説明

コンクリート供試体の養生用容器およびコンクリート供試体の養生方法

【課題】ICタグを用いて養生中のコンクリート供試体の管理を行うに際し、ICタグに記録された情報を精度よく、しかも簡便に読み取ることのできるコンクリート供試体の養生用容器およびコンクリート供試体の養生方法を提供することを主な目的とする。
【解決手段】 複数のコンクリート供試体を収容しうる容器本体と、該容器本体の上部に、中心軸を鉛直方向に向けて配置され、前記コンクリート供試体が内挿可能であり、中心軸に沿って移動可能に設けられる複数の円筒体とを備えたコンクリート供試体養生用容器による。また、容器本体又は各円筒体に、容器の識別情報である容器情報が記録されたICタグが設置されたコンクリート供試体養生用容器による。該容器を用いることで、養生中のコンクリート供試体のICタグに記録された供試体情報を精度よく、しかも簡便に読み取ることが可能となり、また、コンクリート供試体の管理が、より一層簡便なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート供試体の養生用容器およびコンクリート供試体の養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生コンクリート工場から出荷されるコンクリートや、現場にて打設されるコンクリートは、その品質を確認するために、所定の出荷の間隔、あるいは打設の間隔で、強度確認用の試験体を作成し、載荷試験が行なわれている。この載荷試験に供される試験体(本発明において、供試体という)は、JIS規格に示された方法により作成されるものであり、所定の型枠に打設し、脱型した後、所定の材齢になるまで水中養生槽で養生した後、載荷試験が実施される。
脱型の際には、供試体を作成したコンクリートの配合、採取した日付、どの現場に打設されたか等の各種情報を、該供試体の上面や下面、或いは側面に記載しておき、他の供試体と混同しないようにして管理されている。
【0003】
最近では、ICタグを用いて供試体を管理する方法も検討されている(下記特許文献1および2参照)。具体的には、上述のような情報や、更に詳しい情報(以下、供試体情報という)をICタグに記録したり、或いは、管理用コンピューターに詳細な供試体情報を記録した上でこの供試体情報と関連させた管理番号をICタグに記録しておき、このICタグを供試体に挿入あるいは貼付することで、コンクリート供試体を管理する方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139173号公報
【特許文献2】特開2005−10128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水中養生や蒸気養生している際の供試体のICタグ情報を読み取ろうとすると、水、又は高湿度の空気の影響によってICタグ情報の読み取りが困難になる場合がある。また、これらの養生においては、養生槽に複数の供試体を入れて養生を行うことが一般的であるため、複数のICタグが共存する状態となっており、読み取りの際に隣接する他のICタグの情報を誤って読み取ってしまい、供試体の識別が煩雑になる場合がある。
【0006】
従って、ICタグを用いた供試体の識別、記録、管理を行う場合であっても、養生槽から一つ一つ供試体を取り出し、個別にICタグの情報を読み取らなければならず、作業性の問題については未だ十分に解決されていない、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ICタグを用いて養生中のコンクリート供試体の管理を行うに際し、ICタグに記録された情報を精度よく、しかも簡便に読み取ることのできるコンクリート供試体の養生用容器およびコンクリート供試体の養生方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリート供試体養生用容器は、複数のコンクリート供試体を収容しうる容器本体と、該容器本体の上部に、中心軸を鉛直方向に向けて配置され、前記コンクリート供試体が内挿可能であり、中心軸に沿って移動可能に設けられる複数の円筒体とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るコンクリート供試体養生用容器は、好ましくは、前記容器本体又は前記各円筒体に、容器の識別情報である容器情報が記録されたICタグが設置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るコンクリート供試体の養生方法は、容器本体内に収容された複数のコンクリート供試体を養生するコンクリート供試体の養生方法であって、該容器本体の上部に、中心軸を鉛直方向に向けて配置され、前記コンクリート供試体が内挿可能であり、中心軸に沿って移動可能である複数の円筒体を備えておき、ICタグが設置されたコンクリート供試体のICタグ設置領域と、該円筒体の少なくとも一部とが重なるように、該円筒体をコンクリート供試体に被せた状態とし、該コンクリート供試体の上方から前記円筒体の内部を通して読取装置を用いてICタグに記録された供試体情報を読み取ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るコンクリート供試体の養生方法は、好ましくは、前記容器本体又は前記各円筒体に、容器の識別情報である容器情報が記録されたICタグを設置しておき、前記供試体情報を読み取るとともに、該容器情報を読み取り、該供試体情報と容器情報とを関連付けて記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート供試体養生用容器、およびコンクリート供試体の養生方法によれば、容器本体内に収容された養生中のコンクリート供試体のICタグ設置領域と、円筒体の少なくとも一部とが重なるようにしてICタグに記録された供試体情報の読み取りを行うことにより、隣接する供試体のICタグの影響を受けることなく、読み取りが可能となる。
