説明

コンソール衝撃吸収構造

【課題】衝撃吸収量を容易に調整することができるコンソール衝撃吸収構造を得る。
【解決手段】コンソール衝撃吸収構造10では、フロアパネル14に固定された第1ブラケット28と、コンソールボックス24の底壁24Aに固定された第2ブラケット30とが、ボルト64及びナット48によって締結されている。このボルト64は、第2ブラケット30に形成された長孔62に挿通されている。このため、センターコンソール12の後端側への衝撃力Fがボルト64及びナット48の締結力を上回ることにより、第2ブラケット30が第1ブラケット28に対してスライドする(矢印S参照)。これにより、センターコンソール12を、前端側のボルト20を中心として衝撃力Fの作用方向に変位させることができる。しかも、単にボルト64及びナット48の締結力を調節することにより、衝撃吸収量を容易に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転席と助手席との間に設けられるセンターコンソールの衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたコンソール衝撃吸収部構造では、センターコンソールにおけるコンソール本体の内部に配設された荷重吸収用ブラケットが、蛇腹状に形成された荷重吸収部を有している。この荷重吸収部は、コンソール本体に対してほぼ上方側から荷重が作用した際には、下方側へ圧縮変形される構成になっている。これにより、コンソール本体への衝撃を吸収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−143502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコンソール衝撃吸収構造では、上述の如く蛇腹状に形成された荷重吸収部が変形することによって、衝撃を吸収する構成であるため、衝撃吸収量の調整(荷重吸収部の設計)が煩雑である。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、衝撃吸収量を容易に調整することができるコンソール衝撃吸収構造を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るコンソール衝撃吸収構造は、センターコンソールと、前記センターコンソールの後端側でフロアパネルに固定された第1ブラケットと、前記第1ブラケットの上方側で前記センターコンソールに固定された第2ブラケットと、前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットの少なくとも一方に形成された長孔又はスリットに挿通されて両者を締結した締結手段と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のコンソール衝撃吸収構造では、センターコンソールの後端側でフロアパネルに固定された第1ブラケットと、当該第1ブラケットの上方側でセンターコンソールに固定された第2ブラケットとが、締結手段(例えば、ボルト及びナット)によって締結されている。この締結手段は、上記2つのブラケットのうちの少なくとも一方に形成された長孔又はスリットに挿通された状態で両者を締結している。このため、センターコンソールの後端側に対して、上記長孔又はスリットの長手方向に沿った衝撃力が作用した際には、当該衝撃力が上記締結手段の締結力を上回ることにより、第2ブラケットが第1ブラケットに対してスライドする。これにより、センターコンソールの後端側を上記衝撃力の作用方向に変位させることができるので、衝撃力を吸収することができる。しかも、締結手段の締結力を調節することにより、衝撃吸収量を容易に調整(設定)することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係るコンソール衝撃吸収構造は、請求項1に記載のコンソール衝撃吸収構造において、前記長孔又は前記スリットは、長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜して形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のコンソール衝撃吸収構造では、第1ブラケット及び第2ブラケットの少なくとも一方に形成された長孔又はスリットは、長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜して形成されている。このため、センターコンソールの後端側に対して、車両前方側の斜め下方側へ向いた衝撃力が作用した際には、第2ブラケットが第1ブラケットに対して衝撃力の作用方向にスライドすることにより、センターコンソールの後端側を衝撃力の作用方向に変位させることができる。これにより、衝撃力を効率よく吸収することができる。しかも、上述の如く第2ブラケットが車両前方側の斜め下方側へスライドする構成であるため、センターコンソールの高さを抑えつつ、衝撃吸収性を確保することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係るコンソール衝撃吸収構造は、請求項1又は請求項2に記載のコンソール衝撃吸収構造において、前記第2ブラケットは、前記センターコンソールの後端側に設けられたコンソールボックスの底壁に固定され、前記第1ブラケットの上壁と前記第2ブラケットの下壁とが上下に重ね合わされると共に、前記下壁及び前記上壁は、車両前方側へ向かうに従い下降するように傾斜して形成され、前記長孔又は前記スリットは、前記下壁及び前記上壁の少なくとも一方に形成され、前記締結手段は、前記下壁と前記上壁とを締結していることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載のコンソール衝撃吸収構造では、第1ブラケットの上壁と第2ブラケットの下壁とが上下に重ね合わされると共に、下壁及び上壁の少なくとも一方に形成された長孔又はスリットに挿通された締結手段によって締結されている。