説明

コネクタ

【課題】圧接部が嵌合方向と斜交する方向に延びる圧接部を有するコネクタであって電線における圧接部との接続位置のばらつきを抑制することのできるコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタ10は、コンタクトと、コンタクトを保持するハウジング130と、電線に取り付けられた状態でハウジング130に組み付けられる取付部材180とを備えている。取付部材180には、ハウジング130のガイド部(142等)にガイドされる被ガイド部192が設けられており、コンタクトの圧接部の延びる方向(斜交方向)に沿って取付部材180のハウジング130への組み付けがガイドされる。これにより、電線とコンタクトの圧接部との接続を適切に図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトの圧接部(圧接刃)で電線の被覆部をつき破りつつ圧接部と電線の芯線との接続を図るコネクタ(圧接コネクタ)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとしては、例えば、特許文献1乃至特許文献3に開示されたものがある。特許文献1のコネクタにおいてはコンタクトの圧接部(圧接刃)が嵌合方向と直交する方向に延び、特許文献2のコネクタはコンタクトの圧接部(圧接刃)が嵌合方向に延びているのに対して、特許文献3のコネクタにおいてはコンタクトの圧接部(圧接刃)は嵌合方向と斜交する方向に延びている。そのため、同一のコンタクトの配列とした場合、特許文献3のコネクタの方が特許文献1や特許文献2のコネクタと比較して高さ方向のサイズを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−63809号公報
【特許文献2】特開平8−7995号公報
【特許文献3】実開平6−86262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3のコネクタでは、電線に直接的に力を加えて圧接部との接続を図っているが、このような作業によると、電線における圧接部との接続位置にばらつきが生じやすい。即ち、電線ごとに信号の伝送路長が異なってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、圧接部が嵌合方向と斜交する方向に延びる圧接部を有するコネクタであって電線における圧接部との接続位置のばらつきを抑制することのできるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1のコネクタとして、
電線と接続すると共に嵌合方向に沿って相手側コネクタと嵌合するコネクタであって、
コンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、前記電線に取り付けられた状態で前記ハウジングに組み付けられる取付部材とを備えており、
前記コンタクトは、前記嵌合方向と斜交する斜交方向に延びる圧接部であって前記電線の芯線と接続する圧接部を有しており、
前記ハウジングには、ガイド部が設けられており、
前記取付部材には、前記ガイド部にガイドされる被ガイド部であって前記斜交方向に沿った前記取付部材の前記ハウジングに対する組み付け時における前記取付部材の移動を前記ガイド部と共にガイドする被ガイド部を有しており、
前記取付部材が前記電線に取り付けられた状態で前記被ガイド部が前記ガイド部にガイドされつつ前記取付部材が前記ハウジングに組み付けられると、前記芯線と前記圧接部とが接続する
コネクタを提供する。
【0007】
また、本発明は、第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記圧接部は、前記嵌合方向と直交する横方向とも斜交する面内に延びている
コネクタを提供する。
【0008】
また、本発明は、第3のコネクタとして、第1又は第2のコネクタであって、
複数の前記コンタクトを備えており、
前記嵌合方向と直交する横方向において隣り合う前記圧接部は互いに平行に配置されている
コネクタを提供する。
【0009】
また、本発明は、第4のコネクタとして、第3のコネクタであって、
複数の前記電線を保持する保持部材を更に備えており、
前記取付部材は、複数の前記電線に取り付けられる
コネクタを提供する。
【0010】
また、本発明は、第5のコネクタとして、第4のコネクタであって、
前記保持部材と前記ハウジングとの間には収容部が構成されており、
前記ガイド部による前記被ガイド部のガイドにより前記取付部材が前記ハウジングに組み付けられる際に前記取付部材が前記収容部に収容される
コネクタを提供する。
【0011】
また、本発明は、第6のコネクタとして、第5のコネクタであって、
前記保持部材は、前記ハウジングに突き当てられて前記嵌合方向における前記保持部材の前記ハウジングに対する位置を粗決めする突き当て部を有している
コネクタを提供する。
【0012】
また、本発明は、第7のコネクタとして、第5又は第6のコネクタであって、
