コンクリート構造物の構築方法
【課題】目地材に取り付けた止水板が確実に漏水を防止することができ、しかもコンクリート構造物への組付けを簡易かつ迅速に施工できるようにしたコンクリート構造物の構築方法を提供しようとする。
【解決手段】型枠内におけるコンクリートの連結部に中間部位に上下方向にスリットを形成した目地材を設置するとともに、当該目地材の前記スリットに目地材と直交する方向に止水部をはめ込んで止水部を組み付けた目地材を設置するに際し、目地材の止水部の板面に突き合わせる部分に、コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に形成した接合片を所定の接着手段を用いて貼付し、該コ字状の凹部に目地材をはめ込むことにより当該目地材のスリットに沿って目地材と交差するよう止水部を組み付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたことを特徴とするコンクリート構造物の構築方法。
【解決手段】型枠内におけるコンクリートの連結部に中間部位に上下方向にスリットを形成した目地材を設置するとともに、当該目地材の前記スリットに目地材と直交する方向に止水部をはめ込んで止水部を組み付けた目地材を設置するに際し、目地材の止水部の板面に突き合わせる部分に、コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に形成した接合片を所定の接着手段を用いて貼付し、該コ字状の凹部に目地材をはめ込むことにより当該目地材のスリットに沿って目地材と交差するよう止水部を組み付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたことを特徴とするコンクリート構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物の連結部において発生する漏水を止水できるようにしたコンクリート構造物の構築方法に関し、特に躯体の連結部に介在させた目地材が経年変化でコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなっても、目地材に取り付けた止水板が確実に漏水を防止することができ、しかもそのようなコンクリート構造物を簡易かつ迅速に施工できるようにしたコンクリート構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物からの漏水はほとんどの場合に発生し、これまでも各種の止水構造が提案されている。すなわち、コンクリート構造物を所定の間隔で分割し、その連結部に目地材を介在させて夏場のコンクリート構造物の膨張や冬場のコンクリート構造物の収縮を吸収するようにしている。
【0003】
そのような用途に使用される目地材としては、アスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、樹脂もしくはゴム発泡体目地材、加熱型ゴムアスファルト注入目地材等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上述の各種止水用目地材や止水用目地材においても、長期間の経年変化により止水用目地材や止水用目地材がコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなってしまい、一定の期間ごとに目地材を注入すること等によって補修する必要があった。そして、そのような補修をしない場合には、あるいは補修が追いつかない場合には漏水の結果を招いてしまう。
【0005】
そこで、特公昭48−23382号公報(特許文献1参照)や実公昭48−31605号公報(特許文献2参照)、特開昭59−63110号公報(特許文献3参照)のように、止水板を目地材を横断して目地材の両側に突出させ、長期間の経年変化により止水用目地材や止水用目地材がコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなっても、その止水作用が損なわれないようにすることが提案されている。
【0006】
ただし、上記従来例においては、目地材を介して左右に配置されるコンクリートを打設する際、目地材の適所に止水部が形成されているときには止水部の取り付けを逐次長尺の止水材を適宜長さに切断しながら行なっていたため、目地材の両側を同時に打設することができず、工期がかかりすぎるという問題があった。
しかも止水部と目地材との組付けが面倒であり、また組付けにも多大の時間や人手を要していた。
【0007】
そこで本発明者は先に特開2009−24346号公報(特許文献4参照)において、型枠内におけるコンクリートの連結部に目地材を設置するとともに、当該目地材の両面の長さ方向に沿って目地材と直交する方向に止水部を突き合わせ、止水部の幅方向の端部の突き合わせ部分に目地材と平行に形成した接合片を介して、前記止水部を目地材に取り付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたコンクリート構造物の構築方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭48−23382号公報
【特許文献2】実公昭48−31605号公報
