説明

コンクリート柱の製造方法

【課題】容易にコンクリート柱を製造することができ、従来よりも丈夫なコンクリート柱の製造方法を提供する。
【解決手段】外筒外表面に複数の当木を配置し、外筒と当木を型シートで一括被覆する工程と、型シートで被覆した外筒を挿通孔を穿設した砂型枠内に設置する工程と、型シートと砂型枠の間に砂を充填し模様を砂に転写する工程と、型シートから当木と外筒を抜取る工程と、型シートを取除く工程と、円筒状で複数の窓と羽を交互に備え、内部に中板を備えた内筒を、砂型枠の挿通孔に設置し砂と内筒の間に筒状の鉄筋を設置する工程と、内筒の上端から内筒内にモルタルを流し窓から内筒の外側に流出させると共に内筒を回転し羽でモルタルを攪拌しつつ上部に引き上げて砂型枠上端までモルタルを充填する工程と、充填モルタルが硬化した後に砂型枠からモルタルを抜き取る工程とからなるコンクリート柱の製造方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート柱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート柱(コンクリート製柱)などのコンクリート二次製品は、金属又はプラスチック等により製造した型枠の中にコンクリートを打設し、コンクリートを硬化させることにより製造していた。
【0003】
特許文献1のように、内面に凹凸を有する内型枠を備えた型枠を用い、内型枠の表面に化粧骨材を散布する散布工程の後に、補強筋を集成した芯を設置し、型枠を回転しながら、型枠の内部に投入したコンクリートを打設する模様付き筒形門柱の製造方法という発明も公開されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、金属やプラスチックの型枠を型として使用するため、多数の型枠を製造する必要があり、そのため余計な費用や時間がかかるという問題があった。また、一度型枠を製造してしまうと、容易に形状を変更する事ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−117024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、金属やプラスチックの型枠を製造しなくても容易にコンクリート柱を製造することができ、従来よりも丈夫なコンクリート柱の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、外表面に模様があり鉄筋で補強された中空のコンクリート柱の製造方法であって、筒状の外筒の外表面に複数本の当木を配置し、前記外筒と前記当木を、外表面に模様を施し内表面に複数本の紐を備えた型シートで内表面を内側にして一括被覆する工程と、前記型シートで被覆した前記外筒を底部中央に前記外筒の外径より小さい挿通孔を穿設した砂型枠内に設置する工程と、前記型シートと砂型枠との間に設けた空間に砂を充填し、固めて前記型シートの模様を前記砂に転写する工程と、前記当木を取り除き前記型シート内から前記外筒を抜き取る工程と、前記型シートを取り除く工程と、円筒状で中腹部に複数の窓と複数の羽を交互に備え、内部の前記窓の底辺位置に内部を上下に分割する中板を備えた内筒を、前記砂型枠の挿通孔に設置した上で、模様を転写した前記砂と内筒の間に筒状の鉄筋を設置する工程と、前記内筒の上端開口部から内筒内にモルタルを流し込んで前記窓から内筒の外側に流出させるとともに前記内筒を回転し前記羽でモルタルを攪拌しながら徐々に上部に引き上げて前記砂型枠の上端までモルタルを充填する工程と、充填したモルタルが硬化した後に砂型枠からモルタルを抜き取る工程とからなることを特徴とするコンクリート柱の製造方法の構成とした。
【0008】
