コネクティングロッドの製造方法
【課題】破断分割時に収縮したキャップ部とロッド部とを精度良く結合させると共に、破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる。
【解決手段】一対のボルトの締め付けトルクが実験データから求められた仮締めトルクである2Nmに達したとき各ボルトの回転を停止させて待機状態とし(S3)、前記2Nmとなった状態を起点として前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、トルクが30Nmに到達するまで締め付ける(S4)。続いて、一旦締め付けられた一対のボルトをそれぞれ緩め、キャップ部の破断面及び前記ロッド部の破断面をそれぞれブラシによってブラッシングすることにより、前記キャップ部の破断面とロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる(S7)。
【解決手段】一対のボルトの締め付けトルクが実験データから求められた仮締めトルクである2Nmに達したとき各ボルトの回転を停止させて待機状態とし(S3)、前記2Nmとなった状態を起点として前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、トルクが30Nmに到達するまで締め付ける(S4)。続いて、一旦締め付けられた一対のボルトをそれぞれ緩め、キャップ部の破断面及び前記ロッド部の破断面をそれぞれブラシによってブラッシングすることにより、前記キャップ部の破断面とロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる(S7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大端部から破断されたキャップ部とロッド部とを、一対のボルトにおける締め付け力を管理することによって好適に結合させることが可能なコネクティングロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関のピストンとクランクシャフトとを連結するコネクティングロッド(以下、略称してコンロッドともいう)が知られている。
【0003】
この種のコンロッドには、前記コンロッドのロッド部とキャップ部とをそれぞれ個別に製造した後、一対のボルトを用いて前記ロッド部と前記キャップ部とを一体的に連結して組み立てる組立型のコンロッドが用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
この組立型のコンロッドは、一端部に設けられた大端部と他端部に設けられた小端部とを有し、前記大端部のロッド部とキャップ部とをそれぞれ個別に製造した後、一対のボルトによって一体的に組み付けられる。この組立型のコンロッドは、ロッド部のピン穴及びキャップ部のピン穴にそれぞれ位置決めピンを嵌合することにより、ロッド部に対してキャップ部を高精度に位置決めさせた状態で組み付けている。
【0005】
しかしながら、前記組立型のコンロッドでは、ロッド部とキャップ部とをそれぞれ個別に鍛造成形した後、ロッド部及びキャップ部の2部品に対してそれぞれボルト孔を穿孔し、さらに、前記ロッド部及びキャップ部の合わせ面をそれぞれ平坦面に加工する必要があり、このため、加工工数が多くなって生産効率を上昇させるための障害となっている。
【0006】
そこで、本出願人は、図12に示されるような破断分割型のコンロッド1を提案している(特許文献2参照)。
【0007】
この種の破断分割型のコンロッド1は、例えば、ロッド部6とキャップ部7とが同一部材として一体的に設けられた図示しない成形体を鍛造成形によって一体成形した後、溝Cを破断線として、ロッド部6とキャップ部7とに破断分割し、さらに、ボルト孔8に螺入された一対のボルト9a、9bを介して、これらロッド部6とキャップ部7とを一体的に連結(結合)することによって製造される。
【0008】
この破断分割型のコンロッド1の一方の端部である小端部4には、小径な第1貫通孔2が設けられ、軸線方向に沿った反対側の他方の端部である大端部5には、前記第1貫通孔2に比して大径な第2貫通孔3が設けられる。
【0009】
コンロッド1の大端部5は、溝Cを破断線として、第2貫通孔3の略中央付近で該コンロッド1の長手方向(図11におけるX方向)に対して直交する方向(Y方向)に破断され、これによりコンロッド1がロッド部6とキャップ部7とに分割される。この場合、ロッド部6側の破断面及びキャップ部7側の破断面がそれぞれ凹凸状及び凸凹状となるので、一対のボルト9a、9bを装着した際、前記ロッド部6側の凹凸破断面と前記キャップ部7側の凸凹破断面とがそれぞれ密着して、両者をそれぞれ高精度に組み付けることができる。
【0010】
前記ロッド部6とキャップ部7とは、一対のボルト9a、9bをボルト孔8に沿って挿入し前記ボルト孔8内に形成された図示しないねじ部(雌ねじ)とボルト9a、9bのねじ部(雄ねじ)とを嵌合させることによって互いに連結される。
【0011】
前記破断分割型のコンロッド1では、大端部5を破断分割する前にボルト孔8を穿孔するため、ロッド部6側及びキャップ部7側に対して同時にボルト孔8を穿孔加工することができる。このため、ロッド部6及びキャップ部7の2部品に対してそれぞれ個別にボルト孔8を穿孔加工する必要がないと共に、前記ロッド部6及びキャップ部7のそれぞれの合わせ面を平坦面に加工する必要がない。
【0012】
また、特許文献3には、取り除くことができる粘着性のある材料粒子が破断面から不要に剥がれ落ちることを防止するため、コンロッドをロッド部とキャップ部とに破断分割した後、ボルトをねじ止めし、そして前記ボルトを緩めて所定の振動数によって振動処理を施した後、前記ボルトを締めることが開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開平11−2230号公報
【特許文献2】特公平2−19328号公報
【特許文献3】特表2003−512522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、コネクティングロッドをキャップ部とロッド部とに破断分割した場合、その破断分割後に発生する残留応力によって前記ロッド部とキャップ部とに収縮現象が起こる。この収縮現象によってキャップ部側の破断分割面とロッド部側の破断分割面とを結合させた破断分割再結合部位は、平面ではなく凹凸面同士が合わされて構成された段差部となる。なお、前記収縮現象のかわりに、破断分割後に発生する残留応力によってキャップ部及びロッド部に伸長(拡大)現象が起こる場合もある。
【0015】
破断分割後に発生する残留応力によってロッド部とキャップ部とにそれぞれ収縮現象が起こり(一般的には、ロッド部側の収縮と比較してキャップ部側の収縮が大きくなる)、前記収縮現象によってロッド部側の破断分割面とキャップ部側の破断分割面とを合わせようとしても、位置ズレが生じて精度良く面合わせできないという問題がある。
【0016】
また、コネクティングロッドの大端部の内周面の破断分割予定部位に、例えば、断面V字状の一対の溝部(ノッチ)を形成し、前記断面V字状の一対の溝部を起点として破断分割した際、亀裂(主亀裂)が脆性破壊によって伝播することで進行するため、その伝播中に、前記亀裂(主亀裂)が分岐することに起因して微細な副亀裂が発生する。従って、コネクティングロッドを内燃機関に組み付ける際や内燃機関を運転する際に前記副亀裂同士が伝播し合い、その結果、当該箇所が欠けた微小空間からなる欠片となることが懸念される。
【0017】
さらに、前記ロッド部とキャップ部とを一体的に組み付ける際、凹凸破断面及び凸凹破断面のそれぞれの形状を損壊してしまうと、合わせ面として位置決めの機能を発揮できないと共に、ロッド部とキャップ部との間に余計な間隙ができて異音の発生原因となったり、大端部の孔部の真円度に悪影響を及ぼす場合がある。
【0018】
本発明は前記の種々の点に鑑みてなされたものであり、ロッド部とキャップ部とを結合させる一対のボルトの締め付け力を管理することにより、破断分割時に収縮したキャップ部とロッド部とを精度良く結合させると共に、破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させることが可能なコネクティングロッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明は、大端部と小端部とを有するコネクティングロッドを一体成形し前記コネクティングロッドをキャップ部とロッド部とに破断分割した後、さらに、前記キャップ部と前記ロッド部との破断面をそれぞれ合わせ面として該キャップ部と該ロッド部とを一対のボルトを締め付けて結合させるコネクティングロッドの製造方法であって、
前記一対のボルトをそれぞれ回転させて前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とを相互に接近させ、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させ、前記回転によって締め付けられた一対のボルトの締め付けトルクが、それぞれ、予め実験データによって求められた仮締めトルクに達したとき、各ボルトの回転を停止させて待機状態とする工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付ける工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ緩め、前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、先ず、一対のボルトをそれぞれ所定速度で回転させて前記一対のボルトを締め付けることにより、キャップ部の破断面とロッド部の破断面とを相互に接近させ、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させる。この場合、破断分割時に収縮したキャップ部の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正される。そして、前記一対のボルトの締め付けトルクがそれぞれ予め設定された仮締めトルクに達したとき、各ボルトの回転を停止させて待機状態とする。
【0021】
この仮締めトルクは、例えば、作業者が手作業で一対のボルトをそれぞれ指締めしたときの最大のトルクをトルクレンチで測定した実験データに基づいて予め設定されたものである。なお、前記仮締めトルクは、コネクティングロッドの種類、大きさ等によってそれぞれ異なるように設定される。
【0022】
本発明では、一対のボルトをそれぞれ締め付けるタイミングを合わせるのではなく、仮締めトルクとなった時、すなわち、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させ、破断分割時に収縮したキャップ部の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正された時を起点として前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付ける。
