説明

コンジュゲートFVIIIバリアント

本発明は、特に、異なった重合体基を含むコンジュゲートFVIIIバリアントおよびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンジュゲート因子VIIIバリアントに関する。
【背景技術】
【0002】
血友病Aは、凝固因子VIII(FVIII)活性の欠損または機能障害によって引き起こされる遺伝性の出血障害である。臨床症状は、一次止血にはないが(血餅の形成は正常に起こる)、二次トロンビン形成がないため血餅が不安定である。
【0003】
血友病Aは現在、凝固因子VIIIの静脈注射によって治療され、凝固因子VIIIは、血液から単離されるか、または組換え生成される。治療は、オンデマンドまたは予防的であり得る。最近の公表データは、予防には、オンデマンド治療を上回る有意な利点があることを支持している。これらには、出血頻度の低減および血友病性関節症を発症する危険性の低下が含まれ、これらは両方とも、患者のより良い生活の質をもたらす。しかし、予防は患者の事実上無症候の生活を可能にするが、それは、通常1週間に3回の頻繁な末梢静脈内注射を必要とし、これは、苦痛であり、困難であり、時間がかかることが知られている。加えて、繰り返しの静脈穿刺は、幼い子供では常に可能なわけではない。結論として、それほど頻繁でない投与を支援する製品は、定期的な予防的治療をより大きな程度まで可能にするであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO03031464
【特許文献2】WO09108806
【特許文献3】WO03062290
【特許文献4】WO06/134148
【特許文献5】米国特許第5932462号
【特許文献6】US4356170
【特許文献7】WO2008/151448 A1
【特許文献8】WO2007/087711A1
【特許文献9】WO2008/074032
【特許文献10】WO2009/108806 A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Grahamら、J. Gen. Virol.36:59-72、1977
【非特許文献2】WaechterおよびBaserga、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:1106-1110, 1982
【非特許文献3】UriaubおよびChasin、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980
【非特許文献4】Cell, 33: 405, 1983
【非特許文献5】Somatic Cell and Molecular Genetics 12: 555, 1986
【非特許文献6】Kielyら、JBC (1976) 251 (18), 5490
【非特許文献7】Glabeら、JBC(1980)255(19), 9236
【非特許文献8】Lentingら、Haemophilia (2010) 16(suppl.5), 194
【非特許文献9】Juleniusら、Glycobiology (2005), 15(2), 153
【非特許文献10】Juleniusら、Bioinformatics for Glycobiology and Glycomics (2009) 163
【非特許文献11】Thimら、Haemophilia (2010) 16, 349
【非特許文献12】Fontanaら、Adv. Drug Delivery Rev. (2008) 60, 13-28
【非特許文献13】Bonoraら(2009)、Post-translational Modification of Protein Biopharmaceuticals, Wiley, 341
【非特許文献14】Gilbertら、JBC (2002) 277, 327
【非特許文献15】Willisら、Glycobiology (2008) 18(2) 177
【非特許文献16】ChoおよびTroy、PNAS (1994), 91, 11427
【非特許文献17】Angataら、JBC 277(39)36808
【非特許文献18】Jainら、BBA (2003) 1622, 42-49
【非特許文献19】Thimら、Haemophilia (2010), 16(Suppl 5), 194
【非特許文献20】Veroneseら、J. Bioactive and Compatible Polymers (1997)12, 196)
【非特許文献21】Kunouら、Biomacromolecules (2000), 1, 451
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タンパク質への、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリシアル酸(PSA)のような重合体のカップリングによって、循環時間の増大、プロテアーゼに対する抵抗性の増大、および免疫原性の低減がもたらされることが長く知られている。しかし依然として、延長された循環半減期を有するFVIIIバリアントが当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つのPEG重合体および少なくとも1つの多糖とコンジュゲートしたFVIIIバリアントならびにその使用に関する。本明細書において、そのようなヘテロコンジュゲートFVIIIバリアントが、例えば2つのPEG分子または2つの多糖分子とコンジュゲートしたFVIIIバリアントより改善された循環半減期の増大を有することが示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるFVIIIバリアントの合成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義:
第VIII因子分子:FVIII/第VIII因子は、主として肝細胞によって生成される大きな複合糖タンパク質である。ヒトFVIIIは、シグナルペプチドを含めると2351アミノ酸からなり、相同性によって定義されるいくつかの別々なドメインを含有している。3つのAドメイン、唯一のBドメイン、および2つのCドメインがある。ドメインの順序は、NH2-A1-A2-B-A3-C1-C2-COOHと記載することができる。FVIIIは、B-A3境界で分離された2本の鎖として血漿中を循環する。これらの鎖は、二価金属イオン結合によって接続される。A3-C1-C2は軽鎖(LC)と呼ばれ、一方、A1-A2-B鎖は重鎖(HC)と呼ばれる。
【0010】
FVIIIは、フォンウィルブランド因子(VWF)と会合して循環する。VWFは、FVIIIの担体として働く大きな多量体糖タンパク質であり、血管壁構成要素への正常な血小板接着に必要である。VWFとの複合体中にあるFVIIIの血漿半減期は約12時間である。
【0011】
「天然FVIII」は、配列番号1(アミノ酸1〜2332)に示す完全長ヒトFVIII分子である。Bドメインは、配列番号1におけるアミノ酸741〜1648にわたる。
【0012】
配列番号1:
ATRRYYLGAVELSWDYMQSDLGELPVDARFPPRVPKSFPFNTSVVYKKTLFVEFTDHLFNIAKPRPPWMGLLGPTIQAEVYDTVVITLKNMASHPVSLHAVGVSYWKASEGAEYDDQTSQREKEDDKVFPGGSHTYVWQVLKENGPMASDPLCLTYSYLSHVDLVKDLNSGLIGALLVCREGSLAKEKTQTLHKFILLFAVFDEGKSWHSETKNSLMQDRDAASARAWPKMHTVNGYVNRSLPGLIGCHRKSVYWHVIGMGTTPEVHSIFLEGHTFLVRNHRQASLEISPITFLTAQTLLMDLGQFLLFCHISSHQHDGMEAYVKVDSCPEEPQLRMKNNEEAEDYDDDLTDSEMDVVRFDDDNSPSFIQIRSVAKKHPKTWVHYIAAEEEDWDYAPLVLAPDDRSYKSQYLNNGPQRIGRKYKKVRFMAYTDETFKTREAIQHESGILGPLLYGEVGDTLLIIFKNQASRPYNIYPHGITDVRPLYSRRLPKGVKHLKDFPILPGEIFKYKWTVTVEDGPTKSDPRCLTRYYSSFVNMERDLASGLIGPLLICYKESVDQRGNQIMSDKRNVILFSVFDENRSWYLTENIQRFLPNPAGVQLEDPEFQASNIMHSINGYVFDSLQLSVCLHEVAYWYILSIGAQTDFLSVFFSGYTFKHKMVYEDTLTLFPFSGETVFMSMENPGLWILGCHNSDFRNRGMTALLKVSSCDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFSQNSRHPSTRQKQFNATTIPENDIEKTDPWFAHRTPMPKIQNVSSSDLLMLLRQSPTPHGLSLSDLQEAKYETFSDDPSPGAIDSNNSLSEMTHFRPQLHHSGDMVFTPESGLQLRLNEKLGTTAATELKKLDFKVSSTSNNLISTIPSDNLAAGTDNTSSLGPPSMPVHYDSQLDTTLFGKKSSPLTESGGPLSLSEENNDSKLLESGLMNSQESSWGKNVSSTESGRLFKGKRAHGPALLTKDNALFKVSISLLKTNKTSNNSATNRKTHIDGPSLLIENSPSVWQNILESDTEFKKVTPLIHDRMLMDKNATALRLNHMSNKTTSSKNMEMVQQKKEGPIPPDAQNPDMSFFKMLFLPESARWIQRTHGKNSLNSGQGPSPKQLVSLGPEKSVEGQNFLSEKNKVVVGKGEFTKDVGLKEMVFPSSRNLFLTNLDNLHENNTHNQEKKIQEEIEKKETLIQENVVLPQIHTVTGTKNFMKNLFLLSTRQNVEGSYDGAYAPVLQDFRSLNDSTNRTKKHTAHFSKKGEEENLEGLGNQTKQIVEKYACTTRISPNTSQQNFVTQRSKRALKQFRLPLEETELEKRIIVDDTSTQWSKNMKHLTPSTLTQIDYNEKEKGAITQSPLSDCLTRSHSIPQANRSPLPIAKVSSFPSIRPIYLTRVLFQDNSSHLPAASYRKKDSGVQESSHFLQGAKKNNLSLAILTLEMTGDQREVGSLGTSATNSVTYKKVENTVLPKPDLPKTSGKVELLPKVHIYQKDLFPTETSNGSPGHLDLVEGSLLQGTEGAIKWNEANRPGKVPFLRVATESSAKTPSKLLDPLAWDNHYGTQIPKEEWKSQEKSPEKTAFKKKDTILSLNACESNHAIAAINEGQNKPEIEVTWAKQGRTERLCSQNPPVLKRHQREITRTTLQSDQEEIDYDDTISVEMKKEDFDIYDEDENQSPRSFQKKTRHYFIAAVERLWDYGMSSSPHVLRNRAQSGSVPQFKKVVFQEFTDGSFTQPLYRGELNEHLGLLGPYIRAEVEDNIMVTFRNQASRPYSFYSSLISYEEDQRQGAEPRKNFVKPNETKTYFWKVQHHMAPTKDEFDCKAWAYFSDVDLEKDVHSGLIGPLLVCHTNTLNPAHGRQVTVQEFALFFTIFDETKSWYFTENMERNCRAPCNIQMEDPTFKENYRFHAINGYIMDTLPGLVMAQDQRIRWYLLSMGSNENIHSIHFSGHVFTVRKKEEYKMALYNLYPGVFETVEMLPSKAGIWRVECLIGEHLHAGMSTLFLVYSNKCQTPLGMASGHIRDFQITASGQYGQWAPKLARLHYSGSINAWSTKEPFSWIKVDLLAPMIIHGIKTQGARQKFSSLYISQFIIMYSLDGKKWQTYRGNSTGTLMVFFGNVDSSGIKHNIFNPPIIARYIRLHPTHYSIRSTLRMELMGCDLNSCSMPLGMESKAISDAQITASSYFTNMFATWSPSKARLHLQGRSNAWRPQVNNPKEWLQVDFQKTMKVTGVTTQGVKSLLTSMYVKEFLISSSQDGHQWTLFFQNGKVKVFQGNQDSFTPVVNSLDPPLLTRYLRIHPQSWVHQIALRMEVLGCEAQDLY
【0013】
本発明による「FVIIIバリアント」は、血漿由来のFVIIIおよび/または組換え体のFVIIIであり得る。本発明によるFVIIIバリアントは、例えば、Bドメイン末端欠失型FVIII分子であり得、その際、例えば、残りのドメインは、配列番号1におけるアミノ酸番号1〜740および1649〜2332に記載の配列に密接に対応する。本発明によるBドメイン末端欠失型FVIIIバリアントは、配列番号1に記載の配列からわずかに相違し得る。これは、例えばvWF結合能力を低減させるために変異を導入することができるという事実により、残りのドメイン(すなわち3つのAドメインおよび2つのCドメイン)が、わずかに、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸、相違し得ること、代替的には、配列番号1(アミノ酸1〜740および1649〜2332)に記載のアミノ酸配列から約1%、2%、3%、4%または5%相違し得ることを意味する。さらに、グリコシル化部位の導入および/または撤廃など、例えばLRP、様々な受容体、他の凝固因子、細胞表面などの様々な他の構成要素への第VIII因子の結合能力を改変するために、分子中の他の場所にアミノ酸改変(置換、欠失など)を導入することが妥当なようである。本発明によるFVIIIバリアントは、FVIII活性を有し、これは、凝血カスケードにおいて、FVIIIに機能的に類似または同等な様式で機能し、活性血小板表面のFIXaとの相互作用を介してFXaの形成を誘導し、血餅の形成を支援する能力を意味する。FVIII活性は、例えば、色素生成アッセイ、血餅分析、内因性トロンビン産性能分析など、当技術分野で良く知られている技法によって、in vitroで評価することができる。本発明によるFVIIIバリアントは、天然ヒトFVIIIの活性の少なくとも約10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、および100%である、または100%を超えることさえあるFVIII活性を有する。
【0014】
