説明

コハク酸ソリフェナシン含有組成物

医薬品原体として用いることができる、不純物量の低減したコハク酸ソリフェナシン含有組成物を提供する。本発明のコハク酸ソリフェナシン含有組成物は、従来知られているソリフェナシンの酸付加塩を含有する組成物に比して、特にその光学異性体の含量が低減されており、コハク酸ソリフェナシンを含有する医薬の製造に資するものである。また、本発明の製造法によれば、上記のコハク酸ソリフェナシン含有組成物を簡便に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、殊にムスカリンM3受容体アンタゴニスト、より具体的には、過活動膀胱に伴う頻尿、尿失禁等の泌尿器系疾患治療剤等の医薬品原体として用いうる、不純物含量を低減させたコハク酸ソリフェナシン含有組成物、及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の原料となる有効成分の医薬品原体は、純度が高いことが要求される。例えば、2000年2月17日判決の東京高裁平成9年(行ケ)第302号事件において、「診断薬、治療薬は、たとえ微量であっても許容限度を超える量の不純物を含むと、診断や治療に好ましくない影響を及ぼす可能性を否定することができないのは、本願発明の属する技術分野における技術常識に属することは自明のことである。」と判示され、即ち、医薬品においては、できるだけ不純物を含まない、高純度の医薬品原体を得ることが重要であることは、当該分野における技術常識となっている。
そこで、通常、医薬品原体の製造においては、できるだけ不純物を含まない、高純度の医薬品原体を得るために、化学合成により製造される医薬品の有効成分は、各種クロマトグラフィーによる精製工程、蒸留工程、及び/又は結晶化工程、並びにそれに続く1乃至数回の再結晶工程等の精製工程を繰り返すことによりその純度を高められて、医薬品原体として用いられる。
【0003】
また、医薬品製剤の不純物に関しては、日米EU医薬品規制調和国際会議での合意に基づくガイドラインが設けられている(例えば、平成14年12月16日付、医薬審発第1216001号、「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドラインの改訂について」に別添された、「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン」を参照のこと。)。
【0004】
特に、過活動膀胱に伴う頻尿及び尿失禁治療剤は、過活動膀胱そのものを治療する薬剤として用いられるのではなく、その症状である頻尿及び尿失禁を抑制する薬剤であるため、長期的に投与される薬剤であることが予想される。従って、頓服薬のように一時的に投与される薬剤と異なり、特に高い純度が要求されることは容易に想像できる。
【0005】
一方、ソリフェナシンの化学名は、(1S,3’R)-キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシラートであり、以下の化学構造を有する。
【化1】

ソリフェナシン又はその塩は、ムスカリンM3受容体アンタゴニストとして知られる化合物であり(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)、過活動膀胱に伴う頻尿及び尿失禁の治療剤として販売されている。また、間質性膀胱炎(特許文献2)、毛様体筋の緊張緩和(特許文献3)、過敏性腸症候群(非特許文献4)等への有効性も報告されている。
【0006】
ソリフェナシン又はその塩は、2つの不斉炭素を有するため、これらの光学異性体を除去し、ソリフェナシン又はその塩を含有する医薬品原体を高純度で製造することは容易なことではないが、一方で医薬品原体として用いるためには非常に重要なことである。
【0007】
ところが、上記の技術文献のうち、特許文献1にソリフェナシン、塩酸ソリフェナシン、シュウ酸ソリフェナシンの詳細な製造法が記載されているのみで、コハク酸ソリフェナシンを含有する医薬組成物についての詳細な製造法若しくは精製法について示唆、言及するものはなく、ましてやその組成について示唆、言及するものは一切ない。
【0008】
また、コハク酸ソリフェナシンの粒径制御を行うことにより、製剤化及び原薬設備におけるハンドリングに大きな影響を及ぼす流動性を改善することに関する晶析条件の検討についての報告があるが、この報告は流動性を改善するために晶析条件を検討したものであり、コハク酸ソリフェナシンを含有する医薬組成物の組成、及び/又は不純物の制御に関する示唆、言及は一切されていない(非特許文献5)。
【0009】
【特許文献1】欧州特許第801067号明細書
【特許文献2】国際公開第WO 2003/6019号パンフレット
【特許文献3】日本特許出願公開特開2002-104968号公開公報
【非特許文献1】カレント・オピニオン・イン・セントラル・アンド・ペリフェラル・ナーバス・システム・インベスティゲーショナル・ドラッグズ(Current Opinion in Central & Peripheral Nervous System Investigational Drugs)、2000年、第2巻、第3号、p.321-325
【非特許文献2】ドラッグズ・オブ・ザ・フューチャー(Drugs of the Future)、1999年、第24巻、第8号、p.871-874
【非特許文献3】ノーニン・シュミーデベルグズ・アーカイブズ・オブ・ファーマコロジー(Naunyn-Schmiedeberg’s Archives of Pharmacology)、2002年、第366巻、第2号、p.97-103
【非特許文献4】ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Japanese Journal of Pharmacology)、2001年、第86巻、第3号、p.281-288
【非特許文献5】日本プロセス化学会創設記念シンポジウム講演要旨集(2002年7月4日〜5日開催)、p.85-86
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者等は、化学合成により製造されるソリフェナシン含有組成物に、下記式で示される化合物A乃至化合物Eが主要な不純物として含有され、ソリフェナシン含有組成物の純度を低下させていることを見出した。
【化2】

