説明

コネクタ

【課題】相手側コネクタとの位置ずれを吸収できるとともに、コンタクトの接触力や変形量が大きくなりすぎないようにする。
【解決手段】固定側ハウジング10に相手側コネクタ900との嵌合離脱方向Fと直交するX方向へスライド可能に可動側ハウジング30を組み付ける。可動側コンタクト40に、固定側コンタクト20を前記X方向に挟持する一対の第1接触部43、相手側コンタクト920を前記X方向に挟持する一対の第2接触部44、及び第1接触部43と第2接触部44とを連結するとともに、前記嵌合離脱方向と前記X方向との両方に直交するY方向に沿う両外側において、一対の第1接触部43を相互に連結しかつ一対の第2接触部44を相互に連結する連結部45を形成する。可動側コンタクト40の連結部45を前記Y方向と平行な回転軸周りに回転可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は2つの接続対象物の間に介在してそれらの接続対象物同士を電気的に接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のコンタクトと、それらを保持する第1、第2ハウジングとを備えるコネクタが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
複数のコンタクトは上下2段に配置され、上段のコンタクトと下段のコンタクトとは線対称の関係である。
【0004】
複数のコンタクトはそれぞれ第1、第2接触部、第1、第2バネ部、第1、第2保持部及びフローティング部を有する。
【0005】
このコネクタを用いてカード基板とマザーボード基板とを電気的に接続するとき、カード基板がマザーボード基板に対して相対的に上方へ位置していたり、カード基板がマザーボード基板に対して傾いていたりしても、コンタクトが変形するので、両基板間の上下方向の位置ずれやマザーボード基板に対するカード基板の傾きは吸収され、第1、第2接触部と両基板との接触状態が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−198441号公報(0032、0035、0036、0050、0051、図9〜図13等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のコネクタでは、カード基板に接触する第1接触部の接触力がマザーボード基板に接触する第2接触部の接触力よりも著しく大きくなったり、フローティング部が大きく変形したりする。そのため、コネクタをカード基板に嵌合するときの操作力が大きくなるというおそれがあるとともに、第1、第2接触部やフローティング部が塑性変形したり、接触部の接触安定性が損なわれたりするおそれがある。
【0008】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は、相手側コネクタとの位置ずれを吸収できるとともに、コンタクトの接触力や変形量が大きくなりすぎないようにすることができるコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため請求項1の発明は、相手側コネクタに嵌合可能なコネクタであって、固定側ハウジングと、その固定側ハウジングに前記相手側コネクタとの嵌合離脱方向と直交するX方向へスライド可能に組み付けられた可動側ハウジングとを有し、前記固定側ハウジングには複数の固定側コンタクトが固定され、前記可動側ハウジングには複数の可動側コンタクトが収容されており、前記可動側ハウジングの前記固定側ハウジングに対するX方向へのスライドによって、前記相手側コネクタとのX方向の位置ずれを吸収して嵌合されるよう構成されたコネクタにおいて、前記複数の固定側コンタクトは、前記固定側ハウジングに、前記X方向に沿って並んで固定され、前記複数の可動側コンタクトは、前記可動側ハウジングに前記X方向に沿って並んで仕切られる複数のコンタクト収容室に、それぞれ収容され、前記可動側コンタクトは、前記固定側コンタクトを前記X方向に挟持する一対の第1接触部、及び前記相手側コンタクトを前記X方向に挟持する一対の第2接触部、並びに前記第1接触部と前記第2接触部とを連結するとともに、前記嵌合離脱方向と前記X方向との両方に直交するY方向に沿う両外側において、前記一対の第1接触部を相互に連結しかつ前記一対の第2接触部を相互に連結する連結部、を有するように、1枚の金属板から打ち抜き曲げ加工によって一体