説明

コルゲートチューブ、コルゲートチューブの組立方法及びワイヤーハーネス保護構造体

【課題】所望の形状で比較的容易に固定可能なコルゲートチューブ及びワイヤーハーネス保護構造体を得る。
【解決手段】コルゲートチューブ1のコルゲートチューブ本体部である環状凸部21及び環状凹部22の表面を覆って、形状固定部である形状固定用樹脂23が形成されている。この形状固定用樹脂23を環状凸部21及び環状凹部22の実質全表面上に形成することにより3次元形状が固定される。また、コルゲートチューブ1内にはワイヤーハーネスWHが配設されており、コルゲートチューブ1とワイヤーハーネスWHとによりワイヤーハーネス保護構造を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコルゲートチューブ及びワイヤーハーネス保護構造体に関し、特にその形状を一定に保持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜特許文献4に開示のように、車両等に敷設されるワイヤーハーネスを、屈曲性良好なコルゲートチューブにて覆う技術が知られている。
【0003】
図3は従来のコルゲートチューブ20を模式的に示す斜視図である。同図に示す様に、コルゲートチューブ20は長手方向に沿って環状凸部21と環状凹部22とが交互に連続形成された蛇腹管状を呈しており内部にワイヤーハーネスWHを配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−86022号公報
【特許文献2】特開2000−184551号公報
【特許文献3】特開2002−64917号公報
【特許文献4】特開2006−296166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コルゲートチューブ自体は、屈曲性に優れるもの故、それ自体は内部に配設するワイヤーハーネスの経路を一定に維持する機能を持たない。このため、ワイヤーハーネスあるいはコルゲートチューブに取付けられたクランプ部材を車両の一定位置に固定することで、ワイヤーハーネスの経路を一定に維持する必要がある。クランプ部材の固定箇所が多くなると、部品コスト増、取付けコスト増等を招く恐れがあるという問題点があった。
【0006】
ここで、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成した樋状の樹脂成型品(プロテクタ)によれば、ワイヤーハーネスを保護しつつその経路を一定に維持することができる。
【0007】
しかしながら、ワイヤーハーネスを保護可能な樹脂成型品を、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成するためには、その金型形状が複雑化してしまう。このため、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0008】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、所望の形状で比較的容易に固定可能なコルゲートチューブ、コルゲートチューブの組立方法及びワイヤーハーネス保護構造体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る請求項1記載のコルゲートチューブは、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に連続形成された蛇腹管状のコルゲートチューブ本体部と、前記コルゲートチューブ本体部の前記環状凸部と前記環状凹部の表面を覆って形成され、前記コルゲートチューブ本体部の形状を固定する形状固定部とを備える。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のコルゲートチューブであって、前記形状固定部は前記コルゲートチューブ本体部と同一材質で形成される。
【0011】
この発明に係る請求項3記載のコルゲートチューブの組立方法は、(a) 車両内において、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に連続形成された蛇腹管状のコルゲートチューブ本体部を所望の形状で仮設定するステップと、(b) 前記所望の形状を維持させた状態で、前記コルゲートチューブ本体部の前記環状凸部と前記環状凹部の表面を覆って形状固定部を形成するステップとを備え、前記ステップ(b) 実行後において、前記コルゲートチューブ本体部は前記所望の形状で固定保持されることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載のコルゲートチューブの組立方法であって、前記形状固定部は前記コルゲートチューブ本体部と同一材質で形成される。
【0013】
この発明にかかる請求項5記載のワイヤーハーネス保護構造体は、請求項1あるいは請求項2に記載のコルゲートチューブと、少なくとも1本の電線を有し、前記コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネスとを備える。
【発明の効果】
【0014】
請求項1(及び請求項2)記載の本願発明のコルゲートチューブは、形状固定部の形成前の状態でコルゲートチューブ本体部を所望の形状で変形した後、上記形状固定部を形成して完成することにより、既存のコルゲートチューブと同等なコルゲートチューブ本体部を活用して、所望の形状で固定されたコルゲートチューブを実現することができる。
【0015】