Bドメイン:第VIII因子のB-ドメインは、配列番号1におけるアミノ酸741〜1648にわたる。Bドメインは、いくつかの異なった部位で切断され、それにより、循環血漿FVIII分子における大きな不均一性が生じる。重度にグリコシル化されたBドメインの正確な機能は未知である。知られていることは、このドメインが、凝血カスケードにおけるFVIII活性に不必要であるということである。一見したところのこの機能不在は、Bドメイン欠失型/末端欠失型FVIIIが、完全長天然FVIIIに関して見られるin vivo特性と同一のin vivo特性を有するようであるという事実によって支持される。それはそれとして、少なくとも無血清条件下では、Bドメインが細胞膜との会合を低減させ得るという徴候がある。
【0015】
Bドメイン末端欠失型/欠失型第VIII因子分子:内因性の完全長FVIIIは、単一鎖前駆体分子として合成される。分泌前に、前駆体は重鎖および軽鎖に切断される。組換え体のBドメイン欠失型FVIIIは、2つの異なったストラテジーから生成され得る。Bドメインのない重鎖および軽鎖が、2本の異なったポリペプチド鎖として個別に合成される(2本鎖ストラテジー)か、完全長FVIII前駆体と同様に重鎖および軽鎖に切断されるBドメイン欠失型FVIIIが単一の前駆体ポリペプチド鎖として合成される(単一鎖ストラテジー)かのいずれかである。
【0016】
Bドメイン欠失型FVIII前駆体ポリペプチドでは、重鎖および軽鎖部分は、通常、リンカーによって分離されている。Bドメイン欠失型FVIIIに免疫原性エピトープを導入する危険性を最小限にするため、リンカーの配列は、FVIII Bドメインに由来するものが好ましい。最小限、リンカーは、Bドメイン欠失型FVIII前駆体ポリペプチドを重鎖と軽鎖とに分離するプロテアーゼの認識部位を含まなければならない。完全長FVIIIのBドメインでは、アミノ酸1644〜1648がこの認識部位を構成する。Bドメイン欠失型FVIIIの活性化の際にリンカーの除去をもたらすトロンビン部位は、重鎖中に位置している。したがって、トロンビン活性化による、残りのFVIII分子からのリンカーの除去に、リンカーのサイズおよびアミノ酸配列が影響を与える可能性は小さい。Bドメインの欠失は、FVIIIの生成のためには利点となる。それでもなお、生産性を低減させることなく、リンカーにBドメインの部分を含めることができる。生産性へのBドメインのマイナス効果は、Bドメインのいかなる特定のサイズまたは配列の結果とも考えられていない。
【0017】
末端欠失型Bドメインは、いくつかのO-グリコシル化部位を含有し得る。しかし、好ましい実施形態によれば、この分子は、末端欠失型Bドメイン内に1つのみ、代替的には2、3または4つのO連結オリゴ糖を含む。
【0018】
好ましい実施形態によれば、末端欠失型Bドメインは、潜在的O-グリコシル化部位を1つだけ含み、このO-グリコシル化部位に、親水性重合体が共有結合によってコンジュゲートされる。本発明によるBドメイン末端欠失分子におけるO連結オリゴ糖は、組換え手段によって、および/またはBドメインの末端切除による「隠された」O-グリコシル化部位の露出によって人工的に創出されたO-グリコシル化部位に付いているものであり得る。どちらの場合でも、そのような分子は、Bドメイン末端欠失型第VIII因子のアミノ酸配列を設計し、続いてそのアミノ酸配列を、末端欠失型Bドメイン内のO-グリコシル化部位の確率を予測するin silico分析にかけることによって作製できる。そのようなグリコシル化部位を有する確率が比較的に高い分子を、適した宿主細胞で合成することができ、その後、グリコシル化パターンの分析、およびそれに続く、末端欠失型Bドメイン内にO連結グリコシル化を有する分子の選択が行われる。
【0019】
組換え体第VIII因子タンパク質を生成するのに適した宿主細胞は、好ましくは、分子がグリコシル化されるのを確実にする哺乳類起源のものである。本発明の実施において、細胞は、哺乳動物細胞であり、より好ましくは、限定されるものではないが、CHO細胞系(例えば、ATCC CCL61)、COS-1細胞系(例えば、ATCC CRL1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞系、およびHEK293細胞系(例えば、ATCC CRL1573;Grahamら、J. Gen. Virol.36:59-72、1977)を含めた、樹立された哺乳動物細胞系である。好ましいBHK細胞系は、以下BHK570細胞と呼ばれる、tk-ts13 BHK細胞系(WaechterおよびBaserga、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:1106-1110, 1982)である。BHK570細胞系は、ATCC(the American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Dr., Rockville, MD 20852)から、ATCC受託番号CRL10314の下、利用可能である。tk ts13 BHK細胞系も、受託番号CRL1632の下、ATCCから利用可能である。好ましいCHO細胞系は、受託番号CCI61の下でATCCから利用可能であるCHO K1細胞系、ならびにCHO-DXB11細胞系およびCHO-DG44細胞系である。
【0020】
他の適した細胞系には、ラットHep I(ラット肝細胞腫;ATCC CRL1600)、ラットHep II(ラット肝細胞腫;ATCC CRL1548)、TCMK(ATCC CCL139)、ヒト肺(ATCC HB8065)、NCTC1469(ATCC CCL9.1);DUKX細胞(CHO細胞系)(UriaubおよびChasin、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)(DUKX細胞はDXB11細胞とも呼ばれる)およびDG44(CHO細胞系)(Cell, 33: 405, 1983およびSomatic Cell and Molecular Genetics 12: 555, 1986)が含まれるが、これらに限定されない。3T3細胞、Namalwa細胞、骨髄腫および他の細胞と骨髄腫との融合細胞も有用である。一部の実施形態では、細胞は、変異体または組換え体の細胞、例えば、それらが由来する細胞型とは質的または量的に異なったスペクトルの、タンパク質の翻訳後修飾を触媒する酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼおよび/またはグリコシダーゼなどのグリコシル化酵素、またはプロペプチドなどのプロセシング酵素)を発現する細胞であり得る。DUKX細胞(CHO細胞系)が特に好しい。
【0021】
現在好ましい細胞は、HEK293、COS、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)および骨髄腫細胞であり、特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0022】
N連結オリゴ糖およびO連結オリゴ糖:N-グリカンおよびO-グリカンは両方とも、そのタンパク質を生成する細胞によって、タンパク質に付けられる。細胞のN-グリコシル化機構は、アミノ酸鎖中のN-グリコシル化シグナル(N-X-S/Tモチーフ)を認識し、グリコシル化し、これは、新生タンパク質がリボソームから小胞体に移動される際に行われ、ゴルジ装置への輸送の後まで続く(Kielyら、JBC (1976) 251 (18), 5490; Glabeら、JBC(1980)255(19), 9236, Lentingら、Haemophilia (2010) 16(suppl.5), 194)。N連結FVIIIオリゴ糖は、当技術分野で記載されている天然存在のもの(Lentingら、Haemophilia (2010) 16(Suppl 5), 194およびそこに引用された参考文献)でもよく、またはそれは遺伝的操作によって導入されたものでもよい。
【0023】
同様に、O-グリカンは、特異的なO-グリコシル化部位に付いている。一般的に見られるムチン型O連結グリコシル化は、Ser残基およびThr残基へのN-アセチルガラクトサミン部分の付着を要し、これは、タンパク質がゴルジ装置に達したときに起こる過程である(Lentingら、2010)。
【0024】
O-グリカンは、アミノ酸鎖で特異的なO-グリコシル化部位に付着するが、O-グリコシル化の引き金となるモチーフは、N-グリコシル化シグナルよりもはるかに不均一であり、アミノ酸配列中のO-グリコシル化部位を予測する我々の能力は未だ十分なものではない(Juleniusら、Glycobiology (2005), 15(2), 153およびJuleniusら、Bioinformatics for Glycobiology and Glycomics (2009) 163)。
【0025】
したがって、末端欠失型因子VIII BドメインにおけるO連結オリゴ糖は、天然存在のO連結グリコシル化配列、または組換え技法によって人工的に構築されたO連結グリコシル化配列に、共有結合によって連結され得る。
【0026】
その例が、Bドメイン末端欠失型因子VIIIバリアントであり、ここで、Bドメインは、配列番号1におけるアミノ酸742〜763に対応している。このバリアントは、Bドメインリンカー中のO-グリコシル化部位を含む。
【0027】
別の例は、「N8」である。これは、Bドメイン欠失型第VIII因子であり、完全長ヒト第VIII因子のアミノ酸1〜740を含む第VIII因子重鎖および完全長ヒト第VIII因子のアミノ酸1649〜2332を含む第VIII因子軽鎖である。重鎖配列および軽鎖配列は、21アミノ酸リンカー(SFSQNSRHPSQNPPVLKRHQR-配列番号2)によって接続されており、完全長ヒト第VIII因子のアミノ酸741〜750および1638〜1648の配列を含む(Thimら、Haemophilia (2010) 16, 349)。
【0028】
シアリルトランスフェラーゼ:シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸を新生オリゴ糖に転移させる酵素である。各シアリルトランスフェラーゼは、特定の糖基質に特異的である。シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸をシアル酸付加糖脂質(ガングリオシド)の末端部分または糖タンパク質のN連結もしくはO連結糖鎖に付加する。約20種の異なったシアリルトランスフェラーゼがあり、それらは、それらが作用するアクセプター構造およびそれらが形成する糖連結のタイプに基づいて識別することができる。本発明による好ましいシアリルトランスフェラーゼは、ST3Gal-I(O-グリカンに特異的)およびST3Gal-III(N-グリカンに特異的)である。したがって、例えば、特異的なシアリルトランスフェラーゼの選択および/または特定のグリコシル化パターンを有する第VIII因子分子の操作によって、本発明によるコンジュゲート第VIII因子分子の構造を操作することが可能である。
【0029】
O連結または(N)連結オリゴ糖への重合体のグリココンジュゲーション:O-グリカンの生合成は、生合成における比較的早期にシアル酸残基の付加によって修飾および終了され得る。ある種のシアリルトランスフェラーゼ酵素は、GalNAcα-Ser/Thr、またはコア1 GalT作用後の早期のO-グリカンコアサブタイプに作用することができる。T抗原(T antigene)という用語は、Galβ1-3GalNAcα-Ser/Thr二糖の存在に関連している。これらの構造の生成は、同一の基質に対する、グリコシルトランスフェラーゼ間の競合を伴い、したがって、ゴルジ装置内のグリコシルトランスフェラーゼの発現レベルおよび細胞内分布が、O-グリカン生合成における構造的結果および多様化を決定する。Galβ1-3GalNAcα-Ser/Thr二糖のみがグリコ誘導体化に適用できる。
【0030】
しかし、この構造の利用可能な量は、シアリダーゼもしくはコア1 GalTまたはこれらの組合せによるタンパク質の治療を経ることで、大いに増強され得る。重合体のグリココンジュゲーションの過程の結果として、標的タンパク質のGalβ1-3GalNAcα-Ser/Thr二糖へのα2-3結合を介して、シアル酸重合体が末端Gal部分に付加される(WO03031464およびWO09108806)。
【0031】
多くの親水性重合体を、O連結オリゴ糖に付けることができる。O-グリカンを介してFVIIIに親水性重合体を酵素的にコンジュゲートするための基本の要件は、WO03031464に開示のように、それらを、遊離アミノ基を介してシチジン一リン酸5'-グリシル-ノイラミン酸(GSC)誘導体にカップリングする能力である。これは、当業者に知られている様々なカップリング化学を介して実現できる。活性生体適合重合体の例には、ポリアルキレンオキシド、例えば、限定されるものではないがポリエチレングリコール(PEG)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン(mPC)重合体(WO03062290に記載)、デキストラン、コロミン酸または他の炭化水素ベースの重合体、アミノ酸もしくは特定のペプチド配列の重合体、ビオチン誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン-コ-マレイン酸無水物、ポリスチレン-コ-リンゴ酸無水物、ポリオキサゾリン、ポリ-アクリロイルモルホリン、へパリン、アルブミン、セルロース、キトサンの加水分解産物、ヒドロキシエチル-デンプンおよびヒドロキシプロピル-デンプンなどのデンプン、グリコーゲン、アガロースおよびその誘導体、グアールガム、プルラン、イヌリン、キサンタンゴム、カラゲナン、ペクチン、アルギン酸加水分解産物、他の生体高分子、ならびにこれらの任意の等価物などが含まれる。
【0032】
側鎖は、例えばWO0331464に開示されている、シアリルトランスフェラーゼ媒介の方法によってN連結オリゴ糖に付けることができる。そのような方法によると、しばしば、いくつかの側鎖が第VIII因子分子に付く結果となる。
【0033】
FVIIIのN連結オリゴ糖に付いた側鎖は、(N)-側鎖FVIIIと記載される。O連結オリゴ糖に付いた側鎖は、(O)-側鎖FVIIIと記載される。例えば、(O)-PEG(40kD)(N)-PSA(20kD)FVIIIは、PEG(40KD)がO連結オリゴ糖に付いており、PSA(20kD)がN連結オリゴ糖に付いていることを意味する。
【0034】
化学コンジュゲーション:本発明に記載のFVIIIバリアントを、様々な化学的酵素的方法を用いて、PEGおよび多糖ポリマーとコンジュゲートすることできる。
【0035】
