説明

コンクリート混和剤

【課題】コンクリート肌面に発生する黒ずみを抑制できるコンクリート混和剤を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン基を有する特定の単量体1とリン酸モノエステル系単量体2とリン酸ジエステル系単量体3とを共重合して得られるリン酸エステル系重合体A、及び、炭素数6〜14のオレフィンとマレイン酸とを共重合して得られる重量平均分子量が1000〜20000の重合体Bを含有するコンクリート混和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート混和剤、好ましくはセメント、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等、あるいは亜炭を含む骨材を含有するコンクリート用の混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート用混和材は、セメントペーストと反応させてあるいは複合させてコンクリートの性質を改質するために用いられる材であり、無機質の粉末からなるものが多く、セメントの代替やコンクリートに特別の機能を付与するために繁用される。代表的な混和材として、セメント代替を目的とする高炉スラグ、人工ポゾラン(フライアッシュ、シリカヒューム等)等があり、これらを適正に添加することはコンクリート製造において重要である。一般に、高炉スラグや、フライアッシュ、シリカヒューム、亜炭には黒色微粉等が含まれる。
【0003】
しかし、近年のシリカヒュームやフライアッシュ、高炉スラグ等の使用の増加、セメントへの焼却灰の混入(産業廃棄物の利用)、亜炭の含まれる骨材や混和材の使用、また、作業性、環境性向上を目的としたコンクリートの高流動化が原因となり、コンクリート硬化後の肌面に黒い斑状が生じる或いは全体的に黒ずむ現象が発生し、特に減水剤として、ポリカルボン酸系重合体を使用したコンクリートの場合が顕著であり、有効な改善策が望まれている。これを改善する技術として、特許文献1、2に鎖状オレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸との共重合体を用いる技術が開示されている。一方、特許文献3では、セメント用分散剤として、リン酸エステル系の重合物が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−83303号公報
【特許文献2】特開2004−175651号公報
【特許文献3】特開2000−327386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコンクリート混和剤では、黒色微粒成分が多く含まれるコンクリート配合系では、コンクリート肌面の黒ずみ防止効果は充分ではなかった。
【0006】
本発明は、黒色微粒成分が多く含まれるコンクリート配合系に於いてもコンクリート肌面に発生する黒ずみを抑制できるコンクリート混和剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2と一般式(3)で表される単量体3とを共重合して得られる重合体A(以下、重合体Aという)、及び炭素数6〜14のオレフィンと、マレイン酸、マレイン酸無水物またはマレイン酸塩とを共重合して得られる重量平均分子量が1000〜20000の重合体B(以下、重合体Bという)を含有するコンクリート混和剤に関する。
【0008】
【化7】

【0009】
〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r4、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0〜2の数、pとqは同時に0ではなく、rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数、R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
【0010】
【化8】

【0011】
〔式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、M3、M4はそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【0012】
【化9】

【0013】
〔式中、R13、R15は、それぞれ水素原子又はメチル基、R14、R16は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、M5は水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【0014】
また、本発明は、高炉スラグ、フライアッシュ、石粉、炭酸カルシウム、シリカヒューム及び亜炭から選ばれる一種以上と、上記本発明のコンクリート混和剤とを含有するコンクリート混和材に関する。
【0015】
また、本発明は、水硬性物質と、高炉スラグ、フライアッシュ、石粉、炭酸カルシウム、シリカヒューム及び亜炭から選ばれる一種以上と、上記本発明のコンクリート混和剤とを含有する水硬性組成物、並びに、該水硬性組成物を用いたコンクリート硬化体に関する。
【0016】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される単量体1と上記一般式(2)で表される単量体2と上記一般式(3)で表される単量体3とを共重合して得られる重合体A、及び炭素数6〜14のオレフィンとマレイン酸とを共重合して得られる重量平均分子量が1000〜20000の重合体Bを、水硬性物質及び水を含有する組成物に配合するコンクリート肌面の黒ずみ防止方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、黒色微粒成分が多く含まれるコンクリート配合系に於いてもコンクリート肌面に発生する黒ずみを抑制できるコンクリート混和剤が提供される。よって、本発明の混和剤により、コンクリート硬化体表面の黒ずみ発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
重合体Aと重合体Bとを配合したコンクリート混和剤は、従来のコンクリート混和剤では充分でなかった黒色微粒成分が多く含まれるコンクリート配合系に於いても、コンクリート肌面の黒ずみを抑制できるものである。この理由は、不明なるも、重合体Aと重合体Bの相乗的な黒色微粒成分の分散効果によるものと考えられる。
【0019】
<重合体A>
重合体Aは、前述の一般式(1)で表される単量体1と、前述の一般式(2)で表される単量体2と、前述の一般式(3)で表される単量体3とを共重合して得られるリン酸エステル系重合体である。
【0020】
[単量体1]
単量体1において、一般式(1)中のR1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基である。R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r4であり、水素原子が好ましい。一般式(1)のアルケニルとして、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられる。pが0の場合はAOは(CH2)qとエーテル結合、pが1の場合はエステル結合をする。qは0〜2であり、好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。pとqは同時に0ではない。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、EO基)を含むことがより好ましく、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、特に全AOがEO基であることが好ましい。rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数であり、重合体の水硬性組成物に対するセメント及び黒ずみ成分の分散性の観点から、3〜300であり、好ましくは4〜120であり、より好ましくは4〜80、さらに好ましくは4〜50、特にこのましくは4〜30である。また、平均r個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。例えばAOは、EO基以外にもプロピレンオキシ基等を含むこともできる。
【0021】
4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であり、更に1〜12、更に1〜4、更に1、2のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0022】
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物付加物が好ましく用いられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味であり、(メタ)アリルは、アリル及び/又はメタリルの意味である(以下同様)。
【0023】
より好ましくはアルコキシ、特にはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。具体的には、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω−メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。
【0024】
重合体Aの製造に用いる単量体1は、例えば、アルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化によって得ることができる。該エステル化物は、本発明のコンクリート混和剤に用いた場合の必要添加量および粘性低減の観点から、未反応の(メタ)アクリル酸は、酸型換算で単量体1に対して5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。単量体1の製造時に残留する(メタ)アクリル酸の量を低減する方法として、トッピング、スチーミング、溶媒抽出等が挙げられる。
【0025】
[単量体2]
単量体2は、一般式(2)において、R11は水素原子又はメチル基であり、R12は炭素数2〜12のアルキレン基である。m1は1〜30の数であり、M3、M4はそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。一般式(2)中のm1は1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0026】
具体的には、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル、ポリアルキレレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0027】
[単量体3]
単量体3は、一般式(3)において、R13、R15は、それぞれ水素原子又はメチル基であり、R14、R16は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基である。m2、m3は、それぞれ1〜30の数であり、M5は水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。一般式(3)中のm2、m3は、それぞれ1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0028】
具体的には、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0029】
単量体2及び3は、単量体2及び単量体3を含む混合単量体として用いることができる。また、単量体2及び単量体3として、一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させて得られるリン酸エステルを用いても良い。
【0030】
単量体2及び単量体3を含む混合単量体は、例えば、一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤を所定の仕込み比で反応させることで、反応生成物として製造することもできる。
【0031】
【化10】

