説明

コンターマップ作成装置

【課題】コンターマップを短時間で容易に作成できるようにする。
【解決手段】表示部2aに表示される地図上に現在地を特定できるGPS受信手段2と騒音を計測するための騒音計3aと演算・制御手段4とが一体に備えられており、演算・制御手段4は、表示部2aに表示される地図上の任意の位置に計測点kを登録でき、騒音計3aにより計測した騒音計測値を地図上の計測点kに記憶でき、更にコンター解析プログラムとコンターマッピングプログラムを備えて地図上の複数の計測点kに記憶された騒音計測値から騒音計測値の大きさの分布を求めてコンターマップを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンターマップを短時間で容易に作成できるようにしたコンターマップ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地形図の等高線や天気図の等圧線のように等値線(コンター)で結んだコンターマップが知られている。従来、コンターマップを作成するには、地図上において計測を行う多数の計測点を碁盤目状に設定し、計測者は計測器を持って計測点に移動し、各計測点において計測器により標高或いは気圧を計測し、各計測点で計測した多数の計測値に基づいて標高或いは気圧が同一となる位置を求めて線で結ぶことによりコンターマップを作成していた。
【0003】
一方、近年では、例えば飛行場、原子力発電所、火力発電所、ゴミ処理設備、高層ビル、各種工場、航空機、鉄道、自動車等の交通等が環境に与える騒音、振動、温度、湿度、風力、ガス成分等の環境値を把握するために、環境値を計測して環境値のコンターマップを作成することが行われている。
【0004】
コンターマップの作成において、例えば騒音のコンターマップを作成する場合には、従来、まず計測しようとする碁盤目状の多数の計測点を地図上に特定し、騒音計と地図を携帯した計測者が地図上に設定された計測点の1つに移動し、この計測点において騒音計を用いて計測を行い、この時の騒音計測値を地図上に記録する、或いはデータ帳等に記録し、続いて、計測者は地図上に特定された別の計測点まで移動して前記と同様の計測と騒音計測値を記録する作業を繰り返し、その後このようにして得られた各計測点における騒音計測値のデータをコンピュータに入力して、騒音値の分布を求め、騒音値のコンターマップを作成するようにしていた。
【0005】
尚、音圧レベルを測定し、人間の聴覚に基づく補正を加えて表示する騒音計において、該騒音計から測定基準点までの距離を計測するためのスケールを、騒音計の本体部分に取り付けた測距機能を備えた騒音計が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】実開平03−061534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、コンターマップを作成するには、計測器と地図を携帯した計測者が、地図上に多数特定された計測点を順次回って計測と計測値の記録とを行うようにしているため、計測者が地図を見ながら計測点を特定して移動するのに時間が掛る問題があり、更に、得られた記録のデータを事務所等に設置したコンピュータに入力してコンターマップを作成するようにしているため、コンターマップの作成作業に時間が掛るという問題を有していた。又、従来は、計測者が特定した場所と異なる場所を計測点と勘違いして計測を行ってしまったり、計測値の記録ミスを生じたり、コンピュータへの入力ミスを生じる等の可能性を有していた。又、特許文献1に示される騒音計を用いてコンターマップを作成する場合においても上記と全く同様の問題を有していた。更に、特許文献1に示される騒音計は、騒音の計測と測定基準点(発音体)との間の距離の計測を同時に行うようにしたものであるが、測定基準点(発音体)の位置が予め分かっている場合のみに適用できるものである。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、コンターマップを短時間で容易に作成できるようにしたコンターマップ作成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示部に表示される地図上に現在地を特定できるGPS受信手段と、環境値を計測するための環境値計測手段と、演算・制御手段と、が一体に備えられ、
