説明

コハク酸の製造方法

【課題】コハク酸塩含有溶液中のコハク酸を高純度・低コストかつ環境負荷の少ない手法で分離・回収する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コハク酸塩含有溶液から陽イオン成分をナノ濾過膜を用いて濾過することで、効率良く該陽イオン成分を除去し、さらに逆浸透膜を用いて濃縮したのち再結晶することで、高純度・低コストかつ低環境負荷な手法で分離・回収可能なコハク酸の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コハク酸塩含有溶液からコハク酸を分離することによるコハク酸の製造方法に関する。詳しくは、コハク酸塩含有溶液中に残存している陽イオン成分をナノ濾過膜によって除去し、コハク酸溶液を得るコハク酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コハク酸は、ジカルボン酸であるため、ブタンジオールやエチレングリコールなどのジオールとの重合によりポリエステルを生成し、ヘキサメチレンジアミンのようなジアミン類との重合によりポリアミドを生成する。このようなコハク酸含有ポリマーは、環境負荷の少ない生分解性ポリマーとして近年注目が高まっている他、食品添加物や医薬品、化粧品などの原料としても用いられる。このような用途に使用するコハク酸は、ポリマー原料の場合には、その機能性向上に不可欠な高重合度の達成が必須であり、そのためには、高純度のコハク酸が求められる。また、食品添加物や医薬品の場合にも安全性の観点から、高純度のコハク酸が必要とされる。
【0003】
微生物発酵によるコハク酸の生産は、グリーンケミストリーの観点からも実用化が期待される技術ではある。
【0004】
一般的に、コハク酸を微生物発酵によって製造するためには、培地を至適pHに保つために、アルカリ性物質を添加しながら行われる。そのため、コハク酸を蓄積させた培養液中では、多くの場合コハク酸は陽イオン成分との塩の形で存在する。このような培養液からコハク酸を製造するためには、発酵終了後に陽イオン成分を除去する必要がある。また、化学合成に比べ、培地成分や発酵代謝物といった副生成物が多いため、精製が困難であったり、コストがかかったりするなど、高純度コハク酸の製造には課題がある。
【0005】
高純度なコハク酸の製造方法の具体例のひとつとしては、培養液中に添加するアルカリ性物質に水酸化カルシウムを用いて、発酵培養液中にコハク酸カルシウムを蓄積し、発酵終了後に酸性物質である硫酸を加えることで、難溶性の硫酸カルシウムとして陽イオン成分を除去するという方法がある。また、その他にもイオン交換樹脂を用いる方法や電気透析を用いる方法などが報告されている。
【0006】
陰イオン交換樹脂を用いる方法では、まずコハク酸塩を含む培養液に陰イオン交換樹脂を接触させてコハク酸を樹脂に吸着させた後に、有機溶媒やアンモニア水などで溶離する(特許文献1、2参照)。また、陽イオン交換樹脂を用いる方法では、コハク酸塩の陽イオン成分を陽イオン交換樹脂に吸着させ、貫流液としてコハク酸を回収する(特許文献3参照)。しかしながら、このようなイオン交換樹脂を用いる方法では、溶離液として有機溶媒を必要とすることや、イオン交換樹脂の機能維持のためには大量の再生液を使用することから、環境負荷が大きく、廃液処理にコストがかかるという問題がある。また、陽イオン交換樹脂を用いる方法では、陽イオンがアンモニウムイオンに限定されてしまうのである。
【0007】
一方、電気透析法は、バイポーラ膜によって培養液から微量の陽イオン成分を除去する方法が乳酸製造において報告されている(特許文献4参照)。しかしながら、この方法で用いるバイポーラ膜が高価である上に、陽イオン成分の除去効率が決して高くない。さらには、培養液中に含まれる他の有機酸も同様な挙動を示すため、除去困難であるという問題がある。
【0008】
環境負荷やコスト面から考えれば、操作も容易な難溶性塩として除去する方法が効果的であると考えられる。しかしながら、この方法においても解決すべき課題がある。難溶性塩といえども、溶液中に溶解している微量成分が残存してしまう。コハク酸の製造においては、一般的にコハク酸の濃縮液からの再結晶によって最終生成物を得るため、残存した塩成分が濃縮時に析出し、不純物として混入するのである。そのため、培養液中に残留する微量の塩成分を高効率に除去する方法が求められている。
【特許文献1】特開昭62−238231号公報
【特許文献2】US5132456
【特許文献3】特開昭62−238232号公報