このように、上下に重ね合わされた上壁と下壁とを締結すればよいため、1つの締結手段(例えば、一組のボルト及びナット)によって、上記2つのブラケットを安定的に締結することができる。これにより、2つの締結手段を用いる構成と比較して、締結力の調節を容易なものにすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明に係るコンソール衝撃吸収構造は、請求項3に記載のコンソール衝撃吸収構造において、前記上壁は、車両前方側へ向かうに従い下降するように傾斜した傾斜部と、前記傾斜部の後端から車両後方へ延び、前記コンソールボックスの底壁との間に隙間をあけて設けられた延在部とを有し、前記傾斜部と前記下壁とが上下に重ね合わされて前記締結手段により締結されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載のコンソール衝撃吸収構造では、第1ブラケットの上壁が、車両前方側へ向かうに従い下降するように傾斜した傾斜部と、当該傾斜部の後端から車両後方へ延びる延在部とを有しており、第2ブラケットの下壁が前記傾斜部に締結されている。このため、コンソールボックスに対して上方側から衝撃力が作用した際には、第2ブラケットがコンソールボックスと共に第1ブラケットに対して上記傾斜部に沿って車両前方側の斜め下方側へスライド(変位)する。この際、第1ブラケットの上記延在部とコンソールボックスの底壁との間に隙間が設けられていることにより、簡単な構成でコンソールボックスの変位を許容することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係るコンソール衝撃吸収構造は、センターコンソールと、前記センターコンソールの後端側でフロアパネルに固定された第1ブラケットと、前記第1ブラケットの上方側で前記センターコンソールに固定されると共に、前記第1ブラケットに対して下方側へスライド可能に係合した第2ブラケットと、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの間に設けられ、前記スライドに対して抗力を付与する抗力付与手段と、を備えている。
【0015】
請求項5に記載のコンソール衝撃吸収構造では、センターコンソールの後端側でフロアパネルに固定された第1ブラケットと、当該第1ブラケットの上方側でセンターコンソールに固定された第2ブラケットとが、スライド可能に係合している。また、第1ブラケットと第2ブラケットとの間には、上記スライドに対して抗力を付与する抗力付与手段(例えば、破断ピン、接着剤など)が設けられている。このため、センターコンソールの後端側に対して、上記スライドの方向に沿った衝撃力が作用した際には、当該衝撃力が上記抗力を上回ることにより、第2ブラケットが第1ブラケットに対してスライドする。これにより、センターコンソールの後端側を上記衝撃力の作用方向に変位させることができるので、衝撃を吸収することができる。しかも、衝撃吸収量を調整する際には、第1ブラケット及び第2ブラケットの剛性及び強度とは関係なく、抗力付与手段の抗力(例えば、破断ピンの剛性など)のみを考慮すればよいため、衝撃吸収量の調整を容易なものにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係るコンソールボックスでは、衝撃吸収量を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造が適用された車両の部分的な構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示されるコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1の一部を拡大した拡大縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態にコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態にコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第5実施形態にコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第6実施形態にコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、図1〜図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車両幅方向(車両左右方向)を示している。また、以下の説明で使用する前後左右上下の方向性は、車両に対する方向性である。
【0019】
