説明

コネクタ

【課題】コストアップを招くことなく、容易に端子の着脱を行うことが可能なコネクタを提供すること。
【解決手段】電線16が接続された端子15と、端子15が一方向から挿入可能なキャビティ31が長手方向へわたって形成されたハウジング12と、ハウジング12における端子15の挿入側である先端部に着脱可能に装着されるフロントホルダ13とを備え、キャビティ31は、一方向から挿入された端子15を係止して他方向への移動を規制する段部33を有し、端子15は、段部33とフロントホルダ13とによってハウジング12のキャビティ31内に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線同士を互いに導通させるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両に配線されるワイヤハーネス等には、電線同士の接続にコネクタが用いられている。
【0003】
一般に、コネクタは、電線の端部に接続した接続端子がハウジングの収容部へ挿し込まれて収容されている。そして、接続端子は、ハウジングからの抜け出しを防ぐため、ハウジングに形成されたランスが、ハウジングの収容部へ挿し込まれた接続端子の係合部へ係合する構造とされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかし、このようなランスによる係合構造を有するコネクタでは、メンテナンス時や廃棄時に接続端子をハウジングの収容部から引き抜く際に、専用の治具を用いてランスを係合方向と逆方向へ変位させて接続端子との係合状態を解除させなければならない。したがって、特に多極のコネクタでは、接続端子の引き抜き作業に多大な手間及び時間を要していた。
【0005】
このため、操作突片を押し込むことにより、端子に係合しているスライドフックをスライド動作させて端子の係合を容易に解除するコネクタが開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、角筒状のアウタハウジング内に入れられたインナハウジングによって端子を保持するキャビティが形成され、インナハウジングをアウタハウジングから引き抜くことにより、アウタハウジングのランスによって係合されていた端子の取り外しが可能となるコネクタも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−159383号公報
【特許文献2】特開2008−91115号公報
【特許文献3】特開2000−223212号公報
【特許文献4】特開平11−185856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献3のコネクタは、ハウジングに対して、端子の挿入方向と交差する方向へ摺動可能としたスライドフックと、さらに、このスライドフックを端子の係合方向へ付勢する板バネとを要するため、部品点数の増大によるコストアップを招いてしまう。また、板バネの付勢力が強すぎると、端子の挿入が困難となり、板バネの付勢力が弱すぎると端子の係合が不十分となり、しかも、経時変化によって板バネの付勢力が低下すると、端子の係合力が低下してしまうおそれもある。このため、適切な付勢力を長期にわたって維持することができる高価な板バネを用いなければならず、やはり、コストアップを招いてしまう。
【0009】
また、この特許文献3のコネクタでは、端子挿入時に、スライドフックがスライドされ、全ての取付孔における端子の係合が解除されてしまう。このため、二本目以降の端子を挿入するときに、先に挿入させた端子のスライドフックによる係合が解除されてしまい、全ての端子を円滑に挿入して係合させることが困難である。また、誤挿入時やメンテナンス等のために特定の端子を抜き取る際に、スライドフックをスライドさせると、全ての取付孔における端子の係合が解除されてしまう。このように、このコネクタでは、円滑な挿入作業及びメンテナンス作業が困難であった。
【0010】
また、特許文献4のコネクタでは、端子に係合可能なランスが内壁面に形成された複雑形状のアウタハウジングと、アウタハウジング内に入れられて端子を保持可能なキャビティを形成する複雑形状のインナハウジングとを要するため、これらのハウジングを成形するための金型も複雑形状となり、製造コストが嵩んでしまう。特に、ランスを有するアウタハウジングを成形するために、開き方向と垂直な方向にランス成形用の可動部を備えた金型が必要となり、大幅なコストアップを招いてしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、コストアップを招くことなく、容易に端子の着脱を行うことが可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 電線が接続された端子と、
前記端子が一方向から挿入可能なキャビティが長手方向へわたって形成されたハウジングと、
前記ハウジングにおける前記端子の挿入側の端部に着脱可能に装着されるフロントホルダとを備え、
前記キャビティは、一方向から挿入された前記端子を係止して他方向への移動を規制する段部を有し、
前記端子は、前記段部と前記フロントホルダとによって前記ハウジングの前記キャビティ内に保持されること、
を特徴とするコネクタ。
(2) 前記端子は、前記電線の直径よりも大きな幅寸法とされ、前記ハウジングには、長手方向へわたって前記キャビティと連通するスリットが形成され、前記スリットは、その幅寸法が、前記電線の直径より大きく、前記端子の幅寸法よりも小さくされていること、
