説明

コレステロール低下剤の組合せ

脂質異常症を有する患者は、血中コレステロールレベルの低下に有効量の非スタチン系コレステロール低下剤および血中の一酸化窒素生物活性の増大を仲介するのに有効な一定量の一酸化窒素(NO)供与化合物で処置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年8月7日出願の米国仮特許出願第60/835,912号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、非スタチン系コレステロール低下剤の抗硬化効果(antisclerotic effect)の増大を対象とする。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
脂質異常症、すなわち高レベルのトリグリセリドまたはコレステロールは、アテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症関連冠動脈疾患、虚血性脳血管疾患ならびに末梢血管疾患の主な原因である。
【0004】
ここで用いる、脂質異常症を有する患者とは、血中総コレステロールレベル≧200mg/dLおよび/またはLDLコレステロール≧70mg/dLを有する者である。
【0005】
スタチンは、脂質異常症の処置に最も有効かつ良好な耐容剤(tolerated drug)である。スタチンは、コレステロール生合成の律速段階を触媒するHMG−CoAの競合的阻害剤である。スタチンはまた、一酸化窒素合成酵素を刺激して一酸化窒素の産生の増大をもたらし、それにより、コレステロール低下、およびまた、酸化したLDLコレステロールの低下レベルに依存しない抗硬化効果の増大を仲介する。
【0006】
スタチンと異なるいくつかのクラスの非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤が存在するが、これらは、抗硬化効果およびさらなる酸化したLDLコレステロール血中レベル低下効果に依存しない、一酸化窒素刺激特性および一酸化窒素産生増大を仲介する特性を有しない。スタチンおよび一酸化窒素は抗酸化剤活性も示し、このことは、それらの有益な心臓血管特性に寄与し得る。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明により、一酸化窒素(NO)供与化合物と共に非スタチン系コレステロール低下剤を投与することは、スタチンの投与なしに投与される非スタチン系コレステロール低下剤の抗硬化効果を改善することが見出されている。
【0008】
第一態様と称される本発明の一態様は、患者における抗硬化効果をもたらす脂質異常症を有する患者の処置方法であって、該患者に、血中コレステロールレベルの低下に有効量の、NO供与活性を有さない非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤、および血中の一酸化窒素生物活性の増大をもたらすのに有効な一定量の一酸化窒素供与化合物を投与すること、を含む方法を対象とする。
【0009】
本発明の第二態様は、血中コレステロールレベル低下に有効量の非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤および一酸化窒素生物活性増大量の一酸化窒素(NO)供与化合物を含む、経口単位投与量剤形を対象とする。
【0010】
本明細書で用いる用語“単位投与量剤形”は、患者に対して、記載の量の非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤およびNO供与化合物の両方を含む各単位、例えば、単一の丸剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤などの単一用量として適する、単一の物理的に分離した単位を意味する。
【0011】
ここで用いる、一酸化窒素生物活性は、血管拡張および/または少なくとも10%の血小板凝集阻害(インビトロの生物検定での評価)、ならびに標準分析法、例えば、化学発光および/またはキャピラリー電気泳動により決定される患者の血中の亜硝酸塩または硝酸塩レベルの増大に十分な活性を意味する。
【0012】
詳細な説明
本発明者らは、ここで、本明細書の第一態様を対象とする。
【0013】
非スタチン系コレステロール低下剤には、例えば、ナイアシン、フィブラート、胆汁酸捕捉剤、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質の阻害剤(MTP阻害剤)、食事性および胆汁性コレステロール吸収阻害剤、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0014】
該フィブラートには、例えばクロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェモフィブラート(femofibrate)、シプロフィブラートおよびベザフィブラートが含まれる。
【0015】
該胆汁酸捕捉剤には、例えばコレスチラミン、コレスチポール、およびコレセベラムが含まれる。
【0016】
該MTP阻害剤には、例えば:
(1)下記の構造
【化1】