関連する部分の、薬物への化学コンジュゲーションは、通常、アシル化または還元アルキル化によるリジン残基のランダムな誘導体化のような技法を採用してきたが、これらの方法の有用性は、概ね、生成物の不均一性と、最も頻繁には、得られる生成物の生理活性の低減とにより限定される。
【0036】
部位選択的なコンジュゲーション方法では、タンパク質の生物活性に影響を与えず、同時に、安定性、薬物動態学的パラメータ、免疫原性、生物学的パートナーへの結合などについての望ましい結果が得られるであろう部位を選択するのに利用可能な、タンパク質の構造的および生物学的知識を利用できることが必須である。
【0037】
N末端特異的、または少なくともN末端選好的なコンジュゲーションは、N末端の一級アミノが7.8のpKaを有し、一方、リジン側鎖のεアミノ基のpKaははるかに高いという事実を用いて実現することができる。
【0038】
より狭い適用方法は、タンパク質のアミノ末端におけるグリオキシル基の導入を用いる。しかし、それは厳しい過ヨウ素酸酸化反応に耐えることができ、かつN末端セリン残基またはトレオニン残基を含有しているタンパク質に限定される。
【0039】
対になっていないシステイン残基へのチオール選択的なコンジュゲーションも、コンジュゲートする関連部分のマレイミドまたはハロアセテート誘導体を用いて部位選択的なコンジュゲーションを実現するための潜在的に有用な手順である。以下において、コンジュゲーションができる。
- 天然で遊離のシステイン(遊離のシステインはタンパク質中ではまれな残基である)。但し、システインはかなり疎水性のアミノ酸であるので、しばしば、タンパク質構造中に埋め込まれており、したがって、試薬への接近性が乏しい。
- または、より高い蓋然性において、部位特異的変異導入によって、タンパク質中に導入されたシステイン残基。但し、起こり得るタンパク質構造変化および免疫原性のすべての潜在的な問題が伴う。
【0040】
酵素的コンジュゲーション方法も用いられており、タンパク質中の限られた数のアミノ酸残基にアクセスするための貴重なツールとなり得る。例えば、ヒト成長ホルモンの13のグルタミン残基のうち、微生物のトランスグルタミナーゼ酵素の基質は2つのみである(WO06/134148)(Fontanaら、Adv. Drug Delivery Rev. (2008) 60, 13-28およびそこに引用されている参考文献、Bonoraら(2009)、Post-translational Modification of Protein Biopharmaceuticals, Wiley, 341およびそこに引用されている参考文献)。
【0041】
PEG:本発明との関連において「PEG」という用語には、アルコキシPEG、二官能性PEG、マルチアームPEG、フォーク状(forked)PEG、分枝PEG、ペンダントPEG(すなわち、重合体バックボーンから張り出している1つまたは複数の官能基を有するPEGまたは関係する重合体)、または分解可能な連結を有するPEGを含めた、その形態のうちの任意の形態にあるポリ(エチレングリコール)が含まれる。
【0042】
重合体バックボーンは、線状または分岐状であり得る。分枝重合体バックボーンは、当技術分野で一般的に知られている。通常、分枝重合体は、中心分枝コア部分と、中心分枝コアに連結した複数の線状重合体鎖とを有する。PEGは、グリセロール、ペンタエリスリトールおよびソルビトールなどの様々なポリオールへのエチレンオキシドの付加によって調製することができる分枝形態で一般的に用いられる。中心分枝部分は、リジンまたはシステインなどのいくつかのアミノ酸から誘導することもできる。一例では、分枝ポリ(エチレングリコール)を、R(-PEG-OH)mとして、一般形で表すことができる。式中、Rは、グリセロールまたはペンタエリスリトールなどのコア部分を表し、mは腕の数を表す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第5932462号に記載のものなど、マルチアームPEG分子も、重合体バックボーンとして用いることができる。
【0043】
重合体バックボーン各鎖の分子量は変動し得るが、それは通常、例えば約5,000Daから約100,000Daまでなど、約100Daから約160,000Daまでの範囲にある。より詳細には、本発明による各コンジュゲート親水性重合体のサイズは、例えば、約1000Daから約80,000Da;約2000Daから約70,000Da;約5000から約70,000Da;約5000から約60,000Da;約10,000から約70,000Da;約20,000から約60,000Da;約30,000から約60,000Da;約30,000から約50,000Da;または約30,000から約40,000Daなど、約500Daから約80,000Daまで変動し得る。これらのサイズは、正確な尺度ではなく、むしろ見積りを表すことを理解するべきである。好ましい実施形態によれば、本発明による分子は、例えば、10,000、40,000、または80,000Da+/-約5000、約4000、約3000、約2000、または約1000Daのサイズの例えばPEGなど、親水性重合体の不均一な集団とコンジュゲートされる。
【0044】
多糖
本発明との関連における多糖は、グルコース、ガラクトース、スルホ-ガラクトース、N-アセチル-ガラクトース、フコース、フルクトース、キシローズ、アラビノース、グルクロン酸、スルホ-グルクロン酸、イズロン酸、スルホ-イズロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、N-アセチル-グルコサミン、スルホ-グルコサミン、ガラクトサミン、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-ガラクトサミン-スルフェート、N-アセチルガラクトサミン-ジスルフェート、N-アセチルガラクトサミン-スルフェート、N-アセチル-ノイラミン酸(Neu5Ac)、スルホ-N-アセチル-ノイラミン酸、N-グリコリル-ノイラミン酸(Neu5Gc)、2-ケト-3-デオキシ-ノヌロソン酸(KDN)のような単量体ユニットからなる、ホモまたはヘテロ多糖を含めた、多糖に基づく重合体である。
【0045】
本発明との関連における多糖の例には、ラクトース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アミラーゼ、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、ヒアルロン酸、ポリソルビトール、ポリマンニトール、へパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸塩、へパリンまたはコンドロイチン硫酸、硫酸化ポリシアル酸およびポリシアル酸(PSA)が含まれる。
【0046】
本発明による好ましい多糖は、PSAである。PSAは、哺乳動物に存在する重合体であり、すなわち、それは免疫原性ではない(または免疫原性が非常に弱い)。哺乳動物には、既知のPSA受容体がない。PSAは、プロテアーゼ分解への抵抗性が増大している治療用タンパク質をもたらすことが示されている。好ましくは、糖残基の大部分またはすべてがN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基であり、好ましくはNeu5Ac残基のみである。細菌によって生成されたポリシアル酸は、ポリシアル酸の好ましい供給源である。それらには、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)C由来の血清型C莢膜多糖C、および大腸菌(Escherichia coli)K92由来の多糖K92、および髄膜炎菌B由来の血清型B莢膜多糖、大腸菌K1、モラクセラ・ノンリクファシエンス(Moraxella nonliquifaciens)、ヘモリチカ菌(Mannheimia haemolytica)A2(以前には、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)A2として知られる)が含まれる。大腸菌K92由来の多糖は、アルファ2,8およびアルファ2,9連結Neu5Acユニットを含む。髄膜炎菌C群由来の多糖Cは、アルファ2,9連結Neu5Acユニットを有する。好ましいポリシアル酸は、B群由来のものであり、それらは2,8アルファ連結Neu5Acを含む。PSAの分子量は、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、55kDa、60kDa、65kDa、70kDa、75kDa、80kDa、85kDa、90kDa、95kDa、または100kDa以上であることが好ましい。本発明との関連におけるPSA重合体は、分子量分布の狭いものが好ましい。
【0047】
本発明の方法において、PSAの反応性アルデヒドは、多糖の非還元末端にあることが好ましい。しかし、例えばUS4356170に記載のように、還元末端に反応性アルデヒドを用意してもよい。
【0048】
本発明の別の態様において、ポリシアル酸化部分は、シアリルトランスフェラーゼおよびポリシアリルトランスフェラーゼの組合せを用いて酵素的に作成することができる。シアリルトランスフェラーゼは、基質としてN8の(O)-アシアログリカン、または基質としてN8の複合型(N)グリカンを用いる、カンピロバクター・ジェジュニシアリル(Campylobacter jejuni)のトランスフェラーゼCstll (Gilbertら、JBC (2002) 277, 327)であることが好ましい。
【0049】
この結果得られる、アルファ2,3-アルファ2,8連結ジシアリル末端モチーフを保持するグリカンを、次いで、髄膜炎菌または大腸菌K1のアルファ2,8-ポリシアリルトランスフェラーゼのような細菌性ポリシアリルトランスフェラーゼの基質として用いることができる(Willisら、Glycobiology (2008) 18(2) 177、WO2008/151448 A1、ChoおよびTroy、PNAS (1994), 91, 11427)。
【0050】
代替的には、WO2007/087711A1に記載のように、二機能性シアリルトランスフェラーゼおよびポリシアリルトランスフェラーゼを含む融合タンパク質を用いて、ポリシアル酸化部分を酵素的に作成してもよい。代替的には、基質としてN8の(N)グリカンを用いる、STX(ST8Sia II)および/またはPST(ST8Sia IV)のような哺乳動物アルファ2,8ポリシアリルトランスフェラーゼ(Angataら、JBC 277(39)36808およびそこに引用されている参考文献)を用いて、ポリシアル酸化部分を酵素的に作成してもよい。
【0051】
医薬組成物:本明細書において、医薬組成物は、好ましくは、例えば、使用準備済の無菌水性組成物または例えば水もしくは水性バッファー中で再構成することができる乾燥無菌組成物などの非経口投与に適した第VIII因子分子と任意で組み合わせた、本発明に記載の第VIII因子抗体を含む組成物を包含するものとする。本発明による組成物は、様々な薬学的に許容できる添加剤、安定化剤などを含み得る。
【0052】
そのような組成物の追加成分には、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、充填剤、張度調節剤、キレート剤、金属イオン、油性媒体、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチンまたはタンパク質)および双生イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジンおよびヒスチジンなどのアミノ酸)が含まれ得る。そのような追加成分は、当然ながら、本発明の医薬製剤の総合的な安定性に悪い影響を与えるべきでない。シリンジ、場合によってペン様シリンジによる、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射によって、非経口的投与を行うことができる。代替的には、輸液ポンプによって非経口投与を行うこともできる。さらなるオプションは、鼻噴霧または肺噴霧の形における、FVIII抗体化合物の投与のための溶液または懸濁液であり得る組成物である。なおさらなるオプションとして、本発明のFVIII化合物を含有する医薬組成物は、経皮投与、例えば無針注射による、もしくはパッチ、場合によってイオントフォレーシスパッチからの投与、または経粘膜投与、例えば頬側投与に適合させることもできる。
【0053】
「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、それを必要とするヒト対象または他の動物対象の薬物療法を指す。前記対象は、前記特定の治療の使用が前記ヒト対象または他の動物対象の健康に有益であることを述べる仮の診断または決定的な診断を与えた医者による身体検査を受けていることが期待される。前記治療のタイミングおよび目的は、対象の健康の現状に従って、個体によって変動し得る。したがって、前記治療は、予防的、緩和的、および/または症候的であり得る。
【0054】
本明細書において本発明のある特定の特徴を例示および記載したが、当業者ならば、今、多くの修正、置換、変更、および均等物を見出すであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内にあるそのような修正および変更をすべて包含するように意図されていることを理解するべきである。
【0055】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つのPEG重合体および少なくとも1つの多糖とコンジュゲートしたFVIIIバリアントに関する。そのような「ヘテロコンジュゲート」バリアントは、驚いたことに「ホモコンジュゲート」FVIIIバリアント(例えば、FVIII-PEG-PEGまたはFVIII-PSA-PSAバリアント)と比較して、改善されたin vivo循環半減期を有する。
【0056】
本発明の一実施形態では、多糖がPSAである。
【0057】
別の実施形態では、本発明による前記FVIIIバリアントが、末端欠失型Bドメイン内のO連結オリゴ糖を介してPEG重合体またはPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしたBドメイン末端欠失型分子であり、FVIII活性化が前記O連結重合体の除去をもたらす。
【0058】
別の実施形態では、前記バリアントが、N連結オリゴ糖を介して、少なくとも1つのPEG重合体またはPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしている。このN連結オリゴ糖は、天然存在のものでもよく、または遺伝的操作によってそれを導入してもよい。
