説明

コンタクトレンズ用組成物

【課題】 殺菌剤や防腐剤を使用する際に、かかる殺菌剤や防腐剤の添加量を増やすことなく、眼に対する安全性を充分に確保しつつ、優れた殺菌効力乃至は防腐効力を発揮することが出来るコンタクトレンズ用組成物を提供すること。
【解決手段】 殺菌剤及び/又は防腐剤と共に、グルコサミン塩を含有せしめて、コンタクトレンズ用組成物を、調製した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ用組成物に係り、特に、優れた殺菌効果乃至は防腐効果を発揮するコンタクトレンズ用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンタクトレンズは、非含水性コンタクトレンズと含水性コンタクトレンズとに分類されたり、また、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズとに分類されたりしている。而して、それらの何れのコンタクトレンズにおいても、その装用によって、涙液に由来する、蛋白質や脂質などの汚れがコンタクトレンズに付着することがあり、更には、そのようなレンズの涙液汚れに起因して、装用感の悪化や視力の低下、更には結膜充血等の眼障害が惹起されるようになるところから、かかるコンタクトレンズを毎日継続して、安全に且つ快適に使用するためには、コンタクトレンズに対して洗浄処理を施すことが必要となっている。
【0003】
また、そのような洗浄処理の他にも、保存中のコンタクトレンズに対する、細菌やカビ等の微生物による汚染を防ぐために、眼から外したコンタクトレンズに対して消毒処理を施し、更に、次に装用するまでの間、コンタクトレンズを適当な液剤中に保存することが必要となる。そして、そのようなコンタクトレンズに対する洗浄、消毒、保存の処理は何れも、コンタクトレンズを安全に装用するうえにおいて、必要不可欠な処理となっているのである。
【0004】
そして、コンタクトレンズに対する洗浄、消毒、保存等の手入れのために、水系媒体に溶解して用いるコンタクトレンズ洗浄用の錠剤や、コンタクトレンズ用殺菌液、洗浄液、保存液、すすぎ液等の液剤の他、複数の手入れを1種類の液剤で行うことの出来る多目的な液剤(マルチパーパスソリューション:MPS)等、各種のコンタクトレンズ用組成物が、海外や国内にて市販されるに至っている。
【0005】
そして、そのようなコンタクトレンズ用組成物には、コンタクトレンズが浸漬される液剤中での微生物の繁殖や微生物によるコンタクトレンズの汚染を防いて、コンタクトレンズを清潔に保つために、通常、殺菌剤や防腐剤が、添加されている。そして、そのようなコンタクトレンズ用の殺菌剤や防腐剤としては、従来から、各種の化合物が検討されてきているが、殺菌乃至は防腐の観点より実用上の要求を満たすには、何れも、その使用量を多くする必要があったのである。しかしながら、使用量を多くすると、毒性が強くなったり、殺菌剤や防腐剤がコンタクトレンズに吸着され易くなり、その結果、レンズ表面の濡れ性が低下したり、レンズ物性や形状が変化したり、場合によっては、コンタクトレンズ装用時に、眼の粘膜等に対して刺激を与え、眼障害が惹起される恐れがあるところから、安全性の面で問題がある。このため、殺菌剤や防腐剤の組成に関し、より少ない添加量で、より高い殺菌効力や防腐効力が発揮されることが望ましく、このような要求を満たすコンタクトレンズ用組成物の登場が、期待されている。
【0006】
そして、本発明者らのうちの一人は、他の発明者と共に、先に、グルコサミンやその誘導体などのアミノ糖誘導体を、殺菌剤が含有せしめられているコンタクトレンズ用液剤組成物に添加することにより、殺菌剤による殺菌効力が効果的に向上されることを見出し、別途、国際出願(PCT/JP2004/002782)を行ったのである。而して、本発明者らが、更に詳細な検討を加えたところ、グルコサミンの塩も、殺菌剤や防腐剤の効力を効果的に高めることが、明らかとなったのである。
【0007】
なお、グルコサミン塩を用いた組成物として、特許文献1には、ヘパラン硫酸又はその塩とグルコサミン又はその塩とからなる組成物を有効成分として含有する医薬が、提案されている。かかる医薬は、例えば、コンタクトレンズの普及に伴って患者数が増加している遷延性角膜上皮障害症などの障害の治療薬として、有用であることが明らかにされているものの、コンタクトレンズを対象とする用途については、何等の記載もない。
【0008】
【特許文献1】特開2004−002369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、殺菌剤や防腐剤を使用する際に、かかる殺菌剤や防腐剤の添加量を増やすことなく、眼に対する安全性を充分に確保しつつ、優れた殺菌効力乃至は防腐効力を発揮することが出来るコンタクトレンズ用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、上述の如き課題を解決するために為されたものであって、その第一の態様とするところは、殺菌剤及び/又は防腐剤と共に、グルコサミン塩を含有せしめてなることを特徴とするコンタクトレンズ用組成物にある。