【特許文献3】特開昭59−63110号公報
【特許文献4】特開2009−24346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記従来例においては、目地材と直交する方向に一対の止水部を突き合わせた構造であったため、目地材と止水部の組み付けに手間がかかり、また部品点数が多くてコストがかかりすぎるという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、目地材に簡単に止水部を組み付けることができるようにするとともに、目地材の両側を同時に打設できるようにして、工期を大幅に短縮することが可能であり、しかも止水部と目地材との組付けが簡単であり、また組付けにも時間や人手が不要であって、簡易かつ迅速に施工できるようにしたコンクリート構造物の構築方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわちこの発明のコンクリート構造物の構築方法は、型枠内におけるコンクリートの連結部に中間部位に上下方向にスリットを形成した目地材を設置するとともに、当該目地材の前記スリットに目地材と直交する方向に止水部をはめ込んで止水部を組み付けた目地材を設置するに際し、目地材の止水部の板面に突き合わせる部分に、コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に形成した接合片を所定の接着手段を用いて貼付し、該コ字状の凹部に目地材をはめ込むことにより当該目地材のスリットに沿って目地材と交差するよう止水部を組み付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
またこの発明のコンクリート構造物の構築方法は、前記コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に配置した接合片が、止水部の所定位置に所定の接着手段を用いて貼付され、コ字状の凹部に目地材をはめ込んだ上、固着手段によって目地材に固着することをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のコンクリート構造物の構築方法によれば、止水部を形成した目地材を介して左右に配置されるコンクリートを打設する際、目地材の両側を同時に打設できるので、工期を大幅に短縮することが可能であり、しかも止水部と目地材との組付けが簡単であり、また組付けにも時間や人手が不要であって、簡易かつ迅速に施工できるようになった。
より詳しく述べると次の通りである。
1)小型構造物から大型構造物まで対応できる。
2)止水部と目地部を併せ持つ構造により、左右同時打設、工期短縮が可能である。
3)止水部と目地部の組立が容易である。
4)止水部と目地部が別々であるため運搬・保管しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンクリート打設用の型枠に目地材を取り付けた状態の斜視図である。
【図2】打設したコンクリート構造物の斜視図である。
【図3】小型のコンクリート構造物の構築方法の第1の実施例を示す斜視図である。
【図4】その平面図である。
【図5】この実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の斜視図である。
【図6】第2の実施例を示す平面図である。
【図7】この実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の斜視図である。
【図8】(a)は第1の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図、(b)は第2の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図である。
【図9】(a)〜(d)はそれぞれ目地材に止水部を組み付けた状態の平面図である。
【図10】この発明の小型コンクリート構造物の構築方法の工程を示すフローチャート、である。
【図11】この発明の大型コンクリート構造物の構築方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明によるコンクリート構造物の構築方法を、図面に基いて詳細に説明する。
【0016】
図1および図2はこの発明のコンクリート構造物の構築方法の実施例を示すもので、図1はコンクリート打設用の型枠に目地材を取り付けた状態の斜視図、図2は打設したコンクリート構造物の斜視図である。
この発明における目地材11は、その中間部位に上下方向にスリット15を形成し、当該目地材11の前記スリット15に目地材11と直交する方向に止水部12をはめ込んで一体的に取り付けている点を特徴とするものである。
この発明において使用される前記目地材11はアスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、PVCその他の樹脂もしくはゴム発泡体目地材等の素材を用いてシート状に成形されている。もちろん、この発明は市販の目地材にも適用できる。この目地材11は、押出成形等によって所定幅の長尺材に成形されている。
【0017】
