説明

コロイド性二酸化チタンゾル

非晶質二酸化チタンおよび有機分散剤を含む安定で半透明または透明の二酸化チタンゾルが提供され、これは粒子結合アプリケーションに有用である。また、本発明のゾルの調製方法が提供される。本発明のゾルは、処理して非晶質二酸化チタンを析出する有機チタン化合物および水溶性チタン塩を含む二酸化チタン前駆物質から調製される。非晶質二酸化チタンを再分散および分散して半透明または透明の混合物を形成する。本発明のゾルは長期間安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定なコロイド性二酸化チタンゾル、およびこれらのゾルの調製方法に関する。より詳しくは、本発明は、非晶質二酸化チタンを含む安定で透明な二酸化チタンゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
多数のアプリケーションにおいて、粒子結合剤は、加工性、機械的安定性、接着性の改善のために成分を一緒に保ち、成分の性能を増強するために必要である。例えば、米国特許第4,317,778号、第4,351,773号および第4,374,043号は、炭化水素酸化用のバナジウムリン酸塩(VPO)触媒の生成を記載し、シリカゾルを用いてVPO粒子に結合させ、触媒の摩滅抵抗性を増加させる。
【0003】
ある表面コーティングおよび印刷アプリケーションにおいて、粒子結合剤を用いて、コーティングまたは印刷成分の機械的安定性、および物質表面への成分の付着を増強する。
【0004】
シリカ(SiO)は、二酸化チタンよりもこれらのアプリケーションに典型的に用いられる。その1つの理由は、シリカ粒子が通常非晶質であるが、二酸化チタンが典型的には結晶性物質であるということであり得る。非晶質粒子は、特徴的に表面上に高濃度の水酸基を含み、これが粒子の表面上の多数の活性部位を提供し、その結果、他の表面への強力な結合を生じさせる。対照的には、二酸化チタンは、低い結合特性を持つ結晶性固体として典型的に存在する。
【0005】
しかしながら、結合アプリケーションにおいてシリカよりむしろ二酸化チタンの使用に利点がある。
例えば、二酸化チタンは、シリカよりも化学的により安定であり、二酸化チタンは、光活性で、触媒的により活性である。この理由のために、二酸化チタンは、光触媒特性が有用である表面コーティングアプリケーションに用いられる。
【0006】
二酸化チタンは、格子構造、屈折率および密度において異なる2つの結晶相、ルチルおよびアナターゼで典型的には商業的に生成される。ルチル相は、より安定な相であり、ルチル顔料がそれらのアナターゼ対応物よりも高屈折率を有する結果、大きな不透明度および白さを生じるために顔料アプリケーションに用いるのに好ましい。
【0007】
二酸化チタンのアナターゼ型は、ルチル型よりも通常、光活性であり、光触媒アプリケーションに典型的に用いられる。光に曝露した場合、その光活性の二酸化チタンは、光触媒物質との接触に加わるNOxおよび揮発性有機化合物(VOC)を分解できる反応性種を形成する。これらの特性に徴して、光触媒二酸化チタンは環境から汚染物質を除去するためにコーティング中で使用されている。また、かかるコーティングは、土(グリース、白カビ、カビ、藻等)も、表面上で酸化するので、セルフクリーニングという利点を有し得る。
【0008】
Chungに対する米国特許出願公開番号2004/0241502(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)は、中性の透明な二酸化チタンコロイドゾル、およびそのゾルの製造方法を記載する。この公開は、そのゾル中で用いた二酸化チタン粒子がアナターゼ型であることを開示する。その記載されたゾルは、その混合物の1〜5重量%の二酸化チタンを含む。
【0009】
Amadelliらに対する米国特許第6,824,826号(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)は、セメント質系石材および大理石製品上でのコーティングのための、I〜VA族、ならびにランタニドおよびアクチニド系から選択される金属でドープし得るコロイド性TiOの調製を記載する。コロイド性二酸化チタンは、希硝酸中のTiO前駆物質の加水分解によって生成される。
【0010】
Ohmoriらに対する米国特許第6,627,336号(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)は、塩素イオンおよび、ピロフォスフェート、メタフォスフェート、ポリフォスフェート、メタンスルフォナート、エタンスルフォナート、ドデシルベンゼンスルフォナートおよびプロパンスルフォナートより選択された少なくとも1つのブレンステッド塩基を含む細かく分かれた二酸化チタンの水分散液を記載する。
【0011】
St.Clairらに対する米国特許第6,737,485号(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)は、チタンキレートポリマーから形成された安定した分散液、およびチタンキレートポリマーの安定した分散液の調製方法を記載する。その分散液は、ヒドロキシ酸を含めた種々の安定化合物によって安定化される。
【0012】
Moreらに対する米国特許第6,420,437号(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)は、中性のpH範囲において高い安定性を有し、無色透明のコーティングを形成できるとされる中性の二酸化チタンコロイドゾルおよびそのゲルを開示する。
【0013】
従って、二酸化チタンの優れた安定性および光触媒活性と非晶質固体の望ましい結合特性とを組み合わせた非晶質二酸化チタンを含む、安定で半透明または透明の二酸化チタンゾルの必要性が存在する。
【0014】
前記の言及は、単に当該技術分野で直面する問題の性質のよりよい理解を提供するために示され、先行技術に関する承認として決して解釈されるべきでなく、本明細書におけるいずれの参照の引用も、かかる参照が本願に対する「先行技術」を構成するという承認として解釈されるべきでもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、安定なコロイド性二酸化チタンゾル、およびこれらのゾルの調製方法に関する。より詳しくは、本発明は、非晶質二酸化チタンを含む安定で透明な二酸化チタンゾルに関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