【0023】
続いて、前記一対のボルトをそれぞれ緩め、前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる。
【0024】
なお、前記欠片の除去乃至離脱の促進は、例えば、前記キャップ部の破断面及び前記ロッド部の破断面をそれぞれブラッシングすることによりなされるとよい。
【0025】
このようにして本発明では、ロッド部とキャップ部とを結合させる一対のボルトの締め付け力を管理することにより、破断分割時に収縮したキャップ部とロッド部とを精度良く結合させると共に、破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を円滑に促進させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ロッド部の破断面とキャップ部の破断面との合わせ面における締め付け精度が向上する。この結果、一旦破断分割されたキャップ部とロッド部とをより一層精度よく結合させ、コネクティングロッドの製造歩留まりを向上させることができると共に、前記コネクティングロッドを効率よく生産することができる。
【0027】
さらに、本発明によれば、ボルトの締め付け力を制御してキャップ部とロッド部の破断面同士を当接させることにより、未進展の副亀裂をさらに進展させて欠片を欠落可能な状態とし、キャップ部及びロッド部の双方から効率良く欠片を除去することができる。従って、コネクティングロッドの連結精度や、コネクティングロッドとクランクシャフト等との組み付け精度が向上すると共に、エンジンオイルの早期劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係るコネクティングロッドの製造方法について、これを実施する連結装置との関係において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0029】
図1は、連結装置100の概略全体斜視図であり、この連結装置100には、破断分割されたキャップ部7とロッド部6とを位置決めして破断面の凹凸と凸凹とを相互に合わせる位置合わせ装置10が組み込まれている。
【0030】
先ず、位置合わせ装置10につき、要部概略斜視図である図2、一部断面側面図である図3、上方矢視平面図である図4をそれぞれ参照して説明する。
【0031】
この位置合わせ装置10は、長尺溝(図示せず)が設けられた摺接板11が下端面に取り付けられた基台12と、該基台12上に敷設されたガイドレール14と、該ガイドレール14を長手方向に沿って囲繞するように基台12上に略平行に立設された2本の側板16a、16bと、該側板16a、16bの上端面且つ長手方向の各端部に位置決め固定された第1台座18及び第2台座20と、これら第1台座18及び第2台座20との間であって且つ第2台座20に近接する位置に固定された第3台座22とを有する。
【0032】
基台12において、一部が切り欠かれた一端面には、後述する変位用シリンダ110のピストンロッド114が連結されたロッド連結板23が嵌合されている。
【0033】
また、幅広且つ肉厚な平板形状のガイドレール14(図2参照)上における一端部には、該ガイドレール14に係合する凹部が下端面に設けられた第1係合部材24が載置されている。この第1係合部材24の上端面には平板26が設置されており、該平板26の一端部には、連結板28が立設されている。これら平板26及び連結板28の一端面には押圧板30が固定されており、該押圧板30には、第1変位機構である第1シリンダ32のピストンロッド34が連結されている。
【0034】
そして、前記平板26の他端部には、スペーサ36、38を介して第1位置決め部材40が立設されている(図3参照)。この第1位置決め部材40は、第1台座18に設けられた貫通孔42を通ってコネクティングロッド1(以下、コンロッド1という)の第1貫通孔2に到達している。このことから諒解されるように、第1位置決め部材40は、第1シリンダ32のピストンロッド34が前進・後退動作することに伴って第1係合部材24がガイドレール14上を変位することに追従して変位する。
【0035】
なお、第1位置決め部材40には、コンロッド1の第1貫通孔2における第1内周壁S1の形状に対応する形状の湾曲面44が設けられている(図4参照)。後述するように、この湾曲面44は、第1貫通孔2における第1内周壁S1のキャップ部7側に当接する。
【0036】
同様に、ガイドレール14(図2参照)の他端部にも、該ガイドレール14に係合する凹部が下端面に設けられた第2係合部材46が載置されている(図3参照)。この第2係合部材46の上端面には、スペーサ48と、該スペーサ48に比して長尺な変位板50が立設されており、この変位板50には、ナット52で位置決めされたねじ部材54が螺合されている。そして、このねじ部材54の頭部には、第2変位機構としての第2シリンダ56を構成するピストンロッド58が当接している。
【0037】
一方、スペーサ48上には、さらなるスペーサ60を介して第2位置決め部材62が立設されている。この第2位置決め部材62は、第2台座20の貫通孔63を通ってコンロッド1の第2貫通孔3に到達している。また、第2位置決め部材62は、キャップ部7の第2貫通孔3における第2内周壁S2の形状に対応する形状の湾曲面64を有する(図4参照)。
【0038】
第2台座20は、図2に示すように突端部66を有し、該突端部66には断面略L字状のL字型フレーム68がボルト69を介して連結されている。キャップ部7を堰止する堰止部材として機能するこのL字型フレーム68は、キャップ部7の外壁に当接する。
【0039】
第3台座22において、第2台座20に近接する側の端部には、ロッド部6側の第2貫通孔3における第3内周壁S3の形状に対応する形状の湾曲面70を有する第3位置決め部材72が突出形成されている。この第3位置決め部材72によってロッド部6が位置決め固定される。
【0040】
そして、第2位置決め部材62と第3位置決め部材72には、お互いに対向する位置に凹部74、76が設けられており(図3参照)、これら凹部74、76には、弾性部材としてのコイルスプリング78が挿入されている。第2位置決め部材62が第2係合部材46とともに変位可能であり、且つ第3位置決め部材72が第3台座22と一体的に位置決め固定されているため、コイルスプリング78は、第2位置決め部材62を第3位置決め部材72から離間する方向に、常時、弾発付勢している。
【0041】
連結装置100(図1参照)は、以上のように構成された位置合わせ装置10の他、ガイドレール102a、102b又はガイドレール104a、104bが上端面にそれぞれ設置されて互いに隣接する第1基盤106及び第2基盤108とを有し、前記位置合わせ装置10は、基台12の下端面に取り付けられた摺接板11を介して、第1基盤106のガイドレール102a、102b上に変位自在に載置されている。すなわち、ガイドレール102a、102bは、摺接板11の長尺溝に摺接自在に挿入されている。
【0042】
第1基盤106の上端面には変位用シリンダ110が設置されると共にゲート状架台112が立設されており、このうち、変位用シリンダ110のピストンロッド114の先端は、基台12における第2シリンダ56が設置された側の端面に嵌合された前記ロッド連結板23に連結されている。
【0043】
また、ゲート状架台112において、第1基盤106の長手方向に直交する方向に延在する水平部の位置合わせ装置10側に臨む端面には、介在板116及びブラケット118を介して幅位置規制用シリンダ120が設置されている。
【0044】
この幅位置規制用シリンダ120の各側面に進退動作自在に設けられたピストンロッド122には支持板124、124が連結されており、各支持板124、124の側面には、ゲート状架台112側に指向して延在するアーム部材126、126が取り付けられている。なお、各アーム部材126、126の先端部には、互いに対向する面に緩衝部材128、128が接合されている(図5及び図6参照)。
【0045】
第2基盤108のガイドレール104a、104b(図1参照)上には、架台130a、130bが変位自在に載置されている。これら架台130a、130bの下端面には挟持部材132、132が設置されており、前記ガイドレール104a、104bは、これら挟持部材132、132の下端面に形成された溝内に挿入されている。
【0046】
架台130a、130bのそれぞれには、L字状ステー134、134が取り付けられており、各L字状ステー134、134には、ナットランナ136a、136bがそれぞれ支持されている。
【0047】
図5及び図6に示すように、ナットランナ136a又はナットランナ136bは、回転動作可能な主軸138と、該主軸138の先端に設けられたソケット140とを有し、このソケット140の図示しない凹部に対してロッド部6とキャップ部7とを連結するためのボルト9a、9bの頭部が係合し、前記主軸138及びソケット140の回転作用下に該ボルトが9a、9bが締め付けられる。
【0048】
第2基盤108の上端面には、略逆コの字状のピン挿入盤142(図1参照)が設置されており、該ピン挿入盤142には、ピン144、144によって押止板146、146が連結されている。なお、各ピン144は、前記ピン挿入盤142に形成されたピン挿入孔148に挿入されている(図5参照)。
【0049】
本発明に係るコネクティングロッドの製造方法を実施する連結装置100は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果につき説明する。
【0050】
ロッド部6及びキャップ部7の位置合わせを行うに際しては、予め、第1シリンダ32のピストンロッド34を後退動作させておくとともに、第2シリンダ56のピストンロッド58を前進動作させておく。第2シリンダ56のピストンロッド58の前進動作により、変位板50に連結された第2係合部材46がガイドレール14に案内されながら第1シリンダ32側に指向して変位する。
【0051】
これに追従して、第2位置決め部材62が第3位置決め部材72に指向して変位すると共に、これら第2位置決め部材62と第3位置決め部材72とに橋架されたコイルスプリング78が収縮される。
【0052】
そして、先ず、ロッド部6の小端部4を第1台座18に載置するとともに、大端部5を第3台座22に載置する。その一方で、キャップ部7を第2台座20に載置する。
【0053】
次に、第1シリンダ32を付勢する。これによりピストンロッド34が前進動作し、その結果、押圧板30、連結板28及び平板26を介して第1係合部材24がガイドレール14に案内されながら第2シリンダ56側に指向して変位する。これに伴い、2枚のスペーサ36、38を介して平板26に立設された第1位置決め部材40が、第1貫通孔2内で第2シリンダ56側に指向して変位する。
【0054】