【0032】
〔式中、R20は水素原子又はメチル基、R21は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
【0033】
一般式(4)中のm4は、1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0034】
リン酸エステルとして、例えばリン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物を製造する場合、公知の技術(例えば特開昭57−180618号)により、合成することができる。
【0035】
単量体2及び単量体3を含む混合単量体としては、モノエステル体とジエステル体とを含む市販品を使用することができ、例えば、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーP(ユニケミカル)、JAMP514、JAMP514P、JMP100(何れも城北化学)、ライトエステルP−1M、ライトアクリレートP−1A(いずれも共栄社化学)、MR200(大八化学)、カヤマー(日本化薬)、Ethyleneglycol methacrylate phosphate(アルドリッチ試薬)などとして入手できる。
【0036】
単量体2、3は、不飽和結合とヒドロキシル基を有する単量体のリン酸エステル化物であり、上記の市販品や反応生成物にはモノエステル体(単量体2)とジエステル体(単量体3)以外の化合物を含んでいる事が確認されている。それらの他の化合物は、重合性、非重合性のものが混在していると考えられるが、本発明ではこのような混合物(混合単量体)をそのまま使用することができる。
【0037】
また、単量体2及び3として、前記一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させて得られるリン酸エステル(Y)を用いることができる。
【0038】
一般式(4)中のm4は、1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0039】
リン酸エステル(Y)は、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを、下記式(I)で定義された比率が2.0〜4.0、更に2.5〜3.5、特に2.8〜3.2の条件下で反応させて得られたものが好ましい。
【0040】
【数1】