表面コーティング製剤として、および印刷アプリケーションを含めた多数のアプリケーションに有用な優れた結合特性を持つ非晶質二酸化チタンを含むコロイド性ゾルが提供される。そのゾルは透明または半透明であり、長期間安定である。また、本発明の二酸化チタンゾルの調製方法が本明細書に提供される。
【0017】
非晶質二酸化チタン粒子を含む安定なコロイド性二酸化チタンゾルが提供される。1つの具体例において、本発明のゾルは、50nm未満の平均粒径を持つ二酸化チタン粒子、有機分散剤(peptizing agent)および水溶媒を含み、ここに、ゾルは半透明または透明であり;ゾルは室温および2〜8℃にて少なくとも1か月間安定である。いくつかの具体例において、ゾルは少なくとも2、3または4か月間安定である。好ましくは、ゾルは少なくとも5または6か月間安定であろう。他の具体例において、ゾルは室温および2〜8℃にて少なくとも1年または2年間安定である。1つの具体例において、本発明のゾルの二酸化チタンは、非晶質形態で95重量%を超える。本発明のもう一つの態様において、二酸化チタンは二酸化チタンの結晶形態を有しない。好ましい具体例において、本発明のゾルの二酸化チタン粒子は、10nm未満、好ましくは5nm未満の平均粒径を有する。
【0018】
1つの具体例において、本発明のゾルの有機分散剤はモノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミン塩基である。アミン塩基のアルキル基は、直鎖または分岐アルキル基であり得る。アミン塩基は、t−ブチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イソブチルアミンおよびイソアミルアミンを含む。
【0019】
もう一つの具体例において、二酸化チタンゾルは、α−ヒドロキシカルボン酸、β−ヒドロキシカルボン酸またはα−アミノカルボン酸を含めたカルボン酸である有機分散剤を含む。典型的なカルボン酸分散剤は、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびグリコール酸を含む。
【0020】
本発明のゾルは典型的には約1重量%〜約25重量%の二酸化チタンを含む。いくつかの具体例において、ゾルは、約5重量%〜約15重量%の二酸化チタン、好ましくは、約8重量%〜約12重量%の二酸化チタンを含む。
【0021】
また、非晶質二酸化チタンを含む、安定な透明または半透明のコロイド性二酸化チタンゾルの調製方法が提供され、この方法は、
(i)二酸化チタン前駆物質を加水分解して、50nm未満の平均粒径を有する非晶質二酸化チタン粒子を形成し;
(ii)工程(i)からの非晶質二酸化チタン粒子を単離し;
(iii)液体媒体中で工程(ii)の非晶質チタン粒子を再分散させて、分散液を形成し;次いで
(iv)分散液が透明または半透明のゾルを形成するまで、有機分散剤で工程(iii)の分散液を処理することを含む。。
【0022】
1つの具体例において、二酸化チタン前駆物質は、チタンテトライソプロポキシド、チタン−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラエトキシドおよびチタンテトラメトキシドを含めたチタンテトラアルコキシド化合物である。
【0023】
方法のもう一つの具体例において、二酸化チタン前駆物質は水溶性二酸化チタン塩である。二酸化チタン前駆物質が水溶性二酸化チタン塩である場合、そのプロセスは、二酸化チタン前駆物質を加水分解するのに先立ち、イオン交換樹脂で水溶性二酸化チタン塩の溶液を処理して、溶液を脱イオン化することをさらに含む。
【0024】
二酸化チタン前駆物質は、加水分解に先立ち塩基性キレート化剤で処理し得る。塩基性キレート化剤は、ジアルカノールアミンまたは、トリエタノールアミンのごときトリアルカノールアミンであり得る。
【0025】
本発明の1つの態様において、非晶質二酸化チタン粒子は、非晶質形態で95重量%を超える。あるいは、非晶質二酸化チタン粒子は二酸化チタンの結晶形態を有しない。好ましくは、非晶質二酸化チタン粒子は、10nm未満または5nm未満の平均粒径を有する。
【0026】
方法の1つの態様において、分散剤はモノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミンであり、これらは、t−ブチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イソブチルアミンおよびイソアミルアミンを含めた直鎖または分岐アルキル基を含み得る。
【0027】
もう一つの具体例において、本発明のプロセスに用いた有機分散剤は、α−ヒドロキシカルボン酸、β−ヒドロキシカルボン酸またはα−アミノカルボン酸を含めたカルボン酸である。特定のカルボン酸分散剤は、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびグリコール酸を含む。
【0028】
本発明のゾルを形成する方法は、酸または塩基を用いてゾルのpHを所望のpHに調整することをさらに含み得る。本発明の方法は、半透明または透明で長期間安定である、非晶質二酸化チタンを含む本発明のゾルを生成する。
【0029】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な記載および添付図面を参照して、一層よく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、半透明または透明で長期間安定である非晶質TiOを含むコロイド性二酸化チタンゾルを提供する。本発明のゾルは、粒子の結合剤として、表面コーティングアプリケーションで、および印刷アプリケーションを含めた種々の結合アプリケーションに有用である。
【0031】
二酸化チタンは、典型的には非晶質固体としてよりも結晶形態で存在するために、他の結合物質よりも結合アプリケーションに頻繁には用いられない。例えば、SiOは、触媒アプリケーションにおいて粒子バインダーとして、より頻繁に用いられる。非晶質固体は、高濃度の表面の水酸基を含み、従って、結合目的のための多量の界面活性基を有する。しかしながら、二酸化チタンは、SiOよりも化学的に安定であり、SiOよりも光活性でより触媒活性であり、これはある種のアプリケーションに有用である。従って、本発明の非晶質二酸化チタンを含む安定な透明ゾルは、多数のアプリケーションに非常に有用である。