変位する第1位置決め部材40の湾曲面44は、第1貫通孔2の第1内周壁S1に当接する。ピストンロッド34がさらに前進動作することによって第1位置決め部材40がさらに変位すると、ロッド部6が第1位置決め部材40によって押圧され、第2シリンダ56側に指向して前進する。
【0055】
この場合、第1位置決め部材40の湾曲面44が第1貫通孔2の第1内周壁S1の形状に対応する形状に設けられているので、ロッド部6が前進する際に該ロッド部6が第1貫通孔2を回転中心として揺動することが著しく抑制される。
【0056】
前進するロッド部6における第2貫通孔3の第3内周壁S3は、最終的に、第3台座22の第3位置決め部材72に当接する。この第3位置決め部材72、すなわち、第3台座22が側板16a、16bに位置決め固定されているので、ロッド部6は、第3位置決め部材72に堰止される。これにより、ロッド部6のそれ以上の前進が阻止される。
【0057】
ここで、上記したように、第3位置決め部材72の湾曲面70は、第2貫通孔3の第3内周壁S3の形状に対応する形状に設けられている。このため、ロッド部6が前進する際に第1貫通孔2を回転中心として揺動した場合であっても、第2貫通孔3の第3内周壁S3が第3位置決め部材72の湾曲面70に案内され、その結果、ロッド部6が、揺動が起こる前の位置に戻される。
【0058】
以上の動作により、破断分割されたコンロッド1のロッド部6が位置決めされる。
【0059】
次に、第2シリンダ56を付勢してピストンロッド58を後退動作させる。これに伴って該ピストンロッド58がねじ部材54の頭部から離間し、第2係合部材46が第2シリンダ56の押圧力から解放される。このため、コイルスプリング78が弾性復元によって伸張すると、第2位置決め部材62が第3位置決め部材72から離間する方向に変位する。
【0060】
変位した第2位置決め部材62の湾曲面64は、キャップ部7の第2貫通孔3における第2内周壁S2を押圧する。これによりキャップ部7がロッド部6から離間する方向に変位し、最終的に、L字型フレーム68によって堰止される。
【0061】
この変位の際、湾曲面64の形状が第2内周壁S2の形状に対応しているので、キャップ部7の第2貫通孔3を回転中心とする揺動が抑制される。このため、L字型フレーム68で堰止されたキャップ部7の破断面は、ロッド部6の破断面に対向する同一直線上に位置する。すなわち、ロッド部6とキャップ部7とが高精度に位置合わせされる。
【0062】
この状態で、変位用シリンダ110のピストンロッド114が前進動作する。上記したようにこのピストンロッド114がロッド連結板23に連結されているため、位置合わせ装置10は、ガイドレール102a、102bに案内されながらゲート状架台112側に指向して変位する。
【0063】
変位用シリンダ110のピストンロッド114が前進端に位置すると、大端部5及びキャップ部7の各側面と、前記アーム部材126、126の内方側面に取り付けられた緩衝部材128、128との位置が略合致する。その後、幅位置規制用シリンダ120の各側面のピストンロッド122が互いに接近するように動作し、これにより大端部5及びキャップ部7の各側面の位置がアーム部材126、126によって規定され、その結果、大端部5とキャップ部7との位置合わせの精度がさらに向上する。
【0064】
以上の動作の間に、架台130a、130bは、第2基盤108上に設けられたガイドレール104a、104bに沿って案内され、ナットランナ136a、136bの各ソケット140、140の位置がコンロッド1のボルト孔8、8の位置に合致するまで変位する。
【0065】
この際、架台130a、130bの端部が押止板146によって押止され、これにより、L字状ステー134、134に支持されたナットランナ136a、136bが、傾斜することなく確実に水平方向に指向して延在する。
【0066】
そして、上記した変位用シリンダ110による基台12、ひいてはコンロッド1の前進動作、及び大端部5とキャップ部7との位置合わせが終了すると、ソケット140、140に対して、作業者によって予めボルト孔8、8に螺入された一対のボルト9a、9bの頭部が係合する。
【0067】
このように一対のボルト9a、9bの頭部とソケット140、140とが係合した状態でナットランナ136a、136bが付勢され、主軸138、138が回転動作することに追従してソケット140、140ごとボルト9a、9bが螺回される。
【0068】
従って、ボルト9a、9bの外周面の一部に形成されたねじ部(雄ねじ)がボルト孔8のねじ部(雌ねじ)に螺合され、その結果、ロッド部6とキャップ部7とが位置ずれを起こすことなく互いに連結されるに至る。前記ボルト9a、9bの締め付け条件等については、後述する。
【0069】
このように、連結装置100によれば、第1位置決め部材40及び第3位置決め部材72によってロッド部6を位置決めする一方、第2位置決め部材62によってキャップ部7を位置決めするようにしている。そして、第1位置決め部材40、第2位置決め部材62、及び第3位置決め部材72の各々が、第1貫通孔2の第1内周壁S1、ロッド部6側に分割された第2貫通孔3の第2内周壁S2、キャップ部7側に分割された第2貫通孔3の第2内周壁S2、及びロッド部6側に分割された第2貫通孔3の第3内周壁S3の形状に対応する湾曲面44、64、70を有するので、ロッド部6及びキャップ部7の揺動が抑制される。
【0070】
従って、ロッド部6の破断面とキャップ部7の破断面とが同一直線上で互いに対向する。換言すれば、ロッド部6とキャップ部7とが高精度で位置合わせされる。このため、ロッド部6とキャップ部7とを連結してコンロッド1を生産することが容易となるので、コンロッド1を効率よく生産することができる。また、コンロッド1の製造歩留まりが向上する。
【0071】
また、この場合、第1台座18と第3台座22との間にクリアランスが設けられているので、上記のようにして位置合わせ装置10を使用する最中にガイドレール14への潤滑油の注油等のメンテナンス作業を行う場合、前記クリアランスを介して注油器具を挿入することができる。すなわち、メンテナンス作業を容易に行うことができる。また、位置合わせ装置10の重量が大きくなることを回避することができるという利点もある。
【0072】
なお、上記した連結装置100においては、第1台座18と第3台座22とを別部材としたが、同一の部材であってもよい。すなわち、第1台座18に比して長尺な第1台座を設け、この第1台座にロッド部6の小端部4及び大端部5を載置するようにすればよい。この場合、例えば、第3位置決め部材を第1台座とは別部材とし、該第1台座上に立設すればよい。
【0073】
次に、破断分割されたキャップ部7とロッド部6との破断面が位置決めされた状態でボルト孔8に挿通された一対のボルト9a、9bを締め付けるための締め付け条件について、図7に示されるフローチャートに基づいて以下詳細に説明する。
【0074】
なお、以下の説明では、一対のボルト9a、9bの締め付け法として回転角度法を採用し、前記回転角度法に基づいてスナッグトルク(snug torque)を19.6Nmに設定し、さらに90度回転させている。この場合、前記回転角度法では、スナッグトルクを高精度に確定させることが困難であり、その締め付け精度を向上させるために以下に示される締め付け条件を設定している。また、作業者が、予め手作業によって指締めしたボルト9a、9bのトルクをそれぞれトルクレンチで測定した実験データに基づいて、仮締めトルクを2Nmに設定した。
【0075】
先ず、各ナットランナ136a、136bを付勢して高速で一対のボルト9a、9bをそれぞれ回転させて締め付ける(ステップS1)。
【0076】
続いて、前記高速回転で締め付けられた一対のボルト9a、9bの締め付け量が回転角度法による4400度の回転角度を超えたときに各ナットランナ136a、136bの主軸138、138及びソケット140、140の回転速度を減速させ、低速でボルト9a、9bを締め付ける(ステップS2)。なお、高速回転から低速回転に切り換えた回転角度は、4400度に限定されるものではなく、コンロッド1の種類、大きさ及び組み付け製造ライン等によって相違するものである。
【0077】
前記一対のボルト9a、9bを低速で回転させて前記一対のボルト9a、9bを締め付けることにより、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とが相互に接近し、前記キャップ部7及び前記ロッド部6の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部7の破断面と前記ロッド部6の破断面とをそれぞれ接触させる。この場合、破断分割時に収縮したキャップ部7の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正される。前記各破断面同士の位置ずれが矯正されることにより、キャップ部7の軸線とロッド部6の軸線とが一致して同軸となり、収縮によるキャップ部7とロッド部6との幅方向の寸法差が左右に略均等に分配される。そして、前記低速回転で締め付けられている一対のボルト9a、9bの締め付けトルクが、それぞれ、予め設定された2Nmとなったときに各ナットランナ136a、136bを滅勢して主軸138、138及びソケット140、140の回転を停止させて各自待機状態とする(ステップS3)。
【0078】
前記2Nmは、仮締めトルクとして予め設定されるものであり、本実施の形態では、各ナットランナ136a、136bによって左右一対のボルト9a、9bをそれぞれ締め付けるタイミングを合わせるのではなく、作業者が手作業によって左右一対のボルト9a、9bをそれぞれ指締めしたときの最大のトルクをトルクレンチで測定した実験データに基づいて設定したものであり、この仮締めトルクとして設定された2Nmとなった状態を起点(原点)として左右のボルト9a、9bの締め付け動作を合わせるものである。
【0079】
次に、各ナットランナ136a、136bを再度付勢して前記一対のボルト9a、9bをそれぞれ同期させた状態で、その締め付けトルクが前記仮締めトルクよりも大きな所定トルクである30Nmに達するまで締め付ける。この場合、ボルト9a、9bを完全に締め付けると40Nm位となるため、この締め付け状態では、その手前である約30Nmに設定されている。なお、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクは、後述する欠片の除去乃至離脱の促進の度合い(副亀裂が進展して欠片が除去できる度合い)又は次工程に合わせて、後述するブラシによるブラッシングがいずれの工程によってなされるかによって適宜、選択される。
【0080】
続いて、一対のボルト9a、9bを前記とは反対方向に所定角度だけ逆転させて該ボルト9a、9bを一旦緩めたときの負荷状態を検出する(ステップS5)。すなわち、ボルト9a、9bのねじ部とボルト孔8、8のねじ部との噛合部位に、例えば、コンタミの噛み込み等の発生の有無を確認する。この確認は、負荷状態においてボルト9a、9bが緩めにくくなっており、ボルト9a、9bを緩めるための回転トルクが予め設定された閾値よりも高くなったことにより検出される。
