説明

コンタクト

【課題】下面が導体パターンにはんだ接合されるはんだ接合部の対向する一対の辺に、導電性部材に圧接される一対の弾性接触部が連接されたコンタクトにおいて、エンボステープの窪みなどからの取り出しを容易にすること。
【解決手段】はんだ接合部2の対向する一対の辺には、上方に折り曲げられた弾性接触部3,4が連接されている。弾性接触部3,4の中間からは、水平方向に吸着部5,突出片6が延びている。吸着部5の上面は自動実装機の吸着ノズルのための吸着面となっている。吸着ノズルが吸着部5を押圧すると、その押圧力によって吸着部5が先端側から押し下げられることにより、その吸着部5に連接された弾性接触部3も内側へ変位する。また、吸着部5の下面が突出片6の先端を下方に押圧するため、その突出片6に連接された弾性接触部4も内側へ変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の取付対象面に表面実装されて、上記プリント配線基板と上記プリント配線基板とは別の導電性部材との間に挟み込まれることにより、上記プリント配線基板が備える導体パターンと上記導電性部材とを電気的に接続するコンタクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のコンタクトとして、下面がプリント配線基板の導体パターンにはんだ接合されるはんだ接合面となっているはんだ接合部と、上記はんだ接合部に連接されて上記導電性部材に近接する方向に折り曲がり、上記導電性部材に接触した際に弾性変形を伴って上記導電性部材に圧接する状態になる弾性接触部と、を備えたものが提案されている。このように構成されたコンタクトは、はんだ接合部の下面(はんだ接合面)をプリント配線基板の導体パターンにはんだ接合すると共に、そのはんだ接合部に連接された弾性接触部に上方から接地導体等の導電性部材を接触させることにより、その弾性接触部を弾性変形させて使用される。すると、上記弾性接触部はその弾性変形により上記導電性部材に圧接され、上記プリント配線基板の導体パターンと上記導電性部材とを電気的に接続することができる。
【0003】
また、この種のコンタクトでは、自動実装機の吸着ノズルで吸着することにより、プリント配線基板に自動実装する試みもなされている。そして、その場合に、はんだ接合部の対向する一対の辺に上記弾性接触部をそれぞれ設け、その一対の弾性接触部の間に露出した上記はんだ接合部の上面を上記吸着ノズルのための吸着面とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3338976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンボテープの窪みは、樹脂シートを真空成形もしくは熱プレスで絞り加工をすることによって成形されている。コンタクトなどの異型部品などは、部品を吸着する面が製品に対して小さいため上記窪み内でコンタクトのガタツキが少なくなるように窪みの寸法公差と部品の寸法公差を考慮した設計がされている。
【0006】
ところが、エンボステープの窪みをコンタクトのガタツキが少なくなるように設計すると、コンタクトをその窪みから取り出し難くなる場合がある。そこで、本発明は、エンボステープの窪みなどからの容易に取り出すことのできるコンタクトを提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達するためになされた本発明は、金属の薄板を折り曲げて形成されており、使用時にはプリント配線板の取付対象面に表面実装されて、上記プリント配線板と上記プリント配線板とは別の導電性部材との間に挟み込まれることにより、上記プリント配線板が備える導体パターンと上記導電性部材とを電気的に接続するコンタクトであって、下面が上記導体パターンにはんだ接合されるはんだ接合面となっているはんだ接合部と、上記はんだ接合部の対向する一対の辺に連接されて上記導電性部材に近接する方向にそれぞれ折り曲がり、上記導電性部材に接触した際に弾性変形を伴って上記導電性部材に圧接する状態になる一対の弾性接触部と、少なくとも一方の上記弾性接触部の、上記折り曲げられた折り曲げ部と上記導電性部材側の先端との間に連接されて上記はんだ接合部の上方まで突出し、少なくとも上記はんだ接合部の上方に配設される部分が、上記一方の弾性接触部が弾性変形していないときは上記はんだ接合部の下面と平行に配設されることにより自動実装機の吸着ノズルのための吸着面とされる吸着部と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明のコンタクトは、金属の薄板を折り曲げて形成されており、はんだ接合部の下面(はんだ接合面)がプリント配線基板の導体パターンにはんだ接合される。