【0013】
また、中心軸に沿って移動可能な円筒体を下方へと移動させると、コンクリート供試体を水中に設置する際や保管中には該円筒体をガイドとして機能させることができる。
【0014】
さらに、容器に設置されたICタグの容器情報と、前記コンクリート供試体に設置されたICタグの供試体情報とを関連付けて記録することにより、養生中のコンクリート供試体の管理が、より一層簡便なものとなる。
【0015】
以上のように、本発明によれば、ICタグを用いて養生中のコンクリート供試体の管理を行うに際し、ICタグに記録された供試体情報を精度よく、しかも簡便に読み取ることが可能となる。また、コンクリート供試体の管理が、より一層簡便なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るコンクリート供試体の養生用容器の一実施形態を示した斜視図図。
【図2】本発明に係るコンクリート供試体の養生用容器の一実施形態を示した断面図図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態のコンクリート供試体の養生用容器1は、平面視矩形状の容器本体2と、該容器本体の上部に設けられた複数の円筒体3、3・・・とを備えてなる。
【0018】
円筒体3は、その中心軸を鉛直方向に向けて配置され、コンクリート供試体が内挿可能な内径を有するように構成されている。JISに規定されたコンクリート供試体は、直径100mm、高さ200mmの円柱体であるため、該円筒体3の内径は、10cmよりも大きくなるように設定され、好ましくは10.5cm以上12cm以下の範囲に設定される。
【0019】
なお、コンクリート供試体としてJIS規格以外のものを用いる場合には、その供試体の直径に応じて円筒体の内径を設定することができ、好ましくは供試体の直径よりも5mm〜20mm大きい内径とされる。
【0020】
また、該円筒体3は、円筒体3の中心軸3aに沿って前記容器本体2に対して移動可能に設けられている。言い換えると、円筒体3および容器本体2には、鉛直方向に向けられた円筒体3の中心軸3aに沿って、円筒体3が容器本体2に対して移動可能となるような固定位置調節可能な固定手段が備えられている。
【0021】
本実施形態においては、該円筒体3の周囲には、円周方向に180°間隔で2箇所、すなわち、周方向において対向する位置に、中心軸と平行な2本のスリット4、4が形成されており、円筒体3の下端にスリットの開口4aを有するように構成されている。さらに、該スリット4には、円筒体3の中心軸3a方向の複数箇所において枝分かれした分岐スリット4aが形成されている。
【0022】
該円筒体3は、ICタグ(図示せず)の読み取りの際の電波を伝え易いという観点から、金属製のものが好適に使用される。
【0023】
一方、容器本体2は、短辺が前記円筒体を挿入可能な長さであり、長辺が前記円筒体を複数個挿入しうる長さとなるように構成され、例えば、本実施形態では、6本の円筒体3を並べて収容しうる長さに設定されている。
【0024】
該容器本体2の上面は、蓋のない開口部となっており、該開口部の内側面には、複数個(本実施形態では6対)の突起5、5・・・が、長辺に沿って対向するように設けられている。
【0025】
つまり、本実施形態においては、固定位置調節可能な固定手段として、円筒体3には上記のような一対のスリット4、4が形成され、容器本体2には、一対の突起5、5が備えられている。
【0026】
該コンクリート供試体の養生用容器1を使用する際には、該容器本体2に設けられた突起5,5を前記円筒体3に形成されたスリット4、4に通すようにして、円筒体3が容器本体2に設置される。
また、該容器本体2内には、養生水として、飽和水酸化カルシウム水溶液が充填される。
【0027】
斯かる構成の養生用容器1によれば、円筒体3の下端に開口4aを有する一対のスリット4、4が形成され、容器本体2に該スリット4、4に対応する位置に一対の突起5、5が形成されたことにより、該円筒体3は、容器本体2に対して着脱自在となるように構成されている。また、該スリット4,4には、円筒体3の中心軸3a方向の複数箇所において枝分かれした分岐スリット4a、4a・・・が形成されているため、前記突起を、該分岐スリット側へ通すように該円筒体3を回転させながら挿入することで、該円筒体3を所定の高さに設置することができる。
【0028】
次に、上記構成の養生用容器1を用いたコンクリート供試体の養生方法の一実施形態について説明する。
先ず、所定の方法でコンクリートを型枠内に打設するとともに、該コンクリートの内部に、任意の方法でICタグ(図示せず)が埋め込まれる。ICタグの設置場所、設置角度、設置方法等は特に限定される訳ではなく、供試体の任意の場所に任意の角度で設置することができる。ただし、現在一般的に使用されている平板状のICタグを用いる場合、該ICタグの平板面に対して垂直な方向から読取り用の電波を照射するのが最も感度が高いため、このようなICタグを、供試体の上面近傍に、該上面と水平に取り付けることが好ましい。
【0029】