【0011】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物における望ましい第二の態様においては、前記グルコサミン塩として、グルコサミン塩酸塩及び/又はグルコサミン硫酸塩が採用されることとなる。
【0012】
さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物における第三の態様では、多価アルコールが、更に含有せしめられる構成が、採用される。
【0013】
加えて、本発明の第四の態様においては、前記多価アルコールとして、プロピレングリコールが用いられることとなる。
【0014】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物における第五の態様においては、粘稠化剤、pH緩衝剤、キレート化剤、清涼化剤、界面活性剤、浸透圧調整剤、血管収縮剤、ビタミン類、消炎剤及び嬌味剤のうちの少なくとも1種が、更に、含有せしめられる。
【0015】
さらに、本発明の第六の態様では、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物は、液体形態において調製される。
【0016】
また更に、本発明の第七の好ましい態様においては、前記殺菌剤及び/又は防腐剤として、PHMBが用いられ、該PHMBが、0.1〜20ppmの割合で含有される。
【0017】
さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物における第八の態様においては、前記グルコサミン塩が、0.01〜10w/w%の割合で含有される。
【0018】
また、本発明の第九の態様においては、前記多価アルコールが、0.05〜10w/w%の割合で含有されることとなる。
【発明の効果】
【0019】
そして、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物における、先述した第一の態様によれば、殺菌剤及び/又は防腐剤の効力が、グルコサミン塩との併用にて、効果的に増強されることとなるのである。このため、従来のコンタクトレンズ用組成物と同程度の殺菌効果乃至は防腐効果を発揮させるために必要とされる殺菌剤及び/又は防腐剤の濃度を、より低く抑えることが出来るところから、殺菌剤及び/又は防腐剤の濃度を有利に低減することが出来るのであり、またこれによって、眼に対する安全性が、より一層、向上せしめられ得るのである
【0020】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物の第二の態様によれば、グルコサミン塩酸塩及び/又はグルコサミン硫酸塩が用いられ、これにて、本発明による効果が有利に発現され得るのである。
【0021】
さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物の第三及び第四の態様に従って、プロピレングリコール等の多価アルコールを含有せしめれば、液剤の浸透圧が適度に調整されたり、コンタクトレンズに対して湿潤性が付与されることに加えて、かかる多価アルコールが殺菌助剤乃至は防腐助剤の如く作用して、殺菌剤や防腐剤の効力が、更に高められるようになる。
【0022】
加えて、本発明の第五の態様においては、含有せしめる成分に応じた更なる機能が、コンタクトレンズ用組成物に付加されることとなる。
【0023】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物の第五乃至第九の態様によれば、眼に対するより高い安全性が確保され得ると共に、殺菌剤及び/又は防腐剤の効力がより一層有利に高められるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物は、殺菌剤及び/又は防腐剤と、グルコサミン塩とを併用することにより、相乗的な殺菌効果乃至は防腐効果を発揮せしめるようにしたものであり、そこに、格別顕著な特徴を有しているのである。
【0025】
ここにおいて、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物は、液体形態にて調製されても、或いは、固体形態にて調製されても何等差支えないのであるが、以下では、使用時において、水系媒体を用いて希釈又は溶解する必要がなく、そのまま使用に供することが可能な状態とされたコンタクトレンズ用組成物(液剤組成物)を例に挙げて、詳述することとする。
【0026】