【0059】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、末端欠失型Bドメイン内のO連結オリゴ糖を介してPEG重合体と共有結合によってコンジュゲートしており、N連結オリゴ糖を介して少なくとも1つのPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしている。その活性化段階において、このFVIIIバリアントは、重合体基がBドメイン内でグリカンにコンジュゲートされる場合、内因性の活性化FVIIIに類似したものであり得る。
【0060】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、A1ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖およびA3ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された2〜4つのPSA重合体を含む。
【0061】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、N連結オリゴ糖を介して少なくとも1つのPEG重合体またはPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしている。
【0062】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、末端欠失型Bドメイン内のO連結オリゴ糖を介してPEG重合体と共有結合によってコンジュゲートしており、N連結オリゴ糖を介して少なくとも1つのPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしている。
【0063】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、A1ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖およびA3ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された2〜4つのPSA重合体を含む。
【0064】
一実施形態では、前記FVIIIバリアントが、A1ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された1つまたは2つのPSA重合体を含む。
【0065】
一実施形態では、前記FVIIIバリアントが、A3ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された1つまたは2つのPSA重合体を含む。
【0066】
一実施形態では、前記FVIIIバリアントが、末端欠失型Bドメイン内のO連結オリゴ糖を介してPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしており、N連結オリゴ糖を介して少なくとも1つのPEG重合体と共有結合によってコンジュゲートしている。
【0067】
一実施形態では、末端欠失型Bドメイン内のO連結オリゴ糖を介してPEG重合体と共有結合によってコンジュゲートしており、N連結オリゴ糖を介して少なくとも1つのPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしている。
【0068】
一実施形態では、前記FVIIIバリアントが、A1ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖およびA3ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された2〜4つのPEG重合体を含む。
【0069】
一実施形態では、前記FVIIIバリアントが、A1ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された1つから2つのPEG重合体を含む。
【0070】
一実施形態では、前記FVIIIバリアントが、A3ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された1つまたは2つのPEG重合体を含む。
【0071】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、30〜50kDaのサイズを有するPEG重合体を含む。
【0072】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、15〜50kDaのサイズを有するPSA重合体を含む。
【0073】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、40〜50kDaのサイズを有するPSA重合体を含む。
【0074】
別の実施形態では、前記FVIIIバリアントが、Bドメイン末端欠失型FVIIIバリアントであり、Bドメインが配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。
【0075】
別の実施形態では、多糖が、ヒドロキシエチルデンプン(HES)である。
【0076】
第2の態様は、本発明によるFVIIIバリアントを作製する方法であって、FVIII分子を少なくとも1つのPEG重合体および少なくとも1つの多糖とコンジュゲートする工程を含む方法に関する。
【0077】
一実施形態では、前記方法におけるコンジュゲーション工程の少なくとも1つが酵素的過程である。
【0078】
第3の態様は、本発明による方法によって取得される、または取得可能であるFVIIIバリアントに関する。
【0079】
第4の態様は、本発明によるFVIIIバリアントと、場合によって、1つまたは複数の薬学的に許容できる添加剤とを含む医薬組成物に関する。そのような組成物は、IVまたは皮下投与用に意図されていることが好ましい。
【0080】
第5の態様は、本発明によるFVIIIバリアントまたは医薬組成物の、医薬としての使用に関する。
【0081】
第6の態様は、本発明によるFVIIIバリアントまたは医薬組成物の、血友病Aを治療するための医薬としての使用に関する。
【0082】
第7の態様は、本発明によるFVIIIバリアントまたは医薬組成物の治療有効量を患者に投与する工程を含む、血友病Aを治療する方法に関する。
【0083】
(実施例)
略語:
DIC:ジイソプロピルカルボジイミド
HOBt:1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール
THF:テトラヒドロフラン
DCM:ジクロロメタン
DMF:ジメチルホルムアミド
TFA:トリフルオロ酢酸
HC、LC:N8の重鎖および軽鎖
CMP:シチジン一リン酸
GSC:シチジン一リン酸-5'-グリシル-ノイラミン酸
GSC-ONH2:5'-(2-(12-((アミノキシメチルカルボニル)アミノ)-4,7,10-トリオキサドデカノイル)アミノエタノイル)ノイラミン酸シチジン一リン酸
HOAt:1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾール
PSA:ポリシアル酸。ここでは、α2,8ポリシアル酸(コロミン酸)によって例示される。
NAN-CMP:N-アセチルノイラミン酸シチジン一リン酸
SEC-MALS:多角度光散乱検出を伴うサイズ排除クロマトグラフィー
IEX:イオン交換。
CV:カラム容積
【0084】
(O)-PEG40(N)-PSA-N8型のN8コンジュゲートの合成
概説:市販のコロミン酸を陰イオン交換カラムで分画し、約20kDまたは約45kDのいずれかの分子量を有する画分をプールした。得られた物質を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化した。酸化PSAをGSC-ヒドロキシルアミン誘導体、5'-(2-(12-((アミノキシメチルカルボニル)アミノ)-4-7-10-トリオキサドデカノイル)アミノエタノイル)-ノイラミン酸シチジン一リン酸とカップリングさせ、GSC-ON=PSA試薬を得た。これが、N-アシアロ(O)-PEG40 N8のST3Gal-III触媒ポリシアル酸付加におけるドナーとして用いられた(したがって、PSAはN-グリカンにカップリングされた)。
【0085】
この型のコンジュゲートの合成について以下に詳述する。
【0086】
(実施例1)
12-((Fmoc-アミノキシメチルカルボニル)アミノ)-4-7-10-トリオキサドデカン酸3の合成:
【0087】
【化1】

【0088】
Fmoc-アミノキシ酢酸1(1000mg、3.2mmol)、12-アミノ-4-7-10-トリオキサドデカノネートt-ブチルエステル2(885mg;3.2mmol)、およびHOBt(431.5mg;3.2mmol)をTHF(5ml)中に可溶化させた。次いで、DIC(402mg;3.2mmol)を添加した。混合物を周囲温度で終夜、撹拌した。
【0089】
LC-MS分析は、所望の生成物が形成されたことを示した(m/z=574)。
【0090】
反応混合物をDCMと重炭酸ナトリウムとの間で分配した。有機相を重炭酸ナトリウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。
【0091】
残留物を20%TFA-DCM(10ml)中に溶解させ、周囲温度で30分間、撹拌し、蒸発させた。LC-MS分析は、所望の生成物、12-((Fmoc-アミノキシメチルカルボニル)アミノ)-4-7-10-トリオキサウンデカン酸3(m/z=517)の存在を示した。
【0092】
40ml/分の流速の溶媒A:DCMと溶媒B:5%CH3OHを含むDCMとを用いて、シリカ上でフラッシュクロマトグラフィーによって、油性残留物を精製した。勾配は以下の通りであった:0.5CVにわたって0%B、11.5CVにわたって0から100%B、2.5CVにわたって100%B。生成物を90から100%Bで溶出した。関連する画分をTLCで検査し、純粋な画分をプールし、蒸発させ、収率75%で無色の油を得た。
【0093】
LC-MS:m/z=517
【0094】
1H-NMR (CDCl3; 400MHz): δ 2.55 ppm (t, 2H); 3.45〜3.75 (m, 10H); 4.22 (t, 1H); 4.42 (s, 2H); 4.52 (d, 2H); 7.32 (t, 2H); 7.41 (t, 2H); 7.57 (d, 2H); 7.75 (d, 2H); 8.07 (bs, 1H); 8.79 (bs, 1H)。
【0095】
(実施例2)
GSC誘導体の合成:(5'-(2-(12-((アミノキシメチルカルボニル)アミノ)-4-7-10-トリオキサドデカノイル)アミノエタノイル)-ノイラミン酸シチジン一リン酸) 6(「GSC-ONH2」)
【0096】
【化2】

【0097】
カルボン酸3(0.52g、1mmol)の乾燥THF(5ml)溶液にHOAt(2.2ml、0.5MのNMP溶液1.1当量)およびDIC(0.205ml、1.3mmol、1.3当量)を添加した。反応混合物を周囲温度で0.5時間撹拌した。
【0098】
次いで、同量のDICを添加し、続いて、100mM HEPES水性バッファー(10ml)中に新たに調製されたGSC4(0.69g、1.1mmol)溶液を添加した。反応混合物は黄変した。5.5時間の反応時間の後に、DIC(1.1当量)をさらに添加した。
【0099】
次いで、反応混合物を周囲温度で終夜インキュベートした。
【0100】
LC-MS分析は、予測された生成物5が形成されたことを示した(m/z=1128.7)。
【0101】
PTFEフィルターを通して反応混合物を濾過し、溶媒としてアセトニトリルおよび250mM炭酸水素アンモニウムを用いた、逆相C18カラム上のHPLCによって精製した。関連する画分をプールし凍結乾燥させた。凍結乾燥の前後に、溶媒A:アセトニトリル、B:H2O、C:0.5M NH4HCO3 pH7.9を用いた逆相C18カラム(Waters Symmetry C18、5μ、3.9×150mm)上の分析用HPLCによって純度を検査した。線形勾配は、1ml/分の流速で15分間にわたり、B:C(90:10)の混合物で始まり、混合物A:B:C(60:30:10)で終わった。カラムオーブンは42℃の温度に設定した。凍結乾燥下においてわずかな分解が起こった(4%未満)。
【0102】
次いで、以下の通り、Dowex 50W樹脂を用いて、アンモニウム陽イオンをナトリウムと交換した。Dowex 50WX2、100〜200メッシュ(H+形態)(12g)を20mlのフィルターシリンジに入れた。溶出液が塩基性になるまで(25ml)、樹脂を1N NaOHで洗浄した。次いで、溶出液がpH中性になるまで、樹脂を水で洗浄した。生成物をTHF:H2O(1:10)(11ml)中に溶解させ、樹脂上にアプライし、滴状に溶出させた(7×5ml H2O)。画分をTLC(Mercks、シリカゲル60 F254nm)上にスポットした。関連する画分をプールし、凍結乾燥させた。
【0103】
窒素検出器を装備し、逆相Phenomenex Jupiter C18 100×4.6mm, 5μ, 300Aカラム上で生成物を流すHPLCで生成物を定量化した。
【0104】
溶媒は、A:H2O、B:2-プロパノール、C:1%TFAであった。勾配は、A:C(90:10)の混合物から始まり、混合物(A:B:C)(10:80:10)で終わった。流速は1ml/分であった。収率は46%であった。
【0105】
【化3】

【0106】
5(200mg)を10%水性メタノール(3.3ml)中に溶解させた。ジメチルアミン(3mlの40%H2O溶液)および反応混合物を周囲温度で1.5時間、撹拌した。10〜15分後、混合物が混濁した。反応をLC-MSによってモニターした。反応は、20℃で1時間後に完了した。
【0107】
反応混合物を水(5ml)で希釈し、ジクロロメタン(4×5ml)で洗浄した。両方の相をLC-MSで検査した。水相が生成物を含有しており、フルオレン部分は検出できなかった。有機相中には、生成物を検出することができなかった。水相を凍結乾燥し、無色の固形物として、GSC誘導体、5'-(2-(12-((アミノキシメチルカルボニル)アミノ)-4-7-10-トリオキサドデカノイル)アミノエタノイル)-ノイラミン酸シチジン一リン酸、(「GSC-ONH2」) 6を得た。
【0108】
(実施例3)
分子量約20kDaの物質を得るコロミン酸分画:
