説明

コンタクトプローブ、その使用方法及びその製造方法

【課題】両端に加重を与えてたわませることにより被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を測定する検査方法に使用されるコンタクトプローブにおいて、プローブユニットへのセッティングが容易で、リード線に正確かつ安定に接触できると共に接触不良等の不具合が生じない低コストのコンタクトプローブを提供する。
【解決手段】ピン形状の金属導体2の外周に絶縁被膜3を有する胴体部Aと、金属導体2の両端に絶縁被膜3を有しない端部Bとを有し、その両端に加重を与えてたわませることにより被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を測定する方式のコンタクトプローブにおいて、そのコンタクトプローブ1の端部Bの片側又は両側が、半球形状、針状、円錐形状又は平坦形状からなり、コンタクトプローブ1の胴体部Aが、絶縁被膜3の一部分の厚さが薄い凹形状のストッパー部4又は絶縁被膜3の一部分が除去された凹形状のストッパー部4を1箇所以上有するように構成することにより、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子部品及び基板などの導通検査に用いる検査用のコンタクトプローブ、その使用方法及びその製造方法に関し、更に詳しくは、両端に加重を与えてたわませることにより被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を測定する方式のコンタクトプローブを用いた検査方法において、セッティングが容易で、接触不良等の不具合発生の可能性を低減したコンタクトプローブ、その使用方法及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に使用される高密度実装基板、又は、パソコン等に組み込まれるBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等のICパッケージ基板等、様々な回路基板が多く用いられている。このような回路基板は、実装の前後の工程において、例えば直流抵抗値の測定や導通検査等が行われ、その電気特性の良否が検査されている。電気特性の良否の検査は、電気特性を測定する検査装置に接続された検査装置用治具(以下、「プローブユニット」という。)を用いて行われ、例えば、プローブユニットに装着されたピン形状のプローブ(本願では「コンタクトプローブ」という。)の先端を、その回路基板の電極(以下「被測定体」ともいう。)に接触させることにより行われている(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
図6は、従来のコンタクトプローブをプローブユニットにセットした状態を示す概略図(A)と、そのコンタクトプローブをたわませて被測定体を検査している状態を示す概略図(B)である。図6に示すコンタクトプローブ101は、ばね性を有した直線状の金属導体が絶縁被膜103で被覆された胴体部と、その絶縁被膜が剥離処理されて金属導体102が露出した両端部とで構成されている。コンタクトプローブ101の両端については、被測定体111の電極112に接触する先端102aと、検査装置側のリード線150に接触する後端102bとで構成されている。こうしたコンタクトプローブ101は、(1)所定の長さに切断された金属導体102の両端を所定の形状に研削加工した後、その両端を含む所定領域をマスキングした状態で絶縁塗料をスプレーコーティングして製造され、又は、(2)長尺の金属導体上に連続して焼付けエナメルコーティングした絶縁被膜付き金属導体を所定の長さに切断し、両端を含む所定領域の絶縁被膜をレーザ剥離又は機械剥離によって除去した後、その両端を研削加工して製造されている。
【0004】
また、図6に示すプローブユニット110は、複数本から数千本のコンタクトプローブ101と、コンタクトプローブ101のリード線側を案内する案内穴付きプレート130と、コンタクトプローブ101の先端102aが被測定体111の電極112に接するようにコンタクトプローブ101の電極側を案内する案内穴付きプレート120とを少なくとも備えている。電気特性の検査は、プローブユニット110又は被測定体111を相対的に上下させ、コンタクトプローブ101をその弾性力を利用して被測定体111の電極112に所定の圧力で押し当てることにより行われる。このとき、電極112に押し当てられた力によってたわんだコンタクトプローブ101の後端102bはリード線150に強く接触し、被測定体112からの電気信号がそのリード線150を通って検査装置(図示しない。)に送られる。なお、図6中、符号140はリード線用の保持板を示している。
【0005】
こうしたプローブユニット110において、プレート130に設けられた案内穴は、絶縁被膜103で被覆されたコンタクトプローブ101の直径よりも大きい直径で形成され、一方、プレート120に設けられた案内穴は、絶縁被膜103で被覆されたコンタクトプローブ101の直径よりも小さい直径で形成され且つ金属導体102の直径よりも大きい直径で形成されている。したがって、プローブユニット110へのコンタクトプローブ101のセッティングは、プレート130に設けられた案内穴からコンタクトプローブ101を挿入することにより行われる。そして、先端側の絶縁被膜103の端面103aがプレート120に引っかかることにより、コンタクトプローブ101の落下を防いでいる。
【特許文献1】特開2002−131334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6(A)(B)に示すように、従来のコンタクトプローブ101は、リード線側のプレート130が有する案内穴と、コンタクトプローブ101のリード線側の後端102bとのクリアランスが大きく、その後端102bのセンタリングが十分に行われず、その後端102bとリード線150との接触位置が不安定で不確かになるという問題があった。
【0007】
また、プローブユニット110へのコンタクトプローブ101のセッティングは、リード線側のプレート130から挿入するしかなかったため、挿入時には、プローブユニット110を検査装置から分解して取り外さなければならず、セッティングが煩雑になるという問題があった。
【0008】