【0032】
いくつかの刊行物は、分散液が半透明または透明でない場合の液体媒体中の二酸化チタンの分散液としてTiOゾルを記載する。本発明の二酸化チタンゾルは、それらが長期間、完全に透明または半透明である点で、これらの分散液と区別される。本発明のゾルは、通常、混合物中の認識可能な固体を形成せずに、少なくとも1か月間安定である。典型的には、ゾルは、固体の形成なくして室温および2〜8℃にて少なくとも2か月または3か月間安定である。より典型的には、ゾルは、少なくとも4か月、5か月または6か月間安定である。いくつかの具体例において、ゾルは、混合物中で認識可能な固体を形成せずに、室温または2〜8℃にて少なくとも1年または2年間安定である。
【0033】
定義
本明細書に用いたすべての用語は、特記されない限りは、それらの通常の意味を有することが意図される。
【0034】
「アルキル」なる用語は、その通常の意味を有することが意図され、直鎖、分岐または環状、第1級、第2級および第3級の炭化水素を含む。
「アリール基」なる用語は、その通常の意味を有することが意図され、各環における8員まで(典型的には5または6)を含むいずれかの安定な単環系、二環または三環系の炭素環を含み、ここに、少なくとも1つの環は、ヒュッケルの4n+2規則により定義される芳香族であり、それはフェニル、ビフェニルまたはナフチルを含む。
【0035】
「ヘテロアリール」なる用語は、その通常の意味を有することが意図され、5〜14員のヘテロ芳香族環基を含む。
本明細書に用いた「二酸化チタン前駆物質」なる用語は、チタンを含み、記載された処理工程に付された場合にいずれかの形態のTiOを形成するいずれかの化合物を意味する。
【0036】
本明細書に用いた「安定なTiOゾル」なる用語は、可視の固体を形成しないか、あるいは半透明または透明の外観を含めた貯蔵中に実質的に特性を変化させないTiOゾルを意味する。ゾルの安定性は視覚的に決定される。
「室温」なる用語は、20〜25℃の温度範囲を意味することが意図される。
【0037】
本発明の二酸化チタンゾルは、好ましくは約50nm未満の平均粒径を持つ非晶質形態の二酸化チタン粒子を形成し、液体媒体中に析出した二酸化チタンを分散させ、次いで、分散剤で混合物を処理して、半透明または透明の混合物を形成することにより調製される。
【0038】
第1工程において、約50nm未満の平均粒径を持つ非晶質二酸化チタン粒子が、限定されるものではないが、TiO前駆物質の加水分解、水可溶性チタン塩のpH調整および抗溶媒の導入を含めたいずれかの適当な析出法によって生成される。前駆物質がTiOへの変換に先立って溶液に残り、必要とされる粒径および形態学のTiO粒子を生成する限りは、TiOの析出に先立ってTiO前駆体溶液の濃度に制限はない。好ましい具体例において、水溶媒中のTiO前駆物質化合物の加水分解の制御は、適当な粒径の非晶質TiOを形成する。水溶媒は、TiO前駆物質を加水分解し、TiOを生成するために水を含むいずれの適当な溶媒または溶媒混合物も含む。典型的には、水単独または、二酸化チタン前駆物質の溶解性を促進するために少量の有機溶媒と混合した水が使用される。また、水と有機溶媒との混合物は、TiO前駆物質の加水分解およびTiOの析出の速度を制御するように機能し得る。有機溶媒が用いられるならば、溶媒は典型的には水と混和するか、または十分な水がTiO前駆物質をTiOに加水分解するのに利用できるように、水に対する十分な溶解性を有するであろう。適当な有機溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド等のごときアミド;およびジメチルスルホキシドのごときスルホキシドが含まれる。
【0039】
いくつかの具体例において、TiO前駆物質はアルコールのごとき有機溶媒と混合し、水を添加してTiO前駆物質の加水分解を達成する。TiO前駆物質が加水分解されると、それは、約50nm未満の平均粒径を持つ非晶質TiO粒子として析出するTiOを形成する。もう一つの具体例において、TiO前駆物質をキレート塩基と混合して、キレート化したチタン種を形成し、次いで、混合物を水に添加して、TiO前駆物質を加水分解し、非晶質TiOを析出させる。
【0040】
1つの具体例において、TiO前駆物質は有機チタン化合物である。適当な有機チタン化合物には、限定されるものではないが、一般構造Ti(OR)[式中、各Rは独立して、アルキル、アリールまたはヘテロアリールである]のチタンアルコキシド;チタニルアセチルアセトネートのごときチタンアシル化合物等が含まれる。好ましいチタンアルコキシドは、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、およびチタンtert−ブトキシド等を含む。また、Ti(OR)中のR基が異なり得る混合されたチタンアルコキシドは、本発明におけるTiO前駆物質と考えられる。他の適当な有機チタン化合物は、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン等のごときチタン(IV)アミン化合物を含む。前記のごとく、有機チタンTiO前駆物質は、溶液からのTiO粒子の析出を生じる最小量の水の導入によって加水分解される。用いたプロセスに依存して、有機チタンTiO前駆物質は、キレート化化合物で最初に処理され、次いで、水溶媒と混合して、前駆物質の加水分解に影響するか、または有機チタンTiO前駆物質は、有機溶媒を含む溶液に単に入れ、次いで、水溶媒と混合して、TiOを形成するであろう。
【0041】
また、式TiX[式中、Xはクロロ、ブロモ、ヨードもしくはフルオロ、またはその混合物である]によって表わされるチタンハロゲン化物は、TiO前駆物質として用い得る。また、本発明は、TiO前駆物質としてクロロチタントリイソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)Cl)等のごとき有機チタンハロゲン化物の使用を考える。また、有機チタンジ−およびトリ−ハロゲン化物を考える。理論によって拘束されるものではないが、チタンハロゲン化物をTiO前駆物質として用いる場合、ハロゲン化物は、典型的にはチタンオキシハロゲン化物(すなわち、チタンオキシクロライド等)のごときあまり反応性ではない種への制御された方法で最初に加水分解される。次いで、得られた中間体チタン種は、溶液のpHの調整によりTiOにさらに加水分解し得る。
