説明

コンテンツデータ再生装置

【課題】コンテンツデータの再生中断位置からの再生でマイクロプロセッサの負荷を軽減して開始タイミングを早期化し、記憶容量を抑制する。
【解決手段】外部記憶装置の識別情報を保持する識別情報記憶手段E1と、新装着の外部記憶装置の識別情報を保持された識別情報と比較する識別情報比較手段E2を備える。新装着の外部記憶装置のファイルシステム情報からシステム特定値を生成する特定値生成手段E3と、外部記憶装置のシステム特定値を保持する特定値記憶手段E4と、新装着の外部記憶装置のシステム特定値を保持されたシステム特定値と比較する特定値比較手段E5を備える。再生中断位置情報を保持しておく再生中断位置記憶手段E6を備える。識別情報比較手段E2の比較結果と特定値比較手段E5の比較結果がともに一致する時、再生中断位置情報に従って再生を開始する再生開始制御手段E7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り外し可能な外部記憶装置を装着して、その外部記憶装置に記憶されているコンテンツデータを読み出し再生を行うコンテンツデータ再生装置にかかわり、特には、電源オフ前または外部記憶装置取り外し前に再生していたコンテンツデータについて、電源オンまたは外部記憶装置装着に伴い前の再生中断位置からのコンテンツデータの再生開始(再生再開)を行う処理において、マイクロプロセッサの負荷を軽減し、記憶容量を縮小化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有線・無線にかかわらず、取り外しが可能な外部記憶装置(例えばUSB フラッシュメモリやディジタル・オーディオプレーヤなど)を装着し、それらの外部記憶装置に記憶されているオーディオデータや映像データなどのコンテンツデータを読み込み、再生するコンテンツデータ再生装置が近年増加している。このようなコンテンツデータ再生装置において、外部記憶装置のコンテンツデータを再生している途中で、装置の電源が一度オフされると、再生処理が中断される。その後に電源が再度オンになった場合、電源オフ前に再生していたコンテンツデータの中断された位置(再生中断位置)から再生を開始させる(再生再開)。このような方式が一般的な仕様として認識されつつある。この方式を採用するコンテンツデータ再生装置にあっては、外部記憶装置が取り外し可能となっているため、電源オフ中に別の外部記憶装置に取り換えられたり、あるいは一度取り外してその内容が変更され、再度装着されるといった可能性がある。このような状態が発生すると、電源オフ時の再生中断位置の情報を装置側が保持していても、そのコンテンツデータが存在しなくなって再生再開ができなくなったり、あるいはそのコンテンツデータは存在していてもその他のデータの存在や位置が変わってしまうために、ユーザが再生再開から別のコンテンツデータに切り替えようとしたときに、正しく切り替えられない可能性がある。
【0003】
そこで、常に再生開始前に外部記憶装置のファイルシステムのデータベースを登録し、その後に可能であれば再生再開を行う方法や、あるいは、再生開始が遅くなるのを抑制するために、再生再開しようとするコンテンツデータと同一階層にあるデータ/フォルダからデータベース登録を行うことで、ユーザの期待に沿った動作が速やかになるようにする方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、外部記憶装置が装着されたときは常にデータベース登録を行う。データベース登録は、コンテンツデータ再生装置が管理するデータベースに必要な情報(ファイルパス、ファイルに含まれるタグ情報、フォルダ名等)を外部記憶装置から読み出し、マイクロプロセッサの記憶領域に保持することで実現される。マイクロプロセッサは、外部記憶装置が装着されたことを検出すると、外部記憶装置から識別情報を読み出し、識別情報が最終使用の外部記憶装置の識別情報と同一であるかどうかを判定する。同一でない場合は、外部記憶装置のファイルシステムを解析し、階層構造を構成するフォルダおよびファイルの情報を収集し、収集したフォルダの名称、ファイルの名称、タグ情報をデータベースに登録し、再生を行う。フォルダおよびファイルの情報には、ルートから各階層のフォルダ、ファイルまでのパス、フォルダ名、楽曲ファイルのタグ情報等が含まれる。さらにタグ情報には、アーティスト名、アルバム名、タイトル名等が含まれる。
【0005】
一方、識別情報が同一であれば、再生中断位置からコンテンツデータの再生を開始するとともに、この再生開始と並行して部分的優先のデータベース登録の処理を行う。部分的優先のデータベース登録というのは、再生開始の対象となったフォルダと同一の階層に含まれファイルの情報を最初にデータベースに登録し、それが終わると、他のファイルについて最上位の階層から最下位の階層に向けてそれぞれの情報をデータベースに登録するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-293383号公報(段落[0010]〜[0016]、[0035]〜[0064]、特に[0061]〜[0064]、第3−8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
データベース登録で取り扱う情報量は非常に大きいものである。近時は外部記憶装置の記憶容量が膨大なものとなり、それに伴って外部記憶装置に記憶されるコンテンツデータのデータ量、フォルダ数、ファイル数も膨大なものとなっている。ちなみに、図16は従来技術におけるデータベースの構造を示す。
【0008】
新装着の外部記憶装置の記憶内容に変化がないことの確認に際して、データベース検索を行うことは、そのデータ量、フォルダ数、ファイル数が膨大なものであることから、マイクロプロセッサの負荷を増加させ、処理時間を増大化させる。
【0009】
そして同じ設計思想の中では、新装着の外部記憶装置が最終使用の外部記憶装置と同じもので、新装着の外部記憶装置の記憶内容に変化がない場合の再生開始に際してもデータベース登録を行うようになっており、この点でも、マイクロプロセッサの負荷を増加させ、処理時間を増大化させ、その上、記憶容量も増大化させている。
【0010】
以上の相乗(データベース検索とデータベース登録)の結果、元と同じコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)のタイミングが相当に遅くなり、使い勝手が非常に悪いものとなっている(ユーザーフレンドリー性の欠落)。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みて創作したものであり、電源オフ前または外部記憶装置取り外し前に再生していたコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)を行う処理において、従来、外部記憶装置を装着するたびに行われていたデータベース検索およびデータベース登録の処理についてはこれを不採用とし、新たな方式を構築することにより、マイクロプロセッサにかかるソフトウェア的負荷を軽減して、元と同じコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)のタイミングを早期化するとともに、記憶容量の抑制を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、次のような手段を講じることにより上記の課題を解決する。(1),(2),(3)…等の括弧付き数字は〔特許請求の範囲〕の請求項番号と呼応している。
【0013】
(1)取り外し後、再び装着された外部記憶装置について、それが最終使用の外部記憶装置であるかの確認、そしてそれが最終使用の外部記憶装置であるとして、さらにその記憶内容に変化がないかの確認を行わせる。この2つの確認を行わせるに当たり、本発明では、次の2つをポイントとする。
【0014】
1つは、その外部記憶装置を他の外部記憶装置と区別するための外部記憶装置の識別情報αの確認を用いることである。
【0015】
もう1つは、データベース管理に代えて、外部記憶装置が有しているファイルシステムの情報βからそのファイルシステムの状態を表す特定値――これを「システム特定値」とする――を生成することとして、そのシステム特定値δの確認を用いることとする。
【0016】
すなわち、外部記憶装置の識別情報αの確認とシステム特定値δの確認との組み合わせをもって、新たに装着された外部記憶装置について、それが最終使用の外部記憶装置であるかの確認とその記憶内容に変化がないかの確認とに利用する。
【0017】
ここで、システム特定値δは、データベースとは趣旨を大きく異にしている。データベースの場合、ファイルパス、ファイルに含まれるタグ情報、フォルダ名等などがあり、タグ情報にはアーティスト名、アルバム名、曲名、ジャンル名、演奏時間等々が含まれている。個々の項目を記述するのに要する情報量が大きく、項目数も多く、しかもデータ全体が階層構造を呈しているので、データベース全体に要する情報量は非常に大きなものとなる。これに対して、システム特定値δは、ファイルシステムの情報βの比較的簡単な解析から得られる比較的単純な構造のデータで、情報量の少ないデータである。この情報量の少ないシステム特定値δは、その生成および検索においてマイクロプロセッサにかけるソフトウェア負荷が小さなものですむ。また、生成によって得られたシステム特定値δを格納しておく記憶手段の容量も、データベースの場合に比べて充分に小さなものですむ。
【0018】
そこで、本発明では以下のように構成する。図1を用いて説明する。図1(a)は概略の構成を表し、図1(b)は機能を表す。
【0019】
本発明では、図1(a)に示すように、識別情報記憶手段E1と、識別情報比較手段E2と、特定値生成手段E3と、特定値記憶手段E4と、特定値比較手段E5と、再生中断位置記憶手段E6と、再生開始制御手段E7とを主要な構成要素とする。以下、コンテンツデータ再生装置から取り外された最終使用の外部記憶装置にかかわる構成要素にはサフィックス(suffix:添え字)の“n-1”を添え、新装着の外部記憶装置にかかわる構成要素にはサフィックスの“n”を添えることとする。
【0020】
識別情報記憶手段E1は、新装着の外部記憶装置Enの識別情報αをその取り外し後も保持しておくものである(αn-1)。識別情報比較手段E2は、新装着の外部記憶装置Enの識別情報αnを識別情報記憶手段E1に保持されている最終使用の外部記憶装置En-1の識別情報αn-1と比較し、その比較結果H1を再生開始制御手段E7に渡す機能を有するものである。
【0021】
特定値生成手段E3は、新たに装着された外部記憶装置Enが有しているファイルシステムの情報βnからそのファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成するものとして構成されている。
【0022】
特定値記憶手段E4は、装着された外部記憶装置のシステム特定値δをその取り外し後も保持しておくものである(δn-1)。特定値比較手段E5は、特定値生成手段E3によって生成された新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnを特定値記憶手段E4に保持されている最終使用の外部記憶装置En-1のシステム特定値δn-1と比較し、その比較結果H2を再生開始制御手段E7に渡す機能を有するものである。
【0023】
再生中断位置記憶手段E6は、最終使用の外部記憶装置En-1について、そのコンテンツデータの再生が中断したときの再生中断位置情報λn-1を保持しておくものである。
【0024】
再生開始制御手段E7は、識別情報比較手段E2による比較結果H1と特定値比較手段E5による比較結果H2を受け取って、比較結果H1が一致を示すとき(識別情報αnが識別情報αn-1に一致するとき)は、最終使用の外部記憶装置En-1が再び装着されたと判定し、比較結果H2が一致を示すとき(システム特定値δnがシステム特定値δn-1に一致するとき)は、新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化がないと判定する機能を有し、さらに、最終使用の外部記憶装置En-1が再び装着されかつ新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化がないと判定したときは、再生中断位置記憶手段E6が保持している再生中断位置情報λn-1に従って再生の実効的な開始を制御するものとして構成されている。
【0025】