また、そのはんだ接合部の対向する一対の辺に連接されて導電性部材に近接する方向にそれぞれ折り曲がった一対の弾性接触部は、上記導電性部材に接触した際に弾性変形を伴って上記導電性部材に圧接する状態になる。そこで、本発明のコンタクトは、上記各弾性接触部の上方から上記導電性部材(例えば、接地導体,シールド板等)を接触させて当該各弾性接触部を弾性変形させて使用される。すると、上記各弾性接触部はその弾性変形により上記導電性部材にそれぞれ圧接され、上記プリント配線基板の導体パターンと上記導電性部材とを電気的に接続することができる。
【0009】
また、吸着部は、少なくとも一方の上記弾性接触部の、上記折り曲げられた折り曲げ部と上記導電性部材側の先端との間に連接されて上記はんだ接合部の上方まで突出している。そして、その吸着部の、少なくとも上記はんだ接合部の上方に配設される部分は、上記一方の弾性接触部が弾性変形していないときは上記はんだ接合部の下面と平行に配設されることにより自動実装機の吸着ノズルのための吸着面とされる。このため、その吸着部に上記吸着ノズルの先端を当接させて下方に押圧すると、当該吸着部が上記はんだ接合部の上面に向かって変位し、それに応じて、その吸着部が連接された上記弾性接触部は上記折り曲げ部を支点として上記はんだ接合部の上方に向かって変位する。すると、上記一対の弾性接触部の先端同士の間隔が狭まり、当該コンタクトのエンボステープの窪みなどからの取り出しが容易になる。
【0010】
なお、上記折り曲げ部のバネ定数など、コンタクトを構成する金属の剛性や各部の寸法、或いは吸着ノズルの先端と吸着部との間の摩擦係数等によっては、吸着部を上記のように押圧することで一対の弾性接触部先端の間隔が却って広がる場合も想定されるが、そのような場合は、上記吸着ノズルの吸着力を高めればよい。上記吸着ノズルの吸着力を高めれば、その吸着ノズルの先端に対して上記吸着部がずれ難くなるため、その吸着ノズルの先端と一体に上記吸着部を下方へ移動させることで良好に上記一対の弾性接触部の間隔を狭めることができる。
【0011】
また、本発明において、他方の上記弾性接触部の、上記折り曲げられた折り曲げ部と上記導電性部材側の先端との間に連接されて上記はんだ接合部の上方まで突出し、上記はんだ接合部の上方に配設される部分が、上記吸着ノズルによって上記吸着部が下方に押圧される際に当該吸着部または上記吸着ノズルに押圧されることによって下方に押圧される突出片を、更に備えてもよい。
【0012】
この場合、他方の上記弾性接触部に連接された突出片は、上記吸着ノズルによって上記吸着部が下方に押圧される際に、当該吸着部または上記吸着ノズルに押圧されることによって下方に押圧される。このため、その突出片が連接された上記弾性接触部も上記折り曲げ部を支点として上記はんだ接合部の上方に向かって変位するので、上記一対の弾性接触部の先端同士の間隔が両側から狭まり、エンボステープの窪みなどからの取り出しが一層容易になる。
【0013】
そして、その場合更に、上記吸着部及び上記突出片は、少なくとも上記吸着ノズルによって上記吸着部が下方に押圧される際には互いに係合し、少なくとも上記各弾性接触部の先端が上記導電性部材にそれぞれ接触して弾性変形する際には互いに隔離する係合部を、それぞれ備えてもよい。この場合、上記吸着ノズルによって上記吸着部が下方に押圧される際には、上記吸着部及び上記突出片に設けられた係合部が互いに係合する。このため、上記吸着ノズルによって下方に押圧することで上記一対の弾性接触部同士の間隔を狭めることが一層確実に実行できる。また、上記各弾性接触部の先端が上記導電性部材にそれぞれ接触して弾性変形する際には、上記吸着部及び上記突出片に設けられた係合部が互いに隔離する。このため、その係合部を設けたことによって上記各弾性接触部の上記導電性部材に対する圧接状態等に影響が及ぶのも抑制することができる。
【0014】
また、この場合更に、上記各係合部は、上記各弾性接触部が弾性変形していないときは互いに隔離してもよく、その場合、上記係合部を設けたことによって上記各弾性接触部の上記導電性部材に対する圧接状態等に影響が及ぶのを一層良好に抑制することができる。
【0015】
