には、軸部28の前方でかつフード部22の中間部に、一対のガイドピン29が内向きに突設されている。ガイドピン29は、軸部28より小型でやや縦長の円柱状をなし、レバー40の変位を案内する役割を担っている。ガイドピン29の相対向する両長辺は互いに平行なストレート部31とされる。
【0018】
続いてレバー40について説明する。レバー40は同じく合成樹脂製であって全体として門型板状をなし、図7に示すように、幅方向に延びる操作部41と操作部41の両端から互いに略平行に突出する一対のアーム部42とを備えている。このレバー40は、ハウジング20に跨るようにして軸部28に軸支され、ハウジング20に対して、移動開始位置と移動完了位置との間を嵌合方向と略直交する水平方向にスライド移動可能とされると共に回動開始位置と回動完了位置との間を回転中心周りに回動可能とされる。本実施形態においては、移動完了位置と回動開始位置がそれぞれ同じ位置に設定されている。そして、このレバー40は、スライド倍力機構と回転倍力機構の両機構をあわせ持つものであって、移動開始位置から移動完了位置に至る間はスライド手段によるスライド倍力機構によってハウジング20と相手コネクタ90との嵌合を助成し、回動開始位置から回動完了位置に至る間は回転手段による回転倍力機構によってハウジング20と相手コネクタ90との嵌合を助成するようになっている。
【0019】
両アーム部42の外面には、図6に示すように、レバー40のスライド移動方向(スライド倍力機構の動作方向)及び回動方向(回転倍力機構の動作方向)に沿って延びる有底のガイド溝43が設けられている。このガイド溝43は、スライド倍力機構に対応するスライドガイド溝44と回転倍力機構に対応する逃し溝45とにより構成されている。スライドガイド溝44は、スライド倍力機構が動作する間、嵌合方向と略直交する水平方向に沿って延出する形態とされる。スライドガイド溝44の溝幅はガイドピン29の短径寸法とほぼ同じであって、スライドガイド溝44の溝面(相対向する両溝面)にガイドピン29のストレート部31が摺動可能となっている。一方、逃し溝45は、スライドガイド溝44の終端に連なってレバー40の回転中心を中心とする円弧に沿って延出する形態とされ、その終端がアーム部42の外周に開口している。逃し溝45の溝幅はスライドガイド溝44の溝幅より大きく、逃し溝45内にガイドピン29が遊嵌可能となっている。
【0020】
また、両アーム部42には、ハウジング20の軸部28が嵌合可能な軸受け部46が貫通して設けられている。軸受け部46は、移動開始位置にて軸部28を導入する始端から移動完了位置(終端)へ向けて水平方向(スライド移動方向)に延びる長溝として構成され、スライドガイド溝44と互いに平行な位置関係にある。そして、軸受け部46の溝幅は後述する軸保持部48を除いて軸部28の径寸法とほぼ同じとされ、軸受け部46の溝面(相対向する両溝面)に軸部28が摺動可能となっている。
【0021】
軸受け部46の終端には、回動開始位置にて軸部28を移動規制状態で保持する軸収容室47が設けられており、この軸収容室47に軸部28が収容された状態で、レバー40の回動中心が規定されるようになっている。軸受け部46の溝面のうち軸収容室47の手前位置には、軸受け部46の溝内に突出してその溝幅を狭める形態の軸保持部48が設けられている。軸保持部48は、軸受け部46の両溝縁に沿った一対のスリット49を介することによって溝幅方向に撓み変形可能とされ、軸収容室47内に収容された軸部28に戻り方向(始端側への移動方向)で当接する軸部28外周に沿った円弧状のバネ片51を有している。
【0022】
そして、両アーム部42の内面には、図5に示すように、スライド倍力機構のスライド手段を構成するスライド溝52と、回転倍力機構の回動手段を構成する回動溝53が設けられ、両溝52,53の溝面(カム面)にフォロアピン83が係合可能となっている。また、両アーム部42の内面には、逃し溝45が開口する側とは反対側の縁部に開口してフォロアピン83を受け入れ可能な導入口54が設けられ、この導入口54の終端に、スライド溝52の始端が一体に連なっている。スライド溝52はスライド倍力機構の作用方向に略直線状に延びる形態をなし、回動溝53はスライド溝52の終端にその始端が一体に連なって回転倍力機構の作用方向に略弧状に延びる形態をなしている。回動溝53はアーム部42の板厚方向でガイド溝43(スライドガイド溝44)とラップする位置に配置され、回動溝53の終端は軸受け部46の軸収容室47の近傍に配置されている。また、両アーム部42の内面には、レバーロック部84に係止可能な一対のレバーロック受け部55が凹設されている。
【0023】
操作部41は、スライド倍力機構と回転倍力機構とで区別なく共用され得るものであって、スライド倍力機構の動作時に指で押圧されるスライド操作面56と回転倍力機構の動作時に指で押圧される回動操作面57を有している。スライド操作面56はスライド移動方向と対向するフラット面とされ、回動操作面57はスライド操作面56と隣接する位置に配されて回動方向と対向するフラット面とされる。
【0024】
次に、本実施形態のコネクタ10の作用効果を説明する。