ここで、「再生の実効的な開始を制御する」というのは、次のことを意味している。再生開始制御手段E7が再生中断位置情報λn-1に従って再生を開始するときの条件は、図1(b)に示すように、識別情報比較手段E2の比較結果H1が一致を示すという第1条件と、特定値比較手段E5の比較結果H2が一致を示すという第2条件との組み合わせであるが、この2つの条件の組み合わせについては、柔軟に広義に解釈しなければならない。第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)とがともに成立したとき(論理積的な条件の成立:AND条件成立)をもって、再生開始制御手段E7が再生を起動する場合もあれば、第1条件(識別情報αの一致)が成立すればとりあえず再生動作をスタートさせるとともに、その再生動作のスタートと並行して第2条件(システム特定値δの一致)での判定を行い、これが成立しないと判明すれば、一旦スタートした再生を停止し、成立する場合には一旦スタートした再生を継続する場合もある。これは、結果的に、第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)とがともに成立したことになって再生開始(再生再開)が実質的に遂行される。これら2つの場合は、ともに、上述した〔発明が解決しようとする課題〕の解決を達成するものであり、それで、再生開始制御手段E7の機能の定義として、「再生の実効的な開始を制御する」としているのである。
【0026】
以上を要するに、本発明によるコンテンツデータ再生装置は、
取り外し可能な外部記憶装置で最終使用の外部記憶装置En-1の識別情報αn-1をその取り外し後も保持しておく識別情報記憶手段E1と、
新装着の外部記憶装置Enの識別情報αnを識別情報記憶手段E1に保持されている識別情報αn-1と比較する識別情報比較手段E2と、
新装着の外部記憶装置Enが有しているファイルシステムの情報βnからそのファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成する特定値生成手段E3と、
最終使用の外部記憶装置En-1のシステム特定値δn-1をその取り外し後も保持しておく特定値記憶手段E4と、
特定値生成手段E3の生成による新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnを特定値記憶手段E4に保持されているシステム特定値δn-1と比較する特定値比較手段E5と、
最終使用の外部記憶装置En-1について、その再生が中断したときの再生中断位置情報λn-1を保持しておく再生中断位置記憶手段E6と、
識別情報比較手段E2による比較結果H1と特定値比較手段E5による比較結果H2とを受け取り、これら2つの比較結果H1,H2がともに一致を示すときは、再生中断位置記憶手段E6が保持している再生中断位置情報λn-1に従って再生の実効的な開始を制御する再生開始制御手段E7とを備えたものである。
【0027】
この構成においては、最終使用の外部記憶装置En-1が当該コンテンツデータ再生装置から取り外される直前の状態において、識別情報記憶手段E1には最終使用の外部記憶装置En-1の識別情報αn-1が記憶され、特定値記憶手段E4には最終使用の外部記憶装置En-1のシステム特定値δn-1が記憶されている。最終使用の外部記憶装置En-1が当該コンテンツデータ再生装置から取り外され、その後、新たに外部記憶装置Enが装着されたとする。この新装着の外部記憶装置Enは、最終使用の外部記憶装置En-1と同じものである場合もあれば、そうでない場合もある。また、最終使用の外部記憶装置En-1と同じものであっても、記憶内容が変化している場合と、そうでない場合とがある。そこで、これらのことを調べる。
【0028】
識別情報比較手段E2は、新装着の外部記憶装置Enの識別情報αnを取り込み、識別情報記憶手段E1に記憶されている最終使用の外部記憶装置En-1の識別情報αn-1と比較する。この比較は、新装着の外部記憶装置Enが先に取り外された最終使用の外部記憶装置En-1と同じものなのかを調べている。識別情報比較手段E2による比較結果H1は再生開始制御手段E7に渡される。
【0029】
一方、特定値生成手段E3は、新装着の外部記憶装置Enについて、それが有しているファイルシステムの情報βnからそのファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成する。生成したシステム特定値δnは特定値比較手段E5に渡される。特定値比較手段E5は、特定値生成手段E3の生成によるシステム特定値δnを、特定値記憶手段E4に記憶されている最終使用の外部記憶装置En-1についてのシステム特定値δn-1と比較する。この比較は、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1と同じものであるとして、その新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化がないかを調べている。特定値比較手段E5による比較結果H2は再生開始制御手段E7に渡される。
【0030】
識別情報比較手段E2による比較結果H1と特定値比較手段E5による比較結果H2を受け取った再生開始制御手段E7は、これら2つの比較結果H1,H2を用いて判定を行う。すなわち、2つの識別情報αn,αn-1が一致するときは、最終使用の外部記憶装置En-1が再び装着されたと判定し、また、2つのシステム特定値δn,δn-1が一致するときは、新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化がないと判定する。再生開始制御手段E7は、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1と同じもので、その記憶内容に変化がないと判定したときは、再生中断位置記憶手段E6から読み出した再生中断位置情報λn-1に従って新装着の外部記憶装置Enのコンテンツデータの再生を開始する。これにより、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1と同じもので、しかもその記憶内容に変化がない場合には、再生中断位置からの再生の開始が可能となる。
【0031】
本発明においては、新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に最終使用の外部記憶装置En-1の記憶内容からの変化があるかないかを調べる要素として、ファイルシステムの情報βnの比較的簡単な解析から得られる比較的単純な構造で情報量の少ないシステム特定値δを用いている。したがって、ファイルパス、ファイルに含まれるタグ情報(アーティスト名、アルバム名、曲名、ジャンル名、演奏時間等々)、フォルダ名などからなる複雑多岐で項目数が多く情報量が大きいデータベースを構築するものに比べると、マイクロプロセッサにかかるソフトウェア負荷が充分に小さなものですむ。ソフトウェア負荷が充分に小さなものですむから、再生開始のタイミングを早期化することが可能となる。また、システム特定値δを格納しておく特定値記憶手段E4の記憶容量も、データベースの場合に比べて充分に小さなものですむ。
【0032】
次に、上記した第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)について、これら両条件の同時成立(AND条件成立)を要件とする場合と、順次的成立(時系列的成立)を要件とする場合について検討する。
【0033】
(2)この項は、第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)について、これら両条件の同時成立(AND条件成立)を要件とする場合についてである。図2を参照して説明する。
【0034】
再生開始制御手段E7が識別情報比較手段E2による比較結果H1と特定値比較手段E5による比較結果H2をともに必要とする関係から、特定値比較手段E5での比較で必要とする、新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnをまず生成しておく必要がある。そこで、特定値比較手段E5の動作が開始される前に特定値生成手段E3を動作させることとする。そして、特定値生成手段E3で生成した新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnを特定値比較手段E5に渡す。
【0035】
識別情報比較手段E2によるαn,αn-1の比較と特定値比較手段E5によるδn,δn-1の比較のいずれを先にするかについては、一般的にはαn,αn-1の比較を先にするのが良いといえる。ただし、論理的にはδn,δn-1の比較を先に行ってもよい。δn,δn-1の比較を行うには、それに先行してシステム特定値δnの生成が必要となるが、このシステム特定値δnの生成についても、αn,αn-1の比較の後でも先でもいずれでもよい。
【0036】
ところで、αn,αn-1の比較結果H1が不一致のときは、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1とは別物であることから、新装着の外部記憶装置Enの識別情報αnを最終使用の外部記憶装置En-1の識別情報αn-1に代えて新規登録することになる。また、δn,δn-1の比較結果H2が不一致のときは、新装着の外部記憶装置Enの記憶内容が変化していることから、新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnを最終使用の外部記憶装置En-1のシステム特定値δn-1に代えて新規登録することになる。
【0037】
再生開始制御手段E7は、識別情報比較手段E2によるαn,αn-1の比較結果H1が一致で、かつ特定値比較手段E5によるδn,δn-1の比較結果H2が一致のときに(比較の前後関係は問わない)、つまり第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)とが論理積的に成立したときに(AND条件成立)、再生中断位置記憶手段E6から読み出した再生中断位置情報λn-1に従って新装着の外部記憶装置Enの再生開始の制御を行うように構成されている。
【0038】
要するに、上記(1)の構成のコンテンツデータ再生装置において、
再生開始制御手段E7は、識別情報比較手段E2による比較結果H1が一致でかつ特定値比較手段E5による比較結果H2が一致のときに再生開始の制御を行うように構成され、
特定値生成手段E3は、再生開始制御手段E7の動作が開始される前に動作するように構成されているという態様である。
【0039】
ここでは、特定値生成手段E3と再生開始制御手段E7の動作順序の関係について規定している。再生開始制御手段E7が比較結果H1一致かつ比較結果H2一致のAND条件成立で再生開始を行うのであるから、ここでは比較結果H2はすでに出ている必要がある。特定値比較手段E5による比較結果H2が存在するためには、新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnが必要である。したがって、再生開始制御手段E7の動作に先行して特定値生成手段E3が動作していなければならない。
【0040】
後述する(3)の場合には、再生開始制御手段E7による再生開始が第1条件(識別情報αの一致)の成立によるとりあえずの再生動作でスタートすることから、あとで第2条件(システム特定値δの一致)の成否をチェックし、成立と判明すれば再生動作のスタートを継続してよいが、不成立と判明したときは、一旦スタートした再生動作を停止する必要がある。これに対して、本項(2)の場合には、第1条件(識別情報αの一致)の成立と第2条件(システム特定値δの一致)の成立をともに確認した上で再生開始を行うので、論理的には(3)の場合に比べてより単純である(なお、論理的により単純なことが効率性アップにつながるものではない)。
【0041】
本構成(2)によれば、上述の(1)の構成による作用効果が素直に当てはまる。すなわち、新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化があるかないかを調べる要素として、ファイルシステムの情報βnの比較的簡単な解析から得られる比較的単純な構造で情報量の少ないシステム特定値δnを用いている。したがって、ファイルパス、ファイルに含まれるタグ情報(アーティスト名、アルバム名、曲名、ジャンル名、演奏時間等々)、フォルダ名などからなる複雑多岐で項目数が多く情報量が大きいデータベースを構築するものに比べると、システム特定値δnの生成に際して、マイクロプロセッサにかかるソフトウェア負荷が充分に小さなものですむ。ソフトウェア負荷が充分に小さなものですむから、再生開始のタイミングを早期化することが可能となる。また、生成によって得られたシステム特定値δを格納しておく特定値記憶手段E4の記憶容量も、データベースの場合に比べて充分に小さなものですむ。