しかしながら、そのソリフェナシン含有組成物、又はそれを造塩することにより得られるソリフェナシン酸付加塩含有組成物を医薬品原体として用いるために、不純物であるこれらの化合物又はこれらの酸付加塩をできる限り除去することが重要であることを見出したものの、これらの化合物のうち、特に化合物A、化合物B及び化合物Cはソリフェナシンの光学異性体であり、他の化合物と比較してその除去が困難であった。
【0011】
特に、ソリフェナシン又はその塩として、その製造法が詳細に知られている塩酸ソリフェナシン、シュウ酸ソリフェナシンについては、後述する参考例2又は参考例4に示すように、ソリフェナシンに対して対応する酸を作用させ、その反応溶媒を留去して得られる、それぞれのソリフェナシン酸付加塩を適切な溶媒で結晶化しても、化合物A及び化合物Bを、それぞれその組成物中0.85%及び0.50%以上含有することを見出した。即ち、塩酸ソリフェナシン含有組成物、シュウ酸ソリフェナシン含有組成物を医薬品原体として用いるためには、再結晶工程等のさらなる複数回の精製工程が必須となることを見出した。
【0012】
従って、化学合成により製造されるソリフェナシンを医薬品原体として用いるために、ソリフェナシン又はその酸付加塩を含有するより不純物の少ない組成物を、簡便に製造する方法の開発が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、不純物の少ないソリフェナシン又はその酸付加塩を含有する組成物の製造法、及びその精製法について鋭意研究した結果、化学合成により製造されたソリフェナシン含有組成物にコハク酸を作用させて、そのコハク酸塩として結晶化することにより、塩酸若しくはシュウ酸を用いた場合には見られない、非常に不純物の少ないソリフェナシン酸付加塩を含有した組成物を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明によれば、式(I)
【化3】

で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.8%以下、より好ましくは0.1%以下で含有することを特徴とする、コハク酸ソリフェナシン含有組成物、とりわけ医薬組成物が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、これらのソリフェナシン含有組成物の製造法として、ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物、又はその塩の溶媒和物を含む組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることを含む製造法;ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる製造法;式(III)
【化4】

[式中、Rは低級アルキルを示す。]
で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを反応させて製造された、ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる製造法;あるいは、上記式(III)で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを、アルカリ金属低級アルコキシド存在下で反応させて製造された、ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる製造法が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、上記の製造法により製造された、上記式(I)で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.8%以下、より好ましくは0.1%以下で含有することを特徴とする、コハク酸ソリフェナシン含有組成物、ことに医薬組成物が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、式(II)
【化5】

