コロイド状金属組成物および方法
【課題】所望の細胞または部位に影響する薬剤の送達システムのための組成物および方法を開発することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、本発明の、薬剤(治療化合物、医薬品、薬物、検出剤、核酸配列および生物学因子を含む)の送達システムのための組成物および方法により解決された。本発明のベクター組成物は、コロイド状金属、誘導されたPEGおよび薬剤を含む。本発明はまた、このようなコロイド状金属組成物の作製および癌の処置のための、方法および組成物を包含する。該ベクター組成物は、固形腫瘍の検出または処置において特に有用である。本発明の好適な組成物は、好ましくはチオール−PEGである誘導体化PEGと組み合わされた、好ましくは金の金属ゾルであるコロイド状金属ゾルを含み、そしてこのベクターの特異的標的化を支援するか、または治療効果を有しえるか、もしくは検出され得る、1つ以上の薬剤を含み得る。
【解決手段】上記課題は、本発明の、薬剤(治療化合物、医薬品、薬物、検出剤、核酸配列および生物学因子を含む)の送達システムのための組成物および方法により解決された。本発明のベクター組成物は、コロイド状金属、誘導されたPEGおよび薬剤を含む。本発明はまた、このようなコロイド状金属組成物の作製および癌の処置のための、方法および組成物を包含する。該ベクター組成物は、固形腫瘍の検出または処置において特に有用である。本発明の好適な組成物は、好ましくはチオール−PEGである誘導体化PEGと組み合わされた、好ましくは金の金属ゾルであるコロイド状金属ゾルを含み、そしてこのベクターの特異的標的化を支援するか、または治療効果を有しえるか、もしくは検出され得る、1つ以上の薬剤を含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、薬剤の全身性送達および特定部位への薬剤の送達のための組成物および方法に関する。一般に、本発明は、コロイド状金属組成物、およびこのような組成物を作製する方法およびこのような組成物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
必要な部位を探知し、そして過度の副作用なくして治療応答を送達し得る魔法の弾丸を見出すことが治療処置の長年の目的となっている。多くのアプローチがこの目的に到達することを試みている。治療薬剤は、身体の細胞による差次的な処置のために、疎水性もしくは親水性、または治療粒子のサイズのような活性薬剤における差異を利用するよう設計されている。インサイチュ注入により身体の特定セグメントまたは特定細胞に治療薬剤を送達する治療が存在し、そして治療薬剤の送達を制限する血液−脳関門のような身体防御を用いるか、または克服する。
【0003】
治療薬剤を特定組織または細胞に特異的に標的するために用いられている1つの方法は、治療薬剤と特異的レセプターの結合パートナーとの組合せに基づく送達である。例えば、治療薬剤は、細胞傷害性または放射活性であり得、そして細胞レセプターの結合パートナーと組合せられるとき、一旦標的細胞に結合すると、細胞死を引き起こすか、または細胞活性の遺伝子制御を妨害する。このタイプの送達デバイスは、処置されるべき細胞型に特異的であるレセプター、このレセプターに対する有効な結合パートナー、および有効な治療薬剤を有することが必要である。分子遺伝学的操作を用いてこれら問題のいくつかが克服されている。
【0004】
異種細胞中への遺伝子配列の特異的送達または内因性配列の過剰発現のために、現在、多いに興味のある方法がある。細胞中に遺伝子を挿入するための種々の技法が用いられている。これらの技法は、沈殿、ウイルスベクター、マイクロピペットを用いた直接挿入、および遺伝子銃、ならびに細胞に核酸を曝すことを含む。広く用いられる沈殿技法は、リン酸カルシウムを用いてDNAを沈殿させ、不溶性粒子を形成する。目的は、これら粒子の少なくともいくつかを、全身性細胞エンドサイトーシスにより宿主細胞内に内在化されるようにすることである。これは、新たな、または異種遺伝子の発現を生じる。この技法は、細胞中への異種遺伝子の侵入の効率が低く、得られる遺伝子の発現も低い。遺伝子の内在化は、トランスフェクトされる細胞に関して非特異的である。なぜなら、エンドサイトーシスの特定の認識部位に対する信頼性がないので、すべての曝された細胞が異種遺伝子を内在化し得るからである。この技法は広くインビトロで用いられているが、標的細胞選択の特異性の欠如、および高度に分化した細胞による乏しい取り込みのために、インビボにおけるその使用は企図されていない。さらに、そのインビボにおける使用は、沈殿した核酸の不溶性性質により制限されている。
【0005】
類似の技法は、インビトロで細胞をトランスフェクトするためのDEAE−Dextranの使用を含む。DEAE−Dextranは、細胞に有害であり、そしてまた細胞中への核酸の非特異的挿入をもたらす。この方法は、インビボで当を得たものではない。
【0006】
細胞をトランスフェクトするか、または異種遺伝子を細胞中に侵入させるためのその他の技法もまた制限されている。ベクターとしてウイルスを用いることは、細胞中への異種遺伝子のインビトロおよびインビボ導入のためにある程度の利用可能性を有している。ウイルスタンパク質の存在がインビボ使用において副作用を生じるリスクが常に存在している。さらに、ウイルスベクターは、細胞中に渡され得る異種遺伝子物質のサイズについて制限され得る。ウイルスベクターの繰返し使用は、レシピエントにおける免疫学的応答を惹起し、そしてベクターが用いられ得る回数を制限する。
【0007】
リポソームで包括された核酸を用いる異種遺伝子送達もまた用いられている。リポソームは、核酸を含む種々の物質で満たされ得る膜で囲われた嚢である。リポソーム送達は、リポソームの不均等な充填のために細胞への均一な送達を提供しない。リポソームは、レセプターに対する結合パートナーが含められる場合、特定の細胞型を標的にし得るが、リポソームは破壊という問題を受け、そしてそれ故、送達は特異的でない。
【0008】
異種核酸を挿入するためのブルート力技法は、マイクロピペットで細胞膜を刺すこと、または異種DNAを細胞中に挿入するための遺伝子銃を含む。これらの技法は、いくつかの手順について良好に作用するが、広く適用可能ではない。これらは高度に労働集約的であり、そしてレシピエント細胞の非常に熟練した操作を必要とする。これらは、インビボで良好に作用する単純な手順である技法ではない。細胞膜の透過性を変化させるために電気的方法を用いるエレクトロポーレーションは、細胞中への遺伝子の挿入のためのいくつかのインビトロ治療について成功している。
【0009】
糖タンパク質に対するレセプターの存在に依存した、特定細胞に対するDNAの標的された送達を狙ういくつかの試みがある。この送達システムは、DNAに非共有結合で結合し、そしてまたリガンドに共有結合した、ポリリジンのようなポリカチオンを用いた。リガンドへのポリカチオンの共有結合のこのような使用は、一旦内在化機構が始まると、送達システムの分解を許容しない。この大きな複合体である共有結合した送達システムは、核酸が細胞内で天然に見出される様式とは非常に異なるものである。
【0010】
疾患または病状の処置のため、またはそのような部位の検出のために、身体中の特異的部位への特定の治療薬剤の単純で効率的な送達システムは、現在、利用可能ではない。例えば、癌の現在の処置は、化学療法薬剤、または全体生物に衝撃を与える、サイトカインおよび免疫因子のようなその他の生物学的に活性な因子の投与を含む。副作用は、器官損傷、味覚および感触のような感覚の損失、および毛髪損失を含む。このような治療は、病状の措置を提供するが、副作用を処置するため多くの付属の治療をもまた必要とする。
【0011】
必要なことは、所望の細胞または部位に影響する薬剤の送達システムのための組成物および方法である。これらの送達システムは、検出薬剤および治療薬剤を含む、すべての型の薬剤の特定細胞への送達のために用いられ得る。また必要なことは、全体生物において所望されない副作用を引き起こさない送達システムである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば以下を提案する。
(項目1)
コロイド状金属粒子、少なくとも1つの薬剤、およびPEG誘導体を含む、ベクター組成物。
(項目2)
標的化分子をさらに含む、項目1に記載のベクター組成物。
(項目3)
統合分子をさらに含む、項目1に記載のベクター組成物。
(項目4)
前記少なくとも1つの薬剤が、TNF、腫瘍壊死因子である、項目1に記載のベクター組成物。
(項目5)
前記PEG誘導体がチオール誘導体である、項目1に記載のベクター組成物。
(項目6)
成分特異的免疫刺激分子をさらに含む、項目1に記載のベクター組成物。
(項目7)
項目6に記載のベクター組成物であって、前記成分特異的免疫刺激分子が、以下:
インターロイキン−l(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−□」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、顆粒球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスフォーミング増殖因子(「TGF−□」)、熱ショックタンパク質、血液型の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子ならびに他の炎症性タンパク質および免疫調節性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;flt3リガンド/レセプター系;B7ファミリーの分子およびレセプター;CD40リガンド/レセプターおよびAZTのような免疫治療薬物;ならびにアンギオスタチン、エンドスタチンおよび塩基性線維芽細胞増殖因子または血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のような血管形成薬物および抗血管形成薬物のうちの少なくとも1つを含む、ベクター組成物。
(項目8)
薬剤を送達する方法であって、該方法は、ベクター組成物を、生物に投与する工程を包含し、該ベクター組成物は、コロイド状金属粒子、少なくとも1つの薬剤およびPEG誘導体を含む、方法。
(項目9)
前記組成物が標的化分子をさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記組成物が統合分子をさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記少なくとも1つの薬剤が、TNF、腫瘍壊死因子である、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記PEG誘導体がチオール誘導体である、項目8に記載の方法。
(項目13)
固形腫瘍を処置するための方法であって、該方法は、ベクター組成物を、固形腫瘍を有する生物に投与する工程を包含し、該ベクター組成物は、コロイド状金属粒子、少なくとも1つの薬剤およびPEG誘導体を含む、方法。
(項目14)
前記組成物が標的化分子をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記組成物が統合分子をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記少なくとも1つの薬剤が、TNF、腫瘍壊死因子である、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記PEG誘導体がチオール誘導体である、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記ベクター組成物を投与する工程の後に、抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記ベクター組成物を投与する工程の前に、抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目20)
前記ベクター組成物を投与する工程と同時に、抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、治療化合物、薬学的薬剤、薬物、検出試薬、核酸配列および生物学的因子を含む薬剤の送達システムのための組成物および方法を包含する。一般に、これらのベクター組成物は、コロイド状金属ゾル、誘導体化PEG(ポリエチレングリコール)および薬剤、ならびにこのようなコロイド状金属ゾル組成物を作製するための方法および組成物を含む。
【0014】
このベクター組成物は、固形腫瘍の検出または処置において特に有用である。本発明の好適な組成物は、好ましくはチオール−PEGである誘導体化PEGと組み合わされた、好ましくは金の金属ゾルであるコロイド状金属ゾルを含み、そしてまたこのベクターの特異的標的化を支援するか、または治療効果を有しえるか、もしくは検出され得る、1つ以上の薬剤を含み得る。
【0015】
本発明は、注射または経口のような公知の方法により、本発明の組成物を投与することによる送達の方法を包含し、ここで、この組成物は、特定細胞または器官に送達される。1つの実施形態では、本発明は、癌または固形腫瘍のような疾患を、このような疾患の処置のために公知である薬剤を含む本発明の組成物を投与することにより処置するための方法を包含する。別の実施形態は、コロイド状金属粒子と組み合わせた、誘導体化PEG、TNF(腫瘍壊死因子)および抗癌剤を含むベクター組成物を包含する。別の実施形態では、本発明は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス、ベクター、リボザイム、DNA、RNA、センスオリゴヌクレオチド、および核酸のような、遺伝子治療のために用いられている薬剤を含む本発明の組成物を投与することによる遺伝子治療のための方法を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ベクターを調製するために用いる混合装置の概略図である。
【図2】図2は、金コロイドへのTNFの飽和結合を示すグラフを示す図である。
【図3A】図3Aは、cAu−TNFベクターの安全性に関する、TNF:金結合比の影響を示すグラフを示す図である。
【図3B】図3Bは、cAu−TNFベクターの安全性に関する、TNF:金結合比の影響を示すグラフを示す図である。
【図3C】図3Cは、cAu−TNFおよびネイティブTNFの抗腫瘍効力を示すチャートを示す図である。
【図3D】図3Dは、1時間後のTNF分布プロフィールを示すチャートを示す図である。
【図3E】図3Eは、8時間後のTNF分布プロフィールを示すチャートを示す図である。
【図3F】図3Fは、M38腫瘍をもつC57/BL6マウスにおけるネイティブTNFベクターおよびcAu−TNFベクターの薬物動態学的プロフィールのグラフを示す図である。
【図4】図4は、PT−cAu−TNFベクター、(A)、cAU−TNFベクターで処置した、および処置なし(C)のマウスの肝臓および脾臓を示す図である。
【図5A】図5Aは、種々の器官における金の分布を示すグラフを示す図である。
【図5B】図5Bは、TNF薬物動態学的分析を示すグラフを示す図である。
【図5C】図5Cは、腫瘍内TNF分布を経時的に示すグラフを示す図である。
【図5D】図5Dは、異なるベクターでの腫瘍内TNF濃度を比較するチャートである。
【図5E】図5Eは、種々の器官におけるTNFの分布を経時的に示すグラフを示す図である。
【図5F】図5Fは、種々の器官におけるTNFの分布を経時的に示すグラフを示す図である。
【図6A】図6Aは、ネイティブTNFベクターまたはPT−cAu−TNFベクターの安全性および効力を比較するグラフを示す図である。
【図6B】図6Bは、ネイティブTNFおよび20K−PT−cAu−TNFの安全性および効力を比較するグラフを示す図である。
【図6C】図6Cは、ネイティブTNFおよび30K−PT−cAu−TNFの安全性および効力を比較するグラフを示す図である。
【図7】図7は、複数薬剤を有するベクターの概略図である。
【図8】図8は、ベクターを検出する捕捉方法の実施形態の概略図である。
【図9】図9は、第2の薬剤の存在を示すTNF捕捉ベクターおよびEND捕捉ベクターを示すグラフを示す図である。
【図10】図10は、第2の薬剤の存在を示すTNF捕捉ベクターおよびEND捕捉ベクターを示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
本発明は、試薬の送達のための組成物および方法を包含する。本発明はまた、この組成物を作製する方法、およびインビトロおよびインビボでこの組成物を投与する方法を包含する。一般に、本発明は、以下の成分:活性薬剤、検出薬剤、標的化に用いる分子、統合分子、および1つ以上の型のPEGもしくは誘導体化PEG、の任意またはすべてを、単独または組み合わせて、組み合わせた金属ゾル粒子を含む組成物を企図する。
【0018】
薬剤の送達は、特定細胞または組織の検出または処置のために用いられる。例えば、本発明は、固形腫瘍のような、特定組織を造影するために用いられる。薬剤の送達は、制限されないで、慢性疾患および急性疾患、免疫系およびその他の生物学的系の維持および制御、感染性疾患、ワクチン接種、ホルモン維持および制御、癌、固形腫瘍ならびに血管新生状態を含む、生物学的状態の処置のために用いられる。このような送達は、特定の細胞まは細胞型を標的にし得るか、またはこの送達は、薬剤の低レベル放出または非毒性様式の薬剤を可能にする方法では、身体により特異性が低く提供され得る。金属ゾル組成物の記載および使用は、米国特許第6,274,522号;および関連特許出願である米国特許第09/808,809号;同第09/935,062号;同第09/189,748号、同第09/189,657号、および同第09/803,123号;ならびに米国特許仮出願第60/287,363号(これらすべては、それらの全体が本明細書に参考として援用される)に教示されている。
【0019】
本発明は、薬剤の送達のためのベクターとしてコロイド状金属を含む方法および組成物に関する。詳細には、好適な組成物は、固形腫瘍における1つ以上の型のベクターの蓄積を含む処置または検出の方法で用いられる。固形腫瘍を処置する方法は、PEG、好ましくは誘導体化PEG、より好ましくはチオール−誘導体化ポリエチレングリコールを含むコロイド状金属ゾルを投与する工程を包含する。任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、このような組成物の使用が、腫瘍に輸送され、かつ腫瘍で蓄積するベクター組成物を生じると考えられる。標的化分子または活性薬剤の非存在下で、誘導体化PEGコロイド状金属ベクターは、腫瘍に輸送され、そしてそこで隔絶される。投与のすべての方法が本発明によって企図されるが、投与の最も好適な経路は、静脈内または経口である。好ましくは静脈内または経口的に投与されるとき、このコロイド状ベクターは、腫瘍内または腫瘍とともに見出される。
【0020】
好ましくは、本発明の組成物は、コロイド状金属ゾル、誘導体化化合物および1つ以上の薬剤を含む。これら薬剤は、治療適用で用いられ得る生物学的に活性な薬剤であり得るか、またはこれら薬剤は、検出方法で有用である薬剤であり得る。好適な実施形態では、1つ以上の薬剤が混合され、コロイド状金属に直接または間接的に組み合わされるか、または結合される。混合、組み合せおよび結合は、誘導体化PEG、薬剤、およびその他の成分の互いとのおよび金属ゾル粒子との長期間または短期間結合を可能にする、共有結合、イオン結合およびその他のより弱いかまたはより強い結合を含む。
【0021】
なお別の実施形態では、これらの組成物はまた、コロイド状金属と混合され、組み合わせられ、または結合する1つ以上の標的化分子を含む。この標的化分子は、この金属粒子に直接的または間接的に結合され得る。間接的結合は、ポリリジンもしくはその他の統合分子のような分子を介する結合、または標的化分子と、金属ゾルもしくはこの金属ゾルに結合する別の分子のいずれかとの任意の組合せを含む。
【0022】
任意のコロイド状金属が本発明で用いられ得る。コロイド状金属は、液体の水、ヒドロゾルまたは金属ゾル中に分散した、任意の水不溶性の金属粒子または金属製化合物を含む。このコロイド状金属は、周期表のIA族、IB族、IIB族およびIIIB族の金属、ならびに遷移金属、特にVIII族の金属から選択され得る。好適な金属は、金、銀、アルミニウム、ルテニウム、亜鉛、鉄、ニッケルおよびカルシウムを含む。その他の適切な金属はまた、すべてのそれらの種々の酸化状態で以下を含む:チリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、錫、タングステン、レニウム、プラチナ、およびガドリニウム。好ましくは、これら金属は、適切な金属化合物由来のイオン形態、例えば、Al3+イオン、Ru3+イオン、Zn2+イオン、Fe3+イオン、Ni2+イオンおよびCa2+イオンで提供される。
【0023】
好適な金属は金、特にAl3+の形態である。金コロイドの特に好適な形態は、HAuCl4である。1つの実施形態では、この金コロイド粒子は、適切な中性pHで負電荷を有する。この負電荷が、その他の負に荷電した分子の誘引および付着を防ぐと考えられる。対照的に、正に荷電した分子がこの金コロイド粒子に誘引および結合する。この金コロイドは、所定の範囲の粒子サイズを有する金粒子を含むゾルの形態で採用され得るが、好適なサイズは、約30〜40nmの粒子サイズである。
【0024】
別の好適な金属は、特にホウ酸緩衝液中の、約0.1%と0.001%との間、そして最も好ましくは約0.01%溶液の濃度を有する銀である。好ましくは、このような銀コロイド溶液の色は黄色であり、そしてコロイド粒子の範囲は1〜40nmである。このような金属イオンは、単独または他の無機イオンとの複合体で存在し得る。
【0025】
本発明の薬剤は、抗体、タンパク質、脂質、核酸または炭水化物;核酸、抗体、タンパク質、脂質、栄養物、コファクター、栄養物質(nutriceutical)、麻酔薬、検出薬剤または身体中で影響をもつ薬剤のような、任意の化合物、化学物質、治療薬剤、薬学的薬剤、薬物、生物学的因子、生物学的分子のフラグメントであり得る。このような検出薬剤および治療薬剤ならびにそれらの活性は、当業者に公知である。
【0026】
以下は、本発明で用いられ得るいくつかの薬剤の非限定的な例である。本発明で採用され得る1つの型の薬剤は、制限されないで、サイトカイン、成長因子、活性をもつより大きな分子のフラグメント、神経化学薬物、および細胞情報伝達分子を含む生物学的因子を含む。このような薬剤の例は、制限されないで、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFα」)、トランスホーミング増殖因子α(「TGF−α」)、リンホトキシン、移動阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球−マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスホーミング増殖因子β(「TGF−β」)、線維芽細胞増殖因子、アンジオスタチン、エンドスタチン、GABA、およびアセチルコリンを含む。
【0027】
別の型の薬剤はホルモンを含む。このようなホルモンの例は、制限されないで、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、内在化ホルモン、小胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、エストロゲン、テストステロン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、プロステロール、プロゲステロン、プロゲスチン、エステロン、その他の性ホルモン、およびホルモンの誘導体およびアナログを含む。
【0028】
なお別の型の医薬品は調合薬を含む。任意の型の薬学的薬剤が本発明で採用され得る。例えば、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤のような抗炎症剤、可溶性レセプター、抗体、抗生物質、鎮痛剤、血管形成剤および抗血管形成剤、およびCOX−2インヒビターが、本発明で採用され得る。化学的治療剤は、本発明で特に重要である。このような薬剤の非制限的な例は、タキソール、パクリタキセル、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、アシクロビル、シスプラチンおよびタクリンを含む。
【0029】
免疫治療薬剤もまた、本発明において特に重要である。免疫治療薬剤の非限定的な例は、AZTおよびその他の誘導体化または改変ヌクレオチドのような、炎症性薬剤、生物学的因子、免疫調節タンパク質、および免疫治療薬物を含む。低分子もまた、本発明の薬剤として採用され得る。
【0030】
別の型の薬剤は核酸を基礎にした物質を含む。このような物質の例は、制限されずに、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、tRNA、mRNA、センス核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、DNAザイム、タンパク質/核酸組成物、SNP、オリゴヌクレオチド、ベクター、ウイルス、プラスミド、トランスポゾン、および当業者に公知のその他の核酸構築物を含む。
【0031】
本発明で採用され得るその他の薬剤は、制限されずに、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、スタフィロコッカスエンテロトキシンBおよびその他のトキシン、ヒートショックタンパク質、血液型の炭水化物成分、Rh因子、細胞表面レセプター、抗体、癌細胞特異的抗原;MART、MAGE、BAGEなど、およびHSP(ヒートショックタンパク質)、放射性金属または放射性分子、検出試薬、酵素および酵素コファクターを含む。
【0032】
特に重要なのは、隔離されたコロイド状金属ベクターを可視化または検出するために用いられ得る、色素または放射活性物質のような検出試薬である。蛍光、化学発光、感熱、不透明体、ビーズ、磁性材料および振動性物質もまた、本発明の組成物においてコロイド状金属と組合せまたはそれに結合される検出薬剤としての使用のために企図される。
【0033】
薬剤、および本発明の処置方法によって影響を受ける生物の他の例は、以下の表に見出される。この表は、他の薬剤(例えば、以下の薬剤の薬学的等価物)が本発明によって企図されることを制限するものではない。
【0034】
(表I 生物および選択される活性薬剤)
【0035】
【表1】
標的化分子もまた、本発明の組成物の成分である。1つ以上の標的化分子は、コロイド性金属と、直接的かまたは間接的に付着、結合または会合され得る。これらの標的化分子は、特定の細胞もしくは細胞型、特定の胎児組織に由来する細胞、器官、または組織に指向され得る。このような標的化分子は、特定の細胞もしくは細胞型に選択的に結合し得る任意の分子を含む。一般的に、このような標的化分子は、結合対の一方のメンバー等であり、他のメンバーに選択的に結合する。このような選択性は、細胞上で天然に見い出される構造体(例えば、細胞膜や核膜に見出されるレセプター)、またはDNAと会合した構造体に結合することによって達成され得る。また、結合対のメンバーを、細胞、細胞型、組織または器官に対して合成的に導入し得る。標的化分子にはまた、レセプター、あるいは細胞膜において見出されるかまたは細胞膜を含まない分子に結合し得るレセプターの部分、リガンド、抗体、抗体フラグメント、酵素、補因子、基質、および当業者に公知の他の結合対メンバーが挙げられる。標的化分子はまた、複数の型の結合パートナーに結合し得る。例えば、標的化分子は、レセプタークラスもしくはレセプターファミリー、または他の結合パートナーに結合し得る。標的化分子はまた、いくつかの酵素またはいくつかの酵素型に結合し得る酵素の基質または補因子であり得る。
【0036】
標的化分子の具体的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFa」)、トランスホーミング増殖因子−α(「TGF−α」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスホーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、血液型の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子ならびに他の炎症性タンパク質および免疫調節性タンパク質、ホルモン(例えば、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、および黄体化ホルモン放出ホルモン)、細胞表面レセプター、抗体、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、センス核酸、アンチセンス核酸、癌細胞特異的抗原、MART、MAGE、BAGE、ならびにHSP(熱ショックタンパク質)、変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;レセプタータンパク質、グルコース、グリコゲン、リン脂質、ならびにモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体、塩基性線維芽細胞増殖因子、酵素、補因子および酵素基質。
【0037】
本発明において使用される統合分子は、特異的な結合統合分子(例えば、結合対のメンバー)であり得るか、または低い特異性で結合する非特異的結合統合分子であり得るかのいずれかである。統合分子は、2つの実体を結合または会合させるための部位を提供するその機能によって、規定される。1つの実体は、金属ゾル粒子を含み得、そして他方の実体は、1つ以上の活性剤または1つ以上の標的化分子、あるいはこれらの両方または組み合わせを含み得る。本発明の組成物は、1つ以上の統合分子を含み得る。
【0038】
非特異的結合統合分子の例は、核酸を結合する際に有用な、ポリカチオン性分子(例えば、ポリリジンまたはヒストン)である。ポリカチオン性分子は、当業者に公知であり、そしてポリリジン、硫酸プロタミン、ヒストンまたはアシアログリコプロテインが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、金属粒子に対する1つ以上の実体の結合を提供する、合成分子の使用を企図する。
【0039】
特異的結合統合分子としては、本発明において使用され得る結合対の任意のメンバーが挙げられる。このような結合対は、当業者に公知であり、そして抗体−抗原対、酵素−基質対、レセプター−リガンド対、およびストレプトアビジン−ビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。このような公知の結合対に加えて、新規な結合対が、特に設計され得る。結合対の特徴は、結合対の2つのメンバーの間の結合である。結合パートナーの別の所望の特徴は、その対の一方のメンバーが、薬剤または標的化分子の1つ以上を結合し得るかまたは結合され得、そしてこの対の他方のメンバーは、金属粒子に結合し得ることである。
【0040】
本発明の組成物の別の成分は、グリコール化合物(好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、より好ましくは、誘導体化PEG)を含有する。本発明は、PEGが5,000〜30,000のMWである、誘導体化PEGを含有する組成物を包含する。誘導体化PEG化合物は、Shearwater Corporation,Huntsville,ALのような供給源から市販されている。PEG化合物は、二官能性または単官能性(例えば、メトキシ−PEG(mPEG))であり得る。直鎖または分枝鎖のPEGの活性化誘導体は、種々の分子量で利用可能である。本明細書中において使用される場合、用語「誘導体化PEG」または「PEG誘導体」とは、官能基、化学実体の付加、または他のPEG基の付加のいずれかによって改変されて、直鎖分子からの分枝を提供する、任意のポリエチレングリコール分子を意味する。このような誘導体化PEGは、生物学的に活性な化合物との結合体化、ポリマー移植片の調製、または誘導体化分子によって提供される他の機能のために、使用され得る。
【0041】
1つの型のPEG誘導体は、一級アミノ基を一端または両端に有する、ポリエチレングリコール分子である。好ましい分子は、一端にアミノ基を有するメトキシPEGである。別の型のPEG誘導体としては、求電子的に活性化されたPEGが挙げられる。これらのPEGは、タンパク質、リポソーム、可溶性ポリマーおよび不溶性ポリマー、ならびに種々の分子への、PEGまたはメトキシPEG(mPEG)の付着のために、使用される。求電子的に活性なPEG誘導体としては、PEGプロピオン酸のスクシンイミド、ブタン酸PEG酸(PEG butanoate acid)のスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミドまたはアルデヒドに付着した複数のPEG、mPEG二重エステル(mPEG−CM−HBA−NHS)、mPEGベンゾトリアゾールカーボネート、およびmPEGプロピオンアルデヒド、mPEGアセトアルデヒドジエチルアセタールが挙げられる。
【0042】
誘導体化PEGの好ましい型としては、チオール誘導体化PEG、またはスルフヒドリル選択的PEGが挙げられる。5,000〜40,000mwの分子量範囲を有する、分枝鎖、フォーク型、または直鎖のPEGが、PEG骨格として使用され得る。好ましいチオール誘導体化PEGとしては、チオール基が結合体化し得るマレイミド官能基を有するPEGが挙げられる。好ましいチオール−PEGは、5,000〜40,000のPEG
mwを有するメトキシ−PEG−マレイミドである。
【0043】
誘導体化PEGとしての、ヘテロ官能性PEGの使用もまた、本発明によって企図される。PEGのヘテロ官能性誘導体は、一般構造X−PEG−Yを有する。XおよびYが、結合体化能力を提供する官能基である場合、多くの異なる実体が、このPEG分子のいずれかまたは両方の末端に結合し得る。例えば、ビニルスルホンまたはマレイミドは、Xであり得、そしてNHSエステルは、Yであり得る。検出方法のために、Xおよび/またはYは、蛍光性分子、放射活性分子、発光性分子、または他の検出可能な標識であり得る。ヘテロ官能性PEGまたは単官能性PEGを使用して、結合対の一方のメンバーを結合体化し得る(例えば、PEG−ビオチン、PEG−抗体、PEG−抗原、PEG−レセプター、PEG−酵素またはPEG−酵素基質)。PEGはまた、PEG−リン脂質のように、脂質に結合体化し得る。
