説明

コンクリートの弾性係数測定装置

【課題】地下構造物等のコンクリート構造物としての安全性や設計評価を行うための重要な要素であるコンクリートの弾性係数を導くためのコンクリートの弾性係数測定装置を提供する。
【解決手段】コンクリートの中に埋設する無応力ケース2内に、ひずみ計5を設置したコンクリート支圧板4を設け、該支圧板とケース内定面との間に、前記支圧板に掛かるコンクリート圧に対抗する方向に荷重を加える圧力ジャッキ7を設け、該圧力ジャッキの荷重を測定する荷重計9を設置し、コンクリートの弾性係数の測定が必要に応じて、その都度、埋設コンクリート外からの操作で即時に取り出せ得、安全管理上、品質管理上有効であるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物等のコンクリート構造物としての安全性や設計評価を行うための重要な要素であるコンクリートの弾性係数を導くためのコンクリートの弾性係数測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下構造物等を構築するにあたり、壁や梁はこれに掛かる大きな土圧や水圧に効果的に抵抗できる構造のものでなければならない。そのため地下トンネルや地下道路トンネル等の地下構造物を鉄筋コンクリートで構築するときは、特にコンクリートの持つ高い圧縮強度を利用することとなる。設計された鉄筋コンクリートは、コンクリートの弾性係数を予想して作られている。
【0003】
しかし、鉄筋コンクリート構造物でも、その弾性係数はコンクリート打設後一定ではない。すなわち、鉄筋コンクリート構造物を管理する上で重要なことは、弾性係数を正確に把握し、想定した性質を保有しているかを知ることであるが、特公昭58−1736号公報あるいは特開平8−219910号公報のものでは、弾性係数を把握することはできないものである。
【特許文献1】特公昭58−1736号公報
【特許文献2】特開平8−219910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンクリートの弾性係数は、コンクリートの打設直後から刻々と変化し始め10以上の長い年月を経過しないと一定した値にならない。
【0005】
本発明は、刻々と変化するコンクリートの弾性係数を求めるためのもので、その目的とするところは、必要なときに積極的に荷重を加え、コンクリートの弾性係数を導くためのコンクリートの弾性係数測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係るコンクリートの弾性係数測定装置は、コンクリートの中に埋設する無応力ケース内に、ひずみ計を設置したコンクリート支圧板を設け該支圧板とケース内定面との間に、前記支圧板に掛かるコンクリート圧に対抗する方向に荷重を加える圧力ジャッキを設け、該圧力ジャッキの荷重を測定する荷重計を設置したことを特徴とし、コンクリートの弾性係数の測定が必要に応じてその都度得られるように構成した。
【0007】
また、請求項2に係るコンクリートの弾性係数測定装置は、前記圧力ジャッキが、圧力ホースを介して埋設コンクリート外に設置した圧力源に連係するとともに、前記荷重計及びひずみ計の値を計測ケーブルを介して埋設コンクリート外に取り出せるようになっていることを特徴とし、コンクリートの弾性係数の数値を外部操作で知ることができるように構成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートの弾性係数の測定が必要に応じてその都度得られ、安全管理上、品質管理上有効であるという優れた効果を奏するものである。
【0009】
また、請求項2によれば、コンクリートの弾性係数の数値が外部からの操作で即時に確認できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願測定装置の要部を示す断面図、図2は本願測定装置の使用状態を示す断面図である。
【0011】
図1において、1は本願測定装置である。本願測定装置1はコンクリートの中に埋設する無応力ケース2を備える。無応力ケース2は金属製の内皮と外皮との間に、樹脂発泡体(たとえば、ウレタン樹脂発泡体)3を介装してなる有低円筒体で構成されている。この樹脂発泡体3を介装したのは、その緩衝性によりケース2内に充填させた測定用コンクリートAの測定に際し、ケース外の被測定コンクリートBの応力から有効に遮断(絶縁)できるようにしたものである。
【0012】
前記無応力ケース2内には、その円筒部内壁に摺接した状態でコンクリート支圧板4が挿入されている。該コンクリート支圧板4のケース口2a側の中央には、ひずみ計5が鉛直状に設置されている。このひずみ計5は、前記ケース2内に充填させた測定用コンクリートAの硬化に伴い、前記コンクリート支圧板4に与えるひずみを計測し、その計測値は計測ケーブル6を経て取り出される。
【0013】
前記コンクリート支圧板4と前記無応力ケース2の内底面2bとの間には、コンクリート支圧板4に荷重を加えるための圧力ジャッキ(油圧ジャッキを利用することが多い)7と、該圧力ジャッキ7がコンクリート支圧板4に加えた荷重を計測する荷重計9とが設置されている。
【0014】
前記圧力ジャッキ7は、コンクリート支圧板4に対して、前記無応力ケース2のケース口2aからの圧に対抗する方向の荷重を加えるもので、圧力ホース8を介して圧力源(図示せず)に繋がっている。また、前記荷重計9により得た数値は計測ケーブル10により取り出せるようになっている。
【0015】
次に、本願測定装置1の作用を説明する。本願測定装置1は、図2に示す如く、打設したコンクリートA内に設置されるから、前記無応力ケース2の内部及び外部にはコンクリートが充満する。しかして、内部のコンクリートBと外部のコンクリートAとは無応力ケース2の口部では繋がっているが、円筒部では内外皮間に介装した樹脂発泡体3を介して絶縁されている。
【0016】
次に、内部のコンクリートBに、圧力ジャッキ7によりコンクリート支圧板4に荷重を加えると、ひずみ計5の値(ひずみ量)と、荷重計9の値(荷重値)とが同時に計測されてコンクリートの弾性係数が求められる。すなわち、加えた荷重をコンクリート支圧板4の面積で除して応力が求められる(応力=荷重値/支圧板の面積)。この応力をひずみ量で除することにより弾性係数が求められる(弾性係数=応力/ひずみ量)。
【0017】
上記の方法により必要なときに、圧力ジャッキ7を通して積極的に無応力ケース2の内部のコンクリートに荷重を加え、経時的に弾性係数を求める計測を、常に、現場で実施しておけば、コンクリートの弾性係数の正確な測定が可能であり、現場の安全管理及び品質管理を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本願は、地下構造物等を構築した後、その変形状態により実際の荷重状態(内部応力状態)を推定し、コンクリート構造物としての安全性や設計評価を行うための重要な要素であるコンクリートの弾性係数を導くためのもので、産業上の利用可能性は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願測定装置の要部を示す断面図である。
【図2】本願測定装置の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 本願測定装置
2 無応力ケース
2a 無応力ケースの口部
2b 底部
3 樹脂発泡体
4 コンクリート支圧板
5 ひずみ計
6 計測ケーブル
7 圧力ジャッキ
8 圧力ホース
9 荷重計
10 計測ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの中に埋設する無応力ケース内に、ひずみ計を設置したコンクリート支圧板を設け、該支圧板とケース内定面との間に、前記支圧板に掛かるコンクリート圧に対抗する方向に荷重を加える圧力ジャッキを設け、該圧力ジャッキの荷重を測定する荷重計を設置したことを特徴とするコンクリートの弾性係数測定装置。
【請求項2】
前記圧力ジャッキが、圧力ホースを介して埋設コンクリート外に設置した圧力源に連係するとともに、前記荷重計及びひずみ計の値を計測ケーブルを介して埋設コンクリート外に取り出せるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの弾性係数測定装置。

【図1】
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【図2】
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