を特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
(3) 又は前記ハウジングは、前記端子がそれぞれ収容される複数の前記キャビティを有すること、
を特徴とする上記(1)又は(2)に記載のコネクタ。
【0013】
上記(1)の構成のコネクタでは、端部に端子が接続された電線をハウジングのキャビティに通して移動させて端子をハウジングの一方側からキャビティへ挿入し、ハウジングにおける端子の挿入側の端部にフロントホルダを装着することにより、極めて容易に、キャビティの段部とフロントホルダとによって端子をハウジングのキャビティ内に保持させることができる。
【0014】
また、フロントホルダをハウジングから取り外し、端子及び電線をキャビティから引き抜くことにより、治具を用いることなく、極めて容易に、ハウジングから端子及び電線を取り外すことができる。
【0015】
また、端子を係止する弾性片などからなるランスが不要であるので、ハウジングを成形する金型の簡略化によるコストダウンを図ることができる。
【0016】
つまり、部品点数の増大や構造の複雑化によるコストアップを招くことなく、容易に端子の着脱を可能とし、組立作業及び解体作業の円滑化を図ることができる。
【0017】
特に、端子の挿入側を上方へ向けてハウジングを配置させておけば、既にキャビティへ挿入した端子を、その自重によってキャビティ内に収容させた状態に維持させることができ、組立作業の円滑化を図ることができる。
【0018】
上記(2)の構成のコネクタでは、組立時には、電線をスリットへ挿入してキャビティ内へ配置させることができ、また、解体時には、キャビティ内の電線をスリットへ通して取り出すことができる。これにより、電線の端子接続側と反対側に部材が接続されていたとしてもキャビティに対する電線の出し入れを容易に行い、組立作業及び解体作業を円滑に行うことができる。
【0019】
上記(3)の構成のコネクタでは、ハウジングのそれぞれのキャビティへ端子を収容させてフロントホルダをハウジングへ装着することにより、極めて容易に、それぞれのキャビティの段部とフロントホルダとによって複数の端子をハウジングの各キャビティ内に保持させることができる。
【0020】
また、フロントホルダをハウジングから取り外し、それぞれの端子及び電線を各キャビティから引き抜くことにより、極めて容易に、ハウジングから複数の端子及び電線を取り外すことができる。
【0021】
特に、端子の挿入側を上方へ向けてハウジングを配置させておけば、既にキャビティへ挿入した端子を、その自重によってキャビティ内に収容させた状態に維持させて次の端子のキャビティへの挿入作業を行うことができ、組立作業の円滑化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コストアップを招くことなく、容易に端子の着脱を行うことが可能なコネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るコネクタを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は断面図である。
【図2】本実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【図3】コネクタを構成する端子を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図4】コネクタを構成するハウジングを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は断面図である。
【図5】コネクタを構成するフロントホルダを示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】コネクタの組立工程を示す図であって、(a)から(d)は、それぞれコネクタの斜視図、正面図および断面図である。
【図7】雄型の端子を備えた本実施形態に係るコネクタを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は断面図である。
【図8】複数の端子を保持可能な本実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本実施形態に係るコネクタを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は断面図、図2は本実施形態に係るコネクタの分解斜視図、図3はコネクタを構成する端子を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図、図4はコネクタを構成するハウジングを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は断面図、図5はコネクタを構成するフロントホルダを示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【0026】
図1(a)〜(c)及び図2に示すように、本実施形態のコネクタ11Aは、ハウジング12と、このハウジング12の先端部に設けられたフロントホルダ13と、ハウジング12に形成されたキャビティ31に収容された端子15とを備えており、端子15は、電線16の端部に接続されている。
【0027】
端子15は、銅又は銅合金から形成された金属板をプレス加工したもので、その表面には、電気接続性能の向上のためのスズメッキを施すのが好ましい。
【0028】