また、外表面に模様があり鉄筋で補強された有底中空のコンクリート柱の製造方法であって、筒状の外筒の外表面に複数本の当木を配置し、前記外筒と前記当木を、外表面に模様を施し内表面に複数本の紐を備えた型シートで内表面を内側にして一括被覆する工程と、前記型シートで被覆した前記外筒を有底の砂型枠内に設置する工程と、前記外筒の外周面と前記型シートと砂型枠との間に設けた空間に砂を充填し、固めて前記型シートの模様を前記砂に転写する工程と、前記当木を取り除き前記型シート内から前記外筒を抜き取る工程と、前記型シートを取り除く工程と、前記砂型枠の底上に底砂を敷き詰めた上で内部中央に円柱状の内型を設置し、円筒状で中腹部に複数の窓と複数の羽を交互に備え、内筒を、模様を転写した前記砂と内型の間に配置した上で、模様を転写した前記砂と前記内筒の間に筒状の鉄筋を設置する工程と、前記内筒の上端開口部から内筒内にモルタルの一部を流し込んで前記窓から内筒の外側に流出させて前記モルタルが硬化する前に前記内型を前記有底の厚さ分引き上げて内型の底部にモルタルを流入させる工程と、前記内筒の上端開口部から内筒内にモルタルの残りを流し込んで前記窓から内筒の外側に流出させるとともに前記内筒を回転し前記羽と内羽でモルタルを攪拌しながら徐々に上部に引き上げて前記砂型枠の上端までモルタルを充填する工程と、充填したモルタルが硬化した後に砂型枠からモルタルを抜き取る工程とからなることを特徴とするコンクリート柱の製造方法の構成とした。
【0009】
また、前記羽の位置の前記内筒内に、前記羽と同形の内羽を設けたことを特徴とするコンクリート柱の製造方法の構成とした。
【0010】
また、前記羽を、内筒の長手方向に対して斜めに、前記窓と窓に間に固定したことを特徴とするコンクリート柱の製造方法の構成とした。
【0011】
更に、前記型シートを取り除く工程を、前記型シートの内側に前記紐を係止する係止部を備えた引き抜き具を挿入し、前記係止部に前記紐を係止し、前記引き抜き具を引き抜くことで、前記型シートを取り除く工程としたことをことを特徴とするコンクリート柱の製造方法の構成とした。
【0012】
加えて、前記模様が、木肌を模した擬木であることを特徴とするコンクリート柱の製造方法の構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のような構成であるため、形状や模様が複雑なコンクリート柱であっても容易に製造することができる。
【0014】
また、砂で型枠を作るため、従来よりもコストと時間をかけることなく、デザイン変更に対応することができる。
【0015】
また、内部に鉄筋を備えているため従来よりも丈夫なコンクリート柱を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明であるコンクリート柱の製造方法で使用する部材を示した図である。
【図2】本発明であるコンクリート柱の第一製造工程を示す斜視図である。
【図3】本発明であるコンクリート柱の第二製造工程を示す斜視図である。
【図4】本発明であるコンクリート柱の第三製造工程を示す斜視図である。
【図5】本発明であるコンクリート柱の第三製造工程を示す平面図である。
【図6】本発明であるコンクリート柱の第四製造工程を示す平面図である。
【図7】本発明であるコンクリート柱の第五製造工程を示す平面図である。
【図8】本発明であるコンクリート柱の第六製造工程を示す一部断面図である。
【図9】本発明であるコンクリート柱の第六製造工程を示す平面図である。
【図10】本発明であるコンクリート柱の第七製造工程を示す断面図である。
【図11】本発明であるコンクリート柱の第八工程図を示す断面図である。
【図12】本発明であるコンクリート柱の完成図である。
【図13】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例で使用する部材を示した図である。
【図14】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例で使用する内筒の平面図である。
【図15】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第三製造工程を示す斜視図である。
【図16】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第六製造工程を示す断面図である。
【図17】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第六製造工程を示す平面図である。
【図18】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第七製造工程を示す断面図である。
【図19】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第八製造工程を示す断面図である。
