説明

コネクタ

【課題】機器側コネクタ結合部に設置されたコネクタを機器側コネクタ結合部から取り外す解除操作が簡素であるコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング10とリテーナ20とを備えて構成され、機器側のコネクタ結合部2に対して接近・離反する方向で移動することにより、機器側コネクタ結合部に着脱自在なっているコネクタ1において、中立位置にリテーナが位置しているときには、係合部11の弾性変形を規制部21で規制するように構成されており、押圧位置、もしくは、引き抜き位置に位置しているときには、係合部が弾性変形可能なように構成されており、引き抜き位置でリテーナがハウジングに当接し、リテーナを離反する方向に移動することによりコネクタを機器側コネクタ結合部から離脱させることができるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに係り、たとえば、自動車等の機器に設けられている機器側コネクタ結合部に着脱されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、従来のコネクタ300の概略構成を示す分解斜視図であり、図16〜図18は、コネクタ300やこのコネクタ300が設置される機器側コネクタ結合部302の概略構成を示す断面図である。
【0003】
従来のコネクタ300(たとえば、特許文献1参照)は、ハウジング304とリテーナ306とを備えている。ハウジング304は、ソケット接点(端子部)308を収納する凹部310と、弾性変形可能なラッチアーム(ロックアーム)312と、リテーナ306を設置したときにリテーナ306を係止する係止部314とを備えている。ロックアーム312は、コネクタ300を機器側コネクタ結合部302に設置するときに弾性変形すると共に、復元力によって、機器側コネクタ結合部302に一旦設置されたコネクタ300が、機器側コネクタ結合部302から外れないようにするためのものである。
【0004】
リテーナ306は、本体部316と、ヒンジ部318を介して本体部316に僅かに移動自在に設けられているカバー部320とを備えている。本体部316には、被係止部322が設けられている。ハウジング304の凹部310に端子部308を設置し、リテーナ306をハウジング304に設置したときに、係止部314と被係止部322とが係合し、コネクタ300が形成されるようになっている。
【0005】
また、リテーナ306のカバー部320には、ブロッキングラグ(規制アーム)324と、カバー部320の回動方向でカバー部320を付勢する弾性部326とが設けられている。そして、本体部316に対するカバー部320位置に応じて、規制アーム324によりロックアーム312の弾性変形が規制され、もしくは、ロックアーム312が弾性変形できるようになっている。
【0006】
ここで、コネクタ300を機器側コネクタ結合部302に設置するときの操作を説明する。
【0007】
図16(a)で示すように、コネクタ300を機器側コネクタ結合部302に設置する前の状態では、規制アーム324により、ロックアーム312の内側への弾性変形(左右一対のロックアーム312のコネクタ300の中心側への弾性変形)が規制されている。これにより、ロックアーム312のロックビーク328が、機器側コネクタ結合部302の開口部330に引っ掛かり、コネクタ300の下方への移動ができないようになっている。
【0008】
図16(a)で示す状態で、リテーナ306のカバー部320に下向きの力を加えると、弾性部326が弾性変形し、図16(b)で示すように、カバー部320が下方に移動することより規制アーム324も下方に移動し、規制アーム324による規制が無くなる。続いて、リテーナ306に押されてハウジング304も下方に移動すると共に、一対のロックアーム312が開口部330で押されて内側に弾性変形し、ロックアーム312のロックビーク328が、機器側コネクタ結合部302の開口部330に入り込む。
【0009】
図16(b)で示す状態で、ハウジング304のカバー部320に下向きの力をさらに加えると、図17(c)、図17(d)で示すように、ハウジング304とリテーナ306とが下方に移動し、やがて図18(e)に示す状態になる。
【0010】
図18(e)では、一対のロックアーム312のロックビーク328が、開口部330を通りぬけて開口部330の下方に位置し、ロックアーム312が復元していると共に、弾性部326も復元し、規制アーム324により、ロックアーム312の内側への弾性変形が規制されている。
【0011】
これにより、一旦、機器側コネクタ結合部302に設置されたコネクタ300が、機器側コネクタ結合部302から容易には外れないようになっている。
【0012】
なお、図16等で示す参照符号332は、端子部308と接続するリードピンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2003−527726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、図18(e)で示すように、機器側コネクタ結合部302に設置されたコネクタ300を、機器側コネクタ結合部302から取り外す場合には、上述した設置操作とはほぼ逆の操作を行えばよいのであるが、従来のコネクタ300では、機器側コネクタ結合部302に設置されたコネクタ300を、機器側コネクタ結合部302から取り外す解除操作が煩雑であるという問題がある。
【0015】
すなわち、図18(e)に示す状態から、図18(e)に示すのように、リテーナ306のカバー部320を下方に押して、規制アーム324を下方に移動し、ロックアーム312の内側への弾性変形を可能にし、図17(d)に矢印で示すような力を加えて、ロックアーム312を内側に弾性変形させ、図17(c)や図16(b)に矢印で示すようにコネクタを上方に引っ張り、コネクタ300を機器側コネクタ結合部302から取り外している。
【0016】
図18(e)、図17(d)、図17(c)、図16(b)に示す矢印から理解されるように、コネクタ300を機器側コネクタ結合部302から取り外す場合には、コネクタ300に加える力の方向を順次変えなければならず、コネクタ300を機器側コネクタ結合部302から取り外す解除(離脱)操作が煩雑になっている。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、機器側コネクタ結合部に設置されたコネクタを機器側コネクタ結合部から取り外す解除操作が簡素であるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のある態様はコネクタに関する。このコネクタは、ハウジングとリテーナとを備えて構成され、機器側のコネクタ結合部に対して接近・離反する方向で移動することにより、前記機器側コネクタ結合部に着脱自在なっているコネクタにおいて、弾性部が復元している位置である中立位置に前記リテーナが位置しているときには、前記リテーナが、前記ハウジングに設けられ前記機器側コネクタ結合部に弾性変形して係合する係合部の弾性変形を規制部で規制するように構成されており、前記リテーナが、前記ハウジングに対して前記接近する方向に前記中立位置から移動して前記弾性部が弾性変形した押圧位置、もしくは、前記ハウジングに対して前記離反する方向に前記中立位置から移動して前記弾性部が弾性変形した引き抜き位置に位置しているときには、前記係合部が弾性変形可能なように構成されており、前記引き抜き位置で前記リテーナが前記ハウジングに当接し、前記リテーナを前記離反する方向に移動することにより前記コネクタを前記機器側コネクタ結合部から離脱させることができるように構成されている。