また、止水部12もアスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、PVCその他の樹脂もしくはゴム発泡体目地材等の素材を用いてシート状に成形されている。この止水部12も、押出成形等によって所定幅の長尺材に成形されている。
【0018】
より詳しく説明すると、止水板12の素材として上記目地材11と同様にアスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、樹脂もしくはゴム発泡体目地材等を利用することができるが、その場合には目地材11よりも硬質に形成しておくことが望ましい。上記樹脂の例としては、ポリ塩化ビニール(PVC)やポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
また、上記素材に代えて他の合成樹脂、あるいは硬質ゴム等を上記形状に成形したものを使用することもできる。いずれにしても止水部12はその取り扱い上、目地材11に取り付ける際に所定の剛性や硬度等を備えていることが望ましい。
【0019】
図1に示すように、前記シート状の目地材11は所定の型枠100内の中ほどを仕切るように取り付けられ、該目地材11のスリット15にはめ込まれた止水部12が、目地材11の両側から先端を打設するコンクリート内に突出するよう配設される。
その状態で型枠100内にコンクリートを打設し、養生して脱型したのが図2に示すコンクリート構造物10である。このコンクリート構造物10は長さ方向のほぼ中ほどに目地材11が介在し、さらに目地材11の中ほど両面に、止水部12が打設したコンクリート内に入り込むよう配設されているので、長期間の経年変化により目地材11がコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなっても、止水部12が存在することによってその止水作用が損なわれることがない。
【0020】
図3以下は、上記コンクリート構造物の構築方法に適用されるコンクリート構造物の連結部の構造を示している。
第1の実施例を示す図3において、所定の型枠100内に設置した小型のコンクリート構造物の連結部には、所定のサイズに切断した目地材11が介在され、該目地材11の中間部位に上下方向に形成したスリット15に、目地材11と直交する方向に止水部12をはめ込むことにより取り付けてある。そして、止水部12はコンクリート構造物の連結部において、コンクリート構造物の端面から所定の深さまで入り込むように組込まれるものである。
前記止水部12は、目地材11を止水部12の板面に突き合わせる部分に止水部12と平行に形成した接合片13を介して目地材11に固着したものである。このような接合片13の素材としては、ポリ塩化ビニルやABS樹脂等が好適に利用できる。
【0021】
図3に示す実施例をより詳細に説明する図4の平面図および図5の斜視図において、前記止水部12へ目地材11の端部を突き合わせる部分に止水部12と平行に形成した接合片13は、止水部12の両側に設けられている。また止水部12のコンクリート内部に突出する端部には必要に応じて膨頭部14が形成してあり、また止水部12の両側面にはその板面に直交するよう幅方向に向かって長さ方向に沿った複数列のリブ(コルゲート状のフィン)を形成することができる。これらの膨頭部14およびリブ(コルゲート状のフィン)は打設したコンクリートにより強固に結合するようにするためのものである。
【0022】
前記止水部12へ目地材11の端部を突き合わせる部分に止水部12と平行に形成した接合片13は、施工に際して止水部12の所定位置に接着される。この接着面101は、止水部12に接合片13を接着剤を介して接着したり、あるいは両面接着テープを予め接合片13の接合面に貼付しておき、剥離テープを剥がした上で止水部12に貼付すること等によって行なうことができる。なお、この接合片13の両側面にも、その板面に直交するよう幅方向に向かって長さ方向に沿った複数列のリブ(コルゲート状のフィン)を形成することができる。
もちろん、あらかじめ止水部12に接合片13を取り付けた状態で現場に搬入しても、施工前に現場で接合片13を止水部12に取り付けてもよい。
なお、目地材11は接合片13の外面に形成したコ字状の凹部16にはめ込んだ上、その長さ方向に沿って順次ボルト及びナット19を取り付けることによってより強固に固着しておくことが望ましい。
【0023】
以上のような止水部12を用いたことにより、目地材11が市販されているものであっても対応することができ、止水部12の設置位置や法・勾配を現場で自由に調整することができ、また止水部12を重ねて使用することができるのである。
【0024】
図6および図7はこの発明のコンクリート構造物の構築方法の第2の実施例を示すものである。すなわち、止水部12の両面の一対の接合片13をボルト及びナット21で固着するものである。
基本的には止水部12に孔を開けることは望ましいことではないが、接着面101に弾性のある接着剤を使用することにより、ボルト及びナット21によって止水部12の両面の一対の接合片13を強固に接合することができるとともに、止水の目的を損なうおそれもほとんどない。
