説明

コロイドシリカ分散液

本発明は少なくとも一種のシラン化合物及びコロイドシリカ粒子を混合することを含む、少なくとも約20重量%のシリカ含量を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液の製造方法であって、シラン対シリカの重量比が約0.003から約0.2までであることを特徴とする上記分散液の製造方法に関する。また、本発明はその方法により得られる分散液、及び少なくとも約20重量%のシリカ含量を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液であって、シラン対シリカの重量比が約0.003から約0.2までであることを特徴とする上記分散液に関する。更に、本発明は被覆適用のための、また添加剤としての分散液の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液、このような分散液の製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイドシリカ分散液は長年にわたって、例えば、種々の材料の接着性を改良するだけでなく、耐磨耗性及び耐水性を増大するための被覆材料として使用されていた。しかしながら、これらの分散液、特に高度に濃厚なコロイドシリカ分散液はゲル化又はシリカの沈殿を受け易く、これが一層長い貯蔵を不可能にする。
【0003】
日本特許第3258878号の英語要約書はアルコキシシランをケイフッ化水素酸又はそのアンモニウム塩を水性媒体中でアンモニアと反応させ、生成された沈殿シリカを水性媒体から分離し、沈殿シリカを湿潤状態で粉砕することにより調製されたシリカゾルとブレンドすることにより調製された被覆組成物を開示している。
【0004】
凍結点以下でさえも、実質的に沈殿しないで容易に貯蔵でき、輸送でき、しかも改良された接着性、耐磨耗性、及び/又は耐水性を必要とする用途に使用し得る安定かつ高度に濃厚なコロイドシリカ分散液を提供することは望ましいであろう。また、このような分散液の便利かつ安価な製造方法を提供することは望ましいであろう。本発明の更なる目的は環境上の影響を最小にするこのような安定な分散液を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は少なくとも一種のシラン化合物及びコロイドシリカ粒子を混合することを含む、少なくとも約20重量%のシリカ含量を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液の製造方法であって、シラン対シリカの重量比が約0.003から約0.2まで、好ましくは約0.006から約0.15まで、最も好ましくは約0.015から約0.1までであることを特徴とする上記分散液の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記混合は好ましくは約50℃以下の温度、更に好ましくは約35℃以下の温度で行なわれる。約50℃より上の温度はシランの少なくとも部分的な自己縮合をもたらすことがあり、これが分散液の安定性、分散液が付与する接着性だけでなく、耐磨耗性及び耐水性を低下する。この混合の時間は重要ではないが、好適には約3時間まで、好ましくは約2時間までである。しかしながら、分散液は混合されるシラン及びコロイドシリカ粒子の型に応じてほんの約10分まで、もしくは好ましくはほんの約5分まで、又は最も好ましくはほんの1分までの混合を必要とし得る。シランがコロイドシリカ粒子に添加されることが好ましい。シランはそれをコロイドシリカ粒子(これらは水性シリカゾル中に分散されることが好ましい)と混合する前に希釈されることが好ましい。シランは水で希釈されて、好適には約1:8から約8:1まで、好ましくは約3:1から約1:3まで、最も好ましくは約1.5:1から約1:1.5までの重量比の、シラン及び水のプレミックスを生成することが好ましい。得られる溶液は実質的に透明であり、安定であり、しかもコロイドシリカ粒子に添加するのに容易である。コロイドシリカ粒子及びプレミックスされた水性シランを混合する時間は好適には約5分まで、好ましくは約1分までである。
【0007】
本発明の混合は約1から約13まで、好ましくは約6から約12まで、最も好ましくは約7.5から約11までのpHで行なわれてもよい。
【0008】
特に文脈“安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液”中の、“安定な”という用語は、分散液又はその中に分散されたシラン処理コロイドシリカ粒子が、好ましくは少なくとも約2ヶ月、更に好ましくは少なくとも約4ヶ月、最も好ましくは少なくとも約5ヶ月の期間内で室温(20℃)における通常の貯蔵で実質的にゲル化又は沈殿しないことを意味する。
【0009】
好ましくは、調製の2ヶ月後の分散液の粘度の相対的増加は約100%より低く、更に好ましくは約50%より低く、最も好ましくは約20%より低い。
【0010】
好ましくは、調製の4ヶ月後の分散液の粘度の相対的増加は約200%より低く、更に好ましくは約100%より低く、最も好ましくは約40%より低い。
【0011】