図3(a),(b)に示すように、端子15は、板状の端子本体21を有しており、この端子本体21には、その先端に電気接続部22が設けられ、後端に圧着部23が設けられている。
【0029】
電気接続部22には、接続相手側のコネクタの端子のタブが接合可能とされている。
【0030】
圧着部23は、電線16の端部に圧着されて接続されており、これにより、端部から露出された電線16の導体が端子15と導通されている。
【0031】
そして、この端子15は、電気接続部22の厚さ寸法tが、圧着部23の直径d1よりも大きくされており、これにより、端子本体21からの電気接続部22の突出寸法が、圧着部23の突出寸法よりも大きくされている。
【0032】
ハウジング12は、樹脂から成形されたもので、図4(a)〜(c)に示すように、ハウジング12には、長手方向にわたってキャビティ31が形成されている。このキャビティ31は、ハウジング12の両端において開放されている。また、ハウジング12の前面には、幅方向の中央部分に、長手方向へわたってスリット32が形成されており、このスリット32は、キャビティ31に連通されている。
【0033】
キャビティ31は、その幅寸法W1が、端子15の電気接続部22の幅寸法Wよりも大きくされている。また、スリット32は、その幅寸法W2が、端子15の電気接続部22の幅寸法Wよりも小さく、電線16の直径d2よりも大きくされている。なお、このスリット32の幅寸法W2は、端子15の圧着部23の直径d1よりも大きくすることが好ましい。
【0034】
キャビティ31は、スリット32の形成側と反対側の面に、段部33が形成されている。そして、このキャビティ31は、段部33よりも上方側の奥行き寸法D1が、端子15の電気接続部22の厚さ寸法tよりも僅かに大きくされ、段部33よりも下方側の奥行き寸法D2が、端子15の電気接続部22の厚さ寸法tよりも小さくされている。なお、キャビティ31の段部33よりも下方側の奥行き寸法D2は、端子15の圧着部23の直径d1よりも大きくされている。
【0035】
フロントホルダ13は、樹脂から成形されたもので、図5(a),(b)に示すように、板状に形成されている。このフロントホルダ13は、ハウジング12の先端部に着脱可能に取り付けられる。ハウジング12とフロントホルダ13との間には、図示しない係合手段が設けられており、この係合手段によってハウジング12に対してフロントホルダ13が係合されて装着状態に維持されるようになっている。
【0036】
このフロントホルダ13には、平面視矩形状の挿通孔41が形成されており、この挿通孔41に、端子15の電気接続部22に接続される接続相手側のコネクタの端子のタブが挿通される。また、フロントホルダ13のハウジング12への装着側と反対側の面には、挿通孔41の開口縁に、挿通孔41へ向かって傾斜するテーパ面41aが形成されており、このテーパ面41aによって接続相手側の端子のタブが挿通孔41へ向かって案内される。
【0037】
次に、上記のコネクタ11Aを組み立てる場合について説明する。
【0038】
図6はコネクタ11Aの組立工程を示す図である。
【0039】
図6(a)に示すように、まず、コネクタ11Aのハウジング12を、その先端を上方へ向けて保持した状態で、端子15が接続された端部を上向きにした電線16をハウジング12のスリット32へ挿入し、図6(b)に示すように、電線16をキャビティ31内へ配置させる。このとき、スリット32は、その幅寸法W2が、電線16の直径d2よりも大きくされているので、電線16をスリット32へ容易に挿通させることができる。なお、スリット32の幅寸法W2を端子15の圧着部23の直径d1よりも大きくした場合は、端子15の圧着部23をスリット32へ挿通させることもできる。
【0040】
電線16をスリット32へ通してキャビティ31内へ配置させたら、電気接続部22の端子本体21からの突出方向をスリット32と反対側へ向けた状態で、電線16を下方へ引き、端子15をキャビティ31内へ移動させる。このようにすると、図6(c)に示すように、端子15の電気接続部22がキャビティ31に形成された段部33に係止されてハウジング12の後端側への移動が規制され、よって、端子15が、キャビティ31内の所定位置に保持された仮係合状態となる。この仮係合状態では、端子15には、自重によって下方へ移動する方向に力が作用し、よって、端子15は、段部33に係止された状態に維持される。また、スリット32の幅寸法W2が、端子15の電気接続部22の幅寸法Wよりも小さいので、キャビティ31内に保持させた端子15の電気接続部22がスリット32から抜け出すことはない。
【0041】
この状態において、図6(d)に示すように、ハウジング12の先端部に、フロントホルダ13を装着し、係合手段によってフロントホルダ13をハウジング12に係合させる。このようにすると、キャビティ31内に保持されて電気接続部22が段部33に係止されてハウジング12の後端側への移動が規制された端子15は、ハウジング12の先端側への移動がフロントホルダ13によって規制された本係合状態となり、コネクタ11Aの組立の完了となる。
【0042】
次に、上記のように組み立てたコネクタ11Aにおいて、メンテナンスや廃棄のために、端子15を取り外す場合について説明する。
【0043】
端子15を取り外す場合、まず、ハウジング12の先端に装着させたフロントホルダ13を、係合手段による係合を解除させて取り外す。このようにすると、フロントホルダ13による端子15のハウジング12に対する先端側への移動の規制が解除される。
【0044】