図8(a)は第1の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図、(b)は第2の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図である。
【0025】
図9(a)〜(d)はそれぞれ目地材に止水部を組み付けた状態の平面図を示すもので、(a)は第1の実施例における目地材と止水部との組付構造を示している。この例では止水部12の両面に接合片13を接着面101を介して接合し、接合片13の外面に形成したコ字状の凹部16に目地材11を差込んだ上、その長さ方向に沿って順次ボルト及びナット19を凹部16を貫通して取り付けることによって、目地材11をより強固に固着している。
(b)は第2の実施例における目地材と止水部との組付構造を示している。この例では第1の実施例の組付構造に加えて、さらに止水部12の両面の一対の接合片13をも、その長さ方向に沿って取り付けたボルト及びナット21で止水部12に強固に固着しているのである。
(c)は(a)の実施例の変形例を、また(d)は(b)の変形例をそれぞれ示し、接合片13の端面を面取りした例を示している。
【0026】
図10および図11はこの発明のコンクリート構造物の構築方法の工程を示すフローチャートである。
まず、図10のフローチャートにおける小型コンクリート構造物の構築方法の工程は次の通りである。
1)田んぼの畦の側溝や道路の路側帯の排水溝ないし側溝、道路や水路の擁壁部分、あるいはその他のコンクリート構造物の連結部等の構築現場において、型枠を組み立てる。
2−1)型枠内の適所に、型枠内を交差するように目地材を取り付ける。型枠内への目地材の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
2−2)目地材の適所に設けたスリットに、その上下方向に沿って止水部を取り付ける。目地材への止水部の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
この止水部は、型枠内へ目地材を取り付ける前に、目地材の所定位置にスリットを形成して取り付けておくことも可能である。
3)型枠内の目地材の両側に、ほぼ同時にコンクリートを打設する。目地材および止水部は打設したコンクリート内に埋設されて一体化する。
4)打設したコンクリートを所定の時間養生する。
5)型枠を分解してコンクリートを脱型する。
6)コンクリート構造物が完成する。
【0027】
図11のフローチャートにおける大型コンクリート構造物の構築方法の工程は次の通りである。
1)田んぼの畦の側溝や道路の路側帯の排水溝ないし側溝、道路や水路の擁壁部分、あるいはその他のコンクリート構造物の連結部等の構築現場において、型枠を組み立てる。
2−1)型枠内の適所に、型枠内を交差するように仕切型枠を取り付ける。型枠内への仕切型枠の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
2−2)仕切型枠の適所に設けたスリットに、その上下方向に沿って止水部を取り付ける。仕切型枠への止水部の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
この止水部は、型枠内へ仕切型枠を取り付ける前に、仕切型枠の所定位置にスリットを形成して取り付けておくことも可能である。
3)型枠内の仕切型枠の片側にコンクリートを打設する。止水部、補強材やセパ等は打設したコンクリート内に埋設されて一体化する。
4)打設したコンクリートを所定の時間養生する。
5)型枠内の仕切型枠を外し、その位置に目地材を設置する。その際、止水部の中間位置に、目地材のスリットがはめ込まれる。
6)型枠内の目地材の片側にコンクリートを打設する。目地材、止水部、補強材やセパ等は打設したコンクリート内に埋設されて一体化する。
7)打設したコンクリートを所定の時間養生する。
8)型枠を分解してコンクリートを脱型する。
9)コンクリート構造物が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上記実施例のコンクリート構造物の構築方法は、田んぼの畦の側溝や道路の路側帯の排水溝ないし側溝、道路や水路の擁壁部分、あるいはその他のコンクリート構造物の連結部に適用することができる。そして、それらに止水効果の非常に高いコンクリート構造物の連結部の止水構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 コンクリート構造物
11 目地材
12 止水部
13 接合片
14 膨頭部
15 スリット
16 凹部
19 ボルト及びナット
21 ボルト及びナット
100 型枠
101 接着面
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物の連結部において発生する漏水を止水できるようにしたコンクリート構造物の構築方法に関し、特に躯体の連結部に介在させた目地材が経年変化でコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなっても、目地材に取り付けた止水板が確実に漏水を防止することができ、しかもそのようなコンクリート構造物を簡易かつ迅速に施工できるようにしたコンクリート構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物からの漏水はほとんどの場合に発生し、これまでも各種の止水構造が提案されている。すなわち、コンクリート構造物を所定の間隔で分割し、その連結部に目地材を介在させて夏場のコンクリート構造物の膨張や冬場のコンクリート構造物の収縮を吸収するようにしている。