前記取付部材は、前記保持部材に保持された前記電線に対して取り付けられた後、前記ガイド部による前記被ガイド部のガイドを可能とする位置まで移動され、更に、前記ガイドを経て前記収容部に収容されるものであり、
前記保持部材には、前記電線に対して取り付けられた前記取付部材が前記ガイドの可能な位置まで移動したか否かの目安となるマーカーが形成されている
コネクタを提供する。
【0013】
また、本発明は、第8のコネクタとして、第3乃至第7のいずれかのコネクタであって、
前記コンタクトは、2つのグループにグループ化されており、
前記横方向において隣り合う前記コンタクトの前記圧接部は、前記嵌合方向及び前記横方向の双方と直交する上下方向において互いに異なる位置に位置しており、
前記横方向において隣り合う前記圧接部は、前記横方向において一つおきに設けられた前記コンタクトのものであり、
前記取付部材は2つあり、夫々、前記コンタクトの前記グループに対応している
コネクタを提供する。
【0014】
また、本発明は、第9のコネクタとして、第8のコネクタであって、
前記取付部材は、互いに同じ形状を有している
コネクタを提供する。
【0015】
また、本発明は、第10のコネクタとして、第1乃至第9のいずれかのコネクタであって、
前記取付部材には、前記取付部材を貫通する取付孔と、前記取付孔と連通すると共に挿入された前記圧接部を保持する保持スリットとが形成されており、
前記電線を前記取付孔に挿通することにより前記取付部材は前記電線に取り付けられる
コネクタを提供する。
【0016】
また、本発明は、第11のコネクタとして、第10のコネクタであって、
前記取付孔は、前記嵌合方向と前記斜交方向とを含む面内において、前記斜交方向と直交する方向に延びている
コネクタを提供する。
【0017】
また、本発明は、第12のコネクタとして、第1乃至第11のいずれかのコネクタであって、
前記被ガイド部は、前記取付部材に設けられた前記斜交方向に延びる突条であり、
前記ガイド部は、前記被ガイド部を前記斜交方向に沿って受けるように構成されている
コネクタを提供する。
【0018】
また、本発明は、第13のコネクタとして、第12のコネクタであって、
前記ガイド部は、前記取付部材を前記ハウジングに対して組み付けた状態において前記被ガイド部よりも前記ハウジングの嵌合端側に位置する第1ガイド部及び第2ガイド部と前記被ガイド部の前記嵌合端側とは反対側に位置する第3ガイド部とを有しており、
前記第1ガイド部、前記第2ガイド部及び前記第3ガイド部は、前記嵌合方向と直交する上下方向において重ならないように配置されている
コネクタを提供する。
【0019】
また、本発明は、第14のコネクタとして、第13のコネクタであって、
前記取付部材の前記ハウジングに対する組み付け時に、前記第1ガイド部は、前記被ガイド部を最初にガイドするように設けられており、且つ、前記第1ガイド部による前記被ガイド部のガイドを視認できるように設けられている
コネクタを提供する。
【0020】
更に、本発明は、第15のコネクタとして、第1乃至第14のいずれかのコネクタであって、
前記ハウジングには、前記電線の端面を保護する保護部が設けられている
コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧接部を嵌合方向と斜交する方向に延びるように構成したことから、コネクタの高さ方向(上下方向)のサイズを抑えることができる。また、取付部材が電線に取り付けられた状態で被ガイド部がガイド部にガイドされつつ取付部材が斜交方向に沿ってハウジングに組み付けられると、電線の芯線と圧接部とが接続されるように構成されていることから、電線と圧接部との接続位置のばらつきを抑えることができると共に圧接部の破損などを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタを示す後方斜視図である。図には、圧接後の状態が示されている。
【図2】図1のコネクタを示す後方斜視図である。図には、圧接前の状態が示されている。
【図3】図1のコネクタの第1コンタクト及び第2コンタクト並びにハウジングからなる構造体を示す後方斜視図である。
【図4】図3の構造体を示す正面図である。
【図5】図3の構造体を示す背面図である。
【図6】図3の構造体を示す側面図である。
【図7】図3の構造体を示す上面図である。
【図8】図3の第1コンタクトを示す斜視図である。
【図9】図3の第2コンタクトを示す斜視図である。
【図10】図1のコネクタの保持部材を示す前方斜視図である。
【図11】図1のコネクタの取付部材を示す斜視図である。なお、図示された座標系は上側の取付部材に関するものであるが、下側の取付部材も方向が異なるだけで上側の取付部材と同じ形状を有している。
【図12】ケーブルとコネクタとの接続工程を示す前方斜視図である。
【図13】図12の接続工程に続く工程を示す前方斜視図である。
【図14】図13の接続工程に続く工程を示す側面図である。
【図15】図14の接続工程に続く工程を示す後方斜視図である。
【図16】図15の工程におけるガイド部と被ガイド部との関係を示す断面図である。