この状態において、端子15をハウジング12に対して先端側へ移動させ、キャビティ31から引き抜く。
【0045】
次いで、端子15が接続された電線16を、ハウジング12のスリット32へ通してキャビティ31から抜き取る。
【0046】
これにより、端子15を電線16とともにハウジング12から容易に取り外すことができる。
【0047】
次に、タブが設けられた端子を備えたコネクタについて説明する。
【0048】
図7は雄型の端子を備えた本実施形態に係るコネクタを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は断面図である。
【0049】
図7(a)〜(c)に示すように、このコネクタ11Bは、端子15として、電気接続部22からタブ25が延在された雄型の端子を備えている。
【0050】
そして、このコネクタ11Bでは、ハウジング12の先端部に装着されるフロントホルダ13に形成された挿通孔41に、キャビティ31に収容された端子15のタブ25が挿通されて突出されている。
【0051】
上記のコネクタ11Bを組み立てる場合について説明する。
【0052】
コネクタ11Bを組み立てる場合、まず、ハウジング12を、その先端を上方へ向けて保持した状態で、スリット32へ電線16を挿入してキャビティ31へ配置させ、電線16を下方へ引き、端子15をそれぞれのキャビティ31内へ移動させて保持させる。
【0053】
そして、キャビティ31に端子15を保持させた状態において、ハウジング12の先端部に、挿通孔41へタブ25を挿通させながらフロントホルダ13を装着し、係合手段によってハウジング12へ係合させる。このようにすると、キャビティ31内に保持された端子15が、抜け出すことなくハウジング12内に収容されて保持された状態にコネクタ11Bが組み立てられる。
【0054】
上記のコネクタ11Bにおいて、メンテナンスや廃棄のために、端子15を取り外す場合について説明する。
【0055】
端子15を取り外す場合、まず、フロントホルダ13のハウジング12に対する係合を解除させ、フロントホルダ13をハウジング12から取り外す。
【0056】
このようにすると、フロントホルダ13による各端子15のハウジング12に対する先端側への移動の規制が解除される。
【0057】
この状態において、端子15をハウジング12に対して先端側へ移動させ、キャビティ31から引き抜き、端子15が接続された電線16を、ハウジング12のスリット32へ通してキャビティ31から抜き取る。
【0058】
これにより、タブ25が設けられた端子15を電線16とともにハウジング12から容易に取り外すことができる。
【0059】
このように、上記実施形態に係るコネクタ11A,11Bによれば、端部に端子15が接続された電線16をハウジング12のキャビティ31に通して移動させて端子15をハウジング12の一方側である先端部からキャビティ31へ挿入し、ハウジング12における端子15の挿入側の端部にフロントホルダ13を装着することにより、治具を用いることなく、極めて容易に、キャビティ31の段部33とフロントホルダ13とによって端子15をハウジング12のキャビティ31内に保持させることができる。
【0060】
また、フロントホルダ13をハウジング12から取り外し、端子15及び電線16をキャビティ31から引き抜くことにより、極めて容易に、ハウジング12から端子15及び電線16を取り外すことができる。
【0061】
また、端子15を係止する弾性片などからなるランスが不要であるので、ハウジング12を成形する金型の簡略化によるコストダウンを図ることができる。
【0062】
つまり、部品点数の増大や構造の複雑化によるコストアップを招くことなく、容易に端子15の着脱を可能とし、組立作業及び解体作業の円滑化を図ることができる。
【0063】
しかも、ハウジング12に対して、接続相手側のコネクタとの接続側から端子15をキャビティ31へ収容させて剛性の高い段部33によって端子15を保持させる構造であるので、接続相手側のコネクタとの接続側と反対側から端子を挿入してランスによって係止させる構造と比較して、端子15を高い保持力でハウジング12に保持させることができ、接続信頼性を高めることができる。
【0064】
特に、端子15の挿入側である先端部を上方へ向けてハウジング12を配置させておけば、既にキャビティ31へ挿入した端子15を、その自重によってキャビティ31内に収容させた状態に維持させることができ、組立作業の円滑化を図ることができる。
【0065】
また、組立時には、電線16をスリット32へ挿入してキャビティ31内へ配置させることができ、解体時には、キャビティ31内の電線16をスリット32へ通して取り出すことができる。これにより、電線16の端子接続側と反対側に部材が接続されていたとしてもキャビティ31に対する電線16の出し入れを容易に行い、組立作業及び解体作業を円滑に行うことができる。
【0066】
次に、複数の端子を備えたコネクタについて、雌型の端子を備えたものを例示して説明する。
【0067】
図8は複数の端子を保持可能な本実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【0068】
図8に示すように、このコネクタ11Cでは、ハウジング12に、それぞれスリット32を有する複数のキャビティ31が形成されている。これらのキャビティ31には、それぞれ端子15を収容して保持させることができるようになっている。また、このハウジング12の先端に装着されるフロントホルダ13には、各キャビティ31に対応して挿通孔41が形成されている。