【0003】
そのような用途に使用される目地材としては、アスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、樹脂もしくはゴム発泡体目地材、加熱型ゴムアスファルト注入目地材等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上述の各種止水用目地材や止水用目地材においても、長期間の経年変化により止水用目地材や止水用目地材がコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなってしまい、一定の期間ごとに目地材を注入すること等によって補修する必要があった。そして、そのような補修をしない場合には、あるいは補修が追いつかない場合には漏水の結果を招いてしまう。
【0005】
そこで、特公昭48−23382号公報(特許文献1参照)や実公昭48−31605号公報(特許文献2参照)、特開昭59−63110号公報(特許文献3参照)のように、止水板を目地材を横断して目地材の両側に突出させ、長期間の経年変化により止水用目地材や止水用目地材がコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなっても、その止水作用が損なわれないようにすることが提案されている。
【0006】
ただし、上記従来例においては、目地材を介して左右に配置されるコンクリートを打設する際、目地材の適所に止水部が形成されているときには止水部の取り付けを逐次長尺の止水材を適宜長さに切断しながら行なっていたため、目地材の両側を同時に打設することができず、工期がかかりすぎるという問題があった。
しかも止水部と目地材との組付けが面倒であり、また組付けにも多大の時間や人手を要していた。
【0007】
そこで本発明者は先に特開2009−24346号公報(特許文献4参照)において、型枠内におけるコンクリートの連結部に目地材を設置するとともに、当該目地材の両面の長さ方向に沿って目地材と直交する方向に止水部を突き合わせ、止水部の幅方向の端部の突き合わせ部分に目地材と平行に形成した接合片を介して、前記止水部を目地材に取り付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたコンクリート構造物の構築方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭48−23382号公報
【特許文献2】実公昭48−31605号公報
【特許文献3】特開昭59−63110号公報
【特許文献4】特開2009−24346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記従来例においては、目地材と直交する方向に一対の止水部を突き合わせた構造であったため、目地材と止水部の組み付けに手間がかかり、また部品点数が多くてコストがかかりすぎるという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、目地材に簡単に止水部を組み付けることができるようにするとともに、目地材の両側を同時に打設できるようにして、工期を大幅に短縮することが可能であり、しかも止水部と目地材との組付けが簡単であり、また組付けにも時間や人手が不要であって、簡易かつ迅速に施工できるようにしたコンクリート構造物の構築方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわちこの発明のコンクリート構造物の構築方法は、型枠内におけるコンクリートの連結部に中間部位に上下方向にスリットを形成した目地材を設置するとともに、当該目地材の前記スリットに目地材と直交する方向に止水部をはめ込んで止水部を組み付けた目地材を設置するに際し、目地材の止水部の板面に突き合わせる部分に、コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に形成した接合片を所定の接着手段を用いて貼付し、該コ字状の凹部に目地材をはめ込むことにより当該目地材のスリットに沿って目地材と交差するよう止水部を組み付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
またこの発明のコンクリート構造物の構築方法は、前記コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に配置した接合片が、止水部の所定位置に所定の接着手段を用いて貼付され、コ字状の凹部に目地材をはめ込んだ上、固着手段によって目地材に固着することをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のコンクリート構造物の構築方法によれば、止水部を形成した目地材を介して左右に配置されるコンクリートを打設する際、目地材の両側を同時に打設できるので、工期を大幅に短縮することが可能であり、しかも止水部と目地材との組付けが簡単であり、また組付けにも時間や人手が不要であって、簡易かつ迅速に施工できるようになった。