【0042】
(3)この項は、第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)について、これら両条件の順次的成立(時系列的成立)を要件とする場合についてである(並行処理)。図3を参照して説明する。
【0043】
再生開始制御手段E7は再生開始の条件として、とりあえずは第1条件(識別情報αの一致)のみが成立すればよいとする。第2条件(システム特定値δの一致)を判定する前に、第1条件(識別情報αの一致)だけを判定して、それが成立しておれば、再生開始制御手段E7は新装着の外部記憶装置Enの再生動作をとりあえずスタートする動作に進むことにする。この再生動作のスタートと並行して、第2条件(システム特定値δの一致)の判定へ進む。第2条件(システム特定値δの一致)を判定するには、その準備として新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnの生成が必要となる。このシステム特定値δnの生成については、第1条件(識別情報αの一致)が成立した後とするのが合理的である。ただし、必ずしもそれに限定する必要はなく、第1条件(識別情報αの一致)の判定前にシステム特定値δnの生成を行う場合を排除しない。
【0044】
再生開始制御手段E7が第2条件(システム特定値δの一致)を判定して、δn,δn-1の比較結果H2が不一致のときはαn=αn-1でスタートさせていた再生動作を中断する。一方、δn,δn-1の比較結果H2が一致のときはαn=αn-1でスタートさせていた再生動作を継続する。これで再生の開始が本格的なものとなり、実効化される。
【0045】
要するに、上記(1)の構成のコンテンツデータ再生装置において、
再生開始制御手段E7と特定値比較手段E5とは、識別情報比較手段E2による比較結果H1が一致のときに並行的に動作し、
再生開始制御手段E7は、識別情報比較手段E2による比較結果H1が一致のときに再生開始の制御を行い、特定値比較手段E5による比較結果H2が一致となれば再生開始の制御を継続し、特定値比較手段E5による比較結果H2が不一致となれば再生開始の制御を停止するように構成されているという態様である。
【0046】
ここでは、再生開始制御手段E7と特定値比較手段E5の動作順位の、識別情報比較手段E2に対する後位性を規定している。再生開始制御手段E7は識別情報比較手段E2による比較結果H1が一致成立のみで再生開始を行うのであるから、ここでは特定値比較手段E5による比較結果H2は出ている必要はない。とりあえず再生開始を行ってから、そのあとに比較結果H2を調べればよい。そして、比較結果H2を調べた結果が一致成立であれば、とりあえずの再生開始を継続して、本格的な再生開始とすればよい。一方、比較結果H2が不一致であれば、とりあえずの再生開始を停止すればよい。
【0047】
本構成によれば、上記(1)による作用が発揮されることはいうまでもない。すなわち、新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化があるかないかを調べる要素として、ファイルシステムの情報βnの比較的簡単な解析から得られる比較的単純な構造で情報量の少ないシステム特定値δnを用いている。したがって、ファイルパス、ファイルに含まれるタグ情報(アーティスト名、アルバム名、曲名、ジャンル名、演奏時間等々)、フォルダ名などからなる複雑多岐で項目数が多く情報量が大きいデータベースを構築するものに比べると、システム特定値δnの生成に際して、マイクロプロセッサにかかるソフトウェア負荷が充分に小さなものですむ。ソフトウェア負荷が充分に小さなものですむから、再生開始のタイミングを早期化することが可能となる。また、生成によって得られたシステム特定値δを格納しておく特定値記憶手段E4の記憶容量も、データベースの場合に比べて充分に小さなものですむ。
【0048】
加えて、新装着の外部記憶装置Enの記憶内容が変化しているかどうかを判定する前に、先行してαn,αn-1の比較を行って、その一致の判定のみで再生を開始するが、この判定がαn,αn-1の比較のみによるものであって、δn,δn-1の比較は伴っていないこと、および識別情報αn自体は取得および処理が容易なものであることから、その再生開始を上記(2)の場合よりもさらに早期化することが可能となる。
【0049】
(4)上記の第1・第2両条件の順次的成立(時系列的成立)を要件とする並行処理の上記(3)項に関連して、特定値生成手段E3の動作順位につき、上記(3)では識別情報比較手段E2の後でも先でもいずれでもよいとしたが、これを識別情報比較手段E2の動作の後に特定値生成手段E3を動作させる順序関係とすれば、識別情報比較手段E2での比較結果H1が不成立のときは特定値生成手段E3を動作させなくてすむ。すなわち、システム特定値δnの生成という無駄な動作が省略され、マイクロプロセッサにかかるソフトウェア負荷が充分に小さなものですみ、再生開始不成立の場合の後続処理の開始をよりスムーズ化することが可能となる(図3参照)。
【0050】
(5)上記の第1・第2両条件のAND成立を要件とする(2)の構成において、再生開始制御手段E7による判定で、識別情報比較手段E2による比較結果H1が不一致である場合、または特定値比較手段E5による比較結果H2が不一致である場合、あるいはその両方が不一致の場合には、再生開始は実行されないが、このときは、新装着の外部記憶装置Enの識別情報αnとシステム特定値δnとにつき、これらを新たなものとして、識別情報αnを識別情報記憶手段E1において更新登録し、システム特定値δnを特定値記憶手段E4において更新登録するように構成することが好ましい(図2参照)。
【0051】
(6)上記の第1・第2両条件の順次的成立(時系列的成立)を要件とする並行処理の上記(3)の構成において、再生開始制御手段E7による判定で、識別情報比較手段E2による比較結果H1が不一致である場合には、再生開始は実行されないが、このときは、新装着の外部記憶装置Enの識別情報αnにつき、これを新たなものとして、識別情報αnを識別情報記憶手段E1において更新登録するように構成することが好ましい(図3参照)。
【0052】
(7)上記の第1・第2両条件の順次的成立(時系列的成立)を要件とする並行処理の上記(3)の構成において、再生開始制御手段E7による判定で、特定値比較手段E5による比較結果H2が不一致である場合には、再生開始は実行されないが、このときは、新装着の外部記憶装置Enのシステム特定値δnにつき、これを新たなものとして、システム特定値δnを特定値記憶手段E4において更新登録するように構成することが好ましい(図3参照)。
【0053】
なお、電源オンに伴って、上記の各手段を動作させるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0054】
本発明においては、電源オフ前または外部記憶装置取り外し前に再生していたコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)を行う処理において、新装着の外部記憶装置の記憶内容に最終使用の外部記憶装置の記憶内容からの変化があるかないかを調べる要素として、ファイルシステムの情報の比較的簡単な解析から得られる比較的単純な構造で情報量の少ないシステム特定値を用いるようにしている。これにより、従来技術の場合のファイルパス、ファイルに含まれるタグ情報(アーティスト名、アルバム名、曲名、ジャンル名、演奏時間等々)、フォルダ名などからなる複雑多岐で項目数が多く情報量が大きいデータベース登録の場合に比べて、システム特定値の生成および検索に際して、マイクロプロセッサにかかるソフトウェア負荷を軽減することができる。その結果として、再生開始のタイミングを早期化することができる。併せて、生成によって得られるシステム特定値を格納しておく特定値記憶手段の記憶容量も、データベース登録の場合に比べて充分に小さなものですませることができ、それに要するコストの低減化に有利に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のコンテンツデータ再生装置の基本的な構成を示すブロック図と機能の説明図
【図2】本発明のコンテンツデータ再生装置において第1条件(識別情報の一致)と第2条件(システム特定値の一致)の同時成立を要件とする場合(AND条件成立)の機能説明図
【図3】本発明のコンテンツデータ再生装置において第1条件(識別情報の一致)と第2条件(システム特定値の一致)の順次的成立(時系列的成立)を要件とする場合(並行処理)の機能説明図
【図4】本発明のコンテンツデータ再生装置の発展形の構成を示すブロック図
【図5】本発明のコンテンツデータ再生装置の発展形の機能説明図
【図6】本発明のコンテンツデータ再生装置の発展形の別の機能説明図
【図7】本発明の実施例1、実施例2におけるコンテンツデータ再生装置の構成に外部記憶装置を含めて図示したブロック図
【図8】本発明の実施例1におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャート
【図9】本発明の実施例2におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャート
【図10】本発明の実施例3におけるファイルシステムの構造を示す説明図
【図11】本発明の実施例4における外部記憶装置におけるデータ構造の説明図
【図12】本発明の実施例5におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャートと演算の説明図
【図13】本発明の実施例6におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャート
【図14】本発明の実施例7におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャート
【図15】本発明の実施例8におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャート
【図16】従来技術におけるデータベースの構造を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0056】
上記の〔課題を解決するための手段〕の項で述べた構成の本発明のコンテンツデータ再生装置は、次のような実施の形態においてさらに有利に展開することが可能である。
【0057】
以下では、システム特定値δnの生成について、いくつかの好ましい態様を検討する。
【0058】
(8)システム特定値δnの生成の態様の1つ目は、外部記憶装置Enにおけるファイルシステムの構成要素を用いることである。ファイルシステムは、クラスタのリスト構造を表すファイル・アロケーション・テーブルや、クラスタの使用状態を表すビットマップ情報や、ユーザデータ領域で構成されている。またユーザデータ領域は、ファイルを構造的に格納するツリー構造と、ファイルデータとを有している。なお、これについては後述する実施例3の場合の図10を参照することができる。ファイル・アロケーション・テーブルとビットマップ情報とツリー構造は、データの書き込みがあった際に変化する情報である、これらのファイル・アロケーション・テーブル、ビットマップ情報またはツリー構造情報のいずれかの情報をハッシュ関数h(xi)を使用して畳み込むことにより、ファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成する。
【0059】
ハッシュ関数(hashingfunction)というのは、与えられた任意長のデータ項目から、そのデータ項目に固有な固定長の擬似乱数を生成する関数で、生成された値はハッシュ値と呼ばれる。ドキュメントや数字などの文字列の羅列から一定長のデータに要約するための関数である。ハッシュ関数h(xi)を用いて得られたハッシュ値には、極めて高いランダム性がある。すなわち、異なるデータ項目に対しては、極めて高い確率で異なるハッシュ値が得られる。与えられた検索キー(例えばキーワード)から素早くデータレコード(辞書でのキーワードの定義)を探すのに使われる。検索対象のデータ量に関係なく、一定の速度で処理が完了する。
【0060】
ファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成するのに、ファイル・アロケーション・テーブル、ビットマップ情報またはツリー構造情報のいずれかの情報を対象とし、この与えられた任意長のデータ項目を、ハッシュ関数h(xi)を用いて畳み込み、固定長の擬似乱数としてのシステム特定値δnを生成する。状態が変化したときに同じ値になりにくいシステム特定値δnを生成しながら、その処理量は充分に小さいため、ファイルシステムにおける記憶内容の変化を判定するのにマイクロプロセッサにかけるソフトウェア負荷を大幅に軽減することが可能となる。しかもそのシステム特定値δnを記憶しておくための特定値記憶手段の記憶装置は小さいものですむ。