また、機器側のコネクタ結合部に対して接近・離反する方向に移動することにより、前記機器側のコネクタ結合部に着脱自在なっているコネクタにおいて、ハウジング本体部と、このハウジング本体部に設けられ前記機器側コネクタ結合部に着脱されるときに弾性変形する係合部とを具備するハウジングと、リテーナ本体部と、このリテーナ本体部に設けられ前記係合部の弾性変形を規制する規制部とを備え、前記ハウジングに対して前記機器側コネクタ結合部に接近・離反する方向で所定の行程を移動するように前記ハウジングに設けられ、前記行程の中間にある中立位置に位置しているときには、前記規制部で前記係合部の弾性変形を規制し、前記中立位置から所定の距離だけ移動したときに、前記規制部による前記規制を解除するように構成されているリテーナと、前記リテーナが前記中立位置に位置するように、弾性部を用いて付勢する付勢手段とを有するコネクタであってもよい。
また、前記弾性部は、前記ハウジングに設けられた復元アームによって構成されており、前記リテーナには、前記復元アームの当接部に当接する第1のテーパ部と、前記復元アームの当接部に当接する第2のテーパ部とが設けられており、前記リテーナが前記中立位置に位置しているときには、前記復元アームの当接部が前記各テーパ部の間に位置しており、前記リテーナが移動して、前記復元アームの当接部が前記第1のテーパ部または前記第2のテーパ部に当接することにより、前記リテーナからの押圧力で前記復元アームが弾性変形し、この復元アームの復元力で前記リテーナが前記中立位置に向かうような付勢がされるように構成されてもよい。
また、前記復元アームは、複数設けられており、前記リテーナの4隅で前記復元アームの当接部が前記リテーナのテーパ部に当接するように構成されてもよい。
また、前記係合部は、前記ハウジングに設けられたロックアームとこのロックアームの中間部もしくは先端部側に設けられているロックビークとによって構成されており、前記規制部は、前記ロックビークの裏側に配置されて前記ロックアームの弾性変形を防止するように構成されてもよい。
また、前記コネクタを前記機器側コネクタ結合部に設置する場合、前記リテーナを前記中間位置から移動させるときに要する力が、前記係合部を前記機器側コネクタ結合部の被係合部に係合させるときに要する力よりも大きくなるように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機器側コネクタ結合部に設置されたコネクタを機器側コネクタ結合部から取り外す解除操作が簡素であるコネクタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るコネクタの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】コネクタとこのコネクタが接合される機器側コネクタ結合部とで構成されるコネクタシステムの概略構成を示す斜視図である。
【図3】コネクタの概略構成を示す斜視図である。
【図4】コネクタの概略構成を示す斜視図である。
【図5】コネクタにおいて、ハウジングからリテーナを取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】コネクタにおいて、ハウジングからリテーナを取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】コネクタを機器側コネクタ結合部に設置するときの操作を説明する図である。
【図8】コネクタを機器側コネクタ結合部に設置するときの操作を説明する図である。
【図9】コネクタを機器側コネクタ結合部から離脱させるときの操作を説明する図である。
【図10】コネクタを機器側コネクタ結合部に設置するときの操作を説明する図である。
【図11】コネクタを機器側コネクタ結合部に設置するときの操作を説明する図である。
【図12】コネクタを機器側コネクタ結合部に設置するときの操作を説明する図である。
【図13】コネクタを機器側コネクタ結合部に設置するときの操作およびコネクタを機器側コネクタ結合部から離脱させるときの操作を説明する図である。
【図14】コネクタを機器側コネクタ結合部から離脱させるときの操作を説明する図である。
【図15】従来のコネクタの概略構成を示す分解斜視図である。
【図16】従来のコネクタやこのコネクタが設置される機器側コネクタ結合部の概略構成を示す断面図である。
【図17】従来のコネクタやこのコネクタが設置される機器側コネクタ結合部の概略構成を示す断面図である。
【図18】従来のコネクタやこのコネクタが設置される機器側コネクタ結合部の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ(電気コネクタ)1の概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、コネクタ1とこのコネクタ1が接合される機器(補機)側コネクタ結合部2とで構成されるコネクタシステム3の概略構成を示す斜視図である。なお、図2は、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2から取り外した(離脱させた)状態を示している。
【0022】
図3、図4は、コネクタ1の概略構成を示す斜視図である。なお、図3では、コネクタ1の一部(ハウジング10の一部)を破断して示してある。図5、図6は、コネクタ1において、ハウジング10からリテーナ20を取り外した状態を示す斜視図である。なお、図6では、コネクタ1の一部(ハウジング10の一部)を破断して示してある。
【0023】
なお、以下説明の便宜のために、ハウジング10に対するリテーナ20の移動方向を、コネクタ1やハウジング10やリテーナ20の高さ方向とする。この高さ方向が、機器側コネクタ結合部2にコネクタ1を着脱するとき(設置もしくは離脱するとき)おけるコネクタ1の移動方向(接近・離反方向)になる。
【0024】
また、前記高さ方向に直交する1つの方向を、コネクタ1やハウジング10やリテーナ20の幅方向とし、前記移動方向に直交する他の1つの方向であって前記幅方向に直交する方向を、コネクタ1やハウジング10やリテーナ20の縦方向とする場合がある。
【0025】
さらに、前記高さ方向のうちで、機器側コネクタ結合部2にコネクタ1が近づく方向を下方向とし、機器側コネクタ結合部2からコネクタ1が離れる方向を上方向とする場合がある。
【0026】
コネクタ(メスコネクタ)1は、ハウジング10とリテーナ20とを備えて構成されている。そして、コネクタ1は、機器側のコネクタ結合部2に対して接近・離反する方向(上下方向)で移動することにより、機器側コネクタ結合部2に着脱自在なっている。すなわち、コネクタ1は、ハウジング10が機器側コネクタ結合部2に係合してもしくは機器側コネクタ結合部2から離脱して、機器側コネクタ結合部2に対して着脱自在なっている。
【0027】
高さ方向にハウジング10に対して移動自在なリテーナ20がハウジング10に対して中立位置(リテーナ20の移動行程のほぼ中間の位置)に位置しているときに、リテーナ20に設けられている規制部(規制アーム)21が、ハウジング10に設けられた係合部(ロックアーム)11の弾性変形を規制するように構成されている。
【0028】
