説明

コンテナ搭載型作業車

【課題】 車台上に積み下ろし可能に搭載されたコンテナの積み替えによって1台のシャーシで多様な作業に対応することができるとともに、コンテナ内のタンク容量を大きくとることができ、専用の吸引車や洗浄車と比較しても遜色ない高い能力を発揮できる作業車を提供すること。
【解決手段】 コンテナを車台上に積み下ろし可能な荷役機構を備え、該コンテナ内に収容された装置を用いて各種作業を行う作業車であって、前記車台にはPTO出力軸に連結されて駆動する油圧ポンプが備えられ、前記コンテナ内には、タンクと、該タンク内に内容物を取り入れる若しくは該タンク内の内容物を排出するための作業装置と、これら作業装置を駆動するための油圧モータが収容され、該油圧モータと前記油圧ポンプは、着脱可能な油送パイプを介して連結されているコンテナ搭載型作業車とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンテナ搭載型作業車に関し、より詳しくは車台上に積み下ろし可能に搭載されたコンテナ内に作業装置が収容され、1台で多様な作業に対応することができる作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、汚泥等をタンク内に吸引回収するための吸引装置を備えた吸引車や、ビル壁面等に高圧水を噴射して洗浄するための高圧水噴射装置を備えた高圧洗浄車など、車台上に各種の作業装置を搭載した作業車が存在している。
このような従来の作業車は、吸引車であれば吸引作業、洗浄車であれば洗浄作業といったように1種類の作業にしか対応することができないため、多種類の作業を行う場合には、作業内容に応じた多種類の作業車を備える必要がある。
しかしながら、多種類の作業を取り扱うものの個々の作業車の稼働率は低いという場合には、常に稼動していない車両が多くあるようになって全体としての稼働率が非常に低くなり、また多くの車両を抱えることで維持コストも高くなるという問題点があった。
【0003】
一方、車台上に積み下ろし可能に搭載されたコンテナ内に各種の装置を収容したコンテナ着脱式災害救援車が下記特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示されたコンテナ着脱式災害救援車は、コンテナを積み替えることによって、1台のシャーシで様々な災害救助活動に対応できる車両を提供することができる点において優れたものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1には、例えば図19においてコンテナ内に吸引装置とタンクを収容する構成が記載されているものの、コンテナ内に収容された吸引装置を具体的にどのようにして駆動するのか(駆動源をどうするか)については開示されていない。
【0005】
吸引車における吸引装置の駆動源のとり方については、以下の方法が考えられる。
第一の方法は、従来の一般的な吸引車において採用されている方法であり、具体的には、車両のPTO出力軸とブロワ(吸引装置)の回転軸をベルト掛けにより連結し、PTO出力軸の回転駆動力をそのまま利用して吸引装置を駆動させる方法である。
しかしながら、この方法では、吸引装置とPTO出力軸とはベルトで一体に連結され、その連結を簡単に解除することはできない。そのため、コンテナを積み下ろし可能な構造をもつ作業車においてかかる方法を採用しようとすると、吸引装置はコンテナ外に設置し、タンクのみをコンテナに収容する構造を採らざるを得ない。しかし、このような構造では、コンテナを取り替えても単にタンクが取り替えられるに過ぎないから、1台のシャーシで複数種類の作業に対応可能な車両とすることはできない。
【0006】
第二の方法は、車両駆動用の駆動源とは別に、吸引装置駆動のための独立した駆動源を用意し、この独立駆動源(エンジン)と共にこれと直結されたブロワ(吸引装置)をコンテナ内に収容する方法である。
この方法によれば、車台に搭載されているコンテナを、他の作業のための装置(例えばポンプ)を収容したコンテナと取り替えることで、1台のシャーシで複数種類の作業に対応可能な車両とすることができる。
しかしながら、この方法では、コンテナ内に駆動源(エンジン)が収容されるために、タンクの容量を小さくせざるを得なくなり、結果として、回収可能な容量の小さい吸引車や供給可能な洗浄水の量が少ない洗浄車となり、専用の吸引車や洗浄車と比較して能力が低い作業車となってしまう。
【0007】