で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.4%以下、より好ましくは0.2%以下で含有することを特徴とする、コハク酸ソリフェナシン含有組成物、とりわけ医薬組成物が提供される。
【0018】
また、これらの製造法として、ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物、又はその塩の溶媒和物を含む組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることを含む製造法;ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる製造法;式(III)
【化6】

[式中、Rは低級アルキルを示す。]
で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを反応させて製造された、ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる製造法;あるいは、上記式(III)で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを、アルカリ金属低級アルコキシド存在下で反応させて製造された、ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる製造法が提供される。
【0019】
さらに、本発明によれば、上記の製造法により製造された、上記式(II)で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.4%以下、より好ましくは0.2%以下で含有することを特徴とする、コハク酸ソリフェナシン含有組成物、ことに医薬組成物が提供される。
【発明の効果】
【0020】
塩酸ソリフェナシン含有組成物及びシュウ酸ソリフェナシン含有組成物に関しては、上述の特許文献1にその具体的製造方法が示され、これに従ってコハク酸ソリフェナシン含有組成物も製造することができる。しかしながら、上記実施例に示すように、塩酸ソリフェナシン含有組成物、及びシュウ酸ソリフェナシン含有組成物は、造塩及び結晶化工程を経ても、ソリフェナシンに対して上述の化合物Aを0.85%以上、化合物Bを0.50%以上含有する。
一方、本発明のコハク酸ソリフェナシン含有組成物は、造塩工程後、その反応液を冷却、析出した結晶を濾取するのみで、ソリフェナシンに対して上述の化合物Aを0.1%以下、化合物Bを0.2%以下しか含有しない。
【0021】
従って、塩酸ソリフェナシン含有組成物及びシュウ酸ソリフェナシン含有組成物では、その組成物を医薬品として用いるため、さらなる複数回の再結晶工程を必要とするところ、コハク酸ソリフェナシン含有組成物は、造塩工程後、その反応液を冷却、析出した結晶を濾取するのみで、医薬品として用いうる程度の精製度を有する組成物として得られる。
【0022】
即ち、コハク酸を用いたソリフェナシン酸付加塩含有組成物の製造により、上述の不純物である化合物Aを0.8%以下、好ましくは0.1%以下で、化合物Bを0.4%以下、好ましくは0.2%以下で含有するソリフェナシン酸付加塩含有組成物を簡便に得られることは極めて意外であり、その組成物自体も当業者が想到し得ない組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】参考例1により得られるソリフェナシン含有酢酸エチル溶液の、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物をHPLCにて測定したチャートである。保持時間約32.5分のピークがソリフェナシンを、保持時間約17.9分、約21.5分、約19.0分のピークが、それぞれ化合物A、化合物B、化合物Cを示す。
【図2】参考例2により得られる塩酸ソリフェナシン含有組成物の、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物をHPLCにて測定したチャートである。保持時間約32.3分のピークがソリフェナシンを、保持時間約17.4分、約21.1分、約18.8分のピークが、それぞれ化合物A、化合物B、化合物Cを示す。
【図3】参考例3により得られる塩酸ソリフェナシン含有組成物の、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物をHPLCにて測定したチャートである。保持時間約32.1分のピークがソリフェナシンを、保持時間約17.4分のピークが化合物Aを示す。
【図4】参考例4により得られるシュウ酸ソリフェナシン含有組成物の、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物をHPLCにて測定したチャートである。保持時間約32.4分のピークがソリフェナシンを、保持時間約17.4分、約21.1分のピークが、それぞれ化合物A、化合物Bを示す。
【図5】実施例2により得られるコハク酸ソリフェナシン含有組成物の、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物をHPLCにて測定したチャートである。保持時間約32.5分のピークがソリフェナシンを、保持時間約18.0分、約21.5分のピークが、それぞれ化合物A、化合物Bを示す。
【図6】実施例3により得られるコハク酸ソリフェナシン含有組成物の、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物をHPLCにて測定したチャートである。保持時間約35.8分のピークがソリフェナシンを、保持時間約23.5分のピークが、化合物Bを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書において、「低級アルキル」とは、C1-6の鎖状若しくは分枝状のアルキルを意味し、具体的には例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル若しくはヘキシル、又はイソプロピル若しくはtert-ブチル等のこれらの構造異性体であり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルであり、特に好ましくはエチルである。
【0025】
「アルカリ金属低級アルコキシド」とは、C1-6の鎖状若しくは分枝状のアルコールとアルカリ金属との塩を示し、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好ましくはナトリウム若しくはカリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。「アルカリ金属アルコキシド」としては、具体的には例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド等を挙げることができ、好ましくは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシドであり、さらに好ましくは、ナトリウムエトキシドである。
【0026】
「造塩溶媒」とは、ソリフェナシンのごとき塩基性物質を、その酸付加塩へ導く反応において常用される溶媒であればいずれでもよく、有機溶媒、水、若しくはこれらの混合物を挙げることができる。より具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;アセトニトリル;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類;水等、又はこれらから選択される任意の種類の溶媒の混合溶媒を挙げることができる。好ましくは、エーテル類、エステル類及びアルコール類からなる群より選択される1以上の溶媒若しくは混合溶媒であり、より好ましくは、アルコール類及びエステル類の混合溶媒であり、その中でも、エタノールと酢酸エチルの混合溶媒が特に好ましい。
【0027】
「ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物、又はその塩の溶媒和物」における「その塩」とは、ソリフェナシンと製薬学的に許容される酸との塩を示し、具体的には、ソリフェナシンと、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、シュウ酸、マロン酸等の有機酸;の酸付加塩を挙げることができる。なお、「ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物、又はその塩の溶媒和物」として、好ましくはソリフェナシンである。
【0028】
「反応粗製組成物」とは、ソリフェナシンを製造する工程の反応終了後、分液操作、抽出操作等の後処理を行って得られるソリフェナシン含有組成物を示し、このソリフェナシン含有組成物に対し、各種クロマトグラフィーによる精製操作、蒸留操作、結晶化操作、及び/又は再結晶操作等の精製操作を行って得られるソリフェナシン含有組成物は含まれない。また、このような反応粗製組成物を製造する際に用いられる、ソリフェナシンを製造する工程の反応としては、具体的には例えば、式(III)
【化7】