【0044】
本発明の組成物の1つ以上の薬剤が、コロイド状金属粒子に直接結合し得るか、または1つ以上の統合分子を介してコロイド状金属に間接的に結合し得る。本発明のコロイド状金属ゾルを調製する1つの方法は、Horisberger(1979)(これは、本明細書中に参考として援用される)によって記載される方法を使用する。統合分子が使用される実施形態において、この統合分子は、金属ゾルと結合するか、混合されるか、または会合する。この薬剤は、統合分子の金属との結合、混合または会合の前に、この統合分子と結合、混合または会合し得るか、あるいは統合分子の金属との結合の後に結合、混合または会合し得る。
【0045】
薬剤を金属ゾルに結合させるための一般的な方法は、以下の工程を包含する。薬剤の溶液が、緩衝液中または溶液中(例えば、脱イオン水(diH2O))で形成される。適切な緩衝液または溶媒は、結合されるべき薬剤に依存する。所定の薬剤に適切な緩衝液または溶媒の決定は、当業者の技術のレベル内である。最適な量の薬剤を金属ゾルに結合させるために必要なpHの決定は、当業者に公知である。結合する薬剤の量は、タンパク質、治療剤または検出薬剤の決定のための定量的方法(例えば、ELISAまたは分光光度法)によって、決定され得る。統合分子が本発明において使用される場合、結合pHおよび統合分子の飽和レベルもまた、組成物を調製する際に考慮される。例えば、統合分子が結合対(例えば、ストレプトアビジン−ビオチン)のメンバーである場合、ストレプトアビジンまたはビオチンに対する結合pHが決定され、そして結合するストレプトアビジンまたはビオチンの濃度もまた、決定され得る。
【0046】
ベクター組成物が統合分子を含有する場合、薬剤は、統合分子として機能する結合対のメンバー(例えば、ビオチン)に、当該分野において公知の従来の方法によって、結合し得る。次いで、ビオチン化された薬剤が、統合分子であるストレプトアビジンを含有するコロイド金組成物に添加され得る。ビオチンは、ストレプトアビジンに特異的に結合して、金コロイドと活性薬剤との間に間接的な結合を提供する。
【0047】
薬剤を金属ゾルに結合する1つの方法は、以下の工程を包含するが、明瞭にする目的のみで、この方法は、薬剤であるTNFの、金属ゾルである金コロイドへの結合に関して開示される。金コロイドのゾルにおける粒子と、タンパク質溶液中のTNFとの間の相互作用を可能にする装置を使用した。この装置の概略図は、図1に示される。この装置は、混合チャンバを小さな容量に減少させることによって、結合していないコロイド金粒子の、結合されるべきタンパク質であるTNFとの相互作用を最大にする。この装置は、多量の金ゾルの、多量のTNFとの相互作用が、小容量のT字型コネクタにおいて起こることを可能にする。対照的に、小容量のタンパク質を多量のコロイド金粒子に添加することは、金粒子への均一なタンパク質結合を確実にするためには、好ましい方法ではない。小容量の金コロイドを多量のタンパク質に添加するという逆の方法もまた、好ましい方法ではない。コロイド金粒子およびタンパク質TNFは、単一の蠕動ポンプ(これは、コロイド金粒子およびTNFタンパク質を、2つの大きなレザバから引き出す)によって、物理的に、強制的にT字型コネクタに入れられる。適切な混合をさらに確実にするために、インラインミキサが、T字型コネクタのすぐ下流に配置される。このミキサは、コロイド金粒子をTNFと激しく混合し、これらの両方が、約1L/分の好ましい流速で、コネクタを通って流れる。
【0048】
試薬と混合する前に、金ゾルのpHは、1N NaOHを使用して、pH8〜9に調整される。高度に精製された、凍結乾燥された組換えヒトTNFは再構成され、そして3mM Tris中に希釈される。ゾルまたはTNFのいずれかをそれぞれのレザバに添加する前に、容器をT字型コネクタに接続するチュービングがクランプで閉鎖される。等量のコロイド金ゾルおよびTNF溶液が、適切なレザバに添加される。溶液中の薬剤の好ましい濃度は、約0.01〜15μg/mlの範囲であり、そして薬剤対金属ゾル粒子の比に依存して、変化され得る。溶液中のTNFの好ましい濃度は、0.5〜4μg/mlの範囲であり、そしてTNF−金コロイド組成物について最も好ましいTNFの濃度は、0.5μg/mlである。
【0049】
一旦、溶液が適切にそれぞれのレザバに装填されると、蠕動ポンプがオンにされ、薬剤溶液および金コロイド溶液をT字型コネクタに引き出し、インラインミキサを通し、蠕動ポンプを通し、そして収集フラスコに入れる。混合された溶液は、この収集フラスコ中で、さらに1時間攪拌されて、インキュベーションされる。
【0050】
PEG(誘導体化されていてもされていなくても)を含有する組成物において、このような組成物を作製するための方法は、以下の工程を包含するが、明瞭にする目的のみで、この方法は、PEGチオールの、金属ゾル組成物への添加に関して開示される。任意のPEG(誘導体化PEG組成物または任意の大きさのPEG組成物、またはいくつかの異なるPEGを含有する組成物)は、以下の工程を使用して作製され得る。上記で教示された1時間のインキュベーションに続いて、チオールで誘導体化されたポリエチレングリコール(PEG)溶液が、金コロイド/TNFゾルに添加される。本発明は、任意の誘導体の基を有する任意の大きさのPEGの使用を企図するが、好ましい誘導体化PEGとしては、mPEG−OPSS/5,000、チオール−PEGチオール/3,400、mPEG−チオール5000、およびmPEGチオール20,000が挙げられる(Shearwater Polymers,Inc.)。好ましいPEGは、水中150μg/mlの濃度のmPEG−チオール5000(pH5〜8)である。従って、10% v/vのPEG溶液が、金コロイド−TNF溶液に添加される。金/TNF/PEG溶液は、さらに1時間インキュベートされる。
【0051】
金コロイド/TNF/PEG溶液は、引き続き50K MWCOダイアフィルトレーションカートリッジを通じて限外濾過される。50K保持液(retentate)および浸透液は、ELISAによってTNF濃度について測定されて、金粒子に結合したTNFの量が決定される。
【0052】
本発明の組成物は、インビトロ系およびインビボ系で投与され得る。インビボでの投与は、標的細胞への直接適用または経口、直腸、経皮、目(硝子体内または房内を含む)、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣もしくは非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、気管内、および硬膜外を含む)の投与を含むがこれらに限定されないこのような投与経路を含み得る。好ましい方法は、経口経路または注射経路を介して、本発明のベクターを含む有効量の組成物を投与することを包含する。
【0053】
処方物は、単位投薬形態で都合よく提示され得、そして従来の製薬技術によって調製され得る。薬学的処方組成物は、金属ゾルベクターと薬学的キャリアまたは賦形剤とを一体化して取り入れることによって作製される。一般には、この処方物は、液体キャリアもしくは微細に分割した固体キャリアまたは両方とともにこの組成物を、均一かつ密接に一体化して取り入れ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0054】
本発明の組成物の使用の好ましい方法は、腫瘍に対してベクターを標的化することを包含する。好ましいベクター組成物は、金属ゾル粒子、薬剤および腫瘍への送達のため、腫瘍もしくは生物に対する治療効果または腫瘍の検出のためのPEG組成物あるいは誘導体化PEG組成物を含む。このようなベクター組成物は、標的化分子および/または統合分子をさらに含み得る。さらに他の好ましいベクター組成物は、金属ゾル粒子、放射活性剤または細胞傷害剤および腫瘍への放射治療剤の送達のためのPEG組成物または誘導体化PEG組成物を含む。従来、放射活性金コロイドは、癌治療剤として、主に肝臓細胞による金コロイドの予測される取り込みに起因して、肝臓癌の処置のために使用されてきた。放射活性コロイド状金属粒子と組み合わせて、誘導体化PEG、好ましくは、PEGチオールを含有する組成物は、腫瘍を処置するためかまたは腫瘍を同定するために使用される。あるいは、コロイド状金属に結合されるタンパク質に結合した放射活性部分を含み、そして放射活性ベクターを形成する誘導体化PEG、好ましくは、PEG−チオールをさらに含む、ベクター組成物は、腫瘍を処置するために使用される。本発明の放射活性ベクター組成物は、静脈内注射され、腫瘍に伝達され、そして肝臓によって有意に取り込まれない。両方の組成物において、腫瘍において放射活性治療剤を濃縮するPEGチオールの能力は、治療効力を増加させるが、処置の副作用を減少させると考えられる。
【0055】
他の好ましいベクター組成物は、腫瘍のインビボでの画像化および腫瘍の検出のための組成物を投与することを包含する方法で使用するための金属ゾル粒子およびPEG、好ましくは、PEG誘導体を含有する。この組成物は、検出方法および画像化方法を補助する薬剤をさらに含有し得る。例えば、薬剤としては、放射活性剤、放射感応剤もしくは放射反応性剤(例えば、光反応性化合物または熱反応性化合物)、化学発光剤もしくは発光剤または検出目的で使用される他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。検出の方法としては、NMRスキャン、CATスキャンもしくはPETスキャン、目視試験法、比色法、放射検出法、分光光度法、およびタンパク質、核酸、ポリサッカリドまたは他の生物学的因子検出法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明は、外因性核酸または遺伝物質を細胞へと送達するための方法で使用するための組成物を含む。外因性遺伝物質は、標的化分子を用いて、特定の細胞に標的化され得、この分子は、特定の細胞を認識し得るか、またはPEGまたは誘導体化PEGを含む組成物を用いて、腫瘍に特異的に標的化される。例えば、標的化分子は、細胞上の特定のレセプターに対する結合パートナーであり、そして結合後、組成物全体は、細胞内に内部移行され得る。ベクター組成物の結合は、細胞の状態を変更する細胞性機構を活性化し得る(例えば、細胞内の二次メッセンジャー分子の活性化)。従って、異なる細胞型の混合物において、この外因性核酸は、選択されたレセプターを有する細胞に送達され、そしてレセプターを欠いている細胞は、影響されない。
【0057】
本発明は、薬剤の挿入または薬剤の適用のための、インビトロまたはインビボでの特定の細胞のトランスフェクションについての組成物および方法を包含する。このような組成物の1つの実施形態は、コロイド状金属に結合されるポリカチオン(非特異的結合統合分子)に結合された核酸を含む。本発明の好ましい実施形態は、標的化分子を結合し得るプラットホームとして金コロイド、およびトランスフェクションを達成するために細胞のレセプター媒介性エンドサイトーシスを利用する標的化遺伝子送達ベクターを生成する核酸因子を含む。いくつかの好ましい実施形態において、標的化分子は、サイトカインであり、そして因子は、DNAまたはRNAのような遺伝物質である。この実施形態はまた、遺伝物質が結合されるかまたは一体化されるポリカチオンのような統合分子を含有し得る。
【0058】
本発明において、この方法は、遺伝子送達ベクターの調製、およびトランスフェクション効果または治療効果のために細胞への標的化遺伝子送達ベクターの送達を含む。組成物の核酸は、内部移行され得、そして検出剤としてかもしくは遺伝子治療効果のために使用され得るか、またはこの核酸が、細胞によって、翻訳され得、そして発現され得ることが、本発明において企図される。発現生成物は、当業者に全て公知であり得、そして機能性タンパク質、細胞性生成物の生成、酵素活性、細胞性生成物の搬出、細胞性膜成分の生成、または核成分が挙げられるが、これらに限定されない。標的細胞への送達の方法は、例えば、インビトロ技術(例えば、細胞性培養物を用いる)で使用される方法、またはインビボでの投与で使用される方法であり得る。インビボでの投与は、細胞への直接適用、またはヒト、動物、もしくは他の生物に対して、好ましくは、静脈投与もしくは経口投与で使用されるような投与経路を含み得る。本発明はまた、本発明の組成物によって改変された細胞、およびこのような細胞を、他の細胞、組織または生物にインビボまたはインビトロの方法で投与することを企図する。
【0059】
本発明は、特定の免疫成分に指向される組成物を用いて、特定の免疫細胞の同時または連続的な標的化を通じて、免疫応答を増強し、そしてワクチン効力を増強させる組成物および方法を包含する。この組成物はまた、免疫細胞の画像化または検出のための方法で使用され得る。これらの方法は、免疫系に作用し得るベクター組成物を含み、そして以下の成分の少なくとも1つと一体化されるコロイド状金属を含む:標的化分子、薬剤、統合分子、1つ以上の型のPEGまたは誘導体化PEG。この組成物はまた、特定の免疫成分(例えば、細胞)を含み得、抗原提示細胞(APC)(マクロファージおよび樹状細胞)およびリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)が挙げられるがこれらに限定されず、これらは、1つ以上の成分に特異的な免疫刺激因子によって個々に作用されたか作用される。
【0060】
成分に特異的な免疫刺激性分子の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスホーミング増殖因子(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン(Angiogenin)、トランスホーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症性タンパク質および免疫調節性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異性抗原(例えば、MART、MAGE、BAGE);flt3リガンド/レセプター系;分子およびレセプターのB7ファミリー;CD40リガンド/レセプター;および免疫療法薬物(例えば、AZT);ならびにアンギオゲニン薬物および抗アンギオゲニン薬物(例えば、アンギオスタチン(angiostatin)、エンドスタチン(endostatin)および基本的な線維芽細胞増殖因子、または血管上皮増殖因子(VEGF))。
【0061】
特に好ましい実施形態は、成分に特異的な免疫刺激因子と一緒に特定の抗原を含む、薬剤を含むベクター組成物を用いて、免疫応答の活性化についての方法を提供する。本明細書中で使用される場合、成分に特異的な免疫刺激因子とは、免疫系(例えば、B細胞またはT細胞)の成分に対して特異的であり、そしてその成分に作用し得、その結果、その成分が免疫応答で活性を有する因子をいう。成分に特異的な免疫刺激性因子は、免疫系のいくつかの異なる成分に作用し得、そしてこの能力は、本発明の方法および組成物において利用され得る。この因子は、天然に存在し得るか、または分子生物学的技術もしくはタンパク質レセプター操作を介して、生成され得るかまたは改変され得る。
【0062】
免疫系における成分の活性化は、免疫応答の他の成分の刺激または抑制をもたらし、免疫系の全体の刺激または抑制を誘導し得る。表現の容易さのために、免疫成分の刺激が本明細書中で記載されているが、免疫成分の全ての応答が、用語刺激によって企図され、刺激としては、刺激活性、抑制活性、拒絶活性およびフィードバック活性が含まれるが、これらに限定されないことが理解される。
【0063】
作用される免疫成分は、複数の活性を有し、抑制および刺激の両方またはフィードバック機構の開始もしくは抑制を導き得る。本発明は、本明細書中で詳述される免疫学的応答の例によって限定されるべきでないが、免疫系の全ての局面における成分に特異的な作用を企図する。
【0064】
免疫系の成分の各々の活性化は、同時、連続、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。本発明の方法の1つの実施形態において、複数の成分に特異的な免疫刺激因子が、同時に投与される。この方法において、免疫系は、複数の別個の調製物で同時に刺激され、この調製物の各々は、成分に特異的な免疫刺激性因子を含むベクター組成物を含有している。好ましくは、このベクター組成物は、コロイド状金属と一緒に、成分に特異的な免疫刺激性因子を含む。より好ましくは、この組成物は、1つの大きさの粒子または異なる大きさの粒子のコロイド状金属および抗原と一体化した成分に特異的な免疫刺激性因子を含む。最も好ましくは、この組成物は、1つの大きさの粒子または異なる大きさの粒子のコロイド状金属、抗原およびPEGまたはPEG誘導体と一体化した成分に特異的な免疫刺激性因子を含む。
【0065】
成分に特異的な免疫刺激性因子は、個々の免疫成分に対して作用する、特定の刺激性、アップレギュレーションを提供する。例えば、インターロイキン−1β(IL−1β)は、マクロファージを特異的に刺激するが、TNF−α(腫瘍壊死因子α)およびFlt−3リガンドは、樹状細胞を特異的に刺激する。加熱殺菌したMycobacterium
butyricumおよびインターロイキン−6(IL−6)は、B細胞の特異的な刺激因子(stimulator)であり、そしてインターロイキン−2(IL−2)は、T細胞の特定の刺激因子である。ベクター組成物は、このような成分に特異的な免疫刺激性因子を含み、この因子は、各々、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞に特異的な活性化を提供する。例えば、マクロファージは、成分に特異的な免疫刺激性因子IL−1βを含むベクター組成物が投与される場合に活性化される。好ましい組成物は、コロイド状金属と一体化したIL−1βであり、そして最も好ましい組成物は、コロイド状金属およびその抗原に特異的なマクロファージの応答を提供する抗原と一体化したIL−1βである。ベクター組成物は、標的化分子、統合分子、PEGまたは誘導体化PEGをさらに含有し得る。
【0066】
免疫応答の多くのエレメントは、抗原に対する有効な免疫応答のために必要であり得る。同時刺激方法の実施形態は、成分特異的な免疫刺激性薬剤の組成の4つの別々の調製物を投与することであり、この免疫刺激性薬剤は、以下を含有する:1)マクロファージ用のIL−1β、2)樹状細胞用のTNF−αおよびFlt−3リガンド、3)B細胞用のIL−6、ならびに4)T細胞用のIL−2。各成分特異的な免疫刺激性薬剤のベクター組成物は、当業者に公知の任意の経路によって投与され得、全ての組成物は、所望される免疫応答に依存して、同じ経路を使用されても異なる経路を使用されてもよい。
【0067】
本発明の方法および組成物の別の実施形態において、個々の免疫成分は、連続的に活性化される。例えば、この連続的な活性化は、2相(プライマー相および免疫相)に分配され得る。プライマー相は、刺激性APC、好ましくは、マクロファージおよび樹状細胞を含み、一方、免疫相は、刺激性リンパ球、好ましくは、B細胞およびT細胞を含む。各2相での、個々の免疫成分の活性化は、同時であっても連続的であってもよい。同時の活性化について、活性化の好ましい方法は、ベクター組成物を投与することであり、このベクター組成物により、マクロファージの活性化、続いて樹状細胞の活性化、続いてB細胞の活性化、続いてT細胞の活性化が起こる。最も好ましい方法は、組み合わせた連続的な活性化であり、この方法は、ベクター組成物を投与する工程を包含し、このベクター組成物により、マクロファージおよび樹状細胞の同時の活性化、続いてB細胞およびT細胞の同時の活性化が起こる。これは、免疫系のいくつかの経路を開始するための方法、およびこの経路を開始するための複数成分特異的な免疫刺激性薬剤の組成の例である。
【0068】
本発明の方法および組成物は、任意の型のワクチンの効果を増強するために使用され得る。本発明の方法は、活性化に対して特異的な免疫成分を標的化することによって、ワクチン効果を増強させる。コロイド状金属および抗原に会合した、少なくとも1つの成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有するベクター組成物が、抗原と特定の免疫成分(例えば、マクロファージ、B細胞またはT細胞)との間の接触を増加させるために使用される。現在ワクチンが利用可能である疾患の例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:コレラ、ジフテリア、ヘモフィルス属、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふくかぜ、百日咳(pertussis)、小痘、肺炎球菌性肺炎、ポリオ、狂犬病、風疹、破傷風、結核症、腸チフス、水痘‐帯状疱疹、百日咳(whooping
cough)、および黄熱病。
【0069】
抗原を免疫系に送達するための、投薬経路およびベクター組成物の組み合わせを使用して、所望の免疫応答を引き起こす。本発明はまた、免疫刺激性ベクター組成物の長期放出を提供し得る方法、および免疫刺激性ベクター組成物の長期放出を提供し得るパッケージング系(例えば、リポソーム、マイクロカプセル、またはミクロスフェア)の種々の組成を含有する組成物を包含する。これらのパッケージング系は、抗原を保持しかつ免疫系の活性化のためにこの抗原をゆっくりと放出するための内部貯蔵所として作用する。例えば、リポソームは、ベクター組成物で充填され得、このベクター組成物は、コロイド状金属に結合するかまたはコロイド状金属と会合する、抗原薬剤および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する。さらなる組み合わせは、金コロイド粒子であり、この粒子は、活性ワクチン候補物であるかまたは推定ワクチンのためのDNAを含むようにパッケージングされたウイルス粒子のような薬剤に点在している。ベクターはまた、1種以上の標的化分子(例えば、サイトカイン、統合(integrating)分子およびPEG誘導体)を含有し得、次いで、このベクターは、特定の細胞に対してウイルスを標的化するために使用される。さらに、融合タンパク質ワクチン(これは、2種以上の潜在的なワクチン候補物を標的化する)を使用し得、2種以上の感染性微生物に対して保護を提供するベクター組成物ワクチンを提供し得る。この組成物はまた、免疫原を含有し得、この免疫原は、材料をゆっくりと放出し得るポリエチレングリコールを添加することによって化学修飾される。
【0070】
金属粒子を含有する組成物および1種以上の抗原および1種以上の成分特異的な免疫刺激性薬剤、ならびに1種以上の統合分子および標的化分子およびPEGまたはPEGの誘導体を含有する薬剤は、リポソームまたは生分解性ポリマーにパッケージングされ得る。ベクター組成物は、リポソームまたは生分解性ポリマーからゆっくりと放出され、そして免疫系によって、外来性成分または特定の成分(これらの成分に対して、成分特異的な免疫刺激性薬剤は、免疫系の活性または抑制を指向する)として認識される。例えば、免疫応答のカスケードは、成分特異的な免疫刺激性薬剤の存在によって、より迅速に活性化され、この免疫応答は、より迅速かつ特異的に起こる。
【0071】
本発明において企図される他の方法および組成物は、金属粒子および抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤の組成物の使用を包含し、これはまた、コロイド状金属粒子が異なるサイズを有する、統合分子および標的化分子を含有し得る。この組成物は、さらに、PEGまたはPEGの誘導体を含有し得る。成分特異的な免疫刺激性薬剤の連続投与は、異なるサイズのコロイド状金属粒子を使用することによって、1用量投与で達成され得る。1用量は、複数の独立した成分特異的な免疫刺激性薬剤を含み、抗原および組み合わせは、異なるサイズのコロイド状金属粒子に会合し得るかまたは同じサイズのコロイド状金属粒子に会合し得る。従って、同時投与は、免疫成分の連続的な活性化を与え、集団に対してより効果的なワクチンおよびさらなる保護が得られる。連続的な活性化を伴う、このような単回用量投与の他の型は、異なるサイズのコロイド状金属ベクター組成物または同じサイズのコロイド状金属ベクター組成物およびリポソームまたは生分解性ポリマー、あるいは異なるサイズのコロイド状金属ベクター組成物または同じサイズのコロイド状金属ベクター組成物で充填されたリポソームまたは生分解性ポリマーを組み合わせることによって、提供され得る。
【0072】
上記のようなワクチン系を使用することは、1用量で投与され得るワクチンを提供するのに重要である。1用量投与は、動物集団(例えば、家畜または動物の野生集団)を処置する際に重要である。1用量投与は、健康管理がほとんどなされていない集団(例えば、困窮者、ホームレス、地方住人、または健康管理の不十分な発展途上国の人)の処置において重要である。全ての国の多くの人々は、予防型の健康管理(例えば、ワクチン接種)を利用していない。感性症(例えば、結核)の再出現は、一旦与えられると、持続性の効果的な保護をなお与え得るワクチンに対する需要を高める。本発明の組成物および方法は、このような効果的な保護を提供する。
【0073】
本発明の方法および組成物はまた、免疫応答が起こる疾患を、この免疫応答の一部である成分を刺激または抑制することによって処置するために使用され得る。このような疾患の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アディソン病、アレルギー、アナフィラキシー、ブルートン症候群、癌(固形腫瘍および血液偏狭(blood borne)腫瘍を含む)、偏狭、橋本甲状腺炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、後天性免疫欠乏症候群、移植拒絶(例えば、腎臓移植、心臓移植、膵臓移植、肺移植、骨移植および肝臓移植)、グレーヴズ病、多発性内分泌自己免疫疾患、肝炎、顕微的多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セアリック病(coeliac disease)、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、リウマチ病、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、血清反応陰性脊椎結核(seronegative spondylarthritides)、鼻炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、硬化胆管炎(sclerosing cholangitis)、ヴェーゲナー肉芽腫症、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギヤン−バレー症候群、重症筋無力症、ランバート−イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、じんま疹、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群(X−linked hyper IgM syndrom)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイドーシス、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫。
【0074】
本発明のベクター組成物は、成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤を含有する。組成物は、1種の成分特異的な免疫刺激性薬剤または複数の成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有し得る。ベクター組成物の好ましい実施形態は、コロイド状金属に会合した成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤を含有する。より好ましい実施形態は、コロイド状金属および少なくとも以下のうちの1つに会合した、1種以上の抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤を含有する組成物を含有する:PEGまたはPEGの誘導体、成分特異的な免疫刺激性薬剤(抗原、レセプター分子、核酸、製薬、化学療法剤、およびキャリアを含むがこれらに限定されない)の効果を特異的に標的化するための、統合分子および標的化分子。本発明の組成物は、任意の様式で、免疫成分に送達され得る。1つの実施形態において、抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤は、コロイド状金属粒子が抗原と免疫刺激性薬剤との両方に会合する様式で、このコロイド状金属に結合される。
【0075】
本発明は、種々の異なる送達プラットフォームまたはキャリアの組み合わせにおける、薬剤(例えば、抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤)の提示を包含する。例えば、好ましい実施形態は、ベクター組成物の投与を包含し、このベクター組成物は、リポソームまたは生分解性ポリマーキャリア中で、薬剤(例えば、抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤)に結合した金属コロイド粒子を含有する。さらなる組み合わせは、薬剤と会合したコロイド金粒子(例えば、ウイルス粒子)であり、この粒子は、ワクチン抗原であるかまたは核酸を含む生存可能なウイルス粒子(これは、ワクチンのための抗原を生成する)である。ベクター組成物はまた、標的化分子(例えば、サイトカイン)または選択される結合対メンバー(これは、特定の細胞にウイルスを標的化するために使用される)を含有し得、そしてさらに、統合分子またはPEGもしくはPEGの誘導体のような、本明細書中で教示される他のエレメントを含有する。このような実施形態は、長期の応答のために、抗原を免疫系にゆっくりと放出するワクチン調製物を提供する。この型のワクチンは、特に、ワクチンの単回投与に有利である。キャリアの全ての型(リポソームおよびマイクロカプセルを含むがこれらに限定されない)は、本発明で企図される。
【0076】
(毒性低減およびワクチン投与)
本発明は、因子が通常の濃度よりも高い濃度で存在している場合、ヒトまたは動物に対して毒性である因子を投与するための細胞および方法を包含する。一般的には、本発明に従う組成物は、ベクター組成物を含み、このベクター組成物は、薬剤が正常濃度よりも高い濃度で見出された場合、ヒトまたは動物に対して毒性である薬剤と組み合わせた、コロイド状金属の混合物であるか、あるいはシールドされた形態よりも高い活性を可能にするシールドされていない形態であるか、あるいは通常では見出されない部位に見出される。ベクター組成物がヒトまたは動物に投与される場合、薬剤は、この薬剤がコロイド状金属ベクター組成物なしで単独で提供される場合よりも、ヒトまたは動物に対して有害ではないか、低い毒性であるかまたは非毒性である。この組成物は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、水溶液、または賦形剤、緩衝剤、抗原安定化剤、または滅菌キャリア)を含有する。また、オイル(例えば、パラフィン油)が、必要に応じて、この組成物中に含有され得る。ベクター組成物はさらに、PEGまたはPEGの誘導体を含有し得る。
【0077】
本発明の組成物は、注射される際に毒性である薬剤に対してヒトまたは動物にワクチン接種するために使用され得る。さらに、本発明は、組成物を投与することによって、サイトカインまたは増殖因子を用いて特定の疾患を処置するために使用され得、この組成物は、薬剤(例えば、サイトカインまたは増殖因子)を含有する。この薬剤をヒトまたは動物に投与する前に、この薬剤をコロイド状金属と混合することによって、薬剤の毒性は軽減されるまたは取り除かれ、それによって、因子がこの治療効果を発揮することが可能になる。治療結果を維持または増強し、それによって、より高濃度の薬剤が投与され得る場合の有効性を改善する間にか、あるいは異なる薬剤の組み合わせの使用を可能にすることによって、コロイド状金属とこのような薬剤をベクター組成物中で組み合わせることによって、毒性が低減される。従って、ベクター組成物中で薬剤と組み合わせてコロイド状金属を使用することによって、通常の薬剤濃度よりも高い濃度での使用が可能になるか、または通常はそれらの毒性に起因して、ヒトまたは動物に投与するのに使用できない薬剤の投与を可能にする。好ましくは、ベクター組成物はさらに、PEGまたはPEGの誘導体の1種以上の型またはサイズを含有する。
【0078】
本発明の1つの実施形態は、ワクチン調製物としてコロイド状金属に会合した薬剤を含有するベクター組成物を使用するための方法を包含する。このようなワクチンの多くの利点の中には、通常では毒性の薬剤の毒性を低減させることがある。薬剤に対するワクチンとして使用されるベクター組成物は、任意の方法によって調製され得る。例えば、薬剤とコロイド状金属との混合物のベクター組成物は、好ましくは、適切な動物に注射される。例えば、約2〜5kg体重のウサギは、金コロイドおよび薬剤(1mgのサイトカイン(IL−1またはIL−2))を含有する組成物を2週毎に投与した後に、顕著な副作用を示さなかった。この試薬は、本発明に従って投与される場合毒性ではないので、抗原として機能し得る最適な量の試薬が、動物に投与され得る。本発明に従うベクター組成物は、単回用量で投与され得るか、または適切な時間規模にわたって間隔を空けて、複数用量で投与され得る。複数用量は、二次免疫応答を発生させる際に有用である。例えば、抗体タイターは、1ヶ月毎にブースターを投与することによって維持される。
【0079】
ワクチン組成物はさらに、薬学的に受容可能なアジュバントを含有し得、これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、リポ多糖類、モノホスホリルリピドA、ムラミルジペプチド、リピドAを含むリポソーム、ミョウバン、ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、キーホールリンペットヘモシニアン。動物に好ましいアジュバントは、フロイント不完全アジュバントであり、ヒトに好ましいアジュバントは、ミョウバンであり、これは、好ましくは、コロイド状金属および活性薬剤を含有する組成物で1:1に希釈される。