用いられたコロミン酸は、Sigma-Aldrichから市販されている化合物(大腸菌由来のα2,8ポリシアル酸ナトリウム塩(PSA))であった。より均質な物質(その分子量に関して)を得るために、WO2008/074032に記載のイオン交換カラム上で分画した。約20kDの分子量に対応する画分を後続の実験で用いた。
【0109】
(実施例4)
実施例3で単離された20kD PSA物質の過ヨウ素酸ナトリウム酸化:
PSA重合体の非還元末端のポリオールの過ヨウ素酸ナトリウム酸化を、本質的に文献(例えば:Jainら、BBA (2003) 1622, 42-49)に記載の通りに、一部改変して行った。20kD PSAの溶液(2.24ml H2O中に40mg)に過ヨウ素酸ナトリウム溶液(2.244ml H2O中に0.96mg)を添加した。暗中、23℃で15分間、反応物をインキュベートした。
【0110】
過剰の過ヨウ素酸塩を3-メチルチオ-1-プロパノール(4.7μl)によってクエンチングした。反応物を23℃で2時間さらにインキュベートした。
【0111】
Millipore Ultra、5kDカットオフでの限外濾過によって、反応混合物を水にバッファーシフトさせ、凍結乾燥させた。凍結乾燥した物質は、それをGSC-ONH2と反応させた次の工程でそのまま用いた。
【0112】
(実施例5)
シアリルトランスフェラーゼST3GalIII基質であるGSC-ON=PSA(20kD)を産生させるための、過ヨウ素酸ナトリウム酸化されたPSA(20kD)の、GSC-ONH2へのカップリング:
溶液:
- 反応バッファー:100mMイミダゾールpH6.8
- GSC-ONH2(実施例X2から):反応バッファー中に8.2mg/ml。
- 過ヨウ素酸酸化されたPSA(20kD):反応バッファー中に175mg/ml
- アニリン(MW=93.13、d=1.0217)
- メチルヒドロキシルアミン塩酸塩:反応バッファー中に58.5mg/ml
【0113】
手順:
反応バッファー中の過ヨウ素酸酸化されたPSA(20kD)溶液(200μl、35mg、1.75μモル)に反応バッファー中のGSC-ONH2溶液(400μl、3.26mg、3.6μモル、約2当量)を添加した。激しい磁気撹拌下での1M HCl(5.5μl)の添加によってpHを6.9に調整した。次いで、アニリン(0.56μl、6nモル)を添加した。黄色がかりわずかに混濁した混合物を25℃でインキュベートした。10〜15分後にいくらかの沈殿が観察された。
【0114】
反応が進行した後、溶出液として100mMリン酸バッファーpH6.8、流速0.6ml/分、周囲温度、212および272nmにおけるDAD検出器を用いて、サイズ排除カラムWaters Biosuite 125, HR ESC 300×7.8mm(+ガードカラム)上で分析を行った。30分、2時間、および18時間の反応時間の後に分析を行った。
【0115】
GSC-ONH2は、このシステムでは18.5分で溶出する。生成物は、約13.8分の保持時間の広い「ピーク」として溶出する。
【0116】
PSA(20kD)および生成物GSC-ON=PSA(20kD)の両方が同じ保持時間で溶出するので、反応の進行は、(212nmの生成物ピークの面積)に対する(272nmの生成物ピークの面積)の比率を見ることによってモニターした(PSAは212nmのみで吸光し、GSCは272nmで吸光する)。比率は、30分から2時間まで増大し、18時間の反応時間まで一定のまま残っていた。
【0117】
19時間の反応時間の後に、反応していないいかなるアルデヒドも、メチルヒドロキシルアミン溶液(25μl、10当量)の添加によってクエンチングし、混合物を周囲温度で1時間インキュベートした。
【0118】
次いで、低分子量試薬を取り除くために、反応混合物を0.45μフィルター(Millipore Millex-HV(PVDF))で濾過し、1.5g/l L-ヒスチジン、3g/lショ糖、18g/l NaCl、0.1g/l Tween 80;0.25g/l CaCl2、2H2O、pH7.3バッファー中に調整したProSpin CS-800(Princeton Separations)でさらに精製した。
【0119】
最終生成物の定量化は、CMP(Sigma C1006)との比較において行い、既知濃度のCMP溶液の272nmの吸光を測定することによって、標準曲線を作成した。
【0120】
GSC-ON=PSA(20kD)は、過ヨウ素酸酸化されたPSAに対して45%の収率で得られた。
【0121】
(実施例6)
GSC-ON=PSA(20kD)との(N)-アシアロ(O)-PEG(40kD)N8のシアリルトランスフェラーゼST3Gal-III触媒反応による(N)-PSA(20kD)-(O)-PEG(40kD)-N8の調製
第1工程:
(O)-PEG(40kD) (N)-アシアロ-N8 N8
この化合物は、特許WO2009/108806 A1に開示の手順に従って合成した。
【0122】
第2工程:
GSC-ON=PSA(20kD)による(O)-PEG(40kD)(N)-アシアロN8のST3Gal-III触媒PSA化:
溶液:
- 反応バッファー:1.5g/l L-ヒスチジン、3g/lショ糖、18g/l NaCl、0.1g/l Tween 80; 0.25g/l CaCl2、2H2O、pH7.3
- GSC-ON=PSA(20kD):反応バッファー中に0.78mM
- ST3Gal-III:(ラット酵素):1.42mg/ml(1.34U/mg)
- (O)PEG(40kD)-(N)アシアロN8:反応バッファー中に1.76mg/ml
【0123】
手順:
(O)-PEG(40kD)(N)-アシアロN8溶液(272μl、0.48mgタンパク質、2.71nモル)にGSC-ON=PSA溶液(36.5μl、28.5nモル、10.5当量)を添加した。反応バッファー(104μl)を添加した。反応は、酵素(63.2μl、89.6μg、約120mU)の添加によって開始した。反応混合物は、32℃で22時間インキュベートした。
【0124】
10μlの反応バッファー中のNAN-CMP(1mg)溶液の添加によって、生成物をキャッピングした。反応混合物を32℃で1時間インキュベートした。
【0125】
ワークアップおよび精製:
用いられたバッファーは以下の通りであった。
- バッファーA:10mM CaCl2、1Mグリセロール、0.02%Tween 80を含有し、NaClを含まない20mMイミダゾールバッファーpH7.4
- バッファーB、バッファーA+1M NaCl
- 反応バッファー:1.5g/l L-ヒスチジン、3g/lショ糖、18g/l NaCl、0.1g/l Tween 80、0.25g/l CaCl2、2H2O、pH7.3
【0126】
ワークアップおよび精製:
バッファーA(8ml)中に希釈した後、反応混合物を、製造業者説明書に従ってVivapure Q Mini Mデバイスにおけるイオン交換によって精製した。生成物をバッファーB中に回収した。
【0127】
生成物をサイズ排除カラムSuperdex200 10×300GL(GE Healthcare)上で、溶出液として反応バッファーを用いて、さらに流した。
【0128】
タンパク質回収率は32%であった。
【0129】
生成物の特性分析:
- SDS PAGE分析:
回収された生成物を7%Tris酢酸SDSゲル(150V、1時間10分)(Invitrogen)において、還元条件下で流し、クマシーブルー染色を用いた。タンパク質標準物質は、InvitrogenのHiMark無染色HMWタンパク質標準物質であった。
【0130】
(O)-PEG(40kD)(N)-アシアロN8のペグ化重鎖バンドは、約240kDに現れ、軽鎖は約83kDに現れた。PSA化の後に、PSA化重鎖に相当すると想定されたバンドが、予測された通り、より高いMW(260kDと280kDの間)に現れた。加えて、PSA化軽鎖に相当すると想定される広く拡散したバンドが97〜116kDに現れた。
【0131】
N8の重鎖に相当する残りのバンドは検出することができず、見ることができたのは、軽鎖の痕跡のみであった。これは、PSAが実際に(O)-PEG40kD-N8の重鎖および軽鎖の両方に移されたことを示す。
【0132】
- 逆相HPLCでの分析:
分析は、逆相Daiso 300A、250×2.1、5μカラムで行われた。溶出液は:A:H2O/TFA 0.1%およびB:H2O/ACN/TFA(80:20:0.09%)、流速0.25ml/分、カラムオーブンの温度40℃であった。勾配は、30分にわたる、35%から84%までであった。HPLCは、DAD検出器(280nm)と、励起波長が280nmであり、発光波長が348nmである蛍光検出器との2つの検出器を備えていた。生成物の重鎖および軽鎖の保持時間は、下記の表に示されている通りであった。FVIIIの重鎖および軽鎖、ならびに中間体(O)-PEG(40kD)-N8の保持時間を比較のために示す。
【0133】
【表1】

【0134】
したがって、より極性の最終生成物[(N)-PSA (20kD)-(O)-PEG (40kD) N8]について予測される通り、重鎖および軽鎖の保持時間は、開始化合物および中間化合物のHCおよびLCの保持時間より短い。ポリシアル酸のカップリングの後に、保持時間に、より大きな影響が生じないことは、いくぶん驚くべきことである。しかし、PSAのカルボン酸部分に由来する負電荷を、溶出液中に存在する酸が中和するので、このシステムは、生理的な条件を反映していない。
【0135】
- 活性:
最終生成物の活性を、Chromogenixの色素産生アッセイCoA試験SP FVIIIで測定した。開始FVIIIと比較して、80%を超える活性が回収された。
【0136】
(実施例7)
分子量約45kDの物質を得るためのコロミン酸断片化
用いられたコロミン酸は、Sigma-Aldrichから市販されている化合物(α2,8ポリシアル酸ナトリウム塩(PSA))であった。より均質な物質(その分子量に関して)を得るために、それを、バッファーAおよびBを用いて、HiPrep16/10Q FF陰イオン交換カラム(GE Healthcare)上で分画した。
A:10mM トリエタノールアミンpH7.4、25mM NaCl
B:10mM トリエタノールアミンpH7.4、1M NaCl
【0137】
8CVのバッファーAでカラムを均衡化した後、コロミン酸は、流速2ml/分、24CVにわたる17.5%Bから100%Bへの勾配を用いて分画した(5ml画分)。UV検出を210nmで行った。Millipore Amicon Ultra 3kDカットオフにおける限外濾過によって、画分を水にバッファーシフトさせ、凍結乾燥し、SEC-MALSおよびUVによって分析した。38〜77kDの分子量範囲にある約45kDの分子量(最大UV吸収における分子量)に相当する画分(「45kD PSA」)をプールして、後続の実験で用いた。
【0138】
(実施例8)
45kD PSAの過ヨウ素酸ナトリウム酸化
実施例7で得られた物質(「45kD PSA」)の水溶液(0.5ml水中に13.5mg)に、4mM過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(167μl、2.24モル当量)を添加した。暗中、周囲温度で15分間、反応物をインキュベートした。
【0139】
過剰の過ヨウ素酸ナトリウムを3-メチルチオ-1-プロパノール(0.7μl, 12モル当量)によってクエンチングした。反応物を周囲温度で2時間さらにインキュベートした。
【0140】
Millipore Amicon Ultra-4, 5kDカットオフでの限外濾過によって、反応混合物を水にバッファーシフトさせ、凍結乾燥させた。凍結乾燥した物質をそのまま次の工程で用いた。
【0141】
(実施例9)
シアリルトランスフェラーゼST3GalIII基質GSC-ON=PSA(45kD)を産生するための、過ヨウ素酸ナトリウム酸化されたPSA(45kD)の、GSC-ONH2へのカップリング:
溶液:
- 反応バッファー:100mMイミダゾールpH6.8
- GSC-ONH2(実施例2から):反応バッファー(6.8にpH調整されている)中に8.3mg/ml
- 過ヨウ素酸酸化された45kDa PSA(実施例Y2から):反応バッファー中に355mg/ml
- 飽和したアニリン水溶液(約0.38M)
- メチルヒドロキシルアミン塩酸塩:反応バッファー中に58.5mg/ml
【0142】
手順:
反応は、本質的に実施例5に記載の通りに行った。詳述は下記に含まれる。反応バッファー中の過ヨウ素酸酸化された45kD PSA(実施例8から)の溶液(92μl, 32.7mg, 0.73μモル)に反応バッファー中のGSC-ONH2(実施例2から)溶液(168μl、1.4mg、1.5μモル、約2当量)を添加した。次いで、アニリンの飽和水溶液(6.8μl、2.58μモル)を添加した。反応混合物を周囲温度でインキュベートした。
【0143】
反応が進行した後、サイズ排除カラムWaters Biosuite 125, HR ESC 300×7.8mm(+ガードカラム)を用いて、HPLC分析を行った。溶出液は、100mMリン酸バッファーpH6.8、流速0.6ml/分であった。214nm(PSAおよびGSC部分の検出)および272nm(GSC部分の検出)におけるDAD検出器を用いて、分析を周囲温度で行った。GSC-ONH2は18.5分で溶出し、酸化45kD PSAおよび反応生成物は、10.3分の同じ保持時間で溶出した。
【0144】
酸化45kD PSAおよび生成物GSC-ON=PSAの両方が同じ保持時間で溶出するので、(212nmにおける酸化45kD PSA/GSC-ON=PSAの面積)に対する(272nmにおける酸化45kD PSA/GSC-ON=PSAピークの面積)の比率を見ることによって、反応の進行をモニターした。
【0145】
1時間、1時間45分、3時間、4時間30分、5時間30分、10時間、および23時間30分の反応時間の後に、分析を行った。
【0146】
比率は、1時間から1時間45分まで増大したが、1時間45分と3時間の間では変化しなかった。したがって、さらに多くのGSC-ONH2試薬を反応時間4時間に添加した(32μl、267μg)。同様に、さらに多くの試薬(0.9mg)を10時間の反応時間の後に添加し、混合物を周囲温度で合計23時間30分置いた。
【0147】
Micro Aktaシステム(GEヘルスケア)を用いて、Superdex200 10/300GL(GE Healthcare)カラム上で反応混合物を精製した。溶出液は、流速0.4ml/分、画分容積0.5mlの20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、0.5M NaClであった。検出を210nmおよび272nmで行った。関連する画分をプールし、Millipore Amicon Ultra 5kDカットオフでの限外濾過で濃縮し、次の工程でそのまま用いた。最終生成物の濃度は、0.27mMであると見積もられた(272nmにおけるCMP(Sigma C1006)の標準曲線との比較による)。
