説明

コンクリート構造物における配管敷設方法及び継手管取付具

【課題】配管を敷設するための孔を形成し、その後に配管を敷設するのではなく、直接配管を敷設するコンクリート構造物における配管敷設方法及び継手管取付具を提供することを目的とする。
【解決手段】配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠8,8に、両端開口部に継手管取付具1を装着した継手管6を固定し、生コンクリート打設用型枠8,8内に打設した生コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠8,8及び継手管取付具1を順次取り除き、継手管取付具1を取り除いたコンクリート構造物13内の継手管6の両端開口部に配管部材7を固着するコンクリート構造物における配管敷設方法及び継手管取付具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型枠を用いて構築される基礎や梁,床等の各種コンクリート構造物内に敷設される各種の配管敷設方法及び配管敷設に使用する継手管取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄筋コンクリート建築物においてガスや電気,水道,空調,スプリンクラー,医療関係等の各種配管を行うために、壁や梁等を貫通する孔が形成されるが、この孔はコンクリートを打設した後では形成することが困難である。そのため、型枠を組んで鉄筋を配筋した後、コンクリートを打設する前に孔を形成したい箇所に孔形成具をあらかじめ取り付けておき、次に型枠内に生コンクリートを流し込み、固化した後で孔形成具を取り除くことにより、壁や梁等に各種配管用の孔を形成し、この孔に各種の配管を挿通する手段が用いられている。
【0003】
上記に関して特許文献1には、一対の支持板間に鉄筋を挟持させた状態でこの一対の支持板をクリップで挟むことによって鉄筋に支持板を固定し、両支持板にそれぞれ穿設した支持孔間にスリーブを通して支持板にスリーブを保持させてなる基礎鉄筋へのスリーブ保持構造が記載されている。更に特許文献2には帯状体を円形に巻いてできるバンドであって、その両端面の重畳部分を可変にしてボイド用スリーブの外周面に締結されるようになされ、前記帯状体外周面に少なくとも4箇所以上の結束線が繋着されているスリーブ固定用バンドが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、鉄筋を組む前に、梁枠や壁枠となる一対の幕板の配管用孔を形成する個所に一対のベースをそれぞれ取り付け、前記鉄筋を組み、弾性を有する薄板を筒状に丸めて固縛したパイプを前記鉄筋を組んだ状態の配管孔形成個所に挿入し、該配管用孔形成個所において該パイプの固縛を解き、その内面に前記一対のベースとスペーサとを収容した後に再び固縛し、その後パイプの周囲に生コンクリートを流し込み、生コンクリートが固化した後に前記パイプと一対のベース及びスペーサを取り除く手段が開示されている。
【0005】
本願出願人は先に特許文献4により、コンクリート構造物に配管,配線用その他の用途に用いられる配管部材を敷設するに際して、スリーブでなる孔形成具をスリーブ取付具に固定した永久磁石の磁力によってコンクリート構造物内の配管部材を敷設すべき箇所にあるコンクリート打設用型枠に固定し、コンクリートの固化後に型枠を除去してから孔形成具を取り除くことによってコンクリート壁等の構造物に配管用の孔を形成し、その後にこの孔に配管部材を挿通する方法を提案した。かかる方法によれば、孔形成具のスリーブ取付具が磁力によって型枠に密着するため、取り付けるべき位置に孔形成具を精確に取り付けることができるとともに該孔形成具の取り外しも容易であり、スリーブ取付具が型枠に密着しているため、コンクリートに覆われることもなく、孔形成具の取り付け取り外し時間も短縮可能であって工期の短縮をはかることができる。
【特許文献1】実開昭64−53361号公報
【特許文献2】実開平5−84742号公報
【特許文献3】特許第3335336号