この規制により、機器側コネクタ結合部2に設置されていないコネクタ1(ハウジング10)を機器側コネクタ結合部2に容易には設置できないようになっており、また、機器側コネクタ結合部2に接合(設置)されているコネクタ1(ハウジング10)が機器側コネクタ結合部2から容易には離脱(取り外し)できないようになっている。
【0029】
なお、上記中立位置は、弾性部(復元アーム)14がほぼ復元しているときにおけるリテーナ20の位置(ハウジング10に対するリテーナ20の位置)である。復元アーム14は、ハウジング10に設けられており、リテーナ20に当接している。
【0030】
また、ロックアーム11は、ハウジング10に設けられており、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に一体的に設置するときにもしくはコネクタ1を機器側コネクタ結合部2から離脱させるときに弾性変形して、機器側コネクタ結合部2(図10等に示す被係合部61)に係合しもしくは機器側コネクタ結合部2から離脱するものである。
【0031】
リテーナ20が、ハウジング10に対して上記中立位置から所定の距離だけ高さ方向に移動し、押圧位置(下方向に移動したときの位置)や引き抜き位置(上方向に移動したときの位置)に位置しているとき(押圧状態や引き抜き状態になっているとき)には、リテーナ20の規制アーム21による規制を受けることなく、ロックアーム11が弾性変形可能なように構成されている。
【0032】
そして、機器側コネクタ結合部2に設置されていないコネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置できるようになっており、また、機器側コネクタ結合部2に設置されているコネクタ1を機器側コネクタ結合部2から離脱させることができるようになっている。
【0033】
なお、上記押圧位置は、ハウジング10に接近する方向(下方向;機器側コネクタ結合部2に対してコネクタ1が接近する方向;リテーナ20をハウジング10に押し込む方向)に、上記中立位置から所定の距離だけ、リテーナ20を移動した位置である。そして、上記押圧位置では、リテーナ20から受ける力(押圧力)で、復元アーム14が弾性変形している。
【0034】
また、上記引き抜き位置は、ハウジング10から離反する方向(上方向;機器側のコネクタ結合部2に対してコネクタ1が離反方向する方向;リテーナ20をハウジング10から引き抜く方向)に、上記中立位置から所定の距離だけ、リテーナ20を移動した位置である。そして、上記引き抜き位置でも、リテーナ20から受ける力(押圧力)で、復元アーム14が弾性変形している。
【0035】
また、上記引き抜き位置で、リテーナ20の当接面(ハウジング引っ掛け部)26がハウジング10の被当接面99(リテーナ引っ掛け部17)に当接し、リテーナ20を離反する方向(上方向)に移動することにより、機器側コネクタ結合部2に設置されているコネクタ1(ハウジング10)をいっしょに引っ張って機器側コネクタ結合部2から離脱させることができるように構成されている。
【0036】
復元アーム14は、ハウジング10にリテーナ20が設けられておらず、復元アーム14になんらの外力が加わっていない状態においては、弾性変形をしておらずに復元している。
【0037】
また、復元アーム14は、ハウジング10にリテーナ20が設置されこの設置されたリテーナ20が上記中立位置に位置している状態では、ほぼ復元している。すなわち、リテーナ20によって復元アーム14に力が加わっておらず復元アーム14が弾性変形していないか、もしくは、リテーナ20によって復元アーム14に小さな力が加わって復元アーム14が少しだけ弾性変形していることにより、復元アーム14がほぼ復元している。なお、リテーナ20が上記中立位置に位置しリテーナ20が復元アーム14に力(押圧力)加えている場合、この加えている力やこの力による復元アーム14の変形量は、リテーナ20が上記押圧位置や上記引き抜き位置に位置しているときにリテーナ20が復元アーム14に加える力や復元アーム14の変形量よりも小さくなっている。
【0038】
これにより、ハウジング10にリテーナ20を組み付けた場合、常態では、リテーナ20は復元アーム14の復元力により上記中立位置に位置するようになっている。すなわち、ハウジング10にリテーナ20を組み付けた状態でリテーナ20やハウジング10になんら外力が加わっていないときには、リテーナ20は上記中立位置に位置するようになっている。一方、リテーナ20やハウジング10に高さ方向の力が加わった場合には、この力が加わっているときに、リテーナ20が上記押圧位置や上記引き抜き位置に位置するようになっている。そして、高さ方向の力を取り去れば、リテーナ20は上記中立位置に戻るようになっている。
【0039】
なお、復元アーム14は、リテーナ20が上記中立位置に位置するようにリテーナ20を付勢する付勢手段71の例である。
【0040】
ハウジング10は、ハウジング本体部73と、このハウジング本体部73に設けられ機器側コネクタ結合部2のピン50に電気的に接続される端子30を収納する端子収納部12と、ハウジング本体部73に設けられ機器側コネクタ結合部2に着脱されるときに弾性変形するロックアーム11とを具備している。
【0041】
ロックアーム11は、機器側コネクタ結合部2の被係合部(環状の係合溝)61に係合し始めるときと機器側コネクタ結合部2の被係合部61に係合し終えたときとの間の状態(コネクタ1の機器側コネクタ結合部2への設置途中状態)のときに、機器側コネクタ結合部2の所定の部位(たとえば、被係合部61と機器側嵌合間口部60との間に存在しているコネクタ結合部本体部79の内壁)に当接して弾性変形するように構成されている。
【0042】
また、ロックアーム11は、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2から離れている状態では、弾性変形しておらず、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2の被係合部61に係合し終えた状態では、弾性変形していないかもしくは僅かに(たとえば、設置途中状態での弾性変形量よりも少ない量だけ)弾性変形している。
【0043】
コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に係合し終えた状態では、ロックアーム11(ロックビーク15)が被係合部61に係合していることに加えて、ハウジング本体部73が、機器側コネクタ結合部2(機器側嵌合間口部60)に当接している。そして、コネクタ1(ハウジング10)が、機器側コネクタ結合部2に一体的に設置されている。
【0044】
リテーナ20は、リテーナ本体部75と、このリテーナ本体部75に設けられロックアーム11の弾性変形を規制する規制アーム21とを備えており、ハウジング10に対して機器側コネクタ結合部2に接近・離反する方向(上下方向)で所定の行程を(所定の距離だけ)移動するようにハウジング10に設けられている。そして、リテーナ20が前記行程の中間にある中立位置に位置しているときには、規制アーム21でロックアーム11の弾性変形を規制し、上記中立位置から所定の距離だけ移動したときに(押圧位置や引き抜き位置に位置したときに)、規制アーム21による規制を解除するように構成されている。
【0045】
ここで、規制アーム21による規制が解除される場合について詳しく説明する。リテーナ20は、ハウジング10に対して、上記中立位置から一方向(下方向)へ所定の距離だけ移動するようになっている。この所定距離の移動が完了してリテーナ20が押圧位置(上記行程の下端部の位置)に位置したときに、規制アーム21による規制が無くなってロックアーム11が弾性変形可能になり、コネクタ1(ハウジング10)を機器側コネクタ結合部2に設置することができるようになっている。