また、コンタクトプローブ101の後端102bとリード線150との接触が測定ごとに繰り返されるので、接触により発生する酸化物粉末が接触不良の原因になるという問題があった。
【0009】
また、従来のコンタクトプローブは、加工工数の多い方法で製造されており、コストアップの原因となっていた。具体的には、所定長さの金属導体上にマスキングした後に絶縁塗料をスプレーコーティングする製造方法では、少なくとも、切断、研削加工、マスキング、コーティングを経て製造され、一方、長尺の絶縁被膜付き金属導体を切断した後に両端部の絶縁被膜を剥離する方法では、少なくとも、エナメル焼き付け、切断、剥離、研削加工を経て製造され、いずれの製造方法も加工工数が多く、コストアップの原因となっていた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、両端に加重を与えてたわませることにより被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を測定する検査方法に使用されるコンタクトプローブにおいて、プローブユニットへのセッティングが容易で、リード線に正確かつ安定に接触できると共に接触不良等の不具合が生じない低コストのコンタクトプローブを提供することにある。また、本発明の他の目的は、そうしたコンタクトプローブの使用方法及びコンタクトプローブを低コストで製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明のコンタクトプローブは、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に絶縁被膜を有しない端部とを有し、前記両端に加重を与えてたわませることにより被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を測定する方式のコンタクトプローブにおいて、前記コンタクトプローブの端部の片側又は両側が、半球形状、針状、円錐形状又は平坦形状からなり、前記コンタクトプローブの胴体部が、前記絶縁被膜の一部分の厚さが薄い凹形状のストッパー部又は前記絶縁被膜の一部分が除去された凹形状のストッパー部を1箇所以上有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、(1)コンタクトプローブの胴体部が、絶縁被膜の一部分の厚さが薄い凹形状のストッパー部又は絶縁被膜の一部分が除去された凹形状のストッパー部を1箇所以上有するので、そのストッパー部を例えばプローブユニットの位置決め用プレート等で固定すれば、プローブユニット内にコンタクトプローブを容易にしかも精度良く固定することができる。その結果、金属導体の端部のセンタリングが十分となり、リード線に正確かつ安定に接触させることができる。また、(2)このように、コンタクトプローブをプローブユニット内に固定することができれば、コンタクトプローブの後端とリード線とを常に接触させた状態とし、コンタクトプローブの先端側をたわませて被測定体に接触させることができるので、その後端とリード線との接触の繰り返しによる酸化物粉末の発生をなくして接触不良をなくすことができる。また、(3)先端側の絶縁被膜の端面をプレートに引っかけて落下を防止する従来のコンタクトプローブとは異なり、ストッパー部を例えばプローブユニットの位置決め用プレート等で固定して落下を防止できるので、被測定体側のプレートからコンタクトプローブを挿入できる。その結果、プローブユニットを検査装置から分解しなくてもコンタクトプローブを容易に挿入してセッティングすることができる。また、(4)ストッパー部は、絶縁被膜の一部分の厚さを薄くしたり、絶縁被膜の一部分を除去したりして形成できるので、処理領域が極わずかであり、レーザ加工等にて容易に加工でき、低コストのコンタクトプローブとすることができる。また、(5)コンタクトプローブの端部の片側又は両側が半球形状、針状、円錐形状又は平坦形状からなるので、金属導体と絶縁被膜との段差等がない。その結果、プローブユニット内の穴に、コンタクトプローブを容易に挿入することができる。
【0013】
上記本発明のコンタクトプローブにおいて、前記ストッパー部が、前記コンタクトプローブの全長を1としたとき、片端から1/3以内の位置に設けられていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、例えば凹形状のストッパー部をコンタクトプローブの片端から1/3以内の位置に設けるので、その片端を被測定体の反対側の端部とし、被測定体側の先端とストッパー部との間に加重を与えて少なくとも全長の2/3の部分をたわませることにより、被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明のコンタクトプローブの使用方法は、上記本発明のコンタクトプローブを用いると共に、当該コンタクトプローブの外径よりもわずかに大きい穴が空いた少なくとも3枚のプレートを有するプローブユニットを用いたコンタクトプローブの使用方法であって、前記コンタクトプローブを前記プレートの穴へ差し込んで、前記コンタクトプローブに設けられた凹形状のストッパー部を前記プレートのうちの真ん中に位置する位置決め用プレートに対向するように組み込み、その後に、前記対向位置に組み込まれた位置決め用プレートのみをわずかにオフセットさせて、前記ストッパー部に前記位置決め用プレートが納まるようにして前記コンタクトプローブを固定し、その状態で前記コンタクトプローブが使用されることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、コンタクトプローブをプレートの穴へ差し込み、コンタクトプローブに設けられたストッパー部をプレートのうちの真ん中に位置する位置決め用プレートに対向するように組み込み、その後に、対向位置に組み込まれた位置決め用プレートのみをわずかにオフセットさせて、ストッパー部に位置決め用プレートが納まるようにするので、コンタクトプローブが協働して作用する3枚のプレートで固定され、その状態でコンタクトプローブに加重を与えてたわませることができる。こうしたコンタクトプローブを使用することによって、被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。そして、本発明の使用方法によれば、前記のコンタクトプローブに係る発明で説明したのと同様、前記(1)〜(5)の作用効果を奏することができる。