また、本発明において、上記吸着部は、上記各弾性接触部の先端が上記導電性部材にそれぞれ接触して弾性変形したとき、上記導電性部材に接触してもよい。この場合、上記吸着部が上記導電性部材に接触することで上記導電性部材と本発明のコンタクトとの接点を増やすことができ、上記プリント配線基板の導体パターンと上記導電性部材とを一層良好に電気的に接続することができる。
【0016】
また、本発明において、上記吸着部は、当該コンタクトの重心の真上まで突出していてもよい。この場合、当該コンタクトの重心の真上から上記吸着ノズルによる吸着を行うことができ、その吸着ノズルによる当該コンタクトの移動を一層バランスよく円滑に行うことができる。
【0017】
また、本発明において、1枚の金属の薄板を折り曲げて形成されたことを更なる特徴としてもよい。この場合、コンタクトの製造工程を簡略化して、その製造コストを一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用されたコンタクトの構成を表す平面図(A)、左側面図(B)、正面図(C)、右側面図(D)、底面図(E)、左上斜視図(F)、右上斜視図(G)である。
【図2】そのコンタクトの取り出し時の挙動を表す説明図である。
【図3】そのコンタクトの接地導体圧接時の挙動を表す説明図である。
【図4】そのコンタクトの他の使用方法を表す説明図である。
【図5】そのコンタクトの吸着部及び突出片の変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図6】上記コンタクトの吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図7】上記コンタクトの吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図8】上記コンタクトの吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図9】上記コンタクトの吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図10】上記コンタクトの吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図11】その吸着部及び突出片の挙動を表す説明図である。
【図12】図6の吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図13】図7の吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図14】図8の吸着部及び突出片の更なる変形例の構成を表す平面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、右上斜視図(D)である。
【図15】図1のコンタクトの更なる変形例の構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明が適用されたコンタクト1の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図、(E)は底面図、(F)は左上斜視図、(G)は右上斜視図である。なお、このコンタクト1は、バネ性金属(例えばリン青銅,ベリリウム銅,SUS等)からなる1枚の薄板を、所定形状に打ち抜くと共に折り曲げて形成されている。
【0021】
図1に示すように、このコンタクト1は、下面2Aが後述のはんだ接合面となっている略矩形のはんだ接合部2を備えており、そのはんだ接合部2の対向する一対の辺には弾性接触部3,4が連接されている。弾性接触部3,4は、正面視アーチ状に例えば60°〜90°の角度で上方に折り曲げられた折り曲げ部3A,4Aを介してはんだ接合部2に連接されており、その弾性接触部3,4の先端3B,4Bも外側(はんだ接合部2の真上から離れる方向)に向かって正面視アーチ状にカールしている。先端3B,4Bが何らかの物体によって下方に押圧されたとき、弾性接触部3,4は、折り曲げ部3A,4Aを中心に互いに離れる方向(以下外側ともいう)に弾性変形して、当該物体に圧接する状態になる。
【0022】
