説明

コルゲータの制御装置及び方法

【課題】コルゲータの制御装置及び方法に関し、シート反りやシート接着不良が発生しないようにコルゲータを自動運転することができるようにする。
【解決手段】紙シート3,4,6から段ボールシート7,8を製造するコルゲータ1において、走行する紙シート3,4,6又は段ボールシート7,8に関する状態情報に基づいてコルゲータ1の複数の調整要素を調整する調整手段2を制御し、状態情報取得手段により取得された最新の状態情報に基づいて紙シート又は段ボールシートに関する状態が適正になるように複数の調整手段の制御量を常時又は所定の周期で設定し、この設定した制御量に基づいて前記複数の調整手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲータにおいて、プレヒータ巻付量,蒸気圧,ダブルフェーサ加圧力,蒸気圧,糊付け装置の糊ギャップ量,湿潤化量,ミルロールスタンドブレーキ力,片段サクション圧等を調整する調整手段(アクチュエータ)を制御すコルゲータの制御装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
片面段ボールや両面段ボール等の各種の段ボールを製造するコルゲータ(段ボールシート製造装置)では、製造した段ボールに反りや接着不良が生じないようにすることが要求される。段ボールの反りは、段ボールを構成するシートの各製造工程での温度や水分状態等に左右され、段ボールの接着不良は、主にシートの接着工程での温度に左右される。
このため、各製造工程でのシートの反りや接着不良を検知したり、あるいは、これらの製品不良を左右する各製造工程での温度状態や水分状態を検知したりして、これらの検知情報に基づいて、段ボールに反りや接着不良が生じないように、コルゲータの各調整手段(アクチュエータ)を制御する技術が開発されている。
【0003】
このようなコルゲータでのシート反りや接着不良を防止する従来の制御技術としては、例えば、マトリックス制御を用いる技術がある(特許文献1の段落0003参照)。
つまり、図19に示すように、上(裏)ライナ3が上(裏)ライナ用プレヒータ11に導入されて加熱され、中芯4が中芯用プレヒータ12に導入されて加熱され、加熱された上ライナ3と中芯4とがシングルフェーサ13に導入されて糊付けされ、片段シート(片面段ボールシート)5が形成される。片段シート5は片段用プレヒータ14に導入されて加熱され、グルーマシン15に導入されて糊付けされ、下(表)ライナ6が下(表)ライナ用プレヒータ16に導入されて加熱され、加熱された片段シート5と下ライナ6とがダブルフェーサ17に導入されて加圧,加熱されて貼り合わされ、両面シート(両面段ボールシート)7が形成される。その後、両面シート7はスリッタスコアラ18で、シート搬送方向に沿って裁断及び罫入れがされ、カットオフ19で、シート搬送方向の所定長さに裁断され、一枚シート(一枚の両面シート)8とされて、スタッカ20に積載され、一枚シートの両面シート8は最終製品としてスタッカ20から搬出される。
【0004】
このようなコルゲータ1の各アクチュエータは生産管理装置202により制御されるが、生産管理装置202では、入力される生産状態情報(原紙構成,原紙坪量,紙幅,フルート等)と、運転状態情報(運転速度,各プレヒータへのシート巻き付け量,蒸気圧,ダブルフェーサにおける加圧力,蒸気圧,各糊付け装置の糊ギャップ量,湿潤化装置を備える場合はその湿潤量等)を基に、予め作成しているマトリックス条件表に記載された運転条件を選定して、運転条件を調整する、いわゆるマトリックス制御を行って、コルゲータ上のシート反りやシート接着不良(貼り合わせ不良)を防止している。
【0005】
また、シート反り防止に関し、上記のマトリックス制御に加え,トリプルプレヒータ出口での片段シートの裏ライナと下(表)ライナとの各シート温度、又はダブルフェーサの熱板出口直後の下ライナ紙のシート温度を計測し、PIDフィードバック制御とフィードフォワード制御(速度,紙種,フルート等の条件から、シート温度を予測して目標値とし、プレヒータ巻付角,ダブルフェーサ加圧力等を調整する制御)を行い,流れ(MD)方向と幅(CD)方向の上下反りを防止するシステムも提案されている(特許文献2,3参照)。
【0006】
シート接着不良防止に関しても、上記のマトリックス制御に加え,シングルフェーサ入口での上(裏)ライナと中芯との各シート温度、又はトリプルプレヒータ出口での片段シート(裏ライナ紙側)と下ライナ(表ライナ紙側)のシート温度を計測し、更には、ダブルフェーサの熱板出口直後の下(表)ライナのシート温度を計測し、PIDフィードバック制御とフィードフォワード制御(速度,紙種,フルート等の条件から、シート温度を予測して目標値とし、プレヒータ巻付角,ダブルフェーサ加圧力等を調整する制御)を行い、シングルフェーサ部の接着(つまり、上ライナと波状の中芯との接着)不良や、ダブルフェーサ部の接着(つまり、片段シートと下ライナとの接着)不良を防止するシステムも提案されている(特許文献2,3参照)。
【特許文献1】特開2003‐231193
【特許文献2】特許3492304号公報
【特許文献3】特許3492305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のシート反り防止やシート接着不良防止にかかる従来技術では、以下のような課題がある。
上記のマトリックス制御では,マトリックス条件表の運転条件が今迄の経験と勘に基づいて作成されている為、運転条件の調整がラフであり、正確な運転条件の調整は難しい。よって、マトリックス制御を用いてシート反りやシート接着不良を防止する自動化運転を実現することは困難であり、オペレータの経験と勘とによって各種運転条件調整を行っているのが現状である。
【0008】
また、シート反りについては、シート製造後の積載状態で、経時的に反り(シートの経時反り)を発生することがあるが、このような反りをコルゲータにおいて自動で防止する技術は開発されていない。
また、上記のマトリックス+PIDフィードバック+予測制御では、マトリックス制御単体よりもシート反り防止効果やシート接着不良防止効果は大きいが、制御時間が長く、更に高精度に反り防止やシート接着不良防止を行う必要がある。また、運転条件(速度や、目標値と実測値との差等)により、三つの制御モードを使い分ける必要があり、制御が複雑となる課題もある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、シート反りやシート接着不良が発生しないようにコルゲータを自動運転することができるようにした、コルゲータの制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のコルゲータの制御装置(請求項1)は、紙シートから段ボールシートを製造するコルゲータにおいて、走行する前記紙シート又は前記段ボールシートに関する単数又は複数の状態情報に基づいて前記コルゲータの複数の調整要素を調整する調整手段を制御するコルゲータの制御装置であって、前記状態情報を常時又は所定の周期で取得する状態情報取得手段と、前記状態情報取得手段により取得された最新の状態情報に基づいて前記紙シート又は前記段ボールシートに関する状態が適正になるように前記複数の調整手段の制御量を常時又は所定の周期で設定し、この設定した制御量に基づいて前記複数の調整手段を制御する制御手段とをそなえたことを特徴としている。
【0011】
前記制御手段は、前記状態情報取得手段により取得された最新の状態情報に加えて、前記コルゲータの生産状態情報及び環境状態情報に基づいて前記制御量を設定することが好ましい(請求項2)。
また、前記調整手段は、前記コルゲータのプレヒータに設けられた加熱ロールへの表ライナ,裏ライナ,中芯の各シートの巻付量を調整するアクチュエータと、前記加熱ロールへ供給する加熱用蒸気圧を調整するアクチュエータと、前記コルゲータのダブルフェーサにおけるシート加圧力を調整するアクチュエータと、前記ダブルフェーサへ供給する加熱用蒸気圧を調整するアクチュエータと、前記コルゲータに設けられ前記各シートに糊付けする糊付け装置の糊ギャップ量を調整するアクチュエータと、前記コルゲータに設けられ前記各シート又は片段ボールシートを湿潤化する湿潤化装置による湿潤化量を調整するアクチュエータと、前記コルゲータに設けられ前記各シートのロールを支持するミルロールスタンドのブレーキ力を調整するアクチュエータと、前記コルゲータに設けられた片段シートサクション装置のサクション圧を調整するアクチュエータと、の少なくともいずれかを含むことが好ましい(請求項3)。
【0012】
また、前記制御手段は、前記状態情報取得手段により取得された最新の状態情報と前記生産状態情報と前記環境状態情報とに基づいて前記制御量のフィードフォワード分を設定するグローバルオプティマイザーと、前記の各調整要素の状態に応じて前記制御量のフィードバック分を設定し、前記グローバルオプティマイザーで設定されたフィードフォワード分に前記フィードバック分を加算して前記制御量を設定するローカルオプティマイザーとをそなえていることが好ましい(請求項4)。
【0013】
この場合、前記グローバルオプティマイザーには、前記状態情報,前記生産状態情報,及び前記環境状態情報と前記制御量のフィードフォワード分とを対応させた知識データベースが接続されていることが好ましい(請求項5)。
あるいは、前記グローバルオプティマイザーには、前記状態情報,前記生産状態情報,及び前記環境状態情報を入力要素として前記制御量のフィードフォワード分を出力要素とするニューラルネットワークが接続されていることが好ましく(請求項6)、このニューラルネットワークは、階層型ニューラルネットワークであることが好ましい(請求項7)。
【0014】
前記状態情報は、シート反り,シート接着不良の何れかに関する情報であることが好ましい(請求項8)。
また、前記状態情報取得手段は、前記複数の状態情報のうちの特定の状態情報を検出する特定情報検出手段と、前記特定の状態情報と前記推定対象の状態情報との相関関係である予測モデルを用いて、前記特定情報検出手段により検出された前記特定の状態情報から、前記複数の状態情報のうちの他の情報である推定対象の状態情報を推定する推定手段とをそなえていることが好ましい(請求項9)。
【0015】
この場合、前記特定の状態情報は前記紙シート又は前記段ボールシートのシート温度計測値であり、前記特定情報検出手段は温度センサであって、前記推定対象の状態情報は、前記紙シート又は前記段ボールシートのシート水分,シート反り,シート接着不良の何れかに関する情報であることが好ましい(請求項10)。
あるいは、前記特定の状態情報は前記紙シート又は前記段ボールシートのシート水分であり、前記特定情報検出手段は水分センサであって、前記推定対象の状態情報は、前記紙シート又は前記段ボールシートのシート反り,シート接着不良の何れかに関する情報であることが好ましい(請求項11)。