コロイドシリカ粒子(ここではまたシリカゾルと称される)は、例えば、沈降シリカ、ミクロシリカ(シリカヒューム)、熱分解法シリカ(ヒュームドシリカ)又は充分な純度を有するシリカゲル、及びこれらの混合物から誘導し得る。
【0012】
本発明のコロイドシリカ粒子及びシリカゾルは変性されてもよく、その他の要素、例えば、アミン、アルミニウム及び/又はホウ素(これらは粒子及び/又は連続相中に存在し得る)を含み得る。ホウ素変性シリカゾルは、例えば、米国特許第2,630,410号に記載されている。アルミニウム変性シリカ粒子は好適には約0.05重量%から約3重量%まで、好ましくは約0.1重量%から約2重量%までのAl2O3含量を有する。アルミニウム変性シリカゾルの調製操作が、例えば、Iler, K. Ralph著“シリカの化学”, 407-409頁, John Wiley & Sons (1979)及び米国特許第5,368,833号に更に記載されている。
【0013】
本コロイドシリカ粒子は好適には約2nmから約150nmまで、好ましくは約3nmから約50nmまで、最も好ましくは約5nmから約40nmまでの範囲の平均粒子直径を有する。好適には、本コロイドシリカ粒子は約20m2/gから約1500m2/gまで、好ましくは約50m2/gから約900m2/gまで、最も好ましくは約70m2/gから約600m2/gまでの比表面積を有する。
【0014】
本コロイドシリカ粒子は狭い粒子サイズ分布、即ち、粒子サイズの低い相対的標準偏差を有することが好ましい。この粒子サイズ分布の相対的標準偏差は粒子サイズ分布の標準偏差対平均粒子サイズ(数基準)の比である。粒子サイズ分布の相対的標準偏差は好ましくは数基準で約60%より低く、更に好ましくは数基準で約30%より低く、最も好ましくは数基準で約15%より低い。
【0015】
本コロイドシリカ粒子は、水性シリカゾルを生成するように好適には安定化陽イオン、例えば、K+、Na+、Li+、NH4+、有機陽イオン、一級アミン、二級アミン、三級アミン、及び四級アミン、及びこれらの混合物の存在下で、実質的に水性の溶媒中に分散される。しかしながら、また水と混和し得る有機溶媒、例えば、低級アルコール、アセトン又はこれらの混合物を含む分散液が、全容積の好ましくは約1容積%から約20容積%まで、更に好ましくは約1容積%から約10容積%まで、最も好ましくは約1容積%から約5容積%までの量で使用し得る。しかしながら、更なる溶媒を含まない水性シリカゾルが使用されることが好ましい。コロイドシリカ粒子は負に荷電されることが好ましい。好適には、ゾル中のシリカ含量は約20重量%から約80重量%まで、好ましくは約25重量%から約70重量%まで、最も好ましくは約30重量%から約60重量%までである。シリカ含量が高い程、得られるシラン処理コロイドシリカ分散液は一層濃厚である。シリカゾルのpHは好適には約1から約13まで、好ましくは約6から約12まで、最も好ましくは約7.5から約11までである。しかしながら、アルミニウム変性シリカゾルについて、そのpHは好適には約1から約12まで、好ましくは約3.5から約11までである。
【0016】
このシリカゾルは好ましくは約20から約100まで、更に好ましくは約30から約90まで、最も好ましくは約60から約90までのS値を有する。
【0017】
これらの範囲内のS値を有する分散液は得られる分散液の安定性を改良し得ることがわかった。このS値はコロイドシリカ粒子の凝集の程度、即ち、凝集物又はミクロゲル形成の程度を特徴付ける。このS値はIler, R.K. & Dalton, R.L.著J. Phys. Chem. 60(1956), 955-957に示された式に従って測定され、計算された。
【0018】
S値はシリカゾルのシリカ含量、粘度、及び密度に依存する。高いS値は低いミクロゲル含量を示す。S値はシリカゾルの分散相中に存在するSiO2の量(重量%)を表す。ミクロゲルの程度は、例えば、米国特許第5,368,833号に更に記載されたように製造方法中に調節し得る。
【0019】
前記シラン化合物はシラノール基と安定なシロキサン共有結合(Si-O-Si)を形成することができ、又は、例えば、コロイドシリカ粒子の表面で、水素結合によりシラノール基に結合し得る。
【0020】
好適なシラン化合物として、トリス-(トリメトキシ)シラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、イソシアネートシラン、例えば、トリス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス-(3-〔トリエトキシシリル〕プロピル)ポリスルフィド、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、エポキシ基(エポキシシラン)、グリシドキシ及び/又はグリシドキシプロピル基を含むシラン、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン、ビニル基を含むシラン、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシリルクロリド、ビニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びこれらの混合物が挙げられる。米国特許第4,927,749号は本発明に使用し得る更なる好適なシランを開示している。しかしながら、最も好ましいシランはエポキシシラン及びグリシドキシ基又はグリシドキシプロピル基を含むシラン、特にγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又はγ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである。