に形成され、前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとは、前記可動側コンタクトを、その前記連結部の、前記Y方向に沿う両外側において、前記一対の第1接触部を相互に連結しかつ前記一対の第2接触部を相互に連結する部位において、前記Y方向と平行な回転軸周りに回転可能に支持していることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコネクタにおいて、前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとにそれぞれ形成される凸部の両方が、前記可動側コンタクトを、その前記連結部の、前記Y方向に沿う両外側において、前記一対の第1接触部を相互に連結しかつ前記一対の第2接触部を相互に連結する部位において支持していることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のコネクタにおいて、前記可動側コンタクトの前記一対の第2接触部には、前記X方向に突出する突出部が設けられ、前記可動側ハウジングの前記相手側コンタクトに対向する面には、前記可動側コンタクトの前記突出部が挿入される孔が設けられ、前記突出部と前記孔とが、前記可動コンタクトが回転したとき前記第2接触部の振れを抑える振れ抑制手段を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、相手側コネクタとの位置ずれを吸収できるとともに、コンタクトの接触力や変形量が大きくなりすぎないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【図2】図2は図1に示すコネクタの一部を切断した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は相手側コネクタの斜視図である。
【図4】図4は図3に示す相手側コネクタの一部を切断した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は図1に示すコネクタと図3に示す相手側コネクタとが嵌合する前の状態を示す断面図である。
【図6】図6は固定側コンタクトと可動側コンタクトと相手側コンタクトとの接触状態を示す概念図である。
【図7】図7は固定側コンタクトと可動側コンタクトと相手側コンタクトとの接触状態を示す斜視図である。
【図8】図8は図1に示すコネクタと図3に示す相手側コネクタとが嵌合した状態を示す断面図である。
【図9】図9は図8に示す固定側コンタクトと可動側コンタクトと相手側コンタクトとの接触状態を示す概念図である。
【図10】図10は図1に示すコネクタと図3に示す相手側コネクタとが嵌合した状態を示す斜視図である。
【図11】図11は図10に示すコネクタ及び相手側コネクタの一部を切断した状態を示す斜視図である。
【図12】図12は図10に示すコネクタ及び相手側コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態のコネクタを図1〜図12に基づいて説明する。
【0015】
図1、図2に示すように、コネクタ100は固定側ハウジング10と複数の固定側コンタクト20と可動側ハウジング30と複数の可動側コンタクト40とを備える。コネクタ100は図示しないプリント基板に実装され、相手側コネクタ900(図3参照)に対して嵌合、離脱可能である。
【0016】
図1、図2、図5、図12に示すように、固定側ハウジング10は箱状であり、その上部(図2において固定側ハウジング10の上側の部分)が開口している。固定側ハウジング10は絶縁性の樹脂で一体成形されている。固定側ハウジング10は正面部11と背面部12と底面部13と側面部14,14とを有する。
【0017】
正面部11の厚さは均一でなく、正面部11の下部(図12において固定側ハウジング10の上側の部分)が厚く、上部が薄い(図12参照)。正面部11の内面には段差面11aが形成され、段差面11aには凸部11dが形成されている(図12参照)。凸部11dの先端部は円弧状である。
【0018】
背面部12は正面部11と同様な形状であり、背面部12の下部が厚く、上部が薄い(図12参照)。背面部12の内面には段差面12aが形成されている。固定側ハウジング10の高さ方向(コネクタ100と相手側コネクタ900(図3参照)との嵌合離脱方向Fと平行な方向)において、背面部12の段差面12aの位置は正面部11の段差面11aの位置と同じである。段差面12aには凸部12dが形成されている(図12参照)。凸部12dの先端部は円弧状である。
