説明

コンクリート壁体構造及びコンクリート壁の施工方法

【課題】コンクリートを打設した後にその表面に化粧材を配設する必要がなく、そのために施工場所(周辺環境)を制限することがないコンクリート壁体構造及びコンクリート壁の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明のコンクリート壁体構造は、コンクリート打設空間3の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材1Aの少なくとも一方の全面に金属面材1Bを配してなる断熱パネル1を用いるコンクリート壁体構造であって、前記断熱パネル1は、少なくとも対向する一対の端縁には、隣接する断熱パネル1,1同士が係合又は嵌合又は重層可能な成形部11,12を備え、前記金属面材1Bの端部111,121が前記成形部11,12にまで延設され、隣接する断熱パネル1,1同士を組み合わせた状態で複数の端部111,111,121,121が鉛直方向に重なり合い、この複数の重なり合う端部を固定具2にて固着することで一体化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設圧力に抗する強度を備える断熱パネルを配するものであって、コンクリートを打設した後にその表面に化粧材を配設する必要がなく、そのために施工場所(周辺環境)を制限することがないコンクリート壁体構造及びコンクリート壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物内の省エネルギー化の一手段としてコンクリート壁面に断熱施工を施すことが広く行われており、断熱施工における断熱板として、断熱性、吸湿性の面から発泡ポリスチレンのような合成樹脂発泡体が広く採用されている。
近年では、施工を簡略化するために、コンクリート壁の施工に際し、例えば特許文献1に記載されるような合成樹脂発泡体である断熱板の一方の面に、合板のような面材や桟木を取り付けた型枠兼用断熱パネルが用いられるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3441434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載されるような従来の型枠兼用断熱パネルでは、コンクリートの打設圧力に対して十分な強度を保有しておらず、特に広い面積を備える壁体施工に際しては、巨大な打設圧力が作用するので、部分的に変形したり破断することもあった。
また、コンクリートの打設が可能であったとしても、前記特許文献1の型枠兼用断熱パネルでは、断熱板の一方の面に、合板のような面材や桟木を取り付けているため、その表面に外装材や内装材などの化粧材を取り付ける必要があった。
【0005】
一方、建築物の断熱性能を高めるために、断熱材をコンクリートの外側に配置する方法(外断熱工法)が採られているが、このような場合、外側に化粧材を配設しないと合板や桟木が露出し、建築物の意匠性を損なうことになっていた。
また、施工場所の周りに他の建物が近接している場合、足場などを組むスペースが確保できないため、コンクリート打設後に化粧材(外装材)を敷設することは極めて困難で施工性が悪いものであった。
【0006】
そこで、本発明は、前記課題を生ずることがなく、コンクリートの打設圧力に抗する強度を備える断熱パネルを配するものであって、コンクリートを打設した後に化粧材を配設する必要がなく、そのために施工場所(周辺環境)を制限することがないコンクリート壁体構造及びコンクリート壁の施工方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、コンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に金属面材を配してなる断熱パネルを用いたコンクリート壁体構造であって、前記断熱パネルは、少なくとも対向する一対の端縁に、隣接する断熱パネル同士が係合又は嵌合又は重層可能な成形部を備え、前記金属面材の端部が前記成形部にまで延設され、隣接する断熱パネル同士を組み合わせた状態で複数の端部が鉛直方向に重なり合い、この複数の重なり合う端部を固定具にて固着することで一体化してなることを特徴とするコンクリート壁体構造に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記コンクリート壁体構造において、断熱パネルは、合成樹脂発泡面材の両面に金属面材を配してなることを特徴とするコンクリート壁体構造をも提案する。