前記演算・制御手段は、前記表示部に表示される地図上の任意の位置に計測点を登録でき、環境値計測手段により計測した環境値を地図上の計測点に記憶でき、更にコンター解析プログラムとコンターマッピングプログラムを備えて地図上の複数の計測点に記憶された環境値から環境値の大きさの分布を求めてコンターマップを作成するようにしたことを特徴とするコンターマップ作成装置、に係るものである。
【0009】
上記コンターマップ作成装置において、演算・制御手段が、計測位置ナビゲートプログラムを備えており、地図上に予め計測点を登録でき、登録した計測点に計測者を誘導するようにしていることは好ましい。
【0010】
又、上記コンターマップ作成装置において、演算・制御手段が、地図上に表示された任意の位置で環境値の計測を行うと、その計測点を地図上に登録すると同時にその計測値を当該計測点に記憶するようにしていることは好ましい。
【0011】
又、上記コンターマップ作成装置において、演算・制御手段が、ピーク位置解析プログラムを備えて環境値がピーク値を示す位置を地図上に特定できるようにしていることは好ましい。
【0012】
又、上記コンターマップ作成装置において、演算・制御手段が、作成したコンターマップを前記表示部に表示するようにしていることは好ましい。
【0013】
又、上記コンターマップ作成装置において、演算・制御手段が、データを送信する送信部を備えている
ことは好ましい。
【0014】
又、上記コンターマップ作成装置において、前記環境値計測手段は、騒音計、振動計、温度計、湿度計、風力計、ガス分析計の少なくとも1つを備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンターマップ作成装置によれば、表示部に表示される地図上に現在地を特定できるGPS受信手段と、環境値を計測するための環境値計測手段と、演算・制御手段と、が一体に備えられ、前記演算・制御手段は、前記表示部に表示される地図上の任意の位置に計測点を登録でき、環境値計測手段により計測した環境値を地図上の計測点に記憶でき、更にコンター解析プログラムとコンターマッピングプログラムを備えて地図上の複数の計測点に記憶された環境値から環境値の大きさの分布を求めてコンターマップを作成するようにしたので、従来のような各計測点で計測した環境値の記録或いは、環境値のコンピュータへの入力といった繁雑な作業を省略して、コンターマップを短時間で容易に作成することができ、しかも表示部に表示される地図上にコンターマップを表示できるので、現場等でのコンターマップの利便性が高められるという優れた効果を奏し得る。
【0016】
更に、演算・制御手段が、計測位置ナビゲートプログラムを備えて地図上に登録した計測点の位置に計測者を誘導するようにしているので、計測者は最短距離で計測点に移動することができ計測作業を能率的に行える効果がある。
更に、演算・制御手段が、地図上に表示された任意の位置で環境値の計測を行うと、その計測点を地図上に登録すると同時にその計測値を当該計測点に記憶するようにしているので、計測者は任意の位置で計測できるため、計測作業を更に容易にできる効果がある。
【0017】
又、ピーク位置解析プログラムを備えて環境値がピーク値を示す位置を地図上に特定できるようにしているので、環境問題の発生源を特定できる効果がある。
【0018】
又、演算・制御手段は、コンターマップ、ピーク値を示す位置及び記録部に記録された計測データ等のデータを送信する送信部を備えているので、得られたコンターマップ、ピーク値を示す位置及び計測データ等のデータを他の計測場所のデータと比較する等のように利用範囲を拡大できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明を実施する騒音のコンターマップ作成装置の一例を示す正面図、図2は図1のブロック図であり、コンターマップ作成装置1は、表示部2aに表示される地図上に現在地Xを特定できるGPS受信手段2と、環境値の1つである騒音を計測するための環境値計測手段3としての騒音計3aと、演算・制御手段4とを一体に備えた構成を有している。
【0021】
演算・制御手段4は、GPS受信手段2による現在地Xを特定できるようにした地図を表示部2aに表示するようになっており、更に、チャック5を介して着脱可能に取り付けられた騒音計3aからの騒音計測値が入力されるようになっている。
【0022】