【0017】
上記本発明のコンタクトプローブの使用方法において、前記ストッパー部が、前記コンタクトプローブの全長を1としたとき、被測定体の反対側の端から1/3以内の位置に設けられており、当該位置に対向するように前記位置決め用プレートが配置されていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、例えば凹形状のストッパー部を被測定体の反対側の端から1/3以内の位置に設け、その位置に対向するように位置決め用プレートを配置したので、被測定体側の先端とストッパー部との間に加重を与えて少なくとも全長の2/3の部分をたわませることにより、被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明のコンタクトプローブの製造方法は、上記本発明のコンタクトプローブの製造方法であって、金属導体の外周に絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成工程と、絶縁被膜が形成された金属導体を切断する工程と、切断された絶縁被膜付き金属導体の片側又は両側の端部を研削加工して、半球形状、針状、円錐形状、頂部に半球形状ないし平坦形状を有する円錐形状、及び平坦形状から選ばれるいずれかの形状にする工程と、前記絶縁被膜の一部分をレーザにより薄くし又は除去して凹形状のストッパー部を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、少ない加工工数でコンタクトプローブを製造できるので、コスト低減に有利である。特に、凹形状のストッパー部の形成工程については、絶縁被膜の一部分の厚さを薄くしたり、絶縁被膜の一部分を除去したりすることは、レーザ加工等にて容易に行うことができ、しかもその処理領域も極わずかであるので、処理時間の短縮と工数削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコンタクトプローブによれば、(1)凹形状のストッパー部を例えばプローブユニットの位置決め用プレート等で固定すれば、プローブユニット内にコンタクトプローブを容易にしかも精度良く固定することができる。その結果、金属導体の端部のセンタリングが十分となり、リード線に正確かつ安定に接触させることができる。また、(2)コンタクトプローブの後端とリード線との接触の繰り返しによる酸化物粉末の発生をなくして接触不良をなくすことができる。また、(3)凹形状のストッパー部を例えばプローブユニットの位置決め用プレート等で固定して落下を防止できるので、被測定体側のプレートからコンタクトプローブを挿入できる。その結果、プローブユニットを検査装置から分解しなくてもコンタクトプローブを容易に挿入してセッティングすることができる。また、(4)凹形状のストッパー部は、絶縁被膜の一部分の厚さを薄くしたり、絶縁被膜の一部分を除去したりして形成できるので、処理領域が極わずかであり、レーザ加工等にて容易に加工でき、低コストのコンタクトプローブとすることができる。また、(5)コンタクトプローブの端部の片側又は両側に金属導体と絶縁被膜との段差等がないので、プローブユニット内の穴に、コンタクトプローブを容易に挿入することができる。
【0022】
本発明のコンタクトプローブの使用方法によれば、前記(1)〜(5)の作用効果に加え、コンタクトプローブが協働して作用する3枚のプレートで固定され、その状態でコンタクトプローブに加重を与えてたわませることができるので、こうしたコンタクトプローブを使用することによって、被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。
【0023】
本発明のコンタクトプローブの製造方法によれば、少ない加工工数でコンタクトプローブを製造できるのでコスト低減に有利であり、特に、凹形状のストッパー部の形成工程をレーザ加工等にて容易に行うことができるので、処理時間の短縮と工数削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のコンタクトプローブ、その使用方法及びその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
(コンタクトプローブ)
図1は本発明のコンタクトプローブの一例を示す概略図であり、同図(a)は全体の正面図を表し、同図(b)は端部の拡大断面図を表し、同図(c)は凹形状のストッパー部の拡大断面図を表している。また、図2及び図3は、本発明のコンタクトプローブを備えたプローブユニットを用いて被測定体の電気特性を検査する方法を説明するための模式断面図である。本発明のコンタクトプローブ1(以下、単に「プローブ1」ということがある。)は、図1に示すように、ピン形状の金属導体2の外周に絶縁被膜3を有する胴体部Aと、金属導体2の両端に絶縁被膜3を有しない端部Bとを有し、その両端に加重を与えてたわませることにより被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を測定する方式のコンタクトプローブである。本発明において、端部Bの片端又は両端は、半球形状、針状、円錐形状又は平坦形状になっており、また、その胴体部Aは、絶縁被膜3の一部分の厚さが薄い凹形状のストッパー部4又は絶縁被膜3の一部分が除去された凹形状のストッパー部4を1箇所以上有している。
【0026】
なお、図1及び図2に示すように、符号2aは、被測定体側に配置された被測定体11の電極12に接触する側の金属導体2の「先端」であり、符号2bは、検査装置側に配置された検査装置(図示しない)のリード線50に接触する側の金属導体2の「後端」である。また、符号3aは、上記先端側の絶縁被膜3の加工端面であり、符号3bは、上記後端側の絶縁被膜3の加工端面である。また、本願において、「片端部」とは、金属導体2の先端(2a又は2b)と、絶縁被膜3の加工端面(3a又は3b)とを含む部位を指し、「両端部」とは、金属導体2の先端2a,2bと、絶縁被膜3の加工端面3a,3bとを含む部位を指す。
【0027】
