説明

コネクタ

【課題】コスト低減を図る。
【解決手段】第1ハウジング10には、一対の弾性接触片25を有する多機能端子20(ショート端子)が一体に移動するように設けられ、第2ハウジング30には、第2端子金具33における弾性接触片25との接触部34を露出させた状態で、第2端子金具33を収容する端子収容部31が形成され、端子収容部31を構成する下壁部35には、第2ハウジング30に対する第1ハウジング10の嵌合方向において接触部34よりも前方に配置され、両ハウジング10,30が嵌合した状態において弾性接触片25を弾性接触させる受け部37が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のエアバッグ回路に用いることのできるコネクタが開示されている。このコネクタは、互いに嵌合される第1ハウジングと第2ハウジングとを有する。第1ハウジングには、並列配置された一対の第1端子金具と、一対の弾性接触片を有するショート端子とが設けられている。第2ハウジングには、片持ち状に突出した形態の解除突起が一体に形成されているとともに、一対の第1端子金具と接続される一対の第2端子金具が設けられている。
【0003】
両ハウジングの嵌合過程では、一対の弾性接触片が一対の第1端子金具に弾性接触して両第1端子金具が短絡されることにより、嵌合時の摩擦によって生じた静電気に起因するエアバッグ回路の誤動作が防止される。そして、両ハウジングの嵌合が進んで第1端子金具と第2端子金具が接触した後は、解除突起が弾性接触片と第1端子金具との間に割り込んで弾性接触片を弾性撓みさせることにより、両端子金具の短絡が解除される。そして、両ハウジングが正規嵌合された後は、両第1端子金具の短絡解除状態を維持するために、弾性接触片は長期間に亘って弾性撓みさせられたままとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−033165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
片持ち状に突出した形態の解除突起は、剛性アップのために、弾性接触片を弾性撓みさせる方向に肉厚な形態となっているので、弾性接触片の弾性撓み量も大きくなっている。ところが、弾性接触片は、メンテナンス時に再び第1端子金具を短絡させる必要があるため、経年劣化によるバネ力低下を来した状態においても所定のバネ力が確保されていなければならない。そのため、従来では、ショート端子には高価な金属材料が用いられていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、一対の第1端子金具が設けられた第1ハウジングと、一対の第2端子金具が設けられた第2ハウジングと、前記第1ハウジングに一体的に移動するように設けられ、前記一対の第2端子金具に弾性接触可能な一対の弾性接触片を有するショート端子とを備え、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合過程では、前記ショート端子により前記一対の第2端子金具が短絡された状態で、前記第1端子金具と前記第2端子金具とが接触し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合した状態では、前記ショート端子による前記一対の第2端子金具の短絡が解除されるようになっているコネクタであって、前記第2ハウジングには、前記第2端子金具における前記弾性接触片との接触部を露出させた状態で、前記第2端子金具の少なくとも一部を収容する端子収容部が形成され、前記端子収容部を構成する壁部には、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合方向において前記接触部よりも前方に配置され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合した状態において前記弾性接触片を弾性接触させる受け部が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記壁部のうち前記受け部の形成領域が、他の領域に比べて肉薄とされているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記第1ハウジングが、回路基板に表面実装されるようになっており、前記ショート端子には、前記第1ハウジングを前記回路基板に固定するためのペグ機能部が一体的に設けられているところに特徴を有する。