【0081】
前記噛み込み発生の原因としては、例えば、ボルト9a、9b側のねじ部のねじ山の一部が損傷し、あるいは、コンロッド1側のねじ部のねじ山の一部が潰れている等が想定される。
【0082】
前記負荷状態を検出して緩める回転トルクが予め設定された閾値よりも超えていない場合には、正常であると判断し、各ナットランナ136a、136bを付勢し且つ一対のボルト9a、9bをそれぞれ前記とは逆に正転させ且つ低速で回転させた状態で、その締め付けトルクがスナッグトルクである19.6Nmに到達するまで締め付ける(ステップS6)。
【0083】
次に、前記一対のボルト9a、9bを逆転させてそれぞれ緩め、前記キャップ部7の破断面と前記ロッド部6の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる(ステップS7)。
【0084】
この欠片の除去乃至離脱の促進は、前記キャップ部7の破断面及び前記ロッド部6の破断面を、それぞれ、図9に示されるように円盤部150a、150bの両側面に対して金属製(例えば、SUS製)の多数のワイヤ152が植設されたブラシ154を用い、前記ブラシ154を所定方向に回転させてブラッシングすることによりなされるとよい。
【0085】
前記ブラッシングは、ボルト孔8に対して一対のボルト9a、9bが挿入されたままキャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とが所定間隔離間した状態でなされ、あるいは、ボルト孔8から一対のボルト9a、9bが完全に取り外された状態でキャップ部7の破断面とロッド部6の破断面をそれぞれブラッシングする、いずれの状態であってもよい。
【0086】
なお、前記欠片の除去乃至離脱を促進させた後、さらに、連結装置100を付勢して前記一対のボルト9a、9bを仮締めトルクまで締め付けて各ボルト9a、9bの回転を停止させて待機状態とし、続いて、前記一対のボルト9a、9bをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付けるとよい。
【0087】
本実施の形態では、一対のボルト9a、9bを低速でゆっくりと締め付けて、キャップ部7及びロッド部6の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように接触させることにより、作業者が手作業によって一対のボルト9a、9bをそれぞれ指締めしたと同様の状態となり、破断分割時に収縮したキャップ部7の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正される。
【0088】
また、本実施の形態では、作業者が手作業によって指締めしたときの最大のトルクをトルクレンチで測定した実験データに基づいて仮締めトルクを予め設定し、前記仮締めトルクである2Nmとなった状態を起点(原点)として左右のボルト9a、9bの締め付け動作を合わせ、この仮締めトルクである2Nmの状態を起点とし一対のボルト9a、9bをそれぞれ同期させて低速で締め付けることにより、一旦破断されたキャップ部7とロッド部6とをさらに好適に結合させることができる。
【0089】
例えば、図8Aに示されるように、左側の破断面の左右(右2Nm、左2Nm)の合わせ面が2Nmのとき、その破断面の合わせ面における段差寸法がそれぞれ0となっていないと共に、図8Bに示されるように、右側の破断面の左右(右2Nm、左2Nm)の合わせ面が2Nmのとき、その破断面の合わせ面における段差寸法が0となっていない。
【0090】
すなわち、仮締めの状態では、キャップ部7及びロッド部6の各破断面が完全に結合されておらず、各破断面の凹凸と凸凹との位置ずれが矯正されて合わされた状態にあり、この仮締め状態から同期させて本締めされる。
【0091】
さらに、本実施の形態では、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを所定のトルクによって管理された状態で当接させ、前記キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させることができる。
【0092】
例えば、図10A〜図10Cに示されるように、キャップ部7とロッド部6とに破断する際、主亀裂200が伝播することによって脆性破壊が進行し、この主亀裂200の伝播中に前記主亀裂200が分岐することに起因して微細な副亀裂202が発生するおそれがある。コンロッド1を内燃機関に組み付ける際や内燃機関を駆動させる際に前記副亀裂202が成長し、あるいは前記副亀裂202同士が伝播し合って、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面との合わせ面における接点が略消失した箇所204が発生する(図10B参照)。このような箇所204は脆弱であり、何らかの原因によって前記箇所204に荷重(応力)が付与されると、図10Cに示されるように、当該箇所204が欠落して欠片となることが懸念される。
【0093】
そこで、本実施の形態では、大端部5のキャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを合わせるための一対のボルト9a、9bの締め付け力をトルク管理してその締め付け力が制御された状態で、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを当接させた後、前記ブラシ154を用いて前記キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とをそれぞれブラッシングすることにより、破断合わせ面に発生した欠片を離脱させ、あるいは前記欠片の離脱を好適に促進させることができる。
【0094】
このように本実施の形態では、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを当接させる一対のボルト9a、9bの締め付け力をトルク管理してその締め付け力が制御された状態で、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを当接させた後、前記破断面をそれぞれブラッシングすることにより、仮に破断合わせ面に欠片が発生した場合であっても前記欠片を除去しあるいは前記欠片の離脱を好適に促進させることができる。
【0095】
なお、破断合わせ面に発生した欠片を除去乃至離脱を促進させる方法としては、前記ブラシ154によるブラッシングに限定されるものではなく、例えば、図示しない粘着テープ、吸引機又は加振機等によって前記破断合わせ面に発生した欠片を除去してもよい。すなわち、粘着テープを用いる場合には、破断面に粘着テープを押し当てて貼着した後、前記粘着テープを破断面から引きはがすことにより欠片を粘着テープに付着させることができる。また、吸引機を用いる場合には、吸引機を吸引作用下に破断面から欠片を剥離させることができる。このようにいずれの場合であっても、破断面から確実に欠片を除去乃至離脱を促進させることができる。
【0096】
前記破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱が促進された後、キャップ部7とロッド部6との破断合わせ面を離間させることにより、前記破断合わせ面に発生した欠片が円滑に離脱される。
【0097】
この結果、本実施の形態では、ロッド部6の破断面とキャップ部7の破断面の相互の合わせ面の位置ズレを矯正してセルフフィット性を向上させることができると共に、破断合わせ面に発生した欠片を破断面の形状を損なうことがなく円滑に除去乃至離脱を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明のコネクティングロッドの製造方法を実施する連結装置の概略全体斜視図である。
【図2】図1に示す連結装置に組み込まれた位置合わせ装置の要部概略斜視図である。
【図3】図2に示す位置合わせ装置の一部断面側面図である。
【図4】図2に示す位置合わせ装置の上方矢視平面図である。
【図5】図1に示す連結装置に組み込まれたナットランナを含む一部断面側面図である。
【図6】図1に示す連結装置に組み込まれたナットランナを含む上方矢視平面図である。
【図7】破断分割されたキャップ部とロッド部とを結合させる一対のボルトの締め付け条件を示すフローチャートである。
【図8】図8Aは、左側の破断面の合わせ面において、キャップ部とロッド部との段差寸法と締め付けトルクとの関係を示す説明図であり、図8Bは、右側の破断面の合わせ面において、キャップ部とロッド部との段差寸法と締め付けトルクとの関係を示す説明図である。
【図9】破断分割されたキャップ部及びロッド部の破断面をそれぞれブラシを用いてブラッシングする状態を示す平面図である。
【図10】図10A〜図10Cは、破断面から亀裂が進展して副亀裂が生じ、さらに前記副亀裂同士が伝播し合った結果、欠片として欠落するまでの過程をそれぞれ示す要部拡大正面図である。
【図11】コネクティングロッドがキャップ部とロッド部とに破断分割され、前記キャップ部とロッド部とを一対のボルトによって結合する前の状態を示す斜視図である。
【図12】前記破断分割されたキャップ部とロッド部とが一対のボルトを締め付けることによって結合された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0099】
1…コネクティングロッド 4…小端部
5…大端部 6…ロッド部
7…キャップ部 8…ボルト孔
9a、9b…ボルト 100…連結装置
136a、136b…ナットランナ 140…ソケット
154…ブラシ
【技術分野】
【0001】
本発明は、大端部から破断されたキャップ部とロッド部とを、一対のボルトにおける締め付け力を管理することによって好適に結合させることが可能なコネクティングロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関のピストンとクランクシャフトとを連結するコネクティングロッド(以下、略称してコンロッドともいう)が知られている。
【0003】
この種のコンロッドには、前記コンロッドのロッド部とキャップ部とをそれぞれ個別に製造した後、一対のボルトを用いて前記ロッド部と前記キャップ部とを一体的に連結して組み立てる組立型のコンロッドが用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
この組立型のコンロッドは、一端部に設けられた大端部と他端部に設けられた小端部とを有し、前記大端部のロッド部とキャップ部とをそれぞれ個別に製造した後、一対のボルトによって一体的に組み付けられる。この組立型のコンロッドは、ロッド部のピン穴及びキャップ部のピン穴にそれぞれ位置決めピンを嵌合することにより、ロッド部に対してキャップ部を高精度に位置決めさせた状態で組み付けている。
【0005】
しかしながら、前記組立型のコンロッドでは、ロッド部とキャップ部とをそれぞれ個別に鍛造成形した後、ロッド部及びキャップ部の2部品に対してそれぞれボルト孔を穿孔し、さらに、前記ロッド部及びキャップ部の合わせ面をそれぞれ平坦面に加工する必要があり、このため、加工工数が多くなって生産効率を上昇させるための障害となっている。