【0041】
本発明では、式(I)においては、リン酸化剤を便宜的にP25・n(H2O)として扱うものとする。
【0042】
リン酸化剤としては、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられ、オルトリン酸、五酸化リンが好ましい。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いることも出来る。有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させる際のリン酸化剤の量は目的とするリン酸エステル組成に応じ適時決めることができる。
【0043】
リン酸化剤は、五酸化リン(Z−1)並びに水、リン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種(Z−2)を含むリン酸化剤〔以下、リン酸化剤(Z)という〕が好ましく、この場合も、式(I)においては、五酸化リン(Z−1)と、水、リン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれた少なくとも一種(Z−2)とを含むリン酸化剤(Z)を、便宜的にP25・n(H2O)として扱うものとする。
【0044】
また、式(I)で定義されたリン酸化剤のモル数とは、原料として反応系に導入されるリン酸化剤、特にリン酸化剤(Z)に由来するP25単位の量(モル)を示す。また、水のモル数とは、原料として、反応系に導入されるリン酸化剤(Z)に由来する水(H2O)の量(モル)を示す。即ち、水には、ポリリン酸を(P25・xH2O)と、オルトリン酸を〔1/2(P25・3H2O)〕として表した場合の水を含めた反応系内に存在する全ての水が含まれることになる。
【0045】
また、有機ヒドロキシ化合物にリン酸化剤を添加する際の温度は20〜100℃が好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。また、反応系へのリン酸化剤の添加に要する時間(添加開始から添加終了までの時間)は0.1時間〜20時間が好ましく、0.5時間〜10時間がさらに好ましい。
【0046】
リン酸化剤投入後の反応系の温度は20〜100℃が好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。
【0047】
リン酸化反応終了後は、生成したリン酸の縮合物(ピロリン酸結合を有する有機化合物やリン酸)を加水分解により低減しても良く、又加水分解を行わなくても、重合体A製造用のモノマーとしては好適である。
【0048】
本発明に係る重合体Aは、単量体1と、単量体2と、単量体3とを、共重合させて得られるリン酸エステル系重合体である。単量体2及び単量体3を含有する混合単量体を用いることも好ましい。重合体Aは、単量体1〜3をpH7以下で共重合して得られたものが好ましい。
【0049】
単量体1、2及び3の好ましいものはそれぞれ前記の通りであり、また前記した市販品や反応生成物を使用することもできる。
【0050】
単量体の共重合に際して、単量体1と、単量体2、3とのモル比は、単量体1/(単量体2+単量体3)=5/95〜95/5、更に、10/90〜90/10が好ましい。また、単量体1と単量体2と単量体3のモル比は、単量体1/単量体2/単量体3=5〜95/3〜90/1〜80/、更に5〜96/3〜80/1〜60(ただし合計は100である)が好ましい。なお、単量体2と単量体3については、酸型の化合物に基づきモル比やモル%を算出するものとする(以下、同様)。
【0051】
また、重合体Aの製造では、反応に用いる全単量体中、単量体3の比率を1〜60モル%、更に1〜30モル%とすることが好ましい。
【0052】
また、単量体2と単量体3のモル比を、単量体2/単量体3=99/1〜4/96、更に99/1〜5/95とすることが好ましい。
【0053】
ゲル化を抑制する観点から、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液のpHを7以下で反応に用いることが好ましい。
【0054】
以下、ゲル化抑制、好適分子量の調整及び水硬性組成物用分散剤の性能設計の観点から、更に好ましい製造条件を説明する。このような観点から、共重合の際に、単量体1、2及び3の合計モル数に対して4モル%以上、更に6モル%以上、特に8モル%以上の連鎖移動剤を使用することが好ましい。また、連鎖移動剤の使用量の上限は、単量体1、2及び3の合計モル数に対して好ましくは100モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、特に好ましくは15モル%以下とすることができる。更に詳しくは、(1)単量体1のrが3〜30の場合で、
(1−1)単量体2と単量体3の単量体1、2及び3の合計のモル比が50モル%以上の場合は、連鎖移動剤は、単量体1、2及び3の合計に対して6〜100モル%、特に8〜60モル%を用いるのが好ましく、
(1−2)単量体2と単量体3の単量体1、2及び3の合計中のモル比が50モル%未満の場合は、連鎖移動剤は、単量体1、2及び3の合計に対して4〜60モル%、特に5〜30モル%を用いるのが好ましい。
(2)重合体Aに用いる単量体1のrが30超の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して6〜50モル%、特に8〜40モル%を用いるのが好ましい。
【0055】
単量体2と3の反応率は60%以上、更に70%以上、更に80%以上、更に90%以上、特に95%以上を目標に行うことが好ましく、連鎖移動剤の使用量は、この観点から選定することができる。ここに、単量体2と3の反応率は、下記の式によって算出する。
【0056】
【数2】