【0080】
本発明の組成物の好ましい使用方法は、ヒトまたは動物に、少なくとも1種の薬剤と混合したコロイド状金属を含有する、有効量のベクター組成物を投与する工程を包含し、ここで、ヒトまたは動物に投与される場合、この組成物は、ほとんど毒性でないかもしくは非毒性であるか、または薬剤単独での投与もしくはコロイド状金属を含まない組成物中での投与と比較した場合、副作用をほとんど有さないかもしくは副作用が少ない。本発明に従うベクター組成物は、通常毒性の物質に対してワクチンとして投与され得るか、または通常毒性の薬剤の毒性が減少され、それによってより長い期間にわたって薬剤の高量の投与が可能になる治療剤であり得る。
【0081】
これらの実施形態の実施において、組成物が投与される経路は、重要であると考えられない。組成物が本発明に従って投与され得る経路としては、以下を含むが、これらに限定されない公知の投与経路が挙げられる:皮下経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経口経路、および静脈内経路。投与の好ましい経路は、静脈内経路である。投与の別の好ましい経路は、筋肉内経路である。
【0082】
例えば、インターロイキン−2(IL−2)は、腎臓癌の処置において、有意な治療結果を示すことが知られている。しかし、IL−2の投与の毒性副作用が、かなりの数の患者の死を招く。対照的に、少なくともIL−2およびコロイド状金属を含むベクター組成物が投与される場合、ほとんどまたは全く毒性は観察されず、そして、強い免疫応答が、レシピエントにおいて生じる。IL−2治療についてかつて使用された用量は、一日あたり70kgのヒトあたり、約21×106ユニットのIL−2(7×106ユニットのIL−2/70kgヒトTID)であった。1ユニットは、約50ピコグラムと等しく、2ユニットは、約0.1ナノグラムと等しいので、20×106ユニットは、1ミリグラムと等しい。本発明の1つの実施形態において、ウサギに与えられているIL−2の量は、3kgのウサギあたり約1mgである。要するに、本明細書中に記載される薬剤の投与の効果の研究は、かつてヒトに与えられた用量よりも、20倍よりも多い容量が含まれていた。
【0083】
別の実施形態において、ここで、IL−2(3kgの動物あたり1mg)が、2週間の間3日毎に、3匹のウサギに投与された場合、全ての動物は臨床上病的のように見え、そして、これらの動物のうちの2匹は、IL−2の明らかな毒性効果がもとで死亡した。同じ用量のIL−2が、金コロイドを含むベクター組成物において使用され、次いで、同じ2週間の間3匹のウサギに投与された場合、毒性は観察されず、そして、3匹全ての動物において、有意な抗体応答を招いた。本明細書中で使用される場合、「陽性抗体応答」は、予備免疫出血と免疫後出血を比較した場合に、直接的ELISAによって決定されるように、特異的抗体反応性の3〜4倍の増加として定義される。直接的ELISAは、マイクロタイタープレート上へのIL−2の結合、およびアルカリホスファターゼに結合体化されたヤギ抗ウサギIgGによりプレート上のIL−2に結合されるIgGの量の決定によって行われる。従って、依然としてIL−2の生物学的効果があると考えられる。毒性効果が最小化されているので、より高く、より効果的な免疫応答が必要とされる場合、必要に応じて、より高濃度のIL−2が投与され得る。
【0084】
本発明は、1つ以上の薬剤およびコロイド状金属を含むベクター組成物を投与することによって、疾患を処置する方法を包含する。このベクター組成物はさらに、PEGまたはPEGの誘導体を含み得る。投与後、この薬剤は、コロイド状金属から放出されると想定される。いずれの理論によっても束縛されることを望まないが、この放出は、単に循環期間の関数ではなく、平衡速度論によって制御されると考えられる。
【0085】
少なくともコロイド状金属および少なくとも1つの薬剤を含むベクター組成物が、25日間細胞とインキュベートされた場合、薬剤のたった5%しかコロイド状金属から放出されなかったことが示された。従って、循環時間単独では、薬剤がインビボでこの複合体から放出される機構を説明できないことが想定される。しかし、放出される薬剤の量が、部分的に、体内の複合体の濃度に関連することが見出されている。組成物の様々な希釈率が分析される(CytELISATM assay system CytImmune Sciences,Inc.)場合、複合体のより希釈した溶液が有意に多量の薬剤を放出することが見出された。例えば、複合体の1:100の希釈液において薬剤は本質的に放出されないが、35,000pgを超える薬剤が、組成物の1:100,000希釈液において放出された。
【0086】
従って、より多量の溶液において組成物がより低濃度になるほど、より多量の薬剤が放出される。組成物がより高濃度になるほど、より少量の薬剤放出される。従って、血液および細胞外流体によるこの組成物の連続的なインビボ希釈率に起因して、かつて公知である方法により投与され得るよりも低用量の薬剤を患者に投与することによって、同じ治療的効果を達成することが可能であることが、想定される。
【0087】
本発明の組成物から放出される薬剤の量が、コロイド状金属に最初に結合される薬剤の量に関連することもまた、想定される。最初に結合された薬剤をより多量の持つベクター組成物から、より多い薬剤がインビボで放出される。従って、当業者は、最初にコロイド状金属に結合される薬剤の量を変化させることによって、送達される薬剤の量を制御し得る。
【0088】
これらの合わせた特性は、多量の薬剤がコロイド状金属に結合され得、これによって、この薬剤を単独で投与される場合よりも毒性を小さくするための方法を提供する。次いで、少量のベクター組成物が患者に投与され得、これによって、この複合体からの薬剤の緩慢な放出を招く。これらの方法は、疾患(例えば、癌および免疫疾患)の処置のための延長された、低用量の薬剤を提供する。
【0089】
本発明の組成物は、以下を含むがこれらに限定されない多数の疾患の処置に有用である:癌(固形腫瘍および血行性癌(例えば、白血病)の両方);自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ);ホルモン欠損疾患(例えば、骨粗しょう症);過剰分泌に起因するホルモン異常(例えば、先端巨大症);感染性疾患(例えば、敗血症性ショック);遺伝的疾患(例えば、酵素欠損疾患(例えば、フェニルケトン尿症を生じるフェニルアラニンの代謝の不能));ならびに、免疫不全疾患(例えば、AIDS)。
【0090】
本発明の方法は、現在使用される治療処置レジメンに加えて、ベクター組成物の投与を包含する。好ましい方法は、慢性疾患および急性疾患の処置(特に、癌処置)のための治療剤の投与と同時にベクター組成物を投与する工程を包含する。例えば、薬剤(TNF)を含むベクター組成物は、公知の抗癌剤(例えば、エンドスタチンおよびアンジオスタチン、サリドマイド、タキソール、メルファラン、パクリタキセル、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、アシクロビル、シスプラチンおよびタクリンのような抗脈管形成タンパク質)を用いた化学療法処置の前、間または後に投与される。現在公知の癌処置方法は、本発明の方法中で意図され、そして、ベクター組成物は、癌の有効な処置に必要とされるような処置スケジュールにおいて、異なる回数投与され得る。
【0091】
好ましい方法は、薬物耐性腫瘍、癌または新生物の処置を包含する。これらの腫瘍は、公知の抗癌薬物および抗癌治療薬に対して耐性であり、増加した投薬量のこのような薬剤を用いてさえも、腫瘍の大きさまたは増殖に対して、ほとんどまたは全く効果がない。TNFへのこのような薬物耐性腫瘍細胞の曝露が、これらの細胞をこれらの化学療法剤の抗癌効果に対して再感作させる(resensitize)という観察が、腫瘍処置において公知である。TNFが、トポイソメラーゼII標的化挿入(intercalative)薬物(例えば、ドキソルビシン)と協同してドキソルビシン腫瘍細胞死を戻すということを示す証明が、出版されている。インターフェロン(IFN)もまた、5−フルオロウラシルと協同して、5−フルオロウラシルの化学療法剤活性を増大させることが公知である。本発明は、このような薬物耐性腫瘍を処置するために使用され得る。好ましい方法は、金コロイドに結合されたTNFおよび誘導化PEGを有するベクターを含む組成物の投与を包含する。TNF−cAu−PTの亜臨床的用量を用いて患者を前処理することで、腫瘍はTNFベクターを隔離して、このことにより、引き続く全身性化学療法に対してこれらの細胞を感作化する。このような化学療法剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ドキソルビシン、他の挿入化学療法剤、タキソール、5−フルオロウラシル、ミタキサントロン、VM−16、エトポシド、VM−26、テニポシド、および他の非挿入化学療法剤。あるいは、別の好ましい方法は、TNFおよび少なくとも1つの他の癌の処置に有効な薬剤を有するベクターを含む組成物の投与を包含する。例えば、PT−cAU(TNF)ドキソルビシンベクターは、薬物耐性の腫瘍または癌を有する患者に投与される。投与される量は、処置されるべき腫瘍および患者の状態に依存する。ベクター組成物は、より多量の化学療法剤が投与されるのを可能にして、そして、このベクターはまた、腫瘍の薬物耐性特性を軽減する。
【0092】
本発明は、以下の実施例によってさらに示され、これらの実施例は、その範囲に対する制限を強要するようないずれの方法で解釈されるべきでない。対照的に、手段が様々な他の実施形態、改変、およびこれらの等価物を有し得、本明細書中の説明を読解した後に、当業者に、この手段自体を、本発明の意図および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく示唆し得ることが、明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0093】
(実施例1 金コロイドゾルの調製)
金コロイドを、クエン酸ナトリウムのような薬剤によって、クロロ金酸(Au+3;HAuCl4)から中性金(Au0)に還元することで調製する。Horisberger(1979)によって記載される方法を適用して、34nmの金コロイド粒子を生成した。この方法は、金コロイドの生成のための簡単かつ測定可能な手順を提供した。簡単に言えば、4%の塩化金溶液(23.03%ストック;dmc2,South Plainfield,NJ)および1%のクエン酸ナトリウム溶液(wt/wt;J.T.Baker Company;Paris,KY)を、脱イオン化H2O(DIH2O)中で作製した。3.75mlの塩化金溶液を1.5LのDIH2Oに添加した。この溶液を激しく撹拌して、そして、還流下で回転させながらボイル(rolling boil)した。34nmの金コロイド粒子の形成を、60mlのクエン酸ナトリウムを添加することで開始した。この溶液を、連続的に煮沸して、以下に記載するように、粒子形成および成長の全てのプロセスの間、撹拌した。
【0094】
塩化金へのクエン酸ナトリウムの添加により、最初の塩化金溶液の色における変化により特徴付けられる一連の還元反応を開始された。クエン酸ナトリウムの添加により、塩化金溶液の色は、黄金色から黒/青の中間色に変化した。この反応の完了を、青/黒色から鮮紅色へのゾルの最終色変化によって示唆した。最終色変化の後、この溶液を、連続的に撹拌して、還流下にて、さらに45分間煮沸した。引き続いて、このゾルを、室温まで冷却して、0.22μ硝酸セルロースフィルターを介して濾過して、使用するまで室温で保存した。
【0095】
金コロイド粒子の形成は、2つの段階で生じる:核生成および粒子成長。粒子の核生成を、クエン酸ナトリウムによるAu+3からAu0への還元によって開始した。この段階は、山吹色から黒色への塩化金溶液の色変化によって特徴付けられる。遊離Au+3のAu0核上への連続的な層化が、第2の段階である粒子成長を促進する。粒子の大きさは、塩化金溶液に添加されるクエン酸の量に反比例する:決まった量の塩化金に対するクエン酸ナトリウムの量の増加は、より小さい粒子の形成を招くが、金溶液に添加されるクエン酸の量の減少が、相対的に大きい粒子形成を招く。
【0096】
核生成反応と同様に、金コロイド粒子形成もまた、溶液の色の変化に関連する。しかし、最初の反応とは異なり、この第2の色変化は、粒子の大きさに直接的に関連する。小さい粒子(すなわち、12〜17nm)が作製される場合、ゾルは、色がオレンジ〜赤であり;中間の大きさの粒子(すなわち、20〜40nm)が作製される場合、ゾルは、色が赤〜赤紫色に見え、そして、大きい粒子(すなわち、64〜97nm)が作製される場合、ゾルは、色が紫〜茶色に見える。反応物質の激しい撹拌が、粒子の核生成および成長の両方に対して重要である。このプロセスの間の任意の工程での不適切な撹拌は、予想されるよりも大きい直径を有する不均一な粒子の形成を招いた。
【0097】
金コロイド調製のTEM(透過電子顕微鏡)および二重角光散乱呼び出し(dual angle light scattering interrogation)は、金コロイド調製における粒子の大きさが、それらの理論的大きさである34nmに非常に近いことを示した。この粒子は、34〜36nmの平均粒子直径、そして0.11の多分散性測定平均を有する大きさで均一であった(表IV)。この状態において、金コロイド粒子は、各粒子の表面上に存在する負の荷電に起因して、これらの相互の静電気的斥力により懸濁液中に残った。塩溶液(すなわち、1% v/vの最終濃度でのNaCl)へのこれらの裸の粒子の曝露は、これらの粒子を凝集させて、最終的には溶液の外で沈澱させた。このプロセスを、タンパク質(例えば、TNF)または他の薬剤を粒子の表面に結合させることによって、ブロックまたは阻害した。
【0098】
(実施例2 金属供給源)
実験を、コロイド形成物の形成のための出発金反応物質の供給源が金コロイド組成物に影響を及ぼすか否かを見るために、実施した。塩化金を、2つの異なる市販の供給源から購入した:Degussa Metals Catalysts Cerdec(dmc2)およびSigma Chemical Company。両方の金調製物を、金属および他の物質の汚染の存在について分析した。これらの研究からの結果を、表IIに列挙する。各調製物中の金濃度は、報告された値内であったが、Sigmaの調製物がより高レベルのMg、CaおよびFeを含むことが明らかである。
【0099】
(表II.金コロイドを生成するために使用した塩化金塩の純度)
【0100】
【表2】
粒子のTEMは、異なる塩化金供給源(Sigmaからおよびdmc2から)で作製された粒子の間のさらなる差異を示した。この金コロイドゾルを、上記のように製造して、そして、TEMを使用して観察した。冷却後、10mlのゾルを遠心分離して、粒子を濃縮した。得られた上清を、吸引によって除去して、そして、金コロイドペレットを、穏やかな粉砕(tituration)によって再懸濁した。このペレットを、標準的手順に従って、透過電子顕微鏡のために調製した。
【0101】
Sigmaの塩化金で作製された粒子は、明白な条線を有する半透明物であった。この条線は、微量の汚染物(例えば、上記で同定されたもの)の存在に起因することが報告されている。対照的に、dmc2の塩化金で作製した粒子は、非常に少ない条線で、電子密度が高い。
【0102】
(実施例3 Sigma塩化金およびdmc2塩化金を使用した金コロイドゾルの生成)
上記データは、dmc2からの塩化金が、より低いレベルの汚染要素を含むことを示唆した。塩化金のこれら2つの定性的に異なる供給源の効果を決定するために、金コロイドゾルを、2つの異なる塩の供給源を使用して生成した。金コロイド粒子を作製するための手順は、Horisbergerによって最初に記載され、実施例1に記載される手順に従う。簡単に言えば、4%の塩化金(水中の)溶液を、dmc2ストック調製物およびSigmaストック調製物から作製した。3.75mlの各溶液を、各々1.5Lの水を含む個々のフラスコへと添加した。この溶液を、回転させながら沸騰させ、還流下で沸騰させ続け、そして激しく攪拌した。22.5mlの1%クエン酸ナトリウム溶液を、各フラスコへと添加した。両フラスコ中の溶液を、十分に記載された金コロイド形成のプロセスが終了するまで、沸騰させ続けた。この終了は、金から黒、黒からサクランボ色への色変化によって示される。一旦、このゾルが、サクランボ色に変化すると、このゾルを、還流下で一様に攪拌しながら、さらに45分間沸騰させた。冷却後、このゾルを、0.22μmのニトロセルロースフィルターを通して濾過し、使用まで室温で保存した。
【0103】
2つのゾルの定性的な比較は、UV/VIS波長スキャンを実行しながら、標準的な実験室の分光光度計を用いてなされた。この結果は、ゾルの2つのバッチが、ゾルが最大の吸収を示す波長によって示されるように、類似する平均直径を有する金コロイド粒子を含むことを示した。しかし、2つの調製物の間の最も顕著な相違は、dmc2物質を用いて作製されたゾルは、Sigma物質を用いて作製されたゾルの3倍の粒子数を有することである。さらに、最大λの周囲の分布が、Sigma調製物において、dmc2調製物に対してよりも広く、このことは、Sigma塩を用いて生成された粒子が、dmc2塩化金を用いて生成された粒子よりもより不均一であることを示す。
【0104】
(実施例4 金コロイドゾルの分析的比較)
上記定性的相違を、Brookhaven Particle Sizerを用いる定量的な粒子の特徴付けによって確認した。これらの研究について、各金供給源からの粒子のサンプルを、製造業者の指示書に従って調製した。このデータを、以下の表IIおよび表IIIに示す。このデータは、両調製物における粒子が、ほぼ同じ大きさ(34〜37nm)であることを確認した。それにも関わらず、dmc2物質を用いて作製されたゾルは、Sigma物質を用いて作製されたゾルの3倍の粒子密度を有する。さらに、Sigma塩化金調製物を用いて作製された粒子は、dmc2物質を用いて作製された粒子よりも2.5倍、より不均一である(すなわち、多分散性についてより大きな値を有する)(表IV)。
【0105】
(表III.dmc2塩化金およびSigma塩化金を用いて生成された金コロイドゾルの可変波長分析)
【0106】
【表3】
(表IV.dmc2塩化金およびSigma塩化金を用いて生成された金コロイドゾルの平均粒子サイズおよび分布)
【0107】
【表4】
(実施例5 最適結合pHの決定)
タンパク質の金コロイドへの結合は、金コロイドおよびタンパク質溶液のpHに依存することは公知である。TNFの金コロイドゾルへの最適結合pHを、経験的に決定した。この最適pHを、TNFが金コロイド粒子への結合を可能にするが、粒子の(NaClによる)塩誘導性調製物をブロックするpHとして規定した。露出された(naked)金コロイド粒子は、これらの表面上の正味の負電荷によって生成されたこれらの相互静電反発力によって、懸濁物中に保持される。塩溶液中に存在するカチオンは、通常は互いに反発する、負に荷電した金コロイド粒子を引き寄せる。この凝集物および沈殿物は、粒子が、最終的には溶液から析出する大きな凝集物を形成する場合、金コロイド溶液の色の、赤から紫(粒子が集まった場合)および最終的には黒までの視覚的な変化によって、示される。タンパク質または他の安定化剤の粒子の表面への結合は、この金コロイド粒子の自己誘導性沈殿をブロックする。
【0108】
TNFの金コロイドへの結合の最適pHを、pHを1N NaOHを用いて、pH5〜11に調製した(pH試験紙を用いて決定した)34nmの金コロイドのゾルの2mlアリコートを使用して決定した。TNF(Knoll Pharmaceuticals;均一になるまで精製された)を、diH2O中で1mg/mlの濃度に再構成し、3mM
Tris塩基中で、さらに100μg/mlまで希釈した。TNFに対する最適結合pHを決定するために、100μlの100μg/ml TNFストックを、pH調整された金コロイドの種々のアリコートへと添加した。そのTNFを、コロイドと15分間インキュベートした。続いて、100μlの10% NaCl溶液を、各アリコートへと添加し、粒子の沈殿を誘導した。最適結合pHを、塩による粒子の沈殿を防止すると同時に、TNFを金コロイド粒子へと結合させるpHとして規定した。
【0109】
(実施例6 飽和結合研究)
pH結合研究から得られたデータに基づいて、34nmの金コロイドのゾルのpHを、1N NaOHを用いてpH8へと調整した。このゾルを1mlのアリコートへと分割し、このアリコートに、漸増量(0.5〜4μgのTNF)の100μgTNF/ml溶液を添加した。15分間の結合の後、このサンプルを、7,500rpmで15分間、遠心分離した。上清の10μlのサンプルを、990μlのEIAアッセイ希釈液(TNF測定のための市販のEIAキットの一部として提供される;CytImmune Sciences,Inc.,College Park,MD)へと添加した。上清の残りを、吸引によって除去し、金コロイドのペレットを、PEG 1450/diH2O溶液(pH8)中で最初の体積へと再懸濁した。10μlの再懸濁ペレットを、990μlのEIAアッセイ希釈液へと添加した。この再構成ペレットおよび上清溶液を、連続的に希釈し、市販の定量的EIA(CytImmune Sciences,Inc,College Park,MD)によって1TNF濃度について分析した。
【0110】
pH結合研究からのデータを使用して、50mlの金コロイドのpHを、8.0〜9.0の間に調整した。このpHにおいて、TNFの固定体積の金コロイドへの結合は、飽和速度論を示した(図2)。図2に示されるように、0.5μg TNF/mlの金ゾルでは、実質的に全てのTNFが、上清中に遊離TNFとして存在する有意でない量(2〜5%)で、金コロイド粒子へと結合された。この金コロイド−TNF複合体は、塩の存在下で沈殿し、このことは、このTNF濃度が、金コロイド粒子を十分にはコーティングせず、TNFの飽和用量未満であることを示した。TNF濃度を増加することによって、金コロイド粒子に結合されたTNFの量が、上清中に測定される遊離TNFの量が比較的わずかに増加しながら、徐々に増加した。この粒子結合TNFの増加は、塩誘導性沈殿に対する粒子の安定性における増加に平行して起こった。TNFを用いた金コロイド粒子の飽和は、粒子の表面上の全ての結合部位が、TNFを結合する場合、生じた。金コロイド粒子の飽和は、4μg/mlの結合濃度で生じた(図2)。4μg/mlを超える用量での結合は、上清中に測定される遊離TNFの量の増加を生じた。
【0111】
図2に、TNFの金コロイドへの飽和結合が、示される。34nmの金コロイドゾル50mlを、1NaOHを使用して8にpH調整し、次いで、1mlアリコートへと分割した。漸増体積のストックTNF(3mM Tris中の100μg/ml)溶液を、アリコートに添加し、15分間結合させた。このサンプルを、7500rpmで15分間遠心分離した。上清の10μlのサンプルを、Tris緩衝化生理食塩水ミルク溶液(アッセイ希釈液)中に希釈した。残りの上清を吸引によって除去し、金コロイドのペレットを、緩やかに攪拌(tituration)することによって再懸濁した。10μlのこの懸濁されたペレットを、アッセイ希釈液中に希釈した。ペレットサンプルおよび上清サンプルの両方を、連続的に希釈し、EIA(CytImmune Sciennces,Inc.)によってTNF濃度を測定した。
【0112】
(実施例7 種々の金コロイドのベクターのラージスケール調製物)
金コロイド−TNF粒子(ベクターともいわれる)のインビボでの評価は、全ての製造手順のスケールアップを必要とした。金コロイドの大きな(8L)バッチは、上記に記載されるように製造される。金コロイドゾルの製造手順は、8Lの金コロイド生成物に適合される。還流器具(Kontes Glass,Vineland,NJ)を使用し、インビボの実験のために8Lの金コロイドを生成した。簡単に言えば、8LのdiH2Oを、回転沸騰まで加熱した。20mlの塩化金を、1つのポートを介して添加し、続いて、320mlのクエン酸ナトリウムを添加した。得られたゾルの色変化は、より少ない調製物で見られた色と同一であった。一旦、サクランボ色に達すると、このゾルは、一晩冷却され、次いで、上記のように滅菌濾過された。
【0113】
ラージスケール量を使用して作製された粒子は、実験室スケールの方法を使用して作製された粒子と本質的に同一であった。表Vを参照のこと。
【0114】
(表V.動的光散乱による、実験室スケール調製物およびラージスケール調製物の34nmの金コロイドゾルの特徴付け)
【0115】
【表5】
次に、コロイド粒子の一様なコーティングが、達成されなければならない。これは、重要な考慮事項である。なぜならば、分析によって、金コロイド粒子とTNF分子との間の結合がほとんど即時であるからである。従って、濃縮したタンパク質溶液を、大容量の金に単に添加することによって、TNFで差別的にコーティングされた粒子を生じる。粒子とTNF分子との相互作用を最適化するために、金コロイドゾルとTNF溶液との間の完全な相互作用を可能にする器具を使用した。この器具の模式図を、図1に示す。この器具は、露出された金コロイド粒子とTNFとの間の混合体積を、各構成要素を小さな混合チャンバ(T−コネクタ)に導くことによって減少した。金コロイド粒子およびTNF溶液を、2つの大きなレザバから金コロイド粒子およびTNFタンパク質を導く単一の蠕動ポンプによって、物理的にT−コネクタに導いた。適切な混合をさらに保証するために、インラインミキサー(Cole−Palmer Instrument Co.,Vernon Hills,IL)を、T−コネクタのすぐ下流に配置した。このミキサーは、金コロイド粒子をTNFと勢い良く混合し、両者は、約1L/分の流速で、コネクタを通して流れた。
【0116】
混合の前に、金ゾルのpHを、1NのNaOHを使用してpH8に調整する一方、組換えヒトTNFを、3mM Tris中で再構成し、調製した。この溶液を、滅菌された閉鎖チュービングシステムを使用して、各々の滅菌されたレザバへと添加した。等量の金コロイドゾルおよびTNF溶液を、適切なレザバへと添加した。金およびTNFの溶液を等量で混合するので、各試験ベクターについての初期TNF濃度は、最終濃度の2倍であった。例えば、cAu−TNFの0.5μg/ml溶液(4L)を作製するために、2Lの金コロイドを、金レザバ中に配置する一方、2Lの1μg/ml TNF溶液を、TNF容器へと添加した。
【0117】
一旦、溶液を、これらのレザバ中に適当に加えると、蠕動ポンプを作動し、TNF溶液および金コロイド溶液を、T−コネクタに導き、インラインミキサー、蠕動ポンプを介して、大収集フラスコに導いた。得られた混合物を、15分間、収集フラスコ中で攪拌した。この結合段階の後、各処方物からの1mlのサンプルを、収集し、塩の沈殿について試験した。1.0μg/mlの調製物および4.0μg/mlの調製物を、以下に記載されるようにプロセスしたのに対して、第3の溶液、第2の0.5μg/mlの調製物を、15μg/mlの最終濃度でのmPEG−チオール5,000(diH2O中の150μg/mlストックの10% v/v添加)の添加によって処理した。この第3の溶液(PEG−チオール−金コロイド−TNF(PT−cAu−TNF)溶液)を、さらに15分間インキュベートした。2つの他のPT−cAu−TNF処方物を、PEG−チオールの20,000MW形態および30,000MW形態を使用して作製した。これらの研究の間、さらなるコントロールを、PEG−チオール/露出された金コロイドまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターを含む比較のために試験した。
【0118】
各調製物中の金コロイド結合TNFを、50,000 MWCO BIOMAX膜分離精製カートリッジ(Millipore Corporation,Chicago,IL)を通して膜分離精製することによって遊離TNFから分離した。浸透液のアリコート(すなわち、遊離TNF)を除去し、TNF決定のために取っておいた。質量バランス決定のために、浸透液の総体積を測定した。TNF結合金コロイドを含む、保持物質を、0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過し、10μlのアリコートを、TNF分析のために取った。保持物質の残りを、保存のために−80℃で凍結した。TNF濃度の決定に続いて、ネイティブなTNF濃度の溶液を、3mM Tris中に製造し、インビボ研究のためにコントロールとして使用した。
【0119】
(実施例8 金コロイドTNFベクターの初期処方物)
このシリーズの実験を、金コロイドTNFベクターのインビボ生物学的活性に対する、種々のTNF:金コロイド結合比の効果を決定するために設計した。金コロイドTNFベクターの3つの異なる処方物を、TNF結合対金コロイド飽和曲線から得られるデータに基づいて、生成した。これら3つのベクターを1μg TNF/ml、2μg TNF/mlまたは4μg TNF/mlの金コロイド溶液でのTNFの結合によって作製した。これらの3つのベクターは、塩の添加後にコロイドのままである能力において異なった。1μg/mlのベクターは、塩溶液の添加の際に即座に沈殿した(すなわち、コロイドの色が、サクランボ色から黒に変化した)。対照的に、2μg/mlのベクターの色は、赤から紫色に変化し、このことは、金コロイド粒子の凝集を示した。最後に、4μg/ml調製物は、塩の添加後も赤のままであり、このことは粒子がコロイド状のままであり、相互作用しなかったことを示した。1μg/mlおよび2μg/mlのベクター中の粒子のコロイドの性質は、その塩への曝露によって変化したが、正常なヒト血漿とインキュベートした場合、これらベクターは、安定なままであった。これらのデータは、血漿の因子(最も可能性があるのは血液産生タンパク質)が粒子に結合し、沈殿に逆らってこの粒子を即座に安定化したことを示唆した。従って、これらのベクターを血液に曝露することは、これらの沈殿を防止し、インビボでの調査を可能にした。
【0120】
3つのcAu−TNFベクターおよびネイティブなTNFの比較安全な研究は、MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウスによって、なされた。ネイティブなTNFの毒性プロフィールは、用量依存性であった。5μgのネイティブなTNF/マウスは、注射から1〜2時間以内に、立毛および下痢を生じた。漸増用量のネイティブなTNFを用いると、より重篤な毒性が観測された。15μgのTNF/マウスの用量では、50%の動物が、低体温かつ応答が鈍くになり、そして最終的には、24時間以内に死亡した。このマウスを、注射後、以下の毒性度スケールを使用して、異なる時点でスコアリングした:0=通常の活性;1=立毛;2=軟便;3=嗜眠;4=応答の鈍化;および5=死。
【0121】
これらの3つのcAu−TNFベクターは、インビトロの生物学的アッセイにおいて、ネイティブなTNF調製物に生物学的に類似するけれども、これらの毒性プロフィールは、C57/BL6−MC−38腫瘍モデルにおいて非常に異なった。TNFの初期結合濃度を1.0μg/ml〜4.0μg/mlへと増加することは、cAu−TNFベクターの相対的安定性を増加した(図3A)。15μgのネイティブなTNFを注射されたマウスは、50%の致死率を有した。1.0μg/mlのcAu−TNFベクターを15μg注射することによってもまた、50%の致死率が生じた。対照的に、2.0μg/mlで結合した15μgのcAu−TNFを15μg与えられたマウスは、25%の減少した致死率を有した。最後に、4.0μg/mlのcAu−TNF調製物を15μg注射されたマウスは、いずれも死ななかった。この最後の群の動物は、処置の8時間以内に消散された一時的な毒性のみを示した。
【0122】
図3Aは、TNF:金結合比のcAu−TNFベクターの安全性への効果を示す。3つの異なる金コロイドTNFベクターを、金コロイド粒子のTNF飽和の相対的度合いに基づいて生成した。MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウス(n=4/群)に、15μgのネィティブなTNF(金ベクターに結合せず)または15μgの3つのcAu−TNFベクターのいずれかを静脈注射した。このマウスを、注射後、記載した毒性度スケールを使用して、異なる時点でスコアリングした。処置に対する生存百分率は、以下のとおりであった:ネイティブなTNF=50%、1μg/ml cAu−TNFベクター=25%。2μg/ml cAu−TNFベクター=75%および4μg/ml cAu−TNFベクター=100%。
【0123】
第2の用量の上昇および4.0μg/ml cAu−TNFベクターを用いた安全性研究は、この組成物が、ネイティブなTNFに比較される場合、用量対用量基準においてより安定であったことを示した(図3B)。1匹のマウス当たり、12μgまたは24μgのこのcAu−TNFベクターでの処置は、有意な腫瘍の減少を生じた(図3C)。実質的に、このcAu−TNFベクターは、任意の所定の用量TNFにて相対的安全性を増加し、最大に許容される用量で処置の効率を改善した。これらの安全性のデータおよび効率のデータは、このcAu−TNFベクターが、TNFに対する治療指数を効率的に増加することを示唆した。なぜなら、薬物の効力は、その安全性が改善される間に、維持されるからであった。
【0124】
図3Bは、MC−38腫瘍を負荷したC57/BL6マウスにおけるネイティブTNFおよび4μg/mlのcAu−TNFの用量上昇および毒性を示す。MC−38腫瘍化C57/BL6マウス(n=4匹/群/用量)に、漸増用量のネイティブTNFおよび4μg/ml cAu−TNFベクターを静脈内注射した。マウスを、記載した毒性順位付けスケール(toxicity rating scale)を使用してスコア付けした。6μg/マウス、12μg/マウス、および24μg/マウスのネイティブTNF処置にて生存している動物の%は、それぞれ、100%、75%および0%であった。cAu−TNF処置を受けた動物の全てが、生存していた。*p≦0.05。
【0125】
図3Cは、ネイティブTNFおよび4μg/mlのcAu−TNFベクターのMC−38腫瘍負荷C57/BL6マウスにおける抗腫瘍効果の比較を示す。図3Bに記載される種々の処置群についての抗腫瘍応答は、処置した後10日間、3つの寸法(L×W×H)の腫瘍測定値を決定することにより測定した。データを、種々の群についての腫瘍体積の平均±SEM(cm3)として示す。24μgのネイティブTNF処置を受けた動物の全てが、処置の24時間以内に死亡した。*未処置コントロールに対してp≦0.05。