すなわち、コンタクトレンズ用組成物は、精製水等の水系媒体を主体とし、かかる水系媒体中に、上述せる如き成分を含有せしめるようにしたものであるが、先ず、かかる本発明に従うコンタクトレンズ用組成物の必須の構成成分の一つである、殺菌剤や防腐剤は、コンタクトレンズの殺菌効果(消毒効果)、更にはコンタクトレンズ用組成物の防腐効果(保存効果)を有利に発現させるための成分であって、特に限定されるものではないものの、本発明においては、殺菌効力乃至は防腐効力を有すると共に、コンタクトレンズや眼への適合性に優れたもの、更には、アレルギー等の障害の要因となり難いものが望ましい。そして、コンタクトレンズ用組成物の用途等を勘案して、従来から公知の各種の殺菌剤及び防腐剤の中から、1種或いは2種以上の成分が適宜に選択されて、単独で或いは組み合わされて用いられる。
【0027】
具体的に、殺菌剤としては、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)等のビグアニド系殺菌剤やポリクオタニウム等の4級アンモニウム塩系殺菌剤等を挙げることが出来る。また一方、防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸或いはその塩、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、クロロブタノール、過ホウ酸或いは過ホウ酸ナトリウムのような過ホウ酸塩、二酸化塩素、安定化二酸化塩素等を挙げることが出来る。これら殺菌剤や防腐剤の中でも、低濃度で高い殺菌効果を実現すると共に、高分子で、低毒性であるところから安全性に優れ、また、コンタクトレンズへの影響も少ないという理由から、PHMBが、特に好適に用いられることとなる。
【0028】
また、上述せる如き殺菌剤及び/又は防腐剤の含有量(濃度)は、その種類によって、殺菌効力乃至は防腐効力が異なるところから、使用する殺菌剤及び/又は防腐剤によって適宜に設定されることとなるが、上記PHMBを選択して使用する場合には、その含有量は比較的少量で良く、好ましくは0.1〜20ppm程度、更に好ましくは0.5〜10ppm程度とされる。また、一般的な殺菌剤及び/又は防腐剤を用いる場合、その分量(二種以上を組み合わせて用いる場合、その合計量)は、好ましくは10〜10000ppm(0.001〜1w/w%)程度、更に好ましくは50〜5000ppm(0.005〜0.5w/w%)程度とされる。なお、かかる殺菌剤及び/又は防腐剤の含有量が、上記した範囲よりも少ない場合には、充分な殺菌効果や防腐効果を得ることが困難となり、また逆に、上記した範囲よりも多くなると、コンタクトレンズ表面への吸着が起こったり、毒性が高くなる等によって、人体に対して悪影響を及ぼす等、安全性の面で問題が生じる恐れがある。
【0029】
このように、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物においては、上述せる如き殺菌剤及び防腐剤からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の成分が含有せしめられるのであって、これにより、殺菌効果乃至は防腐効果が発揮されるようになるのである。
【0030】
一方、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物において、上記の殺菌剤及び/又は防腐剤と共に含有されるグルコサミン塩は、pH緩衝剤として知られているが、本発明においては、上述せる如き殺菌剤及び/又は防腐剤の殺菌効力乃至は防腐効力の更なる向上を図り得るもの、換言すれば殺菌助剤乃至は防腐助剤としての作用を奏するものであって、それら殺菌剤及び/又は防腐剤とグルコサミン塩との併用により、コンタクトレンズ用組成物の殺菌効果及び防腐効果が顕著に高められるようになるのである。この結果、殺菌剤及び/又は防腐剤の使用量を従来より低減せしめても、従来と同様若しくはそれ以上の殺菌乃至は防腐効果を得ることができる。
【0031】
そして、そのようなグルコサミン塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩など、従来から公知の各種のグルコサミン塩を挙げることが出来、それらのうちの少なくとも1種が適宜に選択されて用いられることとなるが、本発明においては、それらの中でも、グルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩が好ましく、またその中でも、特に、グルコサミン塩酸塩が、好適に用いられることとなる。
【0032】
また、かかるグルコサミン塩の含有量は、適宜に設定されるものの、その含有量が少な過ぎると、グルコサミン塩を添加することによって得られる効果が充分に発揮され得なくなるのに対し、逆に、多過ぎると、眼刺激を惹起せしめたり、レンズ規格に影響を及ぼす可能性があるところから、コンタクトレンズ用組成物中に、好ましくは0.01〜10w/w%、より好ましくは0.05〜1w/w%の範囲で含有されることが望ましい。
【0033】
ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物においては、前記した殺菌剤及び/又は防腐剤、グルコサミン塩に加えて、更に、多価アルコールが含有せしめられることが望ましく、これにより、グルコサミン塩にて向上された殺菌剤及び/又は防腐剤の殺菌効力乃至は防腐効力が、更に高められるようになる。従って、殺菌剤及び/又は防腐剤の使用量をより一層有利に抑えることが可能となり、以て眼に対する安全性が極めて高度に確保されるようになる。また、かかる多価アルコールの添加により、コンタクトレンズ用組成物の浸透圧が調整されたり、コンタクトレンズに対して湿潤性が付与されるといった利点も得られるようになる。
【0034】
なお、上記した多価アルコールは、1分子中に複数の水酸基を有するアルコールであって、眼科的に許容され得る公知のものの中から少なくとも1種若しくは2種以上が適宜に選択されることとなるが、その中でも、2〜3価のアルコール、具体的には、アルキレングリコール等の2価のアルコールや、グリセリン等の3価のアルコールが好適に用いられ、その中でも、殺菌効果乃至は防腐効果を高めるには、特に、プロピレングリコールが、好適に用いられることとなる。また、その分量は、適宜に設定されるものの、少な過ぎると、添加による効果を充分に得ることが出来なくなると共に、多過ぎると、眼刺激を惹起せしめたり、コンタクトレンズの規格に影響を及ぼす可能性があるところから、好ましくは0.05〜10w/w%、更に好ましくは0.1〜5w/w%の範囲で、設定されることが望ましい。
【0035】
而して、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物にあっては、上述の如き成分の他にも、更に必要に応じて、一般的なコンタクトレンズ用組成物において用いられている各種の添加成分のうちの1種乃至は2種以上が、適宜に選択されて、通常の添加割合において添加せしめられていても、何等差支えないのである。なお、そのような添加成分は、眼への安全性が高く、尚且つ眼科的に充分に許容され、しかもコンタクトレンズの形状又は物性に対する影響のないものであることが好ましく、また、そういった要件を満たす量的範囲内で用いられることが望ましいのであり、これによって、本発明の効果を何等阻害することなく、その添加成分に応じた各種の機能をコンタクトレンズ用組成物に対して有利に付与することが出来るのである。
【0036】
例えば、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物において、その粘度を適宜に調整するためには、粘稠化剤を添加せしめることが有用である。なお、そのような粘稠化剤としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、グルコン酸及びそれらの塩等の多糖類、ムコ多糖類、ヘテロ多糖類等の種々のガム類;ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等の合成有機高分子化合物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;スターチ誘導体等を挙げることが出来る。
【0037】
また、コンタクトレンズ用組成物にあっては、そのpH値や浸透圧が大きくなり過ぎても、逆に小さくなり過ぎても、眼に対して刺激を与えたり、眼障害を招来する恐れがあるところから、通常、そのようなコンタクトレンズ用組成物のpH値は、適当なpH調整剤やpH緩衝剤等の添加によって、5.3〜8.5程度、中でも7.0付近に調整されることが望ましい。なお、そのようなpHの調整のために用いられるpH調整剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、塩酸等が利用される一方、コンタクトレンズ用組成物のpHを前記した範囲に有効に且つ眼に対して安全な範囲に保つためのpH緩衝剤としては、従来から公知の各種のものの中から、適宜に選択されて、用いられることとなる。具体的には、例えば、リン酸、ホウ酸、カルボン酸、オキシカルボン酸等の酸や、その塩(例えば、ナトリウム塩等)、更にはGood−Bufferやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸水素ナトリウム等を、眼に対して安全であり、しかもコンタクトレンズに対する影響を少なくすることが出来るという理由から、挙げることが出来る。
【0038】
一方、浸透圧は、一般に、200〜450mOsm/kg程度の、実質的に生理的浸透圧に等しい範囲内となるように、浸透圧調整剤を添加せしめることによって調整されることが望ましい。なお、そのような浸透圧調整剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、糖アルコール、及び多価アルコールのエーテル又はそのエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物が、一般に、用いられることとなる。