【図20】本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第九製造工程を示す断面図と完成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
先ず、図1から図12を使用して、本発明であるコンクリート柱の製造方法の第1実施例を説明する事とする。
【0019】
図1は本発明であるコンクリート柱の製造方法で使用する部材を示した図である。図1に示すように、本発明であるコンクリート柱の製造方法においては、砂型枠2、外筒3、内筒4、鉄筋5、当木6及び型シート7を使用する。
【0020】
前記砂型枠2は、コンクリート柱1の外形の型を形成するために使用される型枠であり、筒状で底面中央に挿通孔2aを穿設している。尚、図1では前記砂型枠2の形状を円筒状としたが、特に限定したものではなく、角柱状等であってもよい。
【0021】
前記砂型枠2の底面の下面側中央には漏れ止め2bが取り付けられており、前記漏れ止め2bにも前記挿通孔2aと同径の孔が穿設されている。尚、前記挿通孔2aと漏れ止めの孔は同位置に重なっている。また、前記漏れ止め2bはゴムやウレタン等の弾力性がある素材であることが好適であるが、特に素材は限定しない。
【0022】
前記外筒3は、筒状をしており、前記砂型枠2内に設置する部材である。図1では前記外筒3の形状を円柱状としたが、特に限定したのもではなく、筒状をしていれば角柱状などであってもよい。尚、外筒3は砂型枠2に設置後、砂で埋設され、外筒3を砂から取り除いて砂の型を形成するため、外筒3の形状がコンクリート柱の外形を左右することになり、図1のように外筒3を円柱状とすれば円柱状のコンクリート柱が製造され、外筒3を角柱状とすれば角柱状のコンクリート柱を製造することができる。
【0023】
前記内筒4は、前述の外筒3で砂の型を作った後に、砂の型内に設置される円筒状の部材で、内筒4の外径は前記砂型枠2の穿設孔2の径とほぼ等しい。但し、内筒4は穿設孔2に挿通した後、回転させるため、内筒4の外径より穿設孔2の径の方が大きくなければならない。
【0024】
図1に示すように、前記内筒4は中腹部に複数の窓4aと羽4bを交互に備えており、筒内の前記窓4aの底辺位置には内部を上下に分割する中板4cを備えている。また、前記内筒4の外周面には被覆4dがされており、この被覆4dは厚手の布が好適であるが、特に限定したものではなく、新聞紙等であっても、構わない。
【0025】
前述の通り、前記羽4bは窓4aと他の窓4aの間に形成されるが、前記羽4bの一端は一方の窓4aの下部付近に位置し、他端は他方の窓4aの上端付近に位置するように前記羽4bを、内筒4の長手方向に対して斜めに、前記窓4aと窓4aに間に固定して形成されていることが好適である。このように各羽4bを形成することで、周囲にモルタルを充填した状態でも内筒4を回転させやすくなり、更に羽4bにより効果的にモルタルを攪拌することができ、モルタル内に空気層を作ることなくモルタルを充填することができる。
【0026】
前記鉄筋5は、筒状に編まれた鉄筋で、図1に示すように、同径同大の複数の環状の鉄筋を垂直方向に等間隔に並べて複数本の縦筋で溶接したものであってもよい。
【0027】
前記鉄筋5は、砂型枠2内に内筒4を設置後で、モルタル充填前に前記内筒4を囲むように砂型枠2内に設置される鉄筋で、モルタル充填後にモルタル内に隠れる補強のための部材である。
【0028】
前記鉄筋5の形状については、筒状であればよく、図1に示すような円筒状に限定したものではない。例えば前記外筒3が角柱状であった場合は、それに併せて角柱状に形成した鉄筋を使用してもよい。
【0029】
前記当木6は、外筒3の外表面に添える部材であり、前記外筒3の高さよりも若干長めであることが好ましい。また、当木6は木製を予定しているが、特に限定したものではなくプラスチック製等の部材であっても構わない。
【0030】
前記型シート7は、前記外筒3の外表面に複数本の当木3を配置した後に、外筒3と当木6を一括被覆するシートで、外表面に凹凸の模様7aが施されており、内表面には複数本の紐7bが取り付けられている。尚、前記模様7aを木肌を表す模様とした。
【0031】
前記型シート7は厚み、伸縮性、耐久性のある素材であることが好適で、例えばシリコンゴムのようなものが好ましい。但し、前記型シート7の素材については限定したものではない。