【0009】
また、本発明は、コンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に金属面材を配してなる断熱パネルを用いるコンクリート壁の施工方法であって、隣接する断熱パネル同士の少なくとも対向する一対の端縁の成形部を係合又は嵌合又は重層させる工程と、複数の鉛直方向に重なり合う前記金属面材の端部を固定具にて固着して一体化する工程と、を含むことを特徴とするコンクリート壁の施工方法をも提案するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート壁体構造は、合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に金属面材を配してなる断熱パネルを、少なくとも一方の型枠として用いているので、コンクリートの打設圧力に抗する強度を備え、広い面積を備える壁体にも適用することができる。
また、断熱パネルの表面側(非打設側)に金属面材を配設する場合には、化粧材を兼ねる金属面材を用いればよいので、表面に別途化粧材を配設する必要がなく、足場等を不要とすることができる。また、別途化粧材を配設する場合にも、金属面材の表面に化粧材を取り付けるので、固定箇所を選ばず取り付けることができる。
さらに、型枠として高強度が必要な場合には、補強材を、断熱パネルを固定したボルト先端に固定具を介して取り付ければよいし、それ以外であれば表面の金属面材に直接固定することもできる。
また、断熱パネルの内側(打設側)に金属面材を配設する場合には、型枠としての補強を容易に行うことができ、しかも補強材が内側に配されるために外観に影響を与えることがなく、さらに補強材を取り外す必要がないため、施工を容易に行うことができる。
【0011】
また、断熱パネルは、合成樹脂発泡面材の両面に金属面材を配してなる場合、足場等を組めない敷地(施工場所)においても外壁の施工(工事)を行うことができ、断熱パネルをそのまま外装化粧として使用することができる。また、内側から施工が行えるので、前記の施工場所には特に有効である。
【0012】
また、本発明のコンクリート壁の施工方法は、金属面材が化粧材を兼ねるようにすることにより、表面に別途化粧材を配設する必要がないし、足場等を必要としない。また、別途化粧材を配設する場合にも、補強材を配設する場合にも、固定箇所を選ばず金属面材に化粧材や補強材を取り付けることができる。
また、断熱パネルの内側(打設側)に金属面材を配設して補強材を容易に取り付けることもでき、取り外す必要がないため、補強が容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明に用いられる断熱パネル(第1実施例)を左右方向に隣接させて固定して型枠として用いるコンクリート打設空間を示す拡大断面図、(b)前記断熱パネルに間隔保持部材を取り付けた状態(他方の型枠を欠載した状態)を示す拡大斜視図である。
【図2】(a)第1実施例の断熱パネル及びその連結構造を示す断面図、(b)第2実施例の断熱パネル及びその連結構造を示す断面図、(c)第3実施例の断熱パネル及びその連結構造を示す断面図、(d)第4実施例の断熱パネル及びその連結構造を示す断面図である。
【図3】(a)長尺な断熱パネル(第1実施例)を縦に用いて左右方向に隣接させて型枠として用いる状態を示す斜視図、(b)他方の型枠として更に型枠パネルを配設した状態を示す斜視図である。
【図4】(a)長尺な断熱パネル(第1実施例)を横に用いて上下方向に隣接させて型枠として用いる状態を示す斜視図、(b)他方の型枠として更に型枠パネルを配設した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のコンクリート壁体構造は、コンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に金属面材を配してなる断熱パネルを用いたものであって、隣接する断熱パネル同士の少なくとも対向する一対の端縁の成形部を係合又は嵌合又は重層させた状態で、複数の鉛直方向に重なり合う前記金属面材の端部を固定具にて固着して一体化するものである。
【0015】
前記断熱パネルは、断熱効果が高く汎用の断熱材として用いられる合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に、金属製の板材を加工した金属面材を備え、少なくとも対向する一対の端縁には、係合又は嵌合又は重層可能な成形部を備える構成である。