【図17】図15の工程における第2コンタクトと取付部材との関係を示す断面図である。
【図18】図17の取付部材を変位させることにより第2コンタクトの第2圧接部が部分的に取付部材に挿入された状態を示す断面図である。
【図19】図18の取付部材を変位させ終え第2コンタクトの第2圧接部が電線の芯線に圧接された状態を示す断面図である。
【図20】図1のコネクタの断面図である。図には、第1圧接部及び第2圧接部と電線との接続が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2に示されるように、本発明の実施の形態によるコネクタ10は、ケーブル200に取り付けられ、X方向(嵌合方向)に沿って相手側コネクタ(図示せず)に接続されるものである。本実施の形態によるケーブル200は、いわゆるSTP(Shielded twisted pair)ケーブルであり、図12、図13及び図20から理解されるように、ツイストされた電線210を4ペアと、それらをシールドする遮蔽部材220と、遮蔽部材220の外側に設けられたシース(外皮)230とを備えている。但し、本発明のコネクタの取付対象はSTPケーブルには限られず、UTP(Unshield Twisted Pair)ケーブルその他のケーブルであってもよい。
【0024】
図1乃至図3から理解されるように、本実施の形態によるコネクタ10は、導電体からなる第1コンタクト(コンタクト)110及び第2コンタクト(コンタクト)120と、絶縁体からなるハウジング130と、絶縁体からなる保持部材160と、絶縁体からなる2つの取付部材180とを備えている。
【0025】
図8に示されるように、第1コンタクト110は、第1主部112と、第1圧接部(圧接部)114とを有している。第1主部112は、XZ平面内においてX方向(嵌合方向)に沿って延びており、その先端には第1接点部116が設けられている。第1圧接部114は、X方向と斜交する斜交方向(後斜め上方向:−X方向且つ+Z方向)に延びている。詳しくは、第1圧接部114は、股部118が形成された二股且つ平板状の形状を有しており、Y方向(横方向)ともZ方向(上下方向)とも斜交する面内に延びている。
【0026】
図9に示されるように、第2コンタクト120は、第2主部122と、第2圧接部(圧接部)124とを有している。第2主部122は、XZ平面内においてX方向(嵌合方向)に沿って延びており、その先端には第2接点部126が設けられている。第2圧接部124は、X方向と斜交する斜交方向(後斜め下方向:−X方向且つ−Z方向)に延びている。詳しくは、第2圧接部124は、股部128が形成された二股且つ平板状の形状を有しており、Y方向(横方向)ともZ方向(上下方向)とも斜交する面内に延びている。
【0027】
図8及び図9と図3及び図5から理解されるように、本実施の形態による第1圧接部114の端部及び第2圧接部124の端部は、いずれも先細るように形成されている。なお、図から明らかなように本実施の形態による第1コンタクト110及び第2コンタクト120はプレス形成されたものであるが、曲げ形成等他の方法によって形成されたものであってもよい。
【0028】
図3乃至図7から理解されるように、ハウジング130は、第1コンタクト110の第1主部112と第2コンタクト120の第2主部122とを保持するコンタクト保持部132と、コンタクト保持部132の−X方向端部(後端)のY方向(横方向)の両端から−X方向(後方)に延びる側壁部134とを有している。
【0029】
図3乃至図5から理解されるように、コンタクト保持部132は、第1コンタクト110の第1主部112と第2コンタクト120の第2主部122とを交互に且つY方向に列設保持している。特に、本実施の形態においては、第1コンタクト110の第1主部112と第2コンタクト120の第2主部122とはY方向に一列に並べられている。一方、図3及び図5に示されるように、第1圧接部114と第2圧接部124とはZ方向において別々の位置に配置されている。具体的には、図5に示されるように、+Z側(上側)には第1圧接部114のみが位置しており、−Z側(下側)には第2圧接部124のみが位置している。即ち、第1圧接部114はY方向に一列に並べられており、第2圧接部124はZ方向において第1圧接部114から離れた位置においてY方向に一列に並べられている。また、Y方向において隣接する第1圧接部114は、Y方向において間に第2コンタクト120を一つ挟んで設けられた最も近い第1コンタクト110に属するものであり、Y方向において隣接する第2圧接部124は、Y方向において間に第1コンタクト110を一つ挟んで設けられた最も近い第2コンタクト120に属するものである。
【0030】