【0046】
また、リテーナ20は、ハウジング10に対して、上記中間位置から他方向(上方向)へ所定の距離だけ移動するようになっている。この所定距離の移動が完了してリテーナ20が引き抜き位置(前記行程の上端部の位置)に位置したときに、規制アーム21による規制が無くなって、ロックアーム11が弾性変形可能になり、コネクタ1(ハウジング10)を機器側コネクタ結合部2から抜き取ることができるようになっている。
【0047】
復元アーム14は、この長手方向の基端部が、ハウジング本体部73に一体的に設けられている。
【0048】
リテーナ20には、復元アーム14の長手方向の先端部に設けられている当接部16に当接する第1のテーパ部(上側テーパ部;嵌合側テーパ部)24と、復元アーム14の当接部16に当接する第2のテーパ部(下側テーパ部;離脱側テーパ部)25とが設けられている。
【0049】
そして、リテーナ20が前記中立位置に位置しているときには、復元アーム14の当接部16が各テーパ部24,25の間に位置している。これにより、復元アーム14は弾性変形していないか、もしくは僅かに弾性変形している。また、復元アーム14の当接部16は、各テーパ部24,25のいずれにも当接していないかもしくは各テーパ部24,25の両方に当接している。
【0050】
リテーナ20が移動して、復元アーム14の当接部16が第1のテーパ部24または第2のテーパ部25に当接することにより、リテーナ20からの押圧力で復元アーム14が弾性変形し、この復元アーム14の復元力でリテーナ20が上記中立位置に向かうように付勢される。なお、すでに理解されるように、上記中間位置からの移動距離が大きくなるにしたがって、復元アーム14の弾性変形量が大きくなると共に、復元アーム14よる、リテーナ20を上記中立位置に戻す力が大きくなる。
【0051】
復元アーム14は、複数(たとえば4つ)設けられており、リテーナ20の4隅で復元アーム14の当接部16がリテーナ20のテーパ部24,25に当接するように構成されている。
【0052】
これらの復元アーム14の当接部16に当接する各テーパ部24,25も当然に複数設けられている。すなわち、第1のテーパ部24が復元アーム14の個数と同じ数(4つ)、第2のテーパ部25も復元アーム14の個数と同じ数(4つ)設けられている。
【0053】
さらに説明すると、ハウジング10に対するリテーナ20の移動方向(高さ方向)からコネクタ1(ハウジング10やリテーナ20)を見たときに、リテーナ20は、矩形状に形成されており、ハウジング10は、矩形な環状な部位(第1の部位)77を備えて形成されており、第1の部位77がリテーナ20をほぼ囲んでいる。
【0054】
4つの復元アーム14は、矩形なリテーナ20の外周の4隅(4つの各角部の近傍)に設けられている各テーパ部(第1のテーパ部24と第2のテーパ部25)に各当接部16が当接するようにして、ハウジング10の第1の部位77の内側の4隅に設けられている。
【0055】
なお、復元アーム14や各テーパ部24,25を、リテーナ20の4隅以外の箇所に設けてもよい。
【0056】
たとえば、ハウジング10に対するリテーナ20の移動方向からコネクタ1を見たときに、リテーナ20の幅方向の中心と縦方向の中心とに対して線対称になるようなリテーナ20の外周位置に、各復元アーム14や各テーパ部24,25を配置してもよく、もしくは、リテーナ20の中心に対して点対称になるようなリテーナ20の外周位置に、各復元アーム14や各テーパ部24,25を配置してもよい。
【0057】
さらに、高さ方向でコネクタ1を見たときに、各復元アーム14や各テーパ部24,25が、リテーナ20の周辺部で、所定の間隔をあけて設けられていると共に、リテーナ20を上記中立位置における姿勢を保ったままハウジング10に対して移動したときに、各復元アーム14の復元力がお互いにほぼ等しくなるような位置に、各復元アーム14や各テーパ部24,25が配置されていてもよい。
【0058】
ロックアーム11は、この長手方向の基端部がハウジング10に設けられており、ロックアーム11の長手方向の中間部もしくは先端部側には、ロックビーク15が設けられている。ロックビーク15は、ロックアーム11の厚さ方向(ハウジング10では幅方向)の一方の側(外側)に設けられている。すなわち、ロックビーク15は、ハウジング10の幅方向では、ハウジング10の中心から離れる側に突出している。
【0059】
規制アーム21は、ロックビーク15の裏側(内側;リテーナ20やハウジング10の中心側)に配置されて、ロックアーム11の弾性変形を防止するようになっている。
【0060】
すなわち、規制アーム21は、ロックアーム11の厚さ方向における、ロックビーク15が突出している側とは反対側である裏側(ロックアーム11やロックビーク15の裏側)で、ロックアーム11やロックビーク15に接触して、ロックアーム11やロックビーク15を支持しロックアーム11の内側への弾性変形を防止するようになっている。
【0061】
また、コネクタ1では、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置する場合、リテーナ20を上記中間位置から上記押圧位置に移動させるときに要する力(押圧力)が、ロックアーム11を機器側コネクタ結合部2の被係合部61に係合させるときに要する力(押圧力)よりも大きいように構成されている。
【0062】
ここで、コネクタシステム3(機器側コネクタ結合部2;コネクタ1)についてさらに詳しく説明する。
【0063】
機器側コネクタ結合部2は、自動車等の機器に一体的に設置されており、筒状のコネクタ結合部本体部79とシャントリング40とピン端子(ピン)50とを備えて構成されている。
【0064】
コネクタ結合部本体部79の軸方向の基端部が機器に一体的に設置されており、コネクタ結合部本体部79の軸方向の先端部には、リング状の機器側嵌合間口部60が形成されている。機器側嵌合間口部60は、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2に設置されたときにコネクタ1のハウジング10が接触する部位である。
【0065】
また、コネクタ結合部本体部79の内壁には、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2に設置されたときにロックビーク15が係合する円環状の溝(被係合部)61が形成されている。被係合部61は、機器側嵌合間口部60から下方に僅かに離れて設けられている。
【0066】
コネクタ結合部本体部79の内部には、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2に設置されるときや設置されたときにコネクタ1のハウジング10が係合するシャントリング40と、コネクタ1の端子30が接合されるピン端子50とが設けられている。
【0067】
なお、コネクタ1や機器側コネクタ結合部2は、これらの幅方向でほぼ対称に形成されている。
【0068】
ハウジング10は、ハウジング本体部73とカバー部13とヒンジ部81とを備えて構成されており、樹脂等の材料を一体成形して形成されている。ハウジング本体部73とカバー部13とはヒンジ部81を介して接続されており、ヒンジ部81を回動中心にし、カバー部13がハウジング本体部73に対して回動できるようになっている。
【0069】
ハウジング本体部73は、矩形な環状の第1の部位77と、直方体状の第2の部位と、「コ」字状の第3の部位85とを備えて形成されている。