【特許文献4】特願2004−124653号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般にコンクリート構造物内に配管を敷設する従来の方法は、型枠内に紙筒等の円筒型枠を鉄筋に直接固定する手段が通常行われているが、円筒型枠が上下左右に動くケースが生じて配管部材を精確に敷設することが困難であるという問題がある。前記特許文献1,2による技術手段はいずれも完成したコンクリート構造物の内部に結束線やバンド等の異物が残存する方法であり、更に作業時において適当な長さに切断した紙管の両側の孔をガムテープで塞ぎ、結束線や針金で直接鉄筋に縛り付ける方法は、コンクリート自体の強度低下及び建築基準法第79条に規定されている鉄筋へのかぶり不足となり、該鉄筋の露出による腐蝕が原因で起きるコンクリート構造物のひび割れ現象が発生しやすいという課題がある。
【0007】
特許文献3に記載された配管用孔の形成方法によれば、鉄筋と鉄筋との隙間が小さくてもその隙間からパイプを挿入し、配管孔形成個所に配置して配管用孔を所望の断面形状を保持して正確な位置に形成することができるとともに1つのパイプで所望の内径の配管用孔を形成することができるが、薄板を筒状に丸めて固縛したパイプを鉄筋を組んだ状態の配管孔形成個所に挿入し、パイプの固縛を解いてからその内面に一対のベースとスペーサとを収容した後に再び固縛するという作業が必要であるため、操作性の面で問題点が残っている。
【0008】
また、従来の手段では紙筒等の円筒型枠はあくまで孔を形成するための型枠であり、打設したコンクリートの養生期間が過ぎると取り外す必要があり、取り外された紙筒等の円筒型枠は殆どが再利用ができず廃棄されており、材料費その他の面でコストアップを招来していた。更に、紙筒等の円筒型枠は実際に敷設する配管より径大であるため、敷設された配管の周囲には隙間が生じるので、水等の進入を防ぐためにコンクリートで配管後の隙間をなくす孔埋め作業が必要であり、大きな労力と時間を費やしていた。また、この孔埋めのためのコンクリートは現場で手練りされており、コンクリートとしての強度は全く期待できないものであった。
【0009】
そこで本発明は上記従来の配管部材敷設方法が有している課題を解消して、配管を敷設するための孔を形成し、その後に配管を敷設するのではなく、直接配管を敷設するとともに、配管後の隙間をなくす孔埋め作業をなくし、かつ、コンクリート構造物の内部に結束線やバンド等の異物が残存することがなく、鉄筋へのかぶりの問題をクリアするとともに鉄筋の露出による腐蝕に起因するコンクリートのひび割れ現象も発生せず、更に余分な労力と時間を必要とせずに工期の短縮と作業者の人員削減をはかることができて、材料費,人件費その他の面でのコストダウンをもたらすことができるコンクリート構造物における配管敷設方法及び継手管取付具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に、両端開口部に継手管取付具を装着した継手管を固定し、生コンクリート打設用型枠内に打設した生コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠及び継手管取付具を順次取り除き、継手管取付具を取り除いたコンクリート構造物内の継手管の両端開口部に配管部材を固着するコンクリート構造物における配管敷設方法を基本として提供する。また、配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に、一端に継手管取付具を装着し、他端を配管部材で連結した一対の継手管を固定し、生コンクリート打設用型枠内に打設した生コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠及び継手管取付具を順次取り除き、継手管取付具を取り除いたコンクリート構造物内の継手管の開口部に配管部材を固着する方法を提供する。
【0011】
そして、継手管を継手管取付具に装備した永久磁石の磁力によって配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に磁着固定する手段、継手管取付具は、有底円筒状であって、底面に生コンクリート打設用型枠に磁着する1又は複数の永久磁石を固着した手段、永久磁石の磁力を高めるとともに生コンクリート打設用型枠に安定して磁着固定するための補強部材として、永久磁石の裏面に円盤状バックヨークを、外面方向からリング状ヨークを配備した手段、及びリング状ヨークが永久磁石から僅か突出するように配備され、生コンクリート打設用型枠と永久磁石との間に隙間が形成された状態で継手管取付具を生コンクリート打設用型枠に磁着固定する手段を提供する。
【0012】