【0032】
次に図2から図12を使用して、コンクリート柱の製造方法を説明する事とする。尚、実施例1では、前記コンクリート柱の形状を擬木とした。
【0033】
図2はコンクリート柱の第一製造工程を示す斜視図である。まず、筒状の前記外筒3の外表面に複数本の当木6、6、6・・・を配置し、次に前記外筒3と当木6、6、6・・・を型シート7で一括被覆して、砂8に埋設する型を作る。
【0034】
型シート7で一括被覆する際には、前記型シート7の模様7a面が外側で、紐7bを取り付けた面が内側となるように注意する。
【0035】
図3はコンクリート柱の第二製造工程を示す斜視図である。次に図3に示すように、型シート7で被覆した外筒3を砂型枠2内の中央に設置する。
【0036】
図4はコンクリート柱の第三製造工程を示す斜視図、図5はコンクリート柱の第三製造工程を示す平面図である。前述のように外筒3を砂型枠2内に設置した後、図4及び図5に示すように、型シート7と砂型枠2の間にできた空間に砂8を充填し、砂8をしっかりと固めて、型シート7の外表面の模様7aを砂8に転写する。
【0037】
図6はコンクリート柱の第四製造工程を示す平面図である。前記砂8に模様7aが転写されるまで砂8をしっかり固めた後、前記当木6、6、6・・・を引き抜き、更に前記外筒3を砂型枠2内から取り除くと、図6に示すように、砂型枠2内には、固められた砂8と砂8の内壁面に張り付いた型シート7が残る。
【0038】
図7はコンクリート柱の第五製造工程を示す平面図である。次に図7に示すように、係止部9aを備えた棒状の引き抜き具9を使用して砂型枠2内に残った型シート7を取り除く。
【0039】
前述の通り、前記型シート7の内表面には複数の紐7bが取り付けられており、図7に示すように、前記型シート7の内側に前記紐7bを係止する係止部9aを備えた引き抜き具9を挿入し、前記係止部9aに前記紐7bを係止し、前記引き抜き具9を引き抜くことで、前記型シート7を取り除くことができる。以上のように引き抜き具9を引き抜くと型シート7が中央に引き寄せられながら砂8から剥がれ、砂型枠2内に模様7aを転写した砂8だけが残る。
【0040】
図8はコンクリート柱の第六製造工程を示す一部断面図、図9はコンクリート柱の第六製造工程を示す平面図である。以上のように砂の型を作った後、図8に示すように、まず前記内筒4を砂型枠2内に設置する。このとき、砂8の型に触れないように内筒4を砂型枠2内に挿入し、更に内筒の羽4bより下側を前記羽4aが砂型枠2の底面に接するまで挿通孔2aに貫通させる。
【0041】
そして、前記内筒4を取り囲むように前記鉄筋5を砂型枠2内に設置する。このときも、鉄筋5が砂8の型に触れないように注意して設置する。尚、図9に示すように、前記内筒4の各羽4aは全て鉄筋5内に位置しており、即ち、鉄筋5の内径が各羽4aでできる外径よりも大きい。
【0042】
図10はコンクリート柱の第七製造工程を示す断面図である。上記のように、砂型枠2(砂8でできた型)の内側に内筒4と鉄筋5を設置した後、図10に示すように、前記内筒4内にモルタル10を流し込む。
【0043】
内筒4内に流し込まれたモルタル10は、内筒4の中腹に設けた各窓4aから内筒4の外方に流れ出て、内筒4と砂8の型の間に充填されていく。前記モルタル10が常に内筒4から流れ出るようにモルタル10を内筒4内に流し込むと共に内筒4を回転させながら上方へ引き上げていく。
【0044】
内筒4から流れ出たモルタル10は内筒4の羽4bにより攪拌されるとともに外方へ押されるため内筒4と砂8の型の間の空間には隙間無くモルタル10が充填される。
【0045】

図11はコンクリート柱の第八工程図を示す断面図である。以上のように内筒4を回転させながら引き上げつつモルタル10を鉄筋5が隠れるまで充填していき、モルタル10が固まったら、図11に示すように、内筒4をモルタル10から引き抜く。
【0046】
図12は本発明であるコンクリート柱の完成図である。図2から図11に示した工程を経て、最終的に砂8の型を取り除き、砂型枠2からモルタル10を取り出すと図12に示すような、内部に鉄筋5を埋設した丈夫な中空10bのコンクリート製擬木1が完成する。尚、符号10aはコンクリート製擬木1の表面に砂8の型に転写された凹凸でできた模様である。前述のように型シート7の模様7aを木肌としたため、出来上がったコンクリート柱の表面は木肌のような凹凸ができ擬木が完成した。