尚、本発明において「一体的に設けられている」とは、単一部品であるショート端子にペグ機能部を一体に形成する場合に限らず、ショート端子とは別体の部品にペグ機能部を形成し、このペグ機能部が形成された部品とショート端子とを圧着、溶接等の手段によって導通可能に結合(合体)して一体部品化する場合も含む。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記ショート端子には、検知部が一体的に設けられ、前記第1ハウジングには、前記ショート端子とは別体であって、前記検知部と接触可能な検知端子が設けられ、前記検知部と前記検知端子が接触することで、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合したことが検知されるようになっているところに特徴を有する。
尚、本発明において「一体的に設けられている」とは、単一部品であるショート端子に検知部を一体に形成する場合に限らず、ショート端子とは別体の部品に検知部を形成し、この検知部が形成された部品とショート端子とを圧着、溶接等の手段によって導通可能に結合(合体)して一体部品化する場合も含む。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
両ハウジングの嵌合終期には、第2端子金具の接触部に弾性接触していた弾性接触片が、弾性撓み量を増しながら受け部に乗り上がる。この受け部が形成されている端子収容部の壁部は、第2端子金具を包囲するような形態であるから、片持ち状に突出した形態のものに比べて剛性が高い。したがって、壁部は、比較的肉薄にすることが可能となるので、両ハウジングが嵌合した状態における弾性接触片の弾性撓み量を低減させることができる。これにより、経年劣化による弾性接触片のバネ力低下の進行が抑えられるので、ショート端子として安価な金属材料を用いることができる。
【0011】
<請求項2の発明>
端子収容部を構成する壁部のうち受け部の形成領域を、他の領域に比べて肉薄としたので、その分、弾性接触片の弾性撓み量が小さく抑えられる。
【0012】
<請求項3の発明>
ショート端子にペグ機能部を一体的に設けたので、ショート端子とは別体のペグを用いる場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0013】
<請求項4の発明>
両ハウジングの嵌合状態を検知する手段としての検知部を、ショート端子に一体的に設けたので、検知部を、ショート端子とは別体の部品に形成する場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態1の第2ハウジングの正面図
【図2】第2ハウジングの底面図
【図3】第1ハウジングの正面図
【図4】両ハウジングが離脱した状態におけるエアバッグ回路の誤作動防止手段をあらわす断面図
【図5】両ハウジングの嵌合過程におけるエアバッグ回路の誤作動防止手段をあらわす断面図
【図6】両ハウジングが正規嵌合した状態におけるエアバッグ回路の誤作動防止手段をあらわす断面図
【図7】両ハウジングが離脱した状態における嵌合検知手段をあらわす断面図
【図8】両ハウジングの嵌合過程における嵌合検知手段をあらわす断面図
【図9】両ハウジングが正規嵌合した状態における嵌合検知手段をあらわす断面図
【図10】右側の多機能端子の正面図
【図11】右側の多機能端子の平面図
【図12】右側の多機能端子の側面図
【図13】参考例のコネクタの背面図
【図14】参考例のコネクタの断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図12を参照して説明する。本実施形態のコネクタAは、図4〜9に示すように回路基板Pの表面に実装される第1ハウジング10と、図6,9に示すように第1ハウジング10に嵌合される第2ハウジング30とを備え、自動車のエアバッグ回路(図示省略)に接続されている。コネクタAは、両ハウジング10,30が正規に嵌合したかどうかを検知する嵌合検知手段と、両ハウジング10,30の嵌合の際にエアバッグが誤作動するのを防止する誤作動防止手段を有している。尚、以下の説明において、第1ハウジング10の上下方向は、水平にした回路基板Pの上面に固定した状態を基準とし、第2ハウジング30の上下方向は、回路基板Pに固定されている第1ハウジング10に嵌合した状態を基準とする。
【0016】