【特許文献4】特開2005−270025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したような課題、すなわち、コハク酸塩含有溶液からコハク酸を高純度・低コストかつ環境負荷の少ない手法で分離・回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、コハク酸塩含有溶液から陽イオン成分をナノ濾過膜を用いて濾過することで、高純度のコハク酸が得られることを見出し、さらに逆浸透膜を用いて濃縮・再結晶することで低コストかつ環境負荷の少ない手法で分離・回収することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)から構成される。
(1)コハク酸塩含有溶液よりコハク酸を分離することによるコハク酸の製造方法であって、該コハク酸塩含有液に酸性物質を添加して陽イオン成分と難溶性塩を形成させた溶液をナノ濾過膜に通じて濾過してコハク酸含有液を得る工程を含む、コハク酸の製造方法。
(2)前記コハク酸含有液を逆浸透膜により濃縮し、該濃縮液からコハク酸を再結晶させる工程を含む、(1)に記載のコハク酸の製造方法。
(3)前記コハク酸塩がコハク酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩またはアンモニウム塩である、(1)または(2)に記載のコハク酸の製造方法。
(4)前記ナノ濾過膜の機能層がポリアミドである、(1)〜(3)のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
(5)前記ポリアミドが架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする(4)に記載のコハク酸の製造方法。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは−Hまたは−CH、nは0から3までの整数を表す。)
(6)前記工程における酸性物質を添加した後の溶液のpHが1.0以上6.0以下である、(1)から(5)のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、化学合成反応液または発酵培養液中に溶解するコハク酸塩の陽イオンを簡単な操作により効率的に除去される。さらに、逆浸透膜を利用することでコハク酸溶液の濃縮も簡便に行えるため、コハク酸を高純度・低コストかつ環境負荷の少ない方法で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
本発明のコハク酸の製造方法は、コハク酸塩含有溶液よりコハク酸を分離することによるコハク酸の製造方法であって、該コハク酸塩含有溶液に酸性物質を添加して該コハク酸塩含有溶液中の陽イオン成分と難溶性塩を形成させ、さらにナノ濾過膜に通じて除去し、コハク酸溶液を得る工程、さらに該工程で得られたコハク酸溶液を逆浸透膜に通じて濃縮する工程を含む、コハク酸の製造方法に関する。
【0017】
本発明におけるコハク酸塩含有溶液は、化学合成によって製造されたものであっても、微生物の発酵培養によって製造されたものであってもよいが、微生物の発酵培養によって製造されたコハク酸塩含有溶液が好ましく用いられる。
【0018】
微生物の発酵培養により製造されたコハク酸塩含有溶液としては、微生物の培養液中に1価または2価の陽イオンを含むアルカリ性物質を添加することで、微生物発酵に最適なpHに保持して得られた培養液が好ましく使用される。添加するアルカリ性物質としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはアンモニウムイオンの陽イオンを含むものであることが好ましく、より好ましくは塩基性のカルシウムおよびマグネシウムイオンを含む物質を添加することであり、具体例として、塩基性のカルシウムとしては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウムなどが挙げられ、塩基性のマグネシウムとしては、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ニリン酸マグネシウム、過酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0019】
コハク酸塩含有液に添加する酸性物質としては、コハク酸塩含有液に含まれる陽イオンを難溶性塩として除去できるような酸性物質であればよい。具体的には、陽イオンがナトリウムである場合、硫酸やリン酸を添加することで、硫酸ナトリウムやニリン酸ナトリウムが沈殿する。また、陽イオンがカリウムである場合には、硝酸やクロム酸を添加することで硝酸カリウムやニクロム酸カリウムが生成し、前記陽イオンがマグネシウムの場合には、二酸化炭素を通じたり、シュウ酸を添加したりすることで炭酸マグネシウムやシュウ酸マグネシウムができる。さらに、該陽イオンがカルシウムである場合、硫酸、二酸化炭素、シュウ酸によって、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどの難溶性塩を生成し、アンモニウムイオンの場合には、二酸化炭素を通じることで炭酸水素アンモニウムを生じる。コハク酸塩含有液に酸性物質を添加して得られる難溶性塩は、以降のナノ濾過膜によって除去してもよいが、ナノ濾過膜に通じる前に沈殿・濾別により分離してもよい。