【0047】
以上より、本発明であるコンクリート柱の製造方法は、外表面に模様があり鉄筋で補強された中空のコンクリート柱の製造方法であって、
筒状の外筒3の外表面に複数本の当木6を配置し、前記外筒3と前記当木6を、外表面に模様を施し内表面に複数本の紐7bを備えた型シート7で内表面を内側にして一括被覆する工程と、
前記型シート7で被覆した前記外筒3を底部中央に前記外筒の外径より小さい挿通孔2aを穿設した砂型枠2内に設置する工程と、
前記型シートと砂型枠2との間に設けた空間に砂8を充填し、固めて前記型シート7の模様を前記砂8に転写する工程と、
前記当木6を取り除き前記型シート7内から前記外筒3を抜き取る工程と、
前記型シート7を取り除く工程と、
円筒状で中腹部に複数の窓4aと複数の羽4bを交互に備え、内部の前記窓4aの底辺位置に内部を上下に分割する中板4cを備えた内筒4を、前記砂型枠2の挿通孔2aに設置した上で、模様を転写した前記砂と内筒4の間に筒状の鉄筋5を設置する工程と、
前記内筒4の上端開口部から内筒4内にモルタル10を流し込んで前記窓4aから内筒4の外側に流出させるとともに前記内筒4を回転し前記羽4bでモルタルを攪拌しながら徐々に上部に引き上げて前記砂型枠2の上端までモルタル10を充填する工程と、
充填したモルタル10が硬化した後に砂型枠2からモルタル10を抜き取る工程とからなる。
【実施例2】
【0048】
次に図13から図20を使用して、本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例を説明する事とする。
【0049】
図13は本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例で使用する部材を示した図、図14はコンクリート柱の製造方法の第2実施例で使用する内筒の平面図である。図13に示すように、本発明であるコンクリート柱の製造方法の第2実施例においては、砂型枠11、外筒3、内筒12、内型13、鉄筋5、当木6及び型シート7を使用する。
【0050】
前記外筒3、鉄筋5、当木6及び型シート7については、実施例1で使用したものと同じであるため、説明を省略する。
【0051】
前記砂型枠11は、コンクリート柱の外形の型を形成するために使用される型枠であり、筒状で有底11aである。尚、図13では前記砂型枠11の形状を円筒状としたが、特に限定したものではなく、角柱状等であってもよい。
【0052】
前記内筒12は、前記外筒3で砂の型を作った後に、砂の型内に設置される円筒状の部材で、外表面下部に複数の窓12aと羽12bを交互に備えており、図14に示すように
前記羽12bの位置の前記内筒12内に、前記羽12bと同形の内羽12cを設けている。
【0053】
前述の通り、前記羽12bは窓12aと他の窓12aの間に形成されるが、前記羽12bの一端は一方の窓12aの下部付近に位置し、他端は他方の窓12aの上端付近に位置するように前記羽12bを、内筒12の外表面に内筒12の長手方向に対して斜めに、前記窓12aと窓12aに間に固定して形成されていること及び前記内羽12cを内筒12の内壁面に内筒12の長手方向に対して斜めに、前記窓12aと窓12aの間に固定して形成されていることが好適である。このように各羽12bを形成することで、周囲にモルタルを充填した状態でも内筒12を回転させやすくなり、更に羽12b及び内羽12cにより効果的にモルタルを攪拌することができ、モルタル内に空気層を作ることなくモルタルを充填することができる。
【0054】
前記内型13は、円柱状をしており、筒状ではない。図13に示した内型13では、円柱状の筒体にモルタル13aを充填して固めた内筒13としたが、特に限定したものではなく、内部が中空ではなく重さのある柱状のものであればよい。また、前記内型13の外表面には被覆がされており、この被覆は厚手の布が好適であるが、特に限定したものではなく、新聞紙等であっても構わない。
【0055】
次に図15から図20を使用して、コンクリート柱の製造方法を説明する事とする。尚、実施例2でも、前記コンクリート柱の形状を擬木とした。
【0056】