図1に示されるように、本第1実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造10は、センターコンソール12を備えている。センターコンソール12は、樹脂材料によって形成されたものであり、車両のフロアパネル14の上面側において運転席と助手席(いずれも図示省略)との間に配置されている。なお、図1において、16はリヤシートである。
【0020】
センターコンソール12の前端側には、車両前方側へ突出した締結片18が設けられており、当該締結片18がボルト20(回転軸)及び図示しないナットによってインストルメントパネル22に締結されている。このボルト20は、軸線方向が車両幅方向に沿う状態で配置されている。
【0021】
センターコンソール12の後端側には、コンソールボックス24(収納部)が設けられている。コンソールボックス24は、上端側が開口した箱状に形成されており、開口部が蓋体26によって開閉可能に閉塞されている。このコンソールボックス24の下方側には、第1ブラケット28及び第2ブラケット30が配置されている。
【0022】
第1ブラケット28は、板金材料が曲げ加工されることにより形成されたものであり、断面略矩形の筒状に形成されている。この第1ブラケット28は、図2に示されるように、上壁32と、上壁32の前端から下方へ延出された前壁34と、前壁34の下端から車両後方へ延出された下壁36と、下壁36の後端から上方へ延出されて上壁32の後端に一体に結合された後壁38と、によって構成されている。
【0023】
下壁36には、一対の円形の貫通孔40が車両幅方向に並んで形成されており、各貫通孔40には、ボルト42(図1及び図3参照)が挿通されている。各ボルト42は、フロアパネル14に形成された貫通孔に挿通されると共に、フロアパネル14の下面に溶接されたナット44に螺合している。これにより、第1ブラケット28がフロアパネル14の上面側に締結固定されている。
【0024】
また、上述の上壁32は、車両前方側が傾斜部32Aとされており、車両後方側が延在部32Bとされている。傾斜部32Aは、車両前方側へ向かうに従い降下するように傾斜しており、延在部32Bは、傾斜部32Aの後端から車両後方へ延出されている。傾斜部32Aの中央部には、円形の貫通孔46が形成されており、傾斜部32Aの下面には、締結手段の構成部材であるナット48が溶接されている。このナット48は、内周部が上記貫通孔46と同軸的に配置されている。
【0025】
一方、第2ブラケット30は、第1ブラケット28と同様に板金材料が曲げ加工されることにより形成されたものであり、断面三角形の筒状に形成されている。この第2ブラケット30は、第1ブラケット28の上方に配置されており、上壁50と、上壁50の前端から下方へ延出された前壁52と、前壁52の下端から後方斜め上方へ延出されて上壁50の後端と一体に結合された下壁54と、によって構成されている。
【0026】
上壁50には、一対の円形の貫通孔56が車両幅方向に並んで形成されており、各貫通孔56には、コンソールボックス24の底壁24Aを貫通したボルト58(図1及び図3参照)が挿通されている。各ボルト58は、上壁50の下面に溶接されたナット60に螺合されている。これにより、第2ブラケット30がコンソールボックス24の底壁24Aの下面側に締結固定されている。
【0027】
また、上述の下壁54は、車両前方側へ向かうに従い降下するように傾斜して形成されている。この下壁54と、前述した傾斜部32Aとは、面接触状態で上下に重ね合わされている。この下壁54の中央部には、長孔62が形成されている。この長孔62は、長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜しており、車両前方側へ向かうに従い降下するように傾斜している。つまり、この長孔62は、車両上下方向から見た場合(平面視)においては、長手方向が車両前後方向に沿って形成されているが、車両幅方向から見た場合(側面視)においては、前端が後端よりも下方側に配置されるように傾斜している。
【0028】
この長孔62及び前述した上壁32の貫通孔46には、締結手段の構成部材であるボルト64が挿通されており、当該ボルト64が前述したナット48に螺合することにより、第2ブラケット30が第1ブラケット28に締結固定されている。この状態では、第2ブラケット30は、長孔62の前端側(下端側)にボルト64が位置する状態で配置されており、下壁54の後端側(上端側)は、延在部32Bの上方に配置されている。また、この状態では、コンソールボックス24の底壁24Aと延在部32Bとの間には、上下方向の高さ寸法が所定の寸法(例えば、数センチメートル程度)の隙間66(図3参照)が設けられている。
【0029】
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成のコンソール衝撃吸収構造10では、センターコンソール12の後端側でフロアパネル14に固定された第1ブラケット28と、当該第1ブラケット28の上方側でセンターコンソール12に固定された第2ブラケット30とが、ボルト64及びナット48によって締結されている。このボルト64は、第2ブラケット30に形成された長孔62に挿通されている。このため、センターコンソール12の後端側(コンソールボックス24の蓋部26)に対して、長孔62の長手方向に沿った衝撃力F(図3参照)が作用した際には、当該衝撃力Fがボルト64及びナット48の締結力を上回ることにより、第2ブラケット30が第1ブラケット28に対してスライドする(図3の矢印S参照)。これにより、センターコンソール12を、前端側のボルト20を中心として衝撃力Fの作用方向に変位(回転)させることができる。その結果、コンソールボックス24を衝撃力Fの作用方向に沈み込ませることができるので、当該沈み込みによって衝撃力Fを吸収することができる。しかも、単にボルト64及びナット48の締結力(締結トルク)を調節することにより、衝撃吸収量を容易に調整することができる。