[式中、Rは低級アルキルを示す。]
で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを反応させる工程を挙げることができるが、この工程で用いられる式(III)の化合物及び(R)-キヌクリジン-3-オールは、100%の光学純度を有する化合物の他、その光学異性体を5%、好ましくは3%、さらに好ましくは1%以下で含有する化合物であってもよい。
【0029】
また、本明細書において示される含有率は、いずれもコハク酸ソリフェナシンを100%とした場合の、HPLC分析によるその面積の割合を示しており、HPLC分析の条件は以下に示す条件、若しくはそれに準じた条件で測定された含有率である。
【0030】
また、本発明は、コハク酸ソリフェナシンを構成する原子の一部又は全部を放射性同位元素で置き換えた化合物、いわゆるコハク酸ソリフェナシンラベル体を含有する組成物をも包含する。
【0031】
本発明の組成物は、以下に示される製造法、若しくはその変法により製造することができる。
上記式(III)で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールの縮合反応のごとき、ソリフェナシン製造の最終工程の反応溶液(造塩溶媒で反応をも行うことが望ましい)、又はソリフェナシン製造の最終工程後、抽出、洗浄及び/又は溶媒除去等の後処理を行って得られる造塩溶媒溶液を、あるいは、これらの溶液にさらに同種及び/若しくは異種の造塩溶媒を添加した溶液に対し、コハク酸を添加し溶解させる。
【0032】
この際、コハク酸はソリフェナシン製造の最終工程から算出される理論量の0.5〜2.0等量、好ましくは0.7〜1.2等量、さらに好ましくは0.8〜1.0等量使用することができる。また、コハク酸を添加し溶解させる際には、加熱して溶解させることもできる。好ましい造塩溶媒としては、エーテル類、エステル類、アルコール類を挙げることができ、これらの溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0033】
上記で得られたコハク酸ソリフェナシン含有造塩溶媒溶液を冷却することにより、本発明のコハク酸ソリフェナシン含有組成物が析出する。この析出した組成物は、常法により濾取し、適切な溶媒を用いて洗浄し、乾燥することにより本発明のコハク酸ソリフェナシン含有組成物を得ることができる。
この際、その工程の規模にもよるが、冷却速度は急激でない方が望ましい。洗浄溶媒は、コハク酸ソリフェナシンに対する溶解度が大きくない溶媒であればいずれも使用できるが、好ましくはエーテル類、エステル類、アルコール類、又はこれらの溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒の混合溶媒である。乾燥は、加熱下、減圧下、若しくは加熱減圧下に行うこともできる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例において使用される原料化合物、並びに、比較例としての塩酸ソリフェナシン含有組成物及びシュウ酸ソリフェナシン含有組成物の製造法を参考例として示す。
なお、下記参考例又は実施例で得られたそれぞれの組成物の不純物組成は、以下のように測定した。
【0035】
(各組成物における不純物定量法)
1.化合物A、化合物B及び化合物Cの定量法
下記参考例若しくは実施例で得られた組成物0.25 gを、ヘキサン/2-プロパノールの混液(1:1)に溶解させ、全量を100 mLとして試料溶液とした。この試料溶液1 mLに、さらにヘキサン/2-プロパノールの混液(1:1)を加え、全量を100 mLとして標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10 μLを、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、それぞれの溶液の各々のピーク面積を自動積分法により測定し、次の式により不純物量を算出した。
各々の不純物の含有率(%) = ATi / AS
[式中、ATiは試料溶液の各々の不純物のピーク面積、ASは標準溶液のソリフェナシンのピーク面積を示す。]
<試験条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220 nm)
カラム:CHIRALPAK AD-H(250 mm × 4.6 mm ID, Daicel Chemical社製)
カラム温度:20 ℃
移動相:ヘキサン/2-プロパノール/ジエチルアミン混液(800:200:1)
流量:ソリフェナシンの保持時間が約35分になるように調整(約1 mL/分)
【0036】
2.化合物Dの定量法