この断熱パネルは、前述のように金属面材を表裏の何れか一方に配していればよく、例えば表裏に金属面材を配した構成でもよいし、金属面材を配さない側には、金属箔、非金属のシート、膜材などを配するようにしてもよい。
なお、コンクリートを打設しない側を以後の説明においては「表面側(非打設側)」と表記し、コンクリートを打設する側を「内側(打設側)」と表記する。
そして、この断熱パネルは、後述する図3のように縦に用いて左右方向に隣接させて用いても、後述する図4に示すように横に用いて上下方向に隣接させて用いてもよい。
【0016】
前記成形部は、前述のように係合又は嵌合又は重層により隣接する断熱パネル同士を組み合わせる(連結する)ことが可能であって、複数の端部が鉛直方向に重なり合うものであれば、その具体的な構成は限定するものではなく、凹凸状であっても、階段状であってもよく、また一方から金属面材のみが延出するものでもよい。
また、前記金属面材は、平坦状でも、表面側又は内側を凹凸状としたものであってもよく、その場合、表面側の意匠性を向上させ、またパネルとしての強度も向上する。
【0017】
金属面材を表面側(非打設側)に配設する場合には、化粧材を兼ねる金属面材を用いればよいので、表面側に別途化粧材を配設する必要がなく、その配設のための足場等を不要とできる。また、別途化粧材を配設する場合にも、金属面材の表面に化粧材を取り付けるため、固定箇所を選ばずビス止め等にて容易に取り付けることができる。
【0018】
金属面材を内側(打設側)に配設する場合には、型枠としての補強を容易に行うことができ、しかも補強材が内側に配されるために外観に影響を与えることがなく、さらに補強材を取り外す必要がないため、施工を容易に行うことができる。
【0019】
このような構成を有する型枠パネルは、特にその材質を特定するものではなく、その合成樹脂発泡面材についても、その金属面材についても、特にその素材を限定するものではなく、既に断熱壁パネルとして市場に供されている製品を用いてもよい。
【0020】
本発明のコンクリート壁体構造は、このような構成を有する断熱パネルを用いたものであって、隣接する断熱パネル同士の少なくとも対向する一対の端縁の成形部を組み合わせた状態で、複数の鉛直方向に重なり合う前記金属面材の端部を固定具にて固着して一体化する。
「複数の鉛直方向に重なり合う前記金属面材の端部」とは、隣接する断熱パネルの、それぞれの金属面材の端部が鉛直方向に重なり合っている状態を指すものであり、それぞれの端部が鉛直方向に二層以上に重なり合っていればよく、何れか一方又は両方の端部が折り返し状に形成されて三層以上に重なり合っていてもよく、ビス等の固定具を金属面材の任意の箇所に容易に固着して一体化することができる。
【0021】
前記断熱パネルは、少なくとも対向する一対の端縁の成形部を係合又は嵌合又は重層させることにより組み合わせることができ、隣接する断熱パネルを連結するだけでは、コンクリートの打設圧力に耐え得る強度を有しないが、前述のように金属面材の鉛直方向に重なり合う端部に固定具を固着して一体化させることにより、コンクリートの打設圧力にも耐え得る強度を有するものとなる。
【0022】
また、必要に応じて補強用の面状材料や棒状材料を前記断熱パネルの金属面材に取り付けるようにしてもよく、このような補強材は、金属面材を外観に影響を与えることがない内側(打設側)に配設する場合に好適であり、金属面材に直接ビス等にて固定することもできる。金属面材を表面側(非打設側)に配設する場合には、打設後に補強材を取り外すことを想定して断熱パネルを固定したボルト先端に固定具を介して取り付けるようにしてもよいし、その外側に外装材等を敷設するのであれば、補強材を取り外さなくてもよい。
なお、隣接する断熱パネル間にはコンクリートの漏出の防止を目的としてシール材を介在させてもよいし、またその配設箇所も、後述する図示実施例のように突き合わせ端部間に限定されるものではなく、配設しなくてもよい。
【0023】
本発明のコンクリート壁体構造は、前記構成の断熱パネルを用いて型枠として用いる以外の構成については、通常のコンクリート壁の施工と全く同様の構成とすることができ、コンクリート打設空間には、その空間(間隔)を保持するためのセパレータと称される棒状の間隔保持部材を適宜に用いればよいし、該間隔保持部材を取り付けるための通孔を予め前記断熱パネルに形成しておけばよい。