【0006】
そこで、本出願人は、図12に示されるような破断分割型のコンロッド1を提案している(特許文献2参照)。
【0007】
この種の破断分割型のコンロッド1は、例えば、ロッド部6とキャップ部7とが同一部材として一体的に設けられた図示しない成形体を鍛造成形によって一体成形した後、溝Cを破断線として、ロッド部6とキャップ部7とに破断分割し、さらに、ボルト孔8に螺入された一対のボルト9a、9bを介して、これらロッド部6とキャップ部7とを一体的に連結(結合)することによって製造される。
【0008】
この破断分割型のコンロッド1の一方の端部である小端部4には、小径な第1貫通孔2が設けられ、軸線方向に沿った反対側の他方の端部である大端部5には、前記第1貫通孔2に比して大径な第2貫通孔3が設けられる。
【0009】
コンロッド1の大端部5は、溝Cを破断線として、第2貫通孔3の略中央付近で該コンロッド1の長手方向(図11におけるX方向)に対して直交する方向(Y方向)に破断され、これによりコンロッド1がロッド部6とキャップ部7とに分割される。この場合、ロッド部6側の破断面及びキャップ部7側の破断面がそれぞれ凹凸状及び凸凹状となるので、一対のボルト9a、9bを装着した際、前記ロッド部6側の凹凸破断面と前記キャップ部7側の凸凹破断面とがそれぞれ密着して、両者をそれぞれ高精度に組み付けることができる。
【0010】
前記ロッド部6とキャップ部7とは、一対のボルト9a、9bをボルト孔8に沿って挿入し前記ボルト孔8内に形成された図示しないねじ部(雌ねじ)とボルト9a、9bのねじ部(雄ねじ)とを嵌合させることによって互いに連結される。
【0011】
前記破断分割型のコンロッド1では、大端部5を破断分割する前にボルト孔8を穿孔するため、ロッド部6側及びキャップ部7側に対して同時にボルト孔8を穿孔加工することができる。このため、ロッド部6及びキャップ部7の2部品に対してそれぞれ個別にボルト孔8を穿孔加工する必要がないと共に、前記ロッド部6及びキャップ部7のそれぞれの合わせ面を平坦面に加工する必要がない。
【0012】
また、特許文献3には、取り除くことができる粘着性のある材料粒子が破断面から不要に剥がれ落ちることを防止するため、コンロッドをロッド部とキャップ部とに破断分割した後、ボルトをねじ止めし、そして前記ボルトを緩めて所定の振動数によって振動処理を施した後、前記ボルトを締めることが開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開平11−2230号公報
【特許文献2】特公平2−19328号公報
【特許文献3】特表2003−512522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、コネクティングロッドをキャップ部とロッド部とに破断分割した場合、その破断分割後に発生する残留応力によって前記ロッド部とキャップ部とに収縮現象が起こる。この収縮現象によってキャップ部側の破断分割面とロッド部側の破断分割面とを結合させた破断分割再結合部位は、平面ではなく凹凸面同士が合わされて構成された段差部となる。なお、前記収縮現象のかわりに、破断分割後に発生する残留応力によってキャップ部及びロッド部に伸長(拡大)現象が起こる場合もある。
【0015】
破断分割後に発生する残留応力によってロッド部とキャップ部とにそれぞれ収縮現象が起こり(一般的には、ロッド部側の収縮と比較してキャップ部側の収縮が大きくなる)、前記収縮現象によってロッド部側の破断分割面とキャップ部側の破断分割面とを合わせようとしても、位置ズレが生じて精度良く面合わせできないという問題がある。
【0016】
また、コネクティングロッドの大端部の内周面の破断分割予定部位に、例えば、断面V字状の一対の溝部(ノッチ)を形成し、前記断面V字状の一対の溝部を起点として破断分割した際、亀裂(主亀裂)が脆性破壊によって伝播することで進行するため、その伝播中に、前記亀裂(主亀裂)が分岐することに起因して微細な副亀裂が発生する。従って、コネクティングロッドを内燃機関に組み付ける際や内燃機関を運転する際に前記副亀裂同士が伝播し合い、その結果、当該箇所が欠けた微小空間からなる欠片となることが懸念される。
【0017】
さらに、前記ロッド部とキャップ部とを一体的に組み付ける際、凹凸破断面及び凸凹破断面のそれぞれの形状を損壊してしまうと、合わせ面として位置決めの機能を発揮できないと共に、ロッド部とキャップ部との間に余計な間隙ができて異音の発生原因となったり、大端部の孔部の真円度に悪影響を及ぼす場合がある。
【0018】
本発明は前記の種々の点に鑑みてなされたものであり、ロッド部とキャップ部とを結合させる一対のボルトの締め付け力を管理することにより、破断分割時に収縮したキャップ部とロッド部とを精度良く結合させると共に、破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させることが可能なコネクティングロッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明は、大端部と小端部とを有するコネクティングロッドを一体成形し前記コネクティングロッドをキャップ部とロッド部とに破断分割した後、さらに、前記キャップ部と前記ロッド部との破断面をそれぞれ合わせ面として該キャップ部と該ロッド部とを一対のボルトを締め付けて結合させるコネクティングロッドの製造方法であって、
前記一対のボルトをそれぞれ回転させて前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とを相互に接近させ、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させ、前記回転によって締め付けられた一対のボルトの締め付けトルクが、それぞれ、予め実験データによって求められた仮締めトルクに達したとき、各ボルトの回転を停止させて待機状態とする工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付ける工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ緩め、前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、先ず、一対のボルトをそれぞれ所定速度で回転させて前記一対のボルトを締め付けることにより、キャップ部の破断面とロッド部の破断面とを相互に接近させ、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させる。この場合、破断分割時に収縮したキャップ部の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正される。そして、前記一対のボルトの締め付けトルクがそれぞれ予め設定された仮締めトルクに達したとき、各ボルトの回転を停止させて待機状態とする。
【0021】
この仮締めトルクは、例えば、作業者が手作業で一対のボルトをそれぞれ指締めしたときの最大のトルクをトルクレンチで測定した実験データに基づいて予め設定されたものである。なお、前記仮締めトルクは、コネクティングロッドの種類、大きさ等によってそれぞれ異なるように設定される。
【0022】
本発明では、一対のボルトをそれぞれ締め付けるタイミングを合わせるのではなく、仮締めトルクとなった時、すなわち、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させ、破断分割時に収縮したキャップ部の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正された時を起点として前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付ける。
【0023】
続いて、前記一対のボルトをそれぞれ緩め、前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる。
【0024】
なお、前記欠片の除去乃至離脱の促進は、例えば、前記キャップ部の破断面及び前記ロッド部の破断面をそれぞれブラッシングすることによりなされるとよい。
【0025】
このようにして本発明では、ロッド部とキャップ部とを結合させる一対のボルトの締め付け力を管理することにより、破断分割時に収縮したキャップ部とロッド部とを精度良く結合させると共に、破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を円滑に促進させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ロッド部の破断面とキャップ部の破断面との合わせ面における締め付け精度が向上する。この結果、一旦破断分割されたキャップ部とロッド部とをより一層精度よく結合させ、コネクティングロッドの製造歩留まりを向上させることができると共に、前記コネクティングロッドを効率よく生産することができる。
【0027】
さらに、本発明によれば、ボルトの締め付け力を制御してキャップ部とロッド部の破断面同士を当接させることにより、未進展の副亀裂をさらに進展させて欠片を欠落可能な状態とし、キャップ部及びロッド部の双方から効率良く欠片を除去することができる。従って、コネクティングロッドの連結精度や、コネクティングロッドとクランクシャフト等との組み付け精度が向上すると共に、エンジンオイルの早期劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係るコネクティングロッドの製造方法について、これを実施する連結装置との関係において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0029】
図1は、連結装置100の概略全体斜視図であり、この連結装置100には、破断分割されたキャップ部7とロッド部6とを位置決めして破断面の凹凸と凸凹とを相互に合わせる位置合わせ装置10が組み込まれている。
【0030】
先ず、位置合わせ装置10につき、要部概略斜視図である図2、一部断面側面図である図3、上方矢視平面図である図4をそれぞれ参照して説明する。
【0031】
この位置合わせ装置10は、長尺溝(図示せず)が設けられた摺接板11が下端面に取り付けられた基台12と、該基台12上に敷設されたガイドレール14と、該ガイドレール14を長手方向に沿って囲繞するように基台12上に略平行に立設された2本の側板16a、16bと、該側板16a、16bの上端面且つ長手方向の各端部に位置決め固定された第1台座18及び第2台座20と、これら第1台座18及び第2台座20との間であって且つ第2台座20に近接する位置に固定された第3台座22とを有する。
【0032】
基台12において、一部が切り欠かれた一端面には、後述する変位用シリンダ110のピストンロッド114が連結されたロッド連結板23が嵌合されている。