【0070】
第2の部位83は、高さ方向から見た場合、第1の部位77の内側に位置している。また、高さ方向では、第2の部位83は、第1の部位77の中間部から第1の部位77の一端部(下部)を通過して、第1の部位77の下部から延出している。
【0071】
また、第2の部位83は、縦方向の両端部で第1の部位77に接続されており、幅方向の両端部は、第1の部位77から離れている。これにより、高さ方向から見た場合、第2の部位83の幅方向の両端部には、第2の部位83と第1の部位77とで囲まれている矩形な貫通孔87が形成されている。また、第2の部位83の内部は、端子30を収納する端子収納部12が形成されている。
【0072】
第3の部位85は、縦方向における第1の部位77の一端部から延出して設けられている。また、縦方向から見た場合、第3の部位85は「コ」字状に形成されている。そして、第3の部位85は、高さ方向では、第2の部位83が第1の部位77から延出している側とは反対側(上側)に開口している。
【0073】
カバー部13は、矩形な平板状の基端部側部位(ヒンジ部側部位)89と矩形な平板状の先端部側部位91とを備えて構成されている。
【0074】
そして、たとえば図1に示すように、縦方向でカバー部13とハウジング本体部73とが並んでいる状態で、第2の部位83に端子30を設置し、この設置後に、ヒンジ部81を回動中心にしてカバー部13を回動し、ハウジング本体部73にカバー部13を重ねると、カバー部13の基端部側部位89が第2の部位83に重なり、先端部側部位91が第3の部位85に重なり、端子30がハウジング10に一体的に設置されるようになっている。このようにしてカバー部13とハウジング本体部73とが重なった状態で、ハウジング10にリテーナ20が設置され、コネクタ1が形成されるようになっている。
【0075】
なお、ハウジング本体部73にカバー部13を重ねたときに、第3の部位85の幅方向の両端部に設けられている係止突起93に、カバー部13の幅方向の両端部に設けられている被係止部95が係合し、ハウジング本体部73にカバー部13を重ねた状態が維持されるようになっている。
【0076】
復元アーム14は、基端部側が曲がった「J」字状に形成されて、矩形な環状の第1の部位77の内側で、第1の部位77の内壁から延出して設けられている。また、復元アーム14は、第1の部位77の高さ方向では、復元アーム14の基端部が、第1の部位77の内壁の一端部側(第2の部位83が延出している側;下側)に位置し、復元アーム14の先端部側が、第1の部位77の内壁の他端部側(上側)に向かって延びている。また、復元アーム14の高さ(長さ)は、第1の部位77の高さよりも僅かに小さくなっており、第1の部位77の高さ方向では、復元アーム14は、第1の部位77の内側に位置している。
【0077】
また、復元アーム14は、第1の部位77の4つの内面のうちの、縦方向でお互いが対向している2つの面に設けられている。復元アーム14は、第1の部位77(ハウジング10)の幅方向では、第2の部位83の幅方向の両端部の形成されている2つの空間(貫通孔87)内に位置している。これにより、復元アーム14は4つ設けられていることになる。
【0078】
また、各復元アーム14は、リテーナ20の移動によってリテーナ20の各テーパ部24,25で押され、先端部側が弾性変形するようになっている。このときの弾性変形の方向が、第1の部位77の縦方向とほぼ一致している。
【0079】
より詳しくは、復元アーム14の先端部の当接部16が、リテーナ20に設けられている第1のテーパ部24もしくは第2のテーパ部25に当接し、復元アーム14が弾性変形し片持ち梁のようにして撓むようになっている。このとき、各復元アーム14の当接部16等の先端部側は、第1の部位77の内壁に近づく方向に弾性変形するようになっている。このように、各復元アーム14が弾性変形すると、第1の部位77の縦方向でリテーナ20を挟む力が、各復元アーム14によりリテーナ20に加えられることになる。
【0080】
ロックアーム11は、基端部側が曲がった「J」字状に形成されて、2つ設けられている。これらのロックアーム11は、直方体状の第2の部位83の幅方向の両端部から延出している。また、第2の部位83の高さ方向では、ロックアーム11は、ロックアーム11の基端部が、第2の部位83の一端部(下側)の近傍に位置し、ロックアーム11の先端側が、第2の部位83の他端部側(上側)に向かって延びている。また、第2の部位83の高さ方向では、ロックアーム11の先端部は、第1の部位77の端部(一端部;下端部)のところの位置しているが、第1の部位77からは離れている。また、第2の部位83の幅方向では、ロックアーム11は、第2の部位83から僅かに離れており、第2の部位83の縦方向では、ロックアーム11は、第2の部位83のほぼ中央に位置している。
【0081】
ロックビーク(ロックアームビーク)15は、第2の部位83の高さ方向(ロックアーム11の長手方向)では、第2の部位83のたとえば中間部に設けられている。また、第2の部位83の幅方向では、ロックビーク15は、第2の部位83の中心から離れる側に(第2の部位83の外側に)ロックアーム11から突出している。また、第2の部位83の縦方向では、ロックビーク15の中心とロックアーム11の中心とはお互いが一致していると共に、ロックビーク15の縦方向の寸法がロックアーム11の縦方向の寸法より大きくなっている。これにより、ハウジング10の縦方向でロックビーク15がロックアーム11の両側に突出していることになる。なお、ロックビーク15の縦方向の寸法は、第2の部位83の縦方向の寸法とほぼ等しいか僅かに小さくなっており、ハウジング10の縦方向では、ロックビーク15は、第2の部位83の内側に位置している。
【0082】
第2の部位83の幅方向の両端部には、リテーナ引っ掛け部17が突出して設けられている。また、第2の部位83の縦方向では、リテーナ引っ掛け部17は、第2の部位83の各端部側に設けられている。これにより、リテーナ引っ掛け部17が4つ設けられていることになる。また、第2の部位83の高さ方向では、リテーナ引っ掛け部17は、第1の部位77の上側に位置している。さらに、リテーナ引っ掛け部17は、上側に位置している小さなテーパ面97と、下側に位置し第2の部位の高さ方向に対して垂直な小さな平面99とを備えている。
【0083】
リテーナ20は、リテーナ本体部75と嵌合側テーパ部(第1のテーパ部)24と引き抜き側テーパ部(第2のテーパ部)25とリテーナ操作部23と規制アーム21とハウジング引っ掛け部26とを備えて「コ」字状(コネクタ1の縦方向から見た場合に「コ」字状)に形成されている。また、リテーナ20は、ハウジング10と同様にして、樹脂等により一体成形されている。
【0084】
リテーナ本体部75は、矩形な形状に形成されており、リテーナ本体部75の高さ方向の一方の端部(上側の端面)と、リテーナ本体部75の幅方向の両端部(幅方向の両端部で規制アーム21から僅かに突出している部位)とに、リテーナ操作部23が形成されている。なお、リテーナ操作部23のうちでリテーナ本体部75の高さ方向の一方の端面に該当する部位は、リテーナ20をハウジング10に押し込むように近づけてコネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置するときに、オペレータの指で押される部位である。また、リテーナ操作部23のうちでリテーナ本体部75の幅方向の両端部に突出して設けられている部位は、リテーナ20をハウジング10から引き出しコネクタ1を機器側コネクタ結合部2から離脱するときに、オペレータが指をかける部位である。