更に、配管部材を敷設すべき箇所にある生コンクリート打設用型枠に継手管を固定するための継手管取付具であって、有底円筒状の底面に1又は複数の孔を穿設し、該孔に外方からリング状ヨークを嵌合し、該リング状ヨークに内方から裏面に円盤状バックヨークを配備した永久磁石を嵌合してなるコンクリート構造物における継手管取付具を提供する。また、継手管取付具は、円盤状の底面と、該底面の円周端部近傍に立設された所定高さの周壁と、周壁と底面の円周端部との間に形成された縁部とを有する有底円筒状である構成、リング状ヨークが永久磁石から僅か突出するように配備された構成、リング状ヨークは、中空リング状の周壁と、該周壁の端部に外方に直交して形成された鍔部とを有する構成、及び継手管取付具の材質として、ポリアミド,PBT,塩化ビニール,ABS樹脂等の合成樹脂を用いた構成を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって得られたコンクリート構造物における配管敷設方法及び継手管取付具によれば、鉄筋が縦横に交差するように配設してからコンクリートを打設する前に、配線用とか配管用の配管部材を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に、両端開口部に継手管取付具を固定した継手管を該継手管取付具の永久磁石の磁力によって磁着固定して型枠内に生コンクリートを打設し、コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠と継手管取付具を順次取り除くことによってコンクリート構造物に配管,配線用その他の用途に用いられる配管部材としての継手管を一度の工程で直接敷設することができ、従来のように、敷設する配管より径大の配管用の孔を形成する必要がなく、又配管後に配管と孔との隙間をなくす孔埋め作業も不要となり、作業時間が大幅に短縮できるとともに、強度も向上する。そのため、コンクリート構造物に形成される孔は最小限の配管分のみとなり、コンクリート構造物の強度に影響を与えない。
【0014】
永久磁石を用いたことによって配管部材の配置は簡単、かつ、精確に行えるとともに継手管取付具の取り付け位置が決まれば鉄筋との距離を計って永久磁石を磁着させるだけでよく、取り付け作業そのものは1秒程度で行うことができるとともに取り外しもほとんど労力を費やすことなく1〜2分で行えるので、作業時間と作業コストは大幅に低減される。また、取り出した継手管取付具は再利用が可能である。作業時に継手管取付具が磁力によって型枠に密着するため、コンクリート構造物内の配管部材の取り付けるべき位置に精確に取り付けることができるとともに、継手管取付具の取り外しも容易である。取り外し時には継手管取付具が型枠に密着しているため、コンクリートに覆われることもなく、継手管取付具の取り外しには時間と労力を要しない。更に建築基準法第79条に規定されている鉄筋へのかぶりの問題も難なく解消することができる。また、かぶり不足又は鉄筋の露出等による腐蝕が原因で起こるコンクリート構造物のひび割れが発生せず、耐久性の高いコンクリート構造物における配管敷設構造が得られる。
【0015】
本発明によれば、コンクリート構造物の内部に異物が残存することがなく、鉄筋へのかぶり及び鉄筋の露出による腐蝕に起因するコンクリートのひび割れ現象を防止し、しかも継手管の取り付けと継手管取付具の取り外しに多大な労力と時間を必要とせず、配管後の孔埋め作業も不要であるため工期の短縮がはかれ、材料費,人件費その他の面でのコストダウンをもたらすとともに精確に施工できるコンクリート構造物における配管敷設方法及び継手管取付具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面に基づいて本発明にかかるコンクリート構造物における配管敷設方法及び継手管取付具の最良の実施形態を説明する。本発明はコンクリート構造物に配管用の孔を形成することなく、実際の配管として使用する継手管を直接敷設することに特徴を有するものであり、そのために配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に、両端開口部に継手管取付具を装着した継手管を固定し、生コンクリート打設用型枠内に打設した生コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠及び継手管取付具を順次取り除き、継手管取付具を取り除いたコンクリート構造物内の継手管の両端開口部に配管部材を固着することを基本とする。