【0021】
好ましい実施態様によれば、有機バインダーが続いてシラン処理コロイドシリカ粒子の分散液と混合される。“有機バインダー”という用語はラテックス、水溶性樹脂、ポリマー及びこれらの混合物を含む。水溶性樹脂及びポリマーは種々の型のもの、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、変性ポリ(ビニルアルコール)、ポリカルボキシレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリ(アクリル酸)、ポリアミドアミン、ポリアクリルアミド、ポリピロール、タンパク質、例えば、カゼイン、大豆タンパク質、合成タンパク質、多糖、例えば、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース、澱粉又は変性澱粉、キトサン、多糖ガム、例えば、グアーガム、アラビアガム、キサンタンガム及びマスチックガム並びにこれらの混合物又はハイブリッドであってもよい。“ラテックス”という用語は樹脂及び/又は種々の型のポリマー、例えば、スチレン-ブタジエンポリマー、ブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー、ブチルポリマー、ニトリルポリマー、酢酸ビニルホモポリマー、アクリルポリマー、例えば、ビニルアクリルコポリマー又はスチレン-アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、エポキシポリマー、セルロースポリマー、例えば、ミクロセルロース、メラミン樹脂、ネオプレンポリマー、フェノールをベースとするポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリビニルブチラールポリマー、シリコーン、例えば、シリコーンゴム及びシリコーンポリマー(例えば、シリコーン油)、尿素-ホルムアルデヒドポリマー、ビニルポリマー又はこれらの混合物もしくはハイブリッドのエマルションをベースとする合成ラテックス及び/又は天然ラテックスを含む。
【0022】
好ましくは、前記有機バインダーは約0.01から約4まで、更に好ましくは約0.1から約2まで、最も好ましくは約0.2から約1までのシリカ対有機バインダーの重量比でシラン処理シリカ粒子と混合される。
【0023】
また、本発明はその方法により得られる安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液に関する。
【0024】
更に、本発明は少なくとも約20重量%のシリカ含量を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液に関するものであり、その分散液中のシラン対シリカの重量比は約0.003から約0.2まで、好ましくは約0.006から約0.15まで、最も好ましくは約0.015から約0.1までである。
【0025】
前記分散液中のシランの重量は可能な遊離シラン化合物及びシリカ粒子に結合されたシラン誘導体又はシラン基の合計量として計算される。
【0026】
高度に濃厚なシラン処理コロイドシリカ分散液は、一層有効であることの他に、また、例えば、被覆される材料への適用後に乾燥時間を減少する。こうして、乾燥に使用されるエネルギーがかなり減少し得る。分散液中の高いシリカ含量は、シラン処理コロイドシリカ粒子が実質的な凝集、沈殿及び/又はゲル化を生じないで安定に分散されて留まる限り、好ましい。好ましくは、分散液中のシリカ含量は約20重量%から約80重量%まで、更に好ましくは約25重量%から約70重量%まで、最も好ましくは約30重量%から約60重量%までである。これはまたその低減された輸送コストに鑑みて有益である。
【0027】
前記分散液の安定性はその取扱を促進する。何とならば、それが貯蔵を可能にし、使用直前に現場で調製される必要がなく、しかも危険な量の有害な溶媒を含まないからである。
【0028】
この実質的に水性の分散液は有機溶媒を含まないことが好ましい。しかしながら、一実施態様によれば、有機溶媒が全容積の約1容量%から約20容量%まで、好ましくは約1容量%から約10容量%まで、最も好ましくは約1容量%から約5容量%までの量で水性分散液中に含まれてもよい。これは、或る用途について、或る量の有機溶媒が実質的に有害な効果を生じないで存在してもよいという事実のためである。
【0029】