より詳しく述べると次の通りである。
1)小型構造物から大型構造物まで対応できる。
2)止水部と目地部を併せ持つ構造により、左右同時打設、工期短縮が可能である。
3)止水部と目地部の組立が容易である。
4)止水部と目地部が別々であるため運搬・保管しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンクリート打設用の型枠に目地材を取り付けた状態の斜視図である。
【図2】打設したコンクリート構造物の斜視図である。
【図3】小型のコンクリート構造物の構築方法の第1の実施例を示す斜視図である。
【図4】その平面図である。
【図5】この実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の斜視図である。
【図6】第2の実施例を示す平面図である。
【図7】この実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の斜視図である。
【図8】(a)は第1の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図、(b)は第2の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図である。
【図9】(a)〜(d)はそれぞれ目地材に止水部を組み付けた状態の平面図である。
【図10】この発明の小型コンクリート構造物の構築方法の工程を示すフローチャート、である。
【図11】この発明の大型コンクリート構造物の構築方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明によるコンクリート構造物の構築方法を、図面に基いて詳細に説明する。
【0016】
図1および図2はこの発明のコンクリート構造物の構築方法の実施例を示すもので、図1はコンクリート打設用の型枠に目地材を取り付けた状態の斜視図、図2は打設したコンクリート構造物の斜視図である。
この発明における目地材11は、その中間部位に上下方向にスリット15を形成し、当該目地材11の前記スリット15に目地材11と直交する方向に止水部12をはめ込んで一体的に取り付けている点を特徴とするものである。
この発明において使用される前記目地材11はアスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、PVCその他の樹脂もしくはゴム発泡体目地材等の素材を用いてシート状に成形されている。もちろん、この発明は市販の目地材にも適用できる。この目地材11は、押出成形等によって所定幅の長尺材に成形されている。
【0017】
また、止水部12もアスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、PVCその他の樹脂もしくはゴム発泡体目地材等の素材を用いてシート状に成形されている。この止水部12も、押出成形等によって所定幅の長尺材に成形されている。
【0018】
より詳しく説明すると、止水板12の素材として上記目地材11と同様にアスファルトを主成分とする瀝青タイプの目地材、アスファルトに繊維質素材を配合した瀝青繊維質目地材、樹脂もしくはゴム発泡体目地材等を利用することができるが、その場合には目地材11よりも硬質に形成しておくことが望ましい。上記樹脂の例としては、ポリ塩化ビニール(PVC)やポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
また、上記素材に代えて他の合成樹脂、あるいは硬質ゴム等を上記形状に成形したものを使用することもできる。いずれにしても止水部12はその取り扱い上、目地材11に取り付ける際に所定の剛性や硬度等を備えていることが望ましい。
【0019】
図1に示すように、前記シート状の目地材11は所定の型枠100内の中ほどを仕切るように取り付けられ、該目地材11のスリット15にはめ込まれた止水部12が、目地材11の両側から先端を打設するコンクリート内に突出するよう配設される。
その状態で型枠100内にコンクリートを打設し、養生して脱型したのが図2に示すコンクリート構造物10である。このコンクリート構造物10は長さ方向のほぼ中ほどに目地材11が介在し、さらに目地材11の中ほど両面に、止水部12が打設したコンクリート内に入り込むよう配設されているので、長期間の経年変化により目地材11がコンクリート構造物の膨張や収縮に対応できなくなっても、止水部12が存在することによってその止水作用が損なわれることがない。
【0020】
図3以下は、上記コンクリート構造物の構築方法に適用されるコンクリート構造物の連結部の構造を示している。
第1の実施例を示す図3において、所定の型枠100内に設置した小型のコンクリート構造物の連結部には、所定のサイズに切断した目地材11が介在され、該目地材11の中間部位に上下方向に形成したスリット15に、目地材11と直交する方向に止水部12をはめ込むことにより取り付けてある。そして、止水部12はコンクリート構造物の連結部において、コンクリート構造物の端面から所定の深さまで入り込むように組込まれるものである。