下記参考例若しくは実施例で得られた組成物0.05 gを、リン酸水素二カリウム8.7 gを水に溶かして1000 mLとした液にリン酸を加えてpHを6.0に調整した液700 mLにアセトニトリル300 mLを加えた液(液P)に溶解させ、全量を100 mLとして試料溶液とした。この試料溶液1 mLに、さらに液Pを加え、全量を100 mLとして標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10 μLを、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、それぞれの溶液の各々のピーク面積を自動積分法により測定し、次の式により不純物量を算出した。
各々の不純物の含有率(%) = ADTi / ADS
[式中、ADTiは試料溶液の各々の不純物のピーク面積、ADSは標準溶液のソリフェナシンのピーク面積を示す。]
<試験条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210 nm)
カラム:Develosil ODS-UG-5(150 mm × 4.6 mm ID, Nomura Chemical社製)又は同等のもの
カラム温度:40 ℃
移動相:液P
流量:ソリフェナシンの保持時間が約20分になるように調整(約1 mL/分)
【0037】
3.化合物Eの定量法
下記参考例若しくは実施例で得られた組成物0.05 gを、液Pに溶解させ、全量を100 mLとして試料溶液とした。この試料溶液1 mLに、さらに液Pを加え、全量を100 mLとして標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10 μLを、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、それぞれの溶液の各々のピーク面積を自動積分法により測定し、次の式により不純物量を算出した。
各々の不純物の含有率(%) = AETi / AES
[式中、AETiは試料溶液の各々の不純物のピーク面積、AESは標準溶液のソリフェナシンのピーク面積を示す。]
<試験条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210 nm)
カラム:Develosil ODS-UG-5(150 mm × 4.6 mm ID, Nomura Chemical社製)又は同等のもの
カラム温度:40 ℃
移動相:リン酸水素二カリウム8.7 gを水に溶かして1000 mLとした液にリン酸を加えてpHを6.0に調整した液500 mLにアセトニトリル500 mLを加えた液
流量:ソリフェナシンの保持時間が約3分になるように調整(約1 mL/分)
なお、移動相として塩基性溶媒若しくはリン酸緩衝液を採用しているため、検出は全て付加塩が除去された塩基性物質として検出される。
【0038】
参考例1
ソリフェナシンの製造
(S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン120 kg及びトルエン600 Lの混合物に、水360 L及び炭酸カリウム83.2 kgの混合物を加え、10 ℃に冷却後、クロロギ酸エチル65.3 kgを滴下して加え、25 ℃で2時間攪拌した。水層を分離し、有機層を水360 Lで洗浄した。溶媒を減圧下290 L留去後、さらにトルエン1320 L、N,N-ジメチルホルムアミド81 Lを加え、(R)-キヌクリジン-3-オール87.5 kg及びナトリウムエトキシド7.8 kgを室温にて加え、溶媒を留去しながら8時間加熱した。この反応溶液にトルエン480 L、水400 Lを加え、室温に冷却後、水層を分離し、有機層を水400 Lで洗浄した。さらにこの有機層を、濃塩酸77.4 kg、水440 Lで抽出し、得られた水層に、炭酸カリウム126.8 kg及び水320 Lの混合物を加え、酢酸エチル810 Lで抽出した。この有機層を水160 Lで洗浄後、エタノール160 L、酢酸エチル240 Lを加えた。この溶液の溶媒を、常圧蒸留により820 L留去し、(1S,3’R)-キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシラート(以下、「ソリフェナシン」という。)を含有する酢酸エチル溶液527.8 kgを得た。
この溶液における不純物の組成を、ソリフェナシンを100%とした場合の含有率として表1に、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物組成の測定データを図1に示す。
【0039】
参考例2
塩酸ソリフェナシン含有組成物の製造
参考例1で得られたソリフェナシンを含有する酢酸エチル溶液100 mLを減圧下濃縮し、33.9 gの油状物を得た。この油状物13.53 gにエタノール140 mL、4M塩酸−酢酸エチル溶液10 mLを加え、溶媒を減圧下留去した。得られた残さにアセトニトリル56 mL、エチルエーテル150 mLを加えて室温で結晶化し、塩酸ソリフェナシン含有組成物8.637 gを得た。
この塩酸ソリフェナシン含有組成物における不純物の組成を、ソリフェナシンを100%とした場合の含有率として表1に、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物組成の測定データを図2に示す。