第1ハウジング10は、合成樹脂製であり、図4〜9に示すように、板厚方向を前後方向に向けた板状をなす端子保持部11と、端子保持部11の外周から前方へ突出する角筒状のフード部12とを一体に形成したものである。フード部12を構成する下板部13には、その上面(フード部12の内面)側へ突出するロック用係止部14が形成されている。図3に示すように、ロック用係止部14は、左右方向において第1ハウジング10の略中央位置に配置されている。
【0017】
第1ハウジング10には、図4〜9に示すように、端子保持部11に対して前後に貫通するように取り付けられた複数の細長い雄形の第1端子金具15が設けられている。図3に示すように、複数の第1端子金具15は、上下2段に分かれて千鳥状に配置された状態で端子保持部11を貫通している。図4〜9に示すように、各第1端子金具15の前端部(図4〜9における右側の端部)は、前方へ水平に突出した形態でフード部12内に収容され、各第1端子金具15の後端部は、端子保持部11の後方において下方へ屈曲されて、回路基板Pの表面に接続されている。下段側の第1端子金具15は、左右に隣り合って並ぶもの同士が対をなすように、合計4対設けられており、これら4対の第1端子金具15は、エアバッグ回路を構成している。
【0018】
図7〜9に示すように、第1ハウジング10には、端子保持部11に対して前後に貫通するように取り付けられた1つの細長いタブ状端子16(本発明の構成要件である検知端子)が設けられている。タブ状端子16は、嵌合検知手段として機能するものであって、検知回路(図示省略)を構成している。図3に示すように、タブ状端子16は、第1ハウジング10の左右方向における略中央位置であって、ロック用係止部14から幅方向(左右方向)にずれた位置に配置されている。タブ状端子16の前端部は、第1端子金具15と同じく前方へ水平に突出した形態でフード部12内に収容されている。タブ状端子16の前端部は、上下方向においては下段側の第1端子金具15の前端部よりも少し低い位置に配置されている。このタブ状端子16は、端子保持部11の貫通部を支点として下方へ弾性的に撓み得るようになっている。
【0019】
図4〜9に示すように、第1ハウジング10には、左右一対の多機能端子20(本発明の構成要件であるショート端子)が、フード部12の下板部13の内面(上面)に沿うように取り付けられている。この多機能端子20は、両ハウジング10,30の嵌合・離脱時には、第1ハウジング10と一体に移動し得るようになっている。尚、便宜上、図面には、右側の多機能端子20のみをあらわし、左側の多機能端子20については、図示を省略して文章の説明のみとする。この左側の多機能端子20は、後述する検知部24を有していないという点を除いては、右側の多機能端子20と左右対称な形態となっている。
【0020】
右側の多機能端子20は、第1ハウジング10を回路基板Pに固定するための固定手段としての機能と、嵌合検知手段としての機能と、エアバッグの誤作動防止手段としての機能とを兼ね備えている。図10〜12に示すように、右側の多機能端子20は、左右方向に長い平板状のベース部21と、固定手段として機能するペグ機能部22と、嵌合検知手段として機能する検知部24と、左右に並ぶように配置されて誤作動防止手段として機能する2対の弾性接触片25とを一体化したものである。
【0021】
ペグ機能部22は、ベース部21の右端部から前方へ片持ち状に延出した形態であり、ベース部21よりも一段低くなって回路基板Pに載置される脚部23を有している。検知部24は、ベース部21の左端部から前方へ片持ち状に延出した形態であり、側方(両ハウジング10,30の嵌合方向と交差する方向)から見て山形に屈曲されている。2対の弾性接触片25は、ベース部21の前端縁から前方へ延出した部分の延出端から上方へ折り返されて後方へ片持ち状に延出した形態であり、弾性接触片25の後端部には接点部26が形成されている。また、多機能端子20には、ベース部21の前端縁から検知部24に並ぶように前方へ片持ち状に延出した形態の圧入部27と、ベース部21の一部を下方へ切り起こした形態の複数の抜止片28とが形成されている。
【0022】