【0019】
底面部13にはX方向(嵌合離脱方向Fと直交する方向)に沿って等間隔にスリット13bが形成されている。スリット13bはY方向(嵌合離脱方向FとX方向とに直交する方向)へ延びている(図2参照)。
【0020】
両側面部14,14の内面にも正面部11や背面部12と同様にそれぞれ段差面14a(図2、図5参照)が形成されている。固定側ハウジング10の高さ方向において、側面部14の段差面14aの位置は正面部11の段差面11aの位置と同じである。
【0021】
固定側ハウジング10内にはX方向に沿って等間隔に複数の仕切16が形成されている(図5参照)。仕切16は隣接する2つのスリット13bの中間に位置する。
【0022】
また、固定側ハウジング10内には複数の仕切16と直交する中央仕切17が形成されている(図2参照)。複数の仕切16と中央仕切17とによって固定側ハウジング10内の空間は複数に仕切られ、複数の収容室18,19(図12参照)が構成される。複数の収容室18と複数の収容室19とはそれぞれX方向に沿って並んでいる。収容室18,19はそれぞれスリット13bに通じている。
【0023】
図2、図7に示すように、固定側コンタクト20は接触部21と複数の接続部22とを有する。接触部21と接続部22とは一体に形成されている。接触部21はプレート状である。複数の接続部22はそれぞれピン状であり、接触部21に等間隔に連なる。
【0024】
固定側コンタクト20は固定側ハウジング10の底面部13のスリット13bに圧入される(図2参照)。
【0025】
図1、図2、図5、図12に示すように、可動側ハウジング30は箱状であり、その下部(図12において可動側ハウジング30の上側の部分)が開口している。可動側ハウジング30は絶縁性の樹脂で一体成形されている。可動側ハウジング30は正面部31と背面部32と上面部33と側面部34,34とを有する(図1参照)。
【0026】
可動側ハウジング30の正面部31と背面部32との内面にはそれぞれ段差面31a,32aが形成されている。段差面31a,32aにはそれぞれ凸部31d,32dが形成されている(図5、図12参照)。凸部31d,32dの先端部は円弧状である。
【0027】
凸部31d、凸部32dと前述の固定側ハウジング10の凸部11d、凸部12dとの間に、可動側コンタクト40の連結部45が遊動可能に配置される。
【0028】
図1に示すように、正面部31には複数のスリット31bがX方向に沿って等間隔に形成されている。スリット31bは嵌合離脱方向Fへ延びている。
【0029】
背面部32には複数のスリット(図示せず)がX方向に沿って等間隔に形成されている。背面部32のスリットは嵌合離脱方向Fへ延びている。背面部32のスリットはY方向で正面部31のスリット31bと対向している。
【0030】
上面部33には複数のスリット33bがX方向に沿って等間隔に形成されている。スリット33bはY方向へ延びている。スリット33bの一端は正面部31のスリット31bにつながり、スリット33bの他端は背面部32のスリットにつながる。可動側ハウジング30のスリット33bの両側にはY方向に沿って所定間隔に複数の孔33cが形成されている。
【0031】
可動側ハウジング30内にはX方向に沿って等間隔に複数の仕切36が形成されている(図5参照)。仕切36は隣接する2つのスリット33bの中間に位置する。仕切36は嵌合離脱方向Fで固定側ハウジング10の仕切16に対向する。
【0032】
また、可動側ハウジング30内には複数の仕切36と直交する中央仕切37が形成されている(図12参照)。複数の仕切36と中央仕切37とによって可動側ハウジング30内の空間は複数に仕切られ、複数のコンタクト収容室(コンタクト収容孔)38,39が構成される。複数のコンタクト収容室38と複数のコンタクト収容室39とはそれぞれX方向に沿って並んでいる。コンタクト収容室38,39はそれぞれスリット33bと孔33cとに通じている。また、コンタクト収容室38は収容室18に、コンタクト収容室39は収容室19にそれぞれ連なる(図12参照)。
【0033】