また、弾性接触部3の幅方向中心には、弾性接触部3の先端3B近傍からはんだ接合部2の一部まで至る間の上記薄板を打ち抜いてはんだ接合部2と平行な矩形板状に配置することによって吸着部5が形成されている。なお、この吸着部5の先端は、折り曲げ部4Aの真上まで達しており、吸着部5の上面は自動実装機(図示省略)の吸着ノズル83(図2参照)のための吸着面となっている。また、弾性接触部4の吸着部5との対向位置には、その対向位置より下方の弾性接触部4を打ち抜いてはんだ接合部2と平行な矩形板状に配置することによって突出片6が形成されている。この突出片6は、吸着部5の下方で、その吸着部5の先端と部分的に重なる位置まで達している。
【0023】
このように構成されたコンタクト1は、図2(A)に示すように、エンボステープ81の窪み81Aに収納されて自動実装機にかけられ、その自動実装機の吸着ノズル83の吸引によって窪み81Aから取り出される。なお、窪み81Aは、図2(A)に示すように、はんだ接合部2及び一対の弾性接触部3,4の外形に沿った内壁面を有している。
【0024】
図2(B)は、その吸引時に、吸着部5に吸着ノズル83の先端を当接させて下方に押圧した場合のコンタクト1の変形状態を表している。図2(B)に示すように、はんだ接合部2の中心の真上から吸着ノズル83が吸着部5を押圧すると、その押圧力によって吸着部5が先端側から押し下げられることにより、その吸着部5に連接された弾性接触部3も折り曲げ部3Aを支点として起き上がるようにして内側へ(すなわちはんだ接合部2の上面に向かって)変位する。また、吸着部5の下面が突出片6の先端を下方に押圧するため、その突出片6に連接された弾性接触部4も折り曲げ部4Aを支点として起き上がるようにして内側へ(すなわちはんだ接合部2の上面に向かって)変位する。このため、弾性接触部3,4の先端3B,4B同士の間隔が狭まり、弾性接触部3,4が窪み81Aの内壁面から離れるので、コンタクト1の窪み81Aからの取り出しが容易になる。
【0025】
なお、上記折り曲げ部3A,4Aのバネ定数など、コンタクト1を構成する金属の剛性や各部の寸法、或いは吸着ノズル83の先端と吸着部5との間の摩擦係数等によっては、吸着部5を上記のように押圧すると弾性接触部3が外側に逃げるなどして先端3B,4Bの間隔が却って広がる場合も想定されるが、そのような場合は、吸着ノズル83の吸着力を高めればよい。吸着ノズル83の吸着力を高めれば、その吸着ノズル83の先端に対して吸着部5がずれ難くなるため、その吸着ノズル83の先端と一体に吸着部5を下方へ移動させることで良好に上記一対の弾性接触部3,4の間隔を狭めることができる。
【0026】
また、コンタクト1では、吸着部5がはんだ接合部2の表面よりも上方に配設されるため、はんだ接合部2の表面を直接吸着する場合に比べて吸着ノズル83が上下方向に移動しなければならない移動量が減り、作業を効率化することができる。更に、コンタクト1は、吸着部5における吸着ノズル83による吸着位置がコンタクト1の重心の真上を通って突出されている。このため、吸着ノズル83によるコンタクト1の移動をバランスよく円滑に行うことができる。
【0027】
次に、このようにしてエンボステープ81の窪み81Aから取り出されたコンタクト1は、吸着ノズル83の移動によって例えばプリント配線基板91の表面に載置され、図3(A)に示すように導電性部材の一例としての接地導体92(シールド板や筐体等であってもよい)との間に挟みこんで使用される。なお、吸着ノズル83に吸着されたコンタクト1は、プリント配線基板91の導体パターン(図示省略)の表面に配置された上で、はんだ接合部2の下面2Aがプリント配線基板91の導体パターンにはんだ接合される。
【0028】
図3(A)に示すように接地導体92から弾性接触部3,4に対して負荷がかかっていない状態から、図3(B)に示すように接地導体92をプリント配線基板91に向けて圧接すると、弾性接触部3,4は互いに離れる方向に外側に弾性変形し、その弾性変形により先端3B,4Bが接地導体92に圧接される。このため、プリント配線基板91の導体パターンと接地導体92とを良好に電気的に接続することができる。
【0029】
そして、図3(C)に示すように接地導体92をプリント配線基板91に向けて更に圧接すると、吸着部5,突出片6の先端も接地導体92に接触する。このため、接地導体92とコンタクト1との接点を増やして、プリント配線基板91の導体パターンと接地導体92とを一層良好に電気的に接続することができる。
【0030】
