説明

コラーゲン含有飲食品の呈味改善方法

【課題】 コラーゲン含有飲食品の不快な呈味を改善すること。
【解決手段】 本発明者らは、上記の課題を解決するための手段を鋭意検討した結果、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)を添加することにより、コラーゲン独特の不快な呈味が著しく改善されることを見出した。すなわち、コラーゲン含有飲食品に、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)を添加することにより、呈味の改善されたコラーゲン含有飲食品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料を添加することによる、コラーゲン含有飲食品の呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは皮膚や骨、血管などに多く含まれるタンパク質の一種である。コラーゲンは美容への効果や関節疾患に伴う症状の緩和作用があると言われており、健康食品として高い需要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
健康食品に用いられるコラーゲンとしては、豚由来または魚由来のものが一般的である。しかし、これらのコラーゲンを含有する飲食品には呈味が好ましくないという問題があった。
【0004】
コラーゲン独特の不快な呈味を改善するための手段として、例えば特許文献1のようにスクラロースを添加することで不快臭・不快味をマスキングする方法や、特許文献2のようにエチルオクタノエートを添加することで風味を改善する方法、特許文献3のようにフェニルエチルメチルエーテルを添加することでコラーゲン独特の異味・異臭を改善する方法などが挙げられる。
【特許文献1】WO00/24273号公報
【特許文献2】特開2006−197856号公報
【特許文献3】特開2008−167672号公報
【0005】
しかしながら、これらの方法によってコラーゲン含有飲食品の呈味はある程度改善されるものの、その改善の度合いは必ずしも十分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するための手段を鋭意検討した結果、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料を添加することにより、コラーゲン独特の不快な呈味が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料を添加することにより、コラーゲン含有飲食品の呈味改善を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0009】
本発明において、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料とは、市場に流通している難消化性デキストリンを主成分とする原料のうち、食物繊維含量を分析した結果、全体重量の85〜95%が難消化性デキストリンに由来する食物繊維である原料のことである。
【0010】
食物繊維含量の分析方法としては、酵素−HPLC法を用いる。具体的には、まず分析サンプルを酵素(α−アミラーゼ及びタンパク分解酵素)によって処理し、炭水化物及びタンパク質の消化を行なう。次にイオン交換樹脂を充填したカラムに通し、無機塩類や有機酸等のイオン性不純物質を除去する。その後、エバポレーターにて溶液を濃縮し、フィルターでろ過して検液を作成する。検液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析し、食物繊維含量を求める。
【0011】
本発明に用いられる難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料としては、通常入手可能な原料であれば特に制限されるものではないが、ファイバーソル2(松谷化学工業株式会社製)を用いることが特に好ましい。
【0012】
本発明に用いられる難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料の配合量は、特に制限されるものではないが、コラーゲン1重量部に対し0.05重量部以上配合するのが特に好ましい。
【0013】
本発明に用いられるコラーゲンとしては、特に制限されるものではなく、通常入手可能なコラーゲンであれば、豚由来、魚由来、またはその他の動物由来であっても良い。
【0014】
本発明に用いられる水溶性ビタミンとしては、ビタミンB群に属するビタミンまたはビタミンCが挙げられる。
【0015】
本発明に用いられるビタミンB群に属するビタミンとしては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、若しくはビオチンまたはそれらの誘導体が挙げられる。中でもビタミンB2またはその誘導体が好ましい。
【0016】
本発明に用いられるビタミンCとしては、ビタミンCまたはその誘導体であれば特に制限されるものではなく、通常入手可能なビタミンCまたはその誘導体が用いられる。
【0017】
本発明の飲食品は、食品製造時にコラーゲン及び難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料を食品材料に配合することにより製造される。例えば、パン、チューインガム、クッキー、チョコレート、シリアル等の固形食品、ジャム、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー等のジャム状、クリーム状またはゲル状食品、青汁、ジュース、コーヒー、ココア、茶等の飲料、粉末飲料等のあらゆる食品形態にすることが可能である。また、調味料、食品添加物等に配合することもできる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0019】
(調製例)
表1に記載の処方に従い試験例1〜8及び比較例1〜3をそれぞれ100gずつ調整した。なお、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料としてはファイバーソル2(松谷化学工業株式会社製)を用いた。難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の38〜45%を占める食物繊維を主成分とする原料としては、パインファイバーBi(松谷化学工業株式会社製)を用いた。
【0020】
【表1】