上記したように、コンテナの積み替えによって多種の作業に対応可能な作業車とする為には、駆動源の問題を解決しなければならないが、特許文献1に記載の発明ではこの問題を解決するための手段が何ら提示されていない。
【0008】
【特許文献1】特開平10−59052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した問題点を解決すべくなされたものであって、車台上に積み下ろし可能に搭載されたコンテナの積み替えによって1台のシャーシで多様な作業に対応することができるとともに、コンテナ内のタンク容量を大きくとることができ、専用の吸引車や洗浄車と比較しても遜色ない高い能力を発揮できる作業車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、コンテナを車台上に積み下ろし可能な荷役機構を備え、該コンテナ内に収容された装置を用いて各種作業を行う作業車であって、前記車台にはPTO出力軸に連結されて駆動する油圧ポンプが備えられ、前記コンテナ内には、タンクと、該タンク内に内容物を取り入れる若しくは該タンク内の内容物を排出するための作業装置と、これら作業装置を駆動するための油圧モータが収容され、該油圧モータと前記油圧ポンプは、着脱可能な油送パイプを介して連結されていることを特徴とするコンテナ搭載型作業車に関する。
請求項2に係る発明は、前記作業装置が、汚泥を吸引して前記タンク内に回収するための汚泥吸引装置であることを特徴とする請求項1記載のコンテナ搭載型作業車に関する。
請求項3に係る発明は、前記作業装置が、前記タンク内に収容された洗浄水を高圧で噴射する高圧洗浄装置であることを特徴とする請求項1記載のコンテナ搭載型作業車に関する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、コンテナ内に作業装置を駆動する油圧モータを設け、該油圧モータをPTOと連結された油圧ポンプから油送パイプを介して供給される油圧により駆動できる構成としたので、以下のような効果を奏する。
油送パイプを外して油圧ポンプと油圧モータの連結を解除するだけで、簡単に異なる種類の作業装置を収容したコンテナとの積み替えを行うことができ、積み替え完了後には、再び油送パイプを連結するだけで異なる種類の作業を行うことが可能となり、1台のシャーシで多様な作業に対応することができる作業車となる。
また、コンテナ内にエンジンのような大型の駆動源を設ける必要が無いため、コンテナ内のタンク容量を大きくとることができ、専用の吸引車や洗浄車と比較しても遜色ない高い能力を発揮できる作業車となる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、コンテナの積み替えによって容易に別の種類の作業車へと変更可能であるとともに、専用の汚泥吸引車と同等の能力を有する汚泥吸引車となる。
請求項3に係る発明によれば、コンテナの積み替えによって容易に別の種類の作業車へと変更可能であるとともに、専用の高圧洗浄車と同等の能力を有する高圧洗浄車となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るコンテナ搭載型作業車の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る作業車は、コンテナ内に、タンクと、該タンク内に内容物を取り入れる若しくは該タンク内の内容物を排出するための作業装置を収容し、コンテナ内に収容される作業装置を利用して各種作業を行うことができる車両である。
以下、コンテナ内に収容される作業装置として、汚泥吸引装置を収容した汚泥吸引車(第一実施形態)と、高圧洗浄装置を収容した高圧洗浄車(第二実施形態)を例に挙げて本発明に係る作業車について説明する。但し、本発明に係る作業車には、汚泥吸引車及び高圧洗浄車だけでなく、給水車、散水車、放水車、道路清掃車などの他の作業車両も含まれるものである。
【0014】
図1は本発明に係る作業車の第一実施形態を示す図であり、図2は本発明に係る作業車の第二実施形態を示す図であって、それぞれ(a)は平面図、(b)は正面図である。
本発明に係る作業車は、車台(1)上に、コンテナ(2)と、このコンテナ(2)を積み下ろしするための荷役機構(3)とを備えている。
【0015】
荷役機構(3)は、基端部が車台(1)上に回動可能に枢支されるとともに先端部がコンテナ(2)の前端上部に係脱自在に係止されたL字状のアーム(31)と、先端部がアーム(31)に固定されて伸長動作によりアーム(31)を後方に向けて回動させる油圧シリンダとを備えている。
【0016】
図3は、荷役機構(3)の動作を示す概略図である。
