説明

コンクリート製外壁面材およびその製法

【課題】 鋼板によりバックアップがなされその厚みが薄いコンクリート製外壁面材であっても、バックアップ鋼板の平坦部とコンクリート界面との付着力を所望の強度となし得るコンクリート製外壁面材およびその製法を提供する。
【解決手段】 本発明のコンクリート製外壁面材Mは、バックアップ鋼板20を備えてなるコンクリート製外壁面材Mであって、前記バックアップ鋼板20がその内面20aに同系統の材質とされた溶射金属24を有してなるものである。また、本発明のコンクリート製外壁面材Mの製法は、所定形状に成形されたバックアップ鋼板20の内面20aに金属を溶射した後に、そのバックアップ鋼板20を用いて型枠Fを形成してコンクリートCの打設をなすものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート製外壁面材およびその製法に関する。さらに詳しくは、面材のバックアップに鋼板が設けられてなるコンクリート製外壁面材およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート製外壁面材M’として、図7に示すように、コンクリート板10の背面に鋼板20を設けてなるもの、つまり面材M’を鋼板20によりバックアップしてなるものが知られている。かかる外壁面材M’にあっては、鋼板20によりバックアップがなされているところから、その厚みは40〜50mm程度とされ、しかもバックアップ鋼板20がコンクリート板10側に突出している個所においては、その厚みは30mm程度となっている。そのため、通常の配筋がなし得ないところから、配筋をなすことなくコンクリートの打設がなされて外壁面材M’が製作されている。
【0003】
しかしながら、配筋がなされていないため、バックアップ鋼板20の平坦部21とコンクリート板10界面との付着力が弱く、地震時における面内剪断力に対して充分な強度が確保できないという懸念がある。また、バックアップ鋼板20の平坦部21とコンクリート板10界面との付着力が弱いところから、充分な耐久性が得れないおそれがあるという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、鋼板によりバックアップがなされその厚みが薄いコンクリート製外壁面材であっても、バックアップ鋼板の平坦部とコンクリート界面との付着力を所望の強度となし得るコンクリート製外壁面材およびその製法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はかかる従来技術の課題に対し鋭意研究した結果、バックアップ鋼板に金属を溶射して平坦部の表面を適度に荒らすことにより、バックアップ鋼板の平坦部とコンクリート板界面との付着力を所望の強度となし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明のコンクリート製外壁面材は、バックアップ鋼板を備えてなるコンクリート製外壁面材であって、前記バックアップ鋼板がその内面に溶射金属を有してなることを特徴とする。
【0007】
本発明のコンクリート製外壁面材においては、溶射金属が、バックアップ鋼板と同系統の材質とされてなるのが好ましい。
【0008】
一方、本発明のコンクリート製外壁面材の製法は、バックアップ鋼板を備えてなるコンクリート製外壁面材の製法であって、所定形状に成形されたバックアップ鋼板内面に金属を溶射する手順と、金属が溶射されたバックアップ鋼板を用いて型枠を形成する手順と、型枠にコンクリートを打設する手順と、打設されたコンクリートを養生する手順とを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バックアップ鋼板の内面に金属を溶射するという簡単な手法により、コンクリート製外壁面材の合成耐力を向上させることができるという優れた効果が得られる。また、バックアップ鋼板に配筋することなく所望の耐力が外壁面材に得られるので、施工性が向上しそれにともなって生産性も向上するという優れた効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
本発明の一実施形態に係るコンクリート製外壁面材(以下、単に外壁面材という)の要部を図1に拡大断面図で示す。
【0012】
外壁面材Mは、図1に示すように、コンクリート板10と、コンクリート板10をバックアップするバックアップ鋼板20とを主要構成要素として備えてなるものとされる。
【0013】
コンクリート板10は、GRC(ガラス繊維補強)コンクリートなどの各種コンクリートからなるものとされる。
【0014】