【0020】
本発明においては、前記コハク酸塩含有液から難溶性塩を分離した後、さらにナノ濾過膜に通じて濾過することを特徴とする。ここでいうナノ濾過膜とは、ナノフィルター(ナノフィルトレーション膜、NF膜)とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。
【0021】
また、「ナノ濾過膜に通じて濾過する」とは、微生物の発酵培養により生産されたコハク酸塩含有液に酸性物質を添加して難溶性塩を形成させた溶液を、ナノ濾過膜に通じて濾過することで、難溶性塩や溶液中に溶解している無機塩を、除去または阻止または濾別し、コハク酸溶液を濾液として透過させることを意味する。ここで、無機塩には、コハク酸塩を形成した陽イオン成分を含むものを始め、溶液中に含まれる無機塩であれば特に限定されない。
【0022】
ナノ濾過膜に供する溶液のpHは、1.0以上6.0以下であることが好ましい。ナノ濾過膜は、溶液中にイオン化している物質の方が、イオン化していない物質に比べて除去または阻止しやすいことが知られていることから、培養液のpHを6.0以下の酸性状態が好ましい。さらに、pH1.0のようにより低いpHである方が、コハク酸塩が溶液中で解離してコハク酸イオンとして存在している割合を少なくなるため、コハク酸の回収率を高めることができてよい。しかしながら、pHが1.0未満である場合には、ナノ濾過膜の損傷に影響するおそれがある。また、コハク酸の25℃におけるpKa1が4.21、pKa2が5.64である。よって、コハク酸イオンと水素イオンに解離していないコハク酸の割合を高め、効率的にコハク酸をナノ濾過膜に透過するためには、pHを1.0以上4.21以下であればより好ましい。なお、培養液のpH調整は微生物発酵時であっても、微生物発酵後であってもよいが、微生物の生育およびコハク酸蓄積効率を考慮すると、発酵後に行うことがより好ましい。
【0023】
本発明で使用されるナノ濾過膜の、無機塩の除去、阻止または濾別の程度を評価する方法としては、無機イオン除去率(阻止率)を算出することで評価する方法が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。無機塩阻止率(除去率)は、イオンクロマトグラフィーに代表される分析により、原水(コハク酸塩含有溶液)中に含まれる無機塩濃度(原水無機塩濃度)および透過液(コハク酸溶液)中に含まれる無機塩の濃度(透過液無機塩濃度)を測定することで、式1によって算出することができる。
【0024】
無機塩除去率(%)=(1−(透過液無機塩濃度/原水無機塩濃度))×100・・・(式1)。
【0025】
本発明において用いられるナノ濾過膜としては、塩化ナトリウム(500mg/L)の除去率が45%以上のナノ濾過膜が好ましく用いられる。また、ナノ濾過膜の透過性能としては、0.3MPaの濾過圧において、膜単位面積当たりの塩化ナトリウム(500mg/L)の透過流量(m/m/day)が0.5以上0.8以下のナノ濾過膜が好ましく用いられる。膜単位面積当たりの透過流量(膜透過流束)の評価方法としては、透過液量および透過液量を採水した時間および膜面積を測定することで、式2によって算出することができる。
【0026】
膜透過流束(m/m/day)=透過液量/膜面積/採水時間・・・(式2)。
【0027】
本発明で使用されるナノ濾過膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、前記1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。複合膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載の、ポリスルホンを膜素材とする支持膜にポリアミドの機能層からなるナノフィルターを構成させた複合膜を用いることができる。
【0028】
これらの中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れたポテンシャルを有する、ポリアミドを機能層とした複合膜が好ましい。操作圧力に対する耐久性と、高い透水性、阻止性能を維持できるためには、ポリアミドを機能層とし、それを多孔質膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。また、ポリアミド半透膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの機能層を支持体に有してなる複合半透膜が適している。
【0029】
ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分としては、例えば、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられるが、製膜溶媒に対する溶解性を考慮すると、トリメシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびこれらの混合物がより好ましい。
【0030】
前記ポリアミドを構成する単量体の好ましいアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、メチレンビスジアニリン、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、ジアニシジン、3,3’,4−トリアミノビフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルエーテル、3,3’−ジオキシベンジジン、1,8−ナフタレンジアミン、m(p)−モノメチルフェニレンジアミン、3,3’−モノメチルアミノ−4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、4,N,N’−(4−アミノベンゾイル)−p(m)−フェニレンジアミン−2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾイミダゾール)、2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾオキサゾール)、2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾチアゾール)等の芳香環を有する一級ジアミン、ピペラジン、ピペリジンまたはこれらの誘導体等の二級ジアミンが挙げられ、中でもピペラジンまたはピペリジンを単量体として含む架橋ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜は耐圧性、耐久性の他に、耐熱性、耐薬品性を有していることから好ましく用いられる。より好ましくは前記架橋ピペラジンポリアミドまたは架橋ピペリジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドであり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドである。また、前記化学式(1)中、n=3のものが好ましく用いられる。架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とするナノ濾過膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載のものが挙げられ、具体例として、架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)中、n=3のものを構成成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製の架橋ピペラジンポリアミド系半透膜のUTC60が挙げられる。
【0031】
ナノ濾過膜は一般にスパイラル型の膜エレメントとして使用されるが、本発明で用いるナノ濾過膜も、スパイラル型の膜エレメントが好ましく使用される。好ましいナノ濾過膜エレメントの具体例としては、例えば、酢酸セルロース系のナノろ過膜であるGE Osmonics社製ナノ濾過膜のGEsepa、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610が挙げられ、より好ましくはポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610であり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610である。
【0032】
ナノ濾過膜による濾過は、圧力をかけてもよく、その濾過圧は、0.1MPa以上8MPa以下の範囲で好ましく用いられる。濾過圧が0.1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるおそれがある。また、濾過圧が0.5MPa以上7MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、コハク酸溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、1MPa以上6MPa以下で用いることが特に好ましい。
【0033】
上記のナノ濾過膜に通じて濾過するコハク酸塩含有溶液中のコハク酸の濃度は、特に限定されないが、高濃度であれば、透過液中に含まれるコハク酸の濃度も高いため、濃縮する際のエネルギー削減ができ、コスト削減にも好適である。
【0034】