【0030】
つまり、背景技術の欄で説明したコンソール衝撃吸収部構造(以下、比較例という)のように、荷重吸収ブラケットの荷重吸収部(蛇腹部)を変形させることにより衝撃吸収する構成では、変形荷重や変形モードの調整が煩雑である。また、蛇腹部の形状が複雑になりやすく、荷重コントロールが容易ではない。さらに、蛇腹構造の場合、つぶれ方がばらつく可能性があり、効率よく衝撃吸収を行うためには、改善の余地がある。これに対し、本実施形態では、単なる締結トルクの調節のみでよいため、荷重コントロールを極めて容易なものにすることができると共に、コンソールボックス24のスライドによって効率よく衝撃吸収を行うことができる。
【0031】
さらに、比較例では、荷重吸収用ブラケットがコンソール本体(コンソールボックス)の後方近傍に配置されているため、コンソールボックスの剛性によって狙いどおりの衝撃吸収ができない可能性がある。つまり、荷重吸収用ブラケットの蛇腹部の形状は、コンソールボックスの上下方向の剛性確保と背反するため、衝撃吸収とコンソールボックスの上下剛性とを両立させる蛇腹形状の再現に時間を要する可能性がある。この点、本実施形態では、衝撃吸収構造(第1ブラケット28、第2ブラケット30、ボルト64及びナット48)が、コンソールボックス24の下方に配置されているため、コンソールボックス24の剛性に関わらず、衝撃吸収性を確保することができる。したがって、これによっても衝撃吸収構造の設計を容易なものにすることができる。
【0032】
また、センターコンソールの形状は、車両のボデー形状や意匠により異なるため、比較例においては、荷重吸収ブラケットの配置スペースが限られることがある。つまり、比較例においては、センターコンソールの形状が変わるたびに蛇腹形状を見直さなければならなくなる可能性があり、蛇腹形状の流用(応用)が困難になることが考えられる。この点、コンソールボックスの下方のスペースは、意匠などにより大きく影響を受けないため、本実施形態の構成では衝撃吸収構造の流用が可能になる。これにより、製造コストを大幅に低減することができる。
【0033】
しかも、本実施形態では、第2ブラケット30に形成された長孔62は、長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜して形成されており、第2ブラケット30(センターコンソール12の後端側)が第1ブラケット28に対して車両前方側の斜め下方側へ変位可能とされている。これにより、センターコンソール12の後端側に入力される可能性が高い「車両前方側の斜め下方側へ向いた衝撃力F」を効率よく吸収することができる。
【0034】
つまり、車両の前面衝突時には、リヤシート16の乗員の上体が図1のO点を中心として車両前方側へ回転する場合がある。この場合、乗員の頭部Hは、図1の矢印R方向(車両前方側の斜め下方側)へ回転することになり、センターコンソール12の後端側には、乗員の頭部Hから車両前方側の斜め下方側へ向いた衝撃力Fが入力される可能性がある。このような場合でも、本実施形態では、センターコンソール12の後端側が衝撃力Fの作用方向に変位する(沈み込む)ことにより、衝撃力Fを効率よく吸収することができるので、乗員保護性能を向上させることができる。しかも、第2ブラケット30が第1ブラケット28に対して車両前方側の斜め下方側へスライドする構成であるため、センターコンソール12(コンソールボックス24)の高さを抑えつつ、衝撃吸収性を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態では、第1ブラケット28の上壁32の傾斜部32Aと第2ブラケット30の下壁54とが面接触状態で上下に重ね合わされている。これにより、第2ブラケット30を第1ブラケット28に対してスムーズにスライドさせることができる。また、単に上下に重ね合わされた傾斜部32Aと下壁54とを締結すればよいため、1つの締結手段(一組のボルト64及びナット48)によって、上記2つのブラケット28、30を安定的に締結することができる。これにより、2つの締結手段を用いる構成と比較して、締結力の調節を容易なものにすることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、第1ブラケット28の上壁32が傾斜部32Aと延在部32Bとを備えており、通常時には、当該延在部32Bとコンソールボックス24の底壁24Aとの間に隙間66が設定される。これにより、簡単な構成でコンソールボックス24の変位(沈み込み)を許容することができる。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0038】
<第2の実施形態>
図4には、本発明の第2の実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成が分解斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、第1ブラケット70の構成が、前記第1実施形態に係る第1ブラケット28とは異なっている。
【0039】