【0039】
また、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズには、一般に、涙液からの汚れとして、カルシウム等が沈着乃至は吸着する可能性があることから、そのようなカルシウム等の沈着乃至は吸着を防止するべく、コンタクトレンズ用組成物には、キレート化剤も、また、有利に添加せしめられることとなる。そのようなキレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)等が挙げられる。
【0040】
さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物には、眼脂等の汚れの除去効果(洗浄効果)を有利に発揮させるために、公知の各種の界面活性剤が添加、含有せしめられていても良い。なお、界面活性剤としては、眼への安全性が高く、またコンタクトレンズへの影響がないものであれば、従来から公知のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤及びカチオン系界面活性剤の何れもが、採用され得るのであり、本発明の作用・効果を損なわない濃度において、有利に添加、含有せしめられる。
【0041】
そして、そのような界面活性剤の具体例としては、例えば、モノステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(例えば、ポリソルベート80)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、チロキサポールの如きポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等を挙げることが出来る。また、それらの中でも、特に、非イオン性界面活性剤として市販されている、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーたるプルロニック、プルロニックR、テトロニック、テトロニックR(以上、独国:BASF社製)、具体的には、ポロクサマー124、ポロクサマー188、ポロクサマー237、ポロクサマー338、ポロクサマー407、テトロニック904、テトロニック908、テトロニック1304、テトロニック1107や、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートたるポリソルベート80等を用いることが、望ましいのである。
【0042】
さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物には、眼に対して爽快感を与えたり、コンタクトレンズ装用時の異物感や痒みを解消すること等を目的として、ウイキョウ油、d−カンフル、dl−カンフル、クールミントNo.71212、ゲラニオール、ハッカ水、ハッカ油、ベルガモット油、d−ボルネオール、dl−ボルネオール(リュウノウ)、l−メントール、dl−メントール、ユーカリ油、リナロ−ル、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキシアミド(例えば、WS−3;高砂香料工業(株))等の清涼化剤を添加したり、ストレスやコンタクトレンズの装用等に起因する眼内の炎症を抑えるために、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム等の消炎剤を添加したり、この他にも、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン等の血管収縮剤;塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等のサルファ剤;クロモグリク酸、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム等の抗アレルギー剤;アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アスパルテーム、アマチャ、アマチャエキス、アマチャ末、アミノエチルスルホン酸、ウイキョウ、ウイキョウチンキ、ウイキョウ末、ウイキョウ油、エリスリトール、カンゾウ、カンゾウエキス、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、ブドウ糖等の嬌味剤;;フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム(活性型ビタミンB2)、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、ビタミンEアセテート、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール(ビタミンAパルミテート)等のビタミン類;アスパラギン酸及びその塩、アミノエチルスルホン酸、アルギニン、アラニン、リジン、グルタミン酸、ε−アミノカプロン酸等のアミノ酸類等の各種添加成分を、適宜、添加することが可能である。