金属導体2としては、高い導電性と高いばね性を有する金属線(「金属ばね線」ともいう。)が用いられる。金属導体2に用いられる金属としては、広い弾性域を持つ金属を挙げることができ、例えばベリリウム銅、りん青銅、銅銀合金等の銅合金、タングステン、レニウムタングステン、鋼(例えば高速度鋼:SKH)等を好ましく用いることができる。こうした金属導体2は、通常、上記の金属が所定の径の線状導体となるまで冷間又は熱間伸線等の塑性加工が施される。金属導体2の外径は、プローブユニット10において隣り合う各プローブ1の間隔に応じて、20μm以上400μm以下、好ましくは25μm以上200μm以下、特に好ましくは30μm以上100μm以下の範囲内から任意に選択することができる。
【0028】
また、プローブ1をプローブユニット10への装着し易さの観点からは、金属導体2の真直度が高いことが好ましく、具体的には真直度が曲率半径Rで1000mm以上であることが好ましい。真直度の高い金属導体2は、絶縁被膜3が設けられる前に予め直線矯正処理しておくか、後述のように絶縁被膜3が設けられた長尺の金属導体2を直線矯正処理することにより得ることができる。ここでの直線矯正処理は、例えば回転ダイス式直線矯正装置等によって行われる。こうした真直度を持たせることにより、プローブユニット10にプローブ1を装着する際に、プローブ1がプレート20,30の案内穴に入り難くなることを防ぐことができる。
【0029】
金属導体2の先端2a及び/又は後端2bの形状は、図1に示すような半球形状であってもよいし、後述する図4に示すような円錐形状、頂部に半球形状を有する円錐形状、頂部に平坦形状を有する円錐形状、等から選ばれるいずれかで形成されていてもよい。ここでいう「半球形状」、「円錐形状」は、正確な半球や円錐を含むが、略円錐や略半球も含む。
【0030】
金属導体2の先端2a又は後端2bには、金属導体2と、被測定体11の電極12又は検査装置のリード線50との接触抵抗値の上昇を抑制するために、めっき層が設けられていてもよい。めっき層を構成する金属としては、ニッケル、金、ロジウム等の金属や金合金等の合金を挙げることができる。めっき層は、単層であってもよいし複層であってもよい。複層のめっき層としては、ニッケルめっき層上に金めっき層が形成されたものを好ましく挙げることができる。
【0031】
絶縁被膜3は、金属導体2上に設けられて、被測定体11の電気特性を検査する際のプローブ同士の接触を防いで短絡を防止するように作用する。なお、絶縁被膜3は、金属導体2上、すなわち金属導体2の外周上に長手方向に亘って設けられていればよく、直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよい。
【0032】
絶縁被膜3は、絶縁性を有する被膜であれば特に限定されないが、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂から選ばれるいずれか1種であることが好ましい。なお、通常は一種類の樹脂により形成される。これらの樹脂からなる絶縁被膜は耐熱性が異なるので、検査の際に発生する熱を考慮して任意に選択することができる。例えば、より耐熱性が要求される場合には、絶縁被膜3がポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等で形成されることが好ましい。絶縁被膜3の厚さは電気絶縁性を確保できる程度の厚さであればよく、金属導体2の直径との関係を考慮して、5μm以上50μm以下の範囲内で適宜設定される。本発明においては、上記の絶縁被膜3が、焼付けエナメル被膜として形成されることが好ましい。焼付けエナメル被膜は、後述するように塗料の塗布と焼付けの繰り返しにより連続工程で形成されるので、生産性がよく、金属導体2との間の密着性が高く且つ被膜強度をより高いものとすることができる。
【0033】
本発明の主な特徴部分は、図1(A)(C)に示すように、プローブ1の胴体部Aが、絶縁被膜3の一部分の厚さが薄い凹形状のストッパー部4又は絶縁被膜3の一部分が除去された凹形状のストッパー部4を1箇所以上有していることにある。この凹形状のストッパー部4(以下、ストッパー部4ともいう。)は、後述の使用方法の欄で詳しく説明するように、プローブ1をプレート30の穴に差し込んだ後、プレート30のうちの真ん中に位置する位置決め用プレート32のみをわずかにオフセットさせ、そのストッパー部4に位置決め用プレート32を係合させることによってプローブ1を固定するように作用する。
【0034】
ストッパー部4は、プローブ1の全長を1としたとき、片端から1/3以内の位置に設けられていることが好ましい。ストッパー部4をそうした位置に設け、その片端を被測定体11の反対側の端部とし、被測定体側の金属導体2の先端2aとストッパー部4との間に加重を与えて少なくとも全長の2/3の部分をたわませることにより、被測定体11に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。なお、この「1/3」は、少なくとも全長の2/3の部分を残しておけばプローブ1をたわませることが容易であることから特定した好ましい値であるので、例えばプローブ1の長さが長い場合等のように、プローブ1にたわみを与えることができれば片端から1/3を超えた場合であってもよい。
【0035】
プローブ1の長手方向におけるストッパー部4の幅Wは、このストッパー部4に係合する位置決めプレート32(図2参照)の形状や寸法との関係によって決まるので特に限定されないが、通常は、100〜300μm程度の幅Wが好ましく採用される。
【0036】
ストッパー部4の深さは、係合させた位置決めプレート32から外れないことを考慮してその深さが決められるが、その深さは、たわみを生じさせるようにプローブ1に加える加重や絶縁被膜3の厚さとの関係が考慮される。例えば、加重が大きい場合には、ストッパー部4の深さを深くして係合した位置決めプレート32から外れないようにする必要があり、一方、加重が小さい場合には、ストッパー部4の深さを浅くしてもよくなる。したがって、ストッパー部4の深さは一概に規定できないが、通常は、5〜30μm程度の深さが好ましく採用される。
【0037】