【0040】
参考例3
参考例2で製造された塩酸ソリフェナシン含有組成物の精製
参考例2で得られた塩酸ソリフェナシン含有組成物5.00 gに、アセトニトリル50 mLを加えて加熱溶解させた。この溶液に、エチルエーテル78 mLを加え、25 ℃に冷却して、析出した結晶を濾取し、塩酸ソリフェナシン含有組成物4.025 gを無色結晶として得た。
この塩酸ソリフェナシン含有組成物における不純物の組成を、ソリフェナシンを100%とした場合の含有率として表1に、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物組成の測定データを図3に示す。
【0041】
参考例4
シュウ酸ソリフェナシン含有組成物の製造
参考例1で得られたソリフェナシンを含有する酢酸エチル溶液100 mLを減圧下濃縮し、33.9 gの油状物を得た。この油状物11.00 gに、室温でエタノール100 mL、シュウ酸2.73 gを加えて溶解し、溶媒を減圧下留去した。得られた油状物にイソプロパノール50 mL、イソプロピルエーテル80 mLを加え、加熱溶解させた。この溶液を25 ℃に冷却し、析出した結晶を濾取し、シュウ酸ソリフェナシン含有組成物8.720 gを無色結晶として得た。
このシュウ酸ソリフェナシン含有組成物における不純物の組成を、ソリフェナシンを100%とした場合の含有率として表1に、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物組成の測定データを図4に示す。
【0042】
実施例1
コハク酸ソリフェナシン種晶の製造
(S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン30.0 kg及びトルエン300 Lの混合物に、水60 L、続いて炭酸カリウム23.8 kgを加え、10 ℃に冷却後、クロロギ酸エチル18.7 kgを滴下して加え、1時間攪拌した。水層を分離し、有機層を水150 Lで洗浄した。さらに有機層を水150 Lで洗浄し、溶媒を減圧下留去した。
得られた残さに、トルエン360 L、N,N-ジメチルホルムアミド40 Lを加え、(R)-キヌクリジン-3-オール21.6 kg及びナトリウムエトキシド2.89 kgを室温にて加え、溶媒を留去しながら8時間加熱した。この反応溶液に水200 Lを加え、室温に冷却後、水層を分離し、有機層を水200 Lで洗浄した。さらに、この有機層を濃塩酸47.6 kg、水360 Lで抽出し、得られた水層に、炭酸カリウム72.5 kg及び水400 Lの混合物を加え、酢酸エチル400 Lで抽出した。この有機層を水100 Lで洗浄後、溶媒を留去し、得られた残さに酢酸エチル450 L、エタノール90 L、コハク酸14.6 kgを加え、加熱溶解させた。この溶液を0 ℃に冷却し、析出した結晶を濾取し、酢酸エチル80 Lで洗浄後、減圧下乾燥し、コハク酸ソリフェナシン46.40 kgを得た。
【0043】
実施例2
コハク酸ソリフェナシン含有組成物の製造(1)
参考例1で得られたソリフェナシンを含有する酢酸エチル溶液261.0 kgに、エタノール140 L、酢酸エチル120 L、コハク酸31.1 kgを加えて加熱溶解させた。エタノール12 L、酢酸エチル28 Lを加えて50 ℃まで冷却し、実施例1と同様に製造したコハク酸ソリフェナシン9.11 gを加えた。この混合物を0 ℃に冷却し、析出した結晶を濾取し、得られた結晶を酢酸エチル190 Lで洗浄後、減圧下乾燥し、コハク酸ソリフェナシン含有組成物87.82 kgを得た。
このコハク酸ソリフェナシン含有組成物における不純物の組成を、ソリフェナシンを100%とした場合の含有率として表1に、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物組成の測定データを図5に示す。
【0044】
実施例3
コハク酸ソリフェナシン含有組成物の製造(2)
参考例1で得られたソリフェナシンを含有する酢酸エチル溶液180 mLに、エタノール91 mL、酢酸エチル78 mL、コハク酸20.9 gを加えて加熱溶解させた。エタノール8 mL、酢酸エチル18 mLを加えて50 ℃まで冷却し、実施例1と同様に製造したコハク酸ソリフェナシン0.02 gを加えた。この混合物を30 ℃に冷却し、再度50 ℃まで加熱し、50 ℃で2時間保持した後、5時間かけて0 ℃に冷却した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を酢酸エチル100 mLで洗浄後、減圧下乾燥し、コハク酸ソリフェナシン含有組成物59.135 gを得た。
このコハク酸ソリフェナシン含有組成物における不純物の組成を、ソリフェナシンを100%とした場合の含有率として表1に、化合物A、化合物B及び化合物Cに係る不純物組成の測定データを図6に示す。
【0045】
【表1】