【0042】
本発明のもう一つの態様において、TiO前駆物質は水溶性チタン塩であり得る。適当なチタン塩は、限定されるものではないが、チタンオキシクロライド、硫酸チタン(IV)、チタンオキシニトラート等を含む。水溶性塩からのTiOの析出は、水可溶性チタン塩がTiOを加水分解および形成し、TiOが溶液から析出するpHまで溶液のpHを調整することにより影響し得る。典型的には、これは、塩基の添加で溶液のpHを上昇させることにより達成される。
【0043】
水溶性のチタン塩の水溶液のpHを増加させると当業者に知られたいずれかの塩基を用いて、無機および有機塩基を含めて、TiOを析出し得る。適当な塩基は、限定されるものではないが、水酸化アンモニウムとしてトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のごときモノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミンを含めたアミン塩基;N−エチルモルホリン、ピペリジン、ピロリジン等のごとき環状アミン塩基;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのごときアルカリ金属またはアルカリ土類元素のヒドロキシドまたはアルコキシド;メトキシド、エトキシド、ブトキシド、t−ブトキシド等のごときナトリウム、リチウムまたはカリウムのアルコキシド;ナトリウム、リチウム、カリウムの炭酸塩および炭酸水素塩等のごとき炭酸塩および炭酸水素塩を含む。当業者には、塩のタイプが前記の塩基に限定されず、水溶性チタン塩の溶液のpHを調整するために用い得る他の多数の塩基が存在することは明らかであろう。
【0044】
別法として、TiOは溶媒の組成を変更することにより溶液から析出でき、TiOはもはや可溶性ではない。この具体例において、適当な溶媒中の溶液にあるTiO前駆物質を、その前駆物質が可溶性でない第2の「抗溶媒」に添加し得る。例えば、これは、アセトンまたは高級アルコールのごとき水混和性有機溶媒中のTiO前駆物質を水に添加することにより達成し得る。あるいは、その析出は、水可溶性TiO塩の水溶液に水混和性有機溶媒を添加して、TiOの溶解性を低下させることにより達成し得る。形成されたチタン析出物は、それがTiOに部分的に加水分解されるかまたは完全に加水分解かのいずれでも、プロセスの次の工程に用い得る。
【0045】
本発明のある態様において、TiO前駆物質の加水分解の制御または析出の制御は、キレート化剤でTiO前駆物質を処理することにより達成され、TiO前駆物質の加水分解およびTiOの析出に先立って、水溶液中でチタンと安定なキレート結合を形成する。キレート化剤を用いて、水中でのTiO前駆物質の加水分解または析出の速度を制御でき、それによって、形成されたTiO粒子の粒径を制御できる。中性有機化合物、有機酸または有機塩基を含めた水性溶媒中のチタンと安定なキレート結合を形成するいずれのキレート化剤も使用し得る。
【0046】
典型的には、良好なキレート化剤となる化合物は、チタンにキレートし得る2以上の官能基を含む。適当な中性キレート化剤は、ジケトン、ジエステル、ケトエステル等のごときジカルボニル化合物を含む。ジケトンキレート化剤は、2,4−ペンタンジオン、1,4−ヘキサンジオン、1,3−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオンおよびジピバロイルメタンを含む。ジエステルキレート化剤は、ジカルボン酸のモノ−またはジ−アルキルエステルを含む。適当なジエステルは、マロン酸ジメチルおよびマロン酸ジエチル等のごときマロン酸ジアルキルを含む。ケトエステルキレート化剤は、限定されるものではないが、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ブチル等のごときアセト酢酸アルキルを含む。また、2以上のジカルボニルキレート化剤の混合物を用いて、本発明のゾルを調製し得る。
【0047】
また、ジカルボニル化合物に加えて、近接して同一分子上に2つの異なる官能基を含む化合物も、適当なキレート剤である。これらのタイプのキレート化合物の例には、α−ヒドロキシ酸およびα−アミノ酸が挙げられる。キレート化剤がキラルである場合、キラル化合物のエナンチオマーを用いることができるか、またはラセミ混合物を用いることができる。適当なα−ヒドロキシ酸は、限定されるものではないが、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等を含む。いずれかの自然発生または合成のα−アミノ酸を用いて、本発明のゾルを生成し得る。例えば、20種の自然発生のL−α−アミノ酸を用い得る。また、対応するD−α−アミノ酸またはD,L−ラセミ混合物を用い得る。また、非天然の側鎖を持つ合成アミノ酸が本発明での使用に考えられる。
【0048】
塩基性キレート剤は、チタン原子にキレートすることができる2以上の官能基を含む有機塩基を含む。適当なキレート化剤は、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のごとき、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンを含む。2以上の官能基を持つ適当なキレート化塩基は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2,2'−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン四酢酸もしくは四酢酸塩、エチレンジアミン三酢酸もしくは三酢酸塩、2',2,2''−テルピリジン、1,4,7−トリアザシクロノナン、トリス(2−アミノエチル)アミン等を含む。
【0049】
1つの具体例において、有機酸を分散剤として用いる場合、TiO前駆物質はTiOの析出に先立ってキレート化剤で処理されない。
【0050】
もう一つの具体例において、有機塩基を分散剤として用いる場合、TiO前駆物質は、TiO粒子の析出に先立って、チタンをキレートできる適当な有機塩基キレート化剤で典型的に処理される。TiO前駆物質へのキレート化塩基の添加の結果、析出に先立ってより安定な種になり、加水分解の程度を低下させ、次いで、次の工程でチタン粒子のペプチゼーションを促進するであろう。1つの具体例において、TiO前駆物質を処理するために用いた塩基は、分散剤として用いた同一の塩基である。好ましくは、TiO前駆物質に添加されたキレート化塩基の量は、チタン−対−塩基のモル比が≦ 0.5:1であるようなものである。他の具体例において、チタン−対−塩基のモル比が≦0.3:1または≦0.2:1である。