【0069】
ハウジング12の両側部には、係合突起12aが形成されている。また、フロントホルダ13の両端部には、ハウジング12への装着方向へ突出する係合片13aが形成され、これらの係合片13aには、ハウジング12の係合突起12aが係合される係合孔13bが形成されている。つまり、このコネクタ11Cには、ハウジング12の係合突起12aと、フロントホルダ13の係合孔13bを有する係合片13aとから、ハウジング12へフロントホルダ13を係合させる係合手段が構成されている。
【0070】
そして、このコネクタ11Cでは、ハウジング12の各キャビティ31へ、電線16に接続された端子15を収容させて保持させた状態で、ハウジング12にフロントホルダ13を装着することにより、複数の端子15を収容したコネクタ11Cとすることができる。そして、このコネクタ11Cに対して接続相手側のコネクタを突き合わせると、接続相手側のコネクタに設けられた複数の端子のタブがフロントホルダ13の挿通孔41から挿入され、各端子15の電気接続部22に導通接続される。
【0071】
上記のコネクタ11Cを組み立てる場合について説明する。
【0072】
コネクタ11Cを組み立てる場合、まず、ハウジング12を、その先端を上方へ向けて保持した状態で、各スリット32へ電線16を挿入してキャビティ31へ配置させ、電線16を下方へ引き、端子15をそれぞれのキャビティ31内へ移動させて保持させる。
【0073】
そして、全てのキャビティ31に端子15を保持させた状態において、ハウジング12の先端部に、フロントホルダ13を装着し、フロントホルダ13の係合片13aの係合孔13bとハウジング12の係合突起12aとを係合させる。このようにすると、各キャビティ31内に保持された端子15が、抜け出すことなくハウジング12内に保持された状態にコネクタ11Cが組み立てられる。
【0074】
上記のコネクタ11Cにおいて、メンテナンスや廃棄のために、端子15を取り外す場合について説明する。
【0075】
端子15を取り外す場合、まず、フロントホルダ13の係合片13aの係合孔13bに係合されているハウジング12の係合突起12aの係合を解除させ、フロントホルダ13をハウジング12から取り外す。
【0076】
このようにすると、フロントホルダ13による各端子15のハウジング12に対する先端側への移動の規制が解除される。
【0077】
この状態において、それぞれの端子15をハウジング12に対して先端側へ移動させ、キャビティ31から引き抜き、端子15が接続された電線16を、ハウジング12のスリット32へ通してキャビティ31から抜き取る。
【0078】
これにより、全ての端子15を電線16とともにハウジング12から容易に取り外すことができる。
【0079】
このように、上記のコネクタ11Cの場合も、ハウジング12のそれぞれのキャビティ31へ端子15を収容させてフロントホルダ13をハウジング12へ装着することにより、極めて容易に、それぞれのキャビティ31の段部33とフロントホルダ13とによって複数の端子15をハウジング12の各キャビティ31内に保持させることができる。
【0080】
また、フロントホルダ13をハウジング12から取り外し、それぞれの端子15及び電線16を各キャビティ31から引き抜くことにより、極めて容易に、ハウジング12から複数の端子15及び電線16を取り外すことができる。
【0081】
特に、端子15の挿入側である先端部を上方へ向けてハウジング12を配置させておけば、既にキャビティ31へ挿入した端子15を、その自重によってキャビティ31内に収容させた状態に維持させて次の端子15のキャビティ31への挿入作業を行うことができ、組立作業の円滑化を図ることができる。
【0082】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0083】
11A,11B,11C コネクタ
12 ハウジング
13 フロントホルダ
15 端子
16 電線
31 キャビティ
32 スリット
33 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続された端子と、
前記端子が一方向から挿入可能なキャビティが長手方向へわたって形成されたハウジングと、
前記ハウジングにおける前記端子の挿入側の端部に着脱可能に装着されるフロントホルダとを備え、
前記キャビティは、一方向から挿入された前記端子を係止して他方向への移動を規制する段部を有し、
前記端子は、前記段部と前記フロントホルダとによって前記ハウジングの前記キャビティ内に保持されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記端子は、前記電線の直径よりも大きな幅寸法とされ、
前記ハウジングには、長手方向へわたって前記キャビティと連通するスリットが形成され、前記スリットは、その幅寸法が、前記電線の直径より大きく、前記端子の幅寸法よりも小さくされていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記端子がそれぞれ収容される複数の前記キャビティを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−69258(P2012−69258A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210618(P2010−210618)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】