ナノ濾過膜に供する溶液中の無機塩の濃度は特に限定はなく、飽和溶解度以上であってもよい。すなわち、無機塩が飽和溶解度以下であれば溶液中に溶解しており、飽和溶解度以上であれば、一部析出しているが、本発明のコハク酸の製造方法は、溶液中において溶解しているもの、溶液中に析出し若しくは沈殿して含まれているもののいずれも除去または阻止することが可能であるので、無機塩の濃度に拘束されずにコハク酸を濾過することができる。
【0035】
上記の方法によってコハク酸塩含有溶液からコハク酸を分離する際の、コハク酸のナノ濾過膜透過性の評価方法としては、コハク酸透過率を算出して評価することができる。コハク酸透過率は、高速液体クロマトグラフィーに代表される分析により、原水(コハク酸塩含有溶液)中に含まれるコハク酸濃度(原水コハク酸濃度)および透過液(コハク酸含有溶液)中に含まれるコハク酸濃度(透過液コハク酸濃度)を測定することで、式3によって算出することができる。
【0036】
コハク酸透過率(%)=(透過液コハク酸濃度/原水コハク酸濃度)×100・・・(式3)。
【0037】
本発明のコハク酸の製造方法は、ナノ濾過膜で濾過して得られるコハク酸含有溶液を、さらに逆浸透膜を用いて濃縮し、該濃縮液からコハク酸を再結晶させる工程に供することで、高純度のコハク酸を低コストで得ることができる。コハク酸溶液を濃縮し、コハク酸を再結晶させる方法としては、エバポレーターに代表される濃縮装置を用いる方法が一般的であるが、水の熱容量は有機溶媒に比べてはるかに大きいため、濃縮にかかるエネルギーや時間は莫大である。そのため、エネルギー・コスト削減という観点から、逆浸透膜で濾過してコハク酸濃度を高める方法が好適である。ここでいう逆浸透膜とは、被処理水の浸透圧以上の圧力差を駆動力にイオンや低分子量分子を除去する濾過膜であり、例えば酢酸セルロースなどのセルロース系や、多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を設けた膜などが採用できる。逆浸透膜表面の汚れすなわちファウリングを抑制するために、酸ハライド基と反応する反応性基を少なくとも1個有する化合物の水溶液をポリアミド分離機能層の表面に被覆して、分離機能層表面に残存する酸ハロゲン基と該反応性基との間で共有結合を形成させた主に下水処理用の低ファウリング逆浸透膜なども好ましく採用できる。本発明のナノ濾過膜に通じて濾過する工程で2価のカルシウムイオンを大部分除去できているため、逆浸透膜面でのスケールの生成もなく安定した膜濃縮が行える。
【0038】
次に、本発明のコハク酸の製造方法に供される微生物の発酵培養によるコハク酸塩含有溶液の製造方法について説明する。
【0039】
微生物の発酵培養によるコハク酸塩含有溶液の生産に使用する発酵原料としては、培養する微生物の生育を促し、目的とする発酵生産物であるコハク酸を良好に生産させうるものであればよく、炭素源、窒素源、無機塩類、及び必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が良い。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、更には酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなども使用される。窒素源としてはアンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。本発明に使用する微生物が生育のために特定の栄養素(例えば、アミノ酸など)を必要とする場合には、その栄養物をそれ自体もしくはそれを含有する天然物として添加する。また、消泡剤も必要に応じて使用してもよい。本発明において、培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液のことを言う。培養液に追加する発酵原料の組成は、目的とするコハク酸の生産性が高くなるように、培養開始時の発酵原料組成から適宜変更しても良い。
【0040】
本発明では、微生物の培養は、pH4−8、温度20−40℃の範囲であることが好ましい。また、微生物の培養において、酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養を加圧する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。また、微生物の増殖時もしくは発酵生産時もしくはその両方において、コハク酸の生産性を高めるために嫌気培養を行ってもよい。
【0041】