を有するBMS−20138、
(2)下記の構造
【化2】


を有するCP−346086、
【0017】
(3) (2S)−2−シクロペンチル−2−[4−[(2,4−ジメチル−9H−ピリド[2,3−b]インドール−9−イル)メチル]フェニル]−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル]エタナミド(Implitapide)であるImplitamide、
(4)WO03072532に記載の、ジエチル 2−(2−[3−ジメチルカルバモイル−4−[(4’トリフルオロメチルビフェニル−2−カルボニル)アミノ]フェニル]アセトキシメチル)−2−フェニル マロネート(maolnate)であると推定されるJTT−130、ならびに
(5)[(3−メトキシ−2−[(4−トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾイル)アミノ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−イソキノリンカルボキシレート(SLX4090)であるSLX 4090
が含まれる。
【0018】
該食事性および胆汁性コレステロール吸収阻害剤には、例えば、式
【化3】


を有するエゼチミブ(ezetinibe)(Zetia)が含まれる。
【0019】
該ACAT阻害剤には、例えば、
(1)スルファニル酸(sulfanic acid)、[[2,4,6−トリス(1−メチルエチル)フェニル]アセチル]−,2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル エステルであるアバシミブ(avasimbe)(CI−1011);
(2) (1S,2S)−2−[3−(2,2−ジメチルプロピル)−3−ノニルウレイド]シクロヘキサン−1−イル 3−[(4R)−N−(2,2,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキサン−4−カルボニル)アミノ]プロピオネート(F−1394)であるF−1394、
(3)下記の式
【化4】