【0033】
また、幅広且つ肉厚な平板形状のガイドレール14(図2参照)上における一端部には、該ガイドレール14に係合する凹部が下端面に設けられた第1係合部材24が載置されている。この第1係合部材24の上端面には平板26が設置されており、該平板26の一端部には、連結板28が立設されている。これら平板26及び連結板28の一端面には押圧板30が固定されており、該押圧板30には、第1変位機構である第1シリンダ32のピストンロッド34が連結されている。
【0034】
そして、前記平板26の他端部には、スペーサ36、38を介して第1位置決め部材40が立設されている(図3参照)。この第1位置決め部材40は、第1台座18に設けられた貫通孔42を通ってコネクティングロッド1(以下、コンロッド1という)の第1貫通孔2に到達している。このことから諒解されるように、第1位置決め部材40は、第1シリンダ32のピストンロッド34が前進・後退動作することに伴って第1係合部材24がガイドレール14上を変位することに追従して変位する。
【0035】
なお、第1位置決め部材40には、コンロッド1の第1貫通孔2における第1内周壁S1の形状に対応する形状の湾曲面44が設けられている(図4参照)。後述するように、この湾曲面44は、第1貫通孔2における第1内周壁S1のキャップ部7側に当接する。
【0036】
同様に、ガイドレール14(図2参照)の他端部にも、該ガイドレール14に係合する凹部が下端面に設けられた第2係合部材46が載置されている(図3参照)。この第2係合部材46の上端面には、スペーサ48と、該スペーサ48に比して長尺な変位板50が立設されており、この変位板50には、ナット52で位置決めされたねじ部材54が螺合されている。そして、このねじ部材54の頭部には、第2変位機構としての第2シリンダ56を構成するピストンロッド58が当接している。
【0037】
一方、スペーサ48上には、さらなるスペーサ60を介して第2位置決め部材62が立設されている。この第2位置決め部材62は、第2台座20の貫通孔63を通ってコンロッド1の第2貫通孔3に到達している。また、第2位置決め部材62は、キャップ部7の第2貫通孔3における第2内周壁S2の形状に対応する形状の湾曲面64を有する(図4参照)。
【0038】
第2台座20は、図2に示すように突端部66を有し、該突端部66には断面略L字状のL字型フレーム68がボルト69を介して連結されている。キャップ部7を堰止する堰止部材として機能するこのL字型フレーム68は、キャップ部7の外壁に当接する。
【0039】
第3台座22において、第2台座20に近接する側の端部には、ロッド部6側の第2貫通孔3における第3内周壁S3の形状に対応する形状の湾曲面70を有する第3位置決め部材72が突出形成されている。この第3位置決め部材72によってロッド部6が位置決め固定される。
【0040】
そして、第2位置決め部材62と第3位置決め部材72には、お互いに対向する位置に凹部74、76が設けられており(図3参照)、これら凹部74、76には、弾性部材としてのコイルスプリング78が挿入されている。第2位置決め部材62が第2係合部材46とともに変位可能であり、且つ第3位置決め部材72が第3台座22と一体的に位置決め固定されているため、コイルスプリング78は、第2位置決め部材62を第3位置決め部材72から離間する方向に、常時、弾発付勢している。
【0041】
連結装置100(図1参照)は、以上のように構成された位置合わせ装置10の他、ガイドレール102a、102b又はガイドレール104a、104bが上端面にそれぞれ設置されて互いに隣接する第1基盤106及び第2基盤108とを有し、前記位置合わせ装置10は、基台12の下端面に取り付けられた摺接板11を介して、第1基盤106のガイドレール102a、102b上に変位自在に載置されている。すなわち、ガイドレール102a、102bは、摺接板11の長尺溝に摺接自在に挿入されている。
【0042】
第1基盤106の上端面には変位用シリンダ110が設置されると共にゲート状架台112が立設されており、このうち、変位用シリンダ110のピストンロッド114の先端は、基台12における第2シリンダ56が設置された側の端面に嵌合された前記ロッド連結板23に連結されている。
【0043】
また、ゲート状架台112において、第1基盤106の長手方向に直交する方向に延在する水平部の位置合わせ装置10側に臨む端面には、介在板116及びブラケット118を介して幅位置規制用シリンダ120が設置されている。
【0044】
この幅位置規制用シリンダ120の各側面に進退動作自在に設けられたピストンロッド122には支持板124、124が連結されており、各支持板124、124の側面には、ゲート状架台112側に指向して延在するアーム部材126、126が取り付けられている。なお、各アーム部材126、126の先端部には、互いに対向する面に緩衝部材128、128が接合されている(図5及び図6参照)。
【0045】
第2基盤108のガイドレール104a、104b(図1参照)上には、架台130a、130bが変位自在に載置されている。これら架台130a、130bの下端面には挟持部材132、132が設置されており、前記ガイドレール104a、104bは、これら挟持部材132、132の下端面に形成された溝内に挿入されている。
【0046】
架台130a、130bのそれぞれには、L字状ステー134、134が取り付けられており、各L字状ステー134、134には、ナットランナ136a、136bがそれぞれ支持されている。
【0047】
図5及び図6に示すように、ナットランナ136a又はナットランナ136bは、回転動作可能な主軸138と、該主軸138の先端に設けられたソケット140とを有し、このソケット140の図示しない凹部に対してロッド部6とキャップ部7とを連結するためのボルト9a、9bの頭部が係合し、前記主軸138及びソケット140の回転作用下に該ボルトが9a、9bが締め付けられる。
【0048】
第2基盤108の上端面には、略逆コの字状のピン挿入盤142(図1参照)が設置されており、該ピン挿入盤142には、ピン144、144によって押止板146、146が連結されている。なお、各ピン144は、前記ピン挿入盤142に形成されたピン挿入孔148に挿入されている(図5参照)。
【0049】
本発明に係るコネクティングロッドの製造方法を実施する連結装置100は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果につき説明する。
【0050】
ロッド部6及びキャップ部7の位置合わせを行うに際しては、予め、第1シリンダ32のピストンロッド34を後退動作させておくとともに、第2シリンダ56のピストンロッド58を前進動作させておく。第2シリンダ56のピストンロッド58の前進動作により、変位板50に連結された第2係合部材46がガイドレール14に案内されながら第1シリンダ32側に指向して変位する。
【0051】
これに追従して、第2位置決め部材62が第3位置決め部材72に指向して変位すると共に、これら第2位置決め部材62と第3位置決め部材72とに橋架されたコイルスプリング78が収縮される。
【0052】
そして、先ず、ロッド部6の小端部4を第1台座18に載置するとともに、大端部5を第3台座22に載置する。その一方で、キャップ部7を第2台座20に載置する。
【0053】
次に、第1シリンダ32を付勢する。これによりピストンロッド34が前進動作し、その結果、押圧板30、連結板28及び平板26を介して第1係合部材24がガイドレール14に案内されながら第2シリンダ56側に指向して変位する。これに伴い、2枚のスペーサ36、38を介して平板26に立設された第1位置決め部材40が、第1貫通孔2内で第2シリンダ56側に指向して変位する。
【0054】
変位する第1位置決め部材40の湾曲面44は、第1貫通孔2の第1内周壁S1に当接する。ピストンロッド34がさらに前進動作することによって第1位置決め部材40がさらに変位すると、ロッド部6が第1位置決め部材40によって押圧され、第2シリンダ56側に指向して前進する。
【0055】
この場合、第1位置決め部材40の湾曲面44が第1貫通孔2の第1内周壁S1の形状に対応する形状に設けられているので、ロッド部6が前進する際に該ロッド部6が第1貫通孔2を回転中心として揺動することが著しく抑制される。
【0056】
前進するロッド部6における第2貫通孔3の第3内周壁S3は、最終的に、第3台座22の第3位置決め部材72に当接する。この第3位置決め部材72、すなわち、第3台座22が側板16a、16bに位置決め固定されているので、ロッド部6は、第3位置決め部材72に堰止される。これにより、ロッド部6のそれ以上の前進が阻止される。
【0057】
ここで、上記したように、第3位置決め部材72の湾曲面70は、第2貫通孔3の第3内周壁S3の形状に対応する形状に設けられている。このため、ロッド部6が前進する際に第1貫通孔2を回転中心として揺動した場合であっても、第2貫通孔3の第3内周壁S3が第3位置決め部材72の湾曲面70に案内され、その結果、ロッド部6が、揺動が起こる前の位置に戻される。
【0058】
以上の動作により、破断分割されたコンロッド1のロッド部6が位置決めされる。
【0059】
次に、第2シリンダ56を付勢してピストンロッド58を後退動作させる。これに伴って該ピストンロッド58がねじ部材54の頭部から離間し、第2係合部材46が第2シリンダ56の押圧力から解放される。このため、コイルスプリング78が弾性復元によって伸張すると、第2位置決め部材62が第3位置決め部材72から離間する方向に変位する。
【0060】
変位した第2位置決め部材62の湾曲面64は、キャップ部7の第2貫通孔3における第2内周壁S2を押圧する。これによりキャップ部7がロッド部6から離間する方向に変位し、最終的に、L字型フレーム68によって堰止される。
【0061】
この変位の際、湾曲面64の形状が第2内周壁S2の形状に対応しているので、キャップ部7の第2貫通孔3を回転中心とする揺動が抑制される。このため、L字型フレーム68で堰止されたキャップ部7の破断面は、ロッド部6の破断面に対向する同一直線上に位置する。すなわち、ロッド部6とキャップ部7とが高精度に位置合わせされる。
【0062】
この状態で、変位用シリンダ110のピストンロッド114が前進動作する。上記したようにこのピストンロッド114がロッド連結板23に連結されているため、位置合わせ装置10は、ガイドレール102a、102bに案内されながらゲート状架台112側に指向して変位する。
【0063】
変位用シリンダ110のピストンロッド114が前進端に位置すると、大端部5及びキャップ部7の各側面と、前記アーム部材126、126の内方側面に取り付けられた緩衝部材128、128との位置が略合致する。その後、幅位置規制用シリンダ120の各側面のピストンロッド122が互いに接近するように動作し、これにより大端部5及びキャップ部7の各側面の位置がアーム部材126、126によって規定され、その結果、大端部5とキャップ部7との位置合わせの精度がさらに向上する。