図3及び図5から理解されるように、第1圧接部114は互いに平行となるように配置されており、同様に、第2圧接部124は互いに平行となるように配置されている。本実施の形態においては、第1圧接部114も第2圧接部124もX方向と斜交する方向に延びていることからハウジング130のZ方向のサイズ(高さ)を抑えることができ、またそれら第1圧接部114及び第2圧接部124に圧接される電線210の曲げも少なくすることができる。更に、本実施の形態による第1圧接部114及び第2圧接部124は、いずれもY方向と斜交する面内に延びていることから、ハウジング130のY方向におけるサイズ(幅)も抑えられている。換言すると、本実施の形態によれば、Z方向及びY方向においてサイズの低減を図ることができる。特に、本実施の形態においては、図5に示されるように、4つの第1圧接部114と4つの第2圧接部124とは、ハウジング130のY方向(横方向)及びZ方向(上下方向)の中点を中心として点対称となるように配列されている。
【0031】
図3乃至図5から理解されるように、Y方向において隣り合う第1コンタクト110と第2コンタクト120とは、ペアを構成している。本実施の形態において、第1コンタクト110と第2コンタクト120のペアは合計4つある。図5に示されるように、各ペアを構成する第1コンタクト110と第2コンタクト120の第1圧接部114及び第2圧接部124はZ方向に並んでいる(即ち、上下に配置されている)。これら第1コンタクト110と第2コンタクト120のペアは、ケーブル200に含まれる電線210のツイストされているペアに対応している。即ち、図5及び図20から理解されるように、各ペアに属する電線210は、上下に配置された第1圧接部114及び第2圧接部124に圧接されることになる(圧接については後で詳述)ことから、第1圧接部114及び第2圧接部124がX方向と直交している場合(例えば、特許文献1の場合)と比較して、ペアとなる電線210間の距離を短くすることができる。従って、ペアとなる電線210間の結合強度を高めることができ、隣接するペア間におけるクロストークの抑制を図ることができる。また、第1圧接部114及び第2圧接部124がX方向に延びている場合(例えば、特許文献2の場合)には、特許文献1と同様なことが言え、更に電線間の距離を短くしようとすると、電線を90°曲げするため電線の直角曲げ部が延び、圧接箇所がズレて接触が不安定になる恐れが生じる。
【0032】
各側壁部134の後端(−X側端部)には、2つの斜面(後斜面)136がV字をなすように形成されており、その前端(+X側端部)には被突き当て部138が設けられている。
【0033】
各側壁部134のY方向内面上にはガイド部が形成されている。本実施の形態によるガイド部は、第1ガイド部142、第2ガイド部144及び第3ガイド部146からなる。図3及び図16から理解されるように、第1ガイド部142及び第2ガイド部144と第3ガイド部146との間には、X方向と斜交する方向に延びるガイド(溝)が形成されている。換言すると、第1ガイド部142及び第2ガイド部144はガイドの前端(嵌合側の端部)を規定しており、第3ガイド部146はガイドの後端(嵌合側とは反対側の端部)を規定している。
【0034】
図3及び図16から理解されるように、第1ガイド部142、第2ガイド部144及び第3ガイド部146は、Z方向において互いに重ならないように配置されている。従って、比較的シンプルな型でガイド部を構成することができる。また、図4及び図16から理解されるように、型抜きの際にできる孔152を小さくすることができ、ハウジング130の強度を確保することができる。
【0035】
詳しくは、第1ガイド部142がZ方向において最も外側に位置しており、第2ガイド部144がZ方向において最も内側に位置している。更に、第3ガイド部146は、Z方向において第1ガイド部142と第2ガイド部144との間に位置している。第3ガイド部146のZ方向外側には、誘い部148が形成されている。具体的には、図6に最も良く示されているように、誘い部148は、後斜面136の端部から第1ガイド部142までX方向に沿って延びており、第1ガイド部142は、誘い部148よりもZ方向外側に位置している。そのため、図5に示されるように、ハウジング130を−X側(後側)から見た場合に、第1ガイド部142を視認することができる。
【0036】
図3及び図5に示されるように、ハウジング130の側壁部134のZ方向の端部は、Y方向において連結されており、その後端(−X側端部)には保護部150が形成されている。本実施の形態による保護部150は、第1ガイド部142、第2ガイド部144及び第3ガイド部146で構成されるガイドの延びる方向(斜交方向)と平行な面を有している。即ち、例えば、第1ガイド部142と保護部150とは平行な面を有している。
【0037】
図10に示されるように、保持部材160は、直方体形状の電線保持ブロック162と、電線保持ブロック162のY方向両端から+X方向(前方)に延びる側壁部170とを有している。
【0038】
電線保持ブロック162には、保持孔164が形成されている。各保持孔164は、電線保持ブロック162をX方向において貫通している。即ち、各保持孔164は、X方向に延びている。本実施の形態による保持孔164は、+Z側(上側)に4つ、−Z側(下側)に4つ、計8つ設けられており、上下に位置する保持孔164のペアは連通し、一体化されている。但し、本発明はこれに限定されるわけではなく、保持孔164がすべて互いに独立していることとしてもよい。
【0039】