【0057】
なお、反応開始時と反応終了時の反応系中のリン含有化合物中の単量体2と単量体3のエチレン性不飽和結合の割合(モル%)は、下記の1H−NMRの測定結果に基づき算出することができる。
1H−NMR条件]
水に溶解した重合体Aを減圧乾燥したものを3〜4重量%の濃度で重メタノールに溶解し、1H−NMRを測定する。エチレン性不飽和結合の残存率は、5.5〜6.2ppmの積分値により測定される。なお、1H−NMRの測定は、Varian社製「Mercury 400 NMR」を用い、データポイント数42052、測定範囲6410.3Hz、パルス幅4.5μs、パルス待ち時間10S、測定温度25.0℃の条件で行う。
【0058】
重合体Aの製造においては、上記単量体1、2及び3の他に、共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。共重合可能な他の単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩を挙げることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのアクリル酸系単量体を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、メチルエステル、エチルエステルや無水マレイン酸などの無水化合物であっても良い。更に、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。全単量体中、単量体1、2及び3の合計の割合は、30〜100モル%、更に50〜100モル%、特に75〜100モル%が好ましく、更に、95モル%超〜100モル%、更に97〜100モル%、特に100モル%が好ましい。
【0059】
重合体Aの製造は、好ましくは所定量の連鎖移動剤の存在下で、単量体を共重合させる。また、共重合可能な他の単量体や重合開始剤等を用いても良い。
【0060】
単量体1、2及び3の反応温度は、40〜100℃、更に60〜90℃が好ましく、反応圧力はゲージ圧で101.3〜111.5kPa(1〜1.1atm)、更に101.3〜106.4kPa(1〜1.05atm)が好ましい。
【0061】
なお、反応系のpHは、必要に応じて、無機酸(リン酸、塩酸、硝酸、硫酸等)や、NaOH、KOH、トリエタノールアミンなどを用いて調整できる。
【0062】
ここで、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液は、pH測定上、含水系(すなわち、溶媒が水を含むこと)である事が好ましいが、非水系の場合には必要量の水を加えて測定しても良い。単量体溶液の均一性、ゲル化防止、性能低下の抑制の観点で、pHは7以下が好ましく、0.1〜6がより好ましく、更に0.2〜4.5が好ましい。また、単量体1もpH7以下の単量体溶液として用いることが好ましい。このpHは、20℃のものである。
【0063】
本発明では、反応途中(反応開始時〜反応終了時)で採取した反応液の20℃でのpHを、反応中のpHとする。反応中のpHが7以下となることが明らかな条件(単量体比率、溶媒、その他の成分等)で反応を開始することが好ましい。
【0064】
なお、反応系が非水系の場合は、pH測定可能な量の水を反応系に加えて測定することができる。
【0065】
重合体Aの製造方法において、単量体1、2及び3は、以下の(1)、(2)に例示した条件で反応を行えば、その他の条件の考慮の下で、通常は、反応中のpHも7以下になると考えられる。
(1)単量体1、2及び3を全て含むpH7以下の単量体溶液を、単量体1、2及び3の共重合反応に用いる。
(2)単量体1、2及び3の共重合反応をpH7以下で開始する。すなわち、単量体1、2及び3を含む反応系を、pH7以下にした後、反応を開始する。
【0066】
[連鎖移動剤]
連鎖移動剤は、ラジカル重合における連鎖移動反応(成長しつつある重合体ラジカルが他の分子と反応してラジカル活性点の移動が起こる反応)をもたらす機能を有し、連鎖単体の移動を目的として添加される物質である。
【0067】
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0068】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0069】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
【0070】
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0071】
[重合開始剤]
重合体Aの製造方法では、重合開始剤を使用することが好ましく、特に、単量体1、2及び3の合計モル数に対して重合開始剤を5モル%以上、更に7〜50モル%、特に10〜30モル%使用することが好ましい。
【0072】
水系の重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が使用できる。また、重合開始剤と併用して、亜硫酸水素ナトリウム、アミン化合物などの促進剤を使用することもできる。
【0073】
[溶媒]
重合体Aの製造では、溶液重合法で実施することができ、その際に使用される溶媒としては、水、あるいは、水と、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールアセトン、メチルエチルケトン等とを含有する含水溶媒系の溶媒が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水が好ましい。特に水系の溶媒を用いる場合、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液のpHは7以下であることが好ましく、更に0.1〜6、特に0.2〜4で反応に用いて共重合反応を行うことが、モノマー混液の均一性(取り扱い性)、モノマー反応率の観点や、リン酸系化合物のピロ体の加水分解により架橋を抑制する点で好ましい。
【0074】
重合体Aの製造方法の一例を示す。反応容器に所定量の水を仕込み、窒素等の不活性気体で雰囲気を置換し昇温する。予め単量体1、単量体2、単量体3、連鎖移動剤を水に混合溶解したものと、重合開始剤を水に溶解したものとを用意し、0.5〜5時間かけて反応容器に滴下する。その際、各単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤を別々に滴下してもよく、また、単量体の混合溶液を予め反応容器に仕込み、重合開始剤のみを滴下することも可能である。すなわち、連鎖移動剤、重合開始剤、その他の添加剤は、単量体溶液とは別に添加剤溶液として添加しても良いし、単量体溶液に配合して添加してもよいが、重合の安定性の観点からは、単量体溶液とは別に添加剤溶液として反応系に供給することが好ましい。何れの場合も、単量体2及び/又は単量体3を含有する溶液はpH7以下が好ましい。また、酸剤等により、好ましくはpHを7以下に維持して共重合反応を行い、好ましくは所定時間の熟成を行う。なお、重合開始剤は、全量を単量体と同時に滴下しても良いし、分割して添加しても良いが、分割して添加することが未反応単量体の低減の点では好ましい。例えば、最終的に使用する重合開始剤の全量中、1/2〜2/3の重合開始剤を単量体と同時に添加し、残部を単量体滴下終了後1〜2時間熟成した後、添加することが好ましい。必要に応じ、熟成終了後に更にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和し、本発明に係るリン酸エステル系重合体を得る。この製造例は、本発明に係る重合体Aの製造方法として好適である。
【0075】
反応系の単量体1、2及び3並びに共重合可能なその他の単量体の総量は、5〜80重量%が好ましく、10〜65重量%がより好ましく、20〜50重量%が特に好ましい。
【0076】
重合体Aは、重量平均分子量(Mw)が10,000〜150,000であることが好ましい。この重合体Aは、分散効果の発現や粘性低減効果の観点から、Mwが10,000以上であり、好ましくは12,000以上、さらに好ましくは13,000以上、より好ましくは14,000以上、特に好ましくは15,000以上で、架橋による高分子量化、ゲル化の抑制や性能面では分散効果や粘性低減効果の観点から、150,000以下であり、好ましくは130,000以下、さらに好ましくは120,000以下、より好ましくは110,000以下、特に好ましくは100,000以下であり、前記両者の観点から、好ましくは12,000〜130,000、より好ましくは13,000〜120,000、さらに好ましくは14,000〜110,000、特に好ましくは15,000〜100,000である。この範囲のMwを有し、かつ数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが1.0〜2.6であることが好ましい。さらに好ましくは1.0〜2.4、より好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.0〜1.8である。ここで、Mnは数平均分子量である。Mw/Mnは、例えば連鎖移動剤の量を調整することで制御することができる。連鎖移動剤の量を多くすると、Mw/Mnは小さくなる傾向がある。
【0077】
重合体AのMw及びMnは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。なお、本発明におけるリン酸エステル系重合体のMw/Mnは、該重合体のピークに基づいて算出されたものとする。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0078】
上記のようなMw/Mnを満たすリン酸エステル系重合体は、ジエステル体である単量体3による架橋を抑制することにより適度な分岐構造となり、分子内に密に吸着基が存在する構造を形成するものと考えられる。また分散度Mw/Mnを所定範囲に抑制することで同一サイズの分子が単分散した系に近づくため、吸着対象物質(例えばセメント粒子)に対する吸着量も多くすることが可能と考えられる。この両者を満足することで、セメント粒子等の吸着対象物質に密にパッキングすることが可能となり、分散性と粘性低減効果の両立に有効であると推定している。
【0079】
また、上記条件でのGPC法で得られる分子量分布を示すチャートのパターンにおいて、分子量10万以上の面積が当該チャート全体の面積の5%以下であることが、セメント及び黒ずみ成分の分散性の観点からより好ましい。
【0080】
<重合体B>
本発明に用いられる重合体Bは、オレフィン−マレイン酸共重合体であり、炭素数6〜14の鎖状オレフィンと、マレイン酸、マレイン酸無水物またはマレイン酸塩の共重合体である。鎖状オレフィンと、マレイン酸、マレイン酸無水物またはマレイン酸塩の混合物の共重合体が好ましい。カーボン類の分散とセメントの分散を阻害しない面から、オレフィン由来の構成単位の炭素数は6〜14であり、好ましくは、8〜12、特に好ましくは、8〜10である。重合体Bとしては、具体的には下記の構成単位(I)を有する共重合体が挙げられる。
【0081】
【化11】