かかる右側の多機能端子20は、第1ハウジング10の前方からフード部12の下板部13に対して圧入部27を差し込む(圧入する)ことによって取り付けられている。取り付けられた多機能端子20は、抜止片28の係止作用によって抜止め状態に保持されている。多機能端子20が取り付けられた状態では、ペグ機能部22が下板部13(第1ハウジング10)の右端部に位置し、脚部23が下板部13の下方へ突出して回路基板Pの検知回路(図示省略)に接続されている。図7〜9に示すように、検知部24は、タブ状端子16の下方に配置され、タブ状端子16に対して僅かな間隔を空けた非接触の状態となっている。2対の弾性接触片25は、左右方向において、エアバッグ回路を構成している下段側の4対の第1端子金具15のうち右側の2対の第1端子金具15と対応するように配置されている。図4〜6に示すように、弾性接触片25の接点部26は、第1端子金具15の前端部よりも下方で、且つ第1端子金具15の前端部よりも更に前方(つまり、第2ハウジング30に対する第1ハウジング10の嵌合方向における前方である)の位置に配置されている。
【0023】
第2ハウジング30は、合成樹脂製であり、図1に示すように、全体としてブロック状をなす端子収容部31と、端子収容部31の外面に沿うように配置したロックアーム40とを一体に形成したものである。図1に示すように、端子収容部31の内部には、複数のキャビティ32が、上下2段に分かれて第1端子金具15と対応するように千鳥配置で形成されている。図4〜9に示すように、各キャビティ32内には、後方(図4〜9における右方)から雌形の第2端子金具33が挿入されている。
【0024】
下段側のキャビティ32に収容された第2端子金具33は、左右に隣り合って並ぶもの同士が対をなすように4対設けられており、これら4対の第2端子金具33はエアバッグ回路を構成している。このエアバッグ回路を構成する4対の第2端子金具33の前端部は、第1ハウジング10側の弾性接触片25との接触手段として機能する箱状の接触部34となっている(図4〜6を参照)。
【0025】
図4〜6に示すように、端子収容部31の下壁部35(本発明の構成要件である端子収容部31を構成する壁部)は、下段側のキャビティ32と端子収容部31の外部とを区画している。図1,2,4〜6に示すように、下壁部35の前端部には、下段側のキャビティ32の前端部を端子収容部31の外部へ連通させる切欠部36が形成されている。この切欠部36においては、第2端子金具33の接触部34が、端子収容部31の外部下方へ露出している。
【0026】
下壁部35のうち切欠部36よりも後方の領域は、受け部37となっている。この受け部37は、第2ハウジング30に対する第1ハウジング10の嵌合方向においては、切欠部36(接触部34)よりも前方の位置に配置されている。受け部37の厚さ(上下)寸法は、下壁部35のうち受け部37の形成されていない領域(第2ハウジング30における受け部37よりも後方の領域)の厚さよりも小さい寸法となっている。したがって、上下方向(弾性接触片25の弾性撓み方向)において、第2端子金具33の接触部34の下面と受け部37の下面との高低差は、下壁部35のうち受け部37よりも後方の領域の下面と接触部34の下面との高低差よりも小さく抑えられている。
【0027】
図1に示すように、端子収容部31の下面には、その左右方向における略中央部分を凹ませた形態の凹部38が形成され、この凹部38内にロックアーム40が配置されている。図2,7〜9に示すように、ロックアーム40は、全体として前後方向(両ハウジング10,30の嵌合方向と略平行な方向)に長い板状をなし、前端部において端子収容部31の外面に連なっていて、この前端部を支点として上下方向(両ハウジング10,30の嵌合方向と交差する方向)へ弾性撓みするようになっている。ロックアーム40の下面には、ロック突起41と押圧部42とが形成されている。ロック突起41は、ロックアーム40の下面におけるロック用係止部14と対応する位置から下方へ突出した形態である。押圧部42は、ロックアーム40の下面のうちロック突起41よりも少し前方の位置であり、且つロック突起41に対して幅方向(左右方向)にずれてタブ状端子16と対応する位置から下方へ突出した形態である。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。両ハウジング10,30が未嵌合の(離脱した)状態では、図7に示すように、タブ状端子16が弾性撓みせずに、多機能端子20の検知部24に対して上方へ離間した位置で待機している。また、エアバッグ回路においては、対をなす第1端子金具15同士が非接触状態であり、対をなす第2端子金具33同士も非接触の状態である。
【0029】
両ハウジング10,30を嵌合する過程では、端子収容部31がフード部12内に進入すると、図5に示すように、第1ハウジング10側の弾性接触片25が、第2ハウジング30の切欠部36内に進入して弾性撓みし、接点部26が第2端子金具33の接触部34に接触する。この弾性接触片25の接触により、エアバッグ回路の対をなす第2端子金具33同士が短絡されるので、両ハウジング10,30の嵌合時の摩擦により生じた静電気に起因するエアバッグ回路の誤動作が防止される。