ストッパー部4は、絶縁被膜3の厚さを薄くして形成するか、絶縁被膜3を除去して形成するかについては特に限定されない。例えば、絶縁被膜3の厚さが、必要とされるストッパー部4の深さよりも厚い場合には、ストッパー部4は絶縁被膜3を薄くして形成してもよいし、絶縁被膜3を除去して形成してもよいが、絶縁被膜3の厚さが、必要とされるストッパー部4の深さと同程度の場合には、ストッパー部4は絶縁被膜3を除去して形成されることになる。なお、ストッパー部4の形成は、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ等の有機系被膜の加工方法を用いて行うことができ、特にこれらの加工方法は、金属導体2に対してもダメージを与えにくいので好ましく用いることができる。
【0038】
ストッパー部4における絶縁被膜3の端面4a,4bにおいて、位置決めプレート32が当接する側の端面の形状は、なだらかに形成されているよりも、鋭角に立ち上がっていることが好ましい。例えば、金属導体面との角度で、30°以上になっていることが好ましく、60°以上になっていることがより好ましい。こうした形態からなる端面を位置決めプレート32の当接面としたプローブ1は、たわみを生じさせるようにプローブ1に加重が加わった場合であっても、その位置決めプレート32がストッパー部4から外れるのを防ぐことができる。
【0039】
ストッパー部4の数は少なくとも1つあればよく、2つ以上あってもよい。ストッパー部4が1つの場合には、図2に示すように、3枚組のプレート30(プレート/位置決めプレート/プレート)で対応できるが、2つの場合には、位置決めプレート32が2つ必要になるため、少なくとも5枚組のプレート(プレート/位置決めプレート/プレート/位置決めプレート/プレート)が必要になる。2以上のストッパー部4をそれぞれに対応する2枚以上の位置決めプレートで固定することにより、大きな加重が加わる場合であっても、プローブ1の固定をより確実なものにすることができる。
【0040】
こうしたストッパー部4有する本発明のプローブ1によれば、(1)プローブユニット10内にプローブ1を容易にしかも精度良く固定することができるので、金属導体2の端部2bのセンタリングが十分となり、リード線50に正確かつ安定に接触させることができる。また、(2)このように、プローブ1をプローブユニット10内に固定することができれば、プローブ1の後端2bとリード線50とを常に接触させた状態とし、プローブ1の先端側をたわませて被測定体11に接触させることができるので、その後端2bとリード線50との接触の繰り返しによる酸化物粉末の発生をなくして接触不良をなくすことができる。また、(3)先端側の絶縁被膜の端面をプレートに引っかけて落下を防止する従来のプローブとは異なり、ストッパー部4を例えばプローブユニット10の位置決め用プレート32等で固定して落下を防止できるので、被測定体側のプレート20からプローブ1を挿入できる。その結果、プローブユニット10を検査装置から分解しなくてもプローブ1を容易に挿入してセッティングすることができる。また、(4)ストッパー部4は、絶縁被膜3の一部分の厚さを薄くしたり、絶縁被膜3の一部分を除去したりして形成できるので、処理領域が極わずかであり、レーザ加工等にて容易に加工でき、低コストのコンタクトプローブとすることができる。
【0041】
ここで、プローブ1の片端又は両端の端部Aの形状について説明する。図4は、本発明のコンタクトプローブの片端又は両端の形態例を示す断面図である。本発明のプローブ1の端部Bは、半球形状、針状、円錐形状又は平坦形状のいずれであってもよい。特にその端部Bの形状が、金属導体2と絶縁被膜3とを同時に加工した形態を示すことが、工数削減によるコスト低減の観点から好ましい。端部Bの加工方法としては、通常は、研削加工が適用されるが、同様な形状を発現させることができれば他の加工方法を採用してもよい。具体的には、図4に示すように、端部の形状が、半球形状、円錐形状、頂部に半球形状を有する円錐形状、及び、頂部に平坦形状を有する円錐形状等から選ばれるいずれかであり、そうした形状が、金属導体2の端部2a,2bの形状に沿った形状からなる絶縁被膜3の端面3a,3bを有するように構成されていることが好ましい。
【0042】
こうした端部形状において、突出する金属導体2の長さL1〜L4は、0.01mm以上、0.2mm以下好ましくは0.1mm以下の範囲内である。金属導体2の線径が小さい場合は、金属導体2の突出長さL1〜L4は上記下限値側にシフトし、金属導体2の線径が大きい場合は、金属導体2の突出長さL1〜L4は上記上限値側にシフトする。なお、図4(A)(C)の曲面の曲率や、図4(B)(D)の傾斜面の角度や、図4(D)の頂部の平坦面の面積等の形状要素は、種々の値を任意に設定することができる。このように、プローブ1の端部Bの片側又は両側を半球形状、針状、円錐形状又は平坦形状からなる一体形状とすることにより、金属導体2と絶縁被膜3との段差等がなく、その結果、プローブユニット10内の穴に、プローブ1を容易に挿入することができる。
【0043】
(コンタクトプローブの製造方法)
次に、本発明のコンタクトプローブの製造方法について説明する。図5は、本発明のプローブの製造方法の一例を示す工程フロー図である。本発明のプローブ1の製造方法は、図5に示すように、上記本発明のプローブ1を製造する方法であって、金属導体2の外周に絶縁被膜3を形成する絶縁被膜形成工程と、絶縁被膜3が形成された金属導体2を切断する切断工程と、切断された絶縁被膜付き金属導体2の片側又は両側の端部Bを研削加工して、半球形状、針状、円錐形状、頂部に半球形状ないし平坦形状を有する円錐形状、及び平坦形状から選ばれるいずれかの形状にする研削加工工程と、絶縁被膜3の一部分をレーザにより薄くし又は除去して凹形状のストッパー部4を形成するストッパー部形成工程と、を有している。
【0044】
絶縁被膜形成工程は、通常のエナメル線の製造装置(製造ライン)を用いることができる。例えば、ボビン等の線材供線装置から繰出された線状の金属導体(以下、線材ともいう。)に、塗料槽にてエナメル塗料を塗布した後、その直後に設けたダイスやフェルト等の塗料絞り具で線材表面の塗布塗料を略均一厚さに扱き、その後その線材を電熱炉や熱風循環炉等の高温の焼付炉に導入し、炉内で線材上に塗布された塗料中の溶剤を揮発除去して塗料を反応硬化させ、硬化塗膜層を線材表面に形成して焼付炉から導出し、導出された線材を再び塗料槽、塗料絞り具及び焼付炉を通過させる工程を複数回繰り返し、線材表面に所望の厚さの硬化塗膜層を形成した後、キャプスタン等の引取装置により引取りボビン等の巻取装置に巻き取ることによって、連続して焼付けエナメル被膜を形成する。
【0045】