【0051】
可溶性チタン塩をTiO前駆物質として用い、かつ有機塩基を分散剤として用いた場合、脱イオン化工程を典型的に用いて、析出工程に先立ってTiO前駆物質に存在するイオンの濃度を低下させる。溶液中のイオンの濃度を低下させることは、キレート化剤とのチタンのキレート化を促進する。陰イオン交換樹脂での処理、不溶性塩の析出等を含めた、可溶性チタン塩溶液中のイオンレベルを低下させるであろういずれの方法も用い得る。1つの具体例において、TiO前駆物質溶液を陰イオン性のイオン交換樹脂で処理して、可溶性チタン前駆物質塩の性質に依存して、硫酸イオン、塩化イオン等のごときTiO前駆物質溶液中に存在し得る過剰のイオンを除去する。可溶性チタン塩溶液がイオン交換樹脂で処理される場合、溶液のpHは典型的には経時的に増加し、その結果、TiO析出物を形成し得る。好ましくは、陰イオン交換樹脂での可溶性チタン塩の処理時間は、溶液のpHがTiO析出物の形成を防止するために約3未満に維持されるように制限されるであろう。より好ましくは、脱イオン処理は、溶液のpHが約2未満で維持されるように制限されるであろう。一旦イオンのレベルが低下すると、前記のごとく、チタン塩溶液はイオン交換樹脂から分離され、キレート結合を形成できる塩基で処理される。次いで、キレートした二酸化チタン塩の溶液のpHを適当な塩基で調整して、TiOを形成させ、溶液から析出させる。
【0052】
析出したTiOは、デカント、遠心分離および濾過を含めたいずれかの適当な手段によって収集し得る。単離された固体は、所望により、ペプチゼーション工程に先立って水で洗浄して、加水分解反応の副産物および他の不純物を除去し得る。
【0053】
次の工程において、好ましくは非晶質の形態である析出したTiOを液体媒体に分散させ、撹拌下で分散剤で処理して、本発明のゾルを形成する。分散したTiOは、分散が透明または半透明の混合物を形成するまで、撹拌下で室温または高温にて分散剤で処理し得る。高温は、通常分散プロセスを促す。分散剤が有機塩基である場合、室温が好ましく、一方、分散剤が有機酸である場合、高温が典型的に用いられる。分散プロセスが高温で行なわれる場合、約30℃〜約100℃の温度範囲が典型的には用いられる。より典型的には、分散温度は、約40℃〜約100℃または約60℃〜約100℃である。
【0054】
分散用液体中のTiO濃度は、ペプチゼーション後のゾルの初期濃度を決定するであろう。もちろん、ペプチゼーション工程の完了後、所望ならば、本発明のTiOゾルをさらに希釈または濃縮できる。典型的には、水溶媒中のTiOの約1重量%〜約30重量%のTiO分散液が、ペプチゼーション工程に用いられるであろう。水溶媒は水を含むいずれの溶媒および溶媒混合物でもあり得る。例えば、水と、アルコールのごとき水混和性溶媒との混合物を用い得る。より典型的には、分散液の濃度は、混合物の約2重量%〜約15重量%または約5重量%〜約15重量%である。好ましくは、その濃度は、約8重量%〜約12重量%または約5重量%〜約10重量%である。
【0055】
多数の有機酸および有機塩基が本発明での分散剤としての使用に適している。好ましい酸性の分散剤は、限定されるものではないが、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−アルキルアミノ、カルボキシル、カルボン酸エステル、カルバモイル、アミド、尿素、チオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン等を含めた1以上の官能基で置換されたカルボン酸を含む。好ましくは、カルボン酸分散剤は、アルファまたはベータ炭素にて、別の官能基で置換されるであろう。これらの分散剤は、限定されるものではないが、α−ヒドロキシカルボン酸、β−ヒドロキシカルボン酸、アルファ−アルコキシカルボン酸およびα−アミノカルボン酸を含む。キレート化剤が不斉炭素を有し、キラルである場合、そのキラル化合物のエナンチオマーを用いることができるか、または、そのラセミ混合物を用いることができる。
【0056】
好ましいα−ヒドロキシカルボン酸は、限定されるものではないが、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−エチル−2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、3−ヒドロキシ酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、シトラマル酸、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタル酸、グルコン酸、2−イソプロピルリンゴ酸、粘液酸、ジヒドロフマル酸、キナ酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸等を含む。
【0057】
いずれかの自然発生または合成のα−アミノ酸を用いて、本発明のゾルを生成し得る。例えば、20種の自然発生L−α−アミノ酸を用い得る。また、対応するD−α−アミノ酸も使用し得る。また、非天然の側鎖を持つ合成α−ヒドロキシカルボン酸およびα−アミノ酸は、本発明での使用のために考えられる。
【0058】