また、吸着部5,突出片6は、他の部材を固定する固定手段としても機能する。例えば、図4(A)に示すように、弾性接触部3,4を指で押し広げて吸着部5と突出片6との間に大きな隙間を作れば、その隙間からケーブル94等を挿入することができる。その後、弾性接触部3,4から指を離してコンタクト1を元の形状に復元させれば、図4(B)に示すように、はんだ接合部2,弾性接触部3,弾性接触部4,吸着部5,突出片6によって形成された枠によってケーブル94を保持することができる。
【0031】
また、図4(C)に示すように、弾性接触部3,4を指で押し広げて吸着部5と突出片6との間に大きな隙間を作れば、その隙間からシールドケース95の端部等を挿入することができる。その後、弾性接触部3,4から指を離してコンタクト1を元の形状に復元させれば、図4(D)に示すように、シールドケース95の端部を吸着部5と突出片6とによって両面から挟み付けて固定することができる。なお、このシールドケース95は、例えば、下方が開口した直方体状の箱形に構成され、接地されることによってその内部の回路にノイズが侵入したり、ノイズが外部に漏れたりするのを防止する周知のものである。また、コンタクト1は、溶接などにより複数の部品を組み合わせて作成することもできるが、本実施の形態のコンタクト1は1枚の金属の薄板を折り曲げて形成されているので、製造工程を簡略化して、その製造コストを一層低減することができる。
【0032】
[他の実施の形態]
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種種の形態で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、吸着部5,突出片6の先端をそれぞれ単純な矩形に構成して上下に重ね合わせているが、吸着部,突出片の先端は次のように構成してもよい。なお、以下に示す吸着部,突出片は、吸着部5,突出片6と同様に弾性接触部3,4に連接されるので、吸着部,突出片の構成についてのみ図示して説明する。
【0033】
図5は、吸着部5,突出片6の変形例としての吸着部25,突出片26の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は右上斜視図である。図5に示すように、この吸着部25と突出片26とは高さを揃えて同一平面状に配設されている。また、本例では、吸着部25は弾性接触部4に、突出片26は弾性接触部3に、それぞれ連接されている。
【0034】
吸着部25の先端中央には、凸字状に突出した突部25Aが形成され、突出片26の先端中央には、凹字状に切り欠かれた切欠部26Aが形成されている。コンタクトが弾性変形していない状態では、突部25Aは切欠部26Aに嵌合している。突部25Aはコンタクトの重心の真上に配設され、図5(A)に二点鎖線で示したように、その突部25Aに吸着ノズル83のノズル穴83Aが配設される。また、吸着ノズル83の外周83Bは、吸着部25と突出片26との両方に架かっている。このため、吸着ノズル83を下降させると、その吸着ノズル83によって吸着部25と突出片26との双方を同時に押下することができ、前述のコンタクト1と同様の作用・効果が生じる。なお、図5(A)では、外形が円柱状の吸着ノズル83を想定しているが、その他の形状の吸着ノズル83を使用してもよいことはいうまでもない。
【0035】
図6は、吸着部5,突出片6の更なる変形例としての吸着部35,突出片36の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は右上斜視図である。本例では、コンタクト1と同様に、吸着部35が弾性接触部3に、突出片36が弾性接触部4に、それぞれ連接され、両者の上下方向の位置関係も吸着部5,突出片6と同様である。
【0036】
突出片36は、吸着部35よりも狭い幅に構成され、その先端には幅方向両側に矩形の突部36Aが形成されることによって全体としてT字状に構成されている。また、吸着部35の先端には、上記一対の突部36Aに上側から係合する一対のフック35Aが形成されている。なお、この突部36A,フック35Aが係合部に相当する。
【0037】
このように構成された吸着部35,突出片36では、前述のように吸着部35が吸着ノズル83によって下方に押圧されると、突部36Aとフック35Aとが係合しているので弾性接触部3,4の間隔を一層良好に狭めることができる。このため、金属の剛性や各部の寸法等に関わらず、吸着ノズル83の吸着力等を調整しなくても確実に弾性接触部3、4の間隔を狭めて、窪み81Aからの取り出しを容易にすることができる。
【0038】