【0016】
或いは、前記特定の状態情報は前記紙シート又は前記段ボールシートのシート温度計測値及びシート水分計測値であり、前記特定情報検出手段は温度センサ及び水分センサであって、前記推定対象の状態情報は、前記紙シート又は前記段ボールシートのシート反り,シート接着不良の何れかに関する情報であることが好ましい(請求項12)。
また、前記シート反りに関する情報には、前記コルゲータの下流端のスタッカに1枚シートとして積重された前記段ボールシートの積載経時反りの情報を含むことが好ましい(請求項13)。
【0017】
本発明のコルゲータの制御方法(請求項14)は、紙シートから段ボールシートを製造するコルゲータにおいて、走行する前記紙シート又は前記段ボールシートに関する単数又は複数の状態情報に基づいて前記コルゲータの複数の調整要素を調整する調整手段を制御するコルゲータの制御方法であって、前記状態情報を常時又は所定の周期で取得する特定情報取得ステップと、前記特定情報取得ステップにより取得された最新の状態情報に基づいて前記紙シート又は前記段ボールシートに関する状態が適正になるように前記複数の調整手段の制御量を常時又は所定の周期で設定する制御量設定ステップと、前記制御量設定ステップにより設定された制御量に基づいて前記複数の調整手段を常時又は所定の周期で制御する制御ステップとをそなえたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコルゲータの制御装置(請求項1)及び方法(請求項14)によれば、紙シート又は段ボールシートに関する状態情報に基づいてコルゲータの複数の調整要素を調整する調整手段を制御するにあたって、前記状態情報を常時又は所定の周期で取得し、この取得した最新の状態情報に基づいて紙シート又は段ボールシートに関する状態が適正になるように複数の調整手段の制御量を常時又は所定の周期で設定して、複数の調整手段を制御するので、例えば、紙シート又は段ボールシートの状態に即応した、且つ、高精度のコルゲータの制御を実現できる。これにより、紙シート又は段ボールシートに関する状態情報の具体例であるシート反りやシート接着不良(請求項8)が発生しないようにコルゲータを自動運転することが可能になる。
【0019】
また、取得された最新の状態情報に加えて、コルゲータの生産状態情報及び環境状態情報に基づいて制御量を設定することで、高精度にコルゲータの制御を実現できる(請求項2)。
例えば、調整手段として、プレヒータに設けられた加熱ロールへの表ライナ,裏ライナ,中芯の各シートの巻付量を調整するアクチュエータを制御したり、加熱ロールへ供給する加熱用蒸気圧を調整するアクチュエータを制御したり、ダブルフェーサにおけるシート加圧力を調整するアクチュエータを制御したり、ダブルフェーサへ供給する加熱用蒸気圧を調整するアクチュエータを制御したり、各シートに糊付けする糊付け装置の糊ギャップ量を調整するアクチュエータを制御したり各シート又は片段シートを湿潤化する湿潤化装置による湿潤化量を調整するアクチュエータを制御したり、各シートのロールを支持するミルロールスタンドのブレーキ力を調整するアクチュエータを制御したり、片段シートサクション装置のサクション圧を調整するアクチュエータを制御したりすることにより、シート反りやシート接着不良が発生しないようにすることが可能になる(請求項3)。
【0020】
前記制御手段を、上位のグローバルオプティマイザーと、下位のローカルオプティマイザーとからなる階層構造とし、グローバルオプティマイザーにより、最新の状態情報と生産状態情報と環境状態情報とに基づいて制御量のフィードフォワード分を設定し、ローカルオプティマイザーにより、各調整要素の状態に応じて制御量のフィードバック分を設定し、前記フィードフォワード分にこのフィードバック分を加算して制御量を設定することにより、相関関係を有する複数の調整要素を全体として統括して監視・操作することが容易になり、煩雑な操作を解消した最適なオペレーション環境を提供することができる。
【0021】
また、最新の状態情報と生産状態情報と環境状態情報といった膨大な入出力データを、専ら上位のグローバルオプティマイザーで監視・操作し、制御指令にかかる操作は下位のローカルオプティマイザーが受け持つといった構成によりグローバルオプティマイザーによる一元的統括管理環境の構築が可能になり、制御系をシンプルに構成でき、制御の高速化,高精度化が可能となる(請求項4)。
【0022】
グローバルオプティマイザーに、状態情報,生産状態情報,環境状態情報と制御量のフィードフォワード分とを対応させた知識データベースが接続されていれば、種々の条件下でも制御量のフィードフォワード分を容易に且つ適切に得ることができる。特に、各情報とフィードフォワード分との間に非線形性等があると、両者が部分的にマッチングしない領域がでてくるが、知識データベースを用いると、部分的に線形モデルを多く作ることができ、たとえ全体として非線形性があっても、簡単な線形モデルでフィードフォワード分を高精度に設定することが可能となる(請求項5)。
【0023】
グローバルオプティマイザーには、状態情報,生産状態情報,環境状態情報を入力要素として制御量のフィードフォワード分を出力要素とするニューラルネットワーク(特に、階層型ニューラルネットワーク)が接続されていれば、各情報とフィードフォワード分との相関モデルを学習により更新して、より精度の高い相関モデルを構築することができ、制御精度の向上に寄与し得る(請求項6,7)。
【0024】
また、状態情報取得手段を、特定の状態情報を検出する特定情報検出手段と、特定の状態情報と推定対象の状態情報との相関関係である予測モデルを用いて、検出された特定の状態情報から、推定対象の状態情報を推定することにより、特定の状態情報についての検出手段を設けるだけで、推定対象の状態情報についての検出手段を設けることなく、推定対象の状態情報を把握することができ、コスト増を抑えながら、コルゲータの制御を高精度にすることが可能になる(請求項9)。
【0025】
例えば、コルゲータ上でのシート温度と、シート水分,シート反り,シート接着不良の何れかとの相関関係についての予測モデルを用意して、特定の状態情報としてのコルゲータ上でのシート温度を検出し、予測モデルを使って、シート温度からシート水分,シート反り,シート接着不良の何れかを推定することにより、シート水分,シート反り,シート接着不良について、それぞれの検出手段を設けなくても状態を把握することができ、装置のコストを抑制することができる。シート温度の検出手段を充実させるとともに、予測モデルを高精度に作成すれば、紙シート又は段ボールシートに関する各種の状態情報を、装置コストやメンテナンス負担を軽減しながら精度よく把握することができるようになる(請求項10)。
【0026】
また、コルゲータ上でのシート水分と、シート反り,シート接着不良の何れかとの相関関係についての予測モデルを用意して、特定の状態情報としてのコルゲータ上でのシート水分を検出し、予測モデルを使って、シート水分からシート反り,シート接着不良の何れかを推定することにより、シート反り,シート接着不良について、それぞれの検出手段を設けなくても状態を把握することができ、装置のコストを抑制することができて、紙シート又は段ボールシートに関する各種の状態情報を、装置コストやメンテナンス負担を軽減しながら精度よく把握することができるようになる(請求項11)。
【0027】
また、コルゲータ上でのシート温度,シート水分と、シート反り,シート接着不良の何れかとの相関関係についての予測モデルを用意して、特定の状態情報としてのコルゲータ上でのシート温度,シート水分を検出し、予測モデルを使って、シート水分からシート反り,シート接着不良の何れかを推定することにより、シート反り,シート接着不良について、それぞれの検出手段を設けなくても状態を把握することができ、装置のコストを抑制することができて、紙シート又は段ボールシートに関する各種の状態情報を、全体として装置コストやメンテナンス負担を軽減しながら精度よく把握することができるようになる(請求項12)。
【0028】
シート反りに関する情報として、前記コルゲータの下流端のスタッカに1枚シートとして積重された前記段ボールシートの積載経時反りの情報を推定できるようにすれば、積載経時反りの生じ難い、より品質の高い段ボールシートを製造することが可能になる(請求項13)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[A.第1実施形態]
図1〜図5は本発明の第1実施形態にかかるコルゲータ及びそのシート状態情報推定装置を示すもので、図1はその概略構成図、図2〜図4はその詳細構成図、図5はその反り簡易モデルを示す斜視図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態にかかるコルゲータ1は、上流側から上(裏)ライナ用プレヒータ11,中芯用プレヒータ12,シングルフェーサ13,片段用プレヒータ(片段シート用プレヒータ)14,グルーマシン15,下(表)ライナ用プレヒータ16,ダブルフェーサ17,スリッタスコアラ18,カットオフ19,スタッカ20とをそなえている。
【0031】
上(裏)ライナ3が上ライナ用プレヒータ11に導入されて加熱され、中芯4が中芯用プレヒータ12に導入されて加熱され、加熱された上ライナ3と中芯4とがシングルフェーサ13に導入されて糊付けされ、片段シート(片面段ボールシート)5が形成される。さらに、片段シート5は、片段用プレヒータ14に導入されて加熱され、グルーマシン15に導入されて糊付けされる。また、下(表)ライナ6が下ライナ用プレヒータ16に導入されて加熱され、加熱された片段シート5と下ライナ6とがダブルフェーサ17に導入されて加圧,加熱されて貼り合わされ、両面シート(両面段ボールシート)7が形成される。その後、両面シート7はスリッタスコアラ18で、シート搬送方向に沿って切断(裁断)及び罫入れがされ、さらに、カットオフ19で、シート搬送方向の所定長さに切断(裁断)され、一枚シート(一枚の両面シート)8とされて、スタッカ20に積載される。その後、一枚シートの両面シート8は最終製品としてスタッカ20から搬出される。
【0032】
ここで、上ライナ用プレヒータ11、中芯用プレヒータ12、片段用プレヒータ14、下ライナ用プレヒータ16、シングルフェーサ13、グルーマシン15、及びダブルフェーサ17の詳細な構成について図2〜図4を用いて説明する。なお、図2は上ライナ用プレヒータ11とシングルフェーサ13と中芯用プレヒータ12の構成を示した概略図、図3は片段用プレヒータ14と下ライナ用プレヒータ16とグルーマシン15とダブルフェーサ17の一部の構成を示した概略図、図4はダブルフェーサ17の構成を示した概略図である。
【0033】