こうしたエナメル線の製造装置を用いることにより、均一な膜厚を有する絶縁被膜を簡便に形成することができる。絶縁被膜形成工程においては、通常、絶縁被膜が所望の平均膜厚になるまで、エナメル塗料の塗布と焼付けが繰り返し行われる。エナメル塗料は、プローブの説明箇所で既に説明した樹脂と有機溶媒とを混合して調製される。
【0046】
切断工程の前には、金属導体の真直度を高めておくことが望ましい。そのための手段としては、(1)真直度の高い金属導体を入手し、その金属導体を用いて焼付けエナメル被覆したり、(2)金属導体を真直矯正し、その金属導体を用いて焼付けエナメル被膜したり、(3)金属導体に焼付けエナメル被覆した後に直線矯正したりする個著が好ましい。直線矯正は、長尺の金属導体に軸方向の張力を加えながら電流焼鈍することにより行うことができる。なお、真直度の高い絶縁被膜付き金属導体としては、例えば、本件特許出願人である東京特殊電線株式会社の有する特許(特許第3415442号)に係る材料が好ましく用いられる。
【0047】
切断工程は、絶縁被膜3が形成された長尺の金属導体2を所定の長さに定尺切断する工程である。この切断工程においては、例えば定尺切断装置等を用い、絶縁被膜3として焼付けエナメル被膜が形成された長尺の金属導体を、その端部が加工されることを考慮して所定の長さに切断する。切断工程に供される焼付けエナメル被膜が形成された長尺の金属導体は、プローブ1の説明箇所で既に説明したように、ばね性を有する長尺の金属導体にエナメル塗料の塗布と焼付けを繰り返し行う絶縁被膜形成工程(焼付けエナメル絶縁被覆工程)により形成される。
【0048】
研削加工工程は、切断された絶縁被膜付き金属導体2の片側又は両側の端部Bについて、金属導体2の端部(2a,2b)と絶縁被膜3の端面(3a,3b)とを、通常は同時に研削加工する工程である。この加工工程により、金属導体2の端部(2a,2b)と絶縁被膜3の端面(3a,3b)とからなる形状を、半球形状、円錐形状、頂部に半球形状を有する円錐形状、及び、頂部に平坦形状を有する円錐形状から選ばれるいずれかの形状にする。研削加工方法としては、例えばエメリー紙を用いた研削加工や、ダイヤモンドホイールを用いた研削加工等を挙げることができる。先端形状は、回転するエメリー紙やダイヤモンドホイール等に所定の角度で接触させたプローブ1を軸回転させて得ることができ(図4(B)(D)の形状)、さらに、エメリー紙やダイヤモンドホイール等に対する角度を変化させて得ることができる(図4(A)(C)の形状)。また、研削装置としては、ピン形状の金属材料を研削可能な市販の研削加工機を用いてもよいし、例えば特開2005−3516号公報に記載の研削装置を用いてもよい。
【0049】
ストッパー部形成工程は、絶縁被膜3の一部分をレーザにより薄くし又は除去して凹形状のストッパー部4を形成す工程である。具体的には、炭酸ガスレーザやエキシマレーザ等の有機系被膜に対して好ましく適用できるレーザ照射手段を適用できる。こうした加工方法は、金属導体2に対してもダメージを与えにくいので好ましい。
【0050】
ストッパー部4の幅Wの調整のコントロールは、被照射体であるプローブ1とレーザ光源との間にレーザ遮蔽用のマスクを配置し、そのマスクの位置を調整したりして行うことができる。また、絶縁被膜3を除去したストッパー部4を形成する場合には問題ないが、絶縁被膜3を所定に深さだけ除去する場合には、例えば、レーザ出力や処理時間を調整することにより、その深さをコントロールすることができる。また、ストッパー部4の端面4a,4bの角度については、例えば、プローブ1とレーザ遮蔽用マスクの距離を調整することにより、その端面の角度をコントロールすることができる。
【0051】
なお、必要に応じて、研削加工等した後の端部(すなわち金属導体が露出した端部)をめっき処理するめっき工程を設けてもよい。このめっき工程により、接触抵抗を低下させるためのめっき層を端部に形成することができる。
【0052】
以上説明しように、本発明のプローブ1の製造方法によれば、少ない加工工数でプローブ1を製造できるので、コスト低減に有利である。特に、凹形状のストッパー部4の形成工程については、絶縁被膜3の一部分の厚さを薄くしたり、絶縁被膜3の一部分を除去したりすることはレーザ加工等にて容易に行うことができ、しかもその処理領域も極わずかであるので、処理時間の短縮と工数削減を図ることができる。
【0053】
(コンタクトプローブの使用方法)
次に、上述した本発明のプローブを用いた電気特性の検査方法について、図2と図3を参照して説明する。本発明のプローブ1は、プローブユニット10に装着されて回路基板等の被測定体の電気特性の良否の検査に利用される。プローブユニット10は、図2に示すように、複数本から数千本のプローブ1と、プローブ1を被測定体11の電極12にガイドするプレート20と、プローブ1を検査装置のリード線50にガイドするプレート30とを備えている。検査装置側のプレート30は、プローブ1の外径よりも若干大きい案内穴を有し、その案内穴は一本一本のプローブ1の金属導体2をリード線50にガイドする。被測定体側のプレート20は、プローブ1の外径よりも若干大きい案内穴を有し、その案内穴は一本一本のプローブ1の金属導体2を電極12にガイドする。そして、本発明のプローブ1を装着するプローブユニット10は、プローブ1の外径よりもわずかに大きい穴が空いた少なくとも3枚のプレート30を有することに構造上の特徴がある。
【0054】
プローブユニット10と被測定体11は、被測定体11の電気特性を検査する際、プローブ1と電極12とが対応するように位置制御される。電気特性の検査は、プローブユニット10又は被測定体11のいずれかを上下させ、プローブ1の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ1の先端2aを所定の圧力で押し当てることにより行われる。このとき、プローブ1の後端2bはリード線50に常時接触し、被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置(図示しない。)に送られる。なお、図2及び図3中の符号40はリード線用の保持板を示している。
【0055】