また、弾性接触部3,4の先端3B,4Bが接地導体92に押圧されると、吸着部35の方が突出片36よりも長いためフック35Aの方が突部36Aよりも早く上方へ移動し、フック35Aと突部36Aとの係合が解除される。このため、フック35A,突部36Aを設けたことによって弾性接触部3,4の接地導体92に対する圧接状態に影響が及ぶのも抑制することができる。
【0039】
図7は、吸着部5,突出片6の更なる変形例としての吸着部45,突出片46の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は右上斜視図である。本例でも、コンタクト1と同様に、吸着部45が弾性接触部3に、突出片46が弾性接触部4に、それぞれ連接され、両者の上下方向の位置関係も吸着部5,突出片6と同様である。また、吸着部45と突出片46との幅もほぼ同じである。
【0040】
吸着部45の先端近傍には、その吸着部45の幅方向両側から矩形の切欠部45Aが形成されている。また、突出片46の先端には、上記一対の切欠部45Aに下側から係合する一対のフック46Aが形成されている。なお、この切欠部45A,フック46Aが係合部に相当する。このように構成された吸着部45,突出片46でも、切欠部45Aとフック46Aとが係合しているので、吸着ノズル83による押圧時に弾性接触部3,4の間隔を一層良好に狭めることができる。
【0041】
また、弾性接触部3,4の先端3B,4Bが接地導体92に押圧されると、吸着部45の方が突出片46よりも長いため切欠部45Aの方がフック46Aよりも早く上方へ移動し、切欠部45Aとフック46Aとの係合が解除される。このため、切欠部45A,フック46Aを設けたことによって弾性接触部3,4の接地導体92に対する圧接状態に影響が及ぶのも抑制することができる。
【0042】
図8は、吸着部5,突出片6の更なる変形例としての吸着部55,突出片56の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は右上斜視図である。本例でも、コンタクト1と同様に、吸着部55が弾性接触部3に、突出片56が弾性接触部4に、それぞれ連接され、両者の上下方向の位置関係も吸着部5,突出片6と同様である。また、吸着部55と突出片56との幅もほぼ同じである。
【0043】
吸着部55の先端近傍には、矩形の穴部55Aが形成されている。また、突出片56の先端には、穴部55Aに下側からフック56Aが形成されている。なお、この穴部55A,フック56Aが係合部に相当する。このように構成された吸着部55,突出片56でも、穴部55Aとフック56Aとが係合しているので、吸着ノズル83による押圧時に弾性接触部3,4の間隔を一層良好に狭めることができる。
【0044】
また、弾性接触部3,4の先端3B,4Bが接地導体92に押圧されると、吸着部55の方が突出片56よりも長いため穴部55Aの方がフック56Aよりも早く上方へ移動し、穴部55Aとフック56Aとの係合が解除される。このため、穴部55A,フック56Aを設けたことによって弾性接触部3,4の接地導体92に対する圧接状態に影響が及ぶのも抑制することができる。
【0045】
図9は、吸着部5,突出片6の更なる変形例としての吸着部65,突出片66の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は右上斜視図である。本例でも、コンタクト1と同様に、吸着部65が弾性接触部3に、突出片66が弾性接触部4に、それぞれ連接されている。また、吸着部65と突出片66との幅もほぼ同じであるが、吸着部65の方が突出片66よりも下方に配設されている。
【0046】
吸着部65の先端中央には、凹字状に切り欠かれた切欠部65Aが形成されている。突出片66の先端中央には、切欠部65Aに上方から挿入されて切欠部65Aの下方で弾性接触部3の方向に水平に曲がった正面視略S字状の係合部66Aが形成されている。なお、この切欠部65A,係合部66Aが係合部に相当する。このように構成された吸着部65,突出片66では、吸着部65が下方に押圧されると切欠部65Aの内壁面がその下方に突出した係合部66Aと係合するので、吸着ノズル83による押圧時に弾性接触部3,4の間隔を一層良好に狭めることができる。
【0047】
また、弾性接触部3,4の先端3B,4Bが接地導体92に押圧されると、吸着部65の方が突出片66よりも長いため切欠部65Aの方が係合部66Aよりも早く上方へ移動するので、切欠部65Aと係合部66Aとは係合しない。このため、切欠部65A,係合部66Aを設けたことによって弾性接触部3,4の接地導体92に対する圧接状態に影響が及ぶのも抑制することができる。