表中、「ND」とは、検出限界以下であることを示し、化合物A、化合物B及び化合物Cについては、おおよそ0.05%以下、化合物D及び化合物Eについては、おおよそ0.01%以下である。また、表中の化合物A乃至化合物Eは以下の構造を有する化合物である。
【0046】
【化8】

参考例2に示す塩酸によるソリフェナシン酸付加塩含有組成物の製造、及び参考例4に示すシュウ酸によるソリフェナシン酸付加塩含有組成物の製造においては、化合物A乃至化合物Eのそれぞれについて精製効果が見られたものの、ソリフェナシンに対して、化合物Aについては0.85%以上、化合物Bについては0.5%以上含有していた。
その一方、実施例2及び実施例3に示すコハク酸によるソリフェナシン酸付加塩含有組成物の製造においては、化合物A乃至化合物Eのそれぞれについて精製効果が見られ、さらに、上記参考例では見られなかった化合物A及び化合物Bの精製効果についても格段に優れた結果が得られた。
また、参考例3に示す再結晶を施した塩酸ソリフェナシン含有組成物においては、再結晶工程を追加して実施したにもかかわらず、化合物Aについては、ソリフェナシンに対し0.46%含有していた。
【0047】
以上の結果から、ソリフェナシン酸付加塩含有組成物のうち、コハク酸ソリフェナシン含有組成物のみが、純度の高いソリフェナシン又はその塩を含有する組成物として簡便に製造されうることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のコハク酸ソリフェナシン含有組成物は、従来知られているソリフェナシンの酸付加塩を含有する組成物に比して、不純物含量が低減されており、コハク酸ソリフェナシンを含有する医薬の製造に利用することができる。
また、本発明の製造法によれば、上記のようなコハク酸ソリフェナシン含有組成物を簡便に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化9】