本発明のプローブの使用方法は、図2及び図3に示すように、前記したプローブユニット10を用いたコンタクトプローブの使用方法である。そして、本発明の特徴は、プローブ1を少なくとも3枚構成のプレート30の穴へ差し込んで、プローブ1に設けられた凹形状のストッパー部4をそのプレート30のうちの真ん中に位置する位置決め用プレート32に対向するように組み込み、その後に、対向位置に組み込まれた位置決め用プレート32のみをわずかにオフセットさせて、ストッパー部4に位置決め用プレート32が納まるように係合させてプローブ1を固定し、その状態でプローブ1が使用することにある。この発明によれば、プローブ1が協働して作用する3枚のプレート30で固定され、その状態を保持したままプローブ1に加重を与えてたわませることができる。こうしたプローブ1を使用することによって、被測定体11に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。さらに、本発明の使用方法によれば、前記のコンタクトプローブに係る発明で説明したのと同様の(1)〜(5)の作用効果を奏することができる。
【0056】
図2を用いて詳しく説明する。図2(A)は本発明に係るプローブ1をプローブユニット10内のプレート20,30に挿入し、ストッパー部4を所定の位置にセッティングした状態を示す概略図であり、図2(B)は位置決めプレート32をオフセットしてストッパー部4に係合させた状態を示す概略図であり、図2(C)は検査時のコンタクトプローブのたわみ状態を示す概略図である。
【0057】
先ず、図2(A)に示すように、所定の間隔(例えば15mm)で穴が形成されたプレート20,30に本発明に係るプローブ1を挿入する。このとき、各プレート20,30の穴位置は、プローブ1が容易に挿入されるように揃えてある。特に3枚構成のプレート30の穴の位置を揃えるには、穴がそろった状態で小さな第1貫通孔をあけておき、その第1貫通孔にピンを刺しておく等の手段を用いればよい。こうすることにより、プローブ1を、プレート20と少なくとも3枚構成のプレート30とが有する穴に容易に差し込むことができる。また、プローブ1に設けられたストッパー部4をそのプレート30のうちの真ん中に位置する位置決め用プレート32に対向するように組み込むには、図2(A)に示すように、リード線側の端部2bがリード線50に突き当たる位置をその対向位置となるようにプローブユニット10と保持板40との位置関係を規制すれば、ストッパー部4を容易に位置決めすることができる。
【0058】
次に、図2(B)に示すように、ストッパー部4が位置決め用プレート32に対向するように配置された状態で、例えば上記第1貫通孔からピンを抜き、位置決めプレート32のみをわずかにオフセットさせる。オフセットは、ストッパー部4の深さ等を考慮し、真ん中の位置決めプレート32を所定量スライドさせる。その位置決めは、スライドさせる所定量の位置に位置決め突起を設けておき、真ん中の位置決めプレート32をその位置決め突起に突き当たるまでスライドさせることにより行うことができる。なお、その位置に正確に保持するために、その位置に保持した状態で小さな第2貫通孔をあけておき、その第2貫通孔に第1貫通孔で用いたピンを刺す等の手段を用いれば位置決めプレート32を固定でき、検査中に移動することがないので、検査時に安定した測定を行うことができる。
【0059】
最後に、図2(C)に示すように、位置決めプレート32を所定の位置にオフセットさせてストッパー部4と係合させ、プローブ1を固定した後、プローブ1が検査時に電子部品等の電極12に接触すると、図示のように、電極側の先端とストッパー部4との間でたわみが生じ、被測定体11に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。
【0060】
なお、ストッパー部4は、プローブ1の全長を1としたとき、被測定体11の反対側の端2bから1/3以内の位置に設けられており、その位置に対向するように位置決め用プレート32が配置されていることが好ましい。こうした構成により、被測定体側の先端2aとストッパー部4との間に加重を与えて少なくとも全長の2/3の部分をたわませることにより、被測定体11に対する接触圧力を得て電気特性を良好な状態で測定することができる。
【0061】
図3は、位置決めプレート32の形状が図2のものとは異なる態様の例である。具体的には、位置決めプレート32の穴には、そのリード線側に、径の大きいザグリ部34が設けられている。このザグリ部34が設けられていることにより、通常の穴径の部位はストッパー部4に係合する係合部となり、ザグリ部34はリード線側の絶縁被膜端面4bへの当接部となる。
【0062】
この態様は基本的には、図2において説明したのと同様である。異なる点としては、位置決めプレート32の係合部が、図2の場合のものに比べて幅が小さくなっているので、レーザ加工等によるストッパー部4の形成が容易になるという製造上の利点がある。なお、位置決めプレート32の係合部の幅と、それに対向するストッパー部4の幅とが小さくなると、両者の位置合わせの精度が要求されるが、その場合も上記の図2の場合と同様、プローブ1のリード線側の端部(後端)2bをリード線50に当接させる等により正確に位置合わせすることができる。
【0063】
また、図3(B)に示すように、位置決めプレート32をオフセットさせて、位置決めプレート32の係合部をストッパー部4に係合した後、図3(C)に示すように、リード線を支持する支持板40をプレート31に押し付けるようにシフトさせれば、プローブ1の後端2bが支持板40により押されて、通常の穴径の部位はストッパー部4に係合する係合部となり、ストッパー部4の絶縁被膜端面4bがザグリ部34に当接するが、その際に、絶縁被膜3を構成する樹脂材料の反発力により、プローブ1の端部2bがリード線50に押しつけられるように接触することになる。反発力のある絶縁被膜としては、ポリウレタン被膜等を好ましく挙げることができる。
【0064】
したがって、本発明においては、被測定体11側の先端2aはプローブ1のたわみにより被測定体11の電極12に安定して接触することができ、一方、リード線側の後端2bは絶縁被膜の樹脂材料の反発力でリード線50に安定して接触することができるという利点がある。
【実施例】
【0065】
以下、本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。なお、以下の実施例は一例であって、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