バックアップ鋼板20は軟鋼鋼板やステンレス鋼板とされ、例えばロール成型により偏平溝型状に形成され、その底面22外面には数条の蟻溝23が長手方向に形成されている。つまり、底面22を内側に突出させて蟻溝23が形成されている。この蟻溝23には、例えば外壁面材Mをパネルフレームに装着するためのナットが装着される。なお、バックアップ鋼板20は、端部が例えば折り曲げ成形されて箱形状とされてもよい。
【0015】
また、溝型とされたバックアップ鋼板20の内面20a全面には、金属が溶射されて表面が適度に荒らされている。この溶射された金属(溶射金属)24のアンカー効果によりコンクリート板10のバックアップ鋼板20への付着力が向上し、それにより外壁面材Mの合成耐力が向上する。つまり、外壁面材Mに所望の耐力が得られる。ここで、溶射金属24は、バックアップ鋼板20の鋼種の応じて適宜選定される。例えば、バックアップ鋼板20がステンレス鋼板とされていれば、溶射金属24も同系統の材質のもの、つまりステンレス系の材料のものが選定される。
【0016】
次に、図2〜図6を参照しながら、かかる構成とされている外壁面材Mの製造について説明する。
【0017】
手順1:溝型とされたバックアップ鋼板20の内面全面に溶射機Sにより金属溶射をなす(図2参照)。
【0018】
手順2:金属溶射がなされたバックアップ鋼板20を定盤Jにセットする(図3参照)。
【0019】
手順3:バックアップ鋼板20の開放端面を型板Bにより塞いで型枠Fを完成させる(図4参照)。なお、バックアップ鋼板20が箱形状に形成されていれば、この手順は不要とされる。
【0020】
手順4:バックアップ鋼板20を用いて形成された型枠FにコンクリートCを打設する(図5参照)。
【0021】
手順5:所定の養生の後、端部の型板Bを撤去する(図6参照)。なお、バックアップ鋼板20が箱形状に形成されていれば、この手順は不要とされる。
【0022】
この一連の手順により、外壁面材Mが完成する。
【0023】
このように、この実施形態においては、バックアップ鋼板20の内面20a全面に金属を溶射して内面20aの表面を適度に荒らしているので、バックアップ鋼板20とコンクリート板10界面との付着力が向上し、外壁面材Mの合成耐力が向上して所望の強度が得られる。また、バックアップ鋼板20とコンクリート板10界面との付着力が向上し、外壁面材Mの耐久性が向上する。
【0024】
また、配筋をすることなく所望の合成耐力が外壁面材Mに得られるので、施工性が向上して生産性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、バックアップ鋼板を備えた各種コンクリート製外壁面材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート製外壁面材の要部拡大断面図である。
【図2】本発明のコンクリート製外壁面材の製法における工程の説明図であって、バックアップ鋼板に金属を溶射している状態を示す。
【図3】同説明図であって、バックアップ鋼板を定盤にセットした状態を示す。
【図4】同説明図であって、型枠を完成した状態を示す。
【図5】同説明図であって、型枠にコンクリートを打設している状態を示す。
【図6】同説明図であって、養生後に端部の型板を撤去した状態を示す。
【図7】従来のコンクリート製外壁面材の図1相当図である。
【符号の説明】
【0027】
10 コンクリート板
20 バックアップ鋼板
20a 内面
21 平坦部
22 底面
23 蟻溝
24 溶射金属
B 型板
F 型枠
J 定盤
S 溶射機
M 外壁面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップ鋼板を備えてなるコンクリート製外壁面材であって、前記バックアップ鋼板がその内面に溶射金属を有してなることを特徴とするコンクリート製外壁面材。
【請求項2】
溶射金属が、バックアップ鋼板と同系統の材質とされてなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート製外壁面材。
【請求項3】
バックアップ鋼板を備えてなるコンクリート製外壁面材の製法であって、
所定形状に成形されたバックアップ鋼板内面に金属を溶射する手順と、
金属が溶射されたバックアップ鋼板を用いて型枠を形成する手順と、
型枠にコンクリートを打設する手順と、
打設されたコンクリートを養生する手順
とを含んでいることを特徴とするコンクリート製外壁面材の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−249767(P2006−249767A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67345(P2005−67345)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】