【0064】
以上の動作の間に、架台130a、130bは、第2基盤108上に設けられたガイドレール104a、104bに沿って案内され、ナットランナ136a、136bの各ソケット140、140の位置がコンロッド1のボルト孔8、8の位置に合致するまで変位する。
【0065】
この際、架台130a、130bの端部が押止板146によって押止され、これにより、L字状ステー134、134に支持されたナットランナ136a、136bが、傾斜することなく確実に水平方向に指向して延在する。
【0066】
そして、上記した変位用シリンダ110による基台12、ひいてはコンロッド1の前進動作、及び大端部5とキャップ部7との位置合わせが終了すると、ソケット140、140に対して、作業者によって予めボルト孔8、8に螺入された一対のボルト9a、9bの頭部が係合する。
【0067】
このように一対のボルト9a、9bの頭部とソケット140、140とが係合した状態でナットランナ136a、136bが付勢され、主軸138、138が回転動作することに追従してソケット140、140ごとボルト9a、9bが螺回される。
【0068】
従って、ボルト9a、9bの外周面の一部に形成されたねじ部(雄ねじ)がボルト孔8のねじ部(雌ねじ)に螺合され、その結果、ロッド部6とキャップ部7とが位置ずれを起こすことなく互いに連結されるに至る。前記ボルト9a、9bの締め付け条件等については、後述する。
【0069】
このように、連結装置100によれば、第1位置決め部材40及び第3位置決め部材72によってロッド部6を位置決めする一方、第2位置決め部材62によってキャップ部7を位置決めするようにしている。そして、第1位置決め部材40、第2位置決め部材62、及び第3位置決め部材72の各々が、第1貫通孔2の第1内周壁S1、ロッド部6側に分割された第2貫通孔3の第2内周壁S2、キャップ部7側に分割された第2貫通孔3の第2内周壁S2、及びロッド部6側に分割された第2貫通孔3の第3内周壁S3の形状に対応する湾曲面44、64、70を有するので、ロッド部6及びキャップ部7の揺動が抑制される。
【0070】
従って、ロッド部6の破断面とキャップ部7の破断面とが同一直線上で互いに対向する。換言すれば、ロッド部6とキャップ部7とが高精度で位置合わせされる。このため、ロッド部6とキャップ部7とを連結してコンロッド1を生産することが容易となるので、コンロッド1を効率よく生産することができる。また、コンロッド1の製造歩留まりが向上する。
【0071】
また、この場合、第1台座18と第3台座22との間にクリアランスが設けられているので、上記のようにして位置合わせ装置10を使用する最中にガイドレール14への潤滑油の注油等のメンテナンス作業を行う場合、前記クリアランスを介して注油器具を挿入することができる。すなわち、メンテナンス作業を容易に行うことができる。また、位置合わせ装置10の重量が大きくなることを回避することができるという利点もある。
【0072】
なお、上記した連結装置100においては、第1台座18と第3台座22とを別部材としたが、同一の部材であってもよい。すなわち、第1台座18に比して長尺な第1台座を設け、この第1台座にロッド部6の小端部4及び大端部5を載置するようにすればよい。この場合、例えば、第3位置決め部材を第1台座とは別部材とし、該第1台座上に立設すればよい。
【0073】
次に、破断分割されたキャップ部7とロッド部6との破断面が位置決めされた状態でボルト孔8に挿通された一対のボルト9a、9bを締め付けるための締め付け条件について、図7に示されるフローチャートに基づいて以下詳細に説明する。
【0074】
なお、以下の説明では、一対のボルト9a、9bの締め付け法として回転角度法を採用し、前記回転角度法に基づいてスナッグトルク(snug torque)を19.6Nmに設定し、さらに90度回転させている。この場合、前記回転角度法では、スナッグトルクを高精度に確定させることが困難であり、その締め付け精度を向上させるために以下に示される締め付け条件を設定している。また、作業者が、予め手作業によって指締めしたボルト9a、9bのトルクをそれぞれトルクレンチで測定した実験データに基づいて、仮締めトルクを2Nmに設定した。
【0075】
先ず、各ナットランナ136a、136bを付勢して高速で一対のボルト9a、9bをそれぞれ回転させて締め付ける(ステップS1)。
【0076】
続いて、前記高速回転で締め付けられた一対のボルト9a、9bの締め付け量が回転角度法による4400度の回転角度を超えたときに各ナットランナ136a、136bの主軸138、138及びソケット140、140の回転速度を減速させ、低速でボルト9a、9bを締め付ける(ステップS2)。なお、高速回転から低速回転に切り換えた回転角度は、4400度に限定されるものではなく、コンロッド1の種類、大きさ及び組み付け製造ライン等によって相違するものである。
【0077】
前記一対のボルト9a、9bを低速で回転させて前記一対のボルト9a、9bを締め付けることにより、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とが相互に接近し、前記キャップ部7及び前記ロッド部6の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部7の破断面と前記ロッド部6の破断面とをそれぞれ接触させる。この場合、破断分割時に収縮したキャップ部7の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正される。前記各破断面同士の位置ずれが矯正されることにより、キャップ部7の軸線とロッド部6の軸線とが一致して同軸となり、収縮によるキャップ部7とロッド部6との幅方向の寸法差が左右に略均等に分配される。そして、前記低速回転で締め付けられている一対のボルト9a、9bの締め付けトルクが、それぞれ、予め設定された2Nmとなったときに各ナットランナ136a、136bを滅勢して主軸138、138及びソケット140、140の回転を停止させて各自待機状態とする(ステップS3)。
【0078】
前記2Nmは、仮締めトルクとして予め設定されるものであり、本実施の形態では、各ナットランナ136a、136bによって左右一対のボルト9a、9bをそれぞれ締め付けるタイミングを合わせるのではなく、作業者が手作業によって左右一対のボルト9a、9bをそれぞれ指締めしたときの最大のトルクをトルクレンチで測定した実験データに基づいて設定したものであり、この仮締めトルクとして設定された2Nmとなった状態を起点(原点)として左右のボルト9a、9bの締め付け動作を合わせるものである。
【0079】
次に、各ナットランナ136a、136bを再度付勢して前記一対のボルト9a、9bをそれぞれ同期させた状態で、その締め付けトルクが前記仮締めトルクよりも大きな所定トルクである30Nmに達するまで締め付ける。この場合、ボルト9a、9bを完全に締め付けると40Nm位となるため、この締め付け状態では、その手前である約30Nmに設定されている。なお、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクは、後述する欠片の除去乃至離脱の促進の度合い(副亀裂が進展して欠片が除去できる度合い)又は次工程に合わせて、後述するブラシによるブラッシングがいずれの工程によってなされるかによって適宜、選択される。
【0080】
続いて、一対のボルト9a、9bを前記とは反対方向に所定角度だけ逆転させて該ボルト9a、9bを一旦緩めたときの負荷状態を検出する(ステップS5)。すなわち、ボルト9a、9bのねじ部とボルト孔8、8のねじ部との噛合部位に、例えば、コンタミの噛み込み等の発生の有無を確認する。この確認は、負荷状態においてボルト9a、9bが緩めにくくなっており、ボルト9a、9bを緩めるための回転トルクが予め設定された閾値よりも高くなったことにより検出される。
【0081】
前記噛み込み発生の原因としては、例えば、ボルト9a、9b側のねじ部のねじ山の一部が損傷し、あるいは、コンロッド1側のねじ部のねじ山の一部が潰れている等が想定される。
【0082】
前記負荷状態を検出して緩める回転トルクが予め設定された閾値よりも超えていない場合には、正常であると判断し、各ナットランナ136a、136bを付勢し且つ一対のボルト9a、9bをそれぞれ前記とは逆に正転させ且つ低速で回転させた状態で、その締め付けトルクがスナッグトルクである19.6Nmに到達するまで締め付ける(ステップS6)。
【0083】
次に、前記一対のボルト9a、9bを逆転させてそれぞれ緩め、前記キャップ部7の破断面と前記ロッド部6の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる(ステップS7)。
【0084】
この欠片の除去乃至離脱の促進は、前記キャップ部7の破断面及び前記ロッド部6の破断面を、それぞれ、図9に示されるように円盤部150a、150bの両側面に対して金属製(例えば、SUS製)の多数のワイヤ152が植設されたブラシ154を用い、前記ブラシ154を所定方向に回転させてブラッシングすることによりなされるとよい。
【0085】
前記ブラッシングは、ボルト孔8に対して一対のボルト9a、9bが挿入されたままキャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とが所定間隔離間した状態でなされ、あるいは、ボルト孔8から一対のボルト9a、9bが完全に取り外された状態でキャップ部7の破断面とロッド部6の破断面をそれぞれブラッシングする、いずれの状態であってもよい。
【0086】
なお、前記欠片の除去乃至離脱を促進させた後、さらに、連結装置100を付勢して前記一対のボルト9a、9bを仮締めトルクまで締め付けて各ボルト9a、9bの回転を停止させて待機状態とし、続いて、前記一対のボルト9a、9bをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付けるとよい。
【0087】
本実施の形態では、一対のボルト9a、9bを低速でゆっくりと締め付けて、キャップ部7及びロッド部6の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように接触させることにより、作業者が手作業によって一対のボルト9a、9bをそれぞれ指締めしたと同様の状態となり、破断分割時に収縮したキャップ部7の変形による各破断面同士の位置ずれが矯正される。
【0088】
また、本実施の形態では、作業者が手作業によって指締めしたときの最大のトルクをトルクレンチで測定した実験データに基づいて仮締めトルクを予め設定し、前記仮締めトルクである2Nmとなった状態を起点(原点)として左右のボルト9a、9bの締め付け動作を合わせ、この仮締めトルクである2Nmの状態を起点とし一対のボルト9a、9bをそれぞれ同期させて低速で締め付けることにより、一旦破断されたキャップ部7とロッド部6とをさらに好適に結合させることができる。
【0089】