微生物の培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って微生物濃度を高くした後に、連続培養(引き抜き)を開始しても良いし、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行っても良い。適当な時期から原料培養液の供給及び培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養物の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養物の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。原料培養液には上記に示したような菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが効率よい生産性を得るのに好ましく、一例として、乾燥重量として5g/L以上に維持することで良好な生産効率が得られる。
【0042】
発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、通常、単一の発酵槽で行うのが、培養管理上好ましい。しかしながら、菌体を増殖しつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵槽の数は問わない。発酵槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽を用いることもあり得る。この場合、複数の発酵槽を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても発酵生産物の高生産性は得られる。
【0043】
本発明で使用される微生物については特に制限はないが、例えば、発酵工業においてよく使用される酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌などが挙げられる。動物細胞、昆虫細胞等の培養細胞も、本発明で使用される微生物に含まれる。使用する微生物は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。公知のコハク酸発酵法としては、アナエロビオスピルリム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succinicproducens)(ATCC35488)の嫌気培養(特開昭62−294090)や、好気性コリネ型細菌であるブレビバクテリウム・フラバム(Brebibacterium flavum)の遺伝子組み換え菌を増殖後、嫌気的に炭酸ガス含有液中で有機原料に作用させる方法(特開平11−196888)などが知られている。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
(参考例1) ナノ濾過膜の無機塩(硫酸マグネシウム)阻止率評価
超純水10Lに硫酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)10g添加して25℃1時間攪拌し、1000ppm硫酸マグネシウム水溶液を調製した。次いで、図1に示す、膜濾過装置の原水層1に上記で調整した硫酸マグネシウム水溶液10Lを注入した。図2の符号7に示される90φナノ濾過膜として、架橋ピペラジンポリアミド半透膜“UTC60”(ナノ濾過膜1;東レ製)、架橋ピペラジンポリアミド半透膜“NF−400”(ナノ濾過膜2;フィルムテック製)、ポリアミド半透膜“NF99”(ナノ濾過膜3;アルファラバル製)、酢酸セルロース半透膜“GEsepa”(ナノ濾過膜4;GE Osmonics製)をそれぞれステンレス(SUS316製)製のセルにセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプ3の圧力を0.5MPaに調整し、透過液4を回収した。原水槽1、透過液4に含まれる、硫酸マグネシウムの濃度をイオンクロマトグラフィー(DIONEX製)により以下の条件で分析し、硫酸マグネシウムの透過率を計算した。
【0046】
陰イオン;カラム(AS4A−SC(DIONEX製))、溶離液(1.8mM炭酸ナトリウム/1.7mM炭酸水素ナトリウム)、温度(35℃)。
【0047】
陽イオン;カラム(CS12A(DIONEX製))、溶離液(20mMメタンスルホン酸)、温度(35℃)。
【0048】
結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果より、UTC60(ナノ濾過膜1:東レ製)が最も無機塩の阻止率が高いことが示された。
【0051】
(参考例2) ナノ濾過膜のコハク酸透過性評価
超純水10Lにコハク酸(和光純薬工業株式会社製)100g添加して25℃1時間攪拌し、10000ppmコハク酸水溶液を調製した。次いで、参考例1と同じ条件でナノ濾過膜1〜4の透過液を回収した。原水槽1、透過液4に含まれる、コハク酸濃度を、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により以下の条件で分析し、コハク酸の透過率を算出した。
【0052】
カラム:Shim−Pack SPR−H(株式会社島津製作所製)、移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)、反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)、検出方法:電気伝導度、温度:45℃。