図示の如く、油圧シリンダ(32)を伸長させることにより、アーム(31)が後方に回動され(図3(a)参照)、それに伴ってコンテナ(2)はその前端上部が持ち上げられながら後方へと移動され、最後に車台(1)から下ろされる(図3(b)参照)。
この荷役機構(3)の動作を助けるために、車台(1)の後端上部及びコンテナ(2)の後端底部には、それぞれローラ(4)が取り付けられている。
【0017】
車台(1)には、車両駆動用エンジンの出力を取り出すためのPTO(パワーテイクオフ)(5)と、PTO(5)の出力軸に直結されて駆動する油圧ポンプ(6)が備えられている。
油圧ポンプ(6)は、上記した荷役機構(3)の油圧シリンダ(32)と接続されており、油圧シリンダ(32)を駆動するための油を送給する。つまり、油圧ポンプ(6)は、荷役機構(3)とコンテナ内に収容された作業装置の両方の駆動源として用いられる。
【0018】
コンテナ(2)には、タンク(7)と共に各種作業を行うための作業装置が収容されている。
作業装置は、タンク(7)内に内容物を取り入れる若しくは該タンク内の内容物を排出することができる装置であれば特に限定されないが、第一実施形態の作業車では汚泥を吸引してタンク内に回収するための汚泥吸引装置とされ、第二実施形態の作業車ではタンク内に収容された洗浄水を高圧で外部に噴射する高圧洗浄装置とされている。
【0019】
図4は、第一実施形態の作業車において、コンテナ(2)内部に収容される汚泥吸引装置の構成を示すフローシートである。
汚泥吸引装置は、直列に接続された2台のルーツブロワーからなる真空発生装置(8)と、真空発生装置(8)の吸引側に接続されたミストキャッチャー兼消音器(3次キャッチャー兼4次キャッチャー)(9)とを備えており、真空発生装置(8)の駆動により発生する吸引力によってタンク(7)内を負圧にして汚泥を該タンク内に回収することができる。
また、図中の符号(10)は負荷解放弁、(11)はフローゲージ、(12)は逆止弁、(13)はプレッシャブレーカ、(14)はバルブであり、バルブ(14)を切り替えることによって、空気の流れを実線矢印の方向から破線矢印の方向へと変化させて、タンク(7)内に空気を圧送することもできる。
【0020】
コンテナ(2)の内部には、上記した作業装置(汚泥吸引装置)とタンク(7)に加えて、真空発生装置(8)を駆動する油圧モータ(15)が収容されている。
油圧モータ(15)は、前述した如く車台(1)に取り付けられた油圧ポンプ(6)と油送パイプ(図示略)を介して連結されており、油送パイプを介して油圧ポンプ(6)から送給される油によって駆動される。
【0021】
これにより、コンテナ内にエンジンのような大型の駆動源を設ける必要が無くなるため、コンテナ内に収容されるタンク(7)の容量を大きくとることができ、専用の汚泥吸引車と比較しても遜色ない高い能力を発揮できる作業車となる。
【0022】
油圧ポンプ(6)と油圧モータ(15)を連結する油送パイプは着脱可能となっており、油送パイプの連結を外すことによって、コンテナ(2)内の作業装置と車台(1)に取り付けられた油圧モータ(15)が連結されていない状態となるため、コンテナ(2)を車台(1)から取り外すことが可能となる。
そして、同じく油圧モータ(15)から送給される油で駆動可能な他の異なる種類の作業装置を収容したコンテナ(例えば第二実施形態で用いられるコンテナ)を車台(1)に積み替えて、積み替え完了後にこの作業装置と油圧モータ(15)を油送パイプで連結することにより、異なる種類の作業(例えば洗浄作業)を行うことが可能となる。
【0023】
図5は、第二実施形態の作業車において、コンテナ(2)内部に収容される高圧洗浄装置の構成を示すフローシートである。
高圧洗浄装置は、プランジャーポンプ(16)と、プランジャーポンプ(16)の出力側に連結されたアンロードバルブ(17)と、水タンク(7)の底部とプランジャーポンプ(16)の入力側を連結するストレーナ(18)と、ホースを巻回したホースリール(19)と、ホースリール(19)に巻回されたホースの先端に取り付けられた高圧噴射ガン(20)と、水タンク(7)と高圧噴射ガン(20)の間に介装されるとともにアンロードバルブ(17)から送られる空気の圧力を調節することにより高圧噴射ガン(20)から噴射される水の圧力を調節する圧力操作盤(21)を備えている。
【0024】
コンテナ(2)の内部には、上記した作業装置(高圧洗浄装置)とタンク(7)に加えて、プランジャーポンプ(16)を駆動する油圧モータ(15)が収容されている。