本実施の形態において上下に位置する保持孔164(即ち、ペアとなる保持孔164)には、ケーブル200に含まれるツイストされていた電線210のペアが挿通される。
【0040】
図10及び図20から理解されるように、保持孔164の+X側端部(前端)には、径の小さい軽圧入部166が形成されている。従って、保持孔164に電線210を挿通する(軽圧入される)と、電線210は軽圧入部166において保持される。このように、本実施の形態による保持部材160に対する電線210の保持は軽圧入により行われることから、保持部材160による保持の際に電線210が変形してしまう事態を避けることができると共に保持点のバラツキが生じることを避けることができる。
【0041】
図10に示されるように、各側壁部170の前端側(+X側端側)には、2つの斜面(前斜面)172がV字をなすように形成されており、その前端(+X側端部)には前方(+X方向)に突出した突き当て部174が設けられている。本実施の形態による前斜面172の角度は、ハウジング130の後斜面136の角度と同じである。即ち、前斜面172と後斜面136とは平行に延びている。
【0042】
突き当て部174は、被突き当て部138に突き当てられる部位である。突き当て部174が被突き当て部138に突き当てられると、前斜面172と後斜面136とは、突き当て部174の突出量に応じた距離だけX方向において離れて位置することとなる。これにより、ハウジング130と保持部材160との間には、取付部材180が収容される収容部12が形成される(図1及び図17参照)。また、突き当て部174が被突き当て部138に突き当てられると、保持部材160のハウジング130に対する相対位置(即ち、ケーブル200のシース230とハウジング130との相対位置)の粗決めを行うことができる。
【0043】
なお、各前斜面172のZ方向中ほどには、+X方向(前方)に突出したマーカー176が形成されている。
【0044】
上述したように、4つの第1圧接部114と4つの第2圧接部124とが点対称となるように配列されていることから、図14に最も良く示されるように、本実施の形態による取付部材180は、互いに同一形状を有している。従って、上下で異なる取付部材が必要となってしまう構成と比較して、コストの低減を図ることができる。
【0045】
図11に示されるように、各取付部材180は、ハウジング130への組み付けの際に内側に位置することとなる内面182と外側に位置することとなる外面184とを有している。また、各取付部材180には、内面182から外面184まで貫通する保持スリット190と、保持スリット190と交差且つ連通する取付孔186とが形成されている。本実施の形態における取付孔186は、内面182及び外面184と平行な方向に延びており、保持スリット190は、内面182及び外面184と直交する方向に延びている。詳しくは、取付孔186はXZ平面内に延びているのに対して、保持スリット190はX方向、Y方向及びZ方向のいずれとも斜交する方向に延びていることから、保持スリット190自体が取付孔186とは直交していないが、図17において確認できるように、Y方向に沿って見た場合の保持スリット190の延びる方向(即ち、斜交方向)と取付孔186の延びる方向とは互いに直交している。換言すると、取付孔186は、X方向と斜交方向とを含む面内(本実施の形態においてはXZ面内)において、斜交方向と直交する方向に延びている。
【0046】
本実施の形態による取付孔186は4つあり、互いにY方向において連通している。但し、本発明はこれに限定されるわけではなく、取付孔186は互いに独立していてもよい。各取付孔186の前端近傍には径の小さい軽圧入部188が設けられている。取付孔186に電線210が挿通(軽圧入)されると、軽圧入部188により電線210が保持される。即ち、取付部材180が電線210に取り付けられる。即ち、取付部材180の電線210への取り付けは、取付孔186に対して電線210を軽圧入するだけで行われるので、電線210の破損等を防止することができる。なお、本実施の形態における軽圧入部188は保持スリット190よりも前側(+X側)に位置している。
【0047】
取付部材180のY方向の両端には、Y方向外側に突出し且つ斜交方向(上側の取付部材180においては後斜め上方向(−X方向且つ+Z方向)、下側の取付部材180においては後斜め下方向(−X方向且つ−Z方向))に延びる突条からなる被ガイド部192が設けられている。取付部材180の被ガイド部192を除いた部分(主部)のY方向におけるサイズは、ハウジング130の2つの側壁部134間の距離と実質的に等しい。換言すると、取付部材180は、ハウジング130の2つの側壁部134間の距離に等しいY方向サイズを有する主部181を有しており、その主部181から更にY方向外側に被ガイド部192が突出している。
【0048】