【0053】
結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示した結果の通り、コハク酸透過率は、NF99(ナノ濾過膜3;アルファラバル製)が最も高かった。しかしながら、参考例1の結果も考慮すると、UTC60を用いた場合の方が、より高純度で効率良くコハク酸が得られることが示唆された。
【0056】
(実施例1〜21) ナノ濾過膜を用いたコハク酸培養液からの難溶性硫酸塩の除去実験
コハク酸カルシウム塩を蓄積させた発酵液から、難溶性の硫酸カルシウムとして陽イオン成分を除去し、コハク酸溶液を得た。
【0057】
<微生物発酵によるコハク酸塩の生産>
次の方法によりコハク酸塩を発酵法にて製造した。20g/Lのグルコース、10g/Lのポリペプトン、5g/Lの酵母エキス、3g/LのKHPO、1g/LのNaCl、1g/Lの(NHSO、0.2g/LのMgClおよび0.2g/LのCaCl・2H2Oからなる種培養用培地100mLを125mL容三角フラスコに入れ、121℃、2気圧で20分間加熱滅菌した。嫌気グローブボックス内で、30mMのNaCOを1mLと180mMのHSOを0.15mL加え、さらに、0.25g/Lのシステイン・HClと0.25g/LのNaSからなる還元溶液0.5mLを加えた後、アナエロビオスピリラム サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)ATCC53488を接種し、39℃で一晩静置培養した。また、表3に示す発酵培地1Lをミニジャーファメンター(ABLE社製、BMJ型、2L)に調製し、120℃、2気圧で20分間加熱滅菌した。
【0058】
【表3】

【0059】
上記の発酵培地1LにCOガスをスパージャーから10mL/minで通気し、3MのNaCOを10mL加えた後、硫酸溶液でpH6.8に調整した。その後、0.25g/Lのシステイン・HClと0.25g/LのNaSからなる還元溶液0.5mLを加え、上記の種培養液50mLを50mL接種し、攪拌速度200rpm、39℃で培養を行った。培養中は5MのCa(OH)を用いて、pH6.4に調整した。参考例2と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により分析した結果、培養39時間におけるコハク酸の蓄積量は39g、生産速度は0.97g/L/hr、生産収率は0.775g/gであった。この培養液を120℃、20分間の加熱殺菌した後、5000×g、20分遠心分離、上清を回収することで、コハク酸カルシウム含有培養液を得た。これを繰り返し行い、実験に用いた。
【0060】
<硫酸による難溶性カルシウム塩の生成>
コハク酸塩含有培養液(各2L)をpHが1.9(実施例1)2.0(実施例2〜5)、2.2(実施例6〜9)、2.6(実施例10〜16)、4.0(実施例17〜20)になるまで濃硫酸(和光純薬工業株式会社製)を滴下後、1時間25℃で撹拌し、培養液中のコハク酸カルシウムからコハク酸と硫酸カルシウムを生成した。次いで、沈殿した硫酸カルシウムを定性濾紙No.2(アドバンテック株式会社製)にて吸引濾過し、沈殿物を濾別し、濾液2Lを回収した。また、濃硫酸を添加しなかったpH5の培養液(2L)についても分離実験を行った(比較例1)。
【0061】
<ナノ濾過膜による難溶性塩の除去>
次いで、図1に示す、膜濾過装置の原水槽1に上記で得られた濾液2Lを注入した。図2の符号7の90φナノ濾過膜として、前記ナノ濾過膜1〜4をステンレス(SUS316製)製のセルにそれぞれセットし、高圧ポンプ3の圧力をそれぞれ1MPa、3MPa、4MPa、5MPaに調整し、それぞれの圧力における透過液4を回収した。原水槽1、透過液4に含まれる、硫酸イオン、カルシウムイオンの濃度を、参考例1と同様の条件でイオンクロマトグラフィー(DIONEX製)にて測定した。また、コハク酸濃度を、参考例2と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により分析した。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
表4に示すように、すべてのpH、濾過圧力において、硫酸カルシウムが高効率で除去されたことがわかった。また、コハク酸の透過率はpHおよび濾過圧が低い方が高くなっており、濃硫酸を添加しなかった比較例1では、コハク酸カルシウムのカルシウムイオンが遊離されないため、コハク酸の透過率が著しく低下することが示された。尚、上記実施例1〜20において、ナノ濾過膜を新しい膜に取り換えることなく、上記の濾加圧において、硫酸カルシウムが高効率で除去された。
【0064】
(比較例2)定性濾紙を用いたコハク酸塩含有培養液からの難溶性硫酸塩の除去実験