前記止水部12は、目地材11を止水部12の板面に突き合わせる部分に止水部12と平行に形成した接合片13を介して目地材11に固着したものである。このような接合片13の素材としては、ポリ塩化ビニルやABS樹脂等が好適に利用できる。
【0021】
図3に示す実施例をより詳細に説明する図4の平面図および図5の斜視図において、前記止水部12へ目地材11の端部を突き合わせる部分に止水部12と平行に形成した接合片13は、止水部12の両側に設けられている。また止水部12のコンクリート内部に突出する端部には必要に応じて膨頭部14が形成してあり、また止水部12の両側面にはその板面に直交するよう幅方向に向かって長さ方向に沿った複数列のリブ(コルゲート状のフィン)を形成することができる。これらの膨頭部14およびリブ(コルゲート状のフィン)は打設したコンクリートにより強固に結合するようにするためのものである。
【0022】
前記止水部12へ目地材11の端部を突き合わせる部分に止水部12と平行に形成した接合片13は、施工に際して止水部12の所定位置に接着される。この接着面101は、止水部12に接合片13を接着剤を介して接着したり、あるいは両面接着テープを予め接合片13の接合面に貼付しておき、剥離テープを剥がした上で止水部12に貼付すること等によって行なうことができる。なお、この接合片13の両側面にも、その板面に直交するよう幅方向に向かって長さ方向に沿った複数列のリブ(コルゲート状のフィン)を形成することができる。
もちろん、あらかじめ止水部12に接合片13を取り付けた状態で現場に搬入しても、施工前に現場で接合片13を止水部12に取り付けてもよい。
なお、目地材11は接合片13の外面に形成したコ字状の凹部16にはめ込んだ上、その長さ方向に沿って順次ボルト及びナット19を取り付けることによってより強固に固着しておくことが望ましい。
【0023】
以上のような止水部12を用いたことにより、目地材11が市販されているものであっても対応することができ、止水部12の設置位置や法・勾配を現場で自由に調整することができ、また止水部12を重ねて使用することができるのである。
【0024】
図6および図7はこの発明のコンクリート構造物の構築方法の第2の実施例を示すものである。すなわち、止水部12の両面の一対の接合片13をボルト及びナット21で固着するものである。
基本的には止水部12に孔を開けることは望ましいことではないが、接着面101に弾性のある接着剤を使用することにより、ボルト及びナット21によって止水部12の両面の一対の接合片13を強固に接合することができるとともに、止水の目的を損なうおそれもほとんどない。
図8(a)は第1の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図、(b)は第2の実施例における目地材に止水部を組み付けた状態の側面図である。
【0025】
図9(a)〜(d)はそれぞれ目地材に止水部を組み付けた状態の平面図を示すもので、(a)は第1の実施例における目地材と止水部との組付構造を示している。この例では止水部12の両面に接合片13を接着面101を介して接合し、接合片13の外面に形成したコ字状の凹部16に目地材11を差込んだ上、その長さ方向に沿って順次ボルト及びナット19を凹部16を貫通して取り付けることによって、目地材11をより強固に固着している。
(b)は第2の実施例における目地材と止水部との組付構造を示している。この例では第1の実施例の組付構造に加えて、さらに止水部12の両面の一対の接合片13をも、その長さ方向に沿って取り付けたボルト及びナット21で止水部12に強固に固着しているのである。
(c)は(a)の実施例の変形例を、また(d)は(b)の変形例をそれぞれ示し、接合片13の端面を面取りした例を示している。
【0026】
図10および図11はこの発明のコンクリート構造物の構築方法の工程を示すフローチャートである。
まず、図10のフローチャートにおける小型コンクリート構造物の構築方法の工程は次の通りである。
1)田んぼの畦の側溝や道路の路側帯の排水溝ないし側溝、道路や水路の擁壁部分、あるいはその他のコンクリート構造物の連結部等の構築現場において、型枠を組み立てる。
2−1)型枠内の適所に、型枠内を交差するように目地材を取り付ける。型枠内への目地材の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
2−2)目地材の適所に設けたスリットに、その上下方向に沿って止水部を取り付ける。目地材への止水部の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
この止水部は、型枠内へ目地材を取り付ける前に、目地材の所定位置にスリットを形成して取り付けておくことも可能である。
3)型枠内の目地材の両側に、ほぼ同時にコンクリートを打設する。目地材および止水部は打設したコンクリート内に埋設されて一体化する。
4)打設したコンクリートを所定の時間養生する。
5)型枠を分解してコンクリートを脱型する。
6)コンクリート構造物が完成する。
【0027】
図11のフローチャートにおける大型コンクリート構造物の構築方法の工程は次の通りである。