広範囲の種々のアルカリ分散剤を本発明に用いることができ、それらには、モノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミン;モノ−、ジ−またはトリ−アリールアミン;ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンのごとき2以上の官能基を持つ有機塩基等を含む。モノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミン分散剤は、直鎖、分岐または環状のアルキル基を含み得る。適当なアミンは、限定されるものではないが、モノ−、ジ−またはトリ−メチルアミン;モノ−、ジ−またはトリ−エチルアミン;モノ−、ジ−またはトリ−プロピルアミン;モノ−、ジ−またはトリ−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、イソプロピルアミン、イソアミルアミン、tert−アミルアミン、2−メチルブチルアミン、1−メチルブチルアミン等を含む。環状アルキル基を持つアミンは、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミンおよびシクロオクチルアミン、ならびにそれらのジ−およびトリ−アルキル誘導体を含む。もちろん、ジイソプロピルエチルアミン、エチルブチルアミン、メチルエチルアミン等のごとき異なるアルキル基を持つアミンを用い得る。また、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等のごとき環状アミン、ならびにそれらのN−アルキル誘導体が考えられる。好ましくは、tert−ブチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のごときバルクのモノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミンを塩基性分散剤として用いる。前記のごとく、塩基性分散剤が用いられる場合、分散プロセスは、室温で好ましくは行なわれ、それは、約20℃〜25℃を意味することが意図される。他の具体例において、塩基性分散剤でのペプチゼーションは、約20℃〜約30℃、または約25℃〜約30℃にて行われる。
【0059】
TiOのペプチゼーション後、ゾルのpHは、いずれかの一般的に用いられる無機または有機の酸もしくは塩基を用いて、中性のpHまたは他の所望のpH範囲に調整し得る。塩基性分散剤を含むゾルは、約6〜8のpHで好ましくは保たれる。カルボン酸分散剤を含むゾルは、典型的には、3〜10のpHに保たれる。
【0060】
安定で透明または半透明のTiOゾルは、水溶媒に約1重量%〜約30重量%のTiOを含有するであろう。より典型的には、ゾルは、約2重量%〜約15重量%または約5重量%〜約15重量%の二酸化チタンを含有するであろう。好ましくは、ゾルは、約8重量%〜約12重量%または約5重量%〜約10重量%の二酸化チタンを含有するであろう。
【0061】
二酸化チタンのいずれの形態も、非晶質形態、ルチルまたはアナターゼ型を含めて本発明の二酸化チタンゾルに用い得る。さらに、非晶質形態、ルチルまたはアナターゼ型の混合物を用い得る。好ましくは、本発明のゾルに用いる二酸化チタン粒子は、好ましくは優位に非晶質の形態である。ゾルアプリケーションにおける非晶質の形態の二酸化チタンは、非晶質形態のTiOが他の元素を結合するTiOの能力を改善する、高度の量の表面ヒドロキシ基を含むために特に有用である。「優位に」は、非晶質形態での二酸化チタン粒子のレベルが、本発明のゾル中で約80%を超える、より好ましくは約90%を超える、または約95%を超える粒子であることを意味する。いくつかの具体例において、組成物の二酸化チタン粒子は実質的に純粋な非晶質形態であり、これは、非晶質形態の含量が、97質量%を超える、さらにより好ましくは98質量%を超えることを意味する。いくつかの好ましい具体例において、非晶質のジオキシド粒子は、ルチルおよびアナターゼ型を含めた、二酸化チタンの結晶形態がなく、これは、結晶形態が結晶学によって検出できないことを意味する。もう一つの方法によると、二酸化チタンゾルは100%の非晶質二酸化チタンを含み得る。結晶化度および結晶相の性質は、X線回折によって測定される。角度の位置(2シータ)での二酸化チタンの公知の結晶形態についての特徴的な回折パターンピークの不存在は、二酸化チタンの100%が分析技術の限度内で非晶質形態であることを示す。
【0062】
本発明のゾルに用いた二酸化チタンの平均粒径は、典型的には約50nm未満であろう。より典型的には、二酸化チタン粒子の平均粒径は、約30nm未満、20nm未満または10nm未満であろう。好ましい具体例において、ゾル中の二酸化チタンの粒径は約5nm未満であろう。二酸化チタン粒子のサイズに対する本明細書の参照は、二酸化チタン粒子の平均粒径を意味すると理解されるであろう。粒径が「約」なる用語により修飾される場合、それは、当業者に明らかであろうような、粒径を測定するための異なる方法間の測定値および変動における固有の実験誤差を説明するために、表示値より多少大きいかまたはより小さな粒径を包含すると理解されるであろう。その直径は、標準粒径分析技術、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)または光散乱法(動的光散乱、Malvern Instruments Ltd.,U.K.)によって測定し得る。
【0063】
あるいは、粒子は表面積により特徴付し得る。典型的には、本発明のゾルに用いた二酸化チタンは、約20m/gを超える、乾燥試料に対する5ポイントBETを含めたいずれかの適当な方法によって測定されるごとき、表面積を有するであろう。より典型的には、光触媒二酸化チタン粒子は、約50m/gを超えるまたは約70m/gを超える表面積を有する。より多数の好ましい具体例において、二酸化チタン粒子は、約100m/gを超える、好ましくは約150m/gを超える表面積を有する。いくつかの具体例において、二酸化チタン粒子は、約200m/gを超える、約250m/gを超える、さらに約300m/gを超える表面積を有するであろう。
【0064】
実施例
以下の実施例は本発明の理解を援助するために示され、何ら本発明を限定することを意図せず、そのように解釈されるべきでない。本開示を読むに際して当業者に明らかになり得るすべての代替物、改良および等価物は、本発明の精神および範囲内に含まれる。
【0065】
実施例1
大きなプラスチックビーカー中の3000グラムのチタン(IV)イソプロポキシド(Alfa Aesar、95%)を穏やかな撹拌下、約15分間600グラムのトリエタノールアミン(Alfa Aesar、98%)と混合した。その溶液は混合過程中に暖かくなり、これはチタン−トリエタノールアミン複合体の形成を示す。チタン−トリエタノールアミンを含む得られた混合物を十分な撹拌下、15Lの脱イオン水を含有する第2のビーカーに約100g/分の流量で添加した結果、非晶質形態のTiOを析出させた。得られた混合物を添加の完了後にさらに30分間混合し、混合物を48時間沈降させた。次いで、試料上部の液体層をデカントした。残った固体を、撹拌しつつ、15分間水の中で再分散させた。tert−ブチルアミン(Alfa Aesar、98%)を室温で分散混合物に添加した。ペプチゼーションが完了し、混合物が透明になるまで、混合物を穏やかな撹拌で撹拌した。少量のグリコール酸(Alfa Aesar、70%)を、分散した混合物に撹拌しつつ滴下して、pHを約10〜7.5に調整した。