【0061】
(9)システム特定値δnの生成の態様の2つ目は、外部記憶装置Enにおけるファイルシステムのツリー構造の構成要素を用いることである。この項では、後述する実施例4の場合の図11を参照することができる。ツリー構造において、最上位の階層から判定されるフォルダに対して順番に番号Noを割り当てる。この番号Noは、どの階層に属するかの区別を問わず、ファイルシステム内のすべてのフォルダに与える識別子に相当するものである。判定された各フォルダごとに、フォルダ内に存在するファイル数をNaとする。当該のフォルダにつき、自己が所属している1つ上位のフォルダの識別子番号NoをNbとする。当該のフォルダにつき、自己が所属するしている1つ上位のフォルダ内で、自己が先頭からの何番目のフォルダであるかを表すフォルダ内順位番号をNcとする。これら3つの情報Na,Nb,Ncの組である配列(Na,Nb,Nc)は、次のことを意味している。当該のフォルダ内にはNa個のファイルがあり、当該のフォルダの所属フォルダ(その1つ上位のフォルダ)がNbであり、かつ、当該のフォルダはフォルダNb内でNc番目のフォルダである。
【0062】
これら3つの情報Na,Nb,Ncの組である配列(Na,Nb,Nc)は、ファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造を的確に表すことができる。つまり、1つ1つのファイルは、この配列(Na,Nb,Nc)によって一意的に定められる。目的とするファイルは、配列(Na,Nb,Nc)を指定することでただ1つに絞られて選択されることになる。
【0063】
特定値生成手段E3は、3つの情報からなる配列(Na,Nb,Nc)が示すファイル数、所属フォルダ番号およびフォルダ内順位番号のすべてをハッシュ関数h(xi)で畳み込み、その演算結果のシステム特定値δnを求める。
【0064】
このように構成すれば、Na,Nb,Ncの3つの情報を用いて生成したシステム特定値δnを基準にして外部記憶装置の記憶内容の変化の有無を確実に判定することが可能となる。Na,Nb,Ncの3つの情報のうちいずれか1つまたは2つでもよいのであるが、3つの情報をすべて利用する方が一意性がより高いものとなる。特に、ハッシュ関数h(xi)を用いた方式であるので、状態が変化したときに同じ値になりにくいシステム特定値δnを生成しながら、その処理量は充分に小さいため、ファイルシステムにおける記憶内容の変化を判定するのにマイクロプロセッサにかけるソフトウェア負荷を大幅に軽減することが可能となる。しかもそのシステム特定値δnを記憶しておくための特定値記憶手段の記憶装置は小さいものですむ。
【0065】
(10)システム特定値δnの生成の態様の3つ目は、2段構えの演算方式である。特定値生成手段E3は、3つの情報からなる配列(Na,Nb,Nc)が示すファイル数、所属フォルダ番号およびフォルダ内順位番号を基に、3つの値から一意の値を定める演算式f(yi)を用いてフォルダ状態値を算出し、その上でさらに、各フォルダごとのフォルダ状態値のすべてをハッシュ関数h(xi)で畳み込み、その演算結果のシステム特定値δnを求める。この方式によれば、2段階の演算を行うので、マイクロプロセッサの負荷は増加するものの、それでも従来技術の場合よりは軽減されており、しかも(9)の場合よりも高い一意性を確保することが可能になる。なお、これについては後述する実施例5の場合の図12(a)を参照することができる。
【0066】
(11)上記の(10)において、一意の値を定める演算式f(yi)として、ビットシフトと論理和の組み合わせを用いることが考えられる。すなわち、前記3つの情報Na,Nb,Ncのうちのいずれか2つの情報の互いにシフト量を異にするビットシフトと、ビットシフト後のものを含む3つの情報の論理和との組み合わせを用いるこの方式によれば、簡単な処理方法でありながら、高い一意性を確保することが可能になる。なお、これについては後述する実施例5の場合の図12(b)を参照することができる。
【0067】
(12)システム特定値δnの生成の態様の4つ目は、上記(2),(3)の構成において、特定値生成手段E3は、外部記憶装置Enにおけるファイルシステムに記憶されているクラスタのリスト情報をハッシュ関数h(xi)で畳み込み、その演算結果のシステム特定値δnを求めるように構成されている。このように構成すれば、ファイルシステムの情報βnから、そのファイルの一意の値としてのシステム特定値δnを得ることができ、外部記憶装置の記憶内容に変化があれば、そのことを確実に検知することが可能となる。なお、これについては後述する実施例6の場合の図13を参照することができる。
【0068】
(13)システム特定値δnの生成の態様の5つ目は、上記(2),(3)の構成において、特定値生成手段E3は、外部記憶装置におけるファイルシステムの情報βnから、ファイルシステムの現在の空き容量の値と、最後に書き込まれたクラスタの番号の値を計算し、2つの値に重み付けをして加算することで、システム特定値δnを求めるように構成されている。このように構成すれば、ファイルシステムの情報βnから、そのファイルの一意の値としてのシステム特定値δnを得ることができ、外部記憶装置の記憶内容に変化があれば、そのことを確実に検知することが可能となる。なお、これについては後述する実施例7の場合の図14を参照することができる。
【0069】
(14)システム特定値δnの生成の態様の6つ目は、上記(2),(3)の構成において、特定値生成手段E3は、外部記憶装置におけるファイルシステムに記憶されているクラスタの使用の有無を表すビットマップ情報を特定のビット単位ごとでハッシュ関数h(xi)で畳み込み、その演算結果のシステム特定値δnを求めるように構成されている。このように構成すれば、ファイルシステムの情報βnから、そのファイルの一意の値としてのシステム特定値δnを得ることができ、外部記憶装置の記憶内容に変化があれば、そのことを確実に検知することが可能となる。なお、これについては後述する実施例8の場合の図15を参照することができる。
【0070】
上記の〔課題を解決するための手段〕の項では、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1と同じもので、しかもその記憶内容に変化がない場合に行う制御について、再生中断位置からの再生の開始を主たるテーマにして説明してきた。ここでは、再生開始不成立の場合の後続処理についても検討することとする。再生開始不成立の場合に以降のコンテンツデータの検索をどのように制御するかについては、再生中断位置からの再生の開始をどのように制御するかということとは技術の位相を異にしている。再生開始不成立以降のコンテンツデータの検索については、これをデータベース検索とする考え方もある。しかし、ここでは、データベース検索を採用しないこととする。これは、再生中断位置からのコンテンツデータの再生開始の制御において、データベース検索を採用しないことと設計思想を共通にしていることになる。先に技術の位相を異にしているといったが、設計思想を共通にしているという意味では延長線上にある。ここでは、コンテンツデータの検索にも、ツリー構造情報を用いることとする。そこで、外部記憶装置におけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報を保持しておくためのツリー構造記憶手段E8を用意する。このツリー構造記憶手段E8に対するツリー構造情報の登録の仕方は、上記の(2)と(3)とで相違する。以下、(15)と(16)において、図4を用いて説明する。
【0071】
(15)上記の第1・第2両条件のAND成立を要件とする(2)の構成において、さらに、外部記憶装置におけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報を保持しておくツリー構造記憶手段E8を備える。さらに、図5に示すように、再生開始制御手段E7は、識別情報比較手段E2による比較結果H1と特定値比較手段E5による比較結果H2の少なくともいずれか一方が不一致であると判定したときは、ツリー構造記憶手段E8に新装着の外部記憶装置Enにおけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報εnを記憶させるように構成されている。比較結果H1,H2の少なくともいずれか一方が不一致のときはというのは、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1とは異なるものであった場合、あるいは新装着の外部記憶装置Enと最終使用の外部記憶装置En-1とが同じものではあるが新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化があった場合ということである。
【0072】
処理対象のツリー構造情報εnは、データベースに比べてデータ量が充分に少ない。データベースは、フォルダの名称、ファイルの名称、タグ情報を含み、さらにタグ情報がアーティスト名、アルバム名、タイトル名等を含んでいるので、そのデータ量は膨大なものになる。したがって上記のように構成すれば、ツリー構造記憶手段E8について、その記憶容量は、データベース登録の場合の記憶容量よりも少なくてすみ、コスト低減に寄与する。
【0073】
(16)上記の第1・第2両条件の順次的成立(時系列的成立)を要件とする並行処理の上記(3)の構成において、さらに、外部記憶装置におけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報εnを保持しておくツリー構造記憶手段E8を備える。さらに、図6に示すように、再生開始制御手段E7は、識別情報比較手段E2による比較結果H1が不一致のとき、および特定値比較手段E5による比較結果H2が不一致のときは、ツリー構造記憶手段E8に新装着の外部記憶装置Enにおけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報εnを記憶させるように構成されている。比較結果H1が不一致のときおよび比較結果H2が不一致のときというのは、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1とは異なるものであった場合には再生開始を行うことなく直ちにということであり、さらには、新装着の外部記憶装置Enと最終使用の外部記憶装置En-1とが同じものであって再生開始を一旦スタートさせたが新装着の外部記憶装置Enの記憶内容に変化があったことが判明して一旦スタートさせた再生開始を中断した後にということである。
【0074】
この場合も、ツリー構造記憶手段E8について、その記憶容量は、データベース登録の場合の記憶容量よりも少なくてすみ、コスト低減に寄与する。
【0075】
さらに、この場合には、上記の(15)とは異なり、新装着の外部記憶装置Enが最終使用の外部記憶装置En-1と異なっていて、識別情報比較手段E2による比較結果H1が不一致と判定した場合に、その判定だけで処理を進めるので、換言すれば、特定値比較手段E5によるシステム特定値δの比較結果の判定を待つことなく処理を進めるので、その新装着の外部記憶装置Enについてのファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報を素早く取得することができる。その結果として、ユーザが、外部記憶装置Enの新たな装着の際に前回最後に再生したコンテンツデータの再生再開を望むのではなく、別のコンテンツデータを選択してその再生を操作する場合に、その別のコンテンツデータのアクセスの前提となるツリー構造情報εnが素早く構築されていることは、快適な操作性にとって有利に作用することになる。
【0076】
(17)上記(15),(16)の構成において、ツリー構造記憶手段E8におけるツリー構造情報εnの記憶の形態を次のように工夫する。すなわち、フォルダ内に存在するファイル数をNa、自己が所属している1つ上位のフォルダの識別子番号をNb、自己が所属するしている1つ上位のフォルダ内で自己が先頭からの何番目のフォルダであるかを表すフォルダ内順位番号をNcとして、これら3つの情報からなる配列(Na,Nb,Nc)をツリー構造記憶手段E8に保持させておく。これで、現在装着の外部記憶装置について、そのファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報εnを記憶していることになる。
【0077】
要するに、上記(15),(16)の構成において、ツリー構造記憶手段E8は、