【0082】
〔式中、Rは炭素数6〜14の二価の炭化水素基、Xは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基である。〕
【0083】
重合体Bは酸型または中和塩を用いることができ、中和度も任意に選択することができる。したがって、構成単位(I)中のXは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基である。有機アンモニウム基は、アルキルもしくはヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)置換アンモニウム基が好ましい。塩としては、一価金属塩、例えばNa、Kなどのアルカリ金属塩、二価金属塩、例えばCa、Mgなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、例えばアルカノール(炭素数2〜6)アンモニウム塩が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属塩である。
【0084】
また、重合体Bの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリスチレンスルホン酸換算)は、1000〜20000であり、好ましくは2000〜15000、特に3000〜10000が好ましい。共重合体Cは、例えば、特開昭51−101024号公報記載の方法に準じて製造できる。
【0085】
<重合体C>
本発明のコンクリート混和剤は、重合体A、重合体B以外の重合体を含有することができる。特に、上記一般式(1)で表される単量体1と、下記の一般式(5)で表される単量体5とを共重合して得られる重合体C(以下、重合体Cという)を含有することができる。
【0086】
【化12】

【0087】
〔式中、R5〜R7は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
【0088】
[単量体1]
重合体Cに関して、単量体1において、一般式(1)中のR1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基である。R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r4であり、水素原子が好ましい。一般式(1)のアルケニルとして、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられる。pが0の場合はAOは(CH2)qとエーテル結合、pが1の場合はエステル結合をする。qは0〜2であり、好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、EO基)を含むことがより好ましく、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、特に全AOがEO基であることが好ましい。rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数であり、好ましくは5〜120である。また、平均r個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。例えばAOは、EO基以外にもプロピレンオキシ基等を含むこともできる。
【0089】
重合体Cがコンクリートの初期強度と流動性をより高く発現するために、一般式(1)中のrは50〜300が好ましく、さらに110〜300が好ましく、重合性からrは200以下、更に150以下、特に130以下が好ましいので、総合的な観点から、rとしては110〜200、更に110〜150、特に110〜130が好ましい。コンクリートの粘性を更に低くする観点から、一般式(1)中のrは3〜100が好ましく、3〜50がより好ましい。
【0090】
4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であり、更に1〜12、更に1〜4、更に1、2のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0091】
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物付加物が好ましく用いられる。
【0092】
より好ましくはアルコキシ、特にはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。具体的には、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω−メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。
【0093】
重合体Cが、rの異なる複数の単量体1を用いて得られる場合は、rは重合体全体の平均値を表す。例えば、重合体Cがr=r1である単量体をx1モル%、r=r2である単量体をx2モル%用いて得られる場合、rは、r=(r11+r22)/(x1+x2)により求められる。
【0094】
[単量体5]
単量体5において、一般式(5)中のR5〜R7は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよい。その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。R5は水素原子が好ましく、R6はメチル基が好ましい。R7は水素原子又は(CH2)sCOOM2が好ましい。
【0095】
1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基である。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属が好ましい。
【0096】
具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。
【0097】
重合体Cは、例えば反応容器に水を仕込み昇温し、その中で単量体1と単量体5とを連鎖移動剤等の存在下、モル比及び重量比を一定として反応させ、熟成することにより製造することができる。必要により熟成後中和する。
【0098】
重合体Cの製造に用いる単量体1と単量体5の重量比(単量体1/単量体5)は97/3〜3/97が好ましく、95/5〜5/95がより好ましく、90/10〜10/90が更に好ましい。
【0099】
重合体Cは、該重合体を製造するための全単量体に対する単量体5の平均重量比(YI)が1〜30(重量%)であることが好ましい。平均重量比は、〔単量体5の合計量/重合体Cの合成に用いた全単量体の合計量〕×100(重量%)で表される。重合体Cの汎用性をより広くするには、該重合体Cの平均重量比とは異なる平均重量比(YII)により製造された重合体C’を併用することが好ましい。
【0100】
重合体C及びC’は、平均重量比(YI)と(YII)とが2以上異なるように選択することが好ましい。なお、重合体CとC’とで、製造に用いる単量体1及び単量体5の種類が異なっていても同一であってもよいが、同一の種類のものを用いるのが好ましい。
【0101】
また、本発明では、重合体Cとして、単量体1の少なくとも1種と単量体5の少なくとも1種とを共重合させて得られ、且つ前記単量体1と単量体5のモル比[単量体1]/[単量体5]が反応途中において少なくとも1回変化されている共重合体混合物〔以下、共重合体混合物(C)ともいう〕を用いることもできる。このような共重合体混合物(C)は、反応系に添加する単量体1と単量体5のモル比[単量体1]/[単量体5]を反応途中において少なくとも1回変化することにより製造することができる。その際、モル比[単量体1]/[単量体5]の最大値と最小値の差が少なくとも0.05、特に0.05〜2.5の範囲にあることが好ましい。
【0102】