その結果、ワイヤーハーネスの保護に本発明のコルゲートチューブを利用すれば、多様なワイヤーハーネスの経路規制に適合した形状で固定されたコルゲートチューブを比較的安価に得ることができる。
【0016】
請求項3(及び請求項4)記載の本願発明のコルゲートチューブの組立方法は、ステップ(a) において形状固定部の形成前の状態でコルゲートチューブ本体部を所望の形状で仮設定している。コルゲートチューブ本体部は曲げ変形容易な性質を有しているため、比較的容易に所望の形状に仮設定することができる。
【0017】
さらに、請求項3記載の本願発明は、ステップ(b) においてコルゲートチューブ本体部の環状凸部と環状凹部の表面を覆って形状固定部を形成することにより、ステップ(b) 実行後は、コルゲートチューブ本体部を上記所望の形状で固定保持することができる。
【0018】
その結果、比較的安価な既存のコルゲートチューブ(コルゲートチューブ本体部)を活用して、最終的に所望の形状で固定されたコルゲートチューブ(コルゲートチューブ本体部+形状固定部)を実現することができる。
【0019】
このように、本発明のコルゲートチューブの組立方法によって、ワイヤーハーネスの保護にコルゲートチューブを利用する際、ワイヤーハーネスの経路規制に応じて比較的安価に形状固定できるコルゲートチューブを組み立てることができる。
【0020】
請求項5記載の本願発明のワイヤーハーネス保護構造体は、ワイヤーハーネスを内部に配設した状態で形状固定部の形成前の状態でコルゲートチューブ本体部を所望の形状で変形した後、上記形状固定部を形成して完成することにより、既存のコルゲートチューブと同等のコルゲートチューブ本体部を活用して、所望の形状で固定されたワイヤーハーネス保護構造体を実現することができる。
【0021】
その結果、多様なワイヤーハーネスの経路規制に適合した形状で固定されたワイヤーハーネス保護構造体を比較的安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態であるコルゲートチューブの断面構造(その1)を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態であるコルゲートチューブの断面構造(その2)を示す説明図である。
【図3】従来のコルゲートチューブの構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態>
(構造)
図1及び図2はこの発明の実施の形態であるコルゲートチューブの断面構造を示す説明図であり、図1はコルゲートチューブ1の軸L1が直線の場合、図2はコルゲートチューブ1の軸L2が曲線の場合を示している。
【0024】
これらの図に示すように、コルゲートチューブ1内にはワイヤーハーネスWHが配設されており、コルゲートチューブ1とワイヤーハーネスWHとによりワイヤーハーネス保護構造を構成している。
【0025】
ワイヤーハーネスWH、複数の電線が結束された構成とされている。より具体的には、ワイヤーハーネスWHは、複数の電線が配設対象となる車両への配線形態に応じて分岐しつつ結束された構成とされている。ワイヤーハーネスWHは、必ずしも分岐している必要はなく、また、単一の電線によって構成されていてもよい。また、ワイヤーハーネスWHに、他の光ケーブル等が結束されていてもよい。
【0026】
これらの図に示すように、外周面が環状の環状凸部21と環状凹部22とによりコルゲートチューブ本体部を構成している。コルゲートチューブ本体部は、長手方向(軸L1あるいは軸L2で規定される方向)に沿って環状凸部21と環状凹部22とが交互に連続形成されて蛇腹管状を呈している。そして、環状凸部21及び環状凹部22の表面を覆って、形状固定部である形状固定用樹脂23が形成されている。このように、形状固定用樹脂23を環状凸部21及び環状凹部22の実質全表面上に形成することにより、軸L1及び軸L2によって規定される3次元形状が固定される。
【0027】
図1及び図2において、形状固定用樹脂23の膜厚は環状凸部21及び環状凹部22による凹凸を反映したほぼ均一な膜厚構造で形成されているが、他の構造でもコルゲートチューブ1の3次元形状が固定できれば良い。また、コルゲートチューブ1の3次元形状が固定できるのであれば環状凸部21及び環状凹部22の表面の一部に選択的に形状固定用樹脂23を形成するような構造でも良い。
【0028】
(組立方法)
以下、本実施の形態のコルゲートチューブ1の車両内への組立方法について説明する。本実施の形態のコルゲートチューブ1の組立方法(製造方法)は以下のステップ(a) ,(b) からなる。
【0029】
まず、ステップ(a) において、形状固定用樹脂23が形成される前段階における環状凸部21及び環状凹部22からなるコルゲートチューブ本体を、車両内において所望の3次元形状で仮設定する。
【0030】
形状固定用樹脂23が形成される前段階におけるコルゲートチューブ本体部は、従来のコルゲートチューブと同様に環状凸部21と環状凹部22との間の段差部等で容易に弾性変形するため、コルゲートチューブ本体部として曲げ変形容易な性質を有している。このため、要求されるワイヤーハーネスWHを敷設する経路規制に適合した形状(所望の形状)で車両内に比較的用に仮設定することができる。
【0031】
次に、ステップ(b) において、上記所望の形状を維持させた状態で、上記コルゲートチューブ本体部の環状凸部21及び環状凹部22の表面を覆って形状固定用樹脂23を形成する。なお、形状固定用樹脂23の形成方法としては、真空成形技術を用いて環状凸部21及び環状凹部22の表面に樹脂シートをラミネートして形状固定用樹脂23を得たり、モールド成形技術を用いて環状凸部21及び環状凹部22の表面上に形状固定用樹脂23を形成したりする方法が考えられる。