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態を示す有底円筒状の継手管取付具1の斜視図、図2はその要部平断面図、図3はコンクリート構造物内に固定する継手管6の両端開口部に継手管取付具1を装着した状態を示す斜視図、図4はその平断面分解図である。この継手管取付具1は図1に示すように、敷設する継手管6の開口部の面積と略同一の面積を有する円盤状の底面1bと、該底面1bの円周端部近傍に立設された所定高さの周壁1aとから構成されている。周壁1aと底面1bの円周端部との間には縁部1dが形成されている。この継手管取付具1を図3に示すようにコンクリート構造物内の配管部材を敷設すべき箇所に固定する継手管6の両端開口部に、外方から周壁1aを嵌合させ、縁部1dを継手管6の開口端部に係合させることにより装着する。この継手管取付具1の底面1bには2つの開口部1cが穿設され、この開口部1cに中空リング状の周壁5aと、この周壁5aの端部に直交して外方に形成された鍔部5bとからなる断面鈎型のリング状ヨーク5の周壁5aが嵌合されている。
【0018】
よって、図2に示すようにリング状ヨーク5の鍔部5bは継手管取付具1の底面1bからその厚み分だけ突出している。そして、このリング状ヨーク5の周壁5a内に開口部1cより径大の円盤状バックヨーク4に固着された永久磁石2が嵌合されて、継手管取付具1に装着されている。永久磁石2の厚さは継手管取付具1の端面と略同一の厚さであり、図2に示すようにリング状ヨーク5の鍔部5bが永久磁石2及び継手管取付具1の底面1bより突出している。3は同様に継手管取付具1の底面1bに穿設された操作用孔であり、継手管取付具1を取り外す際に専用工具を挿入するためのものである。
【0019】
永久磁石2は裏面に配備した円盤状バックヨーク4と、外面方向から配備したリング状ヨーク5によって継手管取付具1の底面1bを挟持するように底面1bに装着されている。この円盤状バックヨーク4とリング状ヨーク5は一体となって壺ヨークと同様の形状となって磁力を高めるとともに、永久磁石2を継手管取付具1に安定して固着させる機能をも有している。さらに、円盤状バックヨーク4が固着された永久磁石2とリング状ヨーク5,継手管取付具1はそれぞれ別体の部材であって分離可能であり、個別に補充や再利用ができる。この磁力の向上を確認するために、永久磁石2のみ,円盤状バックヨーク4を装着した永久磁石2,円盤状バックヨーク4とリング状ヨーク5を装着した永久磁石2について、それぞれA,B,Cの3つの磁石を鉄板上に磁着させ、動き始めるまでの荷重をバネ秤で測定した結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示すように、永久磁石2のみのものに対して、円盤状バックヨーク4を装着した永久磁石2は1.67倍の、円盤状バックヨーク4とリング状ヨーク5を装着した永久磁石2は4.77倍の磁力を示している。また、永久磁石2そのものは大変脆く割れやすいものであり、円盤状バックヨーク4を固着することによって扱いが容易となり、リング状ヨーク5によって永久磁石2が直接生コンクリート打設用型枠に触れないようにして永久磁石2を保護している。更に、円盤状バックヨーク4とリング状ヨーク5は継手管取付具1の底面1bを挟持して永久磁石2を固着する働きをするものである。
【0022】
永久磁石2の取付けは継手管取付具1の底面1bに穿設した開口部1cの外面側からリング状ヨーク5の周壁5aを差し込み、次に内面側から円盤状バックヨーク4を固着した永久磁石2をリング状ヨーク5の周壁5a内に挿入して固定する。図示例では2個の永久磁石2を用いているが、継手管取付具1の径長が大きいケースでは3個以上の永久磁石2を固着してもよい。6は上記継手管取付具1が装着された中空円柱状の継手管であり、構築するコンクリート構造物の厚さと同一の長さ寸法を有しており、その内壁面には図6に示す配管部材7を突き当てて位置決めをするための突き当て部6aが突設されている。
【0023】
継手管取付具1の材質は、ポリアミド,PBT,塩化ビニール,ABS樹脂等の合成樹脂を用いることができる。永久磁石2としては減磁のないネオジム磁石を使用することによって半永久的に使用可能である。磁力は生コンクリートの打設時の圧力によっても継手管取付具1の位置がずれることのないものであれば、適宜の範囲のものを状況に応じて選択すればよい。本実施形態では円盤状バックヨーク4を付けた状態で永久磁石2の磁力を3000ガウス程度に設定して所期の目的を達成することができる。