【0021】
(実施例1)
試験例1〜3及び比較例1を、健常な被験者5人に処方内容が分からない状態で摂取してもらった。被験者には摂取した各サンプルについて、呈味、清涼感の強さ、喉越し、舌触り、後味の良さ、及び色調の好ましさの6項目について評価してもらった。なお、各サンプルの摂取量は、評価が出来る量を摂取すれば良いとし、サンプル摂取毎に水で口腔洗浄を行ってもらった。
【0022】
(評価項目の評点)
比較例1を基準として各試験例の評価を行った。評価は3から−3までの7段階で行いアンケートに記入させた。各評点の基準は以下の通りである。
3:比較例1と比べ、非常に好ましい
2:比較例1と比べ、好ましい
1:比較例1と比べ、やや好ましい
0:比較例1と比べ、変わらない
−1:比較例1と比べ、やや好ましくない
−2:比較例1と比べ、好ましくない
−3:比較例1と比べ、非常に好ましくない
【0023】
アンケートによる評点の結果(平均値)を表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
表2の結果から、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)を添加した場合(試験例1)は、呈味、清涼感の強さ、及び後味の良さについて大きく改善されることが分かった。一方、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の38〜45%を占める食物繊維を主成分とする原料(パインファイバーBi)を添加した場合(試験例2)は、やや改善の傾向は認められるものの大きく改善はされなかった。また、デキストリンを添加した場合(試験例3)は、いずれの項目についても影響を与えないことが確認された。
【0026】
実施例1の結果より、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)を添加した場合には呈味、清涼感の強さ、及び後味の良さについて大きく改善されることが分かった。そこで、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)の有効量を検討するため、以下の試験を行った。
【0027】
(実施例2)
試験例1、4、5及び比較例2を、健常な被験者5人に処方内容が分からない状態でサンプルを摂取してもらった。被験者には摂取したサンプルについて、呈味、清涼感の強さ、喉越し、舌触り、後味の良さ、及び色調の好ましさの6項目について評価してもらった。なお、各サンプルの摂取量は、評価が出来る量を摂取すれば良いとし、サンプル摂取毎に水で口腔洗浄を行ってもらった。
【0028】
(評価項目の評点)
比較例2を基準として各試験例の評価を行った。評価は3から−3までの7段階で行いアンケートに記入させた。各評点の基準は以下の通りである。
3:比較例2と比べ、非常に好ましい
2:比較例2と比べ、好ましい
1:比較例2と比べ、やや好ましい
0:比較例2と比べ、変わらない
−1:比較例2と比べ、やや好ましくない
−2:比較例2と比べ、好ましくない
−3:比較例2と比べ、非常に好ましくない
【0029】
アンケートによる評点の結果(平均値)を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
表3の結果から、コラーゲン1重量部に対し、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)を0.05重量部以上配合した場合には呈味、清涼感の強さ、及び後味の強さが大きく改善されることが確認された。
【0032】
(実施例3)
試験例6〜8及び比較例3を、健常な被験者5人に処方内容が分からない状態でサンプルを摂取してもらった。被験者には摂取したサンプルについて、呈味、清涼感の強さ、喉越し、舌触り、後味の良さ、及び色調の好ましさの6項目について評価してもらった。なお、各サンプルの摂取量は、評価が出来る量を摂取すれば良いとし、サンプル摂取毎に水で口腔洗浄を行ってもらった。
【0033】
(評価項目の評点)
比較例3を基準として各試験例の評価を行った。評価は3から−3までの7段階で行いアンケートに記入させた。各評点の基準は以下の通りである。
3:比較例3と比べ、非常に好ましい
2:比較例3と比べ、好ましい
1:比較例3と比べ、やや好ましい
0:比較例3と比べ、変わらない
−1:比較例3と比べ、やや好ましくない
−2:比較例3と比べ、好ましくない
−3:比較例3と比べ、非常に好ましくない
【0034】
アンケートによる評点の結果(平均値)を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4の結果から、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)に加え、さらに水溶性ビタミンであるビタミンC(試験例6)またはビタミンB2(試験例7)を添加した場合は添加しない場合(比較例3)と比べ、呈味、清涼感の強さ、後味の良さ、及び色調の好ましさが大きく改善されることが分かった。また、水溶性ビタミンのうち、ビタミンCを添加した場合に特に大きな改善が認められた。一方、脂溶性ビタミンであるビタミンEを添加した場合(試験例8)は、いずれの項目についても改善は認められなかった。
【0037】
実験例3の結果より、難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料(ファイバーソル2)が添加されたコラーゲン含有飲食品にさらに水溶性ビタミンを添加すると、呈味、清涼感の強さ、及び後味の良さがより大きく改善されることが分かった。また、水溶性ビタミンを添加した場合には、色調の好ましさについても改善されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料を添加することによる、コラーゲン含有飲食品の呈味改善方法は、コラーゲン含有飲食品の不快な呈味を改善することにより、人々の快適な食生活に貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性デキストリンに由来する食物繊維が全体重量の85〜95%を占める食物繊維を主成分とする原料を添加することによる、コラーゲン含有飲食品の呈味改善方法。
【請求項2】
さらに水溶性ビタミンを添加することを特徴とする、請求項1記載の呈味改善方法。
【請求項3】
水溶性ビタミンがビタミンB2またはビタミンCであることを特徴とする、請求項2記載の呈味改善方法。
【請求項4】
請求項1〜3の方法により呈味が改善された液体飲料または粉末飲料。

【公開番号】特開2010−104338(P2010−104338A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282233(P2008−282233)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】