図2に示すように、裏ライナ用プレヒータ11は、縦に2段に配置された裏ライナ加熱ロール111A,111Bを備えている。裏ライナ加熱ロール111A,111Bは、内部に蒸気を供給することによって所定の温度に加熱されている。裏ライナ加熱ロール111A,111Bの周面には、ガイドロール115,114A,116,114Bによって順に案内される裏ライナ3が巻き付けられ、裏ライナ加熱ロール111A,111Bによって予加熱されている。
【0034】
ガイドロール115,114A,116,114Bのうち、一方の裏ライナ加熱ロール111Aに近接して設けられたガイドロール114Aは、裏ライナ加熱ロール111Aの軸に揺動自在に取り付けられたアーム113Aの先端に支持され、他方の裏ライナ加熱ロール111Bに近接して設けられたガイドロール114Bは、裏ライナ加熱ロール111Bの軸に揺動自在に取り付けられたアーム113Bの先端に支持されている。各アーム113A,113Bは、図示しないモータによって図中に矢印で示した角度範囲内の任意の位置に移動できるようになっている。ここでは、ガイドロール114A,アーム113A及び図示しないモータ、そして、ガイドロール114B,アーム113B及び図示しないモータが、それぞれ巻き付け量調整装置112A,112Bを構成している。
【0035】
このような構成により、裏ライナ用プレヒータ11では、裏ライナ加熱ロール111A,111Bに供給する蒸気圧や、巻き付け量調整装置112A,112Bによる裏ライナ3の裏ライナ加熱ロール111A,111Bへの巻き付け量(巻き付け角)により、裏ライナ3の含有水分量を調整できるようになっている。具体的には、蒸気圧が大きい程、また、巻き付け量が大きい程、裏ライナ加熱ロール111A,111Bから裏ライナ3に与えられる加熱量が増大し、裏ライナ3の乾燥が進んで含有水分量が低下することになる。
【0036】
シングルフェーサ13は、ベルトロール131と張力ロール132とに巻回された加圧ベルト133と、表面が波状に形成されて加圧ベルト133に加圧状態で当接した上段ロール134と、同じく表面が波状に形成されて上段ロール134に噛み合う下段ロール135を備えている。裏ライナ用プレヒータ11で加熱された裏ライナ3は、途中、ライナ用予熱ロール137に巻き付けられて予熱を与えられた後、ベルトロール131により案内されて加圧ベルト133とともに加圧ベルト133と上段ロール134とのニップ部に移送される。
【0037】
一方、中芯用プレヒータ12で加熱された中芯4は、途中、中芯用予熱ロール138に巻き付けられて予熱を与えられ、上段ロール134と下段ロール135との噛み合い部で段繰りされた後、上段ロール134により案内されて加圧ベルト133と上段ロール134とのニップ部に移送される。
上段ロール134の近傍には、糊付け装置136が配置されている。この糊付け装置136は、糊30を蓄えた糊ダム136aと、上段ロール134により搬送される中芯4に糊付けする糊付けロール136bと、糊付けロール136bの周面への糊30の付着量を調整するメータロール136cと、メータロール136cから糊を掻き取る糊掻きブレード136dとから構成されている。上段ロール134と下段ロール135との噛み合い部で段繰りされた中芯4は、糊付けロール136bにより段の各頂部に糊付けされ、加圧ベルト133と上段ロール134とのニップ部において裏ライナ3に貼り合わされる。これにより、片段シート5が形成される。
【0038】
このような構成により、シングルフェーサ13では、糊付けロール136bと上段ロール134との間のギャップ量や、糊付けロール136bとメータロール136cとの間のギャップ量により、裏ライナ3の含有水分量を調整できるようになっている。具体的には、ギャップ量が大きい程、中芯4と裏ライナ3との貼り合わせ面の糊量が増大し、糊に含まれる水分により裏ライナ3の含有水分量が増大することになる。上記の各ギャップ量は、糊付けロール136bを移動させたり、メータロール136cを移動させたりすることで調整することができる。
【0039】
なお、中芯用プレヒータ12は、裏ライナ用プレヒータ11と同様の構成であり、内部に蒸気を供給することによって所定の温度に加熱された中芯加熱ロール121と、中芯加熱ロール121への中芯4の巻き付け量(巻き付け角)を調整する巻き付け量調整装置122とを備えている。巻き付け量調整装置122は、中芯4が巻き付けられたガイドロール124と、中芯加熱ロール121の軸に揺動自在に取り付けられてガイドロール124を支持するアーム123と、アーム123を回転させる図示しないモータとから構成されている。
【0040】
片段シート用プレヒータ14と表ライナ用プレヒータ16とは、図3に示すように縦に2段に配置されている。これらプレヒータ14,16は、前述の裏ライナプレヒータ11と同様の構成を有している。片段シート用プレヒータ14は、片段シート加熱ロール141と巻き付け量調整装置142とを備えている。片段シート加熱ロール141は、内部に蒸気を供給することによって所定の温度に加熱されている。片段シート加熱ロール141の周面には、ガイドロール145,144によって順に案内される片段シート5の裏ライナ4側が巻き付けられ片段シート加熱ロール141によって予加熱されている。
【0041】
巻き付け量調整装置142は、一方のガイドロール144と、片段シート加熱ロール141の軸に揺動自在に取り付けられてガイドロール144を支持するアーム143と、アーム143を回転させる図示しないモータとから構成されている。そして、モータの制御により図中に矢印で示した角度範囲内の任意の位置にガイドロール144を移動させ、片段シート加熱ロール141への片段シート5の巻き付け量(巻き付け角)を調整できるようになっている。
【0042】
このような構成により、片段シート用プレヒータ14では、片段シート加熱ロール141に供給する蒸気圧や、片段シート5の片段シート加熱ロール141への巻き付け量(巻き付け角)により、裏ライナ4の含有水分量を調整できるようになっている。具体的には、蒸気圧が大きい程、また、巻き付け量が大きい程、片段シート加熱ロール141から裏ライナ4に与えられる加熱量が増大し、裏ライナ4の乾燥が進んで含有水分量が低下することになる。
【0043】
表ライナ用プレヒータ16は、表ライナ加熱ロール161と巻き付け量調整装置162とを備えている。表ライナ加熱ロール161は、内部に蒸気を供給することによって所定の温度に加熱されている。表ライナ加熱ロール161の周面には、ガイドロール165,164によって順に案内される表ライナ6が巻き付けられ表ライナ加熱ロール161によって予加熱されている。
【0044】
巻き付け量調整装置162は、一方のガイドロール164と、表ライナ加熱ロール161の軸に揺動自在に取り付けられてガイドロール164を支持するアーム163と、アーム163を回転させる図示しないモータとから構成されている。そして、モータの制御により図中に矢印で示した角度範囲内の任意の位置にガイドロール164を移動させ、表ライナ加熱ロール161への表ライナ6の巻き付け量(巻き付け角)を調整できるようになっている。
【0045】
このような構成により、表ライナ用プレヒータ16では、表ライナ加熱ロール161に供給する蒸気圧や、表ライナ6の表ライナ加熱ロール161への巻き付け量(巻き付け角)により、表ライナ6の含有水分量を調整できるようになっている。具体的には、蒸気圧が大きい程、また、巻き付け量が大きい程、表ライナ加熱ロール161から表ライナ6に与えられる加熱量が増大し、表ライナ6の乾燥が進んで含有水分量が低下することになる。
【0046】
グルーマシン15は、糊付け装置151と加圧バー装置152とを備えている。片段シート用プレヒータ14で加熱された片段シート5は、途中、片段用予熱ロール155により予熱を与えられた後、グルーマシン15内をガイドロール153,154によって順に案内されていく。糊付け装置151は、ガイドロール153,154間において、片段シート5の走行ラインの下側(中芯4側)に配置され、加圧バー装置152は走行ラインの上側(裏ライナ3側)に配置されている。
【0047】
糊付け装置151は、糊31を蓄えた糊ダム151aと、片段シート5の走行ラインの近傍に配置された糊付けロール151bと、糊付けロール151bに接して糊付けロール151bと逆回転するドクタロール151cとから構成されている。一方、加圧バー装置152は、糊付けロール151bとの間で片段シート5を挟むように配置された加圧バー152aと、加圧バー152aを糊付けロール151b側に押し付けるアクチュエータ152bとから構成されている。片段シート5は加圧バー152aによって糊付けロール151b側に押し付けられており、加圧バー152aと糊付けロール151bとの間を通過する際に、糊付けロール151bによって中芯4の段の各頂部に糊付けされるようになっている。中芯4に糊付けされた片段シート5は、次工程のダブルフェーサ17により表ライナ6と貼り合わされる。
【0048】
このような構成により、グルーマシン15では、糊付けロール151bと加圧バー152aとのギャップ量(すなわち、糊付けロール151bの片段シート4の走行ラインに対するギャップ量)により、表ライナ6の含有水分量を調整できるようになっている。具体的には、ギャップ量が大きい程、中芯4と表ライナ6との貼り合わせ面の糊量が増大し、それにより表ライナ6に加わる水分が増大して表ライナ6の含有水分量が増大することになる。上記のギャップ量は、アクチュエータ152bにより加圧バー152aの位置調整を行うことで調整することができる。
【0049】
グルーマシン15により糊付けされた片段シート5は、次工程のダブルフェーサ17に移送される。また、表ライナ用プレヒータ16で加熱された表ライナ6もグルーマシン15内を通ってダブルフェーサ17に移送される。その際、表ライナ6は、グルーマシン15内に配置されたライナ用予熱ロール156により案内されながらライナ用予熱ロール156から予熱を与えられる。
【0050】
ダブルフェーサ17の入口には、片段シート5の走行ラインに沿って裏ライナ3側に湿潤化装置或いは水分付与装置としての第1シャワー装置(裏ライナ湿潤装置)171Aが配置され、表ライナ6側に湿潤化装置或いは水分付与装置としての第2シャワー装置(表ライナ湿潤装置)171Bが配置されている。これらシャワー装置171A,171Bは、裏ライナ3,表ライナ6の含有水分量を調整(湿潤化)するためのものであり、シャワー装置171Aから裏ライナ3に向けて、また、シャワー装置171Bから表ライナ6に向けて水が噴射されるようになっている。そして、シャワー装置171Aからのシャワー量に応じて裏ライナ3の含有水分量が増大し、シャワー装置171Bからのシャワー量に応じて表ライナ6の含有水分量が増大する。なお、これらシャワー装置171A,171Bは互いに独立して制御されるようになっている。