演算・制御手段4は、計測位置ナビゲートプログラムを搭載した演算部6を有しており、該演算部6は騒音を計測しようとする場所をGPS受信手段2によって図3に示すように表示部2aに表示するようになっており、更に、表示部2aに表示された計測場所の地図上に例えば碁盤目状の計測点kを登録して表示できるようになっている。計測点kの間隔は任意に設定することができ、更に、計測を行う計測点kの範囲を任意に設定できるようになっている。又、前記演算部6は、計測位置ナビゲートプログラムにより地図上に登録された計測点kを効率的に回れるように各計測点kにおける計測の順番を設定し、計測者を各計測点kへ順次誘導するようになっている。
【0023】
又、演算部6は、前記したように計測点kを予め登録することなく、地図上に表示された任意の位置で環境値の計測を行うと、その計測点kを地図上に登録すると同時にその計測値を地図上に記憶するようになっていてもよい。
【0024】
前記演算部6には、計測点kコンター解析プログラム、コンターマッピングプログラムが搭載されており、前記騒音計3aにより各計測点kで計測した騒音計測値は地図上の各計測点kに記憶されるようになっていると共に、各計測点kで計測した騒音計測値からコンターマップを作成するようになっており、作成したコンターマップMを図3に示すように、表示部2aの測定場所の地図上に表示でるようになっている。更に、演算部6にはピーク位置解析プログラムが搭載されており、前記コンターマップMにおける騒音のピーク値を示す位置Pを特定できるようになっている。
【0025】
又、演算・制御手段4には記録部7が備えてあり、記録部7には、地図データ、計測点(計測位置)、騒音計測値、解析結果等が記録されるようになっている。
【0026】
更に、演算・制御手段4には送信部8が設けてあり、前記演算部6で作成したコンターマップM、ピーク値を示す位置P及び記録部7に記録された計測データ等のデータを送信できるようになっている。
【0027】
又、演算・制御手段4には操作キー9が備えられており、演算、記録、表示、送信等の種々の操作を指示できるようになっている。
【0028】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0029】
コンターマップ作成装置1により騒音のコンターマップを作成するには、図4に操作手順を示すように、先ず、騒音を計測しようとする場所を表示部2aに表示させ、更に、表示部2aに表示された計測場所の地図上に図3に示すように碁盤目状の計測点kを登録する。
【0030】
演算・制御手段4は、演算部6に搭載された計測位置ナビゲートプログラムにより、計測者が計測点kを効率的に回れるように誘導するようになっているので、前記コンターマップ作成装置1を携帯した計測者は、その誘導に従って最短距離で計測点kに移動することができる。計測点kに到着すると計測者は騒音計3aにより騒音の計測を行う。すると、計測された騒音計測値は地図上の当該計測点kに記憶されると共に、記録部7に記録される。
【0031】
更に、計測者はコンターマップ作成装置1を携帯して表示部2aに表示される次の計測点kへ誘導に従って移動し、次の計測点kに到着すると騒音計3aによる騒音の計測を行う。すると、計測された騒音計測値は地図上の当該計測点kに記憶されると共に、記録部7に記録される。上記操作を繰り返して登録された全ての計測点kでの計測を行って計測作業を終了する。
【0032】
又、前記したように計測点kを予め登録することなく、地図上に表示された任意の位置で環境値の計測を行うと、その計測点kが地図上に登録されると同時にその計測値が当該計測点kに記憶されるようにしてもよく、この場合には、計測者は登録された計測点kに正確に移動することなく任意の位置で計測できるため、計測作業を容易にすることができる。このように任意の位置で計測を行う場合には、予め設定しておいた概略の計測位置と概略の計測点数を計測することで計測作業を終了する。
【0033】
計測作業が終了すると、操作キー9を操作することによってコンターマップの作成を指示する。すると、演算・制御手段4は演算部6に搭載されたコンター解析プログラムとコンターマッピングプログラムにより地図上の複数の計測点kに記憶された騒音検出値から騒音の大きさの分布を求めてコンターマップを作成する。作成したコンターマップMは図3に示すように前記表示部2aの地図上に表示することができる。従って、現場等において簡単にコンターマップを作成して表示できるので、コンターマップの利便性を高めることかできる。
【0034】