で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.8%以下で含有することを特徴とする、コハク酸ソリフェナシン含有組成物。
【請求項2】
請求の範囲1記載の式(I)で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.1%以下で含有することを特徴とする、請求の範囲1記載のコハク酸ソリフェナシン含有組成物。
【請求項3】
医薬組成物である、請求の範囲1及び2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物、又はその塩の溶媒和物を含む組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることを含む、請求の範囲1、2及び3のいずれか1項に記載の組成物の製造法。
【請求項5】
ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる、請求項1、2及び3のいずれか1項に記載の組成物の製造法。
【請求項6】
反応粗製組成物が、式(III)
【化10】

[式中、Rは低級アルキルを示す。]
で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを反応させて製造された反応粗製組成物である、請求の範囲5の製造法。
【請求項7】
反応粗製組成物が、請求の範囲6記載の式(III)で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを、アルカリ金属低級アルコキシド存在下で反応させて製造された反応粗製組成物である、請求項6記載の製造法。
【請求項8】
造塩溶媒がエーテル類、エステル類及びアルコール類からなる群より選択される1以上の溶媒若しくは混合溶媒である、請求の範囲4、5、6及び7のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
請求の範囲4、5、6、7及び8のいずれか1項に記載の製造法により製造された、請求項1、2及び3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
式(II)
【化11】

で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.4%以下で含有することを特徴とする、コハク酸ソリフェナシン含有組成物。
【請求項11】
請求の範囲10記載の式(II)で示される化合物を、コハク酸ソリフェナシンに対して0.2%以下で含有することを特徴とする、請求の範囲10記載のコハク酸ソリフェナシン含有組成物。
【請求項12】
医薬組成物である、請求の範囲10及び11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物、又はその塩の溶媒和物を含む組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることを含む、請求の範囲10、11及び12のいずれか1項に記載の組成物の製造法。
【請求項14】
ソリフェナシン、その塩、その溶媒和物又はその塩の溶媒和物を含有する反応粗製組成物に対し、造塩溶媒中コハク酸を加えてコハク酸ソリフェナシン含有溶液とし、その溶液中コハク酸ソリフェナシン含有組成物を析出させることによる、請求項10、11及び12のいずれか1項に記載の組成物の製造法。
【請求項15】
反応粗製組成物が、式(III)
【化12】

[式中、Rは低級アルキルを示す。]
で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを反応させて製造された反応粗製組成物である、請求の範囲14の製造法。
【請求項16】
反応粗製組成物が、請求の範囲15記載の式(III)で示される化合物と(R)-キヌクリジン-3-オールとを、アルカリ金属低級アルコキシド存在下で反応させて製造された反応粗製組成物である、請求項15記載の製造法。
【請求項17】
造塩溶媒がエーテル類、エステル類及びアルコール類からなる群より選択される1以上の溶媒若しくは混合溶媒である、請求の範囲13、14、15及び16のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項18】
請求の範囲13、14、15、16及び17のいずれか1項に記載の製造法により製造された、請求項10、11及び12のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/075474
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517762(P2005−517762)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001747
【国際出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】