図15はコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第三製造工程を示す斜視図である。図15の第三製造工程を含む第2実施例の第一製造工程から第五工程については、実施例1で示した工程とそれぞれ同じである。
【0057】
即ち、図2に示すように、筒状の前記外筒3の外表面に複数本の当木6、6、6・・・を配置し、次に前記外筒3と当木6、6、6・・・を型シート7で一括被覆して、砂8に埋設する型を作る。(型シート7で一括被覆する際には、前記型シート7の模様7a面が外側で、紐7bを取り付けた面が内側となるように注意する。)
【0058】
次に図3に示すように、型シート7で被覆した外筒3を砂型枠11内の中央に設置し、図4及び図15に示すように、型シート7と砂型枠11の間にできた空間に砂8を充填し、砂8をしっかりと固めて、型シート7の外表面の模様7aを砂8に転写する。
【0059】
そして、前記砂8に模様7aが転写されるまで砂8をしっかり固めた後、前記当木6、6、6・・・を引き抜き、更に前記外筒3を砂型枠11内から取り除いて、図6に示すように、砂型枠11内に固められた砂8と砂8の内壁面に張り付いた型シート7が残る。
【0060】
そして、図7に示すように、係止部9aを備えた棒状の引き抜き具9を使用して砂型枠11内に残った型シート7を取り除く。(前記型シート7の内表面には複数の紐7bが取り付けられており、図7に示すように、これら各紐7bを係止部9aに引っかけて引き抜き具9をゆっくりと引き上げると型シート7が中央に引き寄せられながら砂8から剥がれ、砂型枠2内に模様7aを転写した砂8だけが残る。)
【0061】
図16はコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第六製造工程を示す断面図、図17は第六製造工程を示す平面図である。以上のように、実施例1と同様に第一製造工程から第五製造工程を経て砂の型を作った後、図16及び図17に示すように、まず、砂型枠11の底に底砂8aを敷き詰めて砂8の型を有底としてから、前記内型13を砂型枠11の中央に配置し、次に前記内型11を囲むように砂8の型内に内筒12を設置する。そして、最後に前記内筒12を囲むように砂8の型内に鉄筋5を設置する。このとき、砂8の型の内壁面に触れないように内型13、内筒12及び鉄筋5を砂型枠11内に設置する。尚、図17に示すように、前記内筒12の各羽12aは全て鉄筋5内に位置しており、即ち、鉄筋5の内径が各羽12aでできる外径よりも大きい。
【0062】
図18はコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第七製造工程を示す断面図である。上記のように、砂型枠11(砂8でできた型)の内側に内型13、内筒12及び鉄筋5を設置した後、図18に示すように、前記内筒12内に少量のモルタル10を流し込む。
【0063】
内筒12内に流し込まれた少量のモルタル10は、内筒12の内壁面と内型13によりできた空間を流れ落ちて内筒12の下部に設けた各窓12aから内筒12の外方に流れ出て、内筒12と砂8の型の間に充填される。
【0064】
このとき、前記内型13をコンクリート柱に設ける底の高さ分だけ引き上げて、その後に前記内筒12を回転させながら同程度の高さ引き上げて内型13の下側にもモルタル10を充填する。
【0065】
前記内型13は下側にモルタル10が充填されるため沈むことはなく、また、前述の通り内型13は中空ではなく重みのある柱状であるため、その後にモルタルが充填されても浮くこともない。
【0066】
図19はコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第八製造工程を示す断面図である。図18の第七製造工程を経て、残りのモルタル10を内筒12内に流し込んでゆく。このとき、前記モルタル10が常に内筒12の下端と窓12aから流れ出るようにモルタル10を内筒12内に流し込むと共に内筒12を回転させながら上方へ引き上げていく。
【0067】
内筒12から流れ出たモルタル10は内筒12の外方においては羽12bにより攪拌されるとともに外方へ押されるため内筒12と砂8の型の間の空間には隙間無くモルタル10が充填され、内筒12の内側においては内羽12cにより攪拌されるとともに内側へ押されるため内筒12と内型13の間の空間にも隙間無くモルタル10が充填される。