【0024】
図5は本実施形態の配管敷設方法を実施した施工状態を示す概略図であり、図6は施工後の敷設状態を示す側断面図である。図中の8,8は一対の生コンクリート打設用型枠であって、この生コンクリート打設用型枠8,8の内側にコンクリート構造物内に配置される上端筋9,下端筋10,腹筋11及び肋筋12等の所要の鉄筋を縦横に交差するように配設してから、配管部材を敷設する箇所の生コンクリート打設用型枠8,8に両端開口部に継手管取付具1を固定した継手管6を、継手管取付具1の永久磁石2の磁力によって磁着固定する。その後生コンクリート打設用型枠8,8内に生コンクリートを打設する。永久磁石2を用いたことによって継手管6を容易に所望の位置に配置することが可能であり、継手管6の取り付け位置が決まれば、鉄筋との距離を計って永久磁石2を磁着させるだけでよく、取り付け作業そのものは1秒程度で行うことが可能である。
【0025】
そして、コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠8,8を除去してから継手管取付具1を取り除き、コンクリート構造物13内の継手管取付具1を取り除いた継手管6の両端開口部から配管部材7を継手管6に挿入して固着することにより、図6に示したようにコンクリート壁等の構造物13の所定位置に継手管6と配管部材7でなる各種配管を敷設して、配管,配線,配水その他の用途に用いることができる。継手管取付具1を取り除くには、先端に折曲部を形成した棒状の専用工具を継手管取付具1の操作用孔3に挿入して該継手管取付具1を引張り出すか、反対側の継手管取付具1を押し出す。取り出した継手管取付具1は再利用が可能である。
【0026】
なお、使用する生コンクリート打設用型枠8,8は継手管取付具1が磁着できるように鉄製等の材質が好ましいが、木製型枠であってもよい。ただし、木製型枠を使用する場合は継手管取付具1を磁着できるように、例えば該木製型枠に鉄板等の受部材等を固着して使用する。木製型枠の表面に鉄板を取付ける場合には、型枠を取り除いたときにコンクリート構造物13の表面に跡が残らないように配管部材7の径より小さい方が好ましく、木製型枠に固着するための鉄板はスパイク付きで厚さは1.0mm〜1.5mm程度が適当である。
【0027】
図7は継手管取付具1の他の実施形態としての継手管取付具15を示す斜視図であり、図8は継手管6の両端開口部に装着した状態を示す斜視図である。この継手管取付具15も同様にコンクリート構造物内の配管部材を敷設すべき箇所に固定する継手管6の両端開口部にそれぞれ装着して使用するものであって、継手管取付具15の底面には継手管取付具1と同様の構成で3個の永久磁石2が固着されている。その他の構成は継手管取付具1と同様である。この継手管取付具15は3個の永久磁石2を用いたことにより、コンクリート構造物の内方に比較的孔径の大きな配管を敷設する際に用いて有効である。
【0028】
図9は継手管取付具1の他の実施形態としての継手管取付具16を示す斜視図であり、図10はその拡大縦断面図である。この継手管取付具16も同様にコンクリート構造物内の配管部材を敷設すべき箇所に固定する継手管6の両端開口部にそれぞれ装着して使用するものであって、継手管取付具16の底面には継手管取付具1と同様の構成で1個の永久磁石2が固着されている。その他の構成は継手管取付具1と同様である。この継手管取付具16は1個の永久磁石2だけを用いたことにより、コンクリート構造物の内方に比較的孔径の小さな配管を敷設する際に用いて有効である。
【0029】
図11は本発明の第2実施形態を示す分解断面図、図12は継手管取付具17の拡大平断面図、図13はその正面図、図14は施工後の敷設状態を示す側断面図である。この第2実施形態では、配管部材を敷設すべき箇所にある生コンクリート打設用型枠(図示略)に、一端に継手管取付具17を装着し、他端を継手管連結用の配管部材18で連結した一対の継手管14,14を固定している。継手管14,14の内壁面には継手管連結用の配管部材18及び配管部材7を突き当てるための突き当て部14aが突設されている。そして、生コンクリート打設用型枠内に打設した生コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠及び継手管取付具17を順次取り除き、コンクリート構造物13内の継手管14,14の開口部に配管部材7を挿入固着するものである。その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0030】