前記分散液はまたシラン処理コロイドシリカ粒子の他に、少なくとも或る程度まで、シリカ粒子のサイズ、シラン対シリカの重量比、シラン化合物の型、反応条件等に応じてシラン処理されなかったコロイドシリカ粒子を含んでもよい。好適には、コロイドシリカ粒子の少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約65重量%、更に好ましくは少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約99重量%がシラン変性される。シラン処理コロイドシリカ分散液はシラン基又はシリカ粒子の表面に結合されたシラン誘導体の形態のシランの他にまた少なくとも或る程度まで自由に分散された未結合シラン化合物を含んでもよい。好適には、シラン化合物の少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、更に好ましくは少なくとも約75重量%、更に好ましくは少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約95重量%がシリカ粒子の表面に結合される。こうして、この方法により、シリカ粒子が表面変性される。
【0030】
好ましくは、シラン基に結合することができるコロイドシリカ粒子のシラノール基の約1%から約90%(数基準)、更に好ましくは約5%から約80%まで、最も好ましくは約10%から約50%までがシラン基を結合する。好ましくは、コロイドシリカ粒子はその表面積1nm2当り約0.1個から約5.5個まで、更に好ましくは約0.25個から約4個まで、最も好ましくは約0.5個から約2.5個までのシラン基又はシラン誘導体を結合する。
【0031】
好ましい実施態様によれば、シラン処理コロイドシリカ分散液は本明細書に更に記載されたような、有機バインダー、好ましくはラテックスを含む。有機バインダー及びシラン処理コロイドシリカ粒子を含む分散液の全固形分は好適には約20重量%から約80重量%まで、好ましくは約25重量%から約65重量%まで、最も好ましくは約30重量%から約50重量%までである。乾燥基準でシリカ対有機バインダーの重量比は好適には約0.05から約4まで、好ましくは約0.1から約2まで、最も好ましくは約0.2から約1までの範囲である。
【0032】
前記有機バインダーを含む分散液は種々の種類の基材上に被覆フィルムを形成することができる。
【0033】
好ましい実施態様によれば、シラン処理コロイドシリカ粒子及び有機バインダーは本分散液中に不連続の粒子として存在する。
【0034】
本発明はまた被覆適用、また鋳物適用、例えば、精密インベストメント鋳造及び耐火繊維バウンディング、例えば、炉のライニングスラリー/分散液、触媒、洗剤、及びウェハ研磨スラリーにおける、増大された接着性、改良された耐磨耗性、及び/又は耐水性を、例えば、接着促進剤、積層剤、シーラント、疎水化剤、セメント材料に付与するための添加剤としてのシラン処理コロイドシリカ分散液の使用に関する。被覆されるのに適した材料として、構造材料、例えば、レンガ、セラミック材料、セメント及びコンクリート、写真紙、木材、金属表面、例えば、鋼又はアルミニウム、プラスチックフィルム、例えば、ポリエステル、PET、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、又はポリスチレン、及び織物が挙げられる。このシラン処理コロイドシリカ分散液はまた、例えば、紙、プラスチック、織物、ガラス、セラミック、セメント材料、金属、及び木材上のインクジェット被覆物を含むインクジェット適用においてインキ接着及び耐水性の両方を増進するようにインクジェット被覆層の親水性を調節するのに使用されてもよい。このシラン処理コロイドシリカ分散液はまた親水性バランスを調節するためにエマルションを安定化するのに使用されてもよい。このシラン処理コロイドシリカ分散液はまた、例えば、良好な湿潤性及び分散性を組み合わせることにより顔料分散剤として使用されてもよい。
【0035】
本発明がこうして記載されたので、本発明が多くの方法で変化し得ることが自明であろう。このような変化は本発明の骨子及び範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に自明であるような全てのこのような改良は特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。以下の実施例は反応の更に特別な詳細を示すが、下記の一般原理がここに開示されるかもしれない。以下の実施例は記載された発明がその範囲を限定しないで実施し得る方法を更に説明するであろう。
【0036】
全ての部数及び%は、特にことわらない限り、重量部及び重量%を表す。
【実施例】
【0037】
以下に使用されるシランA及びBはスイスのクロンプトンS.A.から入手し得る。
A:シルクエスト・ウェトリンク78(グリシドキシ含有エポキシ-シラン)、
B:シルクエストA-187(グリシドキシ含有エポキシ-シラン)
スウェーデンのエカ・ケミカルズABから入手し得る以下の実施例に使用されるシリカゾルを下記の表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
シラン処理コロイドシリカ分散液の調製