【0126】
これらのデータは、cAu−TNFベクターについての好ましい組成を強く示唆する。続いて、cAu−TNFベクターを、その生体分布について試験した。時間を経ると、TNFの生体分布は、ネイティブTNFで処置した動物の分布と、cAu−TNFで処置した動物の分布との間で異なった。注射の1時間後、ネイティブTNFを受けたマウスは、cAu−TNF処置マウスと比較して、腎臓中により高レベルのTNFを有した(図3D)。対照的に、注射の8時間後では、金コロイド処方物を受けたマウスは、腫瘍中により高レベルのTNFを有した(図3E)。従って、cAu−TNFベクターは、TNFの腫瘍への送達を標的化することにより、安全性および維持効率を改善しているようであった。
【0127】
図3Dおよび3Eは、15μgのネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターを静脈内注射したMC−38腫瘍負荷C57/BL6マウスにおけるTNF分布プロフィールの比較を示す。MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウス(n=4匹/群/処置/時点)に、15μgのネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターを静脈内注射した。動物の1群を、注射してから1時間後(図3D)または8時間後(図3E)のいずれかに屠殺し、器官を回収した。その器官を、−80℃にて急速冷凍し、分析するまで保存した。その器官を、1mlのPBS(1mg/mlのバシトラシンおよびPMSFを含有する)を添加することにより急速解凍し、ポリトロン組織破壊機を使用してホモジナイズした。そのホモジネートを、5000rpmにて遠心分離し、得られた上清を、上記のように、TNF濃度および総タンパク質について分析した。データを、時点毎に4つの器官の平均±SEMとして示す。
【0128】
動物の剖検は、このcAu−TNFベクターの潜在的な問題を明らかにした。cAu−TNFベクター処理マウスの肝臓および脾臓の劇的な黒色は、改善された安全性の部分が、これらの器官によるベクターの取り込みおよびクリアランスに起因し得ることを立証した。さらなる研究は、この取り込みが迅速で、しばしば静脈注射後5分以内に生じることを明らかにした。これらの器官の視覚での点検はこれらの器官の黒色が、裸のコロイドの金粒子を塩に曝露した場合に、形成された黒の沈殿物と同じであることを示唆した。また、器官を収集する前に、動物をヘパリン化および広範に潅流したので、これらの器官の黒色は、これらの器官中でトラップされた血液に起因しないようである。これらのデータは、ベクターの大部分がRESの成分によって迅速に排泄され、cAu−TNFベクターが最適化されないという結果を導くことを示唆した。
【0129】
この仮説を支持するさらなる証拠は、ネイティブなTNFと2つのcAu−TNFベクターとの間のTNFレベルを比較する薬物動態学の研究に由来する。予測に反して、4μg/mlのcAu−TNFベクターの投与は、ネイティブTNFよりも低い開始血清レベルを生じた(図3F)。cAu−TNFベクターを与えられたマウスのTNFレベルは、ネイティブTNFを受ける動物において測定されたよりも一貫して2〜5倍低かった。PKにおけるこの相違を、0.5μg/mlのcAu−TNFベクターを用いるとさらに顕著であり、ここでTNFの血清レベルは、ネイティブな調製物で見い出されるよりもほぼ10倍近く低かった。cAu−TNFベクターを受けたマウスは、処方(すなわち、0.5μg/mlまたは4.0μg/ml)とは無関係に、ネイティブタンパク質を受けたマウスよりも低い血液レベルのTNFを一貫して示した。ひとまとめにして考えると、ベクターの生物分布およびPKデータは、このベクターが効果的に腫瘍を標的化するためには、RESによる取り込みが有意に減少または除去されることが必要であることを立証した。
【0130】
図3Fは、MC38−腫瘍に罹患したC57/BL6マウスにおけるネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターの薬物動態学のプロフィールの比較を示す。MC−38腫瘍に罹患したマウス(n=3/群/時間)に、10μgのネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターのいずれかを静脈注射した。示された時間で、マウスを麻酔し、そして眼窩後方の洞を介して採血した。血液サンプルを、凝血させ、そして14,000rpmで遠心分離した。得られた血清サンプルを、TNFのための市販のEIAを用いてTNF濃度について分析した。データは、時間ごとの3匹のマウスからの平均±SEM血清濃度として表される(*p<0.05)。
【0131】
(実施例9 RESによるクリアランスを避けるため、および固体腫瘍へのTNFの送達の標的化ベクター)
RESによる外来の対象物の認識およびクリアランスが、他の薬剤キャリアと共に見い出された。リポソームおよび生物分解性ポリマーについて、この問題に、種々のPEG安定剤、ならびにポラキサマーおよびポラキサミンのようなブロックコポリマーを用いる表面改変によって取り組んだ。リポソ−ム処方物中で使用されたもの(例えば、カーボワックス20M、テトロニック407、プルロニック908)を含む多数の安定剤を、4.0μg/mlのcAu−TNFベクターに添加した。これらの試薬のいずれも、RESによるベクターの取り込みを効果的に遮蔽しなかった。
【0132】
次に、1粒子あたりのTNF結合の量を減少した。TNFを、飽和下用量(すなわち、0.5μg/ml)でコロイドの金粒子にまず結合させた。次いで、チオール誘導体化ポリエチレングリコール(PEG−Thiol;MW=5,000)を、粒子に添加した。この小さい線状のPEG−Thiol試薬を、選択した。なぜならば、チオール基は、粒子の表面に直接結合し得、おそらくTNFの分子間にあるからである。この新しいベクターを、MC−38腫瘍に罹患したC57/BL6マウスにおいて試験した。
【0133】
コロイドの金結合TNFベクターのこの組成物を、TNFおよびさらなる因子を同じ粒子のコロイドの金に結合させることによって処方した。このベクターを、0.5μg/mlの飽和下用量でTNFをコロイドの金にまず結合させることによって形成した。次いで、誘導体化PEGを、ベクターに添加した。誘導体化PEGは、チオール誘導体化ポリエチレングリコールであった(メトキシPEG−Thiol、MW:5000ダルトン、PEG−Thiol,Shearwater Corp.,Huntsville,AL)。PEG−Thiolの最終濃度は、15μg/mlであり、これを、diH2O中に10×濃度で添加した。チオール基は、コロイドの金粒子の表面に直接結合するため、チオール誘導体化PEGは、コロイドの金ベクターについての良好な成分である。5,000MWのチオール−PEGは、試験される第1のチオール誘導体化PEGであった。さらに、20,000ダルトンおよび30,000ダルトンのMWを有するmPEG−チオールを用いた効力実験を、以下に記載されるように実行した。
【0134】
PEG−Thiol改変cAu−TNF(PT−cAu−TNF)ベクターの投与後に見られる生物分布プロフィールは、これまでのcAu−TNFベクターで観察されるものとは異なっていた。この新しいベクターを用いて、肝臓および脾臓は、0.5μg/mlおよび4.0μg/mlのcAu−TNFベクター(図4B)で生じるようにPT−cAu−TNFベクター(図4A)を視覚的に取り込まなかった。図4Cは、未処理の肝臓および脾臓を示す。RES取り込みの阻害として著しいように、これは、MC−38腫瘍におけるPT−cAu−TNFベクターの明らかな蓄積であった。なぜならば、この腫瘍は、ベクターの投与の30〜60分以内に明るい赤/紫色のコロイドの金粒子を得るからである。隔絶は、この研究の時間経過を通じて継続し、そして腫瘍中のTNFの蓄積およびTNFの延長された血液残留時間と同時に起こった。
【0135】
0.5μg/mlおよび4.0μg/mlのcAu−TNFベクター処理後の肝臓および脾臓中に蓄積された黒色の金とは異なり、PT−cAu−TNFの投与後に腫瘍に蓄積して観察される金の色は、赤紫であった。この相違は顕著である。なぜならば、これは、その循環における残留およびその腫瘍中での蓄積の間、金粒子がコロイドの状態を維持したことを示すからである。興味深いことに、腫瘍部位中および周囲でのPT−cAu−TNF蓄積のパターンは、時間と共に変化した。PT−cAu−TNFは、初め(すなわち、0〜2時間)腫瘍中に単独で隔絶された。時間と共に、ベクターの染色は、マウスの皮膚および腹面の組織周囲上で明らかとなった。屠殺された動物の腫瘍の閉塞解剖の間、これらの動物における腫瘍の外側の染色が、腫瘍細胞が初めに移植された皮膚層に制限されることが観察された。最小限の染色が、腫瘍が残された部分上の基底筋に存在していた。この観察は、辺縁の染色が、腫瘍塊に血液を供給する血管、可能であれば新しい血管におけるベクターの蓄積に起因し得ることを示唆した。近年でも、染色が、これらの血管中の薬剤の能動的な隔絶か、またはベクターでの腫瘍飽和化に起因する受動的な蓄積のいずれを表すかは未知である。
【0136】
TNFによって生じる出血性応答を染色が反映するか否かを決定するために、4μg/mlのcAu−TNFベクターもしくはネイティブTNFの15μgの注入を受けたマウスの染色パターンを同じ用量のPT−cAu−TNFベクターを受けたマウスの染色パターンと比較した。4μg/mlのcAu−TNFベクターで処理されたマウスは、腫瘍瘢痕形成を示し始め、これは代表的にTNFの静脈内投与に続く。瘢痕の類似のパターンが、ネイティブなTNF処理後に観察された。ネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクター処理で観察した瘢痕染色のパターンは、PT−cAu−TNFベクター処理後に観察される染色のパターンとは明らかに異なっていた。PT−cAu−TNFベクターの投与後に観察された染色パターンのさらなる証拠を、マウス血清アルブミン(MSA)に初めに結合されたPEG−Thiol金コロイド粒子を受けたマウスから得た。PT−cAu−MSAベクターは、はるかに遅い速度ではあるが、PT−cAu−TNFベクターの染色と同様の腫瘍の染色を生じた。腫瘍の染色は、PT−cAu−TNF処理で観察された色と類似であった。しかし、PT−cAu−TNFベクターで観察された30〜60分での色変化と比較して、腫瘍着色化における変化は、処理の4時間後のみの事象であった。さらに、染色の強度は、PT−cAu−TNFベクターで観察された強度よりも低かった。
【0137】
図4は、PEG−Thiolベクターによる金コロイドTNFベクターのRES媒介取り込みの阻害を示す。PT−cAu−TNFベクターを、記載されたようなTNFとPEG−Thiolとの特異化された比を用いて発達させた。結合後、ベクターを、透析によって濃縮し、そしてEIAによってTNF濃度について分析した。15μgのPT−cAu−TNFベクターを、MC−38腫瘍に罹患したC57/BL6マウス中に静脈注射した。このマウスを、注射の5時間後に屠殺し、そしてヘパリン化生理食塩水で潅流した。肝臓(図の左)および脾臓を写真撮影した。
【0138】
(実施例10 薬物動態学の分析および分布分析)
一般に、これらの実験は、上述のように生成したネイティブTNF、cAu−TNF(4μg/ml)、またはPT−cAu−TNF(0.5μg/ml)ベクターを含む。研究に依存して、5〜20μgのネイティブまたはcAu−TNFベクターの1つを、MC−38腫瘍罹患マウスの尻尾静脈を介して、静脈注射した。マウスを、眼窩後方の洞を介した注射後、5分、180分、および360分で採血した。この血液を凝血させ、そして得られた血清を収集し、そしてEIA(CytImmune Sciences,Inc.)によるバッチTNF分析のために−20℃で凍結させた。選択された時点で、種々の器官を、収集し、そして瞬間凍結させた。TNF含有量を決定するために、この器官を、解凍し、均一化し、そして14,000rpmで15分間遠心分離した。上清を、上述のようなTNF濃度、ならびに280nmでのサンプルの吸光度を決定することによって全てのタンパク質について分析した。器官TNF濃度を、全てのタンパク質について標準化した。
【0139】
(A.金分布)
肝臓、肺、脾臓、脳および血液を含む種々の器官を、15μgのPEG−Thiol安定化0.5μg/ml cAu−TNFベクターの静脈注射後の金元素の存在について試験した。マウスを、注射6時間で屠殺し;血液を収集(collect)し、そして肝臓、脾臓および腫瘍を含む種々の器官を採取(harvest)した。除去後、器官を王水中で消化(1部の濃硝酸に対して3部の濃HCl)してこれらの器官中に存在する金を抽出した。この抽出を、24時間に渡って実施し、その後、このサンプルを3500rpmで30分間遠心分離した。上清を、誘導結合プラズマ分光法によって全ての器官の金濃度の存在について分析した。この結果を、図5Aで全ての器官金濃度(ppmで)として報告する。この結果は、金の腫瘍内濃度が、肝臓で測定されたものの2倍近く高く、そして脾臓中で見出されたものの7倍近く高いことを実証する。このパターンは、ベクターが他の器官と比較して腫瘍中に残ることを示唆するが、本発明者らは、最も高いレベルの金がなおこれらの動物の循環中にあることを観察した。
【0140】
図5Aにおいて、MC−38腫瘍罹患C57/BL6マウスの種々の器官における金分布が示される。上清を、誘導結合プラズマ分光法によって全ての器官の金濃度の存在について分析した。この結果を、1器官あたり3匹のマウスについての全ての器官の金濃度(ppmで)として報告する(*肝臓および脾臓に対してp<0.05;+脾臓に対してp<0.05)。
【0141】
(B.TNFの分布および薬物動態学)
腫瘍塊内の金コロイドの隔絶を、循環中の薬剤ベクターの延長された存在、ならびに腫瘍中のTNFの能動蓄積によって平行した。誘導体化PEGを伴なわないcAu−TNFベクターとは異なり、PT−cAu−TNFベクターの注射は、研究される時間を介した循環におけるTNFのレベルの上昇を生じた。ネイティブなTNFの注射6時間後、TNFレベルは、5分で見出されるものの2%のみしかなかった(図5B)。対照的に、PT−cAu−TNFベクターを受けたマウスは、その最大の5分での値の約30%であるTNF血液レベルを有していた。この6時間で、PT−cAu−TNF処方物で処理したマウス中の血液TNFレベルは、ネイティブTNFで処理されたマウスで見出されるレベルよりも23倍高かった。
【0142】
図5Bは、TNF薬物動態学的分析を示す。マウスを、注射後、5分、180分および360分で眼窩後方の洞を介して採血した。この血液サンプルを、14,000rpmで遠心分離し、そして得られた血清をEIAを用いてTNF濃度について分析した。データは、3匹のマウス/時間(*p<0.05)から平均±SEM血清TNF濃度として示される。
【0143】
pT−cAu−TNFベクターで処理した動物において、TNFは、腫瘍中に蓄積した。図5Cに示されるように、ネイティブTNFで処理されたマウスにおいて観察されるTNFの最大の腫瘍内濃度は、0.8ngのTNF/mgタンパク質であった。ピークの量は、ネイティブTNFの投与の5分以内に見出され、そして6時間に渡って増加しなかった。対照的に、PT−cAu−TNFベクターで処理された動物は、時間とともに増大するTNFの腫瘍内レベルを有していた。TNFを、PT−cAu−TNFベクターで処理した動物の腫瘍中で能動的に隔絶した。この期間の最後に、ネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターで処理したものと比較して、10倍近くのTNFを、PT−cAu−TNFベクターで処理された動物の腫瘍中に見出した(図5D)。
【0144】
図5Cで、時間に渡る腫瘍内TNF分布が示される。マウスを、15μgのネイティブTNFまたはPT−cAu−TNFベクターの注射後、5分、180分および360分で屠殺した。腫瘍を取り出し、そしてTNFおよび全てのタンパク質について分析した。データは、腫瘍TNF濃度の平均±SEMとして示され、3匹のマウス/時間/処理群から、ng TNF/mgの合計タンパク質で表される(Δp<0.1,*p<0.05)。
【0145】
図5Dは、4μg/mlのcAu−TNFベクターまたはPT−cAu−TNFベクターのいずれかを15μg静脈内注射した動物由来の腫瘍内TNF濃度の比較を示す。
【0146】
MC−38腫瘍塊におけるPT−cAu−TNFベクターの蓄積は、受動的事象ではなく、また、同じ期間にわたってTNFが他の器官(例えば、肺、肝臓、および脳)において蓄積しなかったので、循環におけるベクターの延長された存在時間のただの関数でもなかった。むしろ、これらの器官におけるTNFの存在は、血液において見出されるTNFの存在に、パターンが類似した。さらに、これらの標的化されていない器官における薬物の分布は、ネイティブのTNFで見出される薬物の分布に類似した。結果として、PT−cAu−TNFベクターの投与から生じるTNFの蓄積は、腫瘍に特異的である(図5Eおよび図5F)。
【0147】
図5Eおよび図5Fは、ネイティブのTNF(図5E)またはPF−cAu−TNF(図5F)のいずれかを受ける、MC−38腫瘍で負荷された(burdened)C57/BL6マウス由来の種々の器官におけるTNFの分布を示す。この実施例において処置された動物由来の肝臓、肺および脳を、処置し、そしてTNFおよびタンパク質濃度について分析した。データを、注射された処方物当たり、1つの時点について3匹のマウス由来の器官内TNF濃度の平均±SEMとして示す。
【0148】
(実施例11 用量の上昇、毒性、および効力)
C57/BL6マウスに、ネイティブのTNF調製物と金コロイド結合TNF調製物との安全性および効力を比較するためのモデルとして、結腸癌細胞株MC−38を移植した。C57/BL6マウスの腹部表面の一部位に、105個のMC−38腫瘍細胞を移植した。細胞を、それらが腫瘍の三次元(L×W×H)での測定により、0.5cm3と測定される腫瘍を形成するまで増殖させた。MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウス(n=4〜9/群)に、漸増する用量のネイティブなTNF、cAu−TNFベクター、またはPT−cAu−TNFベクターを静脈注射した。これらのマウスを、1群あたり4〜9匹の動物で、9つの群に分けた。1つの群を未処置コントロール群として供した。2つの群に、7.5μgまたは15μgのいずれかのネイティブTNFを静脈注射した(図6A)。2つの群に、7.5μgまたは15μgのいずれかの20K−PT−cAu−TNFベクターを静脈注射した(図6B)。2つの群に、7.5μgまたは15μgのいずれかの30K−PT−cAu−TNFベクターを静脈注射した(図6C)。腫瘍測定を、TNF処置で生き延びた動物に対する処置後、種々の日数で行った。種々の群の間の統計的差異を、両側t検定で決定した。
【0149】
これらのマウスを、注射後の種々の時点で以下の毒性順位付けスケールを用いてスコア付けした:0=正常な活動;1=立毛;2=軟便(loose stool);3=嗜眠;4=応答なし;5=死。2回連続した評価時に、4を記録した動物を、屠殺した。処置効力を、種々のTNF処置により誘導される、腫瘍容量の減少をモニターすることによって決定した。測定値を、種々の群の中の各々の動物および生理食塩水注射を受けた動物(未処置コントロール)についての最初の腫瘍の容量と比較した。未処置コントロールを、それらの腫瘍容量が4cm3になったときに屠殺した。
【0150】
5,000mwのPEG−チオールを含む5K−PT−cAu−TNFベクターを、MC−38腫瘍負荷マウスにおける容量上昇研究において、安全性および効力について試験した。4ug/ml cAu−TNFベクターと同様に、5K−PT−cAu−TNFベクターは、ネイティブなTNFと比較した場合、改善された安全性プロファイルを有した。マウス一匹あたり15μgのネイティブなTNFの用量で、33%(9匹のうち3匹)の動物が、処置の24時間以内に死んだ。さらに、7.5μgのネイティブTNFは、9匹の動物のうち1匹の死亡を生じた。対照的に、5K−PT−cAu−TNFベクターに結合させたTNFの7.5μgのまたは15μgのいずれかを受容した動物は、全く死亡しなかった。これらのベクター処置された動物は、一時的な有害な臨床的効果を示すのみであった。ネイティブのTNFと比較した、5K PT−cAu−TNFベクターの抗腫瘍効力の目に見える差異は、1回の処置後では観察されなかった(図6A)。これらの知見は、2回の実験において繰り返された。
【0151】
図6Aは、ネイティブTNFまたはPT−cAu−TNFベクターの安全性および効力を比較するグラフである。†未処置のコントロールに対する7.5μgの用量のネイティブTNFまたはPT−cAu−TNF処置に関してはp<0.05であった。*未処置のコントロールおよび7.5μgの用量のネイティブTNFまたはPT−cAu−TNF処置に対する15μgの用量のネイティブTNFまたはPT−cAu−TNF処置に関してはp<0.05であった。
【0152】
ベクターの抗腫瘍効果に対するPEG−チオール鎖長の効果を図6B〜図6Cに示す。最も高いTNFの用量(15μg)で、ネイティブのTNFと比較して、いずれのTNFベクターの間でも、全く差異が示されなかった。しかし、より低用量の7.5μgのTNFでは、パターンが生じた。上記のように、5K PEG−チオールは、ネイティブなTNFと比較して、金コロイドベクターの抗腫瘍効果を著しくは改善しなかった。PEG鎖長を20Kに増加させることによって、腫瘍減少におけるわずかな非統計的な改善が生じ(図6B)、一方で、30Kまで増加させることにより、顕著で、統計的に有意な腫瘍抑制の改善を生じた(図6C)。30K PT−cAu−TNFベクターを用いて、このベクターを介して7.5μgの用量のTNFで処置した動物は、15μgのネイティブなTNFで処置した動物の腫瘍と同様のサイズの残りの腫瘍を有した。15μgのネイティブなTNFで処置した動物とは対照的に、7.5μgのTNFを投与された、30K PT−cAu−TNFで処置した動物は、全く毒性を経験しなかった。事実上、30K PT−cAu−TNFベクターの単回の注射は、より少ないTNFを提供したが、二倍多いネイティブTNFで見出されるのと同じ最大限の抗腫瘍後退を誘導し、そして処置された被験体は、この処置を生き延びた。この腫瘍モデルにおいて、5K PEG−チオール−cAu−TNFベクターまたは20K PEG−チオール−cAu−TNFベクターのいずれかの単回の注射は、ネイティブのTNFより安全であり、そして30K PEG−チオール−cAu−TNFベクターは、ネイティブ分子より安全であり、かつより効果的である。
【0153】
図6Bは、ネイティブのTNFと20K−PT−cAu−TNFとの安全性および効力を比較するグラフである。†、§ 未処置コントロールに対して、7.5μgの用量の、各々、ネイティブのTNFベクター処置またはPT−cAu−TNFベクター処置について、p<0.05であった。7.5μgの20K−PT−cAu−TNFベクターは、7.5μgのネイティブの群と、統計的に異ならなかった。*未処置のコントロールおよび7.5μgのネイティブおよび20K−PT−cAu−TNFベクターに対する、15μgの用量のネイティブまたはPT−cAu−TNF処置についてはp<0.05であった。
【0154】
図6Cは、ネイティブのTNFと30K−PT−cAu−TNFとの安全性および効力を比較するグラフである。†未処置のコントロールに対して、7.5μgの用量のネイティブのTNFについて、p<0.05であった。§未処置のコントロールおよびネイティブなTNFの群に対する7.5μgの用量の30K−PT−cAu−TNFベクター処置について、p<0.05であった。*未処置のコントロールおよび7.5μgの用量のネイティブなTNFに対して、15μgの用量のネイティブまたはPT−cAu−TNFベクター処置について、p<0.05であった。7.5μgの30K−PT−cAu−TNFは、15μgのネイティブのTNFまたは30K−PT−cAu−TNFとは、統計学的に異ならなかった。
【0155】
(実施例12 金コロイドの組成物の経口投与)
PT−cAu−TNFベクターの、腫瘍隔離に対する投与経路の効果を試験した。ベクター調製は、前出の実施例に記載されるとおりである。簡単には、金コロイドを、上記のインライン混合装置を用いて、0.5μg/mlの濃度でTNFに結合させる。15分間のインキュベーションの後、30,000MWのPEG−チオール(pH8の水に溶解した)を、この混合物に12.5μg/mlの最終濃度添加する。この溶液を、攪拌し、そしてダイアフィルトレーションにより直ちに処理する。残留物を、滅菌濾過し、そして−40℃での貯蔵のためにアリコートに分ける。
【0156】
MC38腫瘍負荷C57/BL/6マウスを、経口投与されたPT−cAu−TNFベクターが、腫瘍部位へのTNFおよび金の送達を標的化する能力を決定するためのモデルとして使用した。これらの研究についてマウス(n=3)を、1mgのペントバルビトールを用いて麻酔した。この動物を、完全に鎮静した後、PT−cAu−TNFベクターに結合したTNF(26μg)を、口腔カニューレ(oral cannula)を通して投与した。これらの動物を、回復させ、そして食物および水に自由にアクセスさせた。翌日、腫瘍が、金コロイドベクターの特有の赤/青であることが観察された。これらのデータは、PT−cAu−TNFベクターの経口投与が腫瘍の処置に用いられ得ることを示す。
【0157】
(実施例13 金コロイドの結合したTNFベクターのインビトロでの活性)
ネイティブのTNFおよびcAu−TNFベクターのインビトロでの活性を、Khabar,K.S.、Siddiqui,S.、およびArmstrong,J.A.、WEHI−13 VAR;a stable and sensitive variant of WEHI 164 clone 13 fibrosarcoma for tumor necrosis factor bioassay,Immunol.Lett 46:107−110(1995)により記載されるWEHI−164 TNFバイオアッセイにより決定した。このバイオアッセイにおいて、104個のWEHI−164細胞を、12ウェル組織培養クラスター中にプレートした。細胞を、10%のFBSを補充したDMEM中で培養した。金コロイド1mlあたり0.5μg、1μg、2μg、および4μgのTNFで調製されたネイティブなTNFおよび4つの異なるcAU−TNFベクターを、細胞と共に、1mg/ml〜0.0001mg/mlの範囲のTNF最終濃度で、7日間インキュベートした。細胞数を、Coulter Counterを用いて、7日目に測定した。データは、三回のウェル/TNF処方物についての細胞数の平均±SEMとして示される。
【0158】
cAu−TNFベクターは、WEHI 164バイオアッセイにおいて、ネイティブのTNFに対し、モルベースで、生物学的に等価であった。例えば、12.5ngのネイティブのTNFは、WEHI 164細胞の増殖を50%阻害するが、一方で、同じ12.5ng用量の1.0、2.0および4.0μg/mlのcAu−TNF調製物は、WEHI 164細胞の増殖を、それぞれ、47%、55%、および52%阻害した。
【0159】
(実施例14 抗脈管形成剤の腫瘍標的化送達のためのPEG−チオールベクター)
これらの実験は、PT−cAu−TNF−エンドスタチンベクターを用い、ベクターは、2つの薬剤を含む。TNFは、腫瘍への治療薬剤(エンドスタチン(END))の送達のための標的化機能を提供すると考えられている。また、標的で一度に、両方の薬剤が治療効果を提供し得るという仮説がたてられる。このベクター組成物の1つの局面は、標的化分子、治療的分子、およびPEGの比率である。これら全ての要素は、金コロイドの同じ粒子上に見出される。このベクターの概略を、図7に示す。図7において、1は、薬剤(例えば、END分子)であり、2は、金コロイド粒子であり;3は、誘導体化されたPEGであり;そして4は、異なる薬剤または標的化分子(例えば、TNF分子)である。
【0160】
金コロイドの粒子と結合した誘導体PEG、TNF、およびエンドスタチンを含むPT−cAu(TNF)−ENDベクターを、図1に記載される装置を用いて作製した。PT−cAu(TNF)−ENDを、3つの段階で作製した。第一に、TNFを、非常に低い亜飽和の質量のTNFで、金粒子と結合させた。0.5μg/mlのTNF濃度で作製されるPT−cAu−TNFベクターと異なり、このベクターを、0.05μg/mlのTNF濃度で作製した。TNF(3mMのCAPS緩衝液(pH=10)中に希釈した)を、0.1μg/mlの濃度で、これらの装置の試薬ボトルに添加した。この装置中の第二のボトルを、pH10で、等容量の金コロイドで満たした。THFを、上記のように、ぜん動ポンプの作動により、金コロイド粒子に結合させた。この金コロイド−TNF溶液を、15分間インキュベートし、次いでこれらの装置の金の容器に戻した。次いで、この試薬ボトルを、等用量のエンドスタチン(CAPS緩衝液中に0.15〜0.3μg/mlの濃度で希釈した)で満たした。代替的な実施形態において、エンドスタチンは、金粒子への結合を補助するために、n−スクシニミジル−S−アセチルチオアセテートのような薬剤を用いて、スルホ基の付加により化学的に改変され得る。
【0161】
ぜん動ポンプを、作動して、金コロイドが結合したTNFおよびエンドスタチンの溶液をTコネクターに流し込んだ。これらの溶液の完全な相互作用の際、混合物を、収集ボトル中で、さらに15分間インキュベートした。PEG−チオについての追加の結合部位の存在を、この段階で塩が粒子を沈降させる能力により確認した。15分間のインキュベーションの後、5K PEG−チオールを、cAu(TNF)ENDベクターに添加し、そして上記のように、ダイアフィルトレーションにより濃縮した。
【0162】
同じ金の粒子に2つのタンパク質を結合させるための代替方法であって、図1の装置と同じ装置用いる工程、および金と同時に薬剤を添加する工程、を包含する。TNFおよびENDを、結合装置の試薬チャンバーに入れた。各々のタンパク質の濃度は、0.25μ
g/mlであり、そして結果として、1mlの溶液が、0.5μgの総タンパク質を含ん
だ。金粒子に二重の薬剤組成物を結合させた後、この金コロイドの調製物をまた、塩の存在下で沈降させた。このことは、PEG−チオールを結合させるためのさらなる遊離結合部位が利用可能であることを示す。15分間のインキュベーションの後、5K PEG−チオールをcAu(TNF)ENDベクターに添加し、次いで上記のように処置した。
【0163】
ダイアフィルトレーションの後、保持物を、それぞれのEIAにおけるTNFおよびENDの濃度について測定した。金コロイドの同じ粒子上のENDおよびTNFの存在を確認するために、交差抗体捕捉および検出アッセイを設計し、そして使用した。このEIAの概略的な表現を、図8に示す。図8において、Aは、標識化された結合パートナー(例えば、ストレプトマイシン、アルカリホスファターゼ)であり;Bは、結合パートナー(例えば、ビオチン)であり;Cは、検出抗体(例えば、ビオチン化抗END抗体)であり;Dは、薬剤(例えば、END分子)であり;Eは、誘導体化PEGであり;Fは、金コロイドの粒子であり;そしてGは、異なる薬剤または標的化分子(例えば、TNF分子)であり;Hは、捕捉抗体(例えば、抗TNF抗体)であり;そしてLは、支持体(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート)である。
【0164】
PT−cAu(TNF)−ENDベクターのサンプルを、TNFまたはENDの捕捉抗体のいずれでコーティングされたEIAプレートに加えた。サンプルを、捕捉抗体と共に3時間インキュベートした。インキュベーションの後に、プレートを、洗浄し、ブロット乾燥した。TNF捕捉されたサンプルに存在する任意のENDを結合するために、ビオチン化ウサギ抗エンドスタチンポリクローナル抗体を、ウェルに添加した。30分間のインキュベートの後、プレートを洗浄し、そしてビオチン化した抗体の存在を、ストレプトアビジン結合体化アルカリホスファターゼを用いて検出した。エンドスタチン検出系による陽性の色シグナルの発生は、検出抗体が、TNFモノクローナル抗体により予め捕捉されたキメラベクターに結合したことを示した。図9を参照のこと。捕捉抗体および検出抗体を逆転させ、そして適切な第二検出システムを用いることにより、アッセイを使用して、END補足された粒子上のTNFの存在を検出した。図9を参照のこと。図9は、TNF補足されたベクターおよびEND補足されたベクターが第二の薬剤の存在を示すことを示すグラフである。
【0165】
これらの研究からのデータは、表VIに示される。表VIに見出されるように、ベクターサンプルの保持物は、17μg/mlのTNFおよび22μg/mlのENDを有した。これらの同じサンプルはまた、交差抗体アッセイにおいて陽性のシグナルを発生し、このことは、TNFおよびエンドスタチンの両方が、金コロイドの同じ粒子上にあることを示唆した(図9)。
【0166】
(表VI.PT−cAu(TNF)−ENDベクターの保持物中に存在するTNFおよ
びエンドスタチンの濃度)
【0167】
【表6】
図10において、そのデータは、静脈注射後に切除されたMC−38腫瘍中のPT−cAu(TNF)−ENDベクター由来のエンドスタチンおよびTNFの検出を示している。これらのデータは、両方の分子が腫瘍中で検出されているので、PT−cAu(TNF)−ENDベクターが、分解せずに、腫瘍に達していることを示す。
【0168】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、明確に他を示さない限り、複数形の言及を含むことに注意しなければならない。従って、当然、「薬剤(an agent)」を含むベクター組成物に対する言及は、そのような薬剤のモル量を意味する。
【0169】