【0051】
本実施形態では、このようにダブルフェーサの前に上下ライナのための水分付与装置がそなえられるが、この水分付与装置は、通常オプションとして装備されるものであり、必須のものではない。また、水分付与装置は、ダブルフェーサの後に上下ライナ用として装備し制御するようにしてもよい。
ダブルフェーサ17は、図4に示すように、片段シート5及び表ライナ6の走行ラインに沿って、上流側のヒーティングセクション17Aと、下流側のクーリングセクション17Bとに分かれている。このうち、ヒーティングセクション17Aには複数の熱盤172が配置されており、表ライナ6がこれら熱盤172上を通過するようになっている。熱盤172は、内部に蒸気を供給することによって所定の温度に加熱されている。
【0052】
また、熱盤172上には上記走行ラインを挟んでループ状の加圧ベルト173が片段シート5及び表ライナ6と同期して走行しており、加圧ベルト173のループ内には複数の加圧ユニット174が熱盤172に対峙するように配置されている。加圧ユニット174は、加圧ベルト173の背面に摺接する加圧バー174aと、加圧バー174aを熱盤172側に押し付けるアクチュエータ174bとから構成されている。
【0053】
グルーマシン15で糊付けされた片段シート5は、加圧ベルト173側から加圧ベルト173と熱盤172との間に搬入される。一方、表ライナ用プレヒータ16で加熱された表ライナ6は、ライナ用入口予熱ロール175によって予熱を与えられた後、熱盤172側から加圧ベルト173と熱盤172との間に搬入される。そして、片段シート5と表ライナ6は、それぞれ加圧ベルト173と熱盤172との間に搬入された後、上下に重なりあった状態で一体となってクーリングセクション17Bへ向けて移送されていく。この移送中、片段シート5と表ライナ6は、加圧ユニット174により加圧ベルト173を介して加圧されながら表ライナ6側から加熱されることにより、互いに貼り合わされて段ボールシート7となる。段ボールシート7は、クーリングセクション17Bの出口に設けられたロータリシャー176によってその全幅或いは端部が切断されて、次工程のスリッタスコアラ18に移送される。
【0054】
このような構成により、ダブルフェーサ17では、熱盤172に供給する蒸気圧や、加圧ユニット174の加圧力により、表ライナ6の含有水分量を調整できるようになっている。具体的には、蒸気圧が大きい程、また、加圧力が大きい程、熱盤172から表ライナ6に与えられる加熱量が増大し、表ライナ6の乾燥が進んで含有水分量が低下することになる。また、片段シート5及び表ライナ6がダブルフェーサ17を通過する速度によっても、表ライナ6の含有水分量を調整することができる。この場合は、通過速度が遅いほど、表ライナ6が熱盤172に接している時間が長くなるために表ライナ6の乾燥が進んで含有水分量が低下することになる。
【0055】
このようなコルゲータ1では、上(裏)ライナ用プレヒータ11,中芯用プレヒータ12,片段用プレヒータ14,下(表)ライナ用プレヒータ16の各プレヒータによるシートへの加熱状態と、シングルフェーサ13及びグルーマシン15における糊ギャップ量と、ダブルフェーサ17における加圧力とを生産管理装置(コントローラ)2を通じて制御するように構成されている。
【0056】
なお、各プレヒータによるシートへの加熱状態は、各プレヒータの各加熱ロールへのシートの巻き付け量を図示しないモータ等のアクチュエータにより調整することや、各加熱ロールへの蒸気圧を図示しない蒸気供給バルブの開度調整ソレノイド等のアクチュエータにより調整することにより制御することができる。また、糊ギャップ量は、糊付けロールとシートの走行ラインとのギャップ量であり、上述のように、シングルフェーサ13では、糊付けロールと上段ロールとの間のギャップ量を図示しないモータ等のアクチュエータにより調整により制御することができ、グルーマシン15では、糊付けロールと加圧バーとのギャップ量を図示しないモータ等のアクチュエータにより調整により制御することができる。
【0057】
なお、制御対象要素(調整要素)としては、この他、ダブルフェーサ17の入口、または出口に配置され裏ライナ3を加湿するシャワー装置や表ライナを加湿するシャワー装置によるシャワー量や、さらに、表ライナ6の走行ラインに沿って配置され表ライナ6を加熱する熱盤の加熱状態(内部に供給される蒸気圧或いは蒸気量)があり、シャワー量にあっては、シャワー供給バルブの開度調整ソレノイド等のアクチュエータ、熱盤の加熱状態にあっては、熱盤への蒸気供給バルブの開度調整ソレノイド等のアクチュエータなど、各アクチュエータ(調整手段)により調整により制御することができる。
【0058】
また、本実施形態には記載していないが、上(裏)ライナ,中芯,下(表)ライナの各シートを巻回した各シートロールを支持するミルロールスタンドのブレーキ力や、ブリッジ搬送コンベアでの片段シートサクション装置の片面段ボールシートへのサクション圧,サクションブレーキ力も制御対象要素(調整要素)となり、これらも各アクチュエータにより調整することができる。
【0059】
ここで、各制御対象要素(調整要素)と、紙シート又は段ボールシートに関する状態情報であるシート反り[シート進行方向へのMD方向反り,シート幅方向へのCD方向反り(図13参照),積最経時的反り(積最後の経時的な反り)]との関係について図6を用いて説明する。なお、図6では、片段用プレヒータ14と下ライナ用プレヒータ16とが、トリプルプレヒータとして示してあるが、実質的な差異はない。
【0060】
図6に示すように、MD方向反りは、裏ライナ用のミルロールスタンド(MRS)での裏ライナへのディスクブレーキ力、ブリッジ搬送コンベアでの片面段ボールシートへのサクションブレーキ力、表ライナ用のミルロールスタンド(MRS)での表ライナへのディスクブレーキ力が影響する。図6中の[n]で示す数字は影響度を示し、ブリッジ搬送コンベアでのサクションブレーキ力、表ライナへのディスクブレーキ力がMD方向反りに大きく影響する。
【0061】
CD方向反りは、シングルフェーサ用ダブルライナプレヒータ(裏ライナ用プレヒータ11に対応する)における裏ライナの巻き付け角度(これに対応する温度変化)、シングルフェーサ11での糊/掻取りロール間ギャップ量(これに対応する水分量変化など)、中芯用プレヒータ12での中芯の巻き付け角度(これに対応する温度変化)、トリプルプレヒータ(片段用プレヒータ14に対応する)における片面段ボールシートの巻き付け角度(これに対応する温度変化)、トリプルプレヒータ(表ライナ用プレヒータ16に対応する)における表ライナの巻き付け角度(これに対応する温度変化)、グルーマシン15での糊/掻取りロール間ギャップ量(これに対応する水分量変化など)、ダブルフェーサ直前での片面段ボールシートへの水分付与、ダブルフェーサ直前での表ライナへの水分付与、ダブルフェーサでの加圧力、巻き付け角度(これに対応する温度変化)といった各要素が影響する。図6中の[n]で示す数字は影響度を示し、片面段ボールシートへの水分付与、表ライナへの水分付与がCD方向反りに最も大きく影響する。
【0062】
また、経時積載反りは、ダブルフェーサ後での量面段ボールシートの裏表の各ライナへの水分付与が影響する。
図1に示すように、生産管理装置(コントローラ)2には、コルゲータの生産状態情報,コルゲータのマシン状態情報,シートの状態情報から、上記のシート加熱,糊ギャップ量,加圧力等の各制御対象要素(調整要素)にかかる制御量を演算する制御量演算部21と、上記のシート加熱,糊ギャップ量,加圧力等をそれぞれ制御するプロセスコントローラ22と、上記のシート加熱,糊ギャップ量,加圧力の最適な状態を記憶する最適状態記憶部23とをそなえる。
【0063】
本実施形態では、図1,図5に示すように、制御量演算部21は、制御量の主要素(目標値)であるフィードフォワード量(フィードフォワード分)を、常時或いは適当な周期(例えば、100msec〜1sec)で周期的に最適化する上位のオプティマイザ(グローバルオプティマイザ)として構成され、プロセスコントローラ22は、グローバルオプティマイザ21により最適化されたフィードフォワード量(目標値)に対する実際値の差分に基づくフィードバック制御量(フィードバック分)を、常時或いは適当な周期で周期的に最適化する下位のオプティマイザ(ローカルオプティマイザ)として構成されている。
【0064】
つまり、グローバルオプティマイザ21では、図5に示すように、コルゲータの生産状態情報(環境条件),コルゲータのマシン状態情報(動作条件),シートの状態情報(シート状態量取得手段24から取得される、コルゲータ各部のシート温度,シート水分,各シート反り,及び,シート接着不良等のシート状態量)から、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値を常時或いは適当な周期で設定し、これをフィードフォワード量として設定する(即ち、フィードフォワードコントローラを設計する)。なお、シート状態量取得手段24では、シート温度,シート水分,各シート反り,及び,シート接着不良等のシート状態量を検出又は推定して取得するものとする。
【0065】
本実施形態では、目標値の設定にあたって、知識データベース28を用いている。この知識データベース28は、コルゲータの生産状態情報(環境条件),コルゲータのマシン状態情報(動作条件),シートの状態情報と、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値との対応関係を各種格納したもので、実験又はシミュレーションを利用して構築して、知識データベース28として、データベース化している。
【0066】
ローカルオプティマイザ22では、各プレヒータ,シングルフェーサ,グルーマシーン,ダブルフェーサ、シャワーといった各制御要素(システム)の状態量と、グローバルオプティマイザ21により最適化された各制御要素(システム)のフィードフォワード量(目標値)とから、常時或いは適当な周期で、各制御パラメータの補正量を設定(同定)して、これをフィードバック制御量(フィードバック分)として設定する(即ち、フィードバックコントローラを設計する)。
【0067】
これにより、ローカルオプティマイザ22では、上記のフィードフォワード分とフィードバック分との和を演算して、これを指令制御量として出力する。
ここで、図7〜図9を用いて、知識データベース28に格納された各種のシート反りの対応関係について説明する。
CD方向反り(CD方向上下反り)に関する要素に着目すれば、図7に示すように、各部分での水分又は温度をun,目標値をwnとすると上下反り状態をynに関し、各部分において、以下のような関係が成り立つ。
【0068】
裏ライナ用プレヒータ11においては、次式(1)のような関係が成り立つ。
【0069】
【数1】