更に、本実施の形態による各被ガイド部192は、内面182よりも突出している。この被ガイド部192は、ハウジング130の第1ガイド部142〜第3ガイド部146からなるガイド部にガイドされる部位である。なお、図2、図15及び図16から理解されるように、第1ガイド部142〜第3ガイド部146のうち、被ガイド部192を最初にガイドすることになるのは第1ガイド部142である。詳しくは、被ガイド部192は、まず第1ガイド部142にガイドされ、次いで第3ガイド部146にもガイドされ、更に続いて第2ガイド部144にもガイドされ、これによって取付部材180の斜交方向へのスライドが行われる。
【0049】
ガイド部(第1ガイド部142〜第3ガイド部146)が被ガイド部192をガイドすると、第1圧接部114又は第2圧接部124が保持スリット190に受容されつつ、取付部材180が収容部12に収容されるようにしてハウジング130に組み付けられる(図1及び図2参照)。このことから理解されるように、ガイド部(第1ガイド部142〜第3ガイド部146)により被ガイド部192のガイドがなされると、第1圧接部114又は第2圧接部124と保持スリット190との位置合わせもなされる。換言すると、被ガイド部192とガイド部(第1ガイド部142〜第3ガイド部146)とは、取付部材180の斜交方向へのスライドのみではなく、第1圧接部114又は第2圧接部124と保持スリット190との位置合わせをも考慮してサイズ・位置等を定められ、設けられている。従って、取付部材180のスライド時には第1圧接部114又は第2圧接部124の保持スリット190への受容を視認することができなくても、第1圧接部114又は第2圧接部124を保持スリット190へ受容し損ねて第1圧接部114又は第2圧接部124を変形させてしまうといった事態を避けることができる。
【0050】
更に、前述したように、本実施の形態による第1圧接部114と第2圧接部124の先端は先細っていることから、保持スリット190内に受容され易くなっている。第1圧接部114又は第2圧接部124の保持スリット190への受容をより容易にするために、保持スリット190の内面182側に誘い(テーパ面)を形成することとしてもよい。
【0051】
なお、取付部材180がハウジング130に組み付けられた状態において、第1ガイド部142及び第2ガイド部144は、被ガイド部192よりもハウジング130の嵌合端側(本実施の形態においてはコンタクト保持部132により近い位置)に位置しており、第3ガイド部146は、被ガイド部192の嵌合端側とは反対側(本実施の形態においてはコンタクト保持部132からより遠い位置)に位置している。
【0052】
図17から予測されるように、本実施の形態における被ガイド部192と保持スリット190とは、Y方向に沿って取付部材180を透過して見た場合に、重なっている。換言すると、被ガイド部192は、保持スリット190の側方に設けられている。
【0053】
更に、図2及び図11に示されるように、本実施の形態における取付部材180の後端(−X方向端部)には、補助被ガイド部194が設けられている。補助被ガイド部194は、被ガイド部192と同様に斜交方向に延びるものであり、斜交方向と直交する方向においてL字状の断面を有するものである。補助被ガイド部194の一部は、突き当て部174を被突き当て部138に突き当てた際に前斜面172と後斜面136の間にできるスペースにガイドされると共に、補助被ガイド部194の他の一部は保持部材160の側壁部170の内面上を摺動する。換言すると、補助被ガイド部194は、保持部材160の側壁部170の前方内側の角部上に亘るようにして、移動する。これにより、ガイド部(第1ガイド部142〜第3ガイド部146)による被ガイド部192のガイドが保持される。
【0054】
かかる構造を有するコネクタ10に対するケーブル200の接続について以下に説明する。
【0055】
まず、ケーブル200のシース230を剥いて遮蔽部材220をシース230上に折返し、4ペアの電線210のツイストを戻し、各ペアの電線210が上下に位置するように保持部材160の保持孔164に軽圧入し、更に、上側の4本の電線210を上側の取付部材180の取付孔186に軽圧入する一方で下側の4本の電線210を下側の取付部材180の取付孔186に軽圧入する。この際、取付部材180は、図12に示されるように、最終的な取付部材180の位置、即ち、前斜面172上において最も突き当て部174に近い位置に位置させておく。より具体的には、取付部材180を前斜面172上において最も突き当て部174に近い位置に位置させた状態で、取付部材180を前斜面172上に押しつけつつ対応する4本の電線210を取付孔186に軽圧入する。取付部材180を前斜面172上の所定位置に押しつけることにより、取付部材180による電線210の保持位置に関し作業バラツキが生じることがない。即ち、電線210ごとに信号の伝送路長が異なってしまうといった問題の発生を防止することができる。また、取付部材180を押しつける前斜面172上の位置を最終的な取付部材180の位置(前斜面172上において最も突き当て部174に近い位置)とすることにより、実際に取付部材180をハウジング130に組み付けた際に、電線210の長さが足りなくなって芯線212と第1圧接部114又は第2圧接部124を接続できないという事態を避けることもできる。
【0056】