この間隔保持部材としては、特に何等限定するものではないが、後述する図示実施例にて用いた間隔保持部材のように、コンクリート打設空間内で分離可能であって、螺合手段で接続される複数の間隔保持部材にて構成され、一方側に配される第1部材は、少なくとも棒状部材を備え、一方側の端部が前記断熱パネルに保持され、他方側に配される第2部材は、コンクリート打設空間内に位置する部分が筒状部材で包囲され、コンクリート打設後に抜き取り可能であることが望ましい。
また、他方の型枠としても後述する図示実施例に用いたような型枠パネルを用いてもよいし、合板等の型枠であってもよい。
【0024】
また、本発明は、コンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に金属面材を配してなる断熱パネルを用いるコンクリート壁の施工方法をも提案するものであり、隣接する断熱パネル同士の端縁の成形部を係合又は嵌合又は重層させる工程と、複数の鉛直方向に重なり合う前記金属面材の端部を固定具にて固着して一体化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0025】
前記施工方法における隣接する断熱パネル同士の少なくとも対向する一対の端縁の成形部を係合又は嵌合又は重層させる工程は、通常の断熱壁パネルの施工と同様であるから、端部同士を突き合わせて係合又は嵌合又は重層させればよく、容易に実施することができる。
【0026】
前記施工方法における複数の鉛直方向に重なり合う前記金属面材の端部を固定具にて固着して一体化する工程は、前述のようにビス等の固定具を前記金属面材の端部に固着すればよいので、容易に実施することができる。
【実施例1】
【0027】
本発明のコンクリート壁体構造は、図1(a),(b)に示すようにコンクリート打設空間3の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材1Aの少なくとも一方の全面に金属面材1Bを配してなる断熱パネル1を用いたものである。
【0028】
本発明に用いられる断熱パネル1は、少なくとも対向する一対の端縁に、隣接する断熱パネル1,1同士が係合又は嵌合又は重層可能な成形部11,12を備え、前記金属面材1Bの端部111が前記成形部11,12にまで延設され、隣接する断熱パネル1,1同士を組み合わせた状態で金属面材1B,1Bの複数の端部111,121が鉛直方向に重なり合い、この複数の重なり合う端部111,121を固定具2にて固着することで一体化してなる構成である。
【0029】
図示実施例の断熱パネル1は、図1(a),(b)ではハッチングで示す硬質ポリウレタンフォームである合成樹脂発泡面材1Aの表面側(非打設側)および内側(打設側)のそれぞれに厚さ0.5mmの鋼板である金属面材1B,1Bが一体的に配された構成の長尺な市販品であり、図3に示すように長尺な断熱パネル1を縦に用いて左右方向に隣接させて型枠として用いたものであり、成形部11,12が形成される対向する一対の端縁とは左右の端縁を示し、残る上下の端縁は連結することを想定していないため、合成樹脂発泡体1Aの端縁に沿う形状としたが、上下方向に連結する場合には、前記成形部と同様に係合又は嵌合又は重層可能に形成してもよいし、ジョイント部材を用いたり、重合させてのビス止め等を採用してもよい。
【0030】
この断熱パネル1の左右の成形部11,12は、凹凸状で嵌合可能な構成であり、その間にはシール材(パッキン)13が介在して配されている。凸状の成形部11における金属面材1B,1Bの端部111,111も、凹状の成形部12における金属面材1B,1Bの端部121,121もそれぞれ内側へ折り返し状に形成され、それぞれ単独で端部111,121が鉛直方向に二層に重なっている。隣り合う断熱パネル1,1の成形部11,12を嵌合状に組み合わせた状態では、隣り合う断熱パネル1,1の内側(打設側)の金属面材1B,1Bの端部111,111,121,121が四層に重なり、これらを貫通するように固定具2を内側から固着している。
なお、厳密には、図示実施例の固定具2の先端は、表面側(非打設側)の金属面材1Bの端部111に到達しているので、固定具2は、合計六層の端部111,111,121,121,111,111を貫通している。
【0031】
前記金属面材1Bは、面板部10の一方の端縁(成形部11側)に、内側に段状に折り曲げられて更に長さ方向へ延在させた先端が内側に折り返された形状の端部111が形成されている。面板部10の他方の端縁(成形部12側)に形成される端部121は、面板部10を内面側に折り返し、更に内側へ段状に折り曲げられて更に面板部10へ延在させている。