まず、ハウジング20に対してレバー40を移動開始位置に留め置く。すると、図1に示すように、操作部41がハウジング20から離間して配置されると共にアーム部42の前縁がフード部22の前縁に沿って配置され、レバー40が全体として縦向きの姿勢をとるようになる。また、移動開始位置では、図8(A)に示すように、ガイドピン29がガイド溝43の始端に嵌合位置すると共に軸部28が軸受け部46の始端に嵌合位置し、かつ、レバー40の導入口54が前方に向けて開放され、この導入口54内にアーチ部27が嵌合位置する。またこのとき、ムービングプレート23はフード部22の開口側に位置し、前壁24によってタブの先端が保護されている。
【0025】
続いて、ハウジング20と相手コネクタ90を互いに正対させ、その状態からフード部22内に雌ハウジング80を嵌め入れる。すると、図2に示すように、フォロアピン83が導入口54内に進入してアーチ部27と合体し、両ハウジング20,80が仮嵌合状態となってその嵌合動作がいったん停止される。
次いで、操作部41のスライド操作面56に指を宛がいつつレバー40をハウジング20側へ押圧し、レバー40を移動完了位置に至らす。すると、図3に示すように、操作部41がハウジング20に近接して配置され、レバー40の全体がハウジング20側に深く組み込まれた状態となる。
【0026】
レバー40が移動開始位置から移動完了位置まで移動する間、アーム部42と合体したフォロアピン83がスライド溝52の溝面を摺動することでスライド倍力機構が作用し、両ハウジング20,80が低操作力で互いに引き寄せられる。またこの間、ガイドピン29がスライドガイド溝44の溝面を摺動すると共に軸部28が軸受け部46の溝面を摺動し、レバー40の水平移動が保障される。レバー40が移動完了位置に至る手間では、軸部28が軸保持部48を弾性的に乗り越え、移動完了位置に至るに伴い、軸部28が軸受け部46の軸収容室47内に位置決め状態で収容される。軸部28が軸保持部46を通過する際、バネ片51がスリット49内に弾性変位するようになっている。そして移動完了位置(回動完了位置に同じ)では、フォロアピン83がアーチ部27と共にスライド溝52の終端に到達して回動溝53の始端に臨み、かつ、図8(B)に示すように、ガイドピン29がスライドガイド溝44の終端に到達して逃し溝45の始端に臨む。
【0027】
続いて、操作部41の回動操作面57を押圧しつつ、軸収容室47内の軸部28を中心としてレバー40を回動完了位置へ向けて図示時計周りに回動させる。すると、図4に示すように、操作部41が雌ハウジング80の電線カバー82の後方を縦断して電線カバー82の一端側(電線引き出し側)に当接すると共に、レバーロック部84とレバーロック受け部55が互いに弾性係止して、レバー40が傾倒姿勢をとりつつ回動完了位置に保持される。
【0028】
レバー40が回動開始位置から回動完了位置まで回動する間、アーム部42と合体したフォロアピン83が回動溝53の溝面を摺動することで回転倍力機構が作用し、両ハウジング20,80が低操作力で互いに引き寄せられる。この場合、上記したスライド倍力機構によって嵌合初期段階が終了しており、残りの段階を回転倍力機構が受け持つこととなる。また、ガイドピン29は、図8(C)に示すように、逃し溝45内に進入したあとレバー40の回動途中で逃し溝45の終端からアーム部42外へと抜け出るようになっている。レバー40が回動完了位置に至ると、フォロアピン83がアーチ部27と共に回動溝53の終端に到達して雌ハウジング80がフード部22内に深く嵌合され、かつ、ムービングプレート23の前壁24がフード部22の奥面に当接して、両端子金具が互いに正規深さで導通接続される。なお、両ハウジング20,80を離脱させる際には、レバー40の操作部41を回動初期位置側へ強く押圧してレバーロック部84とレバーロック受け部55との係止状態を解除し、上記とは逆のルートでレバー40の回動操作及びスライド操作を行えばよい。
【0029】
以上説明したように本実施形態によれば、スライド倍力機構と回転倍力機構がそれぞれ別々に動作するから、嵌合動作の一部がスライド倍力機構によって賄われ、その分、回転倍力機構の設定に余裕をもたせられる。その結果、レバー40の回転角を大きくとることで、大きな嵌合力が必要とされる場合にも対応することが可能となる。
【0030】
また、スライド倍力機構に続いて回転倍力機構が動作するから、嵌合力が小さい嵌合初期の段階をスライド倍力機構が担い、嵌合力が大きい嵌合終盤の段階を回転倍力機構が担うこととなり、嵌合効率に優れる。しかも、スライド倍力機構と回転倍力機構が単一のレバー40に構成されているから、各機構に対応して個別のレバー40が設けられるよりも構成を簡素化できる。
【0031】
また、スライド倍力機構による動作過程では、ガイド溝43の溝面にガイドピン29が摺動すると共に、軸受け部46の溝面に軸部28が摺動するから、レバー40が正規の移動ルートから外れるのを確実に防止できる。
さらに、レバー40の操作部41がスライド操作面56とこれとは別の回動操作面57を有するから、嵌合動作の過程で操作力が指の一点に集中するのを回避できる。