【0070】
中芯用プレヒータ12においては、次式(2)のような関係が成り立つ。
【0071】
【数2】

【0072】
シングルフェーサ13においては、次式(3)のような関係が成り立つ。
【0073】
【数3】

【0074】
ブリッジ搬送コンベア(B/C)においては、次式(4)のような関係が成り立つ。
【0075】
【数4】

【0076】
片段シート用プレヒータ14においては、次式(5)のような関係が成り立つ。
【0077】
【数5】

【0078】
グルーマシン15においては、次式(6)のような関係が成り立つ。
【0079】
【数6】

【0080】
片段シートへのシャワー(SW)においては、次式(7)のような関係が成り立つ。
【0081】
【数7】

【0082】
面ライナ用プレヒータ16においては、次式(8)のような関係が成り立つ。
【0083】
【数8】

【0084】
面ライナへのシャワー(SW)においては、次式(9)のような関係が成り立つ。
【0085】
【数9】

【0086】
ダブルフェーサ17においては、次式(10)のような関係が成り立つ。
【0087】
【数10】

【0088】
このような関係式において、各ファンクションf1〜f10,g1〜g9を求めることが必用になるが、これらの各ファンクションについては、コルゲータの生産状態(環境条件)やマシン状態(動作条件)に応じて、実験又はシミュレーションを利用して求めることができ、知識データベース28には、各条件毎に各ファンクションf1〜f10,g1〜g9が設定されたものが格納されている。これにより、グローバルオプティマイザ21では、シートの状態情報から、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値を設定することができる。
【0089】
次に、MD方向反り(MD方向上下反り)に関する要素に着目すれば、図8に示すように、各部分での張力或いはブレーキ力をnMn,目標値をwMnとすると上下反り状態yMnに関し、各部分において、以下のような関係が成り立つ。
裏ライナ用のミルロールスタンド(MRS)においては、次式(11)のような関係が成り立つ。
【0090】
【数11】

【0091】
片段シートのMRSからブリッジ搬送コンベア(BDC)への途中の張力変化については、次式(12)のような関係が成り立つ。
【0092】
【数12】

【0093】
ブリッジ搬送コンベア(BDC)においては、次式(13)のような関係が成り立つ。
【0094】
【数13】

【0095】
表ライナ用のミルロールスタンド(MRS)においては、次式(14)のような関係が成り立つ。
【0096】
【数14】

【0097】
また、ym4=ym6が条件となる。
このような関係式において、各ファンクションfm1〜fm6,gm1〜gm3を求めることが必用になるが、これらの各ファンクションについては、コルゲータの生産状態(環境条件)やマシン状態(動作条件)に応じて、実験又はシミュレーションを利用して求めることができ、知識データベース28には、各条件毎に各ファンクションが設定されたものが格納されている。これにより、グローバルオプティマイザ21では、シートの状態情報から、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値を設定することができる。
【0098】
次に、経時積載反りに関する要素に着目すれば、図9に示すように、各部分でのシートの水分或いは温度をnSn,目標値をwSn,外界の水分或いは温度をxSnとすると上下反り状態ySnに関し、各部分において、以下のような関係が成り立つ。
ダブルフェーサ後に水分付与装置を設けた場合には、水分付与装置において、次式(15)のような関係が成り立つ。
【0099】
【数15】