【0032】
(効果等)
なお、形状固定用樹脂23の材質としては例えば、ABS樹脂、PP樹脂等が考えられる。また、コルゲートチューブ本体部の材料と同一材料で形状固定用樹脂23を形成する方が、形状固定用樹脂23がコルゲートチューブ本体部から剥がれにくい特性を有すため、安定した3次元形状の固定が可能となるため望ましい。また、製造コストの観点からもコルゲートチューブ本体部と形状固定用樹脂23とは同一材料で形成することが望ましい。
【0033】
本実施の形態のコルゲートチューブ1は、形状固定部である形状固定用樹脂23の形成前の状態でコルゲートチューブ本体部(環状凸部21及び環状凹部22)を所望の形状で変形した後、形状固定用樹脂23を形成してコルゲートチューブ1を完成することにより、既存のコルゲートチューブと同等のコルゲートチューブ本体部を活用して、所望の形状で固定された本実施の形態のコルゲートチューブ1を実現することができる。
【0034】
その結果、ワイヤーハーネスの保護に本実施の形態のコルゲートチューブを利用すれば、多様なワイヤーハーネスの経路規制に適合した形状で固定されたコルゲートチューブを比較的安価に得ることができる。
【0035】
また、上述したコルゲートチューブの組立方法は、ステップ(a) において形状固定用樹脂23の形成前の状態でコルゲートチューブ本体部を所望の形状で仮設定している。コルゲートチューブ本体部は曲げ変形容易な性質を有しているため、比較的容易に所望の形状に仮設定することができる。
【0036】
さらに、本実施の形態の組立方法は、ステップ(b) においてコルゲートチューブ本体部の環状凸部21及び環状凹部22の表面を覆って形状固定用樹脂23を形成することにより、ステップ(b) 実行後は、コルゲートチューブ1に含まれるコルゲートチューブ本体部を上記所望の形状で固定保持することができる。
【0037】
その結果、比較的安価な既存のコルゲートチューブと同等のコルゲートチューブ本体部を活用して、最終的に所望の形状で固定されたコルゲートチューブ(コルゲートチューブ本体部+形状固定用樹脂23)を実現することができる。
【0038】
このように、本実施の形態のコルゲートチューブの組立方法によって、ワイヤーハーネスの保護にコルゲートチューブを利用する際、多様なワイヤーハーネスの経路規制に応じた3次元形状のコルゲートチューブ1を比較的容易に組み立てることができる効果を奏する。
【0039】
また、本実施の形態1のコルゲートチューブ1と内部に配設されたワイヤーハーネスWHとからなるワイヤーハーネス保護構造体は、以下の効果を有する。
【0040】
ワイヤーハーネス保護構造体は、形状固定用樹脂23の形成前の状態で、ワイヤーハーネスWHを内部に配設したコルゲートチューブ本体部を所望の形状で変形した後、形状固定用樹脂23を形成して、コルゲートチューブ1を完成することにより得ることができる。すなわち、既存のコルゲートチューブと同等のコルゲートチューブ本体部を活用して、所望の形状で固定されたワイヤーハーネス保護構造体(コルゲートチューブ1+ワイヤーハーネスWH)を実現することができる。
【0041】
その結果、多様なワイヤーハーネスWHが敷設される経路規制に適合した3次元形状で固定されたワイヤーハーネス保護構造体を比較的安価に得ることができる効果を奏する。
【符号の説明】
【0042】
1 コルゲートチューブ
21 環状凸部
22 環状凹部
23 形状固定用樹脂
WH ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に連続形成された蛇腹管状のコルゲートチューブ本体部と、
前記コルゲートチューブ本体部の前記環状凸部と前記環状凹部の表面を覆って形成され、前記コルゲートチューブ本体部の形状を固定する形状固定部とを備えた、
コルゲートチューブ。
【請求項2】
請求項1記載のコルゲートチューブであって、
前記形状固定部は前記コルゲートチューブ本体部と同一材質で形成される、
コルゲートチューブ。
【請求項3】
(a) 車両内において、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に連続形成された蛇腹管状のコルゲートチューブ本体部を所望の形状で仮設定するステップと、
(b) 前記所望の形状を維持させた状態で、前記コルゲートチューブ本体部の前記環状凸部と前記環状凹部の表面を覆って形状固定部を形成するステップとを備え、
前記ステップ(b) 実行後において、前記コルゲートチューブ本体部は前記所望の形状で固定保持されることを特徴とする、
コルゲートチューブの組立方法。
【請求項4】
請求項3記載のコルゲートチューブの組立方法であって、
前記形状固定部は前記コルゲートチューブ本体部と同一材質で形成される、
コルゲートチューブの組立方法。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2に記載のコルゲートチューブと、
少なくとも1本の電線を有し、前記コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネスと、
を備えるワイヤーハーネス保護構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−55754(P2013−55754A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191214(P2011−191214)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】