【0066】
約2ガロンの透明で帯黄色の非晶質二酸化チタンゾルを、この方法で調製した。二酸化チタンの濃度は約10%であると重量測定で決定した。そのゾルは、6.5〜8のpHにて、室温ならびに冷蔵庫(2〜8℃)中で少なくとも6か月間安定であることが判明した。
【0067】
実施例2
250グラムのTiO(SO)溶液(Millennium Inorganic Chemicals、TiO中の7.9重量%)を150gの脱イオン水で希釈した。この溶液に、合計400グラムの陰イオン交換樹脂(Dowex Monosphere(商標)550A OH Form)を一定の撹拌下で5分毎に約25グラム部分で添加した。陰イオン交換樹脂の添加後、混合物をさらに60分間撹拌して、次いで、溶液を濾過によって樹脂球体から分離した。次いで、ろ過した溶液を、40グラムのトリエタノールアミン(キレート化剤)と混合した。この時点にて、溶液はまだ透明であった。pHが約7になるまで、アンモニア溶液(Fisher、29%)を撹拌しつつ透明な溶液にゆっくり添加し、その結果、非晶質TiOを析出させた。得られた析出物を、さらに30分間混合し、次いで、ろ過した。ろ過した固体を、約400gの脱イオン水で洗浄した。湿った濾過ケーキを脱イオン水中に合計重量400gまで再分散した。この分散液に、8グラムのtert−ブチルアミンを添加し、混合物を約8時間ゆっくり撹拌して、透明な非晶質TiOゾルを生成した。その混合物はグリコール酸で7.5のpHに調整した。約400グラムの透明なゾルをこの方法によって生成し、それは、7.5重量%の非晶質TiOを含有し、6.5〜8のpHで室温および2〜8℃で少なくとも6か月間安定であった。
【0068】
実施例3
225グラムのチタン(IV)イソプロポキシドを225グラムのイソプロパノール(Fisher、99.9%)と混合した。その混合物を激しく撹拌しつつ1,125グラムの水にゆっくり添加した結果、析出物を形成した。析出物をろ過し、濾過ケーキを約1200gの水で4回洗浄した。その湿った濾過ケーキを、分散液の合計重量が600gとなるように脱イオン水中で再分散した。30グラムのD,L−乳酸(Alfa Aesar、85〜90%)をスラリーに添加し、混合物を3時間の加熱還流し、その後、それは透明になった。得られたゾルを冷却し、t−ブチルアミンでpH7に調整した。透明な非晶質TiOゾルは約10重量%のTiOを含有し、3〜10のpHで、室温および2〜8℃にて少なくとも6か月間安定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機分散剤を含む水溶液中で分散した二酸化チタン粒子を含む安定なコロイド性二酸化チタンゾルであって;該二酸化チタン粒子は、優位に非晶質であって、約50nm未満の平均粒径を有し、ここに、そのゾルは半透明または透明であり、室温にて少なくとも1か月間安定である該二酸化チタンゾル。
【請求項2】
二酸化チタンが、非晶質形態において95重量%を超える請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項3】
二酸化チタンが、二酸化チタンの結晶形態を有しない請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項4】
二酸化チタン粒子が、約10nm未満の平均粒径を有する請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項5】
二酸化チタン粒子が、約5nm未満の平均粒径を有する請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項6】
有機分散剤が、モノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミン塩基である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項7】
モノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミンが、分岐アルキル基を含む請求項6記載の二酸化チタンゾル。
【請求項8】
アミン塩基が、t−ブチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イソブチルアミンおよびイソアミルアミンよりなる群から選択される請求項6記載の二酸化チタンゾル。
【請求項9】
有機分散剤がカルボン酸である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項10】
カルボン酸が、α−ヒドロキシカルボン酸、β−ヒドロキシカルボン酸またはα−アミノカルボン酸である請求項9記載の二酸化チタンゾル。
【請求項11】
カルボン酸が、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびグリコール酸よりなる群から選択される請求項9記載の二酸化チタンゾル。
【請求項12】
ゾルが、約5重量%〜約15重量%の二酸化チタンを含む請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項13】
ゾルが、約8重量%〜約12重量%の二酸化チタンを含む請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項14】
ゾルが、室温にて少なくとも3か月間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項15】
ゾルが、室温にて少なくとも6か月間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項16】
ゾルが、室温にて少なくとも1年間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項17】
ゾルが、室温にて少なくとも2年間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項18】