判定された各フォルダごとにフォルダ内に存在するファイル数をNaとし、
当該のフォルダにつき、自己が所属している1つ上位のフォルダの識別子番号をNbとし、
当該のフォルダにつき、自己が所属するしている1つ上位のフォルダ内で、自己が先頭からの何番目のフォルダであるかを表すフォルダ内順位番号をNcとして、
これら3つの情報Na,Nb,Ncの組である配列(Na,Nb,Nc)を現在装着の外部記憶装置のファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報εnとして記憶するように構成されているということである。
【0078】
この構成によれば、ツリー構造情報εnの記憶において、取り扱うデータ量が少量であるために、必要な記憶容量を小さくすることが可能となる。
【0079】
以下、本発明にかかわるコンテンツデータ再生装置を実施例1〜実施例8として説明する。
【実施例1】
【0080】
本発明の実施例1のコンテンツデータ再生装置は、上述の電源オフ前または外部記憶装置取り外し前に再生していたコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)を行う要件として、第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)の両条件の同時成立を要件とする場合(AND条件成立)に該当するものである。
【0081】
図7は本発明の実施例1におけるコンテンツデータ再生装置の構成に外部記憶装置を含めて図示したブロック図である。図7において、10はコンテンツデータ再生装置、20はコンテンツデータ再生装置10に対して装着および取り外しが可能な外部記憶装置である。コンテンツデータ再生装置10の構成要素として、1はマイクロプロセッサ(MPU:Micro Processing Unit)、2は記憶装置、3は識別情報比較部、4は特定値生成部、5は特定値比較部、6は外部記憶装置20との通信を行うための通信インターフェースである。また、外部記憶装置20の構成要素として、21はファイルシステム、22は通信インターフェース、αnは識別情報である。
【0082】
外部記憶装置20は、ファイルがツリー構造で登録されているファイルシステム21と、外部機器との通信を行う通信インターフェース22と、当該の外部記憶装置20を他の外部記憶装置と区別するための識別情報αnを有している。コンテンツデータ再生装置10に対して装着および取り外しが可能な外部記憶装置20は、コンテンツデータ再生装置10との間で通信バスライン30を介して通信するようになっている。
【0083】
以下、コンテンツデータ再生装置10から取り外された最終使用の外部記憶装置を表すときは、その符号を“20* ”とし、最終使用の外部記憶装置20* にかかわる構成要素にはサフィックス(suffix:添え字)の“n-1”を添え、新装着の外部記憶装置20にかかわる構成要素にはサフィックスの“n”を添えることとする。
【0084】
コンテンツデータ再生装置10において、記憶装置2は、5つの記憶領域である、識別情報記憶領域2aと、特定値記憶領域2bと、ツリー構造一時記憶領域2cと、ツリー構造記憶領域2dと、再生中断位置記憶領域2eとを有している。すなわち、外部記憶装置20の識別情報αn-1を取り外し後も記憶しておく識別情報記憶領域2aと、外部記憶装置20におけるファイルシステム21の状態を表すシステム特定値δn-1を取り外し後も記憶しておく特定値記憶領域2bと、ファイルシステム21に構成されているツリー構造情報εnを外部記憶装置20の装着直後から一時的に記憶しておくツリー構造一時記憶領域2cと、ファイルシステム21に構成されているツリー構造情報εn-1を取り外し後も記憶しておくツリー構造記憶領域2dと、電源がオフされたときまたは外部記憶装置20* が取り外されたときの再生中断位置情報λn-1を取り外し後も保持しておく再生中断位置記憶領域2eとである。
【0085】
新装着の外部記憶装置20の識別情報αnは通信インターフェース22,6とマイクロプロセッサ1を介して識別情報比較部3に送り込まれるが、識別情報比較部3は、新装着の外部記憶装置20の識別情報αnを識別情報記憶領域2aに保持されている最終使用の外部記憶装置20* の識別情報αn-1と比較し、その比較結果H1をマイクロプロセッサ1に送るように構成されている。
【0086】
新装着の外部記憶装置20におけるファイルシステム21の情報βnは通信インターフェース22,6とマイクロプロセッサ1を介して特定値生成部4に送り込まれるが、特定値生成部4は、受け取った情報から、新装着の外部記憶装置20におけるファイルシステム21の状態を表すシステム特定値δnを生成するものとして構成されている。
【0087】
特定値比較部5は、特定値生成部4が生成した新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnを、特定値記憶領域2bに保持されている最終使用の外部記憶装置20* のシステム特定値δn-1と比較し、その比較結果H2をマイクロプロセッサ1に送るように構成されている。
【0088】
再生中断位置記憶領域2eは、最終使用の外部記憶装置20* について、その再生が中断したときのコンテンツデータの再生中断位置を示す再生中断位置情報λn-1を保持しておくものである。
【0089】
マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7は、識別情報比較部3による一致を示す比較結果H1と特定値比較部5による一致を示す比較結果H2とによって、再生中断位置記憶領域2eが保持している再生中断位置情報λn-1に従って再生の実効的な開始を制御するものとして構成されている。マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7は、2つの比較結果H1,H2の一方または両方が不一致であると判定したときは、先頭のコンテンツデータから再生を開始するかを判定し、かつ、識別情報記憶領域2a、特定値記憶領域2bおよびツリー構造記憶領域2dの内容を更新するかどうかを判定し、処理を行うように構成されている。
【0090】
図1との対応関係を示すと、識別情報記憶領域2aが識別情報記憶手段E1に対応し、識別情報比較部3が識別情報比較手段E2に対応し、特定値生成部4が特定値生成手段E3に対応し、特定値記憶領域2bが特定値記憶手段E4に対応し、特定値比較部5が特定値比較手段E5に対応し、再生中断位置記憶領域2eが再生中断位置記憶手段E6に対応し、マイクロプロセッサ1の機能の一部が再生開始制御手段E7に対応している。また、図4との対応関係を示すと、ツリー構造記憶領域2eがツリー構造記憶手段E8に対応している。
【0091】
次に、上記のように構成された本実施例1のコンテンツデータ再生装置10の動作を説明する。本実施例1の動作態様は、電源オフ前または外部記憶装置取り外し前に再生していたコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)を行う処理において、第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)について、これら両条件の同時成立を要件とする場合(AND条件成立)についてである。
【0092】
最終使用の外部記憶装置20* がコンテンツデータ再生装置10から取り外される直前の状態においては、記憶装置2の識別情報記憶領域2aには最終使用の外部記憶装置20* の識別情報αn-1が記憶され、特定値記憶領域2bには最終使用の外部記憶装置20* のシステム特定値δn-1が記憶されている。
【0093】
最終使用の外部記憶装置20* がコンテンツデータ再生装置10から取り外され、その後、新たに外部記憶装置20が装着されたとする。
【0094】
マイクロプロセッサ1は、通信インターフェース6を介して新装着の外部記憶装置20の識別情報αnを取り込み、識別情報比較部3に渡す。
【0095】
一方、マイクロプロセッサ1は、通信インターフェース6を介して新装着の外部記憶装置20が有しているファイルシステムの情報βnを取り込み、特定値生成部4に渡す。特定値生成部4は、受け取ったファイルシステムの情報βnからそのファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成し、生成したシステム特定値δnを特定値比較部5に渡す。
【0096】
識別情報比較部3は、新装着の外部記憶装置20の識別情報αnを、識別情報記憶領域2aに記憶されている最終使用の外部記憶装置20* の識別情報αn-1と比較する。識別情報比較部3による比較結果H1は、マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7に渡される。
【0097】
特定値比較部5は、特定値生成部4から受け取った新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnを、特定値記憶領域2bに記憶されている最終使用の外部記憶装置20* のシステム特定値δn-1と比較する。特定値比較部5による比較結果H2は、マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7に渡される。
【0098】
マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7は、識別情報比較部3による比較結果H1と特定値比較部5による比較結果H2とを総合して、新装着の外部記憶装置20が最終使用の外部記憶装置20* と同じもので、しかもその記憶内容に変化がないか否かの判定を行う。すなわち、2つの比較結果H1,H2がともに一致を示すときは、新装着の外部記憶装置20が最終使用の外部記憶装置20* と同じもので、しかもその記憶内容に変化がないと判定し、マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7は、再生中断位置記憶領域2eから再生中断位置情報λn-1を読み出し、その再生中断位置情報λn-1に従って新装着の外部記憶装置20のコンテンツデータの再生を開始する。これにより、新装着の外部記憶装置20が最終使用の外部記憶装置20* と同じもので、しかもその記憶内容に変化がない場合には、再生中断位置からの再生が可能となる。
【0099】
一方、2つの比較結果H1,H2のうちいずれか一方または両方が不一致を示すときは、あらかじめツリー構造一時記憶領域2cに一時記憶しておいたツリー構造情報εnをツリー構造記憶領域2dに転送してデータを更新する。
【0100】
図8は本実施例1のコンテンツデータ再生装置10の動作を示すフローチャートである。動作の主体は、マイクロプロセッサ1である。
【0101】
まずステップS11において、電源がオンされたか、または新たに外部記憶装置20が装着されたかを判定し、その判定結果が肯定的となるときは、ステップS12に進む。
【0102】
次いでステップS12において、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20からその識別情報αnを取得する。
【0103】
次いでステップS13において、新装着の外部記憶装置20のツリー構造情報εnの情報をツリー構造一時記憶領域2cに一時記憶させる。
【0104】
次いでステップS14において、特定値生成部4を起動し、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20におけるファイルシステム21の情報βnを取得して、外部記憶装置20のシステム特定値δnを生成する。
【0105】
次いでステップS15において、2つの条件の判定を行う。すなわち、ステップS15aにおいて、識別情報比較部3を起動し、ステップS12で取得した新装着の外部記憶装置20の識別情報αnを識別情報記憶領域2aに保持されている識別情報αn-1と比較し、ステップS15bにおいて、特定値比較部5を起動し、ステップS14で生成した新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnを特定値記憶領域2bに保持されているシステム特定値δn-1と比較し、ステップS15cにおいて、2つの比較結果H1,H2がともに一致であるかを判定する。この判定結果が肯定的であるときはステップS16に進み、否定的であるときはステップS17に進む。
【0106】
2つの比較結果H1,H2がともに一致を示す場合に進んだステップS16においては、再生中断位置記憶領域2eに保持されている再生中断位置情報λn-1に従って、新装着の外部記憶装置20におけるファイルシステム21に存在するファイルの再生を開始する。これで、最終使用の外部記憶装置20* と同じもので記憶内容に変化がない新装着の外部記憶装置20のコンテンツデータについて、先の再生中断位置からの再生の開始(再生再開)が実行される。