例えば、図8Aに示されるように、左側の破断面の左右(右2Nm、左2Nm)の合わせ面が2Nmのとき、その破断面の合わせ面における段差寸法がそれぞれ0となっていないと共に、図8Bに示されるように、右側の破断面の左右(右2Nm、左2Nm)の合わせ面が2Nmのとき、その破断面の合わせ面における段差寸法が0となっていない。
【0090】
すなわち、仮締めの状態では、キャップ部7及びロッド部6の各破断面が完全に結合されておらず、各破断面の凹凸と凸凹との位置ずれが矯正されて合わされた状態にあり、この仮締め状態から同期させて本締めされる。
【0091】
さらに、本実施の形態では、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを所定のトルクによって管理された状態で当接させ、前記キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させることができる。
【0092】
例えば、図10A〜図10Cに示されるように、キャップ部7とロッド部6とに破断する際、主亀裂200が伝播することによって脆性破壊が進行し、この主亀裂200の伝播中に前記主亀裂200が分岐することに起因して微細な副亀裂202が発生するおそれがある。コンロッド1を内燃機関に組み付ける際や内燃機関を駆動させる際に前記副亀裂202が成長し、あるいは前記副亀裂202同士が伝播し合って、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面との合わせ面における接点が略消失した箇所204が発生する(図10B参照)。このような箇所204は脆弱であり、何らかの原因によって前記箇所204に荷重(応力)が付与されると、図10Cに示されるように、当該箇所204が欠落して欠片となることが懸念される。
【0093】
そこで、本実施の形態では、大端部5のキャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを合わせるための一対のボルト9a、9bの締め付け力をトルク管理してその締め付け力が制御された状態で、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを当接させた後、前記ブラシ154を用いて前記キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とをそれぞれブラッシングすることにより、破断合わせ面に発生した欠片を離脱させ、あるいは前記欠片の離脱を好適に促進させることができる。
【0094】
このように本実施の形態では、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを当接させる一対のボルト9a、9bの締め付け力をトルク管理してその締め付け力が制御された状態で、キャップ部7の破断面とロッド部6の破断面とを当接させた後、前記破断面をそれぞれブラッシングすることにより、仮に破断合わせ面に欠片が発生した場合であっても前記欠片を除去しあるいは前記欠片の離脱を好適に促進させることができる。
【0095】
なお、破断合わせ面に発生した欠片を除去乃至離脱を促進させる方法としては、前記ブラシ154によるブラッシングに限定されるものではなく、例えば、図示しない粘着テープ、吸引機又は加振機等によって前記破断合わせ面に発生した欠片を除去してもよい。すなわち、粘着テープを用いる場合には、破断面に粘着テープを押し当てて貼着した後、前記粘着テープを破断面から引きはがすことにより欠片を粘着テープに付着させることができる。また、吸引機を用いる場合には、吸引機を吸引作用下に破断面から欠片を剥離させることができる。このようにいずれの場合であっても、破断面から確実に欠片を除去乃至離脱を促進させることができる。
【0096】
前記破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱が促進された後、キャップ部7とロッド部6との破断合わせ面を離間させることにより、前記破断合わせ面に発生した欠片が円滑に離脱される。
【0097】
この結果、本実施の形態では、ロッド部6の破断面とキャップ部7の破断面の相互の合わせ面の位置ズレを矯正してセルフフィット性を向上させることができると共に、破断合わせ面に発生した欠片を破断面の形状を損なうことがなく円滑に除去乃至離脱を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明のコネクティングロッドの製造方法を実施する連結装置の概略全体斜視図である。
【図2】図1に示す連結装置に組み込まれた位置合わせ装置の要部概略斜視図である。
【図3】図2に示す位置合わせ装置の一部断面側面図である。
【図4】図2に示す位置合わせ装置の上方矢視平面図である。
【図5】図1に示す連結装置に組み込まれたナットランナを含む一部断面側面図である。
【図6】図1に示す連結装置に組み込まれたナットランナを含む上方矢視平面図である。
【図7】破断分割されたキャップ部とロッド部とを結合させる一対のボルトの締め付け条件を示すフローチャートである。
【図8】図8Aは、左側の破断面の合わせ面において、キャップ部とロッド部との段差寸法と締め付けトルクとの関係を示す説明図であり、図8Bは、右側の破断面の合わせ面において、キャップ部とロッド部との段差寸法と締め付けトルクとの関係を示す説明図である。
【図9】破断分割されたキャップ部及びロッド部の破断面をそれぞれブラシを用いてブラッシングする状態を示す平面図である。
【図10】図10A〜図10Cは、破断面から亀裂が進展して副亀裂が生じ、さらに前記副亀裂同士が伝播し合った結果、欠片として欠落するまでの過程をそれぞれ示す要部拡大正面図である。
【図11】コネクティングロッドがキャップ部とロッド部とに破断分割され、前記キャップ部とロッド部とを一対のボルトによって結合する前の状態を示す斜視図である。
【図12】前記破断分割されたキャップ部とロッド部とが一対のボルトを締め付けることによって結合された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0099】
1…コネクティングロッド 4…小端部
5…大端部 6…ロッド部
7…キャップ部 8…ボルト孔
9a、9b…ボルト 100…連結装置
136a、136b…ナットランナ 140…ソケット
154…ブラシ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大端部と小端部とを有するコネクティングロッドを一体成形し前記コネクティングロッドをキャップ部とロッド部とに破断分割した後、さらに、前記キャップ部と前記ロッド部との破断面をそれぞれ合わせ面として該キャップ部と該ロッド部とを一対のボルトを締め付けて結合させるコネクティングロッドの製造方法であって、
前記一対のボルトをそれぞれ回転させて前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とを相互に接近させ、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させ、前記回転によって締め付けられた一対のボルトの締め付けトルクが、それぞれ、予め実験データによって求められた仮締めトルクに達したとき、各ボルトの回転を停止させて待機状態とする工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付ける工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ緩め、前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる工程と、
を有することを特徴とするコネクティングロッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記欠片の除去乃至離脱の促進は、前記キャップ部の破断面及び前記ロッド部の破断面をそれぞれブラッシングすることによりなされることを特徴とするコネクティングロッドの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
前記欠片の除去乃至離脱を促進させた後、さらに、前記一対のボルトを仮締めトルクまで締め付けて各ボルトの回転を停止させて待機状態とし、続いて、前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付けることを特徴とするコネクティングロッドの製造方法。
【請求項1】
大端部と小端部とを有するコネクティングロッドを一体成形し前記コネクティングロッドをキャップ部とロッド部とに破断分割した後、さらに、前記キャップ部と前記ロッド部との破断面をそれぞれ合わせ面として該キャップ部と該ロッド部とを一対のボルトを締め付けて結合させるコネクティングロッドの製造方法であって、
前記一対のボルトをそれぞれ回転させて前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とを相互に接近させ、前記キャップ部及び前記ロッド部の各破断面の凹凸と凸凹とが相互に合致するように前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面とをそれぞれ接触させ、前記回転によって締め付けられた一対のボルトの締め付けトルクが、それぞれ、予め実験データによって求められた仮締めトルクに達したとき、各ボルトの回転を停止させて待機状態とする工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付ける工程と、
前記一対のボルトをそれぞれ緩め、前記キャップ部の破断面と前記ロッド部の破断面との破断合わせ面に発生した欠片の除去乃至離脱を促進させる工程と、
を有することを特徴とするコネクティングロッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記欠片の除去乃至離脱の促進は、前記キャップ部の破断面及び前記ロッド部の破断面をそれぞれブラッシングすることによりなされることを特徴とするコネクティングロッドの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
前記欠片の除去乃至離脱を促進させた後、さらに、前記一対のボルトを仮締めトルクまで締め付けて各ボルトの回転を停止させて待機状態とし、続いて、前記一対のボルトをそれぞれ同期させて、前記仮締めトルクよりも大なる所定トルクに到達するまで締め付けることを特徴とするコネクティングロッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−154942(P2007−154942A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348465(P2005−348465)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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