可動側ハウジング30の正面部31、背面部32の外面にはそれぞれ凸部(図示せず)が形成されている。固定側ハウジング10の正面部11,背面部12の内面にはそれぞれ凹部(図示せず)が形成されている。この凹部はX方向へ延び、上述の可動側ハウジング30の凸部を上述の固定側ハウジング10の凹部に嵌めることによって、可動側ハウジング30の下部はX方向へスライド可能に固定側ハウジング10に組み付けられる。
【0034】
図2、図7に示すように、可動側コンタクト40は一対の第1接触部43と一対の第2接触部44と連結部45とを有する。可動側コンタクト40は1枚の金属板に打抜き加工及び曲げ加工を施すことによって形成されている。
【0035】
一対の第1接触部43はそれぞればね部43aと接点部43bとを有する。ばね部43aは接点部43bを固定側コンタクト20の接触部21に押し付ける。接点部43bは円弧状に折り曲げられ、固定側コンタクト20の接触部21に接触する。
【0036】
一対の第2接触部44はそれぞればね部44aと接点部44bと一対の突出部44cとを有する。ばね部44aは接点部44bを後述する相手側コンタクト920の接触部921に押し付ける。接点部44bはほぼ円弧状に折り曲げられ、相手側コンタクト920の接触部921に接触する。一対の突出部44cはそれぞれほぼL字形に折り曲げられ、接点部44bに連なる。一対の突出部44cはそれぞれ可動側ハウジング30の上面部33の孔33cに挿入される(図5参照)。一対の突出部44cと孔33cとで振れ抑制手段が構成され、可動側ハウジング30がスライドしたとき可動側コンタクト40の第2接触部44の振れが抑制される。
【0037】
連結部45は一対の第1接触部43と一対の第2接触部44とを連結する。
【0038】
可動側コンタクト40は可動側ハウジング30のコンタクト収容室38,39に収容される。コンタクト収容室38内の可動側コンタクト40の連結部45は、図12に示すように、固定側ハウジング10の凸部11dと可動側ハウジング30の凸部31dとの間に配置されるとともに、固定側ハウジング10の中央仕切17と可動側ハウジング30の中央仕切37との間に配置される。可動側コンタクト40はコンタクト収容室38内でY方向と平行な回転軸周りへ所定の範囲だけ回転可能である。
【0039】
図12に示すように、コンタクト収容室39に収容された可動側コンタクト40の向きとコンタクト収容室38に収容された可動側コンタクト40の向きとは逆である。コンタクト収容室39内の可動側コンタクト40の連結部45は、固定側ハウジング10の凸部12dと可動側ハウジング30の凸部32dとの間に配置されるとともに、固定側ハウジング10の中央仕切17と可動側ハウジング30の中央仕切37との間に配置される。可動側コンタクト40はコンタクト収容室39内でY方向と平行な回転軸周りへ所定の範囲だけ回転可能である。
【0040】
図3、図4に示すように、相手側コネクタ900は相手側ハウジング910と複数の相手側コンタクト920とを備える。
【0041】
相手側ハウジング910は箱状であり、その上部が開口している。相手側ハウジング910は絶縁性の樹脂で一体成形されている。相手側ハウジング910は正面部911と背面部912と底面部913と側面部914,914とを有する。
【0042】
正面部911の内面と背面部912の内面との距離は、それらの間で可動側ハウジング30がY方向にわずかに移動可能な大きさとされる。背面部912の内面にはさらに凹部912aが形成されている。また、背面部912の内面にはX方向に沿って等間隔に溝912bが形成されている。溝912bは嵌合離脱方向Fへ延びている。更に、背面部912の上端部には誘い面912cが形成されている。
【0043】
正面部911の内面には背面部912の内面と同様に凹部911aと溝(図示せず)と誘い面(図示せず)とが形成されている。正面部911の溝は正面部911の内面にX方向に沿って等間隔に形成され、嵌合離脱方向Fへ延びている。
【0044】
底面部913にはX方向に沿って等間隔にスリット913bが形成されている。スリット913bはY方向へ延びている。スリット913bの一端は正面部911の溝(図示せず)に通じ、スリット913bの他端は背面部912の溝912bに通じている。
【0045】
両側面部914の上端部には誘い面914cが形成されている(図5参照)。
【0046】
図4、図7に示すように、相手側コンタクト920は接触部921と複数の接続部922とを有する。接触部921と接続部922とは一体に形成されている。接触部921はプレート状である。複数の接続部922はそれぞれピン状であり、接触部921に等間隔に連なる。
【0047】