【0048】
図10は、吸着部5,突出片6の更なる変形例としての吸着部75,突出片76の構成を表す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は右上斜視図である。本例でも、コンタクト1と同様に、吸着部75が弾性接触部3に、突出片76が弾性接触部4に、それぞれ連接され、両者の上下方向の位置関係も吸着部5,突出片6と同様である。また、吸着部75と突出片76との幅もほぼ同じである。
【0049】
吸着部75の先端中央には、凸字状に突出した突部75Aが形成されている。また、突出片76の先端近傍の、突部75Aに下方から対向する位置には、その突部75Aより少し広い幅の矩形の穴部76Aが形成されている。なお、この突部75A,穴部76Aが係合部に相当する。このように構成された吸着部75,突出片76では、弾性接触部3,4が弾性変形していないときは図11(A)に示すように吸着部75,突出片76が全く係合していないが、吸着部75が下方に押圧されると、図11(B)に示すように突部75Aが穴部76Aに係合する。このため、図6〜図9の例と同様に、吸着ノズル83による押圧時に弾性接触部3,4の間隔を一層良好に狭めることができる。
【0050】
また、弾性接触部3,4の先端3B,4Bが接地導体92に押圧されると、吸着部75の先端は図11(A)における時計方向に揺動するので、突部75Aは穴部76Aに係合しない。また、吸着部75の方が突出片76よりも長いため突部75Aの方が穴部76Aよりも早く上方へ移動するので、突部75Aが穴部76Aに係合することは一層良好に抑制される。更に、前述のように、先端3B,4Bが接地導体92に押圧される前から、弾性接触部3,4が弾性変形していなければ吸着部75,突出片76は全く係合していない。このため、突部75A,穴部76Aを設けたことによって弾性接触部3,4の接地導体92に対する圧接状態に影響が及ぶのも一層良好に抑制することができる。
【0051】
なお、このように弾性接触部3,4が弾性変形していないときには互いに隔離する係合部は、図6〜図8に示した例においてフック35A等を短くすることによっても実現できる。なお、以下の例では、フックの長さ以外は図6〜図8と同様に構成されているので、図6〜図8で使用した符号に100を加えた符号を付すことによって一部の構成の説明を省略する。
【0052】
図12に示す吸着部135では、フック135Aが、図6に示した吸着部35のフック35Aに比べて短く構成され、弾性接触部3,4が弾性変形していないときには突出片136の突部136Aに係合していない。吸着部135が下方に押圧されると、フック135Aが突部136Aに係合して前述のような作用・効果が生じる。
【0053】
図13に示す突出片146では、フック146Aが、図7に示した突出片46のフック46Aに比べて短く構成され、弾性接触部3,4が弾性変形していないときには吸着部145の切欠部145Aに係合していない。吸着部145が下方に押圧されると、フック146Aが切欠部145Aに係合して前述のような作用・効果が生じる。
【0054】
図14に示す突出片156では、フック156Aが、図8に示した突出片56のフック56Aに比べて短く構成され、弾性接触部3,4が弾性変形していないときには吸着部155の穴部155Aに係合していない。吸着部155が下方に押圧されると、フック156Aが穴部155Aに係合して前述のような作用・効果が生じる。
【0055】
また、このように吸着部5と突出片6とを連動させる構成としては、上記のような係合部を設ける構成以外にも、吸着部5と突出片6との当接面の摩擦係数を高くすることも考えられる。その摩擦係数を高くする方法としては、金属に対する表面加工や、テープ等摩擦係数の高い部材の貼着または摩擦係数を高める物質の塗布などが考えられる。また、吸着部5と突出片6との当接面に窪みと凸とを設けて互いに係合し合うようにしてもよい。
【0056】