次いで、ICタグが設置されたコンクリート供試体10を型枠から脱型し、前記養生用容器1内で水中養生を行う。供試体10を養生用容器1に挿入する際には、前記円筒体3の上方開口部から供試体10を挿入するようにして行うことができる。円筒体3に案内された供試体10は他の供試体10と接触することなく、しかも円筒体3の設置された所定の間隔に従って容器本体2内に載置される。
【0030】
養生中にコンクリート供試体10に付されたICタグ(図示せず)の情報を読み取る際には、円筒体3の上部が水面よりも上方に位置するように持ち上げ、該円筒体3の内部に読取装置を挿入するか、又は該円筒体3の上方開口部に読取装置を近接させた状態とし、該供試体10の上方から円筒体3の内部を通して読取り用の電波を照射するとともに反射される電波を受信し、読み取りを実施する。
この場合、コンクリート供試体10のICタグ設置領域が円筒体3によって覆われていることが好ましく、具体的には、ICタグ設置領域が覆われるように、高さ方向に1cm以上の範囲でコンクリート供試体10の上部を前記円筒体3によって覆われた状態として、読み取りを実施することがより好ましい。
【0031】
このように、円筒体3によって供試体10の上部を覆う状態としてICタグからの情報読み取りを実施することにより、隣接する供試体のICタグの影響を受けることなく、読み取り対象である供試体のみから正確に情報を読み取ることが可能となる。
【0032】
さらに、上述のような容器本体10、又は各円筒体3に、容器情報を記録したICタグを設置することも可能である。
容器本体10にICタグを設置する場合には、該容器本体10の上部に設置することが好ましい。容器本体10にICタグが設置された養生用容器を用いてコンクリート供試体の養生を行う方法としては、例えば、全ての供試体のICタグに記録された供試体情報を読み取った後、容器本体のICタグに記録された容器情報を読み取り、これらを関連付けて記録、保存しておくことにより、それ以降、容器本体のICタグを読み取るだけで、内部に収容された供試体のICタグを読み取ることなく、それらの供試体情報を得るようにすることができる。
【0033】
また、各円筒体3にICタグを設置する場合には、該各円筒体3の上部に設置することが好ましい。各円筒体3にICタグが設置された養生用容器を用いてコンクリート供試体の養生を行う方法としては、例えば、各供試体のICタグに記録された供試体情報を読み取るとともに、その供試体と対応する円筒体3に設置されたICタグに記録された容器情報を読み取り、両者を関連付けて記録、保存しておくことにより、それ以降、円筒体のICタグを読み取るだけで、内部に収容された供試体のICタグを読み取ることなく、その供試体情報を得るようにすることができる。
【0034】
本発明に係るコンクリート供試体養生用容器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0035】
例えば、本実施形態においては、円筒体3が容器本体2に対して移動可能となるような固定位置調節可能な固定手段として、円筒体3に形成されたスリット4と、容器本体2に備えられた突起5とを採用した場合について説明したが、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、従来公知の種々の構成を採用することができる。
【0036】
また、容器本体の上面は、円筒体が設置される部分を除き、上記実施形態のように開口状態としてもよく、また、蓋を設けても良い。
【符号の説明】
【0037】
1…コンクリート供試体養生用容器
2…容器本体
3…蓋体
4…スリット
5…突起
10…コンクリート供試体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンクリート供試体を収容しうる容器本体と、
該容器本体の上部に、中心軸を鉛直方向に向けて配置され、前記コンクリート供試体が内挿可能であり、中心軸に沿って移動可能に設けられる複数の円筒体とを備えていることを特徴とするコンクリート供試体の養生用容器。
【請求項2】
前記容器本体又は前記各円筒体に、容器の識別情報である容器情報が記録されたICタグが設置されていることを特徴とする請求項1記載の養生用容器。
【請求項3】
容器本体内に収容された複数のコンクリート供試体を養生するコンクリート供試体の養生方法であって、
該容器本体の上部に、中心軸を鉛直方向に向けて配置され、前記コンクリート供試体が内挿可能であり、中心軸に沿って移動可能である複数の円筒体を備えておき、
ICタグが設置されたコンクリート供試体のICタグ設置領域と、該円筒体の少なくとも一部とが重なるように、該円筒体をコンクリート供試体に被せた状態とし、
該コンクリート供試体の上方から前記円筒体の内部を通して読取装置を用いてICタグに記録された供試体情報を読み取ることを特徴とするコンクリート供試体の養生方法。
【請求項4】
前記容器本体又は前記各円筒体に、容器の識別情報である容器情報が記録されたICタグを設置しておき、
前記供試体情報を読み取るとともに、該容器情報を読み取り、該供試体情報と容器情報とを関連付けて記録することを特徴とする請求項3記載のコンクリート供試体の養生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−75423(P2011−75423A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227632(P2009−227632)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】