相手側コンタクト920は相手側ハウジング910の底面部913のスリット913bに圧入される。
【0048】
次に、上述のコネクタ100の動作を説明する。
【0049】
なお、コネクタ100は図示しないプリント基板に実装され、固定側コンタクト20の接続部22がプリント基板のスルーホールに挿入され、半田付けされる。相手側コネクタ900は図示しない別のプリント基板に実装され、相手側コンタクト920の接続部922がプリント基板のスルーホールに挿入され、半田付けされる。
【0050】
図5に示すように、コネクタ100と相手側コネクタ900とを向かい合わせ、嵌合させる。
【0051】
このとき、コネクタ100の中心と相手側コネクタ900の中心とがX方向へずれていたとしても、固定側ハウジング10に対して可動側ハウジング30が図8に示すようにスライドし、可動側ハウジング30と相手側ハウジング910とが嵌合する。可動側ハウジング30は嵌合離脱方向Fに対して傾かない。また、可動側ハウジング30の正面部31と相手側ハウジング910の正面部911との間、可動側ハウジング30の背面部32と相手側ハウジング910の背面部912との間にそれぞれすきまがあり、可動側ハウジング30がY方向へ移動できるので、コネクタ100と相手側コネクタ900とのY方向のずれは吸収される。
【0052】
可動側ハウジング30が図8に示すように固定側ハウジング10に対して右側へスライドしたとき、可動側コンタクト40は図9に示すように連結部45を中心にして反時計回りへ回転するだけであり、ほとんど弾性変形しない。したがって、コネクタ100の中心と相手側コネクタ900の中心とがX方向へずれていない場合と較べて、固定側コンタクト20の接触部21や相手側コンタクト920の接触部921と可動側コンタクト40との間に生じる接触力がほとんど変化しない。
【0053】
可動側コンタクト40が回転するこの実施形態によれば、コネクタ100を相手側コネクタ900に嵌合したとき、固定側コンタクト20の接触部21や相手側コンタクト920の接触部921と可動側コンタクト40との間に生じる接触力がほとんど変化しない。
【0054】
したがって、コネクタ100の中心と相手側コネクタ900の中心とがずれていても、小さな力でコネクタ100を相手側コネクタ900に嵌合させることができる。また、コネクタ100の中心と相手側コネクタ900の中心とがX方向へずれている場合にコネクタ100と相手側コネクタ900とを嵌合したときの可動側コンタクト40の変形量と、コネクタ100の中心と相手側コネクタ900の中心とがX方向へずれていない場合にコネクタ100と相手側コネクタ900とを嵌合したときの可動側コンタクト40の変形量とはほとんど変わらないので、可動側コンタクト40の塑性変形を防止でき、接触安定性を維持することができる。更に、小さな力でコネクタ100を相手側コネクタ900から離脱することができる。
【0055】
更に、コネクタの挿入力、抜去力を低減するために、従来のコネクタのように、コンタクトの変位部の変位量を多くするためにコンタクトを細長くする必要がないので、可動側ハウジング30を小さくでき、コネクタ100を容易に小型化することができる。
【0056】
また、可動側ハウジング30を小型化する代わりに、可動側コンタクト40を太くすることにより、コネクタ100を高電流容量コネクタとして用いることができる。
【0057】
更に、可動側コンタクト40の突出部44cを可動側ハウジング30の孔33cに挿入してあるので、可動側コンタクト40の第2接触部44がコンタクト収容室38,39内で大きく振れるのを抑制できる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、可動側コンタクト40の連結部45を固定側ハウジング10と可動側ハウジング30とで回転可能に支持させたが、必ずしも可動側コンタクト40の連結部45を固定側ハウジング10と可動側ハウジング30とで支持させなくともよい。例えば連結部45を可動側ハウジング30だけで支持させるようにしてもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、可動側コンタクト40の第1接触部43、第2接触部44はそれぞれ固定側コンタクト20、相手側コンタクト920を挟持する形状であるが、第1接触部43、第2接触部44の形状は固定側コンタクト20や相手側コンタクト920を挟持する形状に限られない。
【0060】