【0107】
ところで、ステップS15aのαn,αn-1の比較結果H1が不一致のときは、新装着の外部記憶装置20が最終使用の外部記憶装置20* とは別物であることから、新装着の外部記憶装置20の識別情報αnを最終使用の外部記憶装置20* の識別情報αn-1に代えて新規登録することになる(ステップS17)。また、ステップS15bのδn,δn-1の比較結果H2が不一致のときは、新装着の外部記憶装置20の記憶内容が変化していることから、新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnを最終使用の外部記憶装置20* のシステム特定値δn-1に代えて新規登録することになる(ステップS17)。
【0108】
これらの処理を行うステップS17の次のステップS18において、ツリー構造一時記憶領域2cに一時記憶されているツリー構造情報εnによって、ツリー構造記憶領域2dに記憶されている現在のツリー構造情報εn-1を上書きし、更新する。
【0109】
上記のように本実施例1においては、マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7が、識別情報比較部3による比較結果H1と特定値比較部5による比較結果H2をともに必要とする。そこで、特定値比較部5での比較で必要とする、新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnをまず生成しておく必要があり、特定値比較部5の動作(ステップS15b)が開始される前に特定値生成部4を動作させている(ステップS14)。そして、特定値生成部4で生成した新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnを特定値比較部5に渡す。
【0110】
図8では、αn,αn-1の比較であるステップS15aを、δn,δn-1の比較であるステップS15bより先行させているが、これは順序が逆になっていてもよい。δn,δn-1の比較であるステップS15bに対して、システム特定値δnの生成であるステップS14は先行する必要がある。このシステム特定値δnの生成のステップS14についても、αn,αn-1の比較であるステップS15aの後でもよい。
【0111】
本実施例1によれば、新装着の外部記憶装置20の記憶内容に変化があるかないかを調べる要素として、ファイルシステムの情報βnの比較的簡単な解析から得られる比較的単純な構造で情報量の少ないシステム特定値δを用いている。したがって、ファイルパス、ファイルに含まれるタグ情報(アーティスト名、アルバム名、曲名、ジャンル名、演奏時間等々)、フォルダ名などからなる複雑多岐で項目数が多く情報量が大きいデータベースを構築するものに比べると、システム特定値δnの生成に際して、マイクロプロセッサ1にかかるソフトウェア負荷は充分に小さなものですむ。すなわち、ソフトウェア負荷が充分に小さいゆえに、新装着の外部記憶装置20の記憶内容に変化があったかどうかを簡単に確認できる。その結果として、新装着の外部記憶装置20が直前の最終使用の外部記憶装置20* と同じもので、記憶内容に変化がない場合において、その外部記憶装置20の新装着に伴う自動的な再生中断位置からのコンテンツデータの再生開始(再生再開)を含めて、新装着・電源オン時の再生開始処理を高速化することができる。
【0112】
また、本実施例1によれば、生成によって得られたシステム特定値δを格納しておく特定値記憶領域2bの容量も、システム特定値δの情報量が少ないゆえに、従来技術のデータベース登録の場合に比べて、充分に小さなものですむ。
【実施例2】
【0113】
本発明の実施例2のコンテンツデータ再生装置は、上述の電源オフ前または外部記憶装置取り外し前に再生していたコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)を行う要件として、第1条件(識別情報αの一致)と第2条件(システム特定値δの一致)について、これら両条件の順次的成立(時系列的成立)を要件とする場合(同時的成立ではない)に該当するものである。本実施例2のコンテンツデータ再生装置の構成は実施例1の構成と同様であり、図7のブロック図が援用される。
【0114】
次に、上記のように構成された本実施例2のコンテンツデータ再生装置10の動作を説明する。
【0115】
第2条件(システム特定値δの一致)を判定する前に、第1条件(識別情報αの一致)だけを判定して、それが成立しておれば、マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7は新装着の外部記憶装置20のコンテンツデータの再生をとりあえずスタートさせる動作に進むことにする。
【0116】
この再生スタートと並行して、第2条件(システム特定値δの一致)の判定へ進む。第2条件(システム特定値δの一致)を判定するには、その準備として新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnの生成が必要となる。再生開始制御手段E7が第2条件(システム特定値δの一致)を判定して、δn,δn-1の比較結果H2が不一致のときはαn=αn-1でとりあえずスタートさせていた再生を中断する。一方、δn,δn-1の比較結果H2が一致のときはαn=αn-1でとりあえずスタートさせていた再生を継続する。これで再生の開始が本格的なものとなり、実効化される。
【0117】
新装着の外部記憶装置20の記憶内容が変化しているかどうかを判定する前に、αn,αn-1の比較を行って、その一致の判定のみで再生を開始するが、この判定がαn,αn-1の比較のみによるものであって、δn,δn-1の比較の比較は伴っていないこと、および識別情報αnは取得および処理が容易なものであることから、その再生開始のタイミングを早期化することが可能となる。なお、上記(1)による作用が発揮されることはいうまでもなく、システム特定値δnの生成に際して、マイクロプロセッサ1にかかるソフトウェア負荷が充分に小さなものですみ、システム特定値δを格納しておく特定値記憶領域2bの容量が充分に小さなものですむ。
【0118】
図9は本実施例2のコンテンツデータ再生装置10の動作を示すフローチャートである。動作の主体は、マイクロプロセッサ1である。
【0119】
まずステップS21において、電源がオンされたか、または新たに外部記憶装置20が装着されたかを判定し、その判定結果が肯定的となるときは、ステップS22に進む。
【0120】
次いでステップS22において、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20からその識別情報αnを取得する。
【0121】
次いでステップS23において、新装着の外部記憶装置20のツリー構造情報εnの情報をツリー構造一時記憶領域2cに一時記憶させる。
【0122】
次いでステップS24において、識別情報比較部3を起動し、ステップS22で取得した新装着の外部記憶装置20の識別情報αnを識別情報記憶領域2aに保持されている識別情報αn-1と比較し、その比較結果H1をマイクロプロセッサ1に通知する。
【0123】
次いでステップS25において、マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7は、識別情報比較部3から受け取った比較結果H1が一致であるかを判定する。この判定結果が肯定的であるときは並行処理であるステップS26とステップS27に進み、否定的であるときはステップS31に進む。
【0124】
並行処理の一方であるステップS26においては、再生中断位置記憶領域2eに保持されている再生中断位置情報λn-1に従って、新装着の外部記憶装置20におけるファイルシステム21に存在するコンテンツデータの再生動作をスタートさせる。これで、最終使用の外部記憶装置20* と同じ新装着の外部記憶装置20のコンテンツデータについて、先の再生中断位置からの再生動作がスタートする。ただし、これは、実効的な再生再開ではなく、とりあえずのスタートである。
【0125】
並行処理のもう一方であるステップS27に進むと、特定値生成部4を起動し、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20におけるファイルシステム21の情報βnを取得して、外部記憶装置20のシステム特定値δnを生成する。
【0126】
次いでステップS28において、特定値比較部5を起動し、ステップS27で生成した新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnを特定値記憶領域2bに保持されているシステム特定値δn-1と比較し、マイクロプロセッサ1における再生開始制御手段E7は、特定値比較部5から受け取った比較結果H2が一致であるかを判定する。この判定結果が肯定的であるときはステップS29に進み、否定的であるときはステップS30に進む。
【0127】
特定値比較部5から受け取った比較結果H2が一致を示す場合に進んだステップS29においては、ステップS26でとりあえずスタートさせていた再生動作を継続する。これで、最終使用の外部記憶装置20* と同じ新装着の外部記憶装置20についての再生中断位置からのコンテンツデータの再生の開始(再生再開)が実効的なものとなる。
【0128】
特定値比較部5から受け取った比較結果H2が不一致を示す場合に進んだステップS30においては、ステップS26でとりあえずスタートさせていた再生の動作を停止する。
【0129】
ところで、ステップS25のαn,αn-1の比較結果H1が不一致のときは、新装着の外部記憶装置20が最終使用の外部記憶装置20* とは別物であることから、新装着の外部記憶装置20の識別情報αnを最終使用の外部記憶装置20* の識別情報αn-1に代えて新規登録することになる(ステップS31)。また、ステップS28のδn,δn-1の比較結果H2が不一致のときは、新装着の外部記憶装置20の記憶内容が変化していることから、新装着の外部記憶装置20のシステム特定値δnを最終使用の外部記憶装置20* のシステム特定値δn-1に代えて新規登録することになる(ステップS31)。
【0130】
これらの処理を行うステップS31の次のステップS32において、ツリー構造一時記憶領域2cに一時記憶されているツリー構造情報εnによって、ツリー構造記憶領域2dに記憶されている現在のツリー構造情報εn-1を上書きし、更新する。
【0131】
以上のように本実施例2によれば、上記(1)による作用が発揮されることはいうまでもなく、システム特定値δnの生成に際して、マイクロプロセッサ1にかかるソフトウェア負荷が充分に小さなものですみ、システム特定値δを格納しておく特定値記憶領域2bの記憶容量が充分に小さなものですむ。
【0132】
さらに、新装着の外部記憶装置20の記憶内容が変化しているかどうかを判定する前に、αn,αn-1の比較を行って、その一致の判定のみで再生を開始するが、この判定がαn,αn-1の比較のみによるものであって、δn,δn-1の比較の比較は伴っていないこと、および識別情報αnは取得および処理が容易なものであることから、その再生開始のタイミングを実施例1の場合よりも早期化することが可能となる。
【0133】
また、ステップS25の結果が否定的のときに、ステップS26のとりあえずの再生スタートとステップS27のシステム特定値δnの生成とステップS28の比較をスキップし、直ちにステップS31からステップS32へと進むので、ファイルシステム上のツリー構造情報εnの再取得のタイミングを実施例1の場合よりも早期化できる。ユーザが、外部記憶装置20の新たな装着の際に前回最後に再生したコンテンツデータの再生再開を望むのではなく、別のコンテンツデータを選択してその再生を操作する場合に、その別のコンテンツデータのアクセスの前提となるツリー構造情報εnが素早く構築されていることは、そのコンテンツデータへのアクセスが効率の良いものとなり、快適な操作性にとって有利に作用することになる。
【実施例3】
【0134】
本発明の実施例3は、ファイルシステムの状態を表すシステム特定値を求める方式について具体的レベルで展開するものである。本実施例3は上述の(8)に対応している。図10は本発明の実施例3におけるファイルシステムの構造を示す説明図である。
【0135】
外部記憶装置20について特定値生成部4が生成するシステム特定値δnは、ファイルシステム21の記憶内容に変化があったか否かを判定するためのものである。そのために、コンテンツデータの書き込みや削除があった際に、ファイルシステム21上において変化する情報を使用する。
【0136】