ゾルが、2〜8℃にて少なくとも1か月間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項19】
ゾルが、2〜8℃にて少なくとも3か月間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項20】
ゾルが、2〜8℃にて少なくとも6か月間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項21】
ゾルが、2〜8℃にて少なくとも1年間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項22】
ゾルが、2〜8℃にて少なくとも2年間安定である請求項1記載の二酸化チタンゾル。
【請求項23】
非晶質二酸化チタンを含む安定で透明または半透明のコロイド性二酸化チタンゾルの調製方法であって、
(i)二酸化チタン前駆物質化合物の溶液を得;
(ii)二酸化チタン前駆物質化合物を加水分解して、二酸化チタンを形成し、ここに、二酸化チタンは、50nm未満の平均粒径を有する非晶質二酸化チタン粒子として溶液から析出する;
(iii)工程(ii)から非晶質二酸化チタン粒子を単離し;
(iv)液体媒体中で工程(iii)の非晶質チタン粒子の分散液を形成し;次いで
(v)有機分散剤で工程(iv)の分散液を処理して、非晶質二酸化チタン粒子を含む安定で透明または半透明のゾルを形成することを含むことを特徴とする該方法。
【請求項24】
二酸化チタン前駆物質が、あるチタンテトラアルコキシドであることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
チタンテトラアルコキシドが、チタンテトライソプロポキシド、チタン−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラエトキシドおよびチタンテトラメトキシドよりなる群から選択されることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
二酸化チタン前駆物質が、水溶性チタン塩であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項27】
二酸化チタン前駆物質を加水分解するに先立ち、イオン交換樹脂で水溶性チタン塩の溶液を処理して、溶液を脱イオン化することをさらに含むことを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
加水分解に先立ち、二酸化チタン前駆物質を塩基性キレート化剤で処理することを特徴とする請求項23または27記載の方法。
【請求項29】
塩基性キレート化剤が、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンであることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
キレート化剤が、トリエタノールアミンであることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
非晶質二酸化チタンが、非晶質形態において95重量%を超えることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項32】
非晶質二酸化チタンが、二酸化チタンの結晶形態を有しないことを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項33】
非晶質二酸化チタン粒子が、約10nm未満の平均粒径を有することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項34】
非晶質二酸化チタン粒子が、約5nm未満の平均粒径を有することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項35】
分散剤がモノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミンであることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項36】
モノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミンが、分岐アルキル基を含むことを特徴とする 請求項35記載の方法。
【請求項37】
モノ−、ジ−またはトリ−アルキルアミンが、t−ブチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イソブチルアミンおよびイソアミルアミンよりなる群から選択されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項38】
有機分散剤が、カルボン酸であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項39】
カルボン酸が、α−ヒドロキシカルボン酸、β−ヒドロキシカルボン酸またはα−アミノカルボン酸であることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
カルボン酸が、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびグリコール酸よりなる群から選択されることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項41】
さらに、酸または塩基でゾルのpHを調整することを含むことを特徴とする請求項23記載の方法。

【公表番号】特表2011−521870(P2011−521870A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506253(P2011−506253)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/072125
【国際公開番号】WO2010/110763
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(510055149)ミレニアム・イノーガニック・ケミカルス・インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM INORGANIC CHEMICALS, INC.
【Fターム(参考)】