なお、上述の実施形態では、可動側コンタクト40の突出部44cとこの突出部44cを挿入する可動側ハウジング30の孔33cとで振れ抑制手段を構成したが、振れ抑制手段の構成をこれに限定するものではない。
【0061】
上述の実施形態では、凸部11d,12d,31d,32dをそれぞれ固定側ハウジング10、可動側ハウジング30に形成したが、凸部11d,12d,31d,32dを可動側コンタクト40の連結部45に形成してもよい。この場合、固定側ハウジング10、可動側ハウジング30には段差面11a,12a,31a,32aだけを形成することになる。
【0062】
また、凸部11d,12d,31d,32dの先端部は円弧状であるが、角状の突起でもよく、形状は円弧状に限られない。
【符号の説明】
【0063】
100 コネクタ
10 固定側ハウジング
20 固定側コンタクト
30 可動側ハウジング
33c 孔
38,39 コンタクト収容室(コンタクト収容孔)
40 可動側コンタクト
43 第1接触部
44 第2接触部
44c 突出部
45 連結部
900 相手側コネクタ
920 相手側コンタクト
F 嵌合離脱方向
X 嵌合離脱方向Fと直交する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタに嵌合可能なコネクタであって、固定側ハウジングと、その固定側ハウジングに前記相手側コネクタとの嵌合離脱方向と直交するX方向へスライド可能に組み付けられた可動側ハウジングとを有し、前記固定側ハウジングには複数の固定側コンタクトが固定され、前記可動側ハウジングには複数の可動側コンタクトが収容されており、前記可動側ハウジングの前記固定側ハウジングに対するX方向へのスライドによって、前記相手側コネクタとのX方向の位置ずれを吸収して嵌合されるよう構成されたコネクタにおいて、
前記複数の固定側コンタクトは、前記固定側ハウジングに、前記X方向に沿って並んで固定され、
前記複数の可動側コンタクトは、前記可動側ハウジングに前記X方向に沿って並んで仕切られる複数のコンタクト収容室に、それぞれ収容され、
前記可動側コンタクトは、
前記固定側コンタクトを前記X方向に挟持する一対の第1接触部、
及び前記相手側コンタクトを前記X方向に挟持する一対の第2接触部、
並びに前記第1接触部と前記第2接触部とを連結するとともに、前記嵌合離脱方向と前記X方向との両方に直交するY方向に沿う両外側において、前記一対の第1接触部を相互に連結しかつ前記一対の第2接触部を相互に連結する連結部、
を有するように、1枚の金属板から打ち抜き曲げ加工によって一体に形成され、
前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとは、前記可動側コンタクトを、その前記連結部の、前記Y方向に沿う両外側において、前記一対の第1接触部を相互に連結しかつ前記一対の第2接触部を相互に連結する部位において、前記Y方向と平行な回転軸周りに回転可能に支持している
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとにそれぞれ形成される凸部の両方が、前記可動側コンタクトを、その前記連結部の、前記Y方向に沿う両外側において、前記一対の第1接触部を相互に連結しかつ前記一対の第2接触部を相互に連結する部位において支持していることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記可動側コンタクトの前記一対の第2接触部には、前記X方向に突出する突出部が設けられ、前記可動側ハウジングの前記相手側コンタクトに対向する面には、前記可動側コンタクトの前記突出部が挿入される孔が設けられ、前記突出部と前記孔とが、前記可動コンタクトが回転したとき前記第2接触部の振れを抑える振れ抑制手段を構成することを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195299(P2012−195299A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133467(P2012−133467)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2009−212344(P2009−212344)の分割
【原出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】