1)田んぼの畦の側溝や道路の路側帯の排水溝ないし側溝、道路や水路の擁壁部分、あるいはその他のコンクリート構造物の連結部等の構築現場において、型枠を組み立てる。
2−1)型枠内の適所に、型枠内を交差するように仕切型枠を取り付ける。型枠内への仕切型枠の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
2−2)仕切型枠の適所に設けたスリットに、その上下方向に沿って止水部を取り付ける。仕切型枠への止水部の取付位置や角度は、適宜決定することができる。
この止水部は、型枠内へ仕切型枠を取り付ける前に、仕切型枠の所定位置にスリットを形成して取り付けておくことも可能である。
3)型枠内の仕切型枠の片側にコンクリートを打設する。止水部、補強材やセパ等は打設したコンクリート内に埋設されて一体化する。
4)打設したコンクリートを所定の時間養生する。
5)型枠内の仕切型枠を外し、その位置に目地材を設置する。その際、止水部の中間位置に、目地材のスリットがはめ込まれる。
6)型枠内の目地材の片側にコンクリートを打設する。目地材、止水部、補強材やセパ等は打設したコンクリート内に埋設されて一体化する。
7)打設したコンクリートを所定の時間養生する。
8)型枠を分解してコンクリートを脱型する。
9)コンクリート構造物が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上記実施例のコンクリート構造物の構築方法は、田んぼの畦の側溝や道路の路側帯の排水溝ないし側溝、道路や水路の擁壁部分、あるいはその他のコンクリート構造物の連結部に適用することができる。そして、それらに止水効果の非常に高いコンクリート構造物の連結部の止水構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 コンクリート構造物
11 目地材
12 止水部
13 接合片
14 膨頭部
15 スリット
16 凹部
19 ボルト及びナット
21 ボルト及びナット
100 型枠
101 接着面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内におけるコンクリートの連結部に中間部位に上下方向にスリットを形成した目地材を設置するとともに、当該目地材の前記スリットに目地材と直交する方向に止水部をはめ込んで止水部を組み付けた目地材を設置するに際し、目地材の止水部の板面に突き合わせる部分に、コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に形成した接合片を所定の接着手段を用いて貼付し、該コ字状の凹部に目地材をはめ込むことにより当該目地材のスリットに沿って目地材と交差するよう止水部を組み付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたことを特徴とするコンクリート構造物の構築方法。
【請求項2】
前記コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に配置した接合片が、止水部の所定位置に所定の接着手段を用いて貼付され、コ字状の凹部に目地材をはめ込んだ上、固着手段によって目地材に固着することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の構築方法。
【請求項1】
型枠内におけるコンクリートの連結部に中間部位に上下方向にスリットを形成した目地材を設置するとともに、当該目地材の前記スリットに目地材と直交する方向に止水部をはめ込んで止水部を組み付けた目地材を設置するに際し、目地材の止水部の板面に突き合わせる部分に、コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に形成した接合片を所定の接着手段を用いて貼付し、該コ字状の凹部に目地材をはめ込むことにより当該目地材のスリットに沿って目地材と交差するよう止水部を組み付け、型枠内の目地材の両側に同時にコンクリートを打設し、打設したコンクリート内に目地材と止水部とが埋設されるようにしたことを特徴とするコンクリート構造物の構築方法。
【請求項2】
前記コ字状の凹部を形成しかつ止水部と平行に配置した接合片が、止水部の所定位置に所定の接着手段を用いて貼付され、コ字状の凹部に目地材をはめ込んだ上、固着手段によって目地材に固着することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−202070(P2012−202070A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66193(P2011−66193)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507240439)有限会社 山一建設 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507240439)有限会社 山一建設 (2)
【Fターム(参考)】
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