そのため、この金属面材1B,1B同士の接続構造は、端部121の内側に端部111が位置する重合状となっている。
【0032】
図示実施例のコンクリート打設空間3を前記断熱パネル1と共に形成する他方の型枠としては、面板41の片面に長さ方向に沿う左右端に側板42,42、該側板42,42間には一つ以上(図では2つ)の起立板43を備え、前記側板42,42には長さ方向に一定間隔の挿通孔422を備え、前記側板42及び前記起立板43は、その先端に内側へ突出する顎部421,431を有する構成の型枠パネル4を用いた。
この他方の型枠としては、特に限定するものではなく合板、鋼板、又はプレキャストコンクリート板、或いはそれらの複合製品等の型枠であってもよいが、前記型枠パネル4はFRP等の合成樹脂の成形品を用いた。
そして、この型枠パネル4,4を並列状に連結するには、側板42と側板42とを重ね合わせ、各挿通孔422,422を連通させた状態で、図示しないがこの挿通孔422に挿入可能な突状部と、前記側板42,42の顎部421,421を挟持する一対の挟持部とを備える保持具を用いて連結してもよい。
【0033】
また、図示実施例のコンクリート打設空間3には、間隔保持部材を配する。
この間隔保持部材としては、一方の型枠として用いた断熱パネル1と他方の型枠として用いた型枠パネル4の間に所定の間隔を保持する部材であって、コンクリートの打設時においては、ボルト、特殊ボルト、ナット、高ナット等の中から適宜に選択された各種の棒状部材を直列状に連結して打設圧力に耐え得る強度を有するものであるが、コンクリートの打設後に埋設状に残存してしまうと、熱橋となり、また部材数が多数必要となるというコストの面でも問題がある、そのため、コンクリートの打設後には、それらの一部を容易に取り外すことができ、一方側又は他方側から抜き出して冷熱橋を防止すると共に、繰り返して利用できる構成のものを用いることが望ましい。
そのため、コンクリート打設空間3内で分離可能であって、螺合手段で接続される複数の部材5,6にて構成され、一方側に配される第1部材5は、少なくとも棒状部材5aを備え、一方側の端部が前記断熱パネル1に保持され、他方側に配される第2部材6は、コンクリート打設空間3内に位置する芯状部分6bが筒状部材6aで包囲され、コンクリート打設後に芯状部分6bを抜き取り可能とした構成の間隔保持部材を配した。
なお、図中、5bは表面側の型枠である断熱パネル1から突出するボルト材、5cはボルト材5bに留め付けられたナット、6bは型枠パネル4の外側に配されたフォームタイである。
【0034】
本発明における断熱パネル1、及びその固定方法は、前記実施例に限定するものではなく、例えば図2に示す各例のように実施してもよい。
図2(a)に示す断熱パネル1及びその固定構造は、前記図1と全く同様であり、表面側にも内面側にも同じ金属面材1B,1Bを配設した例であり、凸状の成形部11と凹状の成形部12とを嵌合した状態で固定具2を固着した。表面側にて隣接する金属面材1B,1B同士も、内面側にて隣接する金属面材1B,1B同士も、前述のようにそれぞれに端部121の内側(合成樹脂面材1A側)に端部111が位置する重合状となっている。
これに対し、図2(b)〜(d)は何れも表面側に配した金属面材1Bx〜1Bzと内面側に配した金属面材1Bx'〜1Bz'が異なる例である。
【0035】
図2(b)に示す断熱パネル1x及びその固定構造は、表面側に前記図2(a)の金属面材1Bと全く同様の金属面材1Bxを配しているため、表面側にて隣接する金属面材1Bx,1Bx同士は、端部121xの内側に端部111xが位置する重合状となっているが、内面側に配された金属面材1Bx'は、何れの端部111x',121x'も内側に段状に折り曲げられて面板部10側へ折り返されているため、内面側にて隣接する金属面材1Bx',1Bx'同士は、端部111x',121x'が重合することなく突き合わされた状態となっている。
表面側から固定する固定具2は、金属面材1Bx,1Bxの端部111x,121xに固定するが、前記のように内面側の金属面材1Bx'の端部111x',121x'は重合していないので、合計五層の端部を貫通している。
【0036】