図12に示されるように取付部材180を電線210の被覆部214上に取り付けた後、電線210を切断して、図13に示される状態にする。
【0057】
次いで、図14に示されるように、取付部材180を前斜面172に沿ってZ方向外側且つ−X方向に移動させる。この際、マーカー176を超えるように移動させる。これにより、突き当て部174を被突き当て部138に突き当てる際に、取付部材180が突き当ての邪魔になることがなく、スムーズにガイド部(第1ガイド部142〜第3ガイド部146)による被ガイド部192のガイドに移ることができる。即ち、マーカー176は、電線210に対して取り付けられた取付部材180がガイド部(第1ガイド部142〜第3ガイド部146)による被ガイド部192のガイドの可能な位置まで移動したか否かの目安となるものである。
【0058】
次いで、図2に示されるように、突き当て部174を被突き当て部138に突き当てる。本実施の形態においては、第1ガイド部142がZ方向において突出していることから、被ガイド部192が第1ガイド部142に当たっているか否か(ガイドされ得る状態にあるか否か)を視認することができる。
【0059】
次いで、取付部材180を斜め下(上)前方に押すことにより、取付部材180をハウジング130に組み付ける。実際の組み付けは、ハウジング130の前端(コンタクト保持部132の前端)を動かないように押さえつつ、取付部材180の外面184を冶具で押圧することにより行われる。
【0060】
ここで、取付部材180をハウジング130に取り付けた状態においては、図19及び図20に示されるように、電線210の端面216はハウジング130の保護部150により保護されている。保護部150の構成により、ごみ等に起因した隣接する電線間の短絡が防止できる。
【0061】
本実施の形態においては、取付部材180のハウジング130への取付の際、図15及び図16から理解されるように、被ガイド部192がガイド部(第1ガイド部142〜第3ガイド部146)によりガイドされるため、図17乃至図19に示されるように、第2圧接部124(第1圧接部114も同様)がスムーズに保持スリット190内に受容され、そこにおいて芯線212に圧接される。従って、第1圧接部114や第2圧接部124を変形させることなく第1圧接部114や第2圧接部124と芯線212との接続を図ることができると共に、電線210の第1圧接部114や第2圧接部124との接続位置もほぼ一定となることから、作業による伝送路長のバラツキ等の問題が生じない。
【0062】
以上、本発明について実施の形態を掲げ具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上述した実施の形態において、第1コンタクト110の第1主部112及び第2コンタクト120の第2主部122(即ち、第1接点部116及び第2接点部126)は図4に示すようにY方向に一列に並べられているが、二列(図5の圧接部の配列参照)に並べられていてもよいし、更に、X方向に沿って見た場合に千鳥状(ジグザグ)に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 コネクタ
12 収容部
110 第1コンタクト(コンタクト)
112 第1主部
114 第1圧接部(圧接部)
116 第1接点部
118 股部
120 第2コンタクト(コンタクト)
122 第2主部
124 第2圧接部(圧接部)
126 第2接点部
128 股部
130 ハウジング
132 コンタクト保持部
134 側壁部
136 後斜面(斜面)
138 被突き当て部
142 第1ガイド部(ガイド部)
144 第2ガイド部(ガイド部)
146 第3ガイド部(ガイド部)
148 誘い部
150 保護部
152 孔
160 保持部材
162 電線保持ブロック
164 保持孔
166 軽圧入部
170 側壁部
172 前斜面(斜面)
174 突き当て部
176 マーカー
180 取付部材
181 主部
182 内面
184 外面
186 取付孔
188 軽圧入部
190 保持スリット
192 被ガイド部
194 補助被ガイド部
200 ケーブル
210 電線
212 芯線
214 被覆部
216 端面
220 遮蔽部材
230 シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と接続すると共に嵌合方向に沿って相手側コネクタと嵌合するコネクタであって、
コンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、前記電線に取り付けられた状態で前記ハウジングに組み付けられる取付部材とを備えており、
前記コンタクトは、前記嵌合方向と斜交する斜交方向に延びる圧接部であって前記電線の芯線と接続する圧接部を有しており、
前記ハウジングには、ガイド部が設けられており、
前記取付部材には、前記ガイド部にガイドされる被ガイド部であって前記斜交方向に沿った前記取付部材の前記ハウジングに対する組み付け時における前記取付部材の移動を前記ガイド部と共にガイドする被ガイド部を有しており、