【0148】
(実施例10)
GSC-ON=PSA(45kD)を用いた(N-アシアロ)(O)-PEG(40kD)N8のシアリルトランスフェラーゼST3Gal-III触媒反応によるN-PSA(45kD)(O)-PEG(40kD)N8グリカンの調製
第1工程:
(O)-PEG40kD(N)-アシアロN8:
化合物は、特許WO2009/108806 A1に記載された手順に従って合成された。
【0149】
第2工程:
GSC-ON=PSA(45kD)を用いた(N)-アシアロ(O)-PEG(40kD)(N)-アシアロN8のST3Gal-III触媒PSA化:
溶液:
- 反応バッファー:20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、0.5M NaCl
- アシアロ-[O]-PEG40kD-N8:2.78mg/ml
- GSC-ON=PSA(45kD)反応バッファー中に0.27mM
- ST3Gal-III:(ラット酵素):MBP-SBP-ST3Gal III: 1mg/ml
【0150】
手順:
(N)アシアロ(O)-PEG40kD-N8溶液(325μl、0.9mgタンパク質、5.13nモル)にGSC-ON=PSA(45kD)溶液(190μl、51.3nモル、2.3mg、10当量)を添加した。反応は、酵素(116.3μl、116.3μg)の添加によって開始した。反応混合物を32℃で17時間インキュベートした。
【0151】
15μl反応バッファー中のNAN-CMP(1.2mg)溶液の添加によって生成物をキャッピングした。反応混合物を32℃で1時間インキュベートした。
【0152】
ワークアップおよび精製:
20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、1Mグリセロール、0.02% Tween 80、25mM NaClで反応混合物を16mlに希釈し、その後、MonoQ 5/50GL(GE Healthcare)におけるイオン交換によって精製した。用いられたバッファーは以下の通りであった。バッファーA:10mM CaCl2、1Mグリセロール、0.02% Tween 80を含有する(NaClを含まない)20mMイミダゾールバッファーpH7.4およびバッファーB:10mM CaCl2、1Mグリセロール、0.02% Tween 80、1M NaClを含有する20mMイミダゾールバッファーpH7.4。流速は0.7ml/分であった。カラムを20CVで平衡化した。溶出プロファイルは以下の通りであった:3CVにわたって0%B、5CVにわたって0から20%B、15CVにわたって20%B、15CVにわたって20から100%B、10CVにわたって100%B。UV検出を280nmで行った。分画は周囲温度で行った。最初に酵素を溶出させ、後で小さな肩のあるピークとして生成物を溶出する。主要ピークに相当する画分をプールし、さらに精製し、溶出液として、1.5g/l L-ヒスチジン、3g/lショ糖、18g/l NaCl、0.1g/l Tween 80;0.25g/l CaCl2, 2H2O、pH7.3を含有するバッファーを用いて、サイズ排除カラムSuperdex200 10×300GL(GE Healthcare)においてバッファー交換した。流速は0.5ml/分であった。UV検出を280nmで行った。生成物を主要ピークとして溶出し、その後、ピーク間のベースライン分離を用いて小さなピークを溶出した。主要ピークに相当する画分をプールし、Millipore Amicon Ultra, 50kDカットオフにおける限外濾過によって濃縮した。タンパク質回収率は52%であった。
【0153】
生成物の特性分析:
- SDS PAGE分析:
回収した生成物を、還元条件下、7%Tris酢酸SDSゲル(Invitrogen)において流し(150V、1時間10分)、クマシーブルー染色を用いた。タンパク質標準物質は、InvitrogenのHiMark無染色HMWタンパク質標準物質であった。
【0154】
(O)-PEG(40kD)-N8を用いると、ペグ化された重鎖バンドが約240kDに現れた。PSA化の後、MWがより高いバンドが約290kDに現れた。加えて、広く拡散したバンド(PSA化軽鎖に相当すると想定される)が120kDと160kDの間に現れた。
【0155】
FVIIIの重鎖の分子量に相当する極めてかすかなバンドを検出することができた。また、FVIIIの軽鎖に相当するバンドの痕跡を見ることができた。
【0156】
- HPLCでの分析
逆相Daiso 300A、250×2.1、5μカラムで分析を行った。溶出液は、A:H2O/TFA 0.1%、およびB:H2O/ACN/TFA(80:20:0.09%)、流速0.25ml/分であり、カラムオーブンの温度は40℃であった。勾配は、30分にわたる、35%から84%までであった。HPLCは、2つの検出器:DAD検出器(214nm)を備えていた。生成物の重鎖および軽鎖の保持時間は下記の表の通りであった。N8の重鎖および軽鎖、ならびに中間体(O)-PEG(40kD)-N8の保持時間を比較のために示す。
【0157】
【表2】

【0158】
(N)-PSA(45kD)-(O)-PEG (40kD)-N8について、[(N)-PSA (20kD)-(O)-PEG (40kD) N8(実施例6参照)と同じ一般プロファイルが得られた。すなわち、より極性である最終生成物(N)-PSA(45kD)-(O)-(40kD)-N8]は、予測された通り、開始化合物および中間化合物のHCおよびLCの保持時間より短い、重鎖および軽鎖の保持時間を示す。
【0159】
活性:
最終生成物の活性は、製造業者の説明書に従って、Chromogenixの色素産生アッセイCoA試験SP FVIIIで測定した。開始N8と比較して、約55%の活性が回収された。
【0160】
(実施例11)
(O)-PSA (N)-PSA-N8型のN8コンジュゲートの合成
概説:(O)-アシアロ(N)-アシアロN8を得るために、N8を脱シアリル化した(アルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)由来のシアリダーゼによって触媒される反応)。(O)-アシアロ(N)-アシアロN8を用いたGSC-ON=PSA(実施例5または9)のST3Gal-I触媒反応によって、PSAを(O)-アシアログリカンに移した。イオン交換による精製の後、GSC-ON=PSA試薬を、N-アシアロ(O)-PEG40 N8のST3Gal-III触媒ポリシアル酸付加におけるドナーとして用いた。最後に、NAN-CMPを反応混合物に添加することによって、未反応の残ったガラクトース部分をすべてキャッピングした。
【0161】
この型のコンジュゲートの合成を以下に詳述する。
【0162】
第1工程:N8の脱シアリル化およびN8の(O)アシアログリカンへのPSAのST3Gal-I触媒転移(1回のポット反応)による(O)-PSA(20kD) (N)-アシアロN8の調製:
溶液:
- 反応バッファー:20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、0.5M NaCl
- N8:反応バッファー中に5.7mg/ml(8650U/mg)
- シアリダーゼ:アルスロバクター・ウレアファシエンス由来。0.4mg/ml、242U/mg。
- GSC-ON=PSA(20kD): (3g/lショ糖、1.5g/l L-ヒスチジン、18g/l NaCl、0.1g/l Tween 80; 0.25g/l CaCl2;pH7.3)中に25mg/ml
- His-ST3Gal-I;AA46〜343; (50mM Tris pH8、100mM NaCl)中に2.5mg/ml
【0163】
手順:
反応バッファー中のN8の溶液(1.5mg、8.5nモル、263μl)にA.ウレアファシエンスシアリダーゼの溶液(7μl、678mU、1.5U/ml最終濃度)およびST3Gal-I酵素の溶液(108μl、0.27mg)を添加した。GSC-ON=PSA(20kD)の溶液(68μl、1.7mg、約85nモル、約10当量)を添加した。反応混合物を24時間、23℃でインキュベートした。
【0164】
ワークアップおよび精製:
(20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール)を含有するバッファーで反応混合物を20倍希釈し、イオン交換カラム(MonoQ 5/50GL、GE Healthcare)で精製した。溶出バッファーは、バッファーA:20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、およびバッファーB:1.5M NaClを添加したバッファーAであった。流速は0.35ml/分であった。精製は15℃で行った。検出はUV、280nmで行った。溶出は以下の通りであった:5CVにわたって0から20%B、25CVにわたって20から100%B、5CVにわたって100%B。1ml画分を96ディープウェルプレート内に収集した。関連する画分を、還元条件下のSDS PAGE(7% Tris酢酸SDSゲル)(150V、1時間10分)(Invitrogen)によって、銀染色を用いて分析した。タンパク質標準物質は、InvitrogenのHiMark無染色HMWタンパク質標準物質であった。主要ピークに相当する画分は、N8(N8の約35%がO-グリコシル化されていない(Thimら、Haemophilia (2010), 16(Suppl 5), 194))および(O)-PSA化N8の混合物を含有する。シアリダーゼまたはST3Gal-I酵素の痕跡は検出することができなかった。
【0165】
主要ピークに相当する画分をプールし、限外濾過(Millipore Amicon Ultra、50kDカットオフ)によって濃縮して、逆相HPLC分析によると5.5mg/mlのタンパク質濃度を有する溶液を得た(HPLC方法の詳細は、実施例10を参照)。タンパク質回収率は約79%であった。
【0166】
第2工程::(O)-PSA(20kD)(N)-アシアロN8の(N)-アシアログリカンへのPSAのST3Gal-III触媒転移による(O)-PSA(20kD)(N)-PSA(20kD) N8の合成
溶液:
- (O)-PSA(20kD)-(N)アシアロN8およびN8(工程1から)の混合物:5.5mgタンパク質/ml
- GSC-ON=PSA(20kD):(3g/lショ糖、1.5g/l L-ヒスチジン、18g/l NaCl、0.1g/l Tween 80;0.25g/l CaCl2;pH7.3)中に25mg/ml。
- ST3Gal-III:(14mM Hepes pH7、140mM NaCl、50%グリセロール)中に(MBP-SBD-ST3Gal-III) 0.33mg/ml。0.54U/ml。Millipore Biomaxカットオフ5kDでの限外濾過によって(約15倍)濃縮。
- NAN-CMP:20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール中に50mg/ml
【0167】
手順:
第1工程で得られた(O)-PSA(20kD)-(N)-アシアロN8およびN8の混合物(210μl、6.4nモル)にGSC-ON=PSA(20kD)の溶液(26μl、32nモル)を添加した。ST3Gal-III酵素溶液(40μl、324mU、198μg)の添加によって、反応を開始させた。反応混合物を32℃でインキュベートした。3時間の反応時間の後、GSC-ON=PSA(20kD)溶液の新しい部分を添加した(20μl、25nモル)。反応混合物を21時間インキュベートした。
【0168】
キャッピング:
上記の反応混合物に、NAN-CMPの溶液(10μl、0.5mg)を添加した。混合物を32℃で2時間インキュベートした。
【0169】
ワークアップおよび精製:
反応混合物を20mMイミダゾールバッファーpH7.4、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロールで20倍希釈した。
【0170】
次いで、それを、洗浄バッファーとしてバッファーA(20mMイミダゾールバッファーpH7.4、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール)、および溶出バッファーとしてバッファーB(1M濃度までNaClを添加したバッファーA)を用い、製造業者の説明書に従って、IEX膜(Sartorius Vivapure Q Mini M)上で精製した。
【0171】
溶出された生成物を限外濾過(Millipore Amicon Ultraデバイス、カットオフ50kD)によって濃縮した後、精製し、サイズ排除カラム(Superdex200 10/30GL、GE Healthcare)においてバッファーシフトさせた。バッファーはショ糖(3g/l)、L-ヒスチジン(1.5g/l)、NaCl(18g/l)、Tween 80(0.1g/l)、およびCaCl2(0.25g/l)pH7.3を含有していた。流速は0.4ml/分であり、検出は280nmのUVによって行った。0.5ml画分を収集した。
【0172】
残りのST3Gal-III(おそらく凝集体)は、主要ピークの前に溶出する肩として現れた。主要ピークに相当する(St3Gal-IIIを含有していない)画分をプールし、HPLCによって定量化した(HPLC方法の詳細については実施例10を参照)。総タンパク質回収率(N8から開始)は28%であった。
【0173】
生成物特性分析:
- SDS PAGE分析:
回収した生成物を、還元条件下、7%Tris酢酸SDSゲル(Invitrogen)において流し(150V、1時間10分)、クマシーブルー染色を用いた。タンパク質標準物質は、InvitrogenのHiMark無染色HMWタンパク質標準物質であった。
【0174】
非常に広く拡散したバンドが97kDと160kDの間に現れた。これは、PSA化重鎖および軽鎖に相当すると想定される。誘導体化されていない重鎖および軽鎖の痕跡が検出可能である。240kDと280kDの間に現れるバンドは、PSA化単一鎖N8に相当すると想定された。
【0175】
- HPLCでの分析:
分析は、実施例10に示した通りに行った。
【0176】
生成物の重鎖および軽鎖の保持時間は下記の表の通りであった。N8の重鎖および軽鎖の保持時間を比較のために示す。