【0030】
この状態から、両ハウジング10,30の嵌合が更に進むと、図8に示すように、ロック突起41がロック用係止部14と干渉することにより、ロックアーム40が下方へ弾性撓みさせられるとともに、エアバッグ回路を構成する第1端子金具15と第2端子金具33とが接続される。この状態から、両ハウジング10,30の嵌合が更に進むと、弾性接触片25の接点部26が、切欠部36を通過して第2端子金具33(接触部34)から離間するので、対をなす第2端子金具33同士の短絡が解除され、エアバッグ回路は、正しく作動し得る状態となる。そして、接触部34から離間した接点部26は、受け部37の下面に接触した状態となる。ここで、受け部37の下面は接触部34の下面よりも下方(接触部34から遠ざかる方向)に位置しているので、接点部26(弾性接触片25)が接触部34から受け部37へ乗り移るときには、弾性接触片25の弾性撓み量が、接触部34に弾性接触している状態よりも増大する。
【0031】
そして、両ハウジング10,30が正規の嵌合状態に到達すると、図9に示すように、ロック突起41がロック用係止部14を通過するので、ロックアーム40が下方へ弾性復帰することにより、ロック突起41がロック用係止部14に係止し、この係止作用によって両ハウジング10,30が離脱規制された状態にロックされる。また、ロックアーム40が弾性復帰するのに伴い、押圧部42がタブ状端子16の前端部を下方へ押圧するので、タブ状端子16が下方へ弾性撓みして検知部24に対して弾性的に当接する。このとき、検知部24も少し弾性撓みする。これにより、タブ状端子16と多機能端子20とが導通(短絡)状態となり、この両端子16,20が短絡したことに基づいて、両ハウジング10,30が正規嵌合したことが検知される。尚、弾性接触片25の接点部26は、受け部37の下面に接触した状態に保たれる。
【0032】
本実施形態のコネクタAは、第2ハウジング30に、第2端子金具33における弾性接触片25との接触部34を露出させた状態で、第2端子金具33の少なくとも一部を収容する端子収容部31を形成し、端子収容部31を構成する下壁部35には、第2ハウジング30に対する第1ハウジング10の嵌合方向において接触部34よりも前方に配置され、両ハウジング10,30が正規嵌合した状態において弾性接触片25を弾性接触させる受け部37を形成している。そして、両ハウジング10,30の嵌合終期には、第2端子金具33の接触部34に弾性接触していた弾性接触片25が、弾性撓み量を増しながら受け部37に乗り上がる。
【0033】
この受け部37が形成されている端子収容部31の下壁部35は、第2端子金具33を包囲する形態であるから、片持ち状に突出した形態のものに比べて剛性が高い。つまり、下壁部35(受け部37)は、比較的肉薄にしても高い剛性が確保される。下壁部35を肉薄にすることは、両ハウジング10,30が嵌合した状態における弾性接触片25の弾性撓み量を低減できる、ということを意味するので、経年劣化による弾性接触片25のバネ力低下の進行が抑えられる。特に、本実施形態では、端子収容部31を構成する下壁部35のうち受け部37の形成領域を、他の領域に比べて肉薄としたので、その分、弾性接触片25の弾性撓み量が更に小さく抑えられている。したがって、本実施形態によれば、弾性接触片25が形成されている多機能端子20として安価な金属材料を用いてコスト低減を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態のコネクタAは、第1ハウジング10に設けられ、両ハウジング10,30が正規嵌合していない状態では互いに非接触であり、且つ弾性撓み可能なタブ状端子16と多機能端子20とを有し、更に、両ハウジング10,30が正規嵌合したときにのみ、タブ状端子16と多機能端子20の検知部24とを接触させるためのロックアーム40を備えている。本実施形態では、両ハウジング10,30の嵌合状態を検知する手段として第1ハウジング10に設ける端子は一対の検知端子(タブ状端子16と多機能端子20)だけであるから、この2つの検知端子(タブ状端子16と多機能端子20)の他に短絡端子を用いる場合に比べると、部品点数が少なくて済んでいる。
【0035】
また、多機能端子20には、エアバッグ回路の誤作動防止手段としての弾性接触片25と、両ハウジング10,30の嵌合検知手段としての検知部24とが一体に形成されているので、弾性接触片や検知部を多機能端子とは別体の部品に形成する場合に比べると、部品点数が少なくて済んでいる。