本明細書中に開示される特定の組み合わせ、方法、および物質は幾分か変化し得るので、本発明はそのような組み合わせ、方法、および物質に限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される用語が、特定の実施形態を記載する目的のためにのみ用いられ、限定することが意図されないこともまた理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、薬剤の全身性送達および特定部位への薬剤の送達のための組成物および方法に関する。一般に、本発明は、コロイド状金属組成物、およびこのような組成物を作製する方法およびこのような組成物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
必要な部位を探知し、そして過度の副作用なくして治療応答を送達し得る魔法の弾丸を見出すことが治療処置の長年の目的となっている。多くのアプローチがこの目的に到達することを試みている。治療薬剤は、身体の細胞による差次的な処置のために、疎水性もしくは親水性、または治療粒子のサイズのような活性薬剤における差異を利用するよう設計されている。インサイチュ注入により身体の特定セグメントまたは特定細胞に治療薬剤を送達する治療が存在し、そして治療薬剤の送達を制限する血液−脳関門のような身体防御を用いるか、または克服する。
【0003】
治療薬剤を特定組織または細胞に特異的に標的するために用いられている1つの方法は、治療薬剤と特異的レセプターの結合パートナーとの組合せに基づく送達である。例えば、治療薬剤は、細胞傷害性または放射活性であり得、そして細胞レセプターの結合パートナーと組合せられるとき、一旦標的細胞に結合すると、細胞死を引き起こすか、または細胞活性の遺伝子制御を妨害する。このタイプの送達デバイスは、処置されるべき細胞型に特異的であるレセプター、このレセプターに対する有効な結合パートナー、および有効な治療薬剤を有することが必要である。分子遺伝学的操作を用いてこれら問題のいくつかが克服されている。
【0004】
異種細胞中への遺伝子配列の特異的送達または内因性配列の過剰発現のために、現在、多いに興味のある方法がある。細胞中に遺伝子を挿入するための種々の技法が用いられている。これらの技法は、沈殿、ウイルスベクター、マイクロピペットを用いた直接挿入、および遺伝子銃、ならびに細胞に核酸を曝すことを含む。広く用いられる沈殿技法は、リン酸カルシウムを用いてDNAを沈殿させ、不溶性粒子を形成する。目的は、これら粒子の少なくともいくつかを、全身性細胞エンドサイトーシスにより宿主細胞内に内在化されるようにすることである。これは、新たな、または異種遺伝子の発現を生じる。この技法は、細胞中への異種遺伝子の侵入の効率が低く、得られる遺伝子の発現も低い。遺伝子の内在化は、トランスフェクトされる細胞に関して非特異的である。なぜなら、エンドサイトーシスの特定の認識部位に対する信頼性がないので、すべての曝された細胞が異種遺伝子を内在化し得るからである。この技法は広くインビトロで用いられているが、標的細胞選択の特異性の欠如、および高度に分化した細胞による乏しい取り込みのために、インビボにおけるその使用は企図されていない。さらに、そのインビボにおける使用は、沈殿した核酸の不溶性性質により制限されている。
【0005】
類似の技法は、インビトロで細胞をトランスフェクトするためのDEAE−Dextranの使用を含む。DEAE−Dextranは、細胞に有害であり、そしてまた細胞中への核酸の非特異的挿入をもたらす。この方法は、インビボで当を得たものではない。
【0006】
細胞をトランスフェクトするか、または異種遺伝子を細胞中に侵入させるためのその他の技法もまた制限されている。ベクターとしてウイルスを用いることは、細胞中への異種遺伝子のインビトロおよびインビボ導入のためにある程度の利用可能性を有している。ウイルスタンパク質の存在がインビボ使用において副作用を生じるリスクが常に存在している。さらに、ウイルスベクターは、細胞中に渡され得る異種遺伝子物質のサイズについて制限され得る。ウイルスベクターの繰返し使用は、レシピエントにおける免疫学的応答を惹起し、そしてベクターが用いられ得る回数を制限する。
【0007】
リポソームで包括された核酸を用いる異種遺伝子送達もまた用いられている。リポソームは、核酸を含む種々の物質で満たされ得る膜で囲われた嚢である。リポソーム送達は、リポソームの不均等な充填のために細胞への均一な送達を提供しない。リポソームは、レセプターに対する結合パートナーが含められる場合、特定の細胞型を標的にし得るが、リポソームは破壊という問題を受け、そしてそれ故、送達は特異的でない。
【0008】
異種核酸を挿入するためのブルート力技法は、マイクロピペットで細胞膜を刺すこと、または異種DNAを細胞中に挿入するための遺伝子銃を含む。これらの技法は、いくつかの手順について良好に作用するが、広く適用可能ではない。これらは高度に労働集約的であり、そしてレシピエント細胞の非常に熟練した操作を必要とする。これらは、インビボで良好に作用する単純な手順である技法ではない。細胞膜の透過性を変化させるために電気的方法を用いるエレクトロポーレーションは、細胞中への遺伝子の挿入のためのいくつかのインビトロ治療について成功している。
【0009】
糖タンパク質に対するレセプターの存在に依存した、特定細胞に対するDNAの標的された送達を狙ういくつかの試みがある。この送達システムは、DNAに非共有結合で結合し、そしてまたリガンドに共有結合した、ポリリジンのようなポリカチオンを用いた。リガンドへのポリカチオンの共有結合のこのような使用は、一旦内在化機構が始まると、送達システムの分解を許容しない。この大きな複合体である共有結合した送達システムは、核酸が細胞内で天然に見出される様式とは非常に異なるものである。
【0010】
疾患または病状の処置のため、またはそのような部位の検出のために、身体中の特異的部位への特定の治療薬剤の単純で効率的な送達システムは、現在、利用可能ではない。例えば、癌の現在の処置は、化学療法薬剤、または全体生物に衝撃を与える、サイトカインおよび免疫因子のようなその他の生物学的に活性な因子の投与を含む。副作用は、器官損傷、味覚および感触のような感覚の損失、および毛髪損失を含む。このような治療は、病状の措置を提供するが、副作用を処置するため多くの付属の治療をもまた必要とする。
【0011】
必要なことは、所望の細胞または部位に影響する薬剤の送達システムのための組成物および方法である。これらの送達システムは、検出薬剤および治療薬剤を含む、すべての型の薬剤の特定細胞への送達のために用いられ得る。また必要なことは、全体生物において所望されない副作用を引き起こさない送達システムである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば以下を提案する。
(項目1)
コロイド状金属粒子、少なくとも1つの薬剤、およびPEG誘導体を含む、ベクター組成物。
(項目2)
標的化分子をさらに含む、項目1に記載のベクター組成物。
(項目3)
統合分子をさらに含む、項目1に記載のベクター組成物。
(項目4)
前記少なくとも1つの薬剤が、TNF、腫瘍壊死因子である、項目1に記載のベクター組成物。
(項目5)
前記PEG誘導体がチオール誘導体である、項目1に記載のベクター組成物。
(項目6)
成分特異的免疫刺激分子をさらに含む、項目1に記載のベクター組成物。
(項目7)
項目6に記載のベクター組成物であって、前記成分特異的免疫刺激分子が、以下:
インターロイキン−l(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−□」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、顆粒球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスフォーミング増殖因子(「TGF−□」)、熱ショックタンパク質、血液型の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子ならびに他の炎症性タンパク質および免疫調節性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;flt3リガンド/レセプター系;B7ファミリーの分子およびレセプター;CD40リガンド/レセプターおよびAZTのような免疫治療薬物;ならびにアンギオスタチン、エンドスタチンおよび塩基性線維芽細胞増殖因子または血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のような血管形成薬物および抗血管形成薬物のうちの少なくとも1つを含む、ベクター組成物。
(項目8)
薬剤を送達する方法であって、該方法は、ベクター組成物を、生物に投与する工程を包含し、該ベクター組成物は、コロイド状金属粒子、少なくとも1つの薬剤およびPEG誘導体を含む、方法。
(項目9)
前記組成物が標的化分子をさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記組成物が統合分子をさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記少なくとも1つの薬剤が、TNF、腫瘍壊死因子である、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記PEG誘導体がチオール誘導体である、項目8に記載の方法。
(項目13)
固形腫瘍を処置するための方法であって、該方法は、ベクター組成物を、固形腫瘍を有する生物に投与する工程を包含し、該ベクター組成物は、コロイド状金属粒子、少なくとも1つの薬剤およびPEG誘導体を含む、方法。
(項目14)
前記組成物が標的化分子をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記組成物が統合分子をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記少なくとも1つの薬剤が、TNF、腫瘍壊死因子である、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記PEG誘導体がチオール誘導体である、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記ベクター組成物を投与する工程の後に、抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記ベクター組成物を投与する工程の前に、抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目20)
前記ベクター組成物を投与する工程と同時に、抗癌剤を投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、治療化合物、薬学的薬剤、薬物、検出試薬、核酸配列および生物学的因子を含む薬剤の送達システムのための組成物および方法を包含する。一般に、これらのベクター組成物は、コロイド状金属ゾル、誘導体化PEG(ポリエチレングリコール)および薬剤、ならびにこのようなコロイド状金属ゾル組成物を作製するための方法および組成物を含む。
【0014】
このベクター組成物は、固形腫瘍の検出または処置において特に有用である。本発明の好適な組成物は、好ましくはチオール−PEGである誘導体化PEGと組み合わされた、好ましくは金の金属ゾルであるコロイド状金属ゾルを含み、そしてまたこのベクターの特異的標的化を支援するか、または治療効果を有しえるか、もしくは検出され得る、1つ以上の薬剤を含み得る。
【0015】
本発明は、注射または経口のような公知の方法により、本発明の組成物を投与することによる送達の方法を包含し、ここで、この組成物は、特定細胞または器官に送達される。1つの実施形態では、本発明は、癌または固形腫瘍のような疾患を、このような疾患の処置のために公知である薬剤を含む本発明の組成物を投与することにより処置するための方法を包含する。別の実施形態は、コロイド状金属粒子と組み合わせた、誘導体化PEG、TNF(腫瘍壊死因子)および抗癌剤を含むベクター組成物を包含する。別の実施形態では、本発明は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス、ベクター、リボザイム、DNA、RNA、センスオリゴヌクレオチド、および核酸のような、遺伝子治療のために用いられている薬剤を含む本発明の組成物を投与することによる遺伝子治療のための方法を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ベクターを調製するために用いる混合装置の概略図である。
【図2】図2は、金コロイドへのTNFの飽和結合を示すグラフを示す図である。
【図3A】図3Aは、cAu−TNFベクターの安全性に関する、TNF:金結合比の影響を示すグラフを示す図である。
【図3B】図3Bは、cAu−TNFベクターの安全性に関する、TNF:金結合比の影響を示すグラフを示す図である。
【図3C】図3Cは、cAu−TNFおよびネイティブTNFの抗腫瘍効力を示すチャートを示す図である。
【図3D】図3Dは、1時間後のTNF分布プロフィールを示すチャートを示す図である。
【図3E】図3Eは、8時間後のTNF分布プロフィールを示すチャートを示す図である。
【図3F】図3Fは、M38腫瘍をもつC57/BL6マウスにおけるネイティブTNFベクターおよびcAu−TNFベクターの薬物動態学的プロフィールのグラフを示す図である。
【図4】図4は、PT−cAu−TNFベクター、(A)、cAU−TNFベクターで処置した、および処置なし(C)のマウスの肝臓および脾臓を示す図である。
【図5A】図5Aは、種々の器官における金の分布を示すグラフを示す図である。
【図5B】図5Bは、TNF薬物動態学的分析を示すグラフを示す図である。
【図5C】図5Cは、腫瘍内TNF分布を経時的に示すグラフを示す図である。
【図5D】図5Dは、異なるベクターでの腫瘍内TNF濃度を比較するチャートである。
【図5E】図5Eは、種々の器官におけるTNFの分布を経時的に示すグラフを示す図である。
【図5F】図5Fは、種々の器官におけるTNFの分布を経時的に示すグラフを示す図である。
【図6A】図6Aは、ネイティブTNFベクターまたはPT−cAu−TNFベクターの安全性および効力を比較するグラフを示す図である。
【図6B】図6Bは、ネイティブTNFおよび20K−PT−cAu−TNFの安全性および効力を比較するグラフを示す図である。
【図6C】図6Cは、ネイティブTNFおよび30K−PT−cAu−TNFの安全性および効力を比較するグラフを示す図である。
【図7】図7は、複数薬剤を有するベクターの概略図である。
【図8】図8は、ベクターを検出する捕捉方法の実施形態の概略図である。
【図9】図9は、第2の薬剤の存在を示すTNF捕捉ベクターおよびEND捕捉ベクターを示すグラフを示す図である。
【図10】図10は、第2の薬剤の存在を示すTNF捕捉ベクターおよびEND捕捉ベクターを示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
本発明は、試薬の送達のための組成物および方法を包含する。本発明はまた、この組成物を作製する方法、およびインビトロおよびインビボでこの組成物を投与する方法を包含する。一般に、本発明は、以下の成分:活性薬剤、検出薬剤、標的化に用いる分子、統合分子、および1つ以上の型のPEGもしくは誘導体化PEG、の任意またはすべてを、単独または組み合わせて、組み合わせた金属ゾル粒子を含む組成物を企図する。
【0018】
薬剤の送達は、特定細胞または組織の検出または処置のために用いられる。例えば、本発明は、固形腫瘍のような、特定組織を造影するために用いられる。薬剤の送達は、制限されないで、慢性疾患および急性疾患、免疫系およびその他の生物学的系の維持および制御、感染性疾患、ワクチン接種、ホルモン維持および制御、癌、固形腫瘍ならびに血管新生状態を含む、生物学的状態の処置のために用いられる。このような送達は、特定の細胞まは細胞型を標的にし得るか、またはこの送達は、薬剤の低レベル放出または非毒性様式の薬剤を可能にする方法では、身体により特異性が低く提供され得る。金属ゾル組成物の記載および使用は、米国特許第6,274,522号;および関連特許出願である米国特許第09/808,809号;同第09/935,062号;同第09/189,748号、同第09/189,657号、および同第09/803,123号;ならびに米国特許仮出願第60/287,363号(これらすべては、それらの全体が本明細書に参考として援用される)に教示されている。
【0019】
本発明は、薬剤の送達のためのベクターとしてコロイド状金属を含む方法および組成物に関する。詳細には、好適な組成物は、固形腫瘍における1つ以上の型のベクターの蓄積を含む処置または検出の方法で用いられる。固形腫瘍を処置する方法は、PEG、好ましくは誘導体化PEG、より好ましくはチオール−誘導体化ポリエチレングリコールを含むコロイド状金属ゾルを投与する工程を包含する。任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、このような組成物の使用が、腫瘍に輸送され、かつ腫瘍で蓄積するベクター組成物を生じると考えられる。標的化分子または活性薬剤の非存在下で、誘導体化PEGコロイド状金属ベクターは、腫瘍に輸送され、そしてそこで隔絶される。投与のすべての方法が本発明によって企図されるが、投与の最も好適な経路は、静脈内または経口である。好ましくは静脈内または経口的に投与されるとき、このコロイド状ベクターは、腫瘍内または腫瘍とともに見出される。
【0020】
好ましくは、本発明の組成物は、コロイド状金属ゾル、誘導体化化合物および1つ以上の薬剤を含む。これら薬剤は、治療適用で用いられ得る生物学的に活性な薬剤であり得るか、またはこれら薬剤は、検出方法で有用である薬剤であり得る。好適な実施形態では、1つ以上の薬剤が混合され、コロイド状金属に直接または間接的に組み合わされるか、または結合される。混合、組み合せおよび結合は、誘導体化PEG、薬剤、およびその他の成分の互いとのおよび金属ゾル粒子との長期間または短期間結合を可能にする、共有結合、イオン結合およびその他のより弱いかまたはより強い結合を含む。
【0021】
なお別の実施形態では、これらの組成物はまた、コロイド状金属と混合され、組み合わせられ、または結合する1つ以上の標的化分子を含む。この標的化分子は、この金属粒子に直接的または間接的に結合され得る。間接的結合は、ポリリジンもしくはその他の統合分子のような分子を介する結合、または標的化分子と、金属ゾルもしくはこの金属ゾルに結合する別の分子のいずれかとの任意の組合せを含む。
【0022】
任意のコロイド状金属が本発明で用いられ得る。コロイド状金属は、液体の水、ヒドロゾルまたは金属ゾル中に分散した、任意の水不溶性の金属粒子または金属製化合物を含む。このコロイド状金属は、周期表のIA族、IB族、IIB族およびIIIB族の金属、ならびに遷移金属、特にVIII族の金属から選択され得る。好適な金属は、金、銀、アルミニウム、ルテニウム、亜鉛、鉄、ニッケルおよびカルシウムを含む。その他の適切な金属はまた、すべてのそれらの種々の酸化状態で以下を含む:チリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、錫、タングステン、レニウム、プラチナ、およびガドリニウム。好ましくは、これら金属は、適切な金属化合物由来のイオン形態、例えば、Al3+イオン、Ru3+イオン、Zn2+イオン、Fe3+イオン、Ni2+イオンおよびCa2+イオンで提供される。
【0023】
好適な金属は金、特にAl3+の形態である。金コロイドの特に好適な形態は、HAuCl4である。1つの実施形態では、この金コロイド粒子は、適切な中性pHで負電荷を有する。この負電荷が、その他の負に荷電した分子の誘引および付着を防ぐと考えられる。対照的に、正に荷電した分子がこの金コロイド粒子に誘引および結合する。この金コロイドは、所定の範囲の粒子サイズを有する金粒子を含むゾルの形態で採用され得るが、好適なサイズは、約30〜40nmの粒子サイズである。
【0024】
別の好適な金属は、特にホウ酸緩衝液中の、約0.1%と0.001%との間、そして最も好ましくは約0.01%溶液の濃度を有する銀である。好ましくは、このような銀コロイド溶液の色は黄色であり、そしてコロイド粒子の範囲は1〜40nmである。このような金属イオンは、単独または他の無機イオンとの複合体で存在し得る。
【0025】
本発明の薬剤は、抗体、タンパク質、脂質、核酸または炭水化物;核酸、抗体、タンパク質、脂質、栄養物、コファクター、栄養物質(nutriceutical)、麻酔薬、検出薬剤または身体中で影響をもつ薬剤のような、任意の化合物、化学物質、治療薬剤、薬学的薬剤、薬物、生物学的因子、生物学的分子のフラグメントであり得る。このような検出薬剤および治療薬剤ならびにそれらの活性は、当業者に公知である。
【0026】
以下は、本発明で用いられ得るいくつかの薬剤の非限定的な例である。本発明で採用され得る1つの型の薬剤は、制限されないで、サイトカイン、成長因子、活性をもつより大きな分子のフラグメント、神経化学薬物、および細胞情報伝達分子を含む生物学的因子を含む。このような薬剤の例は、制限されないで、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFα」)、トランスホーミング増殖因子α(「TGF−α」)、リンホトキシン、移動阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球−マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスホーミング増殖因子β(「TGF−β」)、線維芽細胞増殖因子、アンジオスタチン、エンドスタチン、GABA、およびアセチルコリンを含む。
【0027】
別の型の薬剤はホルモンを含む。このようなホルモンの例は、制限されないで、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、内在化ホルモン、小胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、エストロゲン、テストステロン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、プロステロール、プロゲステロン、プロゲスチン、エステロン、その他の性ホルモン、およびホルモンの誘導体およびアナログを含む。
【0028】
なお別の型の医薬品は調合薬を含む。任意の型の薬学的薬剤が本発明で採用され得る。例えば、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤のような抗炎症剤、可溶性レセプター、抗体、抗生物質、鎮痛剤、血管形成剤および抗血管形成剤、およびCOX−2インヒビターが、本発明で採用され得る。化学的治療剤は、本発明で特に重要である。このような薬剤の非制限的な例は、タキソール、パクリタキセル、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、アシクロビル、シスプラチンおよびタクリンを含む。
【0029】
免疫治療薬剤もまた、本発明において特に重要である。免疫治療薬剤の非限定的な例は、AZTおよびその他の誘導体化または改変ヌクレオチドのような、炎症性薬剤、生物学的因子、免疫調節タンパク質、および免疫治療薬物を含む。低分子もまた、本発明の薬剤として採用され得る。
【0030】
別の型の薬剤は核酸を基礎にした物質を含む。このような物質の例は、制限されずに、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、tRNA、mRNA、センス核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、DNAザイム、タンパク質/核酸組成物、SNP、オリゴヌクレオチド、ベクター、ウイルス、プラスミド、トランスポゾン、および当業者に公知のその他の核酸構築物を含む。
【0031】
本発明で採用され得るその他の薬剤は、制限されずに、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、スタフィロコッカスエンテロトキシンBおよびその他のトキシン、ヒートショックタンパク質、血液型の炭水化物成分、Rh因子、細胞表面レセプター、抗体、癌細胞特異的抗原;MART、MAGE、BAGEなど、およびHSP(ヒートショックタンパク質)、放射性金属または放射性分子、検出試薬、酵素および酵素コファクターを含む。
【0032】
特に重要なのは、隔離されたコロイド状金属ベクターを可視化または検出するために用いられ得る、色素または放射活性物質のような検出試薬である。蛍光、化学発光、感熱、不透明体、ビーズ、磁性材料および振動性物質もまた、本発明の組成物においてコロイド状金属と組合せまたはそれに結合される検出薬剤としての使用のために企図される。
【0033】
薬剤、および本発明の処置方法によって影響を受ける生物の他の例は、以下の表に見出される。この表は、他の薬剤(例えば、以下の薬剤の薬学的等価物)が本発明によって企図されることを制限するものではない。
【0034】
(表I 生物および選択される活性薬剤)
【0035】
【表1】
標的化分子もまた、本発明の組成物の成分である。1つ以上の標的化分子は、コロイド性金属と、直接的かまたは間接的に付着、結合または会合され得る。これらの標的化分子は、特定の細胞もしくは細胞型、特定の胎児組織に由来する細胞、器官、または組織に指向され得る。このような標的化分子は、特定の細胞もしくは細胞型に選択的に結合し得る任意の分子を含む。一般的に、このような標的化分子は、結合対の一方のメンバー等であり、他のメンバーに選択的に結合する。このような選択性は、細胞上で天然に見い出される構造体(例えば、細胞膜や核膜に見出されるレセプター)、またはDNAと会合した構造体に結合することによって達成され得る。また、結合対のメンバーを、細胞、細胞型、組織または器官に対して合成的に導入し得る。標的化分子にはまた、レセプター、あるいは細胞膜において見出されるかまたは細胞膜を含まない分子に結合し得るレセプターの部分、リガンド、抗体、抗体フラグメント、酵素、補因子、基質、および当業者に公知の他の結合対メンバーが挙げられる。標的化分子はまた、複数の型の結合パートナーに結合し得る。例えば、標的化分子は、レセプタークラスもしくはレセプターファミリー、または他の結合パートナーに結合し得る。標的化分子はまた、いくつかの酵素またはいくつかの酵素型に結合し得る酵素の基質または補因子であり得る。
【0036】
標的化分子の具体的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFa」)、トランスホーミング増殖因子−α(「TGF−α」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスホーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、血液型の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子ならびに他の炎症性タンパク質および免疫調節性タンパク質、ホルモン(例えば、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、および黄体化ホルモン放出ホルモン)、細胞表面レセプター、抗体、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、センス核酸、アンチセンス核酸、癌細胞特異的抗原、MART、MAGE、BAGE、ならびにHSP(熱ショックタンパク質)、変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;レセプタータンパク質、グルコース、グリコゲン、リン脂質、ならびにモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体、塩基性線維芽細胞増殖因子、酵素、補因子および酵素基質。
【0037】
本発明において使用される統合分子は、特異的な結合統合分子(例えば、結合対のメンバー)であり得るか、または低い特異性で結合する非特異的結合統合分子であり得るかのいずれかである。統合分子は、2つの実体を結合または会合させるための部位を提供するその機能によって、規定される。1つの実体は、金属ゾル粒子を含み得、そして他方の実体は、1つ以上の活性剤または1つ以上の標的化分子、あるいはこれらの両方または組み合わせを含み得る。本発明の組成物は、1つ以上の統合分子を含み得る。
【0038】
非特異的結合統合分子の例は、核酸を結合する際に有用な、ポリカチオン性分子(例えば、ポリリジンまたはヒストン)である。ポリカチオン性分子は、当業者に公知であり、そしてポリリジン、硫酸プロタミン、ヒストンまたはアシアログリコプロテインが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、金属粒子に対する1つ以上の実体の結合を提供する、合成分子の使用を企図する。
【0039】
特異的結合統合分子としては、本発明において使用され得る結合対の任意のメンバーが挙げられる。このような結合対は、当業者に公知であり、そして抗体−抗原対、酵素−基質対、レセプター−リガンド対、およびストレプトアビジン−ビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。このような公知の結合対に加えて、新規な結合対が、特に設計され得る。結合対の特徴は、結合対の2つのメンバーの間の結合である。結合パートナーの別の所望の特徴は、その対の一方のメンバーが、薬剤または標的化分子の1つ以上を結合し得るかまたは結合され得、そしてこの対の他方のメンバーは、金属粒子に結合し得ることである。
【0040】
本発明の組成物の別の成分は、グリコール化合物(好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、より好ましくは、誘導体化PEG)を含有する。本発明は、PEGが5,000〜30,000のMWである、誘導体化PEGを含有する組成物を包含する。誘導体化PEG化合物は、Shearwater Corporation,Huntsville,ALのような供給源から市販されている。PEG化合物は、二官能性または単官能性(例えば、メトキシ−PEG(mPEG))であり得る。直鎖または分枝鎖のPEGの活性化誘導体は、種々の分子量で利用可能である。本明細書中において使用される場合、用語「誘導体化PEG」または「PEG誘導体」とは、官能基、化学実体の付加、または他のPEG基の付加のいずれかによって改変されて、直鎖分子からの分枝を提供する、任意のポリエチレングリコール分子を意味する。このような誘導体化PEGは、生物学的に活性な化合物との結合体化、ポリマー移植片の調製、または誘導体化分子によって提供される他の機能のために、使用され得る。
【0041】
1つの型のPEG誘導体は、一級アミノ基を一端または両端に有する、ポリエチレングリコール分子である。好ましい分子は、一端にアミノ基を有するメトキシPEGである。別の型のPEG誘導体としては、求電子的に活性化されたPEGが挙げられる。これらのPEGは、タンパク質、リポソーム、可溶性ポリマーおよび不溶性ポリマー、ならびに種々の分子への、PEGまたはメトキシPEG(mPEG)の付着のために、使用される。求電子的に活性なPEG誘導体としては、PEGプロピオン酸のスクシンイミド、ブタン酸PEG酸(PEG butanoate acid)のスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミドまたはアルデヒドに付着した複数のPEG、mPEG二重エステル(mPEG−CM−HBA−NHS)、mPEGベンゾトリアゾールカーボネート、およびmPEGプロピオンアルデヒド、mPEGアセトアルデヒドジエチルアセタールが挙げられる。
【0042】
誘導体化PEGの好ましい型としては、チオール誘導体化PEG、またはスルフヒドリル選択的PEGが挙げられる。5,000〜40,000mwの分子量範囲を有する、分枝鎖、フォーク型、または直鎖のPEGが、PEG骨格として使用され得る。好ましいチオール誘導体化PEGとしては、チオール基が結合体化し得るマレイミド官能基を有するPEGが挙げられる。好ましいチオール−PEGは、5,000〜40,000のPEG
mwを有するメトキシ−PEG−マレイミドである。
【0043】
誘導体化PEGとしての、ヘテロ官能性PEGの使用もまた、本発明によって企図される。PEGのヘテロ官能性誘導体は、一般構造X−PEG−Yを有する。XおよびYが、結合体化能力を提供する官能基である場合、多くの異なる実体が、このPEG分子のいずれかまたは両方の末端に結合し得る。例えば、ビニルスルホンまたはマレイミドは、Xであり得、そしてNHSエステルは、Yであり得る。検出方法のために、Xおよび/またはYは、蛍光性分子、放射活性分子、発光性分子、または他の検出可能な標識であり得る。ヘテロ官能性PEGまたは単官能性PEGを使用して、結合対の一方のメンバーを結合体化し得る(例えば、PEG−ビオチン、PEG−抗体、PEG−抗原、PEG−レセプター、PEG−酵素またはPEG−酵素基質)。PEGはまた、PEG−リン脂質のように、脂質に結合体化し得る。
【0044】
本発明の組成物の1つ以上の薬剤が、コロイド状金属粒子に直接結合し得るか、または1つ以上の統合分子を介してコロイド状金属に間接的に結合し得る。本発明のコロイド状金属ゾルを調製する1つの方法は、Horisberger(1979)(これは、本明細書中に参考として援用される)によって記載される方法を使用する。統合分子が使用される実施形態において、この統合分子は、金属ゾルと結合するか、混合されるか、または会合する。この薬剤は、統合分子の金属との結合、混合または会合の前に、この統合分子と結合、混合または会合し得るか、あるいは統合分子の金属との結合の後に結合、混合または会合し得る。
【0045】
薬剤を金属ゾルに結合させるための一般的な方法は、以下の工程を包含する。薬剤の溶液が、緩衝液中または溶液中(例えば、脱イオン水(diH2O))で形成される。適切な緩衝液または溶媒は、結合されるべき薬剤に依存する。所定の薬剤に適切な緩衝液または溶媒の決定は、当業者の技術のレベル内である。最適な量の薬剤を金属ゾルに結合させるために必要なpHの決定は、当業者に公知である。結合する薬剤の量は、タンパク質、治療剤または検出薬剤の決定のための定量的方法(例えば、ELISAまたは分光光度法)によって、決定され得る。統合分子が本発明において使用される場合、結合pHおよび統合分子の飽和レベルもまた、組成物を調製する際に考慮される。例えば、統合分子が結合対(例えば、ストレプトアビジン−ビオチン)のメンバーである場合、ストレプトアビジンまたはビオチンに対する結合pHが決定され、そして結合するストレプトアビジンまたはビオチンの濃度もまた、決定され得る。
