説明

コンクリート試験体載荷加熱装置

【課題】コンクリートの高温特性を精密に評価するため、コンクリート試験体を安定的に加熱し、加熱温度分布を均等にし得るコンクリート試験体の載荷加熱装置を提供する。
【解決手段】上下の加圧治具1a,1bを各々囲んでコンクリート試験体Cを加圧治具1a,1bより間接的に加熱する加熱媒体2a,2bと、中央のコンクリート試験体Cを囲んでコンクリート試験体Cを直接的に加熱する加熱媒体2cとを加熱炉3の内部に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物の耐火性能を設計するに、高温加熱されたコンクリートの力学的特性を評価するに用いられる試料を得るためのコンクリート試験体載荷加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート試験体を加熱する金属ヒータを断熱容器の内部底側に配設し、容器内の温度分布を均一にするためのファンを上下に配置したコンクリート試験体の加熱装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、金属ヒータを断熱容器の内部底側に配設しただけでは、本来、コンクリートの熱伝達率が小さくて均等に加熱するのが難しいところから、長時間の加熱時間が必要となる。このため、コンクリート試験体の寸法による温度分布差が大きく、高温を受けたコンクリートの高温特性及び力学的性質を明確に評価することが難しい。
【特許文献1】特開2006−118996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンクリートの高温特性を精密に評価するため、コンクリート試験体を安定的に加熱し、加熱温度分布を均等にし得るコンクリート試験体の載荷加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コンクリートの高温特性評価を行う試料を得るに、熱電対を埋め込んだコンクリート試験体を上下の加圧治具で保持させて加熱炉の内部に収容すると共に、加熱炉の内部で高温加熱し、コンクリート試験体の温度分布状態を分析するためのコンクリート試験体載荷加熱装置において、上下の加圧治具を各々囲んでコンクリート試験体を加圧治具より間接的に加熱する加熱媒体と、中央のコンクリート試験体を囲んでコンクリート試験体を直接的に加熱する加熱媒体とを加熱炉の内部に設けたことを特徴とする。
【0006】
そのコンクリート試験体載荷加熱装置の構成中、上下,中央の加熱媒体としては金属ヒータを設けるようにできる。また、金属ヒータを上下の加熱媒体とし、熱伝達率の大きな金属枠を上下の金属ヒータで挟んで中央の加熱媒体として配置するようにでき、金属ヒータは個別に制御可能に備え付けることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンクリート試験体載荷加熱装置によると、コンクリート試験体を加圧治具より間接的に加熱すると共に、コンクリート試験体を直接的に加熱することから、コンクリート試験体を安定的に加熱でき、加熱温度分布を短時間に均等にすることができる。
【0008】
その他に、金属ヒータを個別に制御可能に備え付けることから、種々の観点から高温加熱されたコンクリートの力学的特性を評価するに用いられる試料を得るのに併用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図示実施の形態は、図1で示すように上下の加圧治具1a,1bを各々囲んでコンクリート試験体Cを加圧治具1a,1bより間接的に加熱する加熱媒体2a,2bと、中央のコンクリート試験体Cを囲んでコンクリート試験体Cを直接的に加熱する加熱媒体2cを加熱炉3の内部に設けることにより、コンクリート試験体Cを100〜800℃の使用温度で加熱可能な載荷加熱装置として構成されている。
【0010】
加圧治具1a,1bとしては、荷重2000KN以上で高温に耐えられるよう熱処理した炭素鋼製のものが備えられている。この加圧治具1a,1bのうち、下側の加圧治具1bはコンクリート試験体Cを載置し、上側の加圧治具1aに向けて昇降動可能に設置されている。各加圧治具1a,1bには、温度が50℃以上に上昇しないよう水冷式冷却機(図示せず)が付設されている。
【0011】
加熱媒体2a〜2cとしては、金属ヒータ20が設けられている。金属ヒータ20はコイルを巻線したものでなり、表面を加圧治具1a,1b乃至はコンクリート試験体Cに向けて対向するコイル保持体21に埋め込み装着されている。この加熱媒体2a〜2cを取り囲んでは、熱が炉外に放出されるのを防ぐようセラミックファイバーブランケット22が断熱材として炉内に装填されている。
【0012】
加熱炉3は、図2で示すように金属ヒータ20,コイル保持体21、セラミックファイバーブランケット22を含む二つ割れ円筒形セラミックファイバー埋め込みヒータを内蔵するものとして構成されている。片側3aを固定側とし、他側3bを可動側としてレール4の上を走行可能な車輪5を加熱炉3の下部に備え(図1参照)、また、連結用締付けハンドル6を加熱炉3の側部に備えて構成されている。
【0013】
このように構成するコンクリート試験体載荷加熱装置では、コンクリート試験体を加圧治具より間接的に加熱すると共に、コンクリート試験体を直接的に加熱することから、コンクリート試験体を安定的に加熱でき、加熱温度分布を短時間に均等にすることができる。
【0014】
これに対し、中央の加熱媒体による直接加熱方式のみによると、加熱速度が速いが、コンクリート試験体の中心部より表面部が加熱過ぎにより、コンクリート試験体が損傷を受ける虞がある。上下の加熱媒体による間接加熱方式のみによると、直接加熱方式に比べてコンクリート試験体の損傷が少ないが、加熱速度が遅い。
【0015】
上述した実施の形態の他、金属ヒータ2a,2bを上下の加熱媒体とし、鉄等の熱伝達率の大きな金属枠(環)2cを上下の金属ヒータ2a,2bで挟んで中央の加熱媒体として配置してもよい。また、種々の観点から高温加熱されたコンクリートの力学的特性を評価するに用いられる試料を得るに、金属ヒータ2a,2b,2cを個別に制御可能に備え付けることもできる。
【0016】
中央の加熱媒体による直接加熱方式のみによる試験により、コンクリート試験体の中心部より表面部が加熱過ぎによる爆裂に備え、コンクリート試験体Cと加熱媒体2a〜2cの間に耐熱鋼製遮蔽筒を備えるようにできる。この他、加熱ヒータを温度調節する電圧フィードバック型サイリスタレギュレータを備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るコンクリート試験体載荷加熱装置を示す側面図である。
【図2】図1のコンクリート試験体載荷加熱装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0018】
C コンクリート試験体
1a,1b 加圧治具
2a〜2c 加熱媒体
3 加熱炉