第1ブラケット70は、第1ブラケット28と基本的に同様の構成とされているが、下壁36(図2参照)の代わりに前側締結壁72及び後側締結壁74を備えている。前側締結壁72は、前壁34の下端から車両前方へ延出されており、後側締結壁74は、後壁38の下端から車両後方へ延出されている。このため、第1ブラケット70は、車両幅方向から見て略ハット形に形成されている。また、前側締結壁72及び後側締結壁74の中央部には、それぞれ円形の貫通孔76が形成されており、各貫通孔76に挿通されたボルトがフロアパネルの下面側でナット(何れも図示省略)に螺合している。これにより、第1ブラケット70がフロアパネルに締結されている。この実施形態においても、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0040】
<第3の実施形態>
図5には、本発明の第3の実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成が分解斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、第1ブラケット80及び第2ブラケット81の構成が、前記第1実施形態に係る第1ブラケット28及び第2ブラケット30とは異なっている。
【0041】
第1ブラケット80は、上壁82と、上壁82の左端から下方へ延出された左壁84と、左壁84の下端から車両左方側へ延出された左側締結壁86と、上壁82の右端から下方へ延出された右壁88と、右壁88の下端から車両右方側へ延出された右側締結壁90と、によって構成されており、車両前後方向から見て略ハット形に形成されている。左側締結壁86及び右側締結壁90の中央部には、それぞれ円形の貫通孔92が形成されており、各貫通孔92に挿通されたボルトがフロアパネルの下面側でナット(何れも図示省略)に螺合している。これにより、第1ブラケット80がフロアパネルに締結されている。また、上壁82は、前記第1実施形態に係る傾斜部32Aと基本的に同様の構成とされており、貫通孔46が形成されると共に、下面にナット48が溶接されている。
【0042】
一方、第2ブラケット81は、下壁94と、下壁94の左端から上方へ延出された左壁96と、左壁96の上端から車両左方側へ延出された左側締結壁98と、下壁94の右端から上方へ延出された右壁100と、右壁100の上端から車両右方側へ延出された右側締結壁102と、によって構成されており、車両前後方向から見て略ハット形に形成されている。左側締結壁98及び右側締結壁102の中央部には、それぞれ円形の貫通孔104が形成されており、各貫通孔104には、コンソールボックスの底壁を貫通したボルト(何れも図示省略)が挿通されている。各ボルトは、左側締結壁98及び右側締結壁102の下面に溶接されたナットに螺合されている。これにより、第2ブラケット81がコンソールボックスの底壁の下面側に締結固定されている。また、下壁94は、前記第1実施形態に係る下壁54と基本的に同様の構成とされており、長孔62が形成されている。この長孔62及び前述した上壁82の貫通孔46には、ボルト64が挿通されており、当該ボルト64がナット48に螺合することにより、第2ブラケット81が第1ブラケット80に締結固定されている。この実施形態においても、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0043】
<第4の実施形態>
図6には、本発明の第4の実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成が分解斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、前記第1実施形態に係る第1ブラケット28及び第2ブラケット30の代わりに、前記第2実施形態に係る第1ブラケット70、及び前記第3実施形態に係る第2ブラケット81を備えている。この実施形態においても前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0044】
<第5の実施形態>
図7には、本発明の第5の実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成が分解斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、第1ブラケット110及び第2ブラケット112の構成が、前記第1実施形態に係る第1ブラケット28及び第2ブラケット30とは異なっている。
【0045】
第1ブラケット110は、前記第2実施形態に係る第1ブラケット70と基本的に同様の構成とされているが、貫通孔46及びナット48が省略されている。また、この第1ブラケット110は、上壁32の傾斜部32Aにおける車両幅方向両端から下方へ延出された左壁114及び右壁116を備えている。左壁114及び右壁116には、それぞれ円形の貫通孔118が形成されており、左壁114及び右壁116の内側面には、それぞれナット120が溶接されている。各ナット120は、内周が貫通孔118と同軸的に配置されている。
【0046】