油圧モータ(15)は、前述した如く車台(1)に取り付けられた油圧ポンプ(6)と油送パイプ(図示略)を介して連結されており、油送パイプを介して油圧ポンプ(6)から送給される油によって駆動される。
【0025】
これにより、コンテナ内にエンジンのような大型の駆動源を設ける必要が無くなるため、コンテナ内に収容される水タンク(7)の容量を大きくとることができ、専用の高圧洗浄車と比較しても遜色ない高い能力を発揮できる作業車となる。
【0026】
油圧ポンプ(6)と油圧モータ(15)を連結する油送パイプは着脱可能となっており、油送パイプの連結を外すことによって、コンテナ(2)内の作業装置と車台(1)に取り付けられた油圧モータ(15)が連結されていない状態となるため、コンテナ(2)を車台(1)から取り外すことが可能となる。
そして、同じく油圧モータ(15)から送給される油で駆動可能な他の異なる種類の作業装置を収容したコンテナ(例えば第一実施形態で用いられるコンテナ)を車台(1)に積み替えて、積み替え完了後にこの作業装置と油圧モータ(15)を油送パイプで連結することにより、異なる種類の作業(例えば吸引作業)を行うことが可能となる。
【0027】
上記したように、本発明に係る作業車によれば、油送パイプを付け替える簡単な作業で車台上のコンテナを異なる作業装置を収容したコンテナへと積み替えることができ、1台で多様な作業に対応することができる作業車となる。
尚、以上の説明では、コンテナ内に収容される作業装置として、汚泥吸引装置(第一実施形態)と高圧洗浄装置(第二実施形態)を示したが、本発明においてコンテナ内に収容される作業装置は油圧モータにより駆動可能な作業装置であればよく、これらに限定されるものではないことは既述の通りである。
すなわち、油圧モータにより駆動可能なポンプやルーツブロワーなどにより作動される給水装置、散水装置、放水装置、道路清掃装置等をコンテナ内に収容することができ、これにより、本発明に係る作業車を給水車、散水車、放水車、道路清掃車等として利用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、1台でのシャーシで汚泥吸引車、高圧洗浄車、給水車、散水車、放水車、道路清掃車等の多用途の利用が可能な作業車として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る作業車の第一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る作業車の第二実施形態を示す図である。
【図3】荷役機構の動作を示す概略図である。
【図4】第一実施形態の作業車において、コンテナ内部に収容される汚泥吸引装置の構成を示すフローシートである。
【図5】第二実施形態の作業車において、コンテナ内部に収容される高圧洗浄装置の構成を示すフローシートである。
【符号の説明】
【0030】
1 車台
2 コンテナ
3 荷役機構
5 PTO
6 油圧ポンプ
7 タンク(水タンク)
15 油圧モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナを車台上に積み下ろし可能な荷役機構を備え、該コンテナ内に収容された装置を用いて各種作業を行う作業車であって、前記車台にはPTO出力軸に連結されて駆動する油圧ポンプが備えられ、前記コンテナ内には、タンクと、該タンク内に内容物を取り入れる若しくは該タンク内の内容物を排出するための作業装置と、これら作業装置を駆動するための油圧モータが収容され、該油圧モータと前記油圧ポンプは、着脱可能な油送パイプを介して連結されていることを特徴とするコンテナ搭載型作業車。
【請求項2】
前記作業装置が、汚泥を吸引して前記タンク内に回収するための汚泥吸引装置であることを特徴とする請求項1記載のコンテナ搭載型作業車。
【請求項3】
前記作業装置が、前記タンク内に収容された洗浄水を高圧で噴射する高圧洗浄装置であることを特徴とする請求項1記載のコンテナ搭載型作業車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−273118(P2006−273118A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95316(P2005−95316)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000165343)兼松エンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】