【0046】
ベクター組成物が統合分子を含有する場合、薬剤は、統合分子として機能する結合対のメンバー(例えば、ビオチン)に、当該分野において公知の従来の方法によって、結合し得る。次いで、ビオチン化された薬剤が、統合分子であるストレプトアビジンを含有するコロイド金組成物に添加され得る。ビオチンは、ストレプトアビジンに特異的に結合して、金コロイドと活性薬剤との間に間接的な結合を提供する。
【0047】
薬剤を金属ゾルに結合する1つの方法は、以下の工程を包含するが、明瞭にする目的のみで、この方法は、薬剤であるTNFの、金属ゾルである金コロイドへの結合に関して開示される。金コロイドのゾルにおける粒子と、タンパク質溶液中のTNFとの間の相互作用を可能にする装置を使用した。この装置の概略図は、図1に示される。この装置は、混合チャンバを小さな容量に減少させることによって、結合していないコロイド金粒子の、結合されるべきタンパク質であるTNFとの相互作用を最大にする。この装置は、多量の金ゾルの、多量のTNFとの相互作用が、小容量のT字型コネクタにおいて起こることを可能にする。対照的に、小容量のタンパク質を多量のコロイド金粒子に添加することは、金粒子への均一なタンパク質結合を確実にするためには、好ましい方法ではない。小容量の金コロイドを多量のタンパク質に添加するという逆の方法もまた、好ましい方法ではない。コロイド金粒子およびタンパク質TNFは、単一の蠕動ポンプ(これは、コロイド金粒子およびTNFタンパク質を、2つの大きなレザバから引き出す)によって、物理的に、強制的にT字型コネクタに入れられる。適切な混合をさらに確実にするために、インラインミキサが、T字型コネクタのすぐ下流に配置される。このミキサは、コロイド金粒子をTNFと激しく混合し、これらの両方が、約1L/分の好ましい流速で、コネクタを通って流れる。
【0048】
試薬と混合する前に、金ゾルのpHは、1N NaOHを使用して、pH8〜9に調整される。高度に精製された、凍結乾燥された組換えヒトTNFは再構成され、そして3mM Tris中に希釈される。ゾルまたはTNFのいずれかをそれぞれのレザバに添加する前に、容器をT字型コネクタに接続するチュービングがクランプで閉鎖される。等量のコロイド金ゾルおよびTNF溶液が、適切なレザバに添加される。溶液中の薬剤の好ましい濃度は、約0.01〜15μg/mlの範囲であり、そして薬剤対金属ゾル粒子の比に依存して、変化され得る。溶液中のTNFの好ましい濃度は、0.5〜4μg/mlの範囲であり、そしてTNF−金コロイド組成物について最も好ましいTNFの濃度は、0.5μg/mlである。
【0049】
一旦、溶液が適切にそれぞれのレザバに装填されると、蠕動ポンプがオンにされ、薬剤溶液および金コロイド溶液をT字型コネクタに引き出し、インラインミキサを通し、蠕動ポンプを通し、そして収集フラスコに入れる。混合された溶液は、この収集フラスコ中で、さらに1時間攪拌されて、インキュベーションされる。
【0050】
PEG(誘導体化されていてもされていなくても)を含有する組成物において、このような組成物を作製するための方法は、以下の工程を包含するが、明瞭にする目的のみで、この方法は、PEGチオールの、金属ゾル組成物への添加に関して開示される。任意のPEG(誘導体化PEG組成物または任意の大きさのPEG組成物、またはいくつかの異なるPEGを含有する組成物)は、以下の工程を使用して作製され得る。上記で教示された1時間のインキュベーションに続いて、チオールで誘導体化されたポリエチレングリコール(PEG)溶液が、金コロイド/TNFゾルに添加される。本発明は、任意の誘導体の基を有する任意の大きさのPEGの使用を企図するが、好ましい誘導体化PEGとしては、mPEG−OPSS/5,000、チオール−PEGチオール/3,400、mPEG−チオール5000、およびmPEGチオール20,000が挙げられる(Shearwater Polymers,Inc.)。好ましいPEGは、水中150μg/mlの濃度のmPEG−チオール5000(pH5〜8)である。従って、10% v/vのPEG溶液が、金コロイド−TNF溶液に添加される。金/TNF/PEG溶液は、さらに1時間インキュベートされる。
【0051】
金コロイド/TNF/PEG溶液は、引き続き50K MWCOダイアフィルトレーションカートリッジを通じて限外濾過される。50K保持液(retentate)および浸透液は、ELISAによってTNF濃度について測定されて、金粒子に結合したTNFの量が決定される。
【0052】
本発明の組成物は、インビトロ系およびインビボ系で投与され得る。インビボでの投与は、標的細胞への直接適用または経口、直腸、経皮、目(硝子体内または房内を含む)、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣もしくは非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、気管内、および硬膜外を含む)の投与を含むがこれらに限定されないこのような投与経路を含み得る。好ましい方法は、経口経路または注射経路を介して、本発明のベクターを含む有効量の組成物を投与することを包含する。
【0053】
処方物は、単位投薬形態で都合よく提示され得、そして従来の製薬技術によって調製され得る。薬学的処方組成物は、金属ゾルベクターと薬学的キャリアまたは賦形剤とを一体化して取り入れることによって作製される。一般には、この処方物は、液体キャリアもしくは微細に分割した固体キャリアまたは両方とともにこの組成物を、均一かつ密接に一体化して取り入れ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0054】
本発明の組成物の使用の好ましい方法は、腫瘍に対してベクターを標的化することを包含する。好ましいベクター組成物は、金属ゾル粒子、薬剤および腫瘍への送達のため、腫瘍もしくは生物に対する治療効果または腫瘍の検出のためのPEG組成物あるいは誘導体化PEG組成物を含む。このようなベクター組成物は、標的化分子および/または統合分子をさらに含み得る。さらに他の好ましいベクター組成物は、金属ゾル粒子、放射活性剤または細胞傷害剤および腫瘍への放射治療剤の送達のためのPEG組成物または誘導体化PEG組成物を含む。従来、放射活性金コロイドは、癌治療剤として、主に肝臓細胞による金コロイドの予測される取り込みに起因して、肝臓癌の処置のために使用されてきた。放射活性コロイド状金属粒子と組み合わせて、誘導体化PEG、好ましくは、PEGチオールを含有する組成物は、腫瘍を処置するためかまたは腫瘍を同定するために使用される。あるいは、コロイド状金属に結合されるタンパク質に結合した放射活性部分を含み、そして放射活性ベクターを形成する誘導体化PEG、好ましくは、PEG−チオールをさらに含む、ベクター組成物は、腫瘍を処置するために使用される。本発明の放射活性ベクター組成物は、静脈内注射され、腫瘍に伝達され、そして肝臓によって有意に取り込まれない。両方の組成物において、腫瘍において放射活性治療剤を濃縮するPEGチオールの能力は、治療効力を増加させるが、処置の副作用を減少させると考えられる。
【0055】
他の好ましいベクター組成物は、腫瘍のインビボでの画像化および腫瘍の検出のための組成物を投与することを包含する方法で使用するための金属ゾル粒子およびPEG、好ましくは、PEG誘導体を含有する。この組成物は、検出方法および画像化方法を補助する薬剤をさらに含有し得る。例えば、薬剤としては、放射活性剤、放射感応剤もしくは放射反応性剤(例えば、光反応性化合物または熱反応性化合物)、化学発光剤もしくは発光剤または検出目的で使用される他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。検出の方法としては、NMRスキャン、CATスキャンもしくはPETスキャン、目視試験法、比色法、放射検出法、分光光度法、およびタンパク質、核酸、ポリサッカリドまたは他の生物学的因子検出法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明は、外因性核酸または遺伝物質を細胞へと送達するための方法で使用するための組成物を含む。外因性遺伝物質は、標的化分子を用いて、特定の細胞に標的化され得、この分子は、特定の細胞を認識し得るか、またはPEGまたは誘導体化PEGを含む組成物を用いて、腫瘍に特異的に標的化される。例えば、標的化分子は、細胞上の特定のレセプターに対する結合パートナーであり、そして結合後、組成物全体は、細胞内に内部移行され得る。ベクター組成物の結合は、細胞の状態を変更する細胞性機構を活性化し得る(例えば、細胞内の二次メッセンジャー分子の活性化)。従って、異なる細胞型の混合物において、この外因性核酸は、選択されたレセプターを有する細胞に送達され、そしてレセプターを欠いている細胞は、影響されない。
【0057】
本発明は、薬剤の挿入または薬剤の適用のための、インビトロまたはインビボでの特定の細胞のトランスフェクションについての組成物および方法を包含する。このような組成物の1つの実施形態は、コロイド状金属に結合されるポリカチオン(非特異的結合統合分子)に結合された核酸を含む。本発明の好ましい実施形態は、標的化分子を結合し得るプラットホームとして金コロイド、およびトランスフェクションを達成するために細胞のレセプター媒介性エンドサイトーシスを利用する標的化遺伝子送達ベクターを生成する核酸因子を含む。いくつかの好ましい実施形態において、標的化分子は、サイトカインであり、そして因子は、DNAまたはRNAのような遺伝物質である。この実施形態はまた、遺伝物質が結合されるかまたは一体化されるポリカチオンのような統合分子を含有し得る。
【0058】
本発明において、この方法は、遺伝子送達ベクターの調製、およびトランスフェクション効果または治療効果のために細胞への標的化遺伝子送達ベクターの送達を含む。組成物の核酸は、内部移行され得、そして検出剤としてかもしくは遺伝子治療効果のために使用され得るか、またはこの核酸が、細胞によって、翻訳され得、そして発現され得ることが、本発明において企図される。発現生成物は、当業者に全て公知であり得、そして機能性タンパク質、細胞性生成物の生成、酵素活性、細胞性生成物の搬出、細胞性膜成分の生成、または核成分が挙げられるが、これらに限定されない。標的細胞への送達の方法は、例えば、インビトロ技術(例えば、細胞性培養物を用いる)で使用される方法、またはインビボでの投与で使用される方法であり得る。インビボでの投与は、細胞への直接適用、またはヒト、動物、もしくは他の生物に対して、好ましくは、静脈投与もしくは経口投与で使用されるような投与経路を含み得る。本発明はまた、本発明の組成物によって改変された細胞、およびこのような細胞を、他の細胞、組織または生物にインビボまたはインビトロの方法で投与することを企図する。
【0059】
本発明は、特定の免疫成分に指向される組成物を用いて、特定の免疫細胞の同時または連続的な標的化を通じて、免疫応答を増強し、そしてワクチン効力を増強させる組成物および方法を包含する。この組成物はまた、免疫細胞の画像化または検出のための方法で使用され得る。これらの方法は、免疫系に作用し得るベクター組成物を含み、そして以下の成分の少なくとも1つと一体化されるコロイド状金属を含む:標的化分子、薬剤、統合分子、1つ以上の型のPEGまたは誘導体化PEG。この組成物はまた、特定の免疫成分(例えば、細胞)を含み得、抗原提示細胞(APC)(マクロファージおよび樹状細胞)およびリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)が挙げられるがこれらに限定されず、これらは、1つ以上の成分に特異的な免疫刺激因子によって個々に作用されたか作用される。
【0060】
成分に特異的な免疫刺激性分子の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスホーミング増殖因子(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン(Angiogenin)、トランスホーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症性タンパク質および免疫調節性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異性抗原(例えば、MART、MAGE、BAGE);flt3リガンド/レセプター系;分子およびレセプターのB7ファミリー;CD40リガンド/レセプター;および免疫療法薬物(例えば、AZT);ならびにアンギオゲニン薬物および抗アンギオゲニン薬物(例えば、アンギオスタチン(angiostatin)、エンドスタチン(endostatin)および基本的な線維芽細胞増殖因子、または血管上皮増殖因子(VEGF))。
【0061】
特に好ましい実施形態は、成分に特異的な免疫刺激因子と一緒に特定の抗原を含む、薬剤を含むベクター組成物を用いて、免疫応答の活性化についての方法を提供する。本明細書中で使用される場合、成分に特異的な免疫刺激因子とは、免疫系(例えば、B細胞またはT細胞)の成分に対して特異的であり、そしてその成分に作用し得、その結果、その成分が免疫応答で活性を有する因子をいう。成分に特異的な免疫刺激性因子は、免疫系のいくつかの異なる成分に作用し得、そしてこの能力は、本発明の方法および組成物において利用され得る。この因子は、天然に存在し得るか、または分子生物学的技術もしくはタンパク質レセプター操作を介して、生成され得るかまたは改変され得る。
【0062】
免疫系における成分の活性化は、免疫応答の他の成分の刺激または抑制をもたらし、免疫系の全体の刺激または抑制を誘導し得る。表現の容易さのために、免疫成分の刺激が本明細書中で記載されているが、免疫成分の全ての応答が、用語刺激によって企図され、刺激としては、刺激活性、抑制活性、拒絶活性およびフィードバック活性が含まれるが、これらに限定されないことが理解される。
【0063】
作用される免疫成分は、複数の活性を有し、抑制および刺激の両方またはフィードバック機構の開始もしくは抑制を導き得る。本発明は、本明細書中で詳述される免疫学的応答の例によって限定されるべきでないが、免疫系の全ての局面における成分に特異的な作用を企図する。
【0064】
免疫系の成分の各々の活性化は、同時、連続、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。本発明の方法の1つの実施形態において、複数の成分に特異的な免疫刺激因子が、同時に投与される。この方法において、免疫系は、複数の別個の調製物で同時に刺激され、この調製物の各々は、成分に特異的な免疫刺激性因子を含むベクター組成物を含有している。好ましくは、このベクター組成物は、コロイド状金属と一緒に、成分に特異的な免疫刺激性因子を含む。より好ましくは、この組成物は、1つの大きさの粒子または異なる大きさの粒子のコロイド状金属および抗原と一体化した成分に特異的な免疫刺激性因子を含む。最も好ましくは、この組成物は、1つの大きさの粒子または異なる大きさの粒子のコロイド状金属、抗原およびPEGまたはPEG誘導体と一体化した成分に特異的な免疫刺激性因子を含む。
【0065】
成分に特異的な免疫刺激性因子は、個々の免疫成分に対して作用する、特定の刺激性、アップレギュレーションを提供する。例えば、インターロイキン−1β(IL−1β)は、マクロファージを特異的に刺激するが、TNF−α(腫瘍壊死因子α)およびFlt−3リガンドは、樹状細胞を特異的に刺激する。加熱殺菌したMycobacterium
butyricumおよびインターロイキン−6(IL−6)は、B細胞の特異的な刺激因子(stimulator)であり、そしてインターロイキン−2(IL−2)は、T細胞の特定の刺激因子である。ベクター組成物は、このような成分に特異的な免疫刺激性因子を含み、この因子は、各々、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞に特異的な活性化を提供する。例えば、マクロファージは、成分に特異的な免疫刺激性因子IL−1βを含むベクター組成物が投与される場合に活性化される。好ましい組成物は、コロイド状金属と一体化したIL−1βであり、そして最も好ましい組成物は、コロイド状金属およびその抗原に特異的なマクロファージの応答を提供する抗原と一体化したIL−1βである。ベクター組成物は、標的化分子、統合分子、PEGまたは誘導体化PEGをさらに含有し得る。
【0066】
免疫応答の多くのエレメントは、抗原に対する有効な免疫応答のために必要であり得る。同時刺激方法の実施形態は、成分特異的な免疫刺激性薬剤の組成の4つの別々の調製物を投与することであり、この免疫刺激性薬剤は、以下を含有する:1)マクロファージ用のIL−1β、2)樹状細胞用のTNF−αおよびFlt−3リガンド、3)B細胞用のIL−6、ならびに4)T細胞用のIL−2。各成分特異的な免疫刺激性薬剤のベクター組成物は、当業者に公知の任意の経路によって投与され得、全ての組成物は、所望される免疫応答に依存して、同じ経路を使用されても異なる経路を使用されてもよい。
【0067】
本発明の方法および組成物の別の実施形態において、個々の免疫成分は、連続的に活性化される。例えば、この連続的な活性化は、2相(プライマー相および免疫相)に分配され得る。プライマー相は、刺激性APC、好ましくは、マクロファージおよび樹状細胞を含み、一方、免疫相は、刺激性リンパ球、好ましくは、B細胞およびT細胞を含む。各2相での、個々の免疫成分の活性化は、同時であっても連続的であってもよい。同時の活性化について、活性化の好ましい方法は、ベクター組成物を投与することであり、このベクター組成物により、マクロファージの活性化、続いて樹状細胞の活性化、続いてB細胞の活性化、続いてT細胞の活性化が起こる。最も好ましい方法は、組み合わせた連続的な活性化であり、この方法は、ベクター組成物を投与する工程を包含し、このベクター組成物により、マクロファージおよび樹状細胞の同時の活性化、続いてB細胞およびT細胞の同時の活性化が起こる。これは、免疫系のいくつかの経路を開始するための方法、およびこの経路を開始するための複数成分特異的な免疫刺激性薬剤の組成の例である。
【0068】
本発明の方法および組成物は、任意の型のワクチンの効果を増強するために使用され得る。本発明の方法は、活性化に対して特異的な免疫成分を標的化することによって、ワクチン効果を増強させる。コロイド状金属および抗原に会合した、少なくとも1つの成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有するベクター組成物が、抗原と特定の免疫成分(例えば、マクロファージ、B細胞またはT細胞)との間の接触を増加させるために使用される。現在ワクチンが利用可能である疾患の例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:コレラ、ジフテリア、ヘモフィルス属、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふくかぜ、百日咳(pertussis)、小痘、肺炎球菌性肺炎、ポリオ、狂犬病、風疹、破傷風、結核症、腸チフス、水痘‐帯状疱疹、百日咳(whooping
cough)、および黄熱病。
【0069】
抗原を免疫系に送達するための、投薬経路およびベクター組成物の組み合わせを使用して、所望の免疫応答を引き起こす。本発明はまた、免疫刺激性ベクター組成物の長期放出を提供し得る方法、および免疫刺激性ベクター組成物の長期放出を提供し得るパッケージング系(例えば、リポソーム、マイクロカプセル、またはミクロスフェア)の種々の組成を含有する組成物を包含する。これらのパッケージング系は、抗原を保持しかつ免疫系の活性化のためにこの抗原をゆっくりと放出するための内部貯蔵所として作用する。例えば、リポソームは、ベクター組成物で充填され得、このベクター組成物は、コロイド状金属に結合するかまたはコロイド状金属と会合する、抗原薬剤および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する。さらなる組み合わせは、金コロイド粒子であり、この粒子は、活性ワクチン候補物であるかまたは推定ワクチンのためのDNAを含むようにパッケージングされたウイルス粒子のような薬剤に点在している。ベクターはまた、1種以上の標的化分子(例えば、サイトカイン、統合(integrating)分子およびPEG誘導体)を含有し得、次いで、このベクターは、特定の細胞に対してウイルスを標的化するために使用される。さらに、融合タンパク質ワクチン(これは、2種以上の潜在的なワクチン候補物を標的化する)を使用し得、2種以上の感染性微生物に対して保護を提供するベクター組成物ワクチンを提供し得る。この組成物はまた、免疫原を含有し得、この免疫原は、材料をゆっくりと放出し得るポリエチレングリコールを添加することによって化学修飾される。
【0070】
金属粒子を含有する組成物および1種以上の抗原および1種以上の成分特異的な免疫刺激性薬剤、ならびに1種以上の統合分子および標的化分子およびPEGまたはPEGの誘導体を含有する薬剤は、リポソームまたは生分解性ポリマーにパッケージングされ得る。ベクター組成物は、リポソームまたは生分解性ポリマーからゆっくりと放出され、そして免疫系によって、外来性成分または特定の成分(これらの成分に対して、成分特異的な免疫刺激性薬剤は、免疫系の活性または抑制を指向する)として認識される。例えば、免疫応答のカスケードは、成分特異的な免疫刺激性薬剤の存在によって、より迅速に活性化され、この免疫応答は、より迅速かつ特異的に起こる。
【0071】
本発明において企図される他の方法および組成物は、金属粒子および抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤の組成物の使用を包含し、これはまた、コロイド状金属粒子が異なるサイズを有する、統合分子および標的化分子を含有し得る。この組成物は、さらに、PEGまたはPEGの誘導体を含有し得る。成分特異的な免疫刺激性薬剤の連続投与は、異なるサイズのコロイド状金属粒子を使用することによって、1用量投与で達成され得る。1用量は、複数の独立した成分特異的な免疫刺激性薬剤を含み、抗原および組み合わせは、異なるサイズのコロイド状金属粒子に会合し得るかまたは同じサイズのコロイド状金属粒子に会合し得る。従って、同時投与は、免疫成分の連続的な活性化を与え、集団に対してより効果的なワクチンおよびさらなる保護が得られる。連続的な活性化を伴う、このような単回用量投与の他の型は、異なるサイズのコロイド状金属ベクター組成物または同じサイズのコロイド状金属ベクター組成物およびリポソームまたは生分解性ポリマー、あるいは異なるサイズのコロイド状金属ベクター組成物または同じサイズのコロイド状金属ベクター組成物で充填されたリポソームまたは生分解性ポリマーを組み合わせることによって、提供され得る。
【0072】
上記のようなワクチン系を使用することは、1用量で投与され得るワクチンを提供するのに重要である。1用量投与は、動物集団(例えば、家畜または動物の野生集団)を処置する際に重要である。1用量投与は、健康管理がほとんどなされていない集団(例えば、困窮者、ホームレス、地方住人、または健康管理の不十分な発展途上国の人)の処置において重要である。全ての国の多くの人々は、予防型の健康管理(例えば、ワクチン接種)を利用していない。感性症(例えば、結核)の再出現は、一旦与えられると、持続性の効果的な保護をなお与え得るワクチンに対する需要を高める。本発明の組成物および方法は、このような効果的な保護を提供する。
【0073】
本発明の方法および組成物はまた、免疫応答が起こる疾患を、この免疫応答の一部である成分を刺激または抑制することによって処置するために使用され得る。このような疾患の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アディソン病、アレルギー、アナフィラキシー、ブルートン症候群、癌(固形腫瘍および血液偏狭(blood borne)腫瘍を含む)、偏狭、橋本甲状腺炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、後天性免疫欠乏症候群、移植拒絶(例えば、腎臓移植、心臓移植、膵臓移植、肺移植、骨移植および肝臓移植)、グレーヴズ病、多発性内分泌自己免疫疾患、肝炎、顕微的多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セアリック病(coeliac disease)、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、リウマチ病、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、血清反応陰性脊椎結核(seronegative spondylarthritides)、鼻炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、硬化胆管炎(sclerosing cholangitis)、ヴェーゲナー肉芽腫症、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギヤン−バレー症候群、重症筋無力症、ランバート−イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、じんま疹、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群(X−linked hyper IgM syndrom)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイドーシス、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫。
【0074】
本発明のベクター組成物は、成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤を含有する。組成物は、1種の成分特異的な免疫刺激性薬剤または複数の成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有し得る。ベクター組成物の好ましい実施形態は、コロイド状金属に会合した成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤を含有する。より好ましい実施形態は、コロイド状金属および少なくとも以下のうちの1つに会合した、1種以上の抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤を含有する組成物を含有する:PEGまたはPEGの誘導体、成分特異的な免疫刺激性薬剤(抗原、レセプター分子、核酸、製薬、化学療法剤、およびキャリアを含むがこれらに限定されない)の効果を特異的に標的化するための、統合分子および標的化分子。本発明の組成物は、任意の様式で、免疫成分に送達され得る。1つの実施形態において、抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤を含有する薬剤は、コロイド状金属粒子が抗原と免疫刺激性薬剤との両方に会合する様式で、このコロイド状金属に結合される。
【0075】
本発明は、種々の異なる送達プラットフォームまたはキャリアの組み合わせにおける、薬剤(例えば、抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤)の提示を包含する。例えば、好ましい実施形態は、ベクター組成物の投与を包含し、このベクター組成物は、リポソームまたは生分解性ポリマーキャリア中で、薬剤(例えば、抗原および成分特異的な免疫刺激性薬剤)に結合した金属コロイド粒子を含有する。さらなる組み合わせは、薬剤と会合したコロイド金粒子(例えば、ウイルス粒子)であり、この粒子は、ワクチン抗原であるかまたは核酸を含む生存可能なウイルス粒子(これは、ワクチンのための抗原を生成する)である。ベクター組成物はまた、標的化分子(例えば、サイトカイン)または選択される結合対メンバー(これは、特定の細胞にウイルスを標的化するために使用される)を含有し得、そしてさらに、統合分子またはPEGもしくはPEGの誘導体のような、本明細書中で教示される他のエレメントを含有する。このような実施形態は、長期の応答のために、抗原を免疫系にゆっくりと放出するワクチン調製物を提供する。この型のワクチンは、特に、ワクチンの単回投与に有利である。キャリアの全ての型(リポソームおよびマイクロカプセルを含むがこれらに限定されない)は、本発明で企図される。
【0076】
(毒性低減およびワクチン投与)
本発明は、因子が通常の濃度よりも高い濃度で存在している場合、ヒトまたは動物に対して毒性である因子を投与するための細胞および方法を包含する。一般的には、本発明に従う組成物は、ベクター組成物を含み、このベクター組成物は、薬剤が正常濃度よりも高い濃度で見出された場合、ヒトまたは動物に対して毒性である薬剤と組み合わせた、コロイド状金属の混合物であるか、あるいはシールドされた形態よりも高い活性を可能にするシールドされていない形態であるか、あるいは通常では見出されない部位に見出される。ベクター組成物がヒトまたは動物に投与される場合、薬剤は、この薬剤がコロイド状金属ベクター組成物なしで単独で提供される場合よりも、ヒトまたは動物に対して有害ではないか、低い毒性であるかまたは非毒性である。この組成物は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、水溶液、または賦形剤、緩衝剤、抗原安定化剤、または滅菌キャリア)を含有する。また、オイル(例えば、パラフィン油)が、必要に応じて、この組成物中に含有され得る。ベクター組成物はさらに、PEGまたはPEGの誘導体を含有し得る。
【0077】
本発明の組成物は、注射される際に毒性である薬剤に対してヒトまたは動物にワクチン接種するために使用され得る。さらに、本発明は、組成物を投与することによって、サイトカインまたは増殖因子を用いて特定の疾患を処置するために使用され得、この組成物は、薬剤(例えば、サイトカインまたは増殖因子)を含有する。この薬剤をヒトまたは動物に投与する前に、この薬剤をコロイド状金属と混合することによって、薬剤の毒性は軽減されるまたは取り除かれ、それによって、因子がこの治療効果を発揮することが可能になる。治療結果を維持または増強し、それによって、より高濃度の薬剤が投与され得る場合の有効性を改善する間にか、あるいは異なる薬剤の組み合わせの使用を可能にすることによって、コロイド状金属とこのような薬剤をベクター組成物中で組み合わせることによって、毒性が低減される。従って、ベクター組成物中で薬剤と組み合わせてコロイド状金属を使用することによって、通常の薬剤濃度よりも高い濃度での使用が可能になるか、または通常はそれらの毒性に起因して、ヒトまたは動物に投与するのに使用できない薬剤の投与を可能にする。好ましくは、ベクター組成物はさらに、PEGまたはPEGの誘導体の1種以上の型またはサイズを含有する。
【0078】
本発明の1つの実施形態は、ワクチン調製物としてコロイド状金属に会合した薬剤を含有するベクター組成物を使用するための方法を包含する。このようなワクチンの多くの利点の中には、通常では毒性の薬剤の毒性を低減させることがある。薬剤に対するワクチンとして使用されるベクター組成物は、任意の方法によって調製され得る。例えば、薬剤とコロイド状金属との混合物のベクター組成物は、好ましくは、適切な動物に注射される。例えば、約2〜5kg体重のウサギは、金コロイドおよび薬剤(1mgのサイトカイン(IL−1またはIL−2))を含有する組成物を2週毎に投与した後に、顕著な副作用を示さなかった。この試薬は、本発明に従って投与される場合毒性ではないので、抗原として機能し得る最適な量の試薬が、動物に投与され得る。本発明に従うベクター組成物は、単回用量で投与され得るか、または適切な時間規模にわたって間隔を空けて、複数用量で投与され得る。複数用量は、二次免疫応答を発生させる際に有用である。例えば、抗体タイターは、1ヶ月毎にブースターを投与することによって維持される。
【0079】
ワクチン組成物はさらに、薬学的に受容可能なアジュバントを含有し得、これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、リポ多糖類、モノホスホリルリピドA、ムラミルジペプチド、リピドAを含むリポソーム、ミョウバン、ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、キーホールリンペットヘモシニアン。動物に好ましいアジュバントは、フロイント不完全アジュバントであり、ヒトに好ましいアジュバントは、ミョウバンであり、これは、好ましくは、コロイド状金属および活性薬剤を含有する組成物で1:1に希釈される。
【0080】
本発明の組成物の好ましい使用方法は、ヒトまたは動物に、少なくとも1種の薬剤と混合したコロイド状金属を含有する、有効量のベクター組成物を投与する工程を包含し、ここで、ヒトまたは動物に投与される場合、この組成物は、ほとんど毒性でないかもしくは非毒性であるか、または薬剤単独での投与もしくはコロイド状金属を含まない組成物中での投与と比較した場合、副作用をほとんど有さないかもしくは副作用が少ない。本発明に従うベクター組成物は、通常毒性の物質に対してワクチンとして投与され得るか、または通常毒性の薬剤の毒性が減少され、それによってより長い期間にわたって薬剤の高量の投与が可能になる治療剤であり得る。
【0081】
これらの実施形態の実施において、組成物が投与される経路は、重要であると考えられない。組成物が本発明に従って投与され得る経路としては、以下を含むが、これらに限定されない公知の投与経路が挙げられる:皮下経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経口経路、および静脈内経路。投与の好ましい経路は、静脈内経路である。投与の別の好ましい経路は、筋肉内経路である。
【0082】