この第2実施形態では継手管6に替えて、一端に継手管取付具17を装着し、他端を継手管連結用の配管部材18で連結した一対の継手管14,14を使用している。これは構築するコンクリート構造物13の厚さ寸法に応じた既製の継手管14が存在しない場合に、一対の継手管14,14を連結する配管部材18の長さ寸法を調節することにより、コンクリート構造物の厚さ寸法に応じた配管部材18によって連結された一対の継手管14,14を得ることができる。なお、継手管連結用の配管部材18は配管部材7と同一のものを使用することができる。
【0031】
また、継手管取付具17は磁石を使用せずに生コンクリート打設用型枠に固着する構成のものであり、図12,図13に示すように継手管14の開口部の面積より広い面積を有する底面17bと、該底面17bの中央部近傍に立設されて継手管14の開口部に嵌合される周壁17aとからなり、周壁17aと底面17bの円周端部との間には幅広の縁部17dが形成されるとともに、該縁部17dには複数の釘孔17eが穿設されている。17cは操作用孔であり、その他の構成は前記した第1実施形態と同様である。そして、継手管14の開口部に外方から継手管取付具17の周壁17aを嵌合させ、縁部17dを継手管14の開口端部に係合させることにより装着する。なお、継手管取付具17は釘孔17eを使用して生コンクリート打設用型枠に釘着して固定することができるものであり、水道管等の径小の配管や木製型枠を使った敷設に使用して好適である。また、周壁17aと底面17bの円周端部との間の幅広の縁部17dに開口部1cを設け、永久磁石2を装着することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上詳細に説明したように、本発明は生コンクリートを打設する前に配管部材を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に、両端開口部に継手管取付具を固定した継手管を該継手管取付具の永久磁石の磁力によって磁着固定して型枠内に生コンクリートを打設し、該コンクリートの固化後に型枠と継手管取付具を順次取り除き、継手管取付具を取り除いたコンクリート構造物内の継手管の両端開口部に配管部材を固着することによってコンクリート構造物に配管,配線用その他の用途に用いられる配管部材としての継手管を一度の工程で直接敷設することができ、従来のように、敷設する配管より径大の配管用の孔を形成する必要がなく、又配管後に配管と孔との隙間をなくす孔埋め作業も不要となり、作業時間が大幅に短縮できるとともに、強度も向上する。そのため、コンクリート構造物に形成される孔は最小限の配管分のみとなり、コンクリート構造物の強度に影響を与えない。よって、土木建築を問わずコンクリート構造物に対して配管を敷設する必要がある工事全般に応用可能である。
【0033】
更に、磁石を使用して継手管取付具を型枠に固定することにより、鉄筋に結束線等で固着する必要がなく、位置合わせが容易、かつ、精確にできて、配筋へのコンクリートのかぶりを必要十分にとることができる。また、孔形成後に孔部から配筋が露出することがなく、コンクリート内に結束線等の残存物がなくなり、鉄筋へのかぶり及び鉄筋の露出による腐蝕に起因するコンクリートのひび割れ現象を防止し、しかも継手管取付具の取り付けと取り外しに多大な労力と時間を必要としない上、配管後の孔埋め作業も不要であるため工期の短縮がはかれ、材料費,人件費その他の面でのコストダウンをもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態を示す有底円筒状の継手管取付具の斜視図。
【図2】図1の要部平断面図。
【図3】継手管の両端開口部に継手管取付具を装着した状態を示す斜視図。
【図4】継手管の開口部への継手管取付具の装着状態を説明する平断面分解図。
【図5】配管敷設方法を実施した施工状態を示す概略図。
【図6】施工後の敷設状態を示す側断面図。
【図7】継手管取付具を示す斜視図。
【図8】継手管取付具の装着状態を示す斜視図。
【図9】継手管取付具を示す斜視図。