ファイルシステム21は、ファイルシステムの情報βnとして、クラスタのリスト構造を表すファイル・アロケーション・テーブル41と、クラスタの使用状態を表すビットマップ情報42と、ユーザデータ領域43で構成されている。またユーザデータ領域43は、ファイルを構造的に格納するツリー構造情報44と、ファイルデータ45とを有している。
【0137】
ファイル・アロケーション・テーブル41、ビットマップ情報42およびツリー構造情報44は、コンテンツデータの書き込みや削除があった際に変化する情報である。これらのファイル・アロケーション・テーブル41、またはビットマップ情報42、またはツリー構造情報44のいずれかの情報をハッシュ関数h(xi)を使用して畳み込むことにより、ファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成する。
【0138】
ファイルシステムの状態を表すシステム特定値δnを生成するのに、ファイル・アロケーション・テーブル41、ビットマップ情報42またはツリー構造情報44のいずれかの情報を対象とし、この与えられた任意長のデータ項目から固定長の擬似乱数を生成するハッシュ関数h(xi)の畳み込みを用いるので、状態が変化したときに同じ値になりにくいシステム特定値δnを生成しながら、その処理量は充分に小さいため、ファイルシステムにおける記憶内容の変化を判定するのにマイクロプロセッサ1にかけるソフトウェア負荷を大幅に軽減することができ、しかもそのシステム特定値δnを記憶しておくための特定値記憶領域2bの記憶装置を小さいものにすることができる。
【実施例4】
【0139】
本発明の実施例4は、ファイルシステムの状態を表すシステム特定値を求める別の方式について具体的レベルで展開するものである。本実施例4は上述の(9)に対応している。図11(a)は本発明の実施例4における外部記憶装置におけるデータ構造の一例を表したものであり、ツリー構造となっている。判定対象のフォルダに対して、0から順番にシーケンシャル番号Noを振り当てる。先頭に登録されているルートには0が振り当てられる。図11(b)では、フォルダについて、Folder2,Folder3,Folder4,Folder5,Folder6の5つのフォルダが示されている。4段の囲みの最上段に示すように、Folder2のシーケンス番号は1、Folder3のシーケンス番号は2、Folder4のシーケンス番号は3、Folder5のシーケンス番号は4、Folder6のシーケンス番号は5である。
【0140】
ツリー構造に関する情報は、各フォルダごとの情報として、各フォルダ内に存在するファイルの数Na、自己が所属している1つ上位のフォルダの識別子番号Nb、当該のフォルダにつき、自己が所属するしている1つ上位のフォルダ内で、自己が先頭からの何番目のフォルダであるかを表すフォルダ内順位番号Ncである。
【0141】
Folder2については、ファイル数Na(Files)=2、所属フォルダ識別子番号Nb(ParDirID)=0、フォルダ内順位番号Nc(Offset)=1であり、
Folder3については、ファイル数Na(Files)=1、所属フォルダ識別子番号Nb(ParDirID)=1、フォルダ内順位番号Nc(Offset)=1であり、
Folder4については、ファイル数Na(Files)=0、所属フォルダ識別子番号Nb(ParDirID)=0、フォルダ内順位番号Nc(Offset)=2であり、
Folder5については、ファイル数Na(Files)=1、所属フォルダ識別子番号Nb(ParDirID)=3、フォルダ内順位番号Nc(Offset)=1であり、
Folder6については、ファイル数Na(Files)=0、所属フォルダ識別子番号Nb(ParDirID)=4、フォルダ内順位番号Nc(Offset)=1である。
【0142】
したがって、
Folder2については、配列(2,0,1)をハッシュ関数h(xi)で畳み込み、
Folder3については、配列(1,1,1)をハッシュ関数h(xi)で畳み込み、
Folder4については、配列(0,0,2)をハッシュ関数h(xi)で畳み込み、
Folder5については、配列(1,3,1)をハッシュ関数h(xi)で畳み込み、
Folder6については、配列(0,4,1)をハッシュ関数h(xi)で畳み込む。
【0143】
このようなハッシュ関数h(xi)を使用したNa,Nb,Ncの3つの情報の畳み込みにより、サイズが小さく、かつ状態が変化したときに同じ値になりにくいハッシュ値のシステム特定値δnが生成されることになる。その結果、外部記憶装置20のファイルシステムにおける記憶内容の変化を容易に判定することができ、マイクロプロセッサ1にかけるソフトウェア負荷を大幅に軽減することができるとともに、特定値記憶領域2bの記憶装置も小さくすることができる。もちろん、これらの情報のいずれか1つまたは2つでも同様に変化を判定することができるが、その値の一意性を考えると、これらの3つの値を利用する方がより一意性が高まることになる。
【実施例5】
【0144】
本発明の実施例5は、システム特定値を生成する別の方式について具体的レベルで展開するものである。本実施例5は上述の(10),(11)に対応している。図12(a)は本発明の実施例5におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャートであり、外部記憶装置20のシステム特定値δnを生成する特定値生成部4の処理を表したものである。
【0145】
まずステップS41において、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20へアクセスする。
【0146】
次いでステップS42において、外部記憶装置20におけるファイルシステム21に登録されたファイルのツリー構造γnを読み込む。
【0147】
次いでステップS43において、読み込まれたツリー構造γnを、ファイル数Na、所属フォルダ識別子番号Nb、フォルダ内順位番号Ncに分解し、そこで得られたツリー構造情報εnを順次、ツリー構造一時記憶領域2cに蓄積していく。
【0148】
次いでステップS44において、ファイル数Na、所属フォルダ識別子番号Nb、フォルダ内順位番号Ncの3つの情報からなるツリー構造情報εnに基づいて、必ず一意の値を定めることのできる演算式f(yi)を用いて、フォルダの状態を表すフォルダ状態値νniを生成する。
【0149】
演算式f(yi)としては、例えば図12(b)に示すように、フォルダ内に存在するファイル数Naを16ビット左シフトさせ、所属フォルダ識別子番号Nbを8ビット左シフトさせ、前記の2つの値と(ビットシフトしていない)フォルダ内順位番号Ncの3つの値を論理和でとるものが考えられる。その論理和は、そのファイルシステム上におけるユニークな値のフォルダ状態値νniとなる。それは、各フォルダごとに割り振る番号Noがシリーズに設定されているために、同じ所属フォルダ識別子番号Nbとフォルダ内順位番号Ncを持つフォルダは存在しないためである。また、ファイル数Naを加味しているために、フォルダ内のファイル数Naの増減を判定することも可能となっている。
【0150】
次いでステップS45において、全フォルダの上記のフォルダ状態値νniの蓄積が完了したかを判断し、完了していなければステップS43に戻り、完了したときはステップS46に進む。
【0151】
次いでステップS46において、各フォルダごとに生成されたフォルダ状態値νn1 ,νn2 ,νn3 …をハッシュ関数h(xi)を使用して畳み込み、外部記憶装置20のシステム特定値δnを生成する。
【0152】
本実施例5によれば、ビットシフトと論理和の組み合わせの演算式f(yi)を用いて、ファイル数Na、所属フォルダ識別子番号Nb、フォルダ内順位番号Ncの3つの情報から一意の値を定めるフォルダ状態値νniを生成し、さらにハッシュ関数h(xi)を使用してすべてのフォルダについてのフォルダ状態値νniの畳み込みでシステム特定値δnを生成するので、簡単な処理方法でありながら、高い一意性を確保することができる。
【0153】
このようなビットシフトと論理和の組み合わせの演算式f(yi)とハッシュ関数h(xi)を使用した演算により、サイズが小さく、かつ状態が変化したときに同じ値になりにくいハッシュ値のシステム特定値δnが生成されることになる。その結果、ファイルシステムにおける記憶内容の変化を容易に判定することができるとともに、特定値記憶領域2bの記憶容量も小さくすることができる。
【実施例6】
【0154】
本発明の実施例6は、システム特定値を生成するさらに別の方式について具体的レベルで展開するものである。本実施例6は上述の(12)に対応している。本実施例6は実施例5の代替案であり、外部記憶装置20におけるファイルシステム21における記憶内容の変化を、ツリー構造ではなく、ファイルシステム21に記録されているクラスタ番号の関係性の変化を用いるものである。図13は本発明の実施例6におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【0155】
まずステップS51において、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20へアクセスし、外部記憶装置20におけるファイルシステム21からクラスタのリスト構造情報であるファイル・アロケーション・テーブル41(図10参照)を読み出す。
【0156】
次いでステップS52において、読み出したテーブル41上のクラスタ番号情報をハッシュ関数h(xi)を用いて順次畳み込んでゆく。
【0157】
次いでステップS53において、全クラスタの読み出しが完了したかを判断し、完了していなければステップS51に戻り、完了したときはステップS54に進む。
【0158】
次いでステップS54において、ファイルシステム21上にあるすべてのファイ・アロケーション・テーブル41のクラスタ番号をハッシュ関数h(xi)で畳み込み、そこで得られた値をシステム特定値δnとする。
【0159】
このようなハッシュ関数h(xi)を使用した畳み込みにより、サイズが小さく、かつ状態が変化したときに同じ値になりにくいハッシュ値のシステム特定値δnが生成されることになる。その結果、ファイルシステムにおける記憶内容の変化を容易に判定することができるとともに、特定値記憶領域2bの記憶容量も小さくすることができる。
【実施例7】
【0160】
本発明の実施例7は、システム特定値を生成するさらに別の方式について具体的レベルで展開するものである。本実施例7は上述の(13)に対応している。本実施例7は実施例5の代替案であり、外部記憶装置20におけるファイルシステム21における記憶内容の変化を、ツリー構造ではなく、ファイルシステム21の空き容量および一番最後に書かれているクラスタ番号の変化を用いるものである。図14は本発明の実施例7におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【0161】
まずステップS61において、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20へアクセスし、外部記憶装置20におけるファイルシステム21からファイルシステムの総容量を取得する。
【0162】
次いでステップS62において、ファイルシステム21からクラスタの使用状態を表すビットマップデータ42を読み出す。
【0163】
次いでステップS63において、ポインタをクラスタの先頭に設定する。
【0164】
次いでステップS64において、現在のポインタからビットマップデータ42上のデータを取り出す。
【0165】
次いでステップS65において、そのクラスタの使用の有無を判定する。このクラスタが使用されていればステップS66に進み、そうでなければステップS67にジャンプする。
【0166】
ステップS66に進むと、ステップS61で取得した総容量から、使用されているクラスタのサイズを減じて、空き容量暫定値を求めるとともに、同時に最後に書かれているクラスタ番号を現在参照しているクラスタ番号で書き換える。
【0167】
ステップS67では、すべてのクラスタでの上記の確認が完了したかを判定し、完了していないときはステップS68に進み、完了したときはステップS69に進む。
【0168】
ステップS68においては、ポインタを1つ進め、ステップS64に戻った上でステップS66の処理を同様に行い、ビットマップデータ42上のすべてのデータについて処理が完了するまで行う。
【0169】
次いでステップS69において、最終的に取得されたファイルシステム21の空き容量に重み付けをするとともに、最後に書かれているクラスタ番号に重み付けをし、両者を加算することでシステム特定値δnを生成する。
【0170】