【0068】
図20はコンクリート柱の製造方法の第2実施例の第九製造工程を示す断面図と完成図である。以上のように内筒12を回転させながら引き上げつつモルタル10を鉄筋5が隠れるまで充填していき、そのまま内筒12を抜きとると図20の左図に示すように中央に内型13が残った状態となる。
【0069】
そして、その後、モルタル10が固まったら、内型13をモルタル10から引き抜き、固まったモルタル10の周囲の砂8を取り除き、モルタル10を砂型枠11から取り出すと図20の右図に示すような、内部に鉄筋5を埋設した有底の丈夫なコンクリート製擬木1aが完成する。
【0070】
以上より、本発明であるコンクリート柱の製造方法は、
外表面に模様があり鉄筋で補強された有底中空のコンクリート柱の製造方法であって、
筒状の外筒3の外表面に複数本の当木6を配置し、前記外筒3と前記当木6を、外表面に模様を施し内表面に複数本の紐7bを備えた型シート7で内表面を内側にして一括被覆する工程と、
前記型シート7で被覆した前記外筒3を有底の砂型枠11内に設置する工程と、
前記外筒3の外周面と前記型シートと砂型枠2との間に設けた空間に砂8を充填し、固めて前記型シート7の模様を前記砂8に転写する工程と、
前記当木6を取り除き前記型シート7内から前記外筒3を抜き取る工程と、
前記型シート7を取り除く工程と、
前記砂型枠11の底11a上に底砂8aを敷き詰めた上で内部中央に円柱状の内型13を設置し、円筒状で中腹部に複数の窓12aと複数の羽12bを交互に備え、内筒12を、模様を転写した前記砂と内型13の間に配置した上で、模様を転写した前記砂8と前記内筒12の間に筒状の鉄筋5を設置する工程と、
前記内筒12の上端開口部から内筒12内にモルタル10の一部を流し込んで前記窓12aから内筒12の外側に流出させて前記モルタル10が硬化する前に前記内型13を前記有底の厚さ分引き上げて内型13の底部にモルタル10を流入させる工程と、
前記内筒12の上端開口部から内筒12内にモルタル10の残りを流し込んで前記窓12aから内筒12の外側に流出させるとともに前記内筒12を回転し前記羽12bと内羽12cでモルタルを攪拌しながら徐々に上部に引き上げて前記砂型枠11の上端までモルタル10を充填する工程と、
充填したモルタル10が硬化した後に砂型枠2からモルタル10を抜き取る工程と、からなる。
【0071】
従来の製造方法では、モルタルが硬化するまでの数日間は当然ながら型枠を取り外すことができず、製作数量を上げるために高価な型枠を複数用意しなければならなかったが、上記に示した本発明では、モルタルの硬化に必要な部材は砂型枠2(11)と内筒4(12)(有底の場合は、前記砂型枠、内筒に加え内型13)のみであり、しかも簡単で安価な部材であるため容易に調達でき、製作の再開も可能である。
【0072】
また、従来の製作方法では模様に付着したモルタルの清掃が必要であり、モルタルの付着を軽減するための剥離剤の塗布、空気跡の補修といった工程が必要になったが、本発明ではこれらの工程は不要である。
【0073】
建設用語で空気跡の欠損をジャンカと言い、このジャンカを防止するためにバイブレーターを使用するが、ジャンカの防止は難しく、特に空気が溜まりやすい凸部はほとんどが欠損状態となる。本発明ではモルタルを雑に流し込んだ場合であってもジャンカを発生させたことはなく、従来よりも製造作業が簡単な上に、出来上がるコンクリート柱も頑丈であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明であるコンクリート柱の製造方法は、砂の型を使用するため外形や模様が複雑なコンクリート柱であっても容易に製造することができ、多大な費用と時間を要することなく外形の型を変更する事もでき、出来上がったコンクリート柱も金網により補強されて丈夫であるため、エクステリア業界に多大な貢献をもたらす。
【符号の説明】
【0075】
1 コンクリート製擬木
1a コンクリート製擬木
2 砂型枠
2a 挿通孔
2b 漏れ止め
3 外筒
4 内筒
4a 窓
4b 羽
4c 中板
4d 被覆
5 鉄筋
6 当木
7 型シート
7a 模様
7b 紐
8 砂
8a 底砂
9 引き抜き具
9a 係止部
10 モルタル
10a 模様
10b 中空
11 砂型枠
11a 底
12 内筒
12a 窓
12b 羽
12c 内羽
13 内型