シランサンプルA及びBを適度の撹拌で約5分間にわたって表2に従ってシリカゾルに滴下して添加した。撹拌を約2時間続けた。水及びシランを等しい量で混合することにより、水で希釈したシランのプレミックスしたサンプルを調製した(表4を参照のこと)。透明な溶液が得られるまで、この混合物を徐々に撹拌した。次いでその水性シランを適度の撹拌下でシリカゾルと混合した。特にことわらない限り、全てのサンプルを室温で調製した。
【0040】
【表2】

【0041】
表2は全ての得られたシラン処理シリカゾルが上記重量比で安定であったことを示す。表2中に使用される“安定な”という用語は5ヶ月以内に室温での通常の貯蔵時に白色にならず、ゲル化せず、しかも沈殿しない分散液を意味する。表3は調製されたシラン処理シリカゾルの更なるサンプルを示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3はシラン対シリカの重量比の影響を示す。あまりにも高い重量比は製品番号9及び10(これらは本発明の範囲外である)から見られるようにシラン処理シリカゾルを不安定にし、一方、本発明の製品11は安定である。
【0044】
【表4】

【0045】
表4はまたシラン処理シリカゾル(本発明の製品14-18)が製品13(参考製品)(重量比シラン対シリカがあまりにも高い)とは対照的に安定であることを示す。
【0046】
耐水性
シラン処理シリカゾル10gをセラニーズから入手し得るモウィリスLDM7602Sである“ソフトラテックス”20gと混合することにより、本発明の分散液の耐水性を評価した(フィルム7-11、13を参照のこと)。フィルム1-4はシラン処理シリカ粒子を含まず、またフィルム5及び6は最初にシラン:水溶液(1:1) 0.5gを同“ソフトラテックス”20gと混合し、次いでシラン-ラテックス混合物をシリカゾルA5 9.5gと混合することにより調製された。先に調製したラテックス混合物2gを使用してフィルムをキャストした。フィルムを16時間にわたって室温でエージングした。次いで水2滴をエージングされたフィルムの上に加えることにより耐水性を評価した。水を加えた10分後に、水の影響を分析し、下記の尺度に従ってカテゴリー化し、表5にリストした。
0:“溶解された”フィルム、
1:フィルムへのひどい影響、
2:フィルムへの若干の影響、
3:影響なし。
【0047】
【表5】

【0048】
表5はシラン処理しなかったシリカゾル及びソフトラテックスの混合物の参考フィルム(フィルム1-4)(これらは非常に不十分な耐水性を有する)を示す。フィルム5-6(これらはシリカゾルを既に調製されたラテックス-シラン混合物に添加することにより調製された)はまた非常に不十分な耐水性を示した。しかしながら、フィルム7-11及び13、特に10-11は、良好又は優れた耐水性を示す。これらのフィルムはラテックスとシリカゾル及びシランの予備混合物とを混合することにより調製された。フィルム15はシラン対シリカのあまりにも高い重量比のために白色(不安定)になった。
【0049】
コンクリートブロック上の被覆物の評価
寸法13cm x 19cmを有する二つのコンクリートブロック(番号1及び2)をシラン処理シリカゾル10gで被覆した(表6を参照のこと)。ブロック番号3をシリカゾルのみで処理し、ブロック4を処理しなかった。耐水性を16時間にわたってエージングされた古いフィルムの上に水3滴を加えた5分後に評価した。水の広がり(処理されたコンクリート表面上の液滴直径の平均値(長さ方向及び幅方法))及び表面からの水の吸収を評価した。
【0050】
【表6】

【0051】
表6から、広がり及び水吸収の両方がブロック3及び4(参考)と較べてシラン処理シリカゾルによる表面処理のために減少することが注目し得る。これはシラン処理ゾルがブロック表面を一層疎水性かつ耐水性にすることを示す。
【0052】
凍結安定性
ゾル100mlのサンプルを24時間にわたって−20℃で冷蔵庫に入れた。これらのサンプルを評価前に室温で16時間放置した(観察サイクル1を参照のこと)。その方法を1回繰り返した(観察サイクル2を参照のこと)。サンプルを光学的に評価した。結果として、シラン処理シリカゾルのほんの痕跡の沈殿を含む透明な低粘稠性水性分散液がシラン処理ゾル番号16について見られ、一方、ゾル番号A5が完全に沈殿し、非液体になることが観察された。
【0053】
【表7】

【0054】
高いコロイドシリカ濃度における粘度
シリカゾルを60℃で20リットルのロータリーエバポレーター中で真空蒸発により濃縮した。濃縮に関する時間は2時間であった。次いでシリカゾルを脱イオン水で所望のシリカ含量まで希釈した(下記の表8を参照のこと)。粘度を初期及び室温における4ヶ月の貯蔵後の両方で20℃でブルックフィールド粘度計により測定した。下記の表8からわかるように、シラン処理ゾルはゲル化及び増粘に対する良好な安定性を与える。シラン処理ゾルに関して、粘度が非常に高いシリカ濃度でさえも経時低下する!これはゲル化及び増粘に対する増大された安定性を示す。それ故、シラン処理コロイドシリカ製品はシラン処理しなかったコロイドシリカよりも高いシリカ濃度で製造され、貯蔵でき、しかも取扱を一層容易にする低粘度を依然として有する。