【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの高温特性評価を行う試料を得るに、熱電対を埋め込んだコンクリート試験体を上下の加圧治具で保持させて加熱炉の内部に収容すると共に、加熱炉の内部で高温加熱し、コンクリート試験体の温度分布状態を分析するためのコンクリート試験体載荷加熱装置において、
上下の加圧治具を各々囲んでコンクリート試験体を加圧治具より間接的に加熱する加熱媒体と、中央のコンクリート試験体を囲んでコンクリート試験体を直接的に加熱する加熱媒体とを加熱炉の内部に設けたことを特徴とするコンクリート試験体載荷加熱装置。
【請求項2】
金属ヒータを上下,中央の加熱媒体として加熱炉の内部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート試験体載荷加熱装置。
【請求項3】
金属ヒータを上下の加熱媒体とし、熱伝達率の大きな金属枠を上下の金属ヒータで挟んで中央の加熱媒体として配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート試験体載荷加熱装置。
【請求項4】
金属ヒータを個別に制御可能に備え付けたことを特徴とする請求項2又は3に記載のコンクリート試験体載荷加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−168528(P2009−168528A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5069(P2008−5069)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年7月11日〜13日 社団法人 日本コンクリート工学協会主催の「コンクリート工学年次大会2007」に文書をもって発表
【出願人】(508012426)光亜科学工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】