【0100】
ダブルフェーサ前に水分付与装置を設けた場合には、水分付与装置において、次式(16)のような関係が成り立つ。
【0101】
【数16】

【0102】
このような関係式において、各ファンクションfS,gS等を求めることが必要になるが、これらの各ファンクションについては、コルゲータの生産状態(環境条件)やマシン状態(動作条件)に応じて、実験又はシミュレーションを利用して求めることができ、知識データベース28には、各条件毎に各ファンクションが設定されたものが格納されている。これにより、グローバルオプティマイザ21では、シートの状態情報から、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値を設定することができる。
【0103】
さらに、概念的に説明すれば、知識データベース28には、図10,図11に示すように、コルゲータの環境条件,動作条件に関する条件ベクトルφ(i)と、各システムパラメータ(制御要素の種類)とそれに対応した各目標値とからなるパラメータベクトルルθ(i)とがセットになった、データベクトルΦ(i)が多数格納されている。
したがって、コルゲータの環境条件,動作条件がそのまま適合した場合には、対応するデータベクトルΦ(a)からパラメータベクトルルθ(a)を取り出せば、グローバルオプティマイザ21では、シートの状態情報から、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値を設定することができる。
【0104】
一方、コルゲータの環境条件,動作条件がそのまま適合しなければ、そのときの環境条件,動作条件にベクトルの距離が最も近い条件ベクトルφ(b)を選出し、このデータベクトルΦ(b)からパラメータベクトルルθ(b)を取り出せば、グローバルオプティマイザ21では、シートの状態情報から、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値を近似的に設定することができる。
【0105】
ローカルオプティマイザ22では、図12に示すように、各制御要素ごとに、各時点の制御要素の状態量からフィードバック制御量(フィードバック分)を設定して、それぞれ制御する。なお、ローカルオプティマイザ22によるフィードバック制御としては、例えばI制御(積分制御)を用いることができるが、このほか,P制御(比例制御),PI制御(比例積分制御),PID制御(比例積分微分制御)等を用いてもよい。
【0106】
本発明の第1実施形態にかかるコルゲータの制御装置及び方法は上述のように構成されているので、以下のように、コルゲータの作動が制御される。
つまり、コルゲータを始動させると、ローカルオプティマイザ22は、コルゲータ1のマシン状態を常に把握して、常時又は周期的に或いはグローバルオプティマイザ21からの要求に応じて周期的に現在のマシン状態をグローバルオプティマイザ21に出力する。
【0107】
グローバルオプティマイザ21では、コルゲータの生産状態情報(環境条件),コルゲータのマシン状態情報(動作条件),シートの状態情報(シート状態量取得手段24から取得される、コルゲータ各部のシート温度,シート水分,各シート反り,及び,シート接着不良等のシート状態量)から、各制御要素(システムパラメータ)の制御量の目標値を常時或いは適当な周期で設定し、これをフィードフォワード量として設定する。
【0108】
この目標値の設定にあたって、グローバルオプティマイザ21では、知識データベース28を用いる。
ローカルオプティマイザ22では、各プレヒータ,シングルフェーサ,グルーマシーン,ダブルフェーサ、シャワーといった各制御要素(システム)の状態量と、グローバルオプティマイザ21により最適化された各制御要素(システム)のフィードフォワード量(目標値)とから、常時或いは適当な周期で、各制御パラメータの補正量を設定(同定)して、これをフィードバック制御量(フィードバック分)として設定し、上記のフィードフォワード分とフィードバック分との和を演算して、これを指令制御量として出力する。
【0109】
このように、本装置,方法では、常時又は所定の周期で制御量を更新して、各調整要素を制御するので、紙シート又は段ボールシートの状態に即応した、且つ、高精度のコルゲータの制御を実現できる。これにより、紙シート又は段ボールシートに関する状態情報の具体例であるシート反りやシート接着不良が発生しないようにコルゲータを自動運転することが可能になる。
【0110】
特に、コントローラを、上位のグローバルオプティマイザー21と、下位のローカルオプティマイザー22とからなる階層構造とし、グローバルオプティマイザー21により、最新の状態情報と生産状態情報と記環境状態情報とに基づいて制御量のフィードフォワード分を設定し、ローカルオプティマイザー21により、各調整要素の状態に応じて制御量のフィードバック分を設定し、前記フィードフォワード分にこのフィードバック分を加算して制御量を設定しているので、相関関係を有する複数の調整要素を全体として統括して監視・操作することが容易になり、煩雑な操作を解消した最適なオペレーション環境を提供することができる。
【0111】
また、最新の状態情報と生産状態情報と記環境状態情報といった膨大な入出力データを、専ら上位のグローバルオプティマイザー21で監視・操作し、制御指令にかかる操作は下位のローカルオプティマイザー22が受け持つといった構成によりグローバルオプティマイザーによる一元的統括管理環境の構築が可能になり、制御系をシンプルに構成でき、制御の高速化,高精度化が可能となる。
【0112】
さらに、グローバルオプティマイザー21では、状態情報,生産状態情報,環境状態情報と制御量のフィードフォワード分とを対応させた知識データベースを用いて制御量(フィードフォワード分)を設定するので、制御量を容易に且つ適切に得ることができる。特に、各情報とフィードフォワード分との間に非線形性等があると、両者が部分的にマッチングしない領域がでてくるが、知識データベースを用いると、部分的に線形モデルを多く作ることができ、たとえ全体として非線形性があっても、簡単な線形モデルでフィードフォワード分を高精度に設定することが可能となる。
【0113】
[B.第2実施形態]
図14,図15は本発明の第2実施形態にかかるコルゲータの制御装置を示す概略構成図である。
図14,図15に示すように、本実施形態では、知識データベースを用いていない。
つまり、グローバルオプティマイザー21内に、対応する状態情報,生産状態情報,環境状態情報に対する制御量のフィードフォワード分の対応関係は予め格納されているものとする。
このように、知識データベースを用いなくても、常時又は所定の周期で制御量を更新して、各調整要素を制御することによる効果や、コントローラを、上位のグローバルオプティマイザー21と、下位のローカルオプティマイザー22とからなる階層構造とする効果は得ることができる。
【0114】
[C.第3実施形態]
図16,図17は本発明の第3実施形態にかかるコルゲータの制御装置を示す概略構成図である。
図16に示すように、本実施形態では、知識データベースに代えて、ニューラルネットワーク(特に、階層型ニューラルネットワーク)29をそなえている。
このニューラルネットワーク29は、図16,図17に示すように、入力層29a,中間層29b,出力層29cからなり、入力層29aに状態情報,生産状態情報,環境状態情報が入力され、中間層29bを介して、出力層29cからそれぞれの制御量(目標値)が出力されるようになっている。このニューラルネットワーク29は、シミュレーション或いは試験によって、入力に対して適切な出力が得られるように予め学習して中間層29bを構築している。
【0115】
このほかの構成は、第1実施形態と同様である。
本発明の第3実施形態にかかるコルゲータの制御装置及び方法は上述のように構成されているので、第1実施形態と略同様に動作して略同様の効果を得ることができる。
本実施形態では、知識データベースのように、大量のデータベースを作成、保持する必要が無いため、データ管理の面では容易になる。また、ニューラルネットワーク29は、学習更新に適しているので、機械を使用しながら、ニューラルネットワーク29を学習更新して、より高精度のニューラルネットワークを構築できるようになる。
【0116】
[D.第4実施形態]
図18は本発明の第4実施形態にかかるコルゲータの制御装置を示す概略構成図である。
図18に示すように、本実施形態では、上記のシート状態情報を取得するシート状態情報取得手段として、シート状態情報をハードウェア(物理的なセンサ)にて取得するのではなく、ソフトウェア(コンピュータの論理)によって取得するソフトセンサ24Aがそなえられている。
本実施形態にかかるソフトセンサ(シート状態取得手段)24Aでは、コルゲータ1の各部(スタッカ18の出口部も含む)のシート温度の検出情報を各部に設置した温度センサ(非接触式センサ)31a〜31mから得て、これらの各シート温度から各部のシート水分を予測し、さらに、予測した各部のシート水分からシート反りを予測すると共に、各部のシート温度から各部のシート接着不良を予測するようになっている。特に、これらの予測は、予め構築された予測モデルを用いて行うようになっている。
【0117】
なお、温度センサは、上ライナ用プレヒータ11の上流部及び下流部、中芯用プレヒータ12の上流部及び下流部、シングルフェーサ13の下流部、片段用プレヒータ14の上流部及び下流部、グルーマシン15の下流部、下ライナ用プレヒータ16の上流部及び下流部、ダブルフェーサ17の下流部、ススタッカ20の下流部とにそれぞれそなえられている。
【0118】
ここで、予測モデルについて説明する。
まず、シート温度からシート水分を予測する原理について説明する。温度センサを設置した各部のシート温度がそれぞれの基準温度状態の場合に、各部のシート水分量は基準水分量となるが、各部のシート水分量は基準水分量と異なれば、これに対応する各部のシート温度も基準温度とは異なるものになる。また、各部のシート水分量の変化は、各部のシート温度自体だけでなく、各部間におけるシート温度の変化としても現れる。そこで、各部のシート温度、及び/又は、各部間におけるシート温度変化に対する各部のシート水分量を、実験又はシミュレーションを利用して予め求めておくことができ、想定される各部の温度範囲を十分にカバーするように、各部のシート温度、及び/又は、各部間におけるシート温度変化に対する各部のシート水分量の対応関係を求めて、これを予測モデルに設定する。