更に、コンタクト1では、吸着部5,突出片6よりも下方の弾性接触部3,4を打ち抜いてその吸着部5,突出片6を構成しているが、図15に示すコンタクト201のように、吸着部205,突出片206よりも上方の弾性接触部203,204を打ち抜いてその吸着部205,突出片206を構成してもよい。なお、図15の例では、吸着部205,突出片206を構成するために弾性接触部203,204の先端203B,204Bまで上記薄板を打ち抜いているが、吸着部205,突出片206の位置を低くすることによって先端203B,204Bは残してもよい。また更に、本発明において、突出片は必ずしも必要なく、片方の弾性接触部からのみ吸着部が突出しているだけであっても、その吸着部が下方に押下されることによって当該吸着部を備えた弾性接触部が内側に変位し、窪み81Aからの取り出しが容易になる。
【符号の説明】
【0057】
1,201…コンタクト
2,202…接合部
3,4,203,204…弾性接触部
3A,4A,203A,204A…折り曲げ部
3B,4B,203B,204B…先端
5,25,35,45,55,65,75,135,145,155,205…吸着部
6,26,36,46,56,66,76,136,146,156,206…突出片
25A,36A,75A,136A…突部
26A,45A,65A,145A…切欠部
35A,46A,56A,135A,146A,156A…フック
55A,76A,155A…穴部
66A…係合部
81…エンボステープ
81A…窪み
83…吸着ノズル
91…プリント配線基板
92…接地導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の薄板を折り曲げて形成されており、使用時にはプリント配線板の取付対象面に表面実装されて、上記プリント配線板と上記プリント配線板とは別の導電性部材との間に挟み込まれることにより、上記プリント配線板が備える導体パターンと上記導電性部材とを電気的に接続するコンタクトであって、
下面が上記導体パターンにはんだ接合されるはんだ接合面となっているはんだ接合部と、
上記はんだ接合部の対向する一対の辺に連接されて上記導電性部材に近接する方向にそれぞれ折り曲がり、上記導電性部材に接触した際に弾性変形を伴って上記導電性部材に圧接する状態になる一対の弾性接触部と、
少なくとも一方の上記弾性接触部の、上記折り曲げられた折り曲げ部と上記導電性部材側の先端との間に連接されて上記はんだ接合部の上方まで突出し、少なくとも上記はんだ接合部の上方に配設される部分が、上記一方の弾性接触部が弾性変形していないときは上記はんだ接合部の下面と平行に配設されることにより自動実装機の吸着ノズルのための吸着面とされる吸着部と、
を備えたことを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
他方の上記弾性接触部の、上記折り曲げられた折り曲げ部と上記導電性部材側の先端との間に連接されて上記はんだ接合部の上方まで突出し、上記はんだ接合部の上方に配設される部分が、上記吸着ノズルによって上記吸着部が下方に押圧される際に当該吸着部または上記吸着ノズルに押圧されることによって下方に押圧される突出片を、
更に備えたことを特徴とする請求項1記載のコンタクト。
【請求項3】
上記吸着部及び上記突出片は、少なくとも上記吸着ノズルによって上記吸着部が下方に押圧される際には互いに係合し、少なくとも上記各弾性接触部の先端が上記導電性部材にそれぞれ接触して弾性変形する際には互いに隔離する係合部を、
それぞれ備えたことを特徴とする請求項2記載のコンタクト。
【請求項4】
上記各係合部は、上記各弾性接触部が弾性変形していないときは互いに隔離することを特徴とする請求項3記載のコンタクト。
【請求項5】
上記吸着部は、上記各弾性接触部の先端が上記導電性部材にそれぞれ接触して弾性変形したとき、上記導電性部材に接触することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンタクト。
【請求項6】
上記吸着部は、当該コンタクトの重心の真上まで突出したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンタクト。
【請求項7】
1枚の金属の薄板を折り曲げて形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンタクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−100670(P2011−100670A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255570(P2009−255570)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】