共重合体混合物(C)は、上記単量体1及び単量体5とを、好ましくは[単量体1]/[単量体5]=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られるが、これらのモル比[単量体1]/[単量体5]は反応途中において少なくとも1回変化されている。そして、本発明では、共重合体混合物(C)を製造するための全単量体に対する単量体5の平均重量比(XI)と異なる平均重量比(XII)により得られた共重合体混合物(C')を併用することが好ましい。すなわち、共重合体混合物(C')は、上記単量体1及び単量体5とを、好ましくは[単量体1]/[単量体5]=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られた共重合体混合物であって、これらのモル比[単量体1]/[単量体5]は反応途中において少なくとも1回変化されており、該共重合体混合物(C')を製造するための全単量体に対する単量体5の平均重量比(XII)が、共重合体混合物(C)の平均重量比(XI)とは異なるものである。平均重量比は、〔単量体5の合計量/全単量体量〕×100(重量%)で表され、それぞれ1〜30(重量%)の範囲にあることが好ましい。また、この平均重量比(XI)、(XII)は、少なくとも0.1(重量%)、更に少なくとも0.5重量%、特に少なくとも1.0相違することが好ましい。なお、共重合体混合物(C)と(C')とで、製造に用いる単量体1及び単量体5の種類が異なっていても、本発明では平均重量比(XI)、(XII)が異なっていればよいが、単量体1及び単量体5として同一の種類のものを用いるのが好ましい。
【0103】
また、本発明では、重合体Cに用いる単量体5として一般式(5)中のM1、M2がアルキル基(好ましくは炭素数1〜3)、ヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数2〜5)、又はアルケニル基(好ましくは炭素数2〜5)である化合物を用いた重合体(以下、重合体C''という)を用いることができる。
【0104】
この場合、重合体C''の製造に用いる単量体1の好ましい構造、種類は前記したものと同じである。
【0105】
<コンクリート混和剤>
本発明のコンクリート混和剤の全固形分中、重合体Aと重合体Bの合計濃度は、30〜100重量%、更に、50〜100重量%であることが好ましい。
【0106】
本発明のコンクリート混和剤において、重合体Aと重合体Bの重量比は、重合体A/重合体B=99/1〜60/40が好ましく、より好ましくは98/2〜70/30、特に好ましくは97/3〜85/15である。
【0107】
重合体Cを用いる場合、重合体Aと重合体Cの重量比は、重合体A/重合体C=99/1〜20/80、更に、95/5〜30/70、特に90/10〜50/50が好ましい。
【0108】
本発明のコンクリート混和剤では、重合体Aと重合体B及び重合体Cの合計が、全固形分中、50〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%である。
【0109】
本発明のコンクリート混和剤は、コンクリート肌面黒ずみ防止剤として用いることができる。
【0110】
本発明のコンクリート混和剤は、その他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系、ポリマレイン酸系等の高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのEO付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0111】
本発明のコンクリート混和剤は、水硬性組成物中の水硬性物質に対して、0.01〜1重量%(固形分換算)の比率で使用することが好ましく、0.09〜0.4重量%(固形分換算)が更に好ましい。
【0112】
本発明のコンクリート混和剤中の重合体Aの含有量は、50〜100重量%(固形分換算)が好ましく、より好ましくは70〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%である。
【0113】
高炉スラグ、フライアッシュ、石粉、炭酸カルシウム、シリカヒューム及び亜炭から選ばれる一種以上(以下、混和材(I)という)を、予め本発明のコンクリート混和剤と混合して用いることができる。例えば、混和材(I)と本発明のコンクリート混和剤とを含有する粉末状コンクリート混和材(以下、粉末状混和材という)、並びに、水硬性物質と、混和材(I)と、本発明のコンクリート混和剤とを含有する粉末状水硬性組成物が得られる。その際、混合する本発明のコンクリート混和剤は、粉末状のものが好ましい。これら粉末状混和材や水硬性組成物を用いると、コンクリート調製時に混和剤の添加操作を行う必要がないため、簡便性が向上する。前記粉末状混和材において、本発明のコンクリート混和剤の比率は、粉末混和材中、0.001〜1.2重量%(固形分換算)が好ましく、より好ましくは0.01〜0.6重量%、特に好ましくは0.02〜0.3重量%である。また、前記粉末状水硬性組成物においては、本発明のコンクリート混和剤の比率は、水硬性物質に対して0.0001〜0.4重量%(固形分換算)が好ましく、より好ましくは0.001〜0.2重量%、特に好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0114】
本発明の混和剤のセメント分散性とコンクリート肌面黒ずみ抑制効果の顕著性の点から、水硬性組成物の水/水硬性物質の比(重量%)は45重量%以下が好ましく、より好ましくは45〜20重量%、特に好ましくは40〜20重量%である。また、重合体Aを含有する水硬性組成物に対して重合体Bをコンクリート肌面黒ずみ防止剤として用いる場合も、セメント分散性とコンクリート肌面黒ずみ抑制効果の顕著性の点から、水硬性組成物の水/水硬性物質の比(重量%)は45重量%以下が好ましく、より好ましくは45〜20重量%、特に好ましくは40〜20重量%である。
【0115】
重合体A及び重合体Bとを水硬性組成物に配合し、得られるコンクリート肌面の黒ずみを防止することもできる。配合の際、重合体A及び重合体Bは別々に添加しても良い。重合体A及びBの配合量や配合比率等の好適値は、重合体A及びBを含有するコンクリート混和剤と同様である。
【0116】
本発明によれば、水硬性物質と、重合体A或いは重合体Aと重合体Cの混合物とを前記水硬性物質に対して0.006〜1重量%(固形分換算)含有する水硬性組成物に対して、重合体Bを前記水硬性物質に対して0.0001〜0.4重量%(固形分換算)の比率で添加する工程を有する、コンクリートの肌面の黒ずみ防止方法が提供される。
【0117】
本発明の混和剤が対象とする水硬性組成物は、セメント類を主成分とするセメントペースト、モルタル、コンクリート等であり、特に限定しないが、特に黒色微紛が多く含まれる、高炉スラグ、フライアッシュ、石粉、炭酸カルシウム、シリカヒューム及び亜炭を含有する水硬性組成物に使用することが好ましい。さらには、これら粉体を含有する流動性の高い自己充填用コンクリートに使用するのが好ましく、モルタルフロー(JIS R-5201 セメントの物理試験方法に準じ、タッピングなし)で180〜400mmの領域が挙げられる。この水硬性組成物を用いたコンクリート硬化体は、黒色微紛が多く含まれる材料を含有する場合であっても表面の黒ずみが防止され美観に優れる。
【0118】
本発明の混和剤の対象となる水硬性組成物は、水硬性粉体等の水硬性物質を含有するものであり、水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の混和剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【0119】
水硬性物質への添加方法は、本発明のコンクリート混和剤を予め混合、或いは別々の添加、混合水への投入、混合同時、途中、終了前の添加の何れでもよく、限定するものではない。又コンクリート混和剤の形態は液体、粉体のいずれも可能である
【0120】
また本発明の水硬性組成物には、各種の材(剤)を使用することができる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;早強剤又は促進剤;発泡剤;防水剤;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系、ポリマレイン酸系等の高性能減水剤;防錆剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。また、上記成分は本発明のコンクリート混和剤中やコンクリート肌面黒ずみ防止剤中に配合してもよい。
【実施例】
【0121】
製造例A