【0119】
次に、シート水分からシート反りを予測する原理について説明すると、シートはシート水分量と加わる張力とに応じて伸び又は縮みを生じ、表ライナ6と裏ライナ1との伸び又は縮みの差に応じて反りが生じる。この反りは、図13に示すように、シートの走行方向をMD方向とし、シートの幅方向をCD方向とすると、MD方向とCD方向とで異なる。
例えば、シートに基準的な張力を加えて、シート水分を1パーセント変化させると、水分によるMD方向伸び又は縮み及びCD方向伸び又は縮みは以下のようになる。
・MD方向水分伸び又は縮み:0.03%/[1%水分変化]
・CD方向水分伸び又は縮み:0.1%/[1%水分変化]
なお、シート水分を1%上昇させると上記の数値分だけ伸びと、シート水分を1%下降させると上記の数値分だけ縮むことになる。
【0120】
また、張力が水分によるMD方向伸び又は縮みは以下のようになる。
・MD方向張力伸び又は縮み:0.07%/[張力1kgf/cm変化]
なお、張力を1kg上昇させると上記の数値分だけ伸びと、張力を1kg減少させると上記の数値分だけ縮むことになる。
これにより、定常状態(シート水分:8〜10%,シート張力:0〜0.25kgf/cm)からシート水分,シート張力が変化したときのシートの各方向への伸び又は縮みを予測することができる。
【0121】
シートの反りは、上下の各ライナのMD方向,CD方向のシート伸縮の差(伸縮差,歪み差)を求めて、下式により、MD方向,CD方向の反り状態を示すWF(ワープ・ファクタ)を求めることができる。
WF=δ(610/W)2・(1/254)
=(6102/254)・(ε/8t)
ただし、δ=W2ε/8t,ε:上下ライナ歪み差,t:段ボール厚み,W:段ボール幅
したがって、シート張力を基準状態とすれば、各部のシート水分状態と、MD方向,CD方向の反り状態との対応関係を求めて、これを予測モデルに設定することができる。
【0122】
また、シート接着不良は、接着個所における温度状態が適切な範囲内にあればシート接着良であり、そうでなければシート接着不良とすることができ、各部の温度状態とシート接着不良との対応関係を求めて、これを予測モデルに設定することができる。
本実施形態では、このような、シート温度にシート水分を対応させた予測モデル、シート温度にシート接着不良を対応させた予測モデル、及び、シート水分にシート反りを対応させた予測モデルを、各種の生産状態(例えば、紙幅,フルート,原紙構成及び原紙坪量)に応じて、実験又はシミュレーションを利用して構築して、知識データベース26として、データベース化して使用している。
【0123】
なお、この知識データベース26は、必要に応じて、更新又は増強させることができるものとする。つまり、ソフトセンサ24によるシート水分,シート接着不良,シート反りの予測結果に誤差があると判断された場合(例えば、知識データベース26に基づく制御結果が適切でなかった場合)には、その生産状態における実験又はシミュレーションを再度実施して該当する予測モデルを再構築して、知識データベース26の所要箇所を更新することができる。また、知識データベース26に格納されていない生産状態について、実験又はシミュレーションを実施して該当する予測モデルを構築することで、知識データベース26に新たな生産状態下での予測モデルを増強させることができる。
【0124】
その他の部分は、第1実施形態と同様に構成されるものとする。
本発明の第4実施形態にかかるコルゲータの制御装置は上述のように構成されているので、シート状態情報の取得について、以下のような効果がある。
シート温度,シート水分,シート反り,シート接着不良の各情報をいずれも把握することができるので、シート反りやシート接着不良が発生しないようにコルゲータの運転を行うことができる。
【0125】
特に、本装置によれば、シート温度センサのみ必要であるが、シート水分センサ,シート反りセンサ,シート接着不良検知センサは不要なため、装置コストや装置のメンテナンス負担が大幅に軽減される効果がある。
また、種々の予測モデルを格納した知識データベース26を用いて、シート水分,シート反り,シート接着不良を推定する方式なので、知識データベース26に格納させる予測モデルの形態の自由度が高く、予測モデルを各条件領域毎に部分的な線形モデルとして構成することができるので、生産状態の領域全体としては、非線形性な予測モデルであっても、部分的な線形モデルの集合として作ることができ、簡単な線形モデルで高精度の予測が可能となる。
【0126】
また、ノウハウや知識が全て予測モデルという形で知識データベース内に格納されている為、データの欠落,紛失等は無く、安全性に優れている。
特に、ソフトセンサがうまく働かなかった場合など、推定値がずれていた場合にも、再学習により再度データを与えて知識データベース26を更新すれば、ソフトセンサを修正することができ、実用性が高い。
【0127】
なお、各温度センサ31a〜31mの設置箇所に水分センサも設置して、ソフトセンサは、各温度センサからコルゲータ1各部のシート温度情報を取得するとともに、各水分センサからコルゲータ1各部のシート水分情報を取得して、シート反りと、シート接着不良のみを推定するように構成してもよい。つまり、第4実施形態で説明したのと同様に、シート反りはシート水分から予測し、シート接着不良はシート温度から予測する。
【0128】
したがって、本実施形態の予測モデルは、シート温度状態と水分状態との対応関係にかかる予測モデルはそなえないがと、シート水分状態と反り状態との対応関係にかかる予測モデルと、シート温度状態とシート接着不良との対応関係にかかる予測モデルとをそなえている。したがって、知識データベース26には、これらの予測モデルに関する予測モデルデータが格納される。
【0129】
この場合には、シート温度センサとシート水分センサとを設置するため、第1実施形態に比べて装置コストや装置のメンテナンス負担が軽減される効果は低下するが、しかし、シート反りセンサ,シート接着不良検知センサは不要なため、装置コストや装置のメンテナンス負担が軽減される効果がある。しかし、第4実施形態では、予測したシート水分に基づいてシート反りを予測する(予測に基づく予測)ため、シート反りを予測精度の確保が難しいが、本実施例では、実測したシート水分値に基づきシート反りを予測するため、予測精度を確保し易い利点がある。また、第4実施形態に比べてシート水分の予測のためのモデル化が不要になるため、その分の準備負担は減少する。
【0130】
また、第4実施形態にかかるソフトセンサの知識データベース26に代えて、ニューラルネットワーク(特に、階層型ニューラルネットワーク)を設けてもよい。
このニューラルネットワークは、入力層に温度センサからのコルゲータ1各部のシート温度検出データが入力され、中間層を介して、出力層からシート水分,シート反り,シート接着不良の各情報が出力されるようする。このニューラルネットワークは、シミュレーション或いは試験によって、入力に対して適切な出力が得られるように予め学習して中間層を構築しており、シート温度からシート水分を予測する予測モデル25a、シート水分からシート反りを予測する予測モデル、シート温度からシート接着不良を予測する予測モデルに相当する機能を有することになる。
【0131】
この場合には、知識データベースのように、大量のデータベースを作成、保持する必要が無いため、データ管理の面では容易になる。また、ニューラルネットワークは、学習更新に適しているので、機械を使用しながら、ニューラルネットワークを学習更新して、より高精度のニューラルネットワークを構築できるようになる。
また、ニューラルネットワークは、入力層に温度センサからのコルゲータ1各部のシート温度検出データ及び水分センサからのコルゲータ1各部のシー水分検出データが入力され、中間層を介して、出力層からシート反り,シート接着不良の各情報が出力されるようにしてもよい。
【0132】
また、シート状態情報の推定にあたり、知識データベース26とニューラルネットワークとを選択して使用できるようにしてもよい。
【0133】
[E.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態ではあげていないが、知識データベース28やニューラルネットワーク29に代えて、或いは、これらとともに、遺伝的アルゴリズム、線型回帰、主成分回帰、重回帰、演算による厳密モデル等を利用して、状態情報,生産状態情報,環境状態情報に対する制御量の対応関係を得るようにしてもよい。
ソフトセンサに用いる予測モデルとしても、遺伝的アルゴリズム、線型回帰、主成分回帰、重回帰、演算による厳密モデル等を利用することも考えられ、これらと、知識データベース26やニューラルネットワークを適宜組み合わせて予測モデルに適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるコルゲータの制御装置を示す構成図である。
【図2】本発明の各実施形態にかかるコルゲータの上ライナプレヒータとシングルフェーサと中芯プレヒータの構成を示した概略図である。
【図3】本発明の各実施形態にかかるコルゲータの片段シートプレヒータと表ライナプレヒータとグルーマシンとダブルフェーサの一部の構成を示した概略図である。
【図4】本発明の各実施形態にかかるコルゲータのダブルフェーサの構成を示した概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるコルゲータの制御装置のコントローラ部を示す構成図である。
【図6】本発明の各実施形態にかかるシート反りを説明する図である。
【図7】本発明の各実施形態にかかるシートのCD方向反りを説明する図である。
【図8】本発明の各実施形態にかかるシートのED方向反りを説明する図である。
【図9】本発明の各実施形態にかかるシートの積載経時反りを説明する図である。
【図10】本発明の各実施形態にかかるグローバルオプティマイザの制御量設定を説明する図である。