【0043】
ところで、かかる本発明に従うコンタクトレンズ用組成物(ここでは、液剤組成物)は、上述の如き成分を、従来と同様に、適当な水系媒体中にそれぞれ適量において添加、含有せしめることにより、調製されることとなるのであるが、それに際して用いられる水系媒体としては、水道水や精製水、蒸留水等の水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、生体への安全性が高く、尚且つ眼科的に充分に許容され得るものである限り、何れも利用することが可能であることは、言うまでもないところである。
【0044】
また、上述の如き成分を含有せしめてなる、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物を調製するにあたっては、何等特殊な方法を必要とせず、通常の水溶液を調製する場合と同様に、水系媒体中に各成分を溶解させることにより、容易に得ることが出来る。
【0045】
そして、以上のようにして得られる本発明に従うコンタクトレンズ用組成物は、例えば、コンタクトレンズ用殺菌液や、コンタクトレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用保存液、コンタクトレンズ用すすぎ液、MPS等として、また更には、コンタクトレンズ装用時の点眼液として、有利に用いられることとなる。
【0046】
例えば、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物を、例えば、コンタクトレンズ用殺菌液として用い、コンタクトレンズの手入れを行うに際しては、先ず、眼から外したコンタクトレンズを、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物で満たした適当な容器中に、所定時間の間、浸漬せしめることにより、殺菌消毒を行うのである。そして、コンタクトレンズを再び装用する際には、該コンタクトレンズを液中より取り出し、洗浄した後、装用することとなるのであるが、かかる装用に際して、前記消毒したコンタクトレンズを生理食塩水等で濯ぐだけでもよい。更に、殺菌剤の濃度が低濃度とされて、眼に対する安全性が確保されている場合には、本液剤組成物に浸漬されたコンタクトレンズを取り出して、そのまま、直接に、眼に装用することも可能である。
【0047】
なお、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物の対象とするコンタクトレンズとしては、その種類が何等限定されるものではなく、例えば、非含水、低含水、高含水等の全てに分類されるソフトコンタクトレンズ、及びハードコンタクトレンズがその対象となり得るのであって、コンタクトレンズの材質等が、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物の適用に際して何等問われることはない。
【0048】
また、上記においては、使用時に、水系媒体を用いて希釈又は溶解する必要がなく、そのまま使用に供することが出来る液体形態のコンタクトレンズ用組成物(液剤組成物)について詳述してきたが、本発明に従うコンタクトレンズ用組成物は、水系媒体による希釈が必要な液体形態(濃縮タイプ)であっても、或いは水系媒体への溶解が必要な固体形態であっても良く、そのようなコンタクトレンズ用組成物を調製する場合には、水系媒体による希釈乃至は溶解の後、各種成分が上述せる如き濃度範囲となるように、各成分が所定の割合で配合されて、調製されることとなる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0050】
先ず、滅菌精製水に対して、所定の添加成分を、下記表1に示される各種割合においてそれぞれ添加せしめることにより、pHが7.3程度とされた各種コンタクトレンズ用組成物(実施例1,2、比較例1,2)を、それぞれ調製した。なお、かかるコンタクトレンズ用組成物の調製に際しては、非イオン性界面活性剤として、ポロクサマー237(BASF社製)を用いる一方、グルコサミン塩として、塩酸グルコサミンを用いた。また、キレート化剤としては、エデト酸二ナトリウムを用い、多価アルコールとして、プロピレングリコールを用いた。更に、殺菌剤及び/又は防腐剤としては、PHMBを用いた。その他、粘稠化剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製メトローズ60SH−4000)を、浸透圧調整剤としては、塩化ナトリウムを、更に、pH調整剤としては、水酸化ナトリウムを用いた。そして、得られた各コンタクトレンズ用組成物について、以下の殺菌効力試験を行い、得られた結果を、下記表1に併せ示した。