【0085】
第1のテーパ部24は、前述したように、ハウジング10の復元アーム14の個数に応じて4つ設けられている。すなわち、第1のテーパ部24は、リテーナ20の縦方向でリテーナ本体部75の両端部に設けられていると共に、リテーナ20の幅方向では、リテーナ本体部75の両端部の近傍に設けられている。また、リテーナ20の高さ方向では、第1のテーパ部24は、リテーナ20の他端部側(規制アーム21が延出している側とは反対側;上側)に設けられている。なお、前述したように、第1のテーパ部24は、リテーナ20をハウジング10(ハウジング本体部73とカバー部13とが重なっているハウジング10)に設置し、リテーナ20をハウジング10に押し込んだときに、復元アーム14の当接部16に当接し、復元アーム14を弾性変形させる部位である。
【0086】
第2のテーパ部25も、ハウジング10の復元アーム14の個数に応じて4つ設けられている。すなわち、第2のテーパ部25は、リテーナ20の縦方向でリテーナ本体部75の両端部に設けられていると共に、リテーナ20の幅方向では、第1のテーパ部24よりも外側でリテーナ本体部75の両端部の近傍に設けられている。また、リテーナ20の高さ方向では、第2のテーパ部25は、リテーナ20の中間部に設けられている。なお、前述したように、第2のテーパ部25は、リテーナ20をハウジング10(ハウジング本体部73とカバー部13とが重なっているハウジング10)に設置し、リテーナ20をハウジング10から引き抜くときに、復元アーム14の当接部16に当接し、復元アーム14を弾性変形させる部位である。
【0087】
なお、リテーナ20の幅方向から見たときに、リテーナ20の縦方向の一端部に、第1のテーパ部24の傾斜面と第2のテーパ部25の傾斜面とで「V」字状の部位が形成されており、同様にして、リテーナ20の縦方向の他端部に、第1のテーパ部24の傾斜面と第2のテーパ部25の傾斜面とで「V」字状の部位が形成されている。そして、ハウジング10に設置されたリテーナ20が中立位置に存在している状態では、復元アーム14の先端部の当接部16が、「V」字状の部位の底部に嵌っている。
【0088】
規制アーム21は、リテーナ20の幅方向の両端部で、リテーナ20の高さ方向の一端部側(下側)へ、リテーナ本体部75から延出して設けられている。これにより規制アーム21は2つ設けられていることになり、2つの規制アーム21とリテーナ本体部75とで、リテーナ20が「コ」字状に形成されていることになる。
【0089】
規制アーム21の中央部(リテーナ20の縦方向における中央部)であって規制アーム21の外側(リテーナ20の幅方向でリテーナ20の中心とは反対側)の部位には、溝101が設けられている。この溝101は、規制アーム21の先端部(リテーナ20の高さ方向における先端部;下端部)から規制アーム21の中間部(リテーナ20の高さ方向における中間部)にかけて設けられている。そして、ハウジング10にリテーナ20を設置した状態では、ハウジング10のロックアーム11が溝101に入り込むようになっている。なお、溝101に入り込んだロックアーム11は、リテーナ20の規制アーム21による規制が無ければ、弾性変形可能になっている。
【0090】
規制アーム21の先端部側(リテーナ20の高さ方向における先端部側;下側)であって規制アーム21の外側(リテーナ20の幅方向でリテーナ20の中心とは反対側)の部位には、溝101とは別の溝103が設けられている。この溝103は、リテーナ20の縦方向では貫通して設けられている。
【0091】
そして、ハウジング10に設置されたリテーナ20が上記押圧位置に位置しているときには、ロックビーク15が溝103に入り込むことにより、ロックアーム11が弾性変形できるようになっている。これにより、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置することができるようになっている(図11や図12参照)。
【0092】
また、ハウジング10に設置されたリテーナ20が上記引き抜き位置に位置しているときには、規制アーム21の先端(下端)がロックビーク15からはずれ、ロックアーム11が弾性変形できるようになっている。これにより、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2から離脱させることができるようになっている(図14参照)。
【0093】
さらに、ハウジング10に設置されたリテーナ20が上記中立位置に位置しているときには、ロックビーク15(ロックビーク15の裏側の面)が、規制アーム21の先端部(下端部)と溝103との中間に位置している部位22に当接し、ロックアーム11が弾性変形できないようになっている。これにより、このままでは(リテーナ20が上記中立位置に位置しているままでは)、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置することができないようになっていると共に、機器側コネクタ結合部2に設置されたコネクタ1が、機器側コネクタ結合部2から離脱できないようになっている。
【0094】
ハウジング引っ掛け部26は、各規制アーム21の内側に設けられている。さらに説明すると、ハウジング引っ掛け部26は、規制アーム21の内側に設けられている小さな4つの平面(リテーナ20の高さ方向に対して垂直な平面)105で構成されている。
【0095】
リテーナ20のハウジング10への設置は、リテーナ20をハウジング10に押し込むのであるが、このときに、まず、各規制アーム21の先端が、リテーナ引っ掛け部17の小さなテーパ面97に接触し、各規制アーム21の先端側が外側(お互いが離れる方向に)弾性変形する。この後、さらなるリテーナ20の押し込みを行うと、リテーナ引っ掛け部17と規制アーム21との接触が無くなり、規制アーム21の弾性変形が無くなる。この弾性変形が無くなった後、所定の距離だけさらなるリテーナ20の移動がを行われると、リテーナ20が上記中立位置に位置し、ハウジング引っ掛け部26の小さな平面105と、リテーナ引っ掛け部17の小さな平面99とが所定の距離だけ離れて対向する(たとえば、図10(a)参照)。
【0096】
なお、リテーナ20をハウジング10に一旦設置した後は、各規制アーム21は、ほとんど弾性変形しないようになっている。さらに、リテーナ20をハウジング10に一旦設置したきには、ハウジング10の第2の部位83の側面で、規制アーム21が支持されているので、ロックビーク15で押されても、規制アーム21が内側に変形することはほとんどないようになっている。
【0097】
また、ハウジング10に設置したリテーナ20が上記中立位置に位置している状態では、上述したように、ハウジング引っ掛け部26の小さな平面105と、リテーナ引っ掛け部17の小さな平面99とが所定の距離だけ離れて対向しており、リテーナ20が上記引き抜き位置に位置したときには、ハウジング引っ掛け部26の小さな平面105と、リテーナ引っ掛け部17の小さな平面99とがお互いに面接触する。これにより、ハウジング10に対するリテーナ20の移動距離の他方の端(引き抜き位置)が決まると共に、引き抜き方向の力をリテーナ20のみに加えれば、リテーナ20に引っ張られてハウジング10も上方に移動し、機器側コネクタ結合部2からのコネクタ1の取り外しをすることができるようになっている。
【0098】
なお、図示しないストッパ同士(ハウジング10に設けられているストッパとリテーナ20に設けられているストッパ)がお互いに当接することで、ハウジング10に対するリテーナ20の移動距離の下端(リテーナ20の押圧位置)が決まるようになっている。