【図11】本発明の各実施形態にかかるグローバルオプティマイザの制御量設定を説明する図である。
【図12】本発明の各実施形態にかかるローカルオプティマイザの制御量設定を説明する図である。
【図13】本発明の各実施形態にかかる反り簡易モデルを示す斜視図である。
【図14】本発明の第3実施形態にかかるコルゲータの制御装置を示す構成図である。
【図15】本発明の第2実施形態にかかるコルゲータの制御装置のコントローラ部を示す構成図である。
【図16】本発明の第3実施形態にかかるコルゲータの制御装置を示す構成図である。
【図17】本発明の第3実施形態にかかるニューラルネットワークを示す模式図である。
【図18】本発明の第4実施形態にかかるコルゲータの制御装置を示す構成図である。
【図19】従来のコルゲータの制御装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0135】
1 コルゲータ
2 生産管理装置
3 上(裏)ライナ
4 中芯
5 片段シート(片面段ボールシート)
6 下(表)ライナ
7 両面シート(両面段ボールシート)
8 一枚シートの両面シート
11 上(裏)ライナ用プレヒータ
12 中芯用プレヒータ
13 シングルフェーサ
14 片段用プレヒータ
15 グルーマシン
16 下(表)ライナ用プレヒータ
17 ダブルフェーサ
17A 上流側のヒーティングセクション
17B 下流側のクーリングセクション
18 スリッタスコアラ
19 カットオフ
20 スタッカ
21 制御量演算部(グローバルオプティマイザ)
22 プロセスコントローラ(ローカルオプティマイザ)
24 シート状態情報取得手段
24A シート状態情報取得手段としてのソフトセンサ
26,28 知識データベース
29 ニューラルネットワーク
30,31 糊
31a〜31m 温度センサ
111A,111B 裏ライナ加熱ロール
112A,112B 巻き付け量調整装置
113A,113B アーム
114A,114B,115,116 ガイドロール
121 中芯加熱ロール
122 巻き付け量調整装置
123 アーム
124 ガイドロール
131 ベルトロール
132 張力ロール
133 加圧ベルト
134 上段ロール
135 下段ロール
136 糊付け装置
136a 糊ダム
136b 糊付けロール
136c メータロール
136d 糊掻きブレード
137 ライナ用予熱ロール
138 中芯用予熱ロール
141 片段シート加熱ロール
142 巻き付け量調整装置
143 アーム
145,144 ガイドロール
151 糊付け装置
151a 糊ダム
151b 糊付けロール
151c ドクタロール
152 加圧バー装置
152a 加圧バー
152b アクチュエータ
153,154 ガイドロール
155 片段用予熱ロール
161 表ライナ加熱ロール
162 巻き付け量調整装置
163 アーム
164,165 ガイドロール
171A 第1シャワー装置(裏ライナ湿潤装置)
171B 第2シャワー装置(表ライナ湿潤装置)
172 熱盤
173 加圧ベルト
174 加圧ユニット
174a 加圧バー
174b アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙シートから段ボールシートを製造するコルゲータにおいて、走行する前記紙シート又は前記段ボールシートに関する単数又は複数の状態情報に基づいて前記コルゲータの複数の調整要素を調整する調整手段を制御するコルゲータの制御装置であって、
前記状態情報を常時又は所定の周期で取得する状態情報取得手段と、
前記状態情報取得手段により取得された最新の状態情報に基づいて前記紙シート又は前記段ボールシートに関する状態が適正になるように前記複数の調整手段の制御量を常時又は所定の周期で設定し、この設定した制御量に基づいて前記複数の調整手段を制御する制御手段とをそなえた
ことを特徴とする、コルゲータの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記状態情報取得手段により取得された最新の状態情報に加えて、前記コルゲータの生産状態情報及び環境状態情報に基づいて前記制御量を設定する
ことを特徴とする、請求項1記載のコルゲータの制御装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記コルゲータのプレヒータに設けられた加熱ロールへの表ライナ,裏ライナ,中芯の各シートの巻付量を調整するアクチュエータと、
前記加熱ロールへ供給する加熱用蒸気圧を調整するアクチュエータと、
前記コルゲータのダブルフェーサにおけるシート加圧力を調整するアクチュエータと、
前記ダブルフェーサへ供給する加熱用蒸気圧を調整するアクチュエータと、
前記コルゲータに設けられ前記各シートに糊付けする糊付け装置の糊ギャップ量を調整するアクチュエータと、
前記コルゲータに設けられ前記各シート又は片段ボールシートを湿潤化する湿潤化装置による湿潤化量を調整するアクチュエータと、
前記コルゲータに設けられ前記各シートのロールを支持するミルロールスタンドのブレーキ力を調整するアクチュエータと、
前記コルゲータに設けられた片段シートサクション装置のサクション圧を調整するアクチュエータと、
の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のコルゲータの制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記状態情報取得手段により取得された最新の状態情報と前記生産状態情報と前記環境状態情報とに基づいて前記制御量のフィードフォワード分を設定するグローバルオプティマイザーと、
前記の各調整要素の状態に応じて前記制御量のフィードバック分を設定し、前記グローバルオプティマイザーで設定されたフィードフォワード分に前記フィードバック分を加算して前記制御量を設定するローカルオプティマイザーとをそなえている
ことを特徴とする,請求項2又は3記載のコルゲータの制御装置。
【請求項5】
前記グローバルオプティマイザーには、前記状態情報,前記生産状態情報,及び前記環境状態情報と前記制御量のフィードフォワード分とを対応させた知識データベースが接続されている
ことを特徴とする,請求項4記載のコルゲータの制御装置。
【請求項6】
前記グローバルオプティマイザーには、前記状態情報,前記生産状態情報,及び前記環境状態情報を入力要素として前記制御量のフィードフォワード分を出力要素とするニューラルネットワークが接続されている
ことを特徴とする,請求項4記載のコルゲータの制御装置。
【請求項7】
前記ニューラルネットワークは、階層型ニューラルネットワークである
ことを特徴とする,請求項6記載のコルゲータの制御装置。
【請求項8】
前記状態情報は、シート反り,シート接着不良の何れかに関する情報である
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載のコルゲータの制御装置。
【請求項9】
前記状態情報取得手段は、
前記複数の状態情報のうちの特定の状態情報を検出する特定情報検出手段と、
前記特定の状態情報と前記推定対象の状態情報との相関関係である予測モデルを用いて、前記特定情報検出手段により検出された前記特定の状態情報から、前記複数の状態情報のうちの他の情報である推定対象の状態情報を推定する推定手段とをそなえている
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載のコルゲータの制御装置。
【請求項10】
前記特定の状態情報は前記紙シート又は前記段ボールシートのシート温度計測値であり、前記特定情報検出手段は温度センサであって、
前記推定対象の状態情報は、前記紙シート又は前記段ボールシートのシート水分,シート反り,シート接着不良の何れかに関する情報である
ことを特徴とする、請求項9記載のコルゲータの制御装置。
【請求項11】
前記特定の状態情報は前記紙シート又は前記段ボールシートのシート水分であり、前記特定情報検出手段は水分センサであって、
前記推定対象の状態情報は、前記紙シート又は前記段ボールシートのシート反り,シート接着不良の何れかに関する情報である
ことを特徴とする、請求項9記載のコルゲータの制御装置。
【請求項12】
前記特定の状態情報は前記紙シート又は前記段ボールシートのシート温度計測値及びシート水分計測値であり、前記特定情報検出手段は温度センサ及び水分センサであって、
前記推定対象の状態情報は、前記紙シート又は前記段ボールシートのシート反り,シート接着不良の何れかに関する情報である
ことを特徴とする、請求項9記載のコルゲータの制御装置。
【請求項13】
前記シート反りに関する情報には、前記コルゲータの下流端のスタッカに1枚シートとして積重された前記段ボールシートの積載経時反りの情報を含む
ことを特徴とする、請求項8,10〜12のいずれか1項に記載のコルゲータの制御装置。
【請求項14】
紙シートから段ボールシートを製造するコルゲータにおいて、走行する前記紙シート又は前記段ボールシートに関する単数又は複数の状態情報に基づいて前記コルゲータの複数の調整要素を調整する調整手段を制御するコルゲータの制御方法であって、
前記状態情報を常時又は所定の周期で取得する状態情報取得ステップと、
前記状態情報取得ステップにより取得された最新の状態情報に基づいて前記紙シート又は前記段ボールシートに関する状態が適正になるように前記複数の調整手段の制御量を常時又は所定の周期で設定する制御量設定ステップと、
前記制御量設定ステップにより設定された制御量に基づいて前記複数の調整手段を常時又は所定の周期で制御する制御ステップとをそなえた
ことを特徴とする、コルゲータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−112024(P2007−112024A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306396(P2005−306396)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】