一方、第2ブラケット112は、車両前後方向から見て略逆U時状に形成されており、上壁122と、上壁122の車両幅方向両端から下方へ延出された左壁124及び右壁126を備えている。上壁122は、前記第1実施形態に係る上壁50と基本的に同様の構成とされており、コンソールボックスの底壁の下面側に締結固定されている。また、左壁124は、第1ブラケット110の左壁114における外側面に面接触状態で当接しており、右壁126は、第1ブラケット110の右壁116における外側面に面接触状態で当接している。これらの左壁124及び右壁126には、それぞれ長孔128が形成されている。これらの長孔128は、長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜して形成されている。各長孔128及び前記各貫通孔118には、それぞれボルト130が挿通されており、各ボルト130が前記各ナット120に螺合することにより、第2ブラケット112が第1ブラケット110に締結固定されている。この状態では、第2ブラケット112は、各長孔128の前端側に各ボルト130が位置する状態で配置されている。
【0047】
この実施形態においても、センターコンソールの後端側に作用する衝撃力が二組のボルト130及びナット120の締結力を上回ることにより、第2ブラケット112を第1ブラケット110に対してスライドさせることができ、センターコンソールの後端側を沈み込ませることができる。したがって、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。しかも、第2ブラケット112が二組のボルト130及びナット120によって第1ブラケット110に締結されるため、センターコンソールの後端側(コンソールボックス)を安定的に支持することができる。なお、この実施形態では、第1ブラケット110の傾斜部32Aは必ずしも傾斜している必要はなく、第2ブラケット112が第1ブラケット110に対してスライドする際に、第2ブラケット112と干渉しない形状であればよい。
【0048】
<第6の実施形態>
図8には、本発明の第6の実施形態に係るコンソール衝撃吸収構造の主要部の構成が分解斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、第1ブラケット131及び第2ブラケット132の構成が、前記第1実施形態に係る第1ブラケット28及び第2ブラケット30とは異なっている。
【0049】
第2ブラケット132は、前記第3実施形態に係る第2ブラケット81と基本的に同様の構成とされているが、長孔62が省略されている。また、この第2ブラケット132では、左壁96及び右壁100の内側面には、それぞれナット134が溶接されており、左壁96及び右壁100には、各ナット134の内周と同軸的な貫通孔136が形成されている。なお、この第2ブラケット132では、下壁94は必ずしも傾斜している必要はない。
【0050】
一方、第1ブラケット131は、前記第3実施形態に係る第1ブラケット80と基本的に同様の構成とされているが、上壁82が省略されており、左右に分割されている。また、この第1ブラケット131では、左壁84及び右壁88の上端側に、それぞれ長孔138が形成されている。これらの長孔138は、長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜して形成されている。各長孔138及び前記各貫通孔136には、それぞれボルト130が挿通されており、各ボルト130が前記各ナット134に螺合することにより、第2ブラケット132が第1ブラケット131に締結固定されている。この状態では、第2ブラケット132は、各ボルト130が各長孔138の後端側(上端側)に位置する状態で配置されている。また、第1ブラケット131における左壁84及び右壁88の上端側は平坦にカットされており、コンソールボックス24の底壁24Aと左壁84及び右壁88の上端との間に隙間が確保されている。この実施形態においても、前記第5実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0051】
<実施形態の補足説明>
前記第1実施形態では、第1ブラケット28の上壁32が延在部32Bを備えた構成にしたが、これに限らず、延在部32Bが省略され、傾斜部32Aの後端から後壁38が延出された構成にしてもよい。この点は、前記第2、第4、第5実施形態に係る第1ブラケット70、110においても同様である。
【0052】
また、前記第1、第2、第4実施形態では、第1ブラケット28、70の上壁32にナット48が溶接された構成にしたが、これに限らず、ナット48が上壁32に溶接されない構成にしてもよいし、ナット48が上壁32と一体に形成された構成(上壁32に雌ねじ部が形成された構成)にしてもよい。この点は、前記第3実施形態に係る上壁82とナット48との関係、前記5実施形態に係る左壁114及び右壁116とナット120との関係、前記第6実施形態に係る左壁96及び右壁100とナット134との関係についても同様である。
【0053】
また、前記第1〜第5実施形態では、第2ブラケット30、81、112に長孔62、128が形成され、前記第6実施形態では、第1ブラケット131に長孔138が形成された構成にしたが、これに限らず、長孔の代わりに、スリット(長尺な切込み、或いは長溝)を採用してもよい。
【0054】
また、前記各実施形態では、第1ブラケット及び第2ブラケットの一方に長孔が形成された構成にしたが、これに限らず、第1ブラケット及び第2ブラケットの両方に長孔が形成された構成にしてもよい。
【0055】
さらに、前記各実施形態では、締結手段がボルト64、130を含んだ構成にしたが、これに限らず、ボルトの代わりに長ネジ及びナットを用いてもよい。また、締結手段は、雄ねじ部と雄ねじ部とが螺合される構成のものであればよく、長孔又はスリットに挿通されるのは、雄ねじ部及び雌ねじ部(内周に雌ねじが形成された部分)の何れであってもよい。