ここで、コネクタシステム3の操作について説明する。
まず、コネクタ1の組立操作について説明する。
【0099】
図1に示すように、コネクタ1が分解されている状態で、端子収納部12に端子30を設置し、カバー部13を回動させて、カバー部13をハウジング本体部73に重ねて固定する。
【0100】
続いて、ハウジング10にリテーナ20を押し込んで設置する。これにより、リテーナ20が上記中立位置に位置したコネクタ1が生成される。
次に、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置する操作について説明する。
【0101】
図7、図8、図10〜図13は、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置するときの操作を説明する図である。なお、図7、図8は、コネクタ1や機器側コネクタ結合部2の斜視図であり、図10〜図13の(a)は、コネクタ1の縦方向に垂直な平面であってコネクタ1の中心を通る平面による、コネクタ1や機器側コネクタ結合部2の断面を示しており、図10〜図13の(b)は、コネクタ1の幅方向に垂直であってコネクタ1の中心から外れた平面による、コネクタ1や機器側コネクタ結合部2の断面を示している。
【0102】
まず、図7、図10で示すように、幅方向および縦方向で、機器側コネクタ結合部2に対するコネクタ1の位置決めをし、機器側嵌合間口部60にロックビーク15を当接させる。この状態では、リテーナ20は上記中立位置に位置している。
【0103】
続いて、図11に白抜き矢印で示すようにリテーナ20を押圧すると、図11(b)の矢印で示すように復元アーム14が弾性変形し、コネクタ1の高さ方向で、ロックビーク15と溝103との位置が一致し、ロックアーム11が弾性変形可能な状態になる。ここで、白抜き矢印で示すようにリテーナ20をさらに押し込むと、機器側嵌合間口部60から受ける反力により、図11(a)に矢印で示すように、ロックアーム11が弾性変形を始める。このとき、リテーナ20は、上記押圧位置に位置し続けている。
【0104】
このようにロックアーム11が弾性変形することにより、ロックビーク15が、コネクタ結合部本体部79内に入り込み、やがて図12で示す状態になる。
【0105】
図12で示す状態では、機器側コネクタ結合部2の被係合部61に、ロックビーク15が復元して入り込んでいる。
【0106】
図12で示す状態において、白抜き矢印の力を加えることを止めると、復元アーム14の復元力で、リテーナ20が上記中立位置に戻り、図13に示す状態になり、機器側コネクタ結合部2へのコネクタ1の設置が終了する。この設置が終了した状態では、規制アーム21により、ロックアーム11の弾性変形が規制されているので、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2から容易には外れないようになっている。
【0107】
なお、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置する場合、リテーナ20を上記中間位置から上記押圧位置に移動させるときに要する力(押圧力)が、ロックビーク15を機器側コネクタ結合部2の被係合部61に係合させるときに要する力(押圧力)よりも大きくなるように構成されている(たとえば、復元アーム14やロックアーム11の形態を適宜決めて構成されている)ので、図10の状態から図11の状態に移行するときにリテーナ20に加える押し込み力が、図11の状態から図12の状態に移行するときにリテーナ20に加える押し込み力よりも大きくなっている。
【0108】
次に、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2から離脱させる操作について説明する。
【0109】
図9、図13、図14は、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2から離脱させるときの操作を説明する図である。なお、図9は、コネクタ1や機器側コネクタ結合部2の斜視図であり、図14の(a)は、コネクタ1の縦方向に垂直な平面であってコネクタ1の中心を通る平面による、コネクタ1や機器側コネクタ結合部2の断面を示しており、図14の(b)は、コネクタ1の幅方向に垂直であってコネクタ1の中心から外れた平面による、コネクタ1や機器側コネクタ結合部2の断面を示している。
【0110】
まず、図13で示すように、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2に設置されている状態において、図9や図13で示すように、コネクタ1を引き抜く方向で、リテーナ20に上方向の力を加える。
【0111】
これにより、図14で示すように、復元アーム14が、図14(b)に矢印で示すように弾性変形し、リテーナ20が引き抜き位置に位置し、ロックアーム11が弾性変形可能な状態になる。
【0112】
図14で示す状態において、図14に白抜き矢印で示すようなさらなる引き抜き力をリテーナ20に加えると、図14(a)に矢印で示すように、ロックアーム11が弾性変形し、ロックビーク15が、被係合部61やコネクタ結合部本体部79から外れ、コネクタ1の離脱が終了する。この後、リテーナ20が上記中立位置に戻る。
【0113】
コネクタ1によれば、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2に設置された状態では、上記中立位置に位置しているリテーナ20の規制アーム21により、ロックアーム11の弾性変形が規制されるので、コネクタ1が機器側コネクタ結合部2から容易に外れないようになっている。また、機器側コネクタ結合部2に設置されたコネクタ1を、機器側コネクタ結合部2から取り外すとき、リテーナ20のみを一方向(上方向)の引っ張ればよいので、機器側コネクタ結合部2に設置されたコネクタ1を、機器側コネクタ結合部2から取り外す解除操作が簡素になっている。
【0114】
また、コネクタ1によれば、復元アーム14の当接部16がテーパ部24,25に当接して付勢されるように構成されているので、簡素な構成で、リテーナ20の上記中立位置への付勢をすることができる。
【0115】
また、コネクタ1によれば、リテーナ20の4隅で復元アーム14の当接部16がリテーナ20のテーパ部24,25に当接するように構成されているので、リテーナ20がバランス良く付勢され、リテーナ20がハウジング10に偏って挿入等されることがなくなり、コネクタ1の着脱の際、ハウジング10に対してリテーナ20がスムーズに移動するようになっている。
【0116】
また、コネクタ1によれば、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置する場合、リテーナ20を上記中間位置から上記押圧位置に移動させるときに要する力(押圧力)が、ロックビーク15を機器側コネクタ結合部2の被係合部61に係合させるときに要する力(押圧力)よりも大きくなるように構成されているので、慣性効果により、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置するときにおける中途嵌合状態(図11と図12の間の状態)を回避することができる。すなわち、リテーナ20を上記中間位置から上記押圧位置に移動させるためにリテーナ20に加えた力により、コネクタ1が運動量を備え、この運動量によりコネクタ1が下方に移動し、ロックビーク15が途中につっかえることなく機器側コネクタ結合部2の被係合部61に確実に係合する。