【0177】
【表3】

【0178】
したがって、より極性のタンパク質について予測される通り、PSA化HCの保持時間は低減する(ピークはより広がって現れる)。PSA化軽鎖については、その影響がそれほど明白ではなく、重鎖では3カ所が利用可能である(HCの(O)-グリカンおよび(N)-グリカン)のに、2カ所の潜在的誘導体化部位のみが利用可能であるという事実も反映していた。
【0179】
- 活性:
最終生成物の活性をChromogenixの色素産生アッセイCoA試験SP FVIIIで測定した。開始FVIIIと比較して、約55%の活性が回収された。
【0180】
(実施例12および13)
(N)-PSA-N8型のN8コンジュゲートの合成
概説:(N)-アシアロN8を得るためにウェルシュ菌(Clostridium perfringens)由来のシアリダーゼを用いてN8を脱シアリル化した。GSC-ON=PSA試薬を、N-アシアロ(O)-PEG40 N8のST3Gal-III触媒ポリシアル酸付加におけるドナーとして用いた。最後に、NAN-CMPを反応混合物に添加することによって、未反応の残ったガラクトース部分をすべてキャッピングした。
【0181】
この型のコンジュゲートの合成の詳述を以下に示す。
【0182】
(実施例12)
(N)-PSA(45kD)N8の合成:
第1工程:ウェルシュ菌シアリダーゼによるN8の脱シアリル化:
溶液:
- 反応バッファー:20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、0.5M NaCl。
- シアリダーゼ:0.3mg/ml 200U/ml
- N8:反応バッファー中に5.7mg/ml
【0183】
手順:
N8溶液(350μl、2mg)に反応バッファー(350μl)および酵素溶液(20μl、4U)を添加した。混合物を、23℃で45分間インキュベートした。
【0184】
ワークアップおよび精製:
反応混合物を(20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、0.15M NaCl)で10倍希釈した。得られた溶液を、Akta Purifier(GE Healthcare)における陰イオン交換カラム(MonoQ5/50GL、GE Healthcare)で精製した。用いられたバッファーは、バッファーA:20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、25mM NaCl、およびバッファーB:1M NaClを含むバッファーAであった。流速は0.5ml/分であり、検出はUV、280nmによって行った。溶出は以下の通りであった:5CVにわたって0から20%B、10CVにわたって20%B、10CVにわたって100%B。溶出液は、最終勾配工程における0.5ml画分で収集した。タンパク質回収率は45%であった。
【0185】
第2工程:(N)-アシアロN8へのPSAのST3Gal-III触媒転移による(N)-PSA(20kD)N8の合成:
試薬:
- 反応バッファー: 20mMイミダゾールバッファーpH7.3,10mM CaCl2,0.02%Tween 80,1Mグリセロール、0.5M NaCl。
- [N]-アシアロ-N8: 20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、0.25M NaCl中に2.39mg/ml
- GSC-ON=PSA(45kD): 反応バッファー中に約0.27mM(12.1mg/ml)
- ST3Gal III:(ラット酵素): MBP-SBP-ST3Gal III、1mg/ml、1.2U/mg
【0186】
手順:
[N]-アシアロ-N8の溶液(364μl、0.87mgタンパク質)に、GSC-ON=PSA(45kD)の溶液(183μl、2.22mg)を添加した。酵素(122μl、122μg、146mU)の添加によって反応を開始した。混合物を32℃で終夜インキュベートした。
【0187】
キャッピング:
NAN-CMPの溶液(15μlの反応バッファー中に1.3mg)を添加し、その結果得られた混合物を32℃で1時間インキュベートした。
【0188】
ワークアップおよび精製:
反応混合物を20mMイミダゾールバッファーpH7.3、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、25mM NaClで10倍希釈し、Akta Purifierシステム(GE Healthcare)における陰イオン交換(MonoQ 5/50GL、GE Healthcare)によって精製した。用いられたバッファーは、バッファーA:20mMイミダゾールバッファーpH7.3,10mM CaCl2,0.02%Tween 80,1Mグリセロール、25mM NaCl、およびバッファーB:1M NaClを含むバッファーAであった。流速は0.7ml/分であり、検出はUV、280nmによって行った。精製を15℃で行った。溶出は以下の通りであった:5CVにわたって0から20%B、15CVにわたって20%B、15CVにわたって20から100%B、10CVにわたって100%B。溶出液は0.5ml画分で収集した。タンパク質回収率は32%であった。
【0189】
生成物の特性分析:
- SDS PAGE分析:
回収した生成物を、還元条件下、7%Tris酢酸SDSゲル(Invitrogen)において流し(150V、1時間10分)、クマシーブルー染色を用いた。タンパク質標準物質は、InvitrogenのHiMark無染色HMWタンパク質標準物質であった。
【0190】
かなり広く拡散したバンドが約125kDと165kDの間に現れた。これは、PSA化重鎖および軽鎖に相当すると想定される。誘導体化されていない重鎖および軽鎖の痕跡が検出可能である。
【0191】
- 逆相HPLC分析:
分析は、実施例10に示した通りに行った。
【0192】
生成物の重鎖および軽鎖の保持時間は下記の表の通りであった。N8の重鎖および軽鎖の保持時間を比較のために示す。
【0193】
【表4】

【0194】
したがって、より極性のタンパク質について予測される通り、PSA化HCの保持時間は低減する(ピークはより広がって現れる)。この効果は、PSA化軽鎖の保持時間には、ほとんど無視できるものである。
【0195】
- 活性:
最終生成物の活性をChromogenixの色素産生アッセイCoA試験SP FVIIIで測定した。開始FVIIIと比較して、約60%の活性が回収された。
【0196】
(実施例13)
(N)-PSA(20kD)N8の合成
合成は、(N)-PSA(45kD) N8の合成と同様に行った。タンパク質回収率は39%であった。
【0197】
特性分析:
- SDS-PAGE分析:実施例12の通りに行った。
【0198】
非常に広く拡散したバンドが約97kDと160kDの間に現れた。これは、PSA化重鎖および軽鎖に相当すると想定される。誘導体化されていない重鎖(痕跡)および軽鎖(かなりの量)の痕跡に相当するバンドが検出可能である。
【0199】
- 逆相HPLC分析:
逆相Daiso 300A、250×24,5μカラムで分析を行った。溶出液は、A:H2O/TFA 0.1%、およびB:H2O/ACN/TFA(80:20:0.09%)であり、流速は1ml/分であり、カラムオーブンの温度は40℃であった。勾配は、30分にわたる、35%から84%までであった。HPLCは、2つの検出器:DAD検出器(214nm)を備えていた。生成物の重鎖および軽鎖の保持時間は下記の表の通りであった。N8の重鎖および軽鎖の保持時間を比較のために示す。
【0200】
【表5】

【0201】
したがって、(N)-PSA(45kD)N8化合物に関して、より極性のタンパク質について予測されるように、PSA化HCの保持時間は減少する(ピークはより広く現れる)。この効果は、PSA化軽鎖の保持時間には、無視できるものである。
【0202】
- 活性:
最終生成物の活性をChromogenixの色素産生アッセイCoA試験SP FVIIIで測定した。開始FVIIIと比較して、約88%の活性が回収された。
【0203】
3.FVIII KOマウスにおけるPK研究:様々なN8グリコ-PEG/PSA誘導体の半減期の比較。
【0204】
(実施例14)
N8のグリコ-コンジュゲートの薬物動態学的特性分析:
rFVIIIバリアントの薬物動態をFVIII欠失マウス(C57BI/6バックグランドを有するFVIIIエキソン16ノックアウト(KO)マウス)で評価した。FVIII-KOマウスは、検出可能なFVIII:Cを有していなかった。おおよその体重25グラムおよび週齢幅16〜28週の雄性および雌性の混合集団(約1:1)を用いた。rFVIII(280IU/kg)の単回i.v.注射をマウスの尾静脈に行った。投与の64時間後までの時点で、コーティングされていないガラス毛細管を用いて眼窩静脈叢から採血した。各マウスから3つの試料を採取し、各時点に2から4つの試料を収集した。血液は直ちにクエン酸ナトリウムで安定化させ、4容のFVIII Coatest SPバッファー(保存剤を含む50mM Tris、150mM NaCl、1% BSA、pH7.3)で希釈し、その後、4000×gで5分間、遠心処理した。希釈血液から得られた血漿は、ドライアイスで凍結させ、-80℃で保持した。FVIII:Cは、製造業者説明書に従ってCoatest SP試薬(Chromogenix)を用いた色素産生アッセイで測定した。薬物動態学的な分析は、WinNonlin Proソフトウェアを用いて非区分化方法(NCA)によって行った。下記の表は半減期(T1/2)の見積りを示す。
【0205】
【表6】

【0206】
化合物Cは、(分枝)PEG40kD部分が(O)-グリカンに連結されており、14時間の半減期を有し、すなわち、N8の半減期が2倍に延長されている。N-グリカンへの重合体のさらなるコンジュゲーションは、その結果得られる化合物の半減期に著しく異なった影響を与える:
別のPEG40kD部分のコンジュゲーションは、その結果得られる化合物Eにいかなる影響も与えない(T1/2=13時間)、
- 一方、(線状)PSA(20kDまたは45kDいずれかの分子量)のコンジュゲーションは、その結果得られる化合物に顕著な影響を与える:化合物FおよびGはそれぞれ17.7時間および19.5時間の半減期を有し、元のN8分子の半減期をそれぞれ2.6倍、2.9倍に延長している(但し、最後のものは活性の半分を失っている)。
【0207】
同様に、(O)-グリカンと(N)-グリカンの両方においてPSA(20kD)で誘導体化されたN8(化合物D)は、(O)-グリカンと(N)-グリカンの両方においてPEG(40kD)で誘導体化されたN8(化合物E)の半減期と同じ半減期を示す:T1/2=12.6時間対13時間。これは、(N)-グリカンでのみ誘導体化されたN8(化合物A)の半減期(T1/2=11時間)と比較して、わずかな改善にすぎない。しかし、(O)-グリカンにPSA(20kD)の代わりにPEG(40kD)が存在する場合には、その結果得られる化合物F((O)-PEG40kD)(N)-PSA(20kD)N8)の半減期は著しく増大する:12.6時間に対して、化合物Dでは17.7時間。
【0208】
これらの結果は、グリコ-誘導体化のためのPEGとPSAの組合せが、1つの重合体タイプのみの使用より優れていることを強く示唆する。
【0209】
これらの結果は驚くべきものである:分枝PEG40kDは、タンパク質の表面を被覆し、それによって、プロテアーゼがN8の表面に接近するのを阻止する、もしくはより困難にする、またはクリアランス受容体へのN8の結合を阻止もしくは低減する能力により延長する影響を有すると予測された。分枝PEG40kDは、分枝重合体として、線状重合体が行うよりも効果的にそれを行うと予測される(Veroneseら、J. Bioactive and Compatible Polymers (1997)12, 196)。立体的なパラメータのみが効果を現すのであるならば、線状重合体によるよりも、分枝重合体によって、N8の表面のさらに良い保護が得られると予測するであろう。分枝重合体の半分しか分子進路がない線状重合体ならばなおさらである。両方の重合体は、ともに高度に水和され、それらの構造は類似している(ほとんどがランダムコイル)。
【0210】
(実施例15)
シアリルトランスフェラーゼ基質(4-ホルミルベンゾイル)グリシルシアル酸シトシン5'-一リン酸エステル(アルデヒド-GSC、J-1)の調製
【0211】
【化4】

【0212】
4-ホルミル安息香酸スクシンイミジル(100mg、0.41mmol)をTHF(3ml)中に溶解させ、TRISバッファー(100mM、pH8.5、4ml)を添加した。グリシルシアル酸シチジン5'-一リン酸エステル(GSC、250mg、0.34mmol)を秤量して、NHS-エステルの溶液に添加し、2.5時間、室温で反応させた。反応混合物を、15mlの10mM重炭酸アンモニウムバッファーで4mlに希釈し、RP HPLCによって精製した。システム:Waters 2545勾配コントローラ、2489 UV検出器。カラム:C18、直径2cm。10mM重炭酸アンモニウム存在下で0->30% CH3CN勾配。関連する画分をLCMSによって同定し、凍結乾燥した。次いで、RP-HPLCによって生成物を再精製した。収率:62mg。生成物をLCMSによって同定した。
【0213】
上記プロトコールを用いて、化学選択的なアルデヒド官能基を保持するシアリルトランスフェラーゼ基質を調製した。
【0214】
(実施例16)
アルコキシルアミン官能基化されたヒドロキシエチルデンプン(HES-ONH2)の調製
【0215】
【化5】

【0216】
HES 200/0.5輸液(「HyperHAES」、Fresenius Kabi、80ml、60g/l、4.8g、24μmol)を1,3-ビスアミノキシプロパン2HClの溶液(1.8g、10.2mmol、425当量)と混合し、pHを1.66にした。混合物を周囲温度で終夜、撹拌した。20mlの量の反応混合物を250mlの水で希釈した。希釈された試料を、Vivaflow 50システム(Sartorius、10kDa MWCO PES膜、ポンプ後の圧力約2.5、排出:7ml/分)を用いた、5lの水に対するタンジェンシャル濾過によって精製した。最後に、それを50mlに濃縮し、システムを50mlの水で流した。凍結乾燥の後、690mgの生成物が得られた。
【0217】
同様にして、「Voluven」輸液(Fresenius Kabi)から開始して、HES 130/0.4からHES-ONH2を調製した。
【0218】
上記プロトコールを用いて、化学選択的なアルコキシルアミン官能基を有するヒドロキシエチルデンプンを調製した。