【0056】
また、前記各実施形態では、長孔62、128、138の長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜して設定された構成にしたが、これに限らず、長孔又はスリットの長手方向は、想定される衝撃力の作用方向に応じて適宜設定変更することができる。
【0057】
また、前記各実施形態では、センターコンソール12の前端側が、ボルト20及び図示しないナットによってインストルメントパネル22に締結された構成にしたが、これに限らず、センターコンソールの前端側が所謂爪嵌合によってインストルメントパネルに連結された構成にしてもよい。このような構成であっても、センターコンソールの後端側への衝撃力の作用時には、樹脂製のセンターコンソールが前部側において変形することにより、センターコンソールの後端側を沈み込ませることができる。また、センターコンソールの前端側がインストルメントパネルから離間して配置された構成にしてもよい。
【0058】
また、前記各実施形態では、第1ブラケット及び第2ブラケットの一方に形成された長孔に挿通された締結手段によって、上記2つのブラケットが締結された構成にしたが、これに限らず、例えば、第1ブラケットと第2ブラケットとを所謂インロー嵌合によりスライド可能に係合させると共に、両者の間に上記記スライドに対して抗力を付与する抗力付与手段(破断ピン、接着剤など)を介在させる構成にしてもよい。このような構成であっても、センターコンソールの後端側に対して、上記スライドの方向に沿った衝撃力が作用した際には、当該衝撃力が上記抗力を上回ることにより、第2ブラケットが第1ブラケットに対してスライドする。これにより、センターコンソールの後端側を上記衝撃力の作用方向に変位させることができるので、衝撃を吸収することができる。しかも、衝撃吸収量を調整する際には、抗力付与手段の抗力(破断ピンの剛性など)のみを考慮すればよいため、衝撃吸収量の調整を容易なものにすることができる。
【0059】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
10 コンソール衝撃吸収構造
12 センターコンソール
24 コンソールボックス
24A 底壁
28 第1ブラケット
32 上壁
32A 傾斜部
32B 延在部
30 第2ブラケット
48 ナット(締結手段)
54 下壁
62 長孔
64 ボルト(締結手段)
66 隙間
70 第1ブラケット
80 第1ブラケット
81 第2ブラケット
82 上壁
94 下壁
110 第1ブラケット
112 第2ブラケット
120 ナット(締結手段)
128 長孔
130 ボルト(締結手段)
131 第1ブラケット
132 第2ブラケット
134 ナット(締結手段)
138 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターコンソールと、
前記センターコンソールの後端側でフロアパネルに固定された第1ブラケットと、
前記第1ブラケットの上方側で前記センターコンソールに固定された第2ブラケットと、
前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットの少なくとも一方に形成された長孔又はスリットに挿通されて両者を締結した締結手段と、
を備えたコンソール衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記長孔又は前記スリットは、長手方向が車両前後方向に対して前下がりに傾斜して形成されている請求項1に記載のコンソール衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記第2ブラケットは、前記センターコンソールの後端側に設けられたコンソールボックスの底壁に固定され、前記第1ブラケットの上壁と前記第2ブラケットの下壁とが上下に重ね合わされると共に、前記下壁及び前記上壁は、車両前方側へ向かうに従い下降するように傾斜して形成され、前記長孔又は前記スリットは、前記下壁及び前記上壁の少なくとも一方に形成され、前記締結手段は、前記下壁と前記上壁とを締結している請求項2に記載のコンソール衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記上壁は、車両前方側へ向かうに従い下降するように傾斜した傾斜部と、前記傾斜部の後端から車両後方へ延び、前記コンソールボックスの底壁との間に隙間をあけて設けられた延在部とを有し、前記傾斜部と前記下壁とが上下に重ね合わされて前記締結手段により締結されている請求項3に記載のコンソール衝撃吸収構造。
【請求項5】
センターコンソールと、
前記センターコンソールの後端側でフロアパネルに固定された第1ブラケットと、
前記第1ブラケットの上方側で前記センターコンソールに固定されると共に、前記第1ブラケットに対して下方側へスライド可能に係合した第2ブラケットと、
前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの間に設けられ、前記スライドに対して抗力を付与する抗力付与手段と、
を備えたコンソール衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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