【0036】
さらに、本実施形態では、第1ハウジング10が、回路基板Pに表面実装されるようになっているが、この点に着目し、エアバッグ回路の誤作動防止手段としての多機能端子20に、第1ハウジング10を回路基板Pに固定するためのペグ機能部22を一体に形成している。この構成によれば、誤作動防止手段(多機能端子20)とは別体のペグを用いる場合に比べると、部品点数が少なくて済む。さらに、多機能端子20は嵌合検知手段としての機能も有しているので、嵌合検知手段(多機能端子20)とは別体のペグを用いる場合に比べて、部品点数が少なくて済む、という利点もある。
【0037】
また、嵌合検知手段として従来のようにタブ状をなす2本(一対)の検知端子を、フード部の中空内に配置する場合には、タブ状の検知端子を全周に亘って囲む絶縁用のスペースを、2本分確保する必要がある。これに対し、本実施形態では、2本(一対)の検知端子のうち一方の検知端子(多機能端子20)を、フード部12の中空内に配置するのではなく、フード部12の下板部13に沿うように配置した。このように、フード部12の中空内に配置されるタブ状をなす検知端子(タブ状端子16)を1本だけとしているので、タブ状の検知端子(タブ状端子16)のためにフード部12内に確保すべき絶縁用スペースは、1本分だけで済んでいる。これにより、フード部12の小型化や、フード部12内に収容される雄形の第1端子金具15の本数を増やすことが可能となっている。
【0038】
<参考例>
図13,14は、回路基板Pに表面実装される基板用コネクタBをあらわしている。この基板用コネクタBは、端子保持部51と、端子保持部51の外周縁から前方へ角筒状に突出するフード部52とを一体に形成して構成されたハウジング50を有している。端子保持部51には、複数の細長いタブ状の端子金具53が、上下2段に分かれて千鳥状に配置されて前後方向に貫通されている。端子金具53の前端部は、図示しない相手側端子との接続手段である端子接続部54となっていて、フード部52内に収容されている。端子金具53のうち端子保持部51よりも後方の領域には、略L字形に屈曲された基板接続部55が形成され、この基板接続部55は、回路基板Pの表面に接続されている。
【0039】
端子保持部51においては、複数の端子金具53が千鳥配置されていて、隣り合う端子接続部54同士の間隔(ピッチ)が大きく確保されるので、端子接続部54は太くすることができる。これに対し、基板接続部55は、回路基板P上において、前後方向にずれることなく左右方向に一列に並ぶように配置されるため、端子接続部54に比べてピッチが小さくなる。そのため、基板接続部55は、端子接続部54に比べて細くなっている。
【0040】
このような形態の端子金具53を製造する方法として、表面が錫メッキ処理された平板状の金属板材から、端子接続部よりも基板接続部が細くなった棒材を打ち抜き、これに曲げ加工を加えることも考えられるが、この場合、打ち抜きにより生じた破断面に後メッキ処理を施す必要がある。
【0041】
そこで、本参考例では、端子金具53の材料として、断面が角形(正方形)をなし、表面に錫メッキ処理が施された金属製の角線材(図示省略)が用いられている。端子金具53を製造する際には、まず、角線材を所定長さに切断し、切断した角線材のうち基板接続部55となる部分を、断面積が小さくなるように叩いて細長く延ばし、その後に、基板接続部55が曲げ加工される。この方法によれば、打ち抜きによる破断面が生じないので、後メッキ処理が不要である。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、端子収容部を構成する壁部のうち受け部の形成領域を、他の領域に比べて肉薄としたが、壁部の厚さは、受け部の形成領域を含めて均一にしてもよい。
(2)上記実施形態では、第1端子金具が雄形の端子金具であり、第2端子金具が雌形の端子金具である場合について説明したが、本発明は、第1端子金具が雌形の端子金具であり、第2端子金具が雄形の端子金具である場合にも適用できる。この場合は、雄形の第2端子金具のタブを、端子収容部の前端から前方へ突出させて、この突出させたタブを、弾性接触片との接触部として機能させればよい。
(3)上記実施形態では、回路基板に実装される基板用コネクタに適用した場合について説明したが、本発明は、基板用コネクタに限らず、ワイヤーハーネス同士を接続するためのコネクタにも適用できる。