【0051】
−殺菌効果評価試験−
各コンタクトレンズ用組成物の各10.0mLを試験管に入れ、これに、供試菌として、フザリウム・ソラニ(F.sol:Fusarium solani ATCC 36031)、カンジダ・アルビカンス(C.al:Candida albicans IFO 1594)、シュードモナス・アエルギノーザ(Ps:Pseudomonas aeruginosa IFO 13275)、又はスタフィロコッカス・アウレウス(St:Staphylococcus aureus IFO 13276)を107〜108cfu/mL含む菌液の0.1mLを加えて攪拌し、最終的に106〜107cfu/mLの菌数を含む菌懸濁液を、それぞれ調製した。その後、それらを23℃で、4時間或いは20時間放置した後に、かかる菌懸濁液の0.5mLを取り出し、ペプトン食塩緩衝液で段階希釈し、フザリウム・ソラニは、サブロー・ブドウ糖寒天培地を用いた塗抹平板培養法により、カンジダ・アルビカンスは、サブロー・ブドウ糖寒天培地を、シュードモナス・アエルギノーザとスタフィロコッカス・アウレウスは、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地を、それぞれ用いた混釈平板培養法により生菌数を測定した。そして、この生菌数から、処理液1mL中の生菌数を算出した後、下記の計算式に従って、対数に換算した菌減少数(log reduction)を求めた。
菌減少数=log(調製直後の菌懸濁液1mL中の生菌数)
−log(処理後の菌懸濁液1mL中の生菌数)
【0052】
【表1】

【0053】
かかる表1の結果より明らかなように、塩酸グルコサミンの添加の有無が異なる実施例1と比較例1とを比べると、塩酸グルコサミンの添加によって、シュードモナス・アエルギノーザやフザリウム・ソラニ(20時間放置したもの)に対する殺菌効果が、顕著に高められることが、分かる。また同様に、実施例2と比較例2を比べると、塩酸グルコサミンの添加によって、スタフィロコッカス・アウレウスに対する殺菌効果が、顕著に高められていることが、分かる。更に、実施例1と比較例2とを比べると、塩酸グルコサミンとプロピレングリコールの併用によって、フザリウム・ソラニ(20時間放置したもの)やカンジダ・アルビカンス、スタフィロコッカス・アウレウスに対する殺菌効力が、極めて有利に向上せしめられることが、認められる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤及び/又は防腐剤と共に、グルコサミン塩を含有せしめてなることを特徴とするコンタクトレンズ用組成物。
【請求項2】
前記グルコサミン塩が、グルコサミン塩酸塩及び/又はグルコサミン硫酸塩である請求項1に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項3】
多価アルコールが、更に含有せしめられている請求項1又は請求項2に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項4】
前記多価アルコールとして、プロピレングリコールが用いられる請求項3に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項5】
粘稠化剤、pH緩衝剤、キレート化剤、清涼化剤、界面活性剤、浸透圧調整剤、血管収縮剤、ビタミン類、消炎剤及び嬌味剤のうちの少なくとも1種が、更に、含有せしめられている請求項1乃至請求項4の何れかに記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項6】
液体形態において調製されている請求項1乃至請求項5の何れかに記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項7】
前記殺菌剤及び/又は防腐剤が、PHMBであり、該PHMBが、0.1〜20ppmの割合で含有されている請求項6に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項8】
前記グルコサミン塩が、0.01〜10w/w%の割合で含有されている請求項6又は請求項7に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項9】
前記多価アルコールが、0.05〜10w/w%の割合で含有されている請求項6乃至請求項8の何れかに記載のコンタクトレンズ用組成物。


【公開番号】特開2006−170(P2006−170A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176773(P2004−176773)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】