図2(c)に示す断熱パネル1y及びその固定構造は、内面側に前記図2(a)の金属面材1Bと全く同様の金属面材1By'を配しているが、成形部11y側の端部111y'は前記端部121とほぼ同様であり、成形部12y側の端部121y'は前記端部111とほぼ同様である。表面側の金属面材1Byの成形部11y側の端部111yは、内側に折り曲げられた段部112yが形成された以外は、前記図2(a)の金属面材1Bの前記端部121とほぼ同様であり、成形部12y側の端部121yは、長さ方向に延在して折り返された突出片122yが形成された以外は、前記端部111とほぼ同様である。
表面側から固定する固定具2は、金属面材1By,1Byの端部111y,121yに固定するが、前記のように突出片122yを貫通して取り付けられ、この図示実施例では合計五層の端部を貫通するように固定具2を固着したが、合計九層の端部に固着するようにしてもよい。
【0037】
図2(d)に示す断熱パネル1z及びその固定構造は、内面側に前記図2(a)の金属面材1Bと全く同様の金属面材1Bz'を配している。表面側の金属面材1Bzの成形部11z側の端部111zは、内側に段状に折り曲げられた形状であり、成形部12z側の端部121zは、長さ方向に延在して折り返された突出状に形成されている。
表面側から固定する固定具2は、金属面材1Bz,1Bzの端部111z,121zに固定するが、合計三層の端部を貫通するように固定具2を固着した。
【0038】
図3には、前述のように前記構成を備える長尺な断熱パネル1を縦に用いて左右方向に隣接させて一方側の型枠としたものであり、図3(a)には予め前記構成の間隔保持部材5,6の一方側の端部を保持させた隣接する断熱パネル1,1を固定具2にて固定した状態を示し、図3(b)には更にコンクリート打設空間3を構成する他方側の型枠として、前記構成の縦長の型枠パネル4を横方向に隣接させて取り付け、更に複数の横バタ7を複数の型枠パネル4に跨るように固定した状態を示すものである。
【0039】
図4には、前記構成を備える長尺な断熱パネル1を横に用いて上下方向に隣接させて一方側の型枠としたものであり、それ以外の構成は、前記図3と全く同様であって、図4(a)には予め前記構成の間隔保持部材5,6の一方側の端部を保持させた隣接する断熱パネル1,1を固定具2にて固定した状態を示し、図4(b)には更にコンクリート打設空間3を構成する他方側の型枠として、前記構成の縦長の型枠パネル4を横方向に隣接させて取り付け、更に複数の横バタ7を複数の型枠パネル4に跨るように固定した状態を示すものである。
【符号の説明】
【0040】
1 断熱パネル
1A 合成樹脂発泡面材
1B 金属面材
11 成形部(凸状)
111 端部
12 成形部(凹状)
121 端部
13 シール材
2 固定具
3 コンクリート打設空間
4 型枠パネル
5 間隔保持部材の第一部材
6 間隔保持部材の第二部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に金属面材を配してなる断熱パネルを用いたコンクリート壁体構造であって、
前記断熱パネルは、少なくとも対向する一対の端縁に、隣接する断熱パネル同士が係合又は嵌合又は重層可能な成形部を備え、
前記金属面材の端部が前記成形部にまで延設され、隣接する断熱パネル同士を組み合わせた状態で複数の端部が鉛直方向に重なり合い、この複数の重なり合う端部を固定具にて固着することで一体化してなることを特徴とするコンクリート壁体構造。
【請求項2】
断熱パネルは、合成樹脂発泡面材の両面に金属面材を配してなることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート壁体構造。
【請求項3】
コンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として、合成樹脂発泡面材の少なくとも一方の全面に金属面材を配してなる断熱パネルを用いるコンクリート壁の施工方法であって、
隣接する断熱パネル同士の少なくとも対向する一対の端縁の成形部を係合又は嵌合又は重層させる工程と、
複数の鉛直方向に重なり合う前記金属面材の端部を固定具にて固着して一体化する工程と、を含むことを特徴とするコンクリート壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−99210(P2011−99210A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252934(P2009−252934)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(000253400)舩木商事有限会社 (16)
【Fターム(参考)】