実施例11と同様の方法でコハク酸塩を蓄積させた発酵液を処理し、ナノ濾過膜は使用せず、定性濾紙による沈殿の除去のみを行った。得られたコハク酸溶液の硫酸イオン、カルシウムイオン、コハク酸塩濃度を上記と同様に測定した。その結果を表5に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
表5に示すように、実施例11ではカルシウムイオンが1.3mg/Lしか残存しないのに対し、比較例2では1487mg/Lもの残存が検出された。このことから、ナノ濾過膜を用いることでコハク酸塩含有溶液に含まれる陽イオンの効率的な除去が可能であることが示され、さらにはコハク酸結晶の純度向上につながることが示唆された。
【0067】
(実施例21) 逆浸透膜を用いたコハク酸溶液からの再結晶精製
実施例11(ナノ濾過膜1、pH2.6)と同様の方法を用いてコハク酸溶液10Lを調製した。これを図1に示す膜濾過装置の原水槽1に入れた。図2の符号7の90φ逆浸透膜として、ポリアミド製逆浸透膜(UTC−70、東レ株式会社製)をステンレス(SUS316製)製セルに取付け、高圧ポンプ3の圧力をそれぞれ3MPa、原水温度を35℃に調整して膜濾過を行い、逆浸透膜透過水4を8L除去した。原水槽1の膜濃縮液2Lを回収し、該濃縮液に含まれるコハク酸濃度は参考例2と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により分析した。その結果、コハク酸濃度は107g/Lであった。この濃縮液を10℃に冷却し、コハク酸結晶を析出させた。定性濾紙No.2(アドバンテック株式会社製)にて吸引濾過し、コハク酸結晶を濾別した。得られたコハク酸結晶は、結晶を洗浄するために結晶重量の15倍量のコハク酸水溶液に攪拌し、再度吸引濾過にて回収した。その結果、乾燥結晶量として158gのコハク酸結晶を得た。該コハク酸結晶中のカルシウムイオン濃度を、参考例1と同様の条件でイオンクロマトグラフィー(DIONEX製)にて測定したところ、検出限界(0.5ppm)以下であったことから、本発明により高純度のコハク酸結晶が得られることが示された。さらに、通常濃縮操作に使用されるエバポレーターでは、8Lの水分除去にはおよそ24時間を要するが、上記の逆浸透膜による濃縮操作ではおよそ1時間で濃縮が完了した。このことから本発明により、より効率的なコハク酸の製造が可能となることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の製造方法で用いたナノ濾過膜分離装置の一つの実施の形態を示す概要図である。
【図2】本発明の製造方法で用いたナノ濾過膜分離装置のナノ濾過膜が装着されたセル断面図の一つの実施の形態を示す概要図である。
【符号の説明】
【0069】
1 原水槽
2 ナノ濾過膜が装着されたセル
3 高圧ポンプ
4 膜透過液の流れ
5 膜濃縮液の流れ
6 高圧ポンプにより送液されたコハク酸溶液の流れ
7 ナノ濾過膜
8 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コハク酸塩含有溶液よりコハク酸を分離することによるコハク酸の製造方法であって、該コハク酸塩含有液に酸性物質を添加して陽イオン成分と難溶性塩を形成させた溶液をナノ濾過膜に通じて濾過してコハク酸含有液を得る工程を含む、コハク酸の製造方法。
【請求項2】
前記コハク酸含有液を逆浸透膜により濃縮し、該濃縮液からコハク酸を再結晶させる工程を含む、請求項1に記載のコハク酸の製造方法。
【請求項3】
前記コハク酸塩がコハク酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩またはアンモニウム塩である、請求項1または2に記載のコハク酸の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ濾過膜の機能層がポリアミドである、請求項1〜3のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミドが架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする請求項4に記載のコハク酸の製造方法。
【化1】

(式中、Rは−Hまたは−CH、nは0から3までの整数を表す。)
【請求項6】
前記工程における酸性物質を添加した後の溶液のpHが1.0以上6.0以下である、請求項1から5のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70474(P2010−70474A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238169(P2008−238169)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】