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水366gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)450g(有効分60.8重量%、水分35重量%)とリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物であるリン酸エステル化物(A)71.6gと3−メルカプトプロピオン酸4.5gを混合したものと過硫酸アンモニウム8.4gを水48gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.8gを水10gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32%水酸化ナトリウム水溶液44.4gで中和し、重量平均分子量35000の重合体a−1を得た。(単量体重合pH:1.0、反応率100%)
【0122】
なお、本製造例で使用したリン酸エステル化物(A)は、反応容器中にメタクリル酸2-ヒドロキシエチル200gと85%リン酸(H3PO4)36.0gを仕込み、5酸化2リン(無水リン酸)(P2O5)89.1gを温度が60℃を超えないように冷却しながら徐々に添加した。終了後、反応温度を80℃に設定し、6時間反応させ、冷却して得られたものである。以下の製造例の一部でも、このリン酸エステル化物(A)を使用した。
【0123】
表1の重合体a−2〜a−7についても、表1に示した仕込み比率を用いて製造例Aに準じて合成を行った。
【0124】
ただし、重合体a−4及びa−5は、単量体1としてω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数9)を用いた。
【0125】
また、重合体a−6は、単量体1としてω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数9:新中村化学製NKエステルM90G)、単量体2及び3としてリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(ホスマーM:ユニケミカル(株))を用い、単量体1〜3を含む混合液を単量体1と同じ重量の水に溶解したもの滴下した。
【0126】
また、重合体a−7は、単量体1としてω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23:新中村化学製NKエステルM230G)、単量体2及び3としてホスマーM:ユニケミカル(株)を用い、単量体1〜3を含む混合液を単量体1と同じ重量の水に溶解したものを滴下した。
【0127】
製造例B
オートクレーブ中窒素雰囲気下にて、マレイン酸116重量部(1モル)、C6オレフィン86重量部(1モル)、過酸化ベンゾイル4部及びトルエン400部の混合物を70〜75℃にて8時間混合重合した。重合終了後、析出した共重合体を濾別乾燥して共重合体を得た。水620gと共重合体202g(1モル)に対し30%水酸化ナトリウムを266g(水酸化ナトリウムが2モル)加え、80℃で透明に溶解するまで、攪拌を行い、重合体No.b−1を得た。共重合体No.b−2−1〜b−2−4、b−3〜b−5、比較1〜3についてもこの方法に準じて製造した。この製造では、分子量は過酸化ベンゾイルの量で調整した。
【0128】
製造例C1
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水281.4g仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω-メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数120)336.5gとメタクリル酸22.2gと2-メルカプトエタノール1.89gを水238.2gに溶解したものと過硫酸アンモニウム3.68gを水45gに溶解したものの二者をそれぞれ1.5時間かけて滴下した。引き続き、過硫酸アンモニウム1.47gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム18.7gで中和し、共重合体c−1を得た。(重量平均分子量79000)
【0129】
製造例C2
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水246.4g仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で56℃まで昇温した。ω-メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数10)148.8gとメタクリル酸39.2gと3-メルカプトプロピオン酸2.32gを混合したものと過硫酸アンモニウム5%水溶液43.3gの二者をそれぞれ1.5時間かけて滴下した。その後3時間同温度(56℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウムでpH=6まで中和し、共重合体c−2を得た。(重量平均分子量34000)
【0130】
上記重合体A、重合体B、重合体Cの単量体、モル%等を表1〜3にまとめた。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
<実施例1〜12及び比較例1〜7>
上記重合体A、重合体B及び重合体Cを用いてコンクリート混和剤を調製し、以下のモルタル配合に対する評価を行った。結果を表4に示す。
【0135】
(配合1)
セメント〔太平洋セメント(株)製;普通ポルトランドセメント〕300g、フライアッシュ〔JIS II種;強熱減量3.9%〕300g、瀬戸内産海砂800g、水175g、消泡剤〔日華化学(株)製;フォームレックス797〕0.01g、重合体A、重合体B及び重合体Cを、モルタルミキサーにて混練する。その際、JIS R-5201セメントの物理試験方法に従い、モルタルフローが260〜300mmになるように、重合体A、重合体B及び重合体Cの添加量を調整した。重合体の組み合わせ及び添加量は表4に示す通りである。表4中、添加量は、重合体A、重合体B及び重合体Cの有効分としての対セメント重量%である。
【0136】
(配合2)
セメント〔太平洋セメント(株)製;普通ポルトランドセメント〕500g、シリカヒューム〔花王(株)製;マイクロポズ〕50g、瀬戸内産海砂800g、水175g、消泡剤〔日華化学(株)製;フォームレックス797〕0.01g、重合体A、重合体B及び重合体Cを、モルタルミキサーにて混練する。以下、配合1と同様にしてモルタルを調製した。
【0137】
<参考例>
セメント〔太平洋セメント(株)製;普通ポルトランドセメント〕300g、フライアッシュ〔JIS II種;強熱減量2.1%〕200g、瀬戸内産海砂800g、水170g、消泡剤〔日華化学(株)製;フォームレックス797〕0.01g、比較例3と同様の組み合わせで重合体B及び重合体Cを、モルタルミキサーにて混練する。その際、JIS R-5201セメントの物理試験方法に従い、モルタルフローが260〜300mmになるように、重合体B及び重合体Cの添加量を調整した。添加量は表4に示す通りである。表4中、添加量は、重合体B及び重合体Cの有効分としての対セメント重量%である。この参考例の配合は、黒色微粉の含有量が配合1よりも少ない。
【0138】
(性能評価)
混練後、モルタルを型枠(同様JIS R-5201)に充填し、更に振動〔25回タッピング(1回/1秒)〕を加え、その後24時間室内20℃で養生し、外観を写真撮影し、目視観察により黒ずみ部分を判断し、写真の2値化を行い、画像解析で全面積に対する黒ずみ部分の面積を求め、黒ずみ面積率とした。そして、下記基準で黒ずみを評価した。
黒ずみ判断基準:◎黒ずみなし、○黒ずみ面積率5%以下、△黒ずみ面積率5%超〜10%以下、×黒ずみ面積率10%超
【0139】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2と一般式(3)で表される単量体3とを共重合して得られる重合体A、及び炭素数6〜14のオレフィンと、マレイン酸、マレイン酸無水物またはマレイン酸塩とを共重合して得られる重量平均分子量が1000〜20000の重合体Bを含有するコンクリート混和剤。
【化1】


〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r4、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0〜2の数、pとqは同時に0ではなく、rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数、R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
【化2】


〔式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、M3、M4はそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【化3】


〔式中、R13、R15は、それぞれ水素原子又はメチル基、R14、R16は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、M5は水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【請求項2】
重合体A/重合体Bの重量比が、重合体A/重合体B=99/1/〜60/40である請求項1記載のコンクリート混和剤。
【請求項3】
高炉スラグ、フライアッシュ、石粉、炭酸カルシウム、シリカヒューム及び亜炭から選ばれる一種以上と、請求項1又は2記載のコンクリート混和剤とを含有するコンクリート混和材。
【請求項4】
水硬性物質と、高炉スラグ、フライアッシュ、石粉、炭酸カルシウム、シリカヒューム及び亜炭から選ばれる一種以上と、請求項1又は2記載のコンクリート混和剤とを含有する水硬性組成物。
【請求項5】
請求項4記載の水硬性組成物を用いたコンクリート硬化体。
【請求項6】
一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2と一般式(3)で表される単量体3とを共重合して得られる重合体A、及び炭素数6〜14のオレフィンと、マレイン酸、マレイン酸無水物またはマレイン酸塩とを共重合して得られる重量平均分子量が1000〜20000の重合体Bを、水硬性物質及び水を含有する組成物に配合するコンクリート肌面の黒ずみ防止方法。
【化4】


〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r4、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0〜2の数、pとqは同時に0ではなく、rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数、R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
【化5】


〔式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、M3、M4はそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【化6】


〔式中、R13、R15は、それぞれ水素原子又はメチル基、R14、R16は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、M5は水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕

【公開番号】特開2007−186396(P2007−186396A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7756(P2006−7756)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】