例えば、インターロイキン−2(IL−2)は、腎臓癌の処置において、有意な治療結果を示すことが知られている。しかし、IL−2の投与の毒性副作用が、かなりの数の患者の死を招く。対照的に、少なくともIL−2およびコロイド状金属を含むベクター組成物が投与される場合、ほとんどまたは全く毒性は観察されず、そして、強い免疫応答が、レシピエントにおいて生じる。IL−2治療についてかつて使用された用量は、一日あたり70kgのヒトあたり、約21×106ユニットのIL−2(7×106ユニットのIL−2/70kgヒトTID)であった。1ユニットは、約50ピコグラムと等しく、2ユニットは、約0.1ナノグラムと等しいので、20×106ユニットは、1ミリグラムと等しい。本発明の1つの実施形態において、ウサギに与えられているIL−2の量は、3kgのウサギあたり約1mgである。要するに、本明細書中に記載される薬剤の投与の効果の研究は、かつてヒトに与えられた用量よりも、20倍よりも多い容量が含まれていた。
【0083】
別の実施形態において、ここで、IL−2(3kgの動物あたり1mg)が、2週間の間3日毎に、3匹のウサギに投与された場合、全ての動物は臨床上病的のように見え、そして、これらの動物のうちの2匹は、IL−2の明らかな毒性効果がもとで死亡した。同じ用量のIL−2が、金コロイドを含むベクター組成物において使用され、次いで、同じ2週間の間3匹のウサギに投与された場合、毒性は観察されず、そして、3匹全ての動物において、有意な抗体応答を招いた。本明細書中で使用される場合、「陽性抗体応答」は、予備免疫出血と免疫後出血を比較した場合に、直接的ELISAによって決定されるように、特異的抗体反応性の3〜4倍の増加として定義される。直接的ELISAは、マイクロタイタープレート上へのIL−2の結合、およびアルカリホスファターゼに結合体化されたヤギ抗ウサギIgGによりプレート上のIL−2に結合されるIgGの量の決定によって行われる。従って、依然としてIL−2の生物学的効果があると考えられる。毒性効果が最小化されているので、より高く、より効果的な免疫応答が必要とされる場合、必要に応じて、より高濃度のIL−2が投与され得る。
【0084】
本発明は、1つ以上の薬剤およびコロイド状金属を含むベクター組成物を投与することによって、疾患を処置する方法を包含する。このベクター組成物はさらに、PEGまたはPEGの誘導体を含み得る。投与後、この薬剤は、コロイド状金属から放出されると想定される。いずれの理論によっても束縛されることを望まないが、この放出は、単に循環期間の関数ではなく、平衡速度論によって制御されると考えられる。
【0085】
少なくともコロイド状金属および少なくとも1つの薬剤を含むベクター組成物が、25日間細胞とインキュベートされた場合、薬剤のたった5%しかコロイド状金属から放出されなかったことが示された。従って、循環時間単独では、薬剤がインビボでこの複合体から放出される機構を説明できないことが想定される。しかし、放出される薬剤の量が、部分的に、体内の複合体の濃度に関連することが見出されている。組成物の様々な希釈率が分析される(CytELISATM assay system CytImmune Sciences,Inc.)場合、複合体のより希釈した溶液が有意に多量の薬剤を放出することが見出された。例えば、複合体の1:100の希釈液において薬剤は本質的に放出されないが、35,000pgを超える薬剤が、組成物の1:100,000希釈液において放出された。
【0086】
従って、より多量の溶液において組成物がより低濃度になるほど、より多量の薬剤が放出される。組成物がより高濃度になるほど、より少量の薬剤放出される。従って、血液および細胞外流体によるこの組成物の連続的なインビボ希釈率に起因して、かつて公知である方法により投与され得るよりも低用量の薬剤を患者に投与することによって、同じ治療的効果を達成することが可能であることが、想定される。
【0087】
本発明の組成物から放出される薬剤の量が、コロイド状金属に最初に結合される薬剤の量に関連することもまた、想定される。最初に結合された薬剤をより多量の持つベクター組成物から、より多い薬剤がインビボで放出される。従って、当業者は、最初にコロイド状金属に結合される薬剤の量を変化させることによって、送達される薬剤の量を制御し得る。
【0088】
これらの合わせた特性は、多量の薬剤がコロイド状金属に結合され得、これによって、この薬剤を単独で投与される場合よりも毒性を小さくするための方法を提供する。次いで、少量のベクター組成物が患者に投与され得、これによって、この複合体からの薬剤の緩慢な放出を招く。これらの方法は、疾患(例えば、癌および免疫疾患)の処置のための延長された、低用量の薬剤を提供する。
【0089】
本発明の組成物は、以下を含むがこれらに限定されない多数の疾患の処置に有用である:癌(固形腫瘍および血行性癌(例えば、白血病)の両方);自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ);ホルモン欠損疾患(例えば、骨粗しょう症);過剰分泌に起因するホルモン異常(例えば、先端巨大症);感染性疾患(例えば、敗血症性ショック);遺伝的疾患(例えば、酵素欠損疾患(例えば、フェニルケトン尿症を生じるフェニルアラニンの代謝の不能));ならびに、免疫不全疾患(例えば、AIDS)。
【0090】
本発明の方法は、現在使用される治療処置レジメンに加えて、ベクター組成物の投与を包含する。好ましい方法は、慢性疾患および急性疾患の処置(特に、癌処置)のための治療剤の投与と同時にベクター組成物を投与する工程を包含する。例えば、薬剤(TNF)を含むベクター組成物は、公知の抗癌剤(例えば、エンドスタチンおよびアンジオスタチン、サリドマイド、タキソール、メルファラン、パクリタキセル、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、アシクロビル、シスプラチンおよびタクリンのような抗脈管形成タンパク質)を用いた化学療法処置の前、間または後に投与される。現在公知の癌処置方法は、本発明の方法中で意図され、そして、ベクター組成物は、癌の有効な処置に必要とされるような処置スケジュールにおいて、異なる回数投与され得る。
【0091】
好ましい方法は、薬物耐性腫瘍、癌または新生物の処置を包含する。これらの腫瘍は、公知の抗癌薬物および抗癌治療薬に対して耐性であり、増加した投薬量のこのような薬剤を用いてさえも、腫瘍の大きさまたは増殖に対して、ほとんどまたは全く効果がない。TNFへのこのような薬物耐性腫瘍細胞の曝露が、これらの細胞をこれらの化学療法剤の抗癌効果に対して再感作させる(resensitize)という観察が、腫瘍処置において公知である。TNFが、トポイソメラーゼII標的化挿入(intercalative)薬物(例えば、ドキソルビシン)と協同してドキソルビシン腫瘍細胞死を戻すということを示す証明が、出版されている。インターフェロン(IFN)もまた、5−フルオロウラシルと協同して、5−フルオロウラシルの化学療法剤活性を増大させることが公知である。本発明は、このような薬物耐性腫瘍を処置するために使用され得る。好ましい方法は、金コロイドに結合されたTNFおよび誘導化PEGを有するベクターを含む組成物の投与を包含する。TNF−cAu−PTの亜臨床的用量を用いて患者を前処理することで、腫瘍はTNFベクターを隔離して、このことにより、引き続く全身性化学療法に対してこれらの細胞を感作化する。このような化学療法剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ドキソルビシン、他の挿入化学療法剤、タキソール、5−フルオロウラシル、ミタキサントロン、VM−16、エトポシド、VM−26、テニポシド、および他の非挿入化学療法剤。あるいは、別の好ましい方法は、TNFおよび少なくとも1つの他の癌の処置に有効な薬剤を有するベクターを含む組成物の投与を包含する。例えば、PT−cAU(TNF)ドキソルビシンベクターは、薬物耐性の腫瘍または癌を有する患者に投与される。投与される量は、処置されるべき腫瘍および患者の状態に依存する。ベクター組成物は、より多量の化学療法剤が投与されるのを可能にして、そして、このベクターはまた、腫瘍の薬物耐性特性を軽減する。
【0092】
本発明は、以下の実施例によってさらに示され、これらの実施例は、その範囲に対する制限を強要するようないずれの方法で解釈されるべきでない。対照的に、手段が様々な他の実施形態、改変、およびこれらの等価物を有し得、本明細書中の説明を読解した後に、当業者に、この手段自体を、本発明の意図および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく示唆し得ることが、明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0093】
(実施例1 金コロイドゾルの調製)
金コロイドを、クエン酸ナトリウムのような薬剤によって、クロロ金酸(Au+3;HAuCl4)から中性金(Au0)に還元することで調製する。Horisberger(1979)によって記載される方法を適用して、34nmの金コロイド粒子を生成した。この方法は、金コロイドの生成のための簡単かつ測定可能な手順を提供した。簡単に言えば、4%の塩化金溶液(23.03%ストック;dmc2,South Plainfield,NJ)および1%のクエン酸ナトリウム溶液(wt/wt;J.T.Baker Company;Paris,KY)を、脱イオン化H2O(DIH2O)中で作製した。3.75mlの塩化金溶液を1.5LのDIH2Oに添加した。この溶液を激しく撹拌して、そして、還流下で回転させながらボイル(rolling boil)した。34nmの金コロイド粒子の形成を、60mlのクエン酸ナトリウムを添加することで開始した。この溶液を、連続的に煮沸して、以下に記載するように、粒子形成および成長の全てのプロセスの間、撹拌した。
【0094】
塩化金へのクエン酸ナトリウムの添加により、最初の塩化金溶液の色における変化により特徴付けられる一連の還元反応を開始された。クエン酸ナトリウムの添加により、塩化金溶液の色は、黄金色から黒/青の中間色に変化した。この反応の完了を、青/黒色から鮮紅色へのゾルの最終色変化によって示唆した。最終色変化の後、この溶液を、連続的に撹拌して、還流下にて、さらに45分間煮沸した。引き続いて、このゾルを、室温まで冷却して、0.22μ硝酸セルロースフィルターを介して濾過して、使用するまで室温で保存した。
【0095】
金コロイド粒子の形成は、2つの段階で生じる:核生成および粒子成長。粒子の核生成を、クエン酸ナトリウムによるAu+3からAu0への還元によって開始した。この段階は、山吹色から黒色への塩化金溶液の色変化によって特徴付けられる。遊離Au+3のAu0核上への連続的な層化が、第2の段階である粒子成長を促進する。粒子の大きさは、塩化金溶液に添加されるクエン酸の量に反比例する:決まった量の塩化金に対するクエン酸ナトリウムの量の増加は、より小さい粒子の形成を招くが、金溶液に添加されるクエン酸の量の減少が、相対的に大きい粒子形成を招く。
【0096】
核生成反応と同様に、金コロイド粒子形成もまた、溶液の色の変化に関連する。しかし、最初の反応とは異なり、この第2の色変化は、粒子の大きさに直接的に関連する。小さい粒子(すなわち、12〜17nm)が作製される場合、ゾルは、色がオレンジ〜赤であり;中間の大きさの粒子(すなわち、20〜40nm)が作製される場合、ゾルは、色が赤〜赤紫色に見え、そして、大きい粒子(すなわち、64〜97nm)が作製される場合、ゾルは、色が紫〜茶色に見える。反応物質の激しい撹拌が、粒子の核生成および成長の両方に対して重要である。このプロセスの間の任意の工程での不適切な撹拌は、予想されるよりも大きい直径を有する不均一な粒子の形成を招いた。
【0097】
金コロイド調製のTEM(透過電子顕微鏡)および二重角光散乱呼び出し(dual angle light scattering interrogation)は、金コロイド調製における粒子の大きさが、それらの理論的大きさである34nmに非常に近いことを示した。この粒子は、34〜36nmの平均粒子直径、そして0.11の多分散性測定平均を有する大きさで均一であった(表IV)。この状態において、金コロイド粒子は、各粒子の表面上に存在する負の荷電に起因して、これらの相互の静電気的斥力により懸濁液中に残った。塩溶液(すなわち、1% v/vの最終濃度でのNaCl)へのこれらの裸の粒子の曝露は、これらの粒子を凝集させて、最終的には溶液の外で沈澱させた。このプロセスを、タンパク質(例えば、TNF)または他の薬剤を粒子の表面に結合させることによって、ブロックまたは阻害した。
【0098】
(実施例2 金属供給源)
実験を、コロイド形成物の形成のための出発金反応物質の供給源が金コロイド組成物に影響を及ぼすか否かを見るために、実施した。塩化金を、2つの異なる市販の供給源から購入した:Degussa Metals Catalysts Cerdec(dmc2)およびSigma Chemical Company。両方の金調製物を、金属および他の物質の汚染の存在について分析した。これらの研究からの結果を、表IIに列挙する。各調製物中の金濃度は、報告された値内であったが、Sigmaの調製物がより高レベルのMg、CaおよびFeを含むことが明らかである。
【0099】
(表II.金コロイドを生成するために使用した塩化金塩の純度)
【0100】
【表2】
粒子のTEMは、異なる塩化金供給源(Sigmaからおよびdmc2から)で作製された粒子の間のさらなる差異を示した。この金コロイドゾルを、上記のように製造して、そして、TEMを使用して観察した。冷却後、10mlのゾルを遠心分離して、粒子を濃縮した。得られた上清を、吸引によって除去して、そして、金コロイドペレットを、穏やかな粉砕(tituration)によって再懸濁した。このペレットを、標準的手順に従って、透過電子顕微鏡のために調製した。
【0101】
Sigmaの塩化金で作製された粒子は、明白な条線を有する半透明物であった。この条線は、微量の汚染物(例えば、上記で同定されたもの)の存在に起因することが報告されている。対照的に、dmc2の塩化金で作製した粒子は、非常に少ない条線で、電子密度が高い。
【0102】
(実施例3 Sigma塩化金およびdmc2塩化金を使用した金コロイドゾルの生成)
上記データは、dmc2からの塩化金が、より低いレベルの汚染要素を含むことを示唆した。塩化金のこれら2つの定性的に異なる供給源の効果を決定するために、金コロイドゾルを、2つの異なる塩の供給源を使用して生成した。金コロイド粒子を作製するための手順は、Horisbergerによって最初に記載され、実施例1に記載される手順に従う。簡単に言えば、4%の塩化金(水中の)溶液を、dmc2ストック調製物およびSigmaストック調製物から作製した。3.75mlの各溶液を、各々1.5Lの水を含む個々のフラスコへと添加した。この溶液を、回転させながら沸騰させ、還流下で沸騰させ続け、そして激しく攪拌した。22.5mlの1%クエン酸ナトリウム溶液を、各フラスコへと添加した。両フラスコ中の溶液を、十分に記載された金コロイド形成のプロセスが終了するまで、沸騰させ続けた。この終了は、金から黒、黒からサクランボ色への色変化によって示される。一旦、このゾルが、サクランボ色に変化すると、このゾルを、還流下で一様に攪拌しながら、さらに45分間沸騰させた。冷却後、このゾルを、0.22μmのニトロセルロースフィルターを通して濾過し、使用まで室温で保存した。
【0103】
2つのゾルの定性的な比較は、UV/VIS波長スキャンを実行しながら、標準的な実験室の分光光度計を用いてなされた。この結果は、ゾルの2つのバッチが、ゾルが最大の吸収を示す波長によって示されるように、類似する平均直径を有する金コロイド粒子を含むことを示した。しかし、2つの調製物の間の最も顕著な相違は、dmc2物質を用いて作製されたゾルは、Sigma物質を用いて作製されたゾルの3倍の粒子数を有することである。さらに、最大λの周囲の分布が、Sigma調製物において、dmc2調製物に対してよりも広く、このことは、Sigma塩を用いて生成された粒子が、dmc2塩化金を用いて生成された粒子よりもより不均一であることを示す。
【0104】
(実施例4 金コロイドゾルの分析的比較)
上記定性的相違を、Brookhaven Particle Sizerを用いる定量的な粒子の特徴付けによって確認した。これらの研究について、各金供給源からの粒子のサンプルを、製造業者の指示書に従って調製した。このデータを、以下の表IIおよび表IIIに示す。このデータは、両調製物における粒子が、ほぼ同じ大きさ(34〜37nm)であることを確認した。それにも関わらず、dmc2物質を用いて作製されたゾルは、Sigma物質を用いて作製されたゾルの3倍の粒子密度を有する。さらに、Sigma塩化金調製物を用いて作製された粒子は、dmc2物質を用いて作製された粒子よりも2.5倍、より不均一である(すなわち、多分散性についてより大きな値を有する)(表IV)。
【0105】
(表III.dmc2塩化金およびSigma塩化金を用いて生成された金コロイドゾルの可変波長分析)
【0106】
【表3】
(表IV.dmc2塩化金およびSigma塩化金を用いて生成された金コロイドゾルの平均粒子サイズおよび分布)
【0107】
【表4】
(実施例5 最適結合pHの決定)
タンパク質の金コロイドへの結合は、金コロイドおよびタンパク質溶液のpHに依存することは公知である。TNFの金コロイドゾルへの最適結合pHを、経験的に決定した。この最適pHを、TNFが金コロイド粒子への結合を可能にするが、粒子の(NaClによる)塩誘導性調製物をブロックするpHとして規定した。露出された(naked)金コロイド粒子は、これらの表面上の正味の負電荷によって生成されたこれらの相互静電反発力によって、懸濁物中に保持される。塩溶液中に存在するカチオンは、通常は互いに反発する、負に荷電した金コロイド粒子を引き寄せる。この凝集物および沈殿物は、粒子が、最終的には溶液から析出する大きな凝集物を形成する場合、金コロイド溶液の色の、赤から紫(粒子が集まった場合)および最終的には黒までの視覚的な変化によって、示される。タンパク質または他の安定化剤の粒子の表面への結合は、この金コロイド粒子の自己誘導性沈殿をブロックする。
【0108】
TNFの金コロイドへの結合の最適pHを、pHを1N NaOHを用いて、pH5〜11に調製した(pH試験紙を用いて決定した)34nmの金コロイドのゾルの2mlアリコートを使用して決定した。TNF(Knoll Pharmaceuticals;均一になるまで精製された)を、diH2O中で1mg/mlの濃度に再構成し、3mM
Tris塩基中で、さらに100μg/mlまで希釈した。TNFに対する最適結合pHを決定するために、100μlの100μg/ml TNFストックを、pH調整された金コロイドの種々のアリコートへと添加した。そのTNFを、コロイドと15分間インキュベートした。続いて、100μlの10% NaCl溶液を、各アリコートへと添加し、粒子の沈殿を誘導した。最適結合pHを、塩による粒子の沈殿を防止すると同時に、TNFを金コロイド粒子へと結合させるpHとして規定した。
【0109】
(実施例6 飽和結合研究)
pH結合研究から得られたデータに基づいて、34nmの金コロイドのゾルのpHを、1N NaOHを用いてpH8へと調整した。このゾルを1mlのアリコートへと分割し、このアリコートに、漸増量(0.5〜4μgのTNF)の100μgTNF/ml溶液を添加した。15分間の結合の後、このサンプルを、7,500rpmで15分間、遠心分離した。上清の10μlのサンプルを、990μlのEIAアッセイ希釈液(TNF測定のための市販のEIAキットの一部として提供される;CytImmune Sciences,Inc.,College Park,MD)へと添加した。上清の残りを、吸引によって除去し、金コロイドのペレットを、PEG 1450/diH2O溶液(pH8)中で最初の体積へと再懸濁した。10μlの再懸濁ペレットを、990μlのEIAアッセイ希釈液へと添加した。この再構成ペレットおよび上清溶液を、連続的に希釈し、市販の定量的EIA(CytImmune Sciences,Inc,College Park,MD)によって1TNF濃度について分析した。
【0110】
pH結合研究からのデータを使用して、50mlの金コロイドのpHを、8.0〜9.0の間に調整した。このpHにおいて、TNFの固定体積の金コロイドへの結合は、飽和速度論を示した(図2)。図2に示されるように、0.5μg TNF/mlの金ゾルでは、実質的に全てのTNFが、上清中に遊離TNFとして存在する有意でない量(2〜5%)で、金コロイド粒子へと結合された。この金コロイド−TNF複合体は、塩の存在下で沈殿し、このことは、このTNF濃度が、金コロイド粒子を十分にはコーティングせず、TNFの飽和用量未満であることを示した。TNF濃度を増加することによって、金コロイド粒子に結合されたTNFの量が、上清中に測定される遊離TNFの量が比較的わずかに増加しながら、徐々に増加した。この粒子結合TNFの増加は、塩誘導性沈殿に対する粒子の安定性における増加に平行して起こった。TNFを用いた金コロイド粒子の飽和は、粒子の表面上の全ての結合部位が、TNFを結合する場合、生じた。金コロイド粒子の飽和は、4μg/mlの結合濃度で生じた(図2)。4μg/mlを超える用量での結合は、上清中に測定される遊離TNFの量の増加を生じた。
【0111】
図2に、TNFの金コロイドへの飽和結合が、示される。34nmの金コロイドゾル50mlを、1NaOHを使用して8にpH調整し、次いで、1mlアリコートへと分割した。漸増体積のストックTNF(3mM Tris中の100μg/ml)溶液を、アリコートに添加し、15分間結合させた。このサンプルを、7500rpmで15分間遠心分離した。上清の10μlのサンプルを、Tris緩衝化生理食塩水ミルク溶液(アッセイ希釈液)中に希釈した。残りの上清を吸引によって除去し、金コロイドのペレットを、緩やかに攪拌(tituration)することによって再懸濁した。10μlのこの懸濁されたペレットを、アッセイ希釈液中に希釈した。ペレットサンプルおよび上清サンプルの両方を、連続的に希釈し、EIA(CytImmune Sciennces,Inc.)によってTNF濃度を測定した。
【0112】
(実施例7 種々の金コロイドのベクターのラージスケール調製物)
金コロイド−TNF粒子(ベクターともいわれる)のインビボでの評価は、全ての製造手順のスケールアップを必要とした。金コロイドの大きな(8L)バッチは、上記に記載されるように製造される。金コロイドゾルの製造手順は、8Lの金コロイド生成物に適合される。還流器具(Kontes Glass,Vineland,NJ)を使用し、インビボの実験のために8Lの金コロイドを生成した。簡単に言えば、8LのdiH2Oを、回転沸騰まで加熱した。20mlの塩化金を、1つのポートを介して添加し、続いて、320mlのクエン酸ナトリウムを添加した。得られたゾルの色変化は、より少ない調製物で見られた色と同一であった。一旦、サクランボ色に達すると、このゾルは、一晩冷却され、次いで、上記のように滅菌濾過された。
【0113】
ラージスケール量を使用して作製された粒子は、実験室スケールの方法を使用して作製された粒子と本質的に同一であった。表Vを参照のこと。
【0114】
(表V.動的光散乱による、実験室スケール調製物およびラージスケール調製物の34nmの金コロイドゾルの特徴付け)
【0115】
【表5】
次に、コロイド粒子の一様なコーティングが、達成されなければならない。これは、重要な考慮事項である。なぜならば、分析によって、金コロイド粒子とTNF分子との間の結合がほとんど即時であるからである。従って、濃縮したタンパク質溶液を、大容量の金に単に添加することによって、TNFで差別的にコーティングされた粒子を生じる。粒子とTNF分子との相互作用を最適化するために、金コロイドゾルとTNF溶液との間の完全な相互作用を可能にする器具を使用した。この器具の模式図を、図1に示す。この器具は、露出された金コロイド粒子とTNFとの間の混合体積を、各構成要素を小さな混合チャンバ(T−コネクタ)に導くことによって減少した。金コロイド粒子およびTNF溶液を、2つの大きなレザバから金コロイド粒子およびTNFタンパク質を導く単一の蠕動ポンプによって、物理的にT−コネクタに導いた。適切な混合をさらに保証するために、インラインミキサー(Cole−Palmer Instrument Co.,Vernon Hills,IL)を、T−コネクタのすぐ下流に配置した。このミキサーは、金コロイド粒子をTNFと勢い良く混合し、両者は、約1L/分の流速で、コネクタを通して流れた。
【0116】
混合の前に、金ゾルのpHを、1NのNaOHを使用してpH8に調整する一方、組換えヒトTNFを、3mM Tris中で再構成し、調製した。この溶液を、滅菌された閉鎖チュービングシステムを使用して、各々の滅菌されたレザバへと添加した。等量の金コロイドゾルおよびTNF溶液を、適切なレザバへと添加した。金およびTNFの溶液を等量で混合するので、各試験ベクターについての初期TNF濃度は、最終濃度の2倍であった。例えば、cAu−TNFの0.5μg/ml溶液(4L)を作製するために、2Lの金コロイドを、金レザバ中に配置する一方、2Lの1μg/ml TNF溶液を、TNF容器へと添加した。
【0117】
一旦、溶液を、これらのレザバ中に適当に加えると、蠕動ポンプを作動し、TNF溶液および金コロイド溶液を、T−コネクタに導き、インラインミキサー、蠕動ポンプを介して、大収集フラスコに導いた。得られた混合物を、15分間、収集フラスコ中で攪拌した。この結合段階の後、各処方物からの1mlのサンプルを、収集し、塩の沈殿について試験した。1.0μg/mlの調製物および4.0μg/mlの調製物を、以下に記載されるようにプロセスしたのに対して、第3の溶液、第2の0.5μg/mlの調製物を、15μg/mlの最終濃度でのmPEG−チオール5,000(diH2O中の150μg/mlストックの10% v/v添加)の添加によって処理した。この第3の溶液(PEG−チオール−金コロイド−TNF(PT−cAu−TNF)溶液)を、さらに15分間インキュベートした。2つの他のPT−cAu−TNF処方物を、PEG−チオールの20,000MW形態および30,000MW形態を使用して作製した。これらの研究の間、さらなるコントロールを、PEG−チオール/露出された金コロイドまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターを含む比較のために試験した。
【0118】
各調製物中の金コロイド結合TNFを、50,000 MWCO BIOMAX膜分離精製カートリッジ(Millipore Corporation,Chicago,IL)を通して膜分離精製することによって遊離TNFから分離した。浸透液のアリコート(すなわち、遊離TNF)を除去し、TNF決定のために取っておいた。質量バランス決定のために、浸透液の総体積を測定した。TNF結合金コロイドを含む、保持物質を、0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過し、10μlのアリコートを、TNF分析のために取った。保持物質の残りを、保存のために−80℃で凍結した。TNF濃度の決定に続いて、ネイティブなTNF濃度の溶液を、3mM Tris中に製造し、インビボ研究のためにコントロールとして使用した。
【0119】
(実施例8 金コロイドTNFベクターの初期処方物)
このシリーズの実験を、金コロイドTNFベクターのインビボ生物学的活性に対する、種々のTNF:金コロイド結合比の効果を決定するために設計した。金コロイドTNFベクターの3つの異なる処方物を、TNF結合対金コロイド飽和曲線から得られるデータに基づいて、生成した。これら3つのベクターを1μg TNF/ml、2μg TNF/mlまたは4μg TNF/mlの金コロイド溶液でのTNFの結合によって作製した。これらの3つのベクターは、塩の添加後にコロイドのままである能力において異なった。1μg/mlのベクターは、塩溶液の添加の際に即座に沈殿した(すなわち、コロイドの色が、サクランボ色から黒に変化した)。対照的に、2μg/mlのベクターの色は、赤から紫色に変化し、このことは、金コロイド粒子の凝集を示した。最後に、4μg/ml調製物は、塩の添加後も赤のままであり、このことは粒子がコロイド状のままであり、相互作用しなかったことを示した。1μg/mlおよび2μg/mlのベクター中の粒子のコロイドの性質は、その塩への曝露によって変化したが、正常なヒト血漿とインキュベートした場合、これらベクターは、安定なままであった。これらのデータは、血漿の因子(最も可能性があるのは血液産生タンパク質)が粒子に結合し、沈殿に逆らってこの粒子を即座に安定化したことを示唆した。従って、これらのベクターを血液に曝露することは、これらの沈殿を防止し、インビボでの調査を可能にした。
【0120】
3つのcAu−TNFベクターおよびネイティブなTNFの比較安全な研究は、MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウスによって、なされた。ネイティブなTNFの毒性プロフィールは、用量依存性であった。5μgのネイティブなTNF/マウスは、注射から1〜2時間以内に、立毛および下痢を生じた。漸増用量のネイティブなTNFを用いると、より重篤な毒性が観測された。15μgのTNF/マウスの用量では、50%の動物が、低体温かつ応答が鈍くになり、そして最終的には、24時間以内に死亡した。このマウスを、注射後、以下の毒性度スケールを使用して、異なる時点でスコアリングした:0=通常の活性;1=立毛;2=軟便;3=嗜眠;4=応答の鈍化;および5=死。
【0121】
これらの3つのcAu−TNFベクターは、インビトロの生物学的アッセイにおいて、ネイティブなTNF調製物に生物学的に類似するけれども、これらの毒性プロフィールは、C57/BL6−MC−38腫瘍モデルにおいて非常に異なった。TNFの初期結合濃度を1.0μg/ml〜4.0μg/mlへと増加することは、cAu−TNFベクターの相対的安定性を増加した(図3A)。15μgのネイティブなTNFを注射されたマウスは、50%の致死率を有した。1.0μg/mlのcAu−TNFベクターを15μg注射することによってもまた、50%の致死率が生じた。対照的に、2.0μg/mlで結合した15μgのcAu−TNFを15μg与えられたマウスは、25%の減少した致死率を有した。最後に、4.0μg/mlのcAu−TNF調製物を15μg注射されたマウスは、いずれも死ななかった。この最後の群の動物は、処置の8時間以内に消散された一時的な毒性のみを示した。
【0122】
図3Aは、TNF:金結合比のcAu−TNFベクターの安全性への効果を示す。3つの異なる金コロイドTNFベクターを、金コロイド粒子のTNF飽和の相対的度合いに基づいて生成した。MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウス(n=4/群)に、15μgのネィティブなTNF(金ベクターに結合せず)または15μgの3つのcAu−TNFベクターのいずれかを静脈注射した。このマウスを、注射後、記載した毒性度スケールを使用して、異なる時点でスコアリングした。処置に対する生存百分率は、以下のとおりであった:ネイティブなTNF=50%、1μg/ml cAu−TNFベクター=25%。2μg/ml cAu−TNFベクター=75%および4μg/ml cAu−TNFベクター=100%。
【0123】
第2の用量の上昇および4.0μg/ml cAu−TNFベクターを用いた安全性研究は、この組成物が、ネイティブなTNFに比較される場合、用量対用量基準においてより安定であったことを示した(図3B)。1匹のマウス当たり、12μgまたは24μgのこのcAu−TNFベクターでの処置は、有意な腫瘍の減少を生じた(図3C)。実質的に、このcAu−TNFベクターは、任意の所定の用量TNFにて相対的安全性を増加し、最大に許容される用量で処置の効率を改善した。これらの安全性のデータおよび効率のデータは、このcAu−TNFベクターが、TNFに対する治療指数を効率的に増加することを示唆した。なぜなら、薬物の効力は、その安全性が改善される間に、維持されるからであった。
【0124】
図3Bは、MC−38腫瘍を負荷したC57/BL6マウスにおけるネイティブTNFおよび4μg/mlのcAu−TNFの用量上昇および毒性を示す。MC−38腫瘍化C57/BL6マウス(n=4匹/群/用量)に、漸増用量のネイティブTNFおよび4μg/ml cAu−TNFベクターを静脈内注射した。マウスを、記載した毒性順位付けスケール(toxicity rating scale)を使用してスコア付けした。6μg/マウス、12μg/マウス、および24μg/マウスのネイティブTNF処置にて生存している動物の%は、それぞれ、100%、75%および0%であった。cAu−TNF処置を受けた動物の全てが、生存していた。*p≦0.05。
【0125】
図3Cは、ネイティブTNFおよび4μg/mlのcAu−TNFベクターのMC−38腫瘍負荷C57/BL6マウスにおける抗腫瘍効果の比較を示す。図3Bに記載される種々の処置群についての抗腫瘍応答は、処置した後10日間、3つの寸法(L×W×H)の腫瘍測定値を決定することにより測定した。データを、種々の群についての腫瘍体積の平均±SEM(cm3)として示す。24μgのネイティブTNF処置を受けた動物の全てが、処置の24時間以内に死亡した。*未処置コントロールに対してp≦0.05。
【0126】
これらのデータは、cAu−TNFベクターについての好ましい組成を強く示唆する。続いて、cAu−TNFベクターを、その生体分布について試験した。時間を経ると、TNFの生体分布は、ネイティブTNFで処置した動物の分布と、cAu−TNFで処置した動物の分布との間で異なった。注射の1時間後、ネイティブTNFを受けたマウスは、cAu−TNF処置マウスと比較して、腎臓中により高レベルのTNFを有した(図3D)。対照的に、注射の8時間後では、金コロイド処方物を受けたマウスは、腫瘍中により高レベルのTNFを有した(図3E)。従って、cAu−TNFベクターは、TNFの腫瘍への送達を標的化することにより、安全性および維持効率を改善しているようであった。
【0127】
図3Dおよび3Eは、15μgのネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターを静脈内注射したMC−38腫瘍負荷C57/BL6マウスにおけるTNF分布プロフィールの比較を示す。MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウス(n=4匹/群/処置/時点)に、15μgのネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターを静脈内注射した。動物の1群を、注射してから1時間後(図3D)または8時間後(図3E)のいずれかに屠殺し、器官を回収した。その器官を、−80℃にて急速冷凍し、分析するまで保存した。その器官を、1mlのPBS(1mg/mlのバシトラシンおよびPMSFを含有する)を添加することにより急速解凍し、ポリトロン組織破壊機を使用してホモジナイズした。そのホモジネートを、5000rpmにて遠心分離し、得られた上清を、上記のように、TNF濃度および総タンパク質について分析した。データを、時点毎に4つの器官の平均±SEMとして示す。