を有するアゼチジノン Sch 48461、ならびに
(4)下記の式
【化5】


を有するアゼチジノン Sch 58053
が含まれる。
【0020】
非スタチン系コレステロール低下剤が、本目的に関してFDAに承認されまたは対応する外国当局により承認されているとき、それは、FDAおよび/または対応する外国機関により承認された投与量および投与経路により用いられる。
【0021】
非スタチン系コレステロール低下剤が、FDAまたは外国当局に承認されないが、FDA承認取得のために試験されたか、または試験中であるとき、投与量および投与経路は、当該試験に用いられたものである。
【0022】
他の投与量は、コレステロール低下活性により決定され、投与経路は、好ましくは経口経路である。
【0023】
該NO供与化合物は、NO、NO、NOまたはNO2を転移または放出する能力を有する化合物であり、例えば、一硝酸イソソルビド、硝酸イソソルビド、亜硝酸エチル、亜硝酸アミル、ニトログリセリン、ニコランジル、ニトロプルシド、ニトロソチオオール、フロキサン、NONOate、および無機亜硝酸塩ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。ニトロソチオオールには、例えば、ニトロソグルタチオンおよびS−ニトロソアセチルペニシラミン(SNAP)が含まれる。NONOateには、例えばDEANO(ジエチルアミン NONOate)およびDETANO(ジエチレントリアミン NONOate)が含まれる。
【0024】
NO供与体が、FDAまたは対応する外国当局によって、ある目的に対し承認されているとき、本発明においても、承認された投与量および承認された投与量および投与経路で用いられる。他の投与量は、冠拡張活性または抗血小板活性による生物検定で決定可能であり、投与経路は好ましくは経口投与である。
【0025】
該NO供与体は、酸化したLDLコレステロールの低下を独立してもたらし、さらにLDLコレステロール低下効果を独立してもたらして抗硬化効果をもたらし、抗酸化効果、抗虚血効果、抗炎症効果、冠拡張効果(血流増加または血圧低下を呈する)または抗血小板効果による抗硬化の利益をもたらす。
【0026】
好ましくは、非スタチン系コレステロール低下剤およびNO供与化合物は両方とも、上記の投与量を含む単一の単位投与量剤形で共に投与される。
【0027】
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などはまた、下記のアジュバント:ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンのような結合剤;二リン酸カルシウム、デンプンまたはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、Primogel、トウモロコシデンプンなどのような崩壊剤;タルク、硬化植物油、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotexのような滑剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;ならびに、スクロース、アスパルテームまたはサッカリンのような甘味剤、またはペパーミント、メチル、サリチル酸塩またはオレンジ風味剤のような香味剤、の1種以上も包含していてよい。単位投与量剤形がカプセル剤であるとき、それは、上記のタイプの物質に加えて、ポリエチレングリコールまたは脂肪油のような液体担体を含み得る。他の単位投与量剤形は、投与量単位の物理的形状を変更する他の種々の物質、例えばコーティング剤を含み得る。それゆえに、錠剤または丸剤は、糖類、セラック剤、または他のコーティング剤でコーティングされ得る。シロップは、本発明の化合物に加えて、甘味剤としてスクロース、ならびに任意の防腐剤、色素および着色剤および香味剤を含み得る。これらの種々組成物の製造に用いる物質は、薬学的に純粋であり、使用量で無毒であるべきである。
【0028】
本発明は、以下の実施例で説明される。
【実施例】
【0029】
実施例I
高LDL(110)mg/dL)および冠動脈疾患を有する6歳の患者は、エゼチミブ(10mg)および一硝酸イソソルビド(30mg)を1日1回経口投与される。1週間後、LDLレベルは70mg/dLまで低下し、胸痛が軽減される。
【0030】
実施例II
投薬レジメンが、ナイアシン/硝酸イソソルビド、250mg/40mg、1日2回であるとき、実施例Iと同様の結果が得られる。
【0031】
実施例III
投薬レジメンが、アバシマイブ/一硝酸イソソルビド、100mg/40mg、1日1回であるとき、実施例Iと同様の結果が得られる。
【0032】
実施例IV
過去2回の心臓発作を経験した75歳男性は、インプリタピド、3.2mg/kg/日、および一硝酸イソソルビド、40mg/日、共に経口投与で服用する。該患者のコレステロールレベルは、20%を超えて低下し、患者は、その後の心臓発作から保護される。
【0033】
実施例V
高血圧および糖尿病を有し、LDLコレステロール 100mg/dL、血圧140/95の65歳女性は、クロフィブラート0.75グラム+GSNO、15mg、1日2回経口投与で服用開始する。LDLコレステロールは70mg/dLまで低下し、血圧は120/80となる。
【0034】
実施例VI
単位投与量剤形は、エゼチミブ10mgおよび一硝酸イソソルビド30mgを含むカプセル剤の形態で製造される。該カプセル剤は、上記の結果を得るために、実施例Iの患者に経口投与される。
【0035】
変形
上記の本発明は、ある実行可能かつ好ましい態様を記載している。それらは、その変形および修飾は当業者に明らかであるため、本発明を限定するものとして意図されず、それらは全て、本発明の精神および範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるLDLコレステロールの低下をもたらす、脂質異常症を有する患者の処置方法であって、該患者に、血中コレステロールレベル低下に有効量の非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤およびNO生物活性の増大をもたらすのに有効な一定量の一酸化窒素共与化合物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
該非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤が、ナイアシン、フィブリン酸誘導体、胆汁酸捕捉剤、MTP阻害剤、食事性および胆汁性コレステロール吸収阻害剤、ACAT阻害剤ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該NO供与化合物が、一硝酸イソソルビド、硝酸イソソルビド、亜硝酸エチル、亜硝酸アミル、ニトログリセリン、ニトロプルシド、およびニトロソチオールならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤が、エゼチミブを含み、そして該NO供与化合物が、一硝酸イソソルビドを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
血中コレステロールレベル低下に有効量の非スタチン系血中コレステロールレベル低下剤および一酸化窒素生物活性を増大するのに有効量の一酸化窒素(NO)供与化合物を含む、経口単位投与量剤形。

【公表番号】特表2010−500348(P2010−500348A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523763(P2009−523763)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/016598
【国際公開番号】WO2008/020962
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(502347087)デューク・ユニバーシティ (19)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】