前記取付部材が前記電線に取り付けられた状態で前記被ガイド部が前記ガイド部にガイドされつつ前記取付部材が前記ハウジングに組み付けられると、前記芯線と前記圧接部とが接続する
コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記圧接部は、前記嵌合方向と直交する横方向とも斜交する面内に延びている
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタであって、
複数の前記コンタクトを備えており、
前記嵌合方向と直交する横方向において隣り合う前記圧接部は互いに平行に配置されている
コネクタ。
【請求項4】
請求項3記載のコネクタであって、
複数の前記電線を保持する保持部材を更に備えており、
前記取付部材は、複数の前記電線に取り付けられる
コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタであって、
前記保持部材と前記ハウジングとの間には収容部が構成されており、
前記ガイド部による前記被ガイド部のガイドにより前記取付部材が前記ハウジングに組み付けられる際に前記取付部材が前記収容部に収容される
コネクタ。
【請求項6】
請求項5記載のコネクタであって、
前記保持部材は、前記ハウジングに突き当てられて前記嵌合方向における前記保持部材の前記ハウジングに対する位置を粗決めする突き当て部を有している
コネクタ。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載のコネクタであって、
前記取付部材は、前記保持部材に保持された前記電線に対して取り付けられた後、前記ガイド部による前記被ガイド部のガイドを可能とする位置まで移動され、更に、前記ガイドを経て前記収容部に収容されるものであり、
前記保持部材には、前記電線に対して取り付けられた前記取付部材が前記ガイドの可能な位置まで移動したか否かの目安となるマーカーが形成されている
コネクタ。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれかに記載のコネクタであって、
前記コンタクトは、2つのグループにグループ化されており、
前記横方向において隣り合う前記コンタクトの前記圧接部は、前記嵌合方向及び前記横方向の双方と直交する上下方向において互いに異なる位置に位置しており、
前記横方向において隣り合う前記圧接部は、前記横方向において一つおきに設けられた前記コンタクトのものであり、
前記取付部材は2つあり、夫々、前記コンタクトの前記グループに対応している
コネクタ。
【請求項9】
請求項8記載のコネクタであって、
前記取付部材は、互いに同じ形状を有している
コネクタ。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のコネクタであって、
前記取付部材には、前記取付部材を貫通する取付孔と、前記取付孔と連通すると共に挿入された前記圧接部を保持する保持スリットとが形成されており、
前記電線を前記取付孔に挿通することにより前記取付部材は前記電線に取り付けられる
コネクタ。
【請求項11】
請求項10記載のコネクタであって、
前記取付孔は、前記嵌合方向と前記斜交方向とを含む面内において、前記斜交方向と直交する方向に延びている
コネクタ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のコネクタであって、
前記被ガイド部は、前記取付部材に設けられた前記斜交方向に延びる突条であり、
前記ガイド部は、前記被ガイド部を前記斜交方向に沿って受けるように構成されている
コネクタ。
【請求項13】
請求項12記載のコネクタであって、
前記ガイド部は、前記取付部材を前記ハウジングに対して組み付けた状態において前記被ガイド部よりも前記ハウジングの嵌合端側に位置する第1ガイド部及び第2ガイド部と前記被ガイド部の前記嵌合端側とは反対側に位置する第3ガイド部とを有しており、
前記第1ガイド部、前記第2ガイド部及び前記第3ガイド部は、前記嵌合方向と直交する上下方向において重ならないように配置されている
コネクタ。
【請求項14】
請求項13記載のコネクタであって、
前記取付部材の前記ハウジングに対する組み付け時に、前記第1ガイド部は、前記被ガイド部を最初にガイドするように設けられており、且つ、前記第1ガイド部による前記被ガイド部のガイドを視認できるように設けられている
コネクタ。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載のコネクタであって、
前記ハウジングには、前記電線の端面を保護する保護部が設けられている
コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−97955(P2013−97955A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238509(P2011−238509)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】