(4)上記実施形態では、ショート端子(多機能端子)に、第1ハウジングを回路基板に固定するためのペグ機能部を一体に形成したが、ショート端子とは別体のペグを用いて第1ハウジングを回路基板に固定してもよい。
(5)上記実施形態では、両ハウジングの嵌合状態を検知する手段としての検知部を、ショート端子(多機能端子)に一体に形成したが、検知部を、ショート端子とは別体の部品に形成してもよい。
(6)上記実施形態では、多機能端子が、エアバッグ回路の誤作動防止手段としての弾性接触片と、両ハウジングの嵌合検知手段としての検知部と、第1ハウジングを回路基板に固定するためのペグ機能部とを一体に形成して構成されているが、多機能端子は、弾性接触片が形成されている部品と、検知部及びペグ機能部が形成されている部品とを導通可能に一体部品化したものでもよく、弾性接触片とペグ機能部が形成されている部品と、検知部が形成されている部品とを導通可能に一体部品化したものでもよく、弾性接触片と検知部が形成されている部品と、ペグ機能部が形成されている部品とを導通可能に一体部品化したものでもよく、弾性接触片が形成されている部品と、検知部が形成されている部品と、ペグ機能部が形成されている部品とを導通可能に一体部品化したものでもよい。このように複数の部品を導通可能に一体化する手段としては、圧着、溶接等の手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
A…コネクタ
P…回路基板
10…第1ハウジング
15…第1端子金具
16…タブ状端子(検知端子)
20…多機能端子(ショート端子)
22…ペグ機能部
24…検知部
25…弾性接触片
30…第2ハウジング
31…端子収容部
33…第2端子金具
34…接触部
35…下壁部(端子収容部を構成する壁部)
37…受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1端子金具が設けられた第1ハウジングと、
一対の第2端子金具が設けられた第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに一体的に移動するように設けられ、前記一対の第2端子金具に弾性接触可能な一対の弾性接触片を有するショート端子とを備え、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合過程では、前記ショート端子により前記一対の第2端子金具が短絡された状態で、前記第1端子金具と前記第2端子金具とが接触し、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合した状態では、前記ショート端子による前記一対の第2端子金具の短絡が解除されるようになっているコネクタであって、
前記第2ハウジングには、前記第2端子金具における前記弾性接触片との接触部を露出させた状態で、前記第2端子金具の少なくとも一部を収容する端子収容部が形成され、
前記端子収容部を構成する壁部には、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合方向において前記接触部よりも前方に配置され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合した状態において前記弾性接触片を弾性接触させる受け部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記壁部のうち前記受け部の形成領域が、他の領域に比べて肉薄とされていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1ハウジングが、回路基板に表面実装されるようになっており、
前記ショート端子には、前記第1ハウジングを前記回路基板に固定するためのペグ機能部が一体的に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ショート端子には、検知部が一体的に設けられ、
前記第1ハウジングには、前記ショート端子とは別体であって、前記検知部と接触可能な検知端子が設けられ、
前記検知部と前記検知端子が接触することで、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合したことが検知されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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