【0032】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図9によって説明する。実施形態2では、実施形態1と違って、レバー40における移動完了位置と回動初期位置との間に、遊びとして移行領域59が設けられている。この移行領域59は、スライド手段を構成するスライド溝52の終端に延長して設けられ、スライド倍力機構のスライド移動方向と対応するべく移動完了位置(レバー40の未回動時)にて嵌合方向と直交する水平方向に沿って延出する形態とされる。したがって、フォロアピン83が移行領域59を通過する間、両ハウジング20,80は互いに嵌合動作を進めることはなく前後方向の一定位置に保たれる。
【0033】
また、フォロアピン83が移行領域59を通過する際、軸部28は軸保持部48と当接して軸保持部48を弾性撓みさせた状態にある。かかる軸保持部48の弾性撓みに起因してレバー40が少し不安定な状態になるが、この間、フォロアピン83が移行領域59に位置することで両ハウジング20,80の嵌合は進行しないため、嵌合動作に支障を来たすことはない。
【0034】
このように実施形態2によれば、移行領域59と対応して嵌合と関わりのない構造を設けても嵌合に支障を来たすことがないから、設計の自由度が高められる。また、移行領域59がスライド溝52の終端に水平方向に延長して設けられているから、回転倍力機構側でレバー40の回転角が制約を受けることがなく、レバー40の回転角を大きく確保できる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)回転倍力機構に続いてスライド倍力機構が動作してもよい。
(2)回転倍力機構は公知のラック・ピニオン機構で相手コネクタとの嵌合を進めるレバーであってもよい。また、回転倍力機構は公知のてこ式レバーで構成されてもよい。
(3)ガイド溝がハウジング側に設けられ、ガイドピンがレバー側に設けられていてもよい。
(4)ガイド溝とガイドピンは省略しても構わない。
(5)軸部がハウジング側に設けられ、軸受け部がレバー側に設けられていてもよい。
(6)ムービングプレートは省略しても構わない。
(7)レバーは雌ハウジングに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…コネクタ
20…ハウジング
28…軸部
29…ガイドピン
40…レバー
43…ガイド溝
46…軸受け部
52…スライド溝
53…回動溝
80…雌ハウジング
83…フォロアピン
90…相手コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタと嵌合可能なハウジングと、
前記相手コネクタとの嵌合時に前記ハウジングに対して嵌合方向と交差する方向に移動するスライド手段によって嵌合を進めるスライド倍力機構と、
前記相手コネクタとの嵌合時に前記ハウジングに対して回転中心周りに回動する回動手段によって嵌合を進める回転倍力機構とを備え、
前記スライド倍力機構と前記回転倍力機構がそれぞれ別々に動作するものであり、
前記スライド倍力機構と前記回転倍力機構が単一のレバーに構成され、
前記レバーには、前記相手コネクタに設けられたフォロアピンと係合して前記相手コネクタとの嵌合を進める前記スライド倍力機構用のスライド溝と、前記フォロアピンと係合して前記相手コネクタとの嵌合を進める前記回転倍力機構用の回動溝が設けられ、前記スライド溝と前記回動溝が互いに連通していることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記スライド倍力機構に続いて前記回転倍力機構が動作し、動作過程では前記フォロアピンが前記スライド溝から前記回動溝へと移行するようになっており、
前記レバーは、前記ハウジングに対して、前記スライド倍力機構によって移動開始位置と移動完了位置との間を移動可能とされると共に、前記回転倍力機構によって回転開始位置と回転完了位置との間を回動可能とされ、
前記移動開始位置では、前記レバーの端部が前記ハウジングから離間して配置され、前記移動完了位置では、前記レバーの端部が前記ハウジングに近接して配置されることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記レバーと前記ハウジングのいずれか一方には前記レバーの回転中心となる軸部が設けられ、他方には前記軸部が嵌る軸受け部が設けられており、前記軸受け部は、前記スライド倍力機構の動作過程で前記軸部の変位を許容するべく前記スライド倍力機構の動作方向に延びる長溝として構成され、
前記レバーと前記ハウジングのいずれか一方には、前記長溝と平行して、前記スライド倍力機構の動作方向に延びるガイド溝が設けられ、他方には、前記軸部とは別に、前記スライド倍力機構による動作過程で前記ガイド溝の溝面を摺動するガイドピンが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−109278(P2012−109278A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49495(P2012−49495)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2007−332221(P2007−332221)の分割
【原出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】