【0219】
(実施例17)
HES-GSCコンジュゲート(J-3)を得るための、アルコキシルアミン官能基化されたヒドロキシエチルデンプンHES-ONH2(J-2)との、アルデヒド-GSC(J-1)のカップリング
【0220】
【化6】

【0221】
HES-ONH2(J-2)(100mg,0.5μmol)を1000μlのPBSバッファーpH7.4中に溶解させ、アルデヒド-GSC(J-1)(31mg, 41μmol)を添加した。22時間、室温で反応を進行させ、その後、反応混合物をPBSバッファーpH7.3で100mlで希釈した。希釈された試料を、Vivaflow 50システム(Sartorius、10kDa MWCO RC膜)を用いたタンジェンシャル濾過によって4lのPBSバッファーに対して精製した。140mg HES-GSCを含有する100mlバッファー中で生成物を得た。276nmでのシチジンの検出を行うSEC(カラム:BioSep-SEC-S3000、5μm、290Aカラム、300×7.8mm、バッファー:PBSバッファーpH7.3、流速:1ml/分)によって、生成物を特性分析した。高分子量のシチジン誘導体のみが、この方法によって生成物中に検出され、生成物は、開始物質であるアルデヒド-GSCを本質的に含まないと結論された。
【0222】
上記プロトコールを用いて、ヒドロキシエチルデンプンを糖タンパク質の脱シアリル化グリカンに付けるのに有用なシアリルトランスフェラーゼ基質を調製した。
【0223】
(実施例18)
HES-FVIIIコンジュゲートを得るための、HES-GSC基質J-3およびST3Gal-Iを用いた、O-グリカンにおけるHESによるwt Bドメイン欠失型ヒトFVIII(N8)の修飾
HES-GSC(10当量、45mg、50ml、PBSバッファー中に1mg/ml)を濃縮し、Amicon Ultra超限外濾過バイアルを用いて、20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、1M NaClにバッファー交換した。最終容積2.2ml。HES-GSC試薬を、N8(4mg、22nmol、5.7mg/ml)、シアリダーゼA.ウレアファシエンス(40μl、130U/ml、0.43mg/ml、5.2U)、およびHis-ST3Gal-I(400μl、2.5mg/ml)と混合し、32℃でインキュベートした。22時間後、SDS PAGE分析によって、HCおよびLC FVIIIバンドの両方よりも高いMWで移動するスメアなバンドとして生成物形成が示された。伝導率を下げるために、反応混合物を、20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、25mM NaClのバッファー約50mlで希釈し、陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。カラム:MonoQ 5/50GL、開始バッファー:20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、25mM NaCl、溶出バッファー:20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、1M NaCl。所望の生成物を含有する、関連する画分は、3本の主要バンド:完全なLC、強度が非常に低減しているHCバンド、およびHCにコンジュゲートしたHESを表す高MWのスメアなバンドを有するものとして、SDS PAGE分析から同定された。単離され、プールされた画分は、1.11mgの生成物(FVIII A280に基づき、0.275mg/ml)を含有していた。プールされた画分(4ml)を、100μlのCMP-NAN(20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、25mM NaClのバッファー中に25mg/ml)およびST3Gal-III(100μl、1.2U/ml)と混合し、32℃で1時間インキュベートした。次いで、反応混合物を、20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、25mM NaClのバッファーで希釈し、Vivapure Q, Maxi Mスピンフィルター(Sartorius)にロードした。フィルターを2×15mlの20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、25mM NaClで洗浄し、最初に2×15mlの20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、200mM NaClを用いて(ST3Gal-IIIを除去するために)、次いで、生成物を溶出するために、3×0.5mlの20mMイミダゾール、10mM CaCl2、0.02% Tween 80、1Mグリセロール、pH7.3、1M NaClを用いて溶出した。最初の2つの画分が、それぞれ800μgおよび110μg(FVIII A280に基づく)で、所望の生成物を含有していた。これらの2つの画分をSEC(カラム、Superdex200 10/300 GL、バッファー:ヒスチジン(1.5mg/ml)、CaCl2(0.25mg/ml)、Tween 80(0.1mg/ml)、NaCl(18mg/ml)、ショ糖(3mg/ml))によって別々に精製し、その結果、それぞれ218μgおよび66μgが回収された(FVIII A280に基づく)。HPLCによるタンパク質濃度測定は、収率を、それぞれ130μgおよび40μgとした(280nmにおけるFVIIIの吸光に基づく)。
【0224】
上記プロトコールを用いて、BドメインリンカーのO-グリカンを介してHESがFVIIIとカップリングされているHES-FVIIIコンジュゲートを調製した。このコンジュゲーション戦略は、部位選択的にHES化されたFVIII分子をもたらす。さらに、シアリルトランスフェラーゼ媒介のコンジュゲーションは、穏やかである。
【0225】
(実施例19)
同時にペグ化およびHES化されたFVIIIコンジュゲートを得るための、HES-GSC基質J-3およびST3Gal-Iを用いた、O-グリカンにおけるHES、ならびにPEG-GSCおよびST3Gal-IIIを用いた、N-グリカンにおけるPEGによる、wt Bドメイン欠失型ヒトFVIII(N8)の修飾
実施例18に従って調製されたコンジュゲートを、水性バッファー中の1ポット反応において、固定されたシアリダーゼ、PEG-GSC、およびST3Gal-IIIで処理する。完全な反応の後に、濾過によってシアリダーゼを除去し、いかなる末端ガラクトースも遮断するために、大過剰のCMP-NANを反応混合物に添加する。完全な反応の後に、生成物をST3Gal-IIIおよびシアリルトランスフェラーゼ基質から分離するために、陰イオン交換およびSECクロマトグラフィーによって、コンジュゲートを精製する。
【0226】
このプロトコールを用いて、それぞれ、O-グリカンおよびN-グリカンにHESおよびPEGがコンジュゲートしたFVIIIが生成される。
【0227】
(実施例20)
同時にペグ化およびHES化されたFVIIIコンジュゲートを得るための、HES-GSC基質J-3およびST3Gal-IIIを用いた、N-グリカンにおけるHES、ならびにPEG-GSCおよびST3Gal-Iを用いた、O-グリカンにおけるPEGによる、wt Bドメイン欠失型ヒトFVIII(N8)の修飾
O-グリカンペグ化されたFVIIIは、WO2009/108806A1に従って調製される。水性バッファー中の1ポット反応において、このコンジュゲートを、固定されたシアリダーゼ、実施例17のHES-GSC J-3、およびST3Gal-IIIで処理する。完全な反応の後に、濾過によってシアリダーゼを除去し、いかなる末端ガラクトースも遮断するために、大過剰のCMP-NANを反応混合物に添加する。完全な反応の後に、生成物をST3Gal-IIIおよびシアリルトランスフェラーゼ基質から分離するために、陰イオン交換およびSECクロマトグラフィーによって、コンジュゲートを精製する。
【0228】
このプロトコールを用いて、それぞれ、N-グリカンおよびO-グリカンにHESおよびPEGがコンジュゲートしたFVIIIが生成される。
【0229】
(実施例21)
硫酸化PSAの調製
調製は、公表されている手順に従って行う(例えば、Kunouら、Biomacromolecules (2000), 1, 451およびそこに引用されている参考文献)。開始物質は、実施例3および7に記載の通りに得られる、分子量約20kDのPSAまたは分子量約45kDのPSAのいずれかである。
【0230】
簡潔には、有機溶剤中におけるその溶解度を増大させるために、PSAのナトリウム塩をトリ-n-ブチルアンモニウム塩に変える。これは、樹脂イオン交換(Amberlite IR120B、H+型)で行われる。凍結乾燥したトリブチルアンモニウム塩の硫酸化は、0℃の不活性雰囲気下において、無水DMF中で、硫酸化試薬としてSO3-ピリジン複合体を用いて行われる。反応は、水を添加し、pHを9に調整することによって終了させる。生成物は、大容量のアセトンに反応混合物を滴状で添加することによって回収する。生成物は、この結果得られる沈殿の遠心分離によって回収される。生成物は、ゲル濾過でさらに精製され、溶出液は、凍結乾燥される。
【0231】
(実施例22)
硫酸化PSAの過ヨウ素酸ナトリウム酸化
過ヨウ素酸酸化は、実施例21で得られた硫酸化PSAから開始して、実施例8と同様に行う。
【0232】
(実施例23)
シアリルトランスフェラーゼST3Gal-IIIの基質であるGSC-ON =硫酸化PSAを産生するための、GSC-ONH2への過ヨウ素酸ナトリウム酸化された硫酸化PSAのカップリング
カップリングは、開始化合物として、実施例2からのGSC-ONH2と、実施例22からの酸化された硫酸化PSAとを用いて、実施例9に従って行う。
【0233】
(実施例24)
GSC-ON=硫酸化PSAとの、(N)-アシアロ(O)-PEG(40kD)N8のシアリルトランスフェラーゼST3Gal-III触媒反応による、(N)-硫酸化PSA-(O)-PEG(40kD)N8の調製
化合物は、ST3Gal-IIIの存在下で、アクセプターとして(N)-アシアロ(O)-PEG(40kD)N8を用い、ドナーとしてGSC-ON=硫酸化PSAを用いて、実施例10に従って調製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのPEG重合体および少なくとも1つの多糖とコンジュゲートしたFVIIIバリアント。
【請求項2】
多糖がPSAである、請求項1に記載のFVIIIバリアント。
【請求項3】
前記バリアントが、末端欠失型Bドメイン内のO連結オリゴ糖を介してPEG重合体またはPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしたBドメイン末端欠失型FVIII分子であり、FVIII活性化が前記O連結重合体の除去をもたらす、請求項1〜2のいずれか一項に記載のFVIIIバリアント。
【請求項4】
末端欠失型Bドメイン内のO連結オリゴ糖を介してPEG重合体と共有結合によってコンジュゲートしており、N連結オリゴ糖を介して少なくとも1つのPSA重合体と共有結合によってコンジュゲートしている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のFVIIIバリアント。
【請求項5】
A1ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖およびA3ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された2〜4つのPSA重合体を含む、請求項4に記載のFVIIIバリアント。
【請求項6】
A1ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された1つまたは2つのPSA重合体を含む、請求項4に記載のFVIIIバリアント。
【請求項7】
A3ドメイン内の1つの二重分枝N連結オリゴ糖に連結された1つまたは2つのPSA重合体を含む、請求項4に記載のFVIIIバリアント。
【請求項8】
PEG重合体のサイズが30〜50kDaである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のFVIIIバリアント。
【請求項9】
PSA重合体のサイズが40〜50kDaである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のFVIIIバリアント。
【請求項10】
Bドメイン末端欠失型FVIIIバリアントであり、Bドメインが配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のFVIIIバリアント。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のFVIIIバリアントを作製する方法であって、FVIII分子を少なくとも1つのPEG重合体および少なくとも1つの多糖とコンジュゲートする工程を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって取得可能なFVIIIバリアント。
【請求項13】
請求項1〜10または12のいずれか一項に記載のFVIIIバリアントと、場合によって1つまたは複数の薬学的に許容できる添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項もしくは請求項12に記載のFVIIIバリアントまたは請求項13に記載の医薬組成物の、医薬としての使用。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項もしくは請求項12に記載のFVIIIバリアントまたは請求項13に記載の医薬組成物の、血友病Aを治療するための医薬としての使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−519636(P2013−519636A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552352(P2012−552352)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051723
【国際公開番号】WO2011/101267
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【Fターム(参考)】