金属導体2として、予め真直度が曲率半径Rで1500mmに直線矯正された長尺の真直ベリリウム銅線(外径0.10mm)を用いた。また、絶縁被膜用の塗料として、ポリウレタン樹脂系のエナメル塗料(東特塗料株式会社製、商品名;TPU5100)を用い、図示しない絶縁被膜焼付装置により厚さ0.015mmのポリウレタン被膜3を連続的に焼付け、絶縁被膜付き真直ベリリウム銅線(以下、絶縁真直ベリリウム銅線と略記する)を製造した。
【0067】
次に、定尺切断装置で前記絶縁真直ベリリウム銅線を25mm長さに切断した。次いで、定尺切断した絶縁真直ベリリウム銅線の端部Bを研削加工装置により半球形状に研削加工して所定形状の端部Bを形成した。なお、研削加工は、エメリー紙を貼った回転円盤上に定尺切断した絶縁真直ベリリウム銅線の端部Bを押し当てて研削し、ベリリウム銅線と絶縁被膜とを同時に半球形状に加工した。次に、二酸化炭素レーザにて、リード線側の端部2bとする側から、3mmの部分をセンターとし、使用する幅1mmの位置決めプレート32と係合するように、絶縁被覆3をレーザ加工して除去し、幅0.2mmの凹形状のストッパー部4を形成した。こうして実施例1に係るコンタクトプローブ1を作製した。
【0068】
(実施例2)
レーザ加工後、露出した金属導体2にめっき処理を施してニッケルめっき層(膜厚1.7μm)及び金めっき層(膜厚0.3μm)からなる2層のめっき層(総膜厚2μm)を形成した他は、実施例1と同様にして、実施例2に係るコンタクトプローブ1を作製した。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のコンタクトプローブの一例を示す概略図であり、同図(a)は全体の正面図を表し、同図(b)は端部の拡大断面図を表し、同図(c)は凹形状のストッパー部の拡大断面図を表している。
【図2】本発明のコンタクトプローブを備えたプローブユニットを用いて被測定体の電気特性を検査する方法を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明のコンタクトプローブを備えたプローブユニットを用いて被測定体の電気特性を検査する方法を説明するための模式断面図である。
【図4】本発明のコンタクトプローブの端部の形態例を示す断面図である。
【図5】本発明のプローブの製造方法の一例を示す工程フロー図である。
【図6】従来のコンタクトプローブをプローブユニットにセットした状態を示す概略図(A)と、そのコンタクトプローブをたわませて被測定体を検査している状態を示す概略図(B)である。
【符号の説明】
【0070】
1 コンタクトプローブ
2 金属導体
2a,2b 端部
3 絶縁被膜
3a,3b 端面
4 凹形状のストッパー部
4a,4b 端面
10 プローブユニット
11 被測定体
12 電極
20 被測定体側のプレート
30 検査装置側のプレート
31,33 プレート
32 位置決めプレート
34 段差部
40 リード線用の保持板
50 リード線
A 胴体部
B 端部
W ストッパー部の幅
L1〜L4 金属導体の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に絶縁被膜を有しない端部とを有し、前記両端に加重を与えてたわませることにより被測定体に対する接触圧力を得て電気特性を測定する方式のコンタクトプローブにおいて、
前記コンタクトプローブの端部の片側又は両側が、半球形状、針状、円錐形状又は平坦形状からなり、
前記コンタクトプローブの胴体部が、前記絶縁被膜の一部分の厚さが薄い凹形状のストッパー部又は前記絶縁被膜の一部分が除去された凹形状のストッパー部を1箇所以上有することを特徴とするコンタクトプローブ。
【請求項2】
前記ストッパー部が、前記コンタクトプローブの全長を1としたとき、片端から1/3以内の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトプローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンタクトプローブを用いると共に、当該コンタクトプローブの外径よりもわずかに大きい穴が空いた少なくとも3枚のプレートを有するプローブユニットを用いたコンタクトプローブの使用方法であって、
前記コンタクトプローブを前記プレートの穴へ差し込んで、前記コンタクトプローブに設けられた凹形状のストッパー部を前記プレートのうちの真ん中に位置する位置決め用プレートに対向するように組み込み、
その後に、前記対向位置に組み込まれた位置決め用プレートのみをわずかにオフセットさせて、前記ストッパー部に前記位置決め用プレートが納まるようにして前記コンタクトプローブを固定し、
その状態で前記コンタクトプローブが使用されることを特徴とするコンタクトプローブの使用方法。
【請求項4】
前記ストッパー部が、前記コンタクトプローブの全長を1としたとき、被測定体の反対側の端から1/3以内の位置に設けられており、
当該位置に対向するように前記位置決め用プレートが配置されていることを特徴とする請求項3に記載のコンタクトプローブの使用方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のコンタクトプローブの製造方法であって、
金属導体の外周に絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成工程と、
絶縁被膜が形成された金属導体を切断する工程と、
切断された絶縁被膜付き金属導体の片端又は両端について、前記金属導体の端部を研削加工して、半球形状、針状、円錐形状、頂部に半球形状ないし平坦形状を有する円錐形状、及び平坦形状から選ばれるいずれかの形状にする工程と、
前記絶縁被膜の一部分をレーザにより薄くし又は除去して凹形状のストッパー部を形成する工程と、を有することを特徴とするコンタクトプローブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−196905(P2008−196905A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30885(P2007−30885)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】