【図10】図9の拡大縦断面図。
【図11】継手管への継手管取付具の装着状態を示す分解断面図。
【図12】継手管取付具の拡大平断面図。
【図13】図12の正面図。
【図14】施工後の敷設状態を示す側断面図。
【符号の説明】
【0035】
1,15,16,17…継手管取付具
1a…周壁
1b…底面
1c…開口部
1d…縁部
2…永久磁石
3…操作用孔
4…円盤状バックヨーク
5…リング状ヨーク
5a…周壁
5b…鍔部
6,14…継手管
6a,14a…突き当て部
7,18…配管部材
8…生コンクリート打設用型枠
9…上端筋
10…下端筋
11…腹筋
12…肋筋
13…コンクリート構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に、両端開口部に継手管取付具を装着した継手管を固定し、生コンクリート打設用型枠内に打設した生コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠及び継手管取付具を順次取り除き、継手管取付具を取り除いたコンクリート構造物内の継手管の両端開口部に配管部材を固着することを特徴とするコンクリート構造物における配管敷設方法。
【請求項2】
配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に、一端に継手管取付具を装着し、他端を配管部材で連結した一対の継手管を固定し、生コンクリート打設用型枠内に打設した生コンクリートの固化後に生コンクリート打設用型枠及び継手管取付具を順次取り除き、継手管取付具を取り除いたコンクリート構造物内の継手管の開口部に配管部材を固着することを特徴とするコンクリート構造物における配管敷設方法。
【請求項3】
継手管を継手管取付具に装備した永久磁石の磁力によって配管を敷設すべき箇所の生コンクリート打設用型枠に磁着固定する請求項1又は2記載のコンクリート構造物における配管敷設方法。
【請求項4】
継手管取付具は、有底円筒状であって、底面に生コンクリート打設用型枠に磁着する1又は複数の永久磁石を固着した請求項3記載のコンクリート構造物における配管敷設方法。
【請求項5】
永久磁石の磁力を高めるとともに生コンクリート打設用型枠に安定して磁着固定するための補強部材として、永久磁石の裏面に円盤状バックヨークを、外面方向からリング状ヨークを配備した請求項4記載のコンクリート構造物における配管敷設方法。
【請求項6】
リング状ヨークが永久磁石から僅か突出するように配備され、生コンクリート打設用型枠と永久磁石との間に隙間が形成された状態で継手管取付具を生コンクリート打設用型枠に磁着固定する請求項5記載のコンクリート構造物における配管敷設方法。
【請求項7】
配管部材を敷設すべき箇所にある生コンクリート打設用型枠に継手管を固定するための継手管取付具であって、有底円筒状の底面に1又は複数の孔を穿設し、該孔に外方からリング状ヨークを嵌合し、該リング状ヨークに内方から裏面に円盤状バックヨークを配備した永久磁石を嵌合してなることを特徴とするコンクリート構造物における継手管取付具。
【請求項8】
継手管取付具は、円盤状の底面と、該底面の円周端部近傍に立設された所定高さの周壁と、周壁と底面の円周端部との間に形成された縁部とを有する有底円筒状である請求項7記載のコンクリート構造物における継手管取付具。
【請求項9】
リング状ヨークが永久磁石から僅か突出するように配備された請求項7記載のコンクリート構造物における継手管取付具。
【請求項10】
リング状ヨークは、中空リング状の周壁と、該周壁の端部に外方に直交して形成された鍔部とを有する請求項7,8又は9記載のコンクリート構造物における継手管取付具。
【請求項11】
継手管取付具の材質として、ポリアミド,PBT,塩化ビニール,ABS樹脂等の合成樹脂を用いた請求項7,8,9又は10記載のコンクリート構造物における継手管取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−214126(P2006−214126A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26775(P2005−26775)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(504157873)旭環境スポーツ施設株式会社 (5)
【Fターム(参考)】