【0128】
動物の剖検は、このcAu−TNFベクターの潜在的な問題を明らかにした。cAu−TNFベクター処理マウスの肝臓および脾臓の劇的な黒色は、改善された安全性の部分が、これらの器官によるベクターの取り込みおよびクリアランスに起因し得ることを立証した。さらなる研究は、この取り込みが迅速で、しばしば静脈注射後5分以内に生じることを明らかにした。これらの器官の視覚での点検はこれらの器官の黒色が、裸のコロイドの金粒子を塩に曝露した場合に、形成された黒の沈殿物と同じであることを示唆した。また、器官を収集する前に、動物をヘパリン化および広範に潅流したので、これらの器官の黒色は、これらの器官中でトラップされた血液に起因しないようである。これらのデータは、ベクターの大部分がRESの成分によって迅速に排泄され、cAu−TNFベクターが最適化されないという結果を導くことを示唆した。
【0129】
この仮説を支持するさらなる証拠は、ネイティブなTNFと2つのcAu−TNFベクターとの間のTNFレベルを比較する薬物動態学の研究に由来する。予測に反して、4μg/mlのcAu−TNFベクターの投与は、ネイティブTNFよりも低い開始血清レベルを生じた(図3F)。cAu−TNFベクターを与えられたマウスのTNFレベルは、ネイティブTNFを受ける動物において測定されたよりも一貫して2〜5倍低かった。PKにおけるこの相違を、0.5μg/mlのcAu−TNFベクターを用いるとさらに顕著であり、ここでTNFの血清レベルは、ネイティブな調製物で見い出されるよりもほぼ10倍近く低かった。cAu−TNFベクターを受けたマウスは、処方(すなわち、0.5μg/mlまたは4.0μg/ml)とは無関係に、ネイティブタンパク質を受けたマウスよりも低い血液レベルのTNFを一貫して示した。ひとまとめにして考えると、ベクターの生物分布およびPKデータは、このベクターが効果的に腫瘍を標的化するためには、RESによる取り込みが有意に減少または除去されることが必要であることを立証した。
【0130】
図3Fは、MC38−腫瘍に罹患したC57/BL6マウスにおけるネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターの薬物動態学のプロフィールの比較を示す。MC−38腫瘍に罹患したマウス(n=3/群/時間)に、10μgのネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターのいずれかを静脈注射した。示された時間で、マウスを麻酔し、そして眼窩後方の洞を介して採血した。血液サンプルを、凝血させ、そして14,000rpmで遠心分離した。得られた血清サンプルを、TNFのための市販のEIAを用いてTNF濃度について分析した。データは、時間ごとの3匹のマウスからの平均±SEM血清濃度として表される(*p<0.05)。
【0131】
(実施例9 RESによるクリアランスを避けるため、および固体腫瘍へのTNFの送達の標的化ベクター)
RESによる外来の対象物の認識およびクリアランスが、他の薬剤キャリアと共に見い出された。リポソームおよび生物分解性ポリマーについて、この問題に、種々のPEG安定剤、ならびにポラキサマーおよびポラキサミンのようなブロックコポリマーを用いる表面改変によって取り組んだ。リポソ−ム処方物中で使用されたもの(例えば、カーボワックス20M、テトロニック407、プルロニック908)を含む多数の安定剤を、4.0μg/mlのcAu−TNFベクターに添加した。これらの試薬のいずれも、RESによるベクターの取り込みを効果的に遮蔽しなかった。
【0132】
次に、1粒子あたりのTNF結合の量を減少した。TNFを、飽和下用量(すなわち、0.5μg/ml)でコロイドの金粒子にまず結合させた。次いで、チオール誘導体化ポリエチレングリコール(PEG−Thiol;MW=5,000)を、粒子に添加した。この小さい線状のPEG−Thiol試薬を、選択した。なぜならば、チオール基は、粒子の表面に直接結合し得、おそらくTNFの分子間にあるからである。この新しいベクターを、MC−38腫瘍に罹患したC57/BL6マウスにおいて試験した。
【0133】
コロイドの金結合TNFベクターのこの組成物を、TNFおよびさらなる因子を同じ粒子のコロイドの金に結合させることによって処方した。このベクターを、0.5μg/mlの飽和下用量でTNFをコロイドの金にまず結合させることによって形成した。次いで、誘導体化PEGを、ベクターに添加した。誘導体化PEGは、チオール誘導体化ポリエチレングリコールであった(メトキシPEG−Thiol、MW:5000ダルトン、PEG−Thiol,Shearwater Corp.,Huntsville,AL)。PEG−Thiolの最終濃度は、15μg/mlであり、これを、diH2O中に10×濃度で添加した。チオール基は、コロイドの金粒子の表面に直接結合するため、チオール誘導体化PEGは、コロイドの金ベクターについての良好な成分である。5,000MWのチオール−PEGは、試験される第1のチオール誘導体化PEGであった。さらに、20,000ダルトンおよび30,000ダルトンのMWを有するmPEG−チオールを用いた効力実験を、以下に記載されるように実行した。
【0134】
PEG−Thiol改変cAu−TNF(PT−cAu−TNF)ベクターの投与後に見られる生物分布プロフィールは、これまでのcAu−TNFベクターで観察されるものとは異なっていた。この新しいベクターを用いて、肝臓および脾臓は、0.5μg/mlおよび4.0μg/mlのcAu−TNFベクター(図4B)で生じるようにPT−cAu−TNFベクター(図4A)を視覚的に取り込まなかった。図4Cは、未処理の肝臓および脾臓を示す。RES取り込みの阻害として著しいように、これは、MC−38腫瘍におけるPT−cAu−TNFベクターの明らかな蓄積であった。なぜならば、この腫瘍は、ベクターの投与の30〜60分以内に明るい赤/紫色のコロイドの金粒子を得るからである。隔絶は、この研究の時間経過を通じて継続し、そして腫瘍中のTNFの蓄積およびTNFの延長された血液残留時間と同時に起こった。
【0135】
0.5μg/mlおよび4.0μg/mlのcAu−TNFベクター処理後の肝臓および脾臓中に蓄積された黒色の金とは異なり、PT−cAu−TNFの投与後に腫瘍に蓄積して観察される金の色は、赤紫であった。この相違は顕著である。なぜならば、これは、その循環における残留およびその腫瘍中での蓄積の間、金粒子がコロイドの状態を維持したことを示すからである。興味深いことに、腫瘍部位中および周囲でのPT−cAu−TNF蓄積のパターンは、時間と共に変化した。PT−cAu−TNFは、初め(すなわち、0〜2時間)腫瘍中に単独で隔絶された。時間と共に、ベクターの染色は、マウスの皮膚および腹面の組織周囲上で明らかとなった。屠殺された動物の腫瘍の閉塞解剖の間、これらの動物における腫瘍の外側の染色が、腫瘍細胞が初めに移植された皮膚層に制限されることが観察された。最小限の染色が、腫瘍が残された部分上の基底筋に存在していた。この観察は、辺縁の染色が、腫瘍塊に血液を供給する血管、可能であれば新しい血管におけるベクターの蓄積に起因し得ることを示唆した。近年でも、染色が、これらの血管中の薬剤の能動的な隔絶か、またはベクターでの腫瘍飽和化に起因する受動的な蓄積のいずれを表すかは未知である。
【0136】
TNFによって生じる出血性応答を染色が反映するか否かを決定するために、4μg/mlのcAu−TNFベクターもしくはネイティブTNFの15μgの注入を受けたマウスの染色パターンを同じ用量のPT−cAu−TNFベクターを受けたマウスの染色パターンと比較した。4μg/mlのcAu−TNFベクターで処理されたマウスは、腫瘍瘢痕形成を示し始め、これは代表的にTNFの静脈内投与に続く。瘢痕の類似のパターンが、ネイティブなTNF処理後に観察された。ネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクター処理で観察した瘢痕染色のパターンは、PT−cAu−TNFベクター処理後に観察される染色のパターンとは明らかに異なっていた。PT−cAu−TNFベクターの投与後に観察された染色パターンのさらなる証拠を、マウス血清アルブミン(MSA)に初めに結合されたPEG−Thiol金コロイド粒子を受けたマウスから得た。PT−cAu−MSAベクターは、はるかに遅い速度ではあるが、PT−cAu−TNFベクターの染色と同様の腫瘍の染色を生じた。腫瘍の染色は、PT−cAu−TNF処理で観察された色と類似であった。しかし、PT−cAu−TNFベクターで観察された30〜60分での色変化と比較して、腫瘍着色化における変化は、処理の4時間後のみの事象であった。さらに、染色の強度は、PT−cAu−TNFベクターで観察された強度よりも低かった。
【0137】
図4は、PEG−Thiolベクターによる金コロイドTNFベクターのRES媒介取り込みの阻害を示す。PT−cAu−TNFベクターを、記載されたようなTNFとPEG−Thiolとの特異化された比を用いて発達させた。結合後、ベクターを、透析によって濃縮し、そしてEIAによってTNF濃度について分析した。15μgのPT−cAu−TNFベクターを、MC−38腫瘍に罹患したC57/BL6マウス中に静脈注射した。このマウスを、注射の5時間後に屠殺し、そしてヘパリン化生理食塩水で潅流した。肝臓(図の左)および脾臓を写真撮影した。
【0138】
(実施例10 薬物動態学の分析および分布分析)
一般に、これらの実験は、上述のように生成したネイティブTNF、cAu−TNF(4μg/ml)、またはPT−cAu−TNF(0.5μg/ml)ベクターを含む。研究に依存して、5〜20μgのネイティブまたはcAu−TNFベクターの1つを、MC−38腫瘍罹患マウスの尻尾静脈を介して、静脈注射した。マウスを、眼窩後方の洞を介した注射後、5分、180分、および360分で採血した。この血液を凝血させ、そして得られた血清を収集し、そしてEIA(CytImmune Sciences,Inc.)によるバッチTNF分析のために−20℃で凍結させた。選択された時点で、種々の器官を、収集し、そして瞬間凍結させた。TNF含有量を決定するために、この器官を、解凍し、均一化し、そして14,000rpmで15分間遠心分離した。上清を、上述のようなTNF濃度、ならびに280nmでのサンプルの吸光度を決定することによって全てのタンパク質について分析した。器官TNF濃度を、全てのタンパク質について標準化した。
【0139】
(A.金分布)
肝臓、肺、脾臓、脳および血液を含む種々の器官を、15μgのPEG−Thiol安定化0.5μg/ml cAu−TNFベクターの静脈注射後の金元素の存在について試験した。マウスを、注射6時間で屠殺し;血液を収集(collect)し、そして肝臓、脾臓および腫瘍を含む種々の器官を採取(harvest)した。除去後、器官を王水中で消化(1部の濃硝酸に対して3部の濃HCl)してこれらの器官中に存在する金を抽出した。この抽出を、24時間に渡って実施し、その後、このサンプルを3500rpmで30分間遠心分離した。上清を、誘導結合プラズマ分光法によって全ての器官の金濃度の存在について分析した。この結果を、図5Aで全ての器官金濃度(ppmで)として報告する。この結果は、金の腫瘍内濃度が、肝臓で測定されたものの2倍近く高く、そして脾臓中で見出されたものの7倍近く高いことを実証する。このパターンは、ベクターが他の器官と比較して腫瘍中に残ることを示唆するが、本発明者らは、最も高いレベルの金がなおこれらの動物の循環中にあることを観察した。
【0140】
図5Aにおいて、MC−38腫瘍罹患C57/BL6マウスの種々の器官における金分布が示される。上清を、誘導結合プラズマ分光法によって全ての器官の金濃度の存在について分析した。この結果を、1器官あたり3匹のマウスについての全ての器官の金濃度(ppmで)として報告する(*肝臓および脾臓に対してp<0.05;+脾臓に対してp<0.05)。
【0141】
(B.TNFの分布および薬物動態学)
腫瘍塊内の金コロイドの隔絶を、循環中の薬剤ベクターの延長された存在、ならびに腫瘍中のTNFの能動蓄積によって平行した。誘導体化PEGを伴なわないcAu−TNFベクターとは異なり、PT−cAu−TNFベクターの注射は、研究される時間を介した循環におけるTNFのレベルの上昇を生じた。ネイティブなTNFの注射6時間後、TNFレベルは、5分で見出されるものの2%のみしかなかった(図5B)。対照的に、PT−cAu−TNFベクターを受けたマウスは、その最大の5分での値の約30%であるTNF血液レベルを有していた。この6時間で、PT−cAu−TNF処方物で処理したマウス中の血液TNFレベルは、ネイティブTNFで処理されたマウスで見出されるレベルよりも23倍高かった。
【0142】
図5Bは、TNF薬物動態学的分析を示す。マウスを、注射後、5分、180分および360分で眼窩後方の洞を介して採血した。この血液サンプルを、14,000rpmで遠心分離し、そして得られた血清をEIAを用いてTNF濃度について分析した。データは、3匹のマウス/時間(*p<0.05)から平均±SEM血清TNF濃度として示される。
【0143】
pT−cAu−TNFベクターで処理した動物において、TNFは、腫瘍中に蓄積した。図5Cに示されるように、ネイティブTNFで処理されたマウスにおいて観察されるTNFの最大の腫瘍内濃度は、0.8ngのTNF/mgタンパク質であった。ピークの量は、ネイティブTNFの投与の5分以内に見出され、そして6時間に渡って増加しなかった。対照的に、PT−cAu−TNFベクターで処理された動物は、時間とともに増大するTNFの腫瘍内レベルを有していた。TNFを、PT−cAu−TNFベクターで処理した動物の腫瘍中で能動的に隔絶した。この期間の最後に、ネイティブTNFまたは4μg/mlのcAu−TNFベクターで処理したものと比較して、10倍近くのTNFを、PT−cAu−TNFベクターで処理された動物の腫瘍中に見出した(図5D)。
【0144】
図5Cで、時間に渡る腫瘍内TNF分布が示される。マウスを、15μgのネイティブTNFまたはPT−cAu−TNFベクターの注射後、5分、180分および360分で屠殺した。腫瘍を取り出し、そしてTNFおよび全てのタンパク質について分析した。データは、腫瘍TNF濃度の平均±SEMとして示され、3匹のマウス/時間/処理群から、ng TNF/mgの合計タンパク質で表される(Δp<0.1,*p<0.05)。
【0145】
図5Dは、4μg/mlのcAu−TNFベクターまたはPT−cAu−TNFベクターのいずれかを15μg静脈内注射した動物由来の腫瘍内TNF濃度の比較を示す。
【0146】
MC−38腫瘍塊におけるPT−cAu−TNFベクターの蓄積は、受動的事象ではなく、また、同じ期間にわたってTNFが他の器官(例えば、肺、肝臓、および脳)において蓄積しなかったので、循環におけるベクターの延長された存在時間のただの関数でもなかった。むしろ、これらの器官におけるTNFの存在は、血液において見出されるTNFの存在に、パターンが類似した。さらに、これらの標的化されていない器官における薬物の分布は、ネイティブのTNFで見出される薬物の分布に類似した。結果として、PT−cAu−TNFベクターの投与から生じるTNFの蓄積は、腫瘍に特異的である(図5Eおよび図5F)。
【0147】
図5Eおよび図5Fは、ネイティブのTNF(図5E)またはPF−cAu−TNF(図5F)のいずれかを受ける、MC−38腫瘍で負荷された(burdened)C57/BL6マウス由来の種々の器官におけるTNFの分布を示す。この実施例において処置された動物由来の肝臓、肺および脳を、処置し、そしてTNFおよびタンパク質濃度について分析した。データを、注射された処方物当たり、1つの時点について3匹のマウス由来の器官内TNF濃度の平均±SEMとして示す。
【0148】
(実施例11 用量の上昇、毒性、および効力)
C57/BL6マウスに、ネイティブのTNF調製物と金コロイド結合TNF調製物との安全性および効力を比較するためのモデルとして、結腸癌細胞株MC−38を移植した。C57/BL6マウスの腹部表面の一部位に、105個のMC−38腫瘍細胞を移植した。細胞を、それらが腫瘍の三次元(L×W×H)での測定により、0.5cm3と測定される腫瘍を形成するまで増殖させた。MC−38腫瘍負荷C57/BL6マウス(n=4〜9/群)に、漸増する用量のネイティブなTNF、cAu−TNFベクター、またはPT−cAu−TNFベクターを静脈注射した。これらのマウスを、1群あたり4〜9匹の動物で、9つの群に分けた。1つの群を未処置コントロール群として供した。2つの群に、7.5μgまたは15μgのいずれかのネイティブTNFを静脈注射した(図6A)。2つの群に、7.5μgまたは15μgのいずれかの20K−PT−cAu−TNFベクターを静脈注射した(図6B)。2つの群に、7.5μgまたは15μgのいずれかの30K−PT−cAu−TNFベクターを静脈注射した(図6C)。腫瘍測定を、TNF処置で生き延びた動物に対する処置後、種々の日数で行った。種々の群の間の統計的差異を、両側t検定で決定した。
【0149】
これらのマウスを、注射後の種々の時点で以下の毒性順位付けスケールを用いてスコア付けした:0=正常な活動;1=立毛;2=軟便(loose stool);3=嗜眠;4=応答なし;5=死。2回連続した評価時に、4を記録した動物を、屠殺した。処置効力を、種々のTNF処置により誘導される、腫瘍容量の減少をモニターすることによって決定した。測定値を、種々の群の中の各々の動物および生理食塩水注射を受けた動物(未処置コントロール)についての最初の腫瘍の容量と比較した。未処置コントロールを、それらの腫瘍容量が4cm3になったときに屠殺した。
【0150】
5,000mwのPEG−チオールを含む5K−PT−cAu−TNFベクターを、MC−38腫瘍負荷マウスにおける容量上昇研究において、安全性および効力について試験した。4ug/ml cAu−TNFベクターと同様に、5K−PT−cAu−TNFベクターは、ネイティブなTNFと比較した場合、改善された安全性プロファイルを有した。マウス一匹あたり15μgのネイティブなTNFの用量で、33%(9匹のうち3匹)の動物が、処置の24時間以内に死んだ。さらに、7.5μgのネイティブTNFは、9匹の動物のうち1匹の死亡を生じた。対照的に、5K−PT−cAu−TNFベクターに結合させたTNFの7.5μgのまたは15μgのいずれかを受容した動物は、全く死亡しなかった。これらのベクター処置された動物は、一時的な有害な臨床的効果を示すのみであった。ネイティブのTNFと比較した、5K PT−cAu−TNFベクターの抗腫瘍効力の目に見える差異は、1回の処置後では観察されなかった(図6A)。これらの知見は、2回の実験において繰り返された。
【0151】
図6Aは、ネイティブTNFまたはPT−cAu−TNFベクターの安全性および効力を比較するグラフである。†未処置のコントロールに対する7.5μgの用量のネイティブTNFまたはPT−cAu−TNF処置に関してはp<0.05であった。*未処置のコントロールおよび7.5μgの用量のネイティブTNFまたはPT−cAu−TNF処置に対する15μgの用量のネイティブTNFまたはPT−cAu−TNF処置に関してはp<0.05であった。
【0152】
ベクターの抗腫瘍効果に対するPEG−チオール鎖長の効果を図6B〜図6Cに示す。最も高いTNFの用量(15μg)で、ネイティブのTNFと比較して、いずれのTNFベクターの間でも、全く差異が示されなかった。しかし、より低用量の7.5μgのTNFでは、パターンが生じた。上記のように、5K PEG−チオールは、ネイティブなTNFと比較して、金コロイドベクターの抗腫瘍効果を著しくは改善しなかった。PEG鎖長を20Kに増加させることによって、腫瘍減少におけるわずかな非統計的な改善が生じ(図6B)、一方で、30Kまで増加させることにより、顕著で、統計的に有意な腫瘍抑制の改善を生じた(図6C)。30K PT−cAu−TNFベクターを用いて、このベクターを介して7.5μgの用量のTNFで処置した動物は、15μgのネイティブなTNFで処置した動物の腫瘍と同様のサイズの残りの腫瘍を有した。15μgのネイティブなTNFで処置した動物とは対照的に、7.5μgのTNFを投与された、30K PT−cAu−TNFで処置した動物は、全く毒性を経験しなかった。事実上、30K PT−cAu−TNFベクターの単回の注射は、より少ないTNFを提供したが、二倍多いネイティブTNFで見出されるのと同じ最大限の抗腫瘍後退を誘導し、そして処置された被験体は、この処置を生き延びた。この腫瘍モデルにおいて、5K PEG−チオール−cAu−TNFベクターまたは20K PEG−チオール−cAu−TNFベクターのいずれかの単回の注射は、ネイティブのTNFより安全であり、そして30K PEG−チオール−cAu−TNFベクターは、ネイティブ分子より安全であり、かつより効果的である。
【0153】
図6Bは、ネイティブのTNFと20K−PT−cAu−TNFとの安全性および効力を比較するグラフである。†、§ 未処置コントロールに対して、7.5μgの用量の、各々、ネイティブのTNFベクター処置またはPT−cAu−TNFベクター処置について、p<0.05であった。7.5μgの20K−PT−cAu−TNFベクターは、7.5μgのネイティブの群と、統計的に異ならなかった。*未処置のコントロールおよび7.5μgのネイティブおよび20K−PT−cAu−TNFベクターに対する、15μgの用量のネイティブまたはPT−cAu−TNF処置についてはp<0.05であった。
【0154】
図6Cは、ネイティブのTNFと30K−PT−cAu−TNFとの安全性および効力を比較するグラフである。†未処置のコントロールに対して、7.5μgの用量のネイティブのTNFについて、p<0.05であった。§未処置のコントロールおよびネイティブなTNFの群に対する7.5μgの用量の30K−PT−cAu−TNFベクター処置について、p<0.05であった。*未処置のコントロールおよび7.5μgの用量のネイティブなTNFに対して、15μgの用量のネイティブまたはPT−cAu−TNFベクター処置について、p<0.05であった。7.5μgの30K−PT−cAu−TNFは、15μgのネイティブのTNFまたは30K−PT−cAu−TNFとは、統計学的に異ならなかった。
【0155】
(実施例12 金コロイドの組成物の経口投与)
PT−cAu−TNFベクターの、腫瘍隔離に対する投与経路の効果を試験した。ベクター調製は、前出の実施例に記載されるとおりである。簡単には、金コロイドを、上記のインライン混合装置を用いて、0.5μg/mlの濃度でTNFに結合させる。15分間のインキュベーションの後、30,000MWのPEG−チオール(pH8の水に溶解した)を、この混合物に12.5μg/mlの最終濃度添加する。この溶液を、攪拌し、そしてダイアフィルトレーションにより直ちに処理する。残留物を、滅菌濾過し、そして−40℃での貯蔵のためにアリコートに分ける。
【0156】
MC38腫瘍負荷C57/BL/6マウスを、経口投与されたPT−cAu−TNFベクターが、腫瘍部位へのTNFおよび金の送達を標的化する能力を決定するためのモデルとして使用した。これらの研究についてマウス(n=3)を、1mgのペントバルビトールを用いて麻酔した。この動物を、完全に鎮静した後、PT−cAu−TNFベクターに結合したTNF(26μg)を、口腔カニューレ(oral cannula)を通して投与した。これらの動物を、回復させ、そして食物および水に自由にアクセスさせた。翌日、腫瘍が、金コロイドベクターの特有の赤/青であることが観察された。これらのデータは、PT−cAu−TNFベクターの経口投与が腫瘍の処置に用いられ得ることを示す。
【0157】
(実施例13 金コロイドの結合したTNFベクターのインビトロでの活性)
ネイティブのTNFおよびcAu−TNFベクターのインビトロでの活性を、Khabar,K.S.、Siddiqui,S.、およびArmstrong,J.A.、WEHI−13 VAR;a stable and sensitive variant of WEHI 164 clone 13 fibrosarcoma for tumor necrosis factor bioassay,Immunol.Lett 46:107−110(1995)により記載されるWEHI−164 TNFバイオアッセイにより決定した。このバイオアッセイにおいて、104個のWEHI−164細胞を、12ウェル組織培養クラスター中にプレートした。細胞を、10%のFBSを補充したDMEM中で培養した。金コロイド1mlあたり0.5μg、1μg、2μg、および4μgのTNFで調製されたネイティブなTNFおよび4つの異なるcAU−TNFベクターを、細胞と共に、1mg/ml〜0.0001mg/mlの範囲のTNF最終濃度で、7日間インキュベートした。細胞数を、Coulter Counterを用いて、7日目に測定した。データは、三回のウェル/TNF処方物についての細胞数の平均±SEMとして示される。
【0158】
cAu−TNFベクターは、WEHI 164バイオアッセイにおいて、ネイティブのTNFに対し、モルベースで、生物学的に等価であった。例えば、12.5ngのネイティブのTNFは、WEHI 164細胞の増殖を50%阻害するが、一方で、同じ12.5ng用量の1.0、2.0および4.0μg/mlのcAu−TNF調製物は、WEHI 164細胞の増殖を、それぞれ、47%、55%、および52%阻害した。
【0159】
(実施例14 抗脈管形成剤の腫瘍標的化送達のためのPEG−チオールベクター)
これらの実験は、PT−cAu−TNF−エンドスタチンベクターを用い、ベクターは、2つの薬剤を含む。TNFは、腫瘍への治療薬剤(エンドスタチン(END))の送達のための標的化機能を提供すると考えられている。また、標的で一度に、両方の薬剤が治療効果を提供し得るという仮説がたてられる。このベクター組成物の1つの局面は、標的化分子、治療的分子、およびPEGの比率である。これら全ての要素は、金コロイドの同じ粒子上に見出される。このベクターの概略を、図7に示す。図7において、1は、薬剤(例えば、END分子)であり、2は、金コロイド粒子であり;3は、誘導体化されたPEGであり;そして4は、異なる薬剤または標的化分子(例えば、TNF分子)である。
【0160】
金コロイドの粒子と結合した誘導体PEG、TNF、およびエンドスタチンを含むPT−cAu(TNF)−ENDベクターを、図1に記載される装置を用いて作製した。PT−cAu(TNF)−ENDを、3つの段階で作製した。第一に、TNFを、非常に低い亜飽和の質量のTNFで、金粒子と結合させた。0.5μg/mlのTNF濃度で作製されるPT−cAu−TNFベクターと異なり、このベクターを、0.05μg/mlのTNF濃度で作製した。TNF(3mMのCAPS緩衝液(pH=10)中に希釈した)を、0.1μg/mlの濃度で、これらの装置の試薬ボトルに添加した。この装置中の第二のボトルを、pH10で、等容量の金コロイドで満たした。THFを、上記のように、ぜん動ポンプの作動により、金コロイド粒子に結合させた。この金コロイド−TNF溶液を、15分間インキュベートし、次いでこれらの装置の金の容器に戻した。次いで、この試薬ボトルを、等用量のエンドスタチン(CAPS緩衝液中に0.15〜0.3μg/mlの濃度で希釈した)で満たした。代替的な実施形態において、エンドスタチンは、金粒子への結合を補助するために、n−スクシニミジル−S−アセチルチオアセテートのような薬剤を用いて、スルホ基の付加により化学的に改変され得る。
【0161】
ぜん動ポンプを、作動して、金コロイドが結合したTNFおよびエンドスタチンの溶液をTコネクターに流し込んだ。これらの溶液の完全な相互作用の際、混合物を、収集ボトル中で、さらに15分間インキュベートした。PEG−チオについての追加の結合部位の存在を、この段階で塩が粒子を沈降させる能力により確認した。15分間のインキュベーションの後、5K PEG−チオールを、cAu(TNF)ENDベクターに添加し、そして上記のように、ダイアフィルトレーションにより濃縮した。
【0162】
同じ金の粒子に2つのタンパク質を結合させるための代替方法であって、図1の装置と同じ装置用いる工程、および金と同時に薬剤を添加する工程、を包含する。TNFおよびENDを、結合装置の試薬チャンバーに入れた。各々のタンパク質の濃度は、0.25μ
g/mlであり、そして結果として、1mlの溶液が、0.5μgの総タンパク質を含ん
だ。金粒子に二重の薬剤組成物を結合させた後、この金コロイドの調製物をまた、塩の存在下で沈降させた。このことは、PEG−チオールを結合させるためのさらなる遊離結合部位が利用可能であることを示す。15分間のインキュベーションの後、5K PEG−チオールをcAu(TNF)ENDベクターに添加し、次いで上記のように処置した。
【0163】
ダイアフィルトレーションの後、保持物を、それぞれのEIAにおけるTNFおよびENDの濃度について測定した。金コロイドの同じ粒子上のENDおよびTNFの存在を確認するために、交差抗体捕捉および検出アッセイを設計し、そして使用した。このEIAの概略的な表現を、図8に示す。図8において、Aは、標識化された結合パートナー(例えば、ストレプトマイシン、アルカリホスファターゼ)であり;Bは、結合パートナー(例えば、ビオチン)であり;Cは、検出抗体(例えば、ビオチン化抗END抗体)であり;Dは、薬剤(例えば、END分子)であり;Eは、誘導体化PEGであり;Fは、金コロイドの粒子であり;そしてGは、異なる薬剤または標的化分子(例えば、TNF分子)であり;Hは、捕捉抗体(例えば、抗TNF抗体)であり;そしてLは、支持体(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート)である。
【0164】
PT−cAu(TNF)−ENDベクターのサンプルを、TNFまたはENDの捕捉抗体のいずれでコーティングされたEIAプレートに加えた。サンプルを、捕捉抗体と共に3時間インキュベートした。インキュベーションの後に、プレートを、洗浄し、ブロット乾燥した。TNF捕捉されたサンプルに存在する任意のENDを結合するために、ビオチン化ウサギ抗エンドスタチンポリクローナル抗体を、ウェルに添加した。30分間のインキュベートの後、プレートを洗浄し、そしてビオチン化した抗体の存在を、ストレプトアビジン結合体化アルカリホスファターゼを用いて検出した。エンドスタチン検出系による陽性の色シグナルの発生は、検出抗体が、TNFモノクローナル抗体により予め捕捉されたキメラベクターに結合したことを示した。図9を参照のこと。捕捉抗体および検出抗体を逆転させ、そして適切な第二検出システムを用いることにより、アッセイを使用して、END補足された粒子上のTNFの存在を検出した。図9を参照のこと。図9は、TNF補足されたベクターおよびEND補足されたベクターが第二の薬剤の存在を示すことを示すグラフである。
【0165】
これらの研究からのデータは、表VIに示される。表VIに見出されるように、ベクターサンプルの保持物は、17μg/mlのTNFおよび22μg/mlのENDを有した。これらの同じサンプルはまた、交差抗体アッセイにおいて陽性のシグナルを発生し、このことは、TNFおよびエンドスタチンの両方が、金コロイドの同じ粒子上にあることを示唆した(図9)。
【0166】
(表VI.PT−cAu(TNF)−ENDベクターの保持物中に存在するTNFおよ
びエンドスタチンの濃度)
【0167】
【表6】
図10において、そのデータは、静脈注射後に切除されたMC−38腫瘍中のPT−cAu(TNF)−ENDベクター由来のエンドスタチンおよびTNFの検出を示している。これらのデータは、両方の分子が腫瘍中で検出されているので、PT−cAu(TNF)−ENDベクターが、分解せずに、腫瘍に達していることを示す。
【0168】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、明確に他を示さない限り、複数形の言及を含むことに注意しなければならない。従って、当然、「薬剤(an agent)」を含むベクター組成物に対する言及は、そのような薬剤のモル量を意味する。
【0169】
本明細書中に開示される特定の組み合わせ、方法、および物質は幾分か変化し得るので、本発明はそのような組み合わせ、方法、および物質に限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される用語が、特定の実施形態を記載する目的のためにのみ用いられ、限定することが意図されないこともまた理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの薬剤を含むベクター組成物。
【請求項1】
少なくとも1つの薬剤を含むベクター組成物。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−215319(P2009−215319A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156423(P2009−156423)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【分割の表示】特願2002−584861(P2002−584861)の分割
【原出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(503400042)サイティミュン サイエンス, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(503400075)
【出願人】(503400064)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【分割の表示】特願2002−584861(P2002−584861)の分割
【原出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(503400042)サイティミュン サイエンス, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(503400075)
【出願人】(503400064)
【Fターム(参考)】
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