【0117】
なお、リテーナ20を上記中間位置から上記押圧位置に移動させるときに要する力(押圧力)を大きくする上記構成は、復元アーム14を4つ等の複数設けてあることで容易に達成されている。すなわち、復元アーム14を複数設けたことより、リテーナ20が上記中立位置から移動するのに要する力を大きくすることが容易になっている。
【0118】
また、従来のコネクタ300では、リテーナ306に弾性部326を形成してあるので、リテーナ306の材料としてガラス強化材等の強化材を採用することが難しい。したがって、リテーナ306の強度を確保するためにリテーナ306の肉厚を厚くする必要がある。また、リテーナ306の弾性部326がコネクタ300の表面に露出しているので、外力によって弾性部(復元アーム)326が変形したり破損したりするおそれがある。
【0119】
しかし、コネクタ1では、弾性部に相当する復元アーム14をハウジング10の内側に設けてあり、リテーナ20をハウジング10に最初に設置するときにのみ規制アーム21が1回だけ弾性変形するが、その後は、リテーナ20は弾性変形しない。したがって、規制アーム21の変形や破損が回避され、リテーナ20を構成する材料として撓みに対して不利なガラス強化材を採用することができ(ガラス繊維を混入させてリテーナを成形することができ)、リテーナ20を薄肉化することができ(図4の「t」の寸法を小さくすることができ)、リテーナ20を小型化することができる(図4の「h」の寸法を小さくすることができる。
【0120】
また、従来のコネクタ300では、ロックアーム312に、ロックビーク328を機器側コネクタ結合部の被係合部から離脱させるための突出部334が設けられており、この突出部334により、コネクタ300が大型化すると共に、突出部334が、コネクタ300等の搬送時に障害物に引っ掛かり変形したり破損したりするおそれがある。
【0121】
しかし、コネクタ1によれば、突出部334のような突出部を設ける必要がないので、コネクタ1の大型化や搬送の際における破損等を防止することができる。
【0122】
また、コネクタ1によれば、ロックビーク15の長手方向(ハウジング10では縦方向)のほぼ全長にわたって、規制アーム21がロックビーク15を支持してロックアーム11の弾性変形を規制しているので、コネクタ1を機器側コネクタ結合部2に設置するときにおける規制アーム21と機器側嵌合間口部60との干渉を避けることができる(コネクタ結合部本体部79内に、ロックビーク15と共に規制アーム21が入り込める)と共に、リテーナ20が前記中立位置に位置しているときにおけるロックアーム11の弾性変形を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 コネクタ
2 機器側コネクタ結合部
10 ハウジング
11 ロックアーム
14 復元アーム
15 ロックビーク
16 当接部
20 リテーナ
21 規制アーム
24 第1のテーパ部
25 第2のテーパ部
61 被係合部
71 付勢手段
73 ハウジング本体部
75 リテーナ本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとリテーナとを備えて構成され、機器側のコネクタ結合部に対して接近・離反する方向で移動することにより、前記機器側コネクタ結合部に着脱自在なっているコネクタにおいて、
弾性部が復元している位置である中立位置に前記リテーナが位置しているときには、前記リテーナが、前記ハウジングに設けられ前記機器側コネクタ結合部に弾性変形して係合する係合部の弾性変形を規制部で規制するように構成されており、
前記リテーナが、前記ハウジングに対して前記接近する方向に前記中立位置から移動して前記弾性部が弾性変形した押圧位置、もしくは、前記ハウジングに対して前記離反する方向に前記中立位置から移動して前記弾性部が弾性変形した引き抜き位置に位置しているときには、前記係合部が弾性変形可能なように構成されており、
前記引き抜き位置で前記リテーナが前記ハウジングに当接し、前記リテーナを前記離反する方向に移動することにより前記コネクタを前記機器側コネクタ結合部から離脱させることができるように構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
機器側のコネクタ結合部に対して接近・離反する方向に移動することにより、前記機器側のコネクタ結合部に着脱自在なっているコネクタにおいて、
ハウジング本体部と、このハウジング本体部に設けられ前記機器側コネクタ結合部に着脱されるときに弾性変形する係合部とを具備するハウジングと;
リテーナ本体部と、このリテーナ本体部に設けられ前記係合部の弾性変形を規制する規制部とを備え、前記ハウジングに対して前記機器側コネクタ結合部に接近・離反する方向で所定の行程を移動するように前記ハウジングに設けられ、前記行程の中間にある中立位置に位置しているときには、前記規制部で前記係合部の弾性変形を規制し、前記中立位置から所定の距離だけ移動したときに、前記規制部による前記規制を解除するように構成されているリテーナと;
前記リテーナが前記中立位置に位置するように、弾性部を用いて付勢する付勢手段と;
を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記弾性部は、前記ハウジングに設けられた復元アームによって構成されており、
前記リテーナには、前記復元アームの当接部に当接する第1のテーパ部と、前記復元アームの当接部に当接する第2のテーパ部とが設けられており、
前記リテーナが前記中立位置に位置しているときには、前記復元アームの当接部が前記各テーパ部の間に位置しており、
前記リテーナが移動して、前記復元アームの当接部が前記第1のテーパ部または前記第2のテーパ部に当接することにより、前記リテーナからの押圧力で前記復元アームが弾性変形し、この復元アームの復元力で前記リテーナが前記中立位置に向かうような付勢がされるように構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタにおいて、
前記復元アームは、複数設けられており、前記リテーナの4隅で前記復元アームの当接部が前記リテーナのテーパ部に当接するように構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコネクタにおいて、
前記係合部は、前記ハウジングに設けられたロックアームとこのロックアームの中間部もしくは先端部側に設けられているロックビークとによって構成されており、
前記規制部は、前記ロックビークの裏側に配置されて前記ロックアームの弾性変形を防止するように構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコネクタにおいて、
前記コネクタを前記機器側コネクタ結合部に設置する場合、前記リテーナを前記中間位置から移動させるときに要する力が、前記係合部を前記機器側コネクタ結合部の被係合部に係合させるときに要する力よりも大きくなるように構成されていることを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−22846(P2012−22846A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158859(P2010−158859)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】