【0055】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のシラン化合物及びコロイドシリカ粒子を混合することを含む、少なくとも約20重量%のシリカ含量を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液の製造方法であって、シラン対シリカの重量比が約0.003から約0.2までであることを特徴とする上記分散液の製造方法。
【請求項2】
前記混合を約50℃以下の温度で行なう、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記混合を約6から約12までのpHで行なう、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記シラン化合物がエポキシシランである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記シラン化合物がグリシドキシ基を有するエポキシシランである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
有機バインダーを前記分散液に添加することを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記有機バインダーがラテックスである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法により得られる安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液。
【請求項9】
少なくとも約20重量%のシリカ含量を有し、約0.003から約0.2までのシラン対シリカの重量比を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液。
【請求項10】
有機バインダーを含む、請求項8又は9記載の分散液。
【請求項11】
ラテックスを含む、請求項8から10のいずれかに記載の分散液。
【請求項12】
被覆適用のための請求項8から11のいずれかに記載のシラン処理コロイドシリカ分散液の使用。
【請求項13】
セメント質材料への添加剤としての請求項8から11のいずれかに記載のシラン処理コロイドシリカの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水性の溶媒中に少なくとも一種のシラン化合物及びコロイドシリカ粒子をシラン対シリカの重量比が約0.003から約0.2までで混合することを含む、少なくとも約20重量%のシリカ含量を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液の製造方法であって、前記シリカ粒子を前記量で添加してシラン対シリカの重量比が約0.003から約0.2まで及び該分散液中に少なくとも20重量%のシリカ含量で得ることを特徴とする上記分散液の製造方法。
【請求項2】
前記混合を約50℃以下の温度で行なう、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記混合を約6から約12までのpHで行なう、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記シラン化合物がエポキシシランである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記シラン化合物がグリシドキシ基を有するエポキシシランである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
有機バインダーを前記分散液に添加することを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記有機バインダーがラテックスである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法により得られる安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液。
【請求項9】
少なくとも約20重量%のシリカ含量を有し、約0.003から約0.2までのシラン対シリカの重量比を有する安定な実質的に水性のシラン処理コロイドシリカ分散液。
【請求項10】
有機バインダーを含む、請求項8又は9記載の分散液。
【請求項11】
ラテックスを含む、請求項8から10のいずれかに記載の分散液。
【請求項12】
被覆適用のための請求項8から11のいずれかに記載のシラン処理コロイドシリカ分散液の使用。
【請求項13】
セメント質材料への添加剤としての請求項8から11のいずれかに記載のシラン処理コロイドシリカの使用。

【公表番号】特表2006−502954(P2006−502954A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545121(P2004−545121)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001510
【国際公開番号】WO2004/035473
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】