13a モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に模様があり鉄筋で補強された中空のコンクリート柱の製造方法であって、
筒状の外筒の外表面に複数本の当木を配置し、前記外筒と前記当木を、外表面に模様を施し内表面に複数本の紐を備えた型シートで内表面を内側にして一括被覆する工程と、
前記型シートで被覆した前記外筒を底部中央に前記外筒の外径より小さい挿通孔を穿設した砂型枠内に設置する工程と、
前記型シートと砂型枠との間に設けた空間に砂を充填し、固めて前記型シートの模様を前記砂に転写する工程と、
前記当木を取り除き前記型シート内から前記外筒を抜き取る工程と、
前記型シートを取り除く工程と、
円筒状で中腹部に複数の窓と複数の羽を交互に備え、内部の前記窓の底辺位置に内部を上下に分割する中板を備えた内筒を、前記砂型枠の挿通孔に設置した上で、模様を転写した前記砂と内筒の間に筒状の鉄筋を設置する工程と、
前記内筒の上端開口部から内筒内にモルタルを流し込んで前記窓から内筒の外側に流出させるとともに前記内筒を回転し前記羽でモルタルを攪拌しながら徐々に上部に引き上げて前記砂型枠の上端までモルタルを充填する工程と、
充填したモルタルが硬化した後に砂型枠からモルタルを抜き取る工程と、
からなることを特徴とするコンクリート柱の製造方法。
【請求項2】
外表面に模様があり鉄筋で補強された有底中空のコンクリート柱の製造方法であって、
筒状の外筒の外表面に複数本の当木を配置し、前記外筒と前記当木を、外表面に模様を施し内表面に複数本の紐を備えた型シートで内表面を内側にして一括被覆する工程と、
前記型シートで被覆した前記外筒を有底の砂型枠内に設置する工程と、
前記外筒の外周面と前記型シートと砂型枠との間に設けた空間に砂を充填し、固めて前記型シートの模様を前記砂に転写する工程と、
前記当木を取り除き前記型シート内から前記外筒を抜き取る工程と、
前記型シートを取り除く工程と、
前記砂型枠の底上に底砂を敷き詰めた上で内部中央に円柱状の内型を設置し、円筒状で中腹部に複数の窓と複数の羽を交互に備え、内筒を、模様を転写した前記砂と内型の間に配置した上で、模様を転写した前記砂と前記内筒の間に筒状の鉄筋を設置する工程と、
前記内筒の上端開口部から内筒内にモルタルの一部を流し込んで前記窓から内筒の外側に流出させて前記モルタルが硬化する前に前記内型を前記有底の厚さ分引き上げて内型の底部にモルタルを流入させる工程と、
前記内筒の上端開口部から内筒内にモルタルの残りを流し込んで前記窓から内筒の外側に流出させるとともに前記内筒を回転し前記羽と内羽でモルタルを攪拌しながら徐々に上部に引き上げて前記砂型枠の上端までモルタルを充填する工程と、
充填したモルタルが硬化した後に砂型枠からモルタルを抜き取る工程と、
からなることを特徴とするコンクリート柱の製造方法。
【請求項3】
前記羽の位置の前記内筒内に、前記羽と同形の内羽を設けたことを特徴とする請求項2に記載のコンクリート柱の製造方法。
【請求項4】
前記羽を、内筒の長手方向に対して斜めに、前記窓と窓に間に固定したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のコンクリート柱の製造方法。
【請求項5】
前記型シートを取り除く工程を、前記型シートの内側に前記紐を係止する係止部を備えた引き抜き具を挿入し、前記係止部に前記紐を係止し、前記引き抜き具を引き抜くことで、前記型シートを取り除く工程としたことをことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のコンクリート柱の製造方法。
【請求項6】
前記模様が、木肌を模した擬木であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のコンクリート柱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−192708(P2012−192708A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60161(P2011−60161)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(301028853)
【Fターム(参考)】