更に、演算・制御手段4は演算部6に搭載したピーク位置解析プログラムにより騒音がピーク値を示す位置Pを特定できるので、騒音問題(環境問題)の発生源を特定することができる。
【0035】
又、演算・制御手段4は作成したコンターマップM、ピーク値を示す位置P及び記録部7に記録されたデータ等のデータを送信する送信部8を備えているので、コンターマップM、ピーク値を示す位置P、記録部7に記録されたデータ等のデータを他の計測場所のデータと比較する等のように利用範囲を拡大することができる。
【0036】
尚、上記においては、コンターマップ作成装置1に騒音計3aを備えて騒音のコンターマップを作成する場合について説明したが、図2に示すように、前記騒音計3aに代えて、チャック5を介して振動計3b、温度計3c、湿度計3d、風力計3e、ガス分析計3f等を同時に接続ないしは順次接続することにより、1つのコンターマップ作成装置1で異なる種類の環境値によるコンターマップを前記と同様にして作成することができる。
【0037】
又、演算・制御手段4に複数のチャック5を備えて、異なる複数の環境値計測手段3を前記チャック5に接続し、環境値計測手段3による計測を切り換えて行うと、各計測点kにおける複数の異なる環境値の計測とそれに応じたコンターマップの作成を行うことができる。
【0038】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を実施する騒音のコンターマップ作成装置の一例を示す正面図である。
【図2】図1のブロック図である。
【図3】表示部に表示した測定場所の地図上に測定点を登録した状態と、コンターマップを表示した状態とを示す表示部の説明図である。
【図4】本発明の操作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 コンターマップ作成装置
2 GPS受信手段
2a 表示部
3 環境値計測手段
3a 騒音計
3b 振動計
3c 温度計
3d 湿度計
3e 風力計
3f ガス分析計
4 演算・制御手段
8 送信部
M コンターマップ
P ピーク値を示す位置
X 現在地
k 計測点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に表示される地図上に現在地を特定できるGPS受信手段と、環境値を計測するための環境値計測手段と、演算・制御手段と、が一体に備えられ、
前記演算・制御手段は、前記表示部に表示される地図上の任意の位置に計測点を登録でき、環境値計測手段により計測した環境値を地図上の計測点に記憶でき、更にコンター解析プログラムとコンターマッピングプログラムを備えて地図上の複数の計測点に記憶された環境値から環境値の大きさの分布を求めてコンターマップを作成するようにしたことを特徴とするコンターマップ作成装置。
【請求項2】
演算・制御手段は、計測位置ナビゲートプログラムを備えており、地図上に予め計測点を登録でき、登録した計測点に計測者を誘導するようにしている請求項1に記載のコンターマップ作成装置。
【請求項3】
演算・制御手段は、地図上に表示された任意の位置で環境値の計測を行うと、その計測点を地図上に登録すると同時にその計測値を当該計測点に記憶するようにしている請求項1に記載のコンターマップ作成装置。
【請求項4】
演算・制御手段は、ピーク位置解析プログラムを備えて環境値がピーク値を示す位置を地図上に特定できるようにしている請求項1〜3のいずれか1つに記載のコンターマップ作成装置。
【請求項5】
演算・制御手段は、作成したコンターマップを前記表示部に表示するようにしている請求項1〜4のいずれか1つに記載のコンターマップ作成装置。
【請求項6】
演算・制御手段は、データを送信する送信部を備えている請求項1〜5のいずれか1つに記載のコンターマップ作成装置。
【請求項7】
前記環境値計測手段は、騒音計、振動計、温度計、湿度計、風力計、ガス分析計の少なくとも1つを有する請求項1〜6のいずれか1つに記載のコンターマップ作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−300338(P2009−300338A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157304(P2008−157304)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】