このようにして得られたシステム特定値δnは、サイズが小さく、かつ状態が変化したときに同じ値になりにくいシステム特定値δnが生成されることになる。その結果、ファイルシステムにおける記憶内容の変化を容易に判定することができるとともに、特定値記憶領域2bの記憶容量も小さくすることができる。
【実施例8】
【0171】
本発明の実施例8は、システム特定値を生成するさらに別の方式について具体的レベルで展開するものである。本実施例8は上述の(14)に対応している。本実施例8は実施例5の代替案であり、外部記憶装置20におけるファイルシステム21における記憶内容の変化を、ツリー構造ではなく、ファイルシステム21に記録されているクラスタの使用状態を表すビットマップデータ42の変化を用いるものである。図15は本発明の実施例8におけるコンテンツデータ再生装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【0172】
外部記憶装置20におけるファイルシステム21については、ビットマップデータ42に、クラスタの使用の有無をビット単位で表したものがある。
【0173】
まずステップS71において、通信インターフェース6を介して外部記憶装置20へアクセスする。
【0174】
次いでステップS72において、外部記憶装置20におけるファイルシステム21に登録されたビットマップデータ42を読み出す。
【0175】
次いでステップS73において、読み出したビットマップデータ42をマイクロコンピュータ1の扱いやすいビット単位で取り出す。例えば32ビットマイコンであれば、32ビット単位で取り出す。
【0176】
ステップS74では、ビットマップデータ42のすべてにおいて上記のデータ取得が完了したかを判定し、完了していないときはステップS72に進み、完了したときはステップS75に進む。
【0177】
ステップS75においては、取得したビットマップデータ42ごとのデータからハッシュ関数h(xi)を使用してシステム特定値δnを生成する。
【0178】
このようなハッシュ関数h(xi)を使用した畳み込みにより、サイズが小さく、かつ状態が変化したときに同じ値になりにくいハッシュ値のシステム特定値δnが生成されることになる。その結果、ファイルシステムにおける記憶内容の変化を容易に判定することができるとともに、特定値記憶領域2bの記憶容量も小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明は、取り外し可能な外部記憶装置のコンテンツデータ再生装置において、電源オフ前または外部記憶装置取り外し前に再生していたコンテンツデータの再生中断位置からの再生開始(再生再開)を行う処理につき、マイクロプロセッサにかかるソフトウェア負荷を軽減し、再生開始のタイミングを早期化し、必要とする記憶容量を低減する技術として有用である。
【符号の説明】
【0180】
E1 識別情報記憶手段
E2 識別情報比較手段
E3 特定値生成手段
E4 特定値記憶手段
E5 特定値比較手段
E6 再生中断位置記憶手段
E7 再生開始制御手段
E8 ツリー構造記憶手段
En-1 最終使用の外部記憶装置
En 新装着の外部記憶装置
H1 識別情報比較手段による比較結果
H2 特定値比較手段による比較結果
Na ファイル数
Nb フォルダの識別子番号
Nc フォルダ内順位番号
αn 新装着の外部記憶装置の識別情報
αn-1 最終使用の外部記憶装置の識別情報
βn ファイルシステムの情報
γn ファイルのツリー構造
δn 新装着の外部記憶装置のシステム特定値
δn-1 最終使用の外部記憶装置のシステム特定値
εn,εn-1 ツリー構造情報
λn-1 再生中断位置情報
1 マイクロプロセッサ(MPU)
2 記憶装置
2a 識別情報記憶領域
2b 特定値記憶領域
2c ツリー構造一時記憶領域
2d ツリー構造記憶領域
2e 再生中断位置記憶領域
3 識別情報比較部
4 特定値生成部
5 特定値比較部
6 通信インターフェース
10 コンテンツデータ再生装置
20 外部記憶装置
21 ファイルシステム
22 通信インターフェース
30 通信バスライン
41 ファイル・アロケーション・テーブル
42 ビットマップデータ
43 ユーザデータ領域
44 ツリー構造情報
45 ファイルデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り外し可能な外部記憶装置で最終使用の外部記憶装置の識別情報をその取り外し後も保持しておく識別情報記憶手段と、
新装着の外部記憶装置の識別情報を前記識別情報記憶手段に保持されている識別情報と比較する識別情報比較手段と、
新装着の外部記憶装置が有しているファイルシステムの情報からそのファイルシステムの状態を表すシステム特定値を生成する特定値生成手段と、
最終使用の外部記憶装置のシステム特定値をその取り外し後も保持しておく特定値記憶手段と、
前記特定値生成手段による新装着の外部記憶装置のシステム特定値を前記特定値記憶手段に保持されているシステム特定値と比較する特定値比較手段と、
最終使用の外部記憶装置について、その再生が中断したときの再生中断位置情報を保持しておく再生中断位置記憶手段と、
前記識別情報比較手段による比較結果と前記特定値比較手段による比較結果とを受け取り、これら2つの比較結果がともに一致を示すときは、前記再生中断位置記憶手段が保持している再生中断位置情報に従って再生の実効的な開始を制御する再生開始制御手段とを備えたコンテンツデータ再生装置。
【請求項2】
前記再生開始制御手段は、前記識別情報比較手段による比較結果が一致でかつ前記特定値比較手段による比較結果が一致のときに再生開始の制御を行うように構成され、
前記特定値生成手段は、前記再生開始制御手段の動作が開始される前に動作するように構成されている請求項1に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項3】
前記再生開始制御手段と前記特定値比較手段とは、前記識別情報比較手段による比較結果が一致のときに並行的に動作し、
前記再生開始制御手段は、前記識別情報比較手段による比較結果が一致のときに再生開始の制御を行い、前記特定値比較手段による比較結果が一致となれば前記再生開始の制御を継続し、前記特定値比較手段による比較結果が不一致となれば前記再生開始の制御を停止するように構成されている請求項1に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項4】
前記特定値生成手段は、その動作順位につき、前記識別情報比較手段の動作の後に動作するように構成されている請求項3に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項5】
前記再生開始制御手段による判定で、前記識別情報比較手段による比較結果が不一致である場合、または前記特定値比較手段による比較結果が不一致である場合、あるいはその両方が不一致の場合には、新装着の外部記憶装置の識別情報を新たな識別情報として前記識別情報記憶手段において更新登録するとともに、新装着の外部記憶装置のシステム特定値を新たなシステム特定値として前記特定値記憶手段において更新登録するように構成されている請求項2に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項6】
前記再生開始制御手段による判定で、前記識別情報比較手段による比較結果が不一致である場合には、新装着の外部記憶装置の識別情報を新たな識別情報として前記識別情報記憶手段において更新登録するように構成されている請求項3に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項7】
前記再生開始制御手段による判定で、前記特定値比較手段による比較結果が不一致である場合には、新装着の外部記憶装置のシステム特定値を新たなシステム特定値として前記特定値記憶手段において更新登録するように構成されている請求項3に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項8】
前記特定値生成手段は、外部記憶装置のファイルシステムにおけるファイル・アロケーション・テーブルまたはビットマップ情報またはツリー構造情報のいずれかの情報をハッシュ関数を使用して畳み込み、前記システム特定値を算出するように構成されている請求項1から請求項7までのいずれかに記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項9】
前記特定値生成手段は、外部記憶装置における各フォルダごとにフォルダ内に存在するファイル数をNa、当該のフォルダにつき自己が所属している1つ上位のフォルダの識別子番号をNb、自己が所属するしている1つ上位のフォルダ内で自己が先頭からの何番目のフォルダであるかを表すフォルダ内順位番号をNcとして、これら3つの情報Na,Nb,Ncの組である配列(Na,Nb,Nc)をハッシュ関数を使用して畳み込み、前記システム特定値を算出するように構成されている請求項1から請求項7までのいずれかに記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項10】
前記特定値生成手段は、外部記憶装置における各フォルダごとにフォルダ内に存在するファイル数をNa、当該のフォルダにつき自己が所属している1つ上位のフォルダの識別子番号をNb、自己が所属するしている1つ上位のフォルダ内で自己が先頭からの何番目のフォルダであるかを表すフォルダ内順位番号をNcとして、これら3つの情報からなる配列(Na,Nb,Nc)から一意の値を定める演算式を用いてフォルダ状態値を算出し、その上でさらに、各フォルダごとのフォルダ状態値のすべてをハッシュ関数で畳み込み、前記システム特定値を算出するように構成されている請求項1から請求項7までのいずれかに記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項11】
前記特定値生成手段は、前記一意の値を定める演算式として、前記3つの情報のうちのいずれか2つの情報の互いにシフト量を異にするビットシフトと、ビットシフト後のものを含む3つの情報の論理和との組み合わせを用いる請求項10に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項12】
前記特定値生成手段は、外部記憶装置におけるファイルシステムに記憶されているクラスタのリスト情報をハッシュ関数で畳み込み、前記システム特定値を生成するように構成されている請求項1から請求項7までのいずれかに記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項13】
前記特定値生成手段は、外部記憶装置におけるファイルシステムの情報から、ファイルシステムの現在の空き容量の値と、最後に書き込まれたクラスタの番号の値を計算し、2つの値に重み付けをして加算して、前記システム特定値を生成するように構成されている請求項1から請求項7までのいずれかに記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項14】
前記特定値生成手段は、外部記憶装置におけるファイルシステムに記憶されているクラスタの使用の有無を表すビットマップ情報を特定のビット単位ごとでハッシュ関数で畳み込み、前記システム特定値を生成するように構成されている請求項1から請求項7までのいずれかに記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項15】
さらに、前記外部記憶装置におけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報を保持しておくツリー構造記憶手段を備え、
前記再生開始制御手段は、前記識別情報比較手段による比較結果と前記特定値比較手段による比較結果の少なくともいずれか一方が不一致のときは、前記ツリー構造記憶手段に新装着の外部記憶装置におけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造を記憶させるように構成されている請求項2に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項16】
さらに、前記外部記憶装置におけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造情報を保持しておくツリー構造記憶手段を備え、前記再生開始制御手段は、前記識別情報比較手段による比較結果が不一致のとき、および前記特定値比較手段による比較結果が不一致のときは、前記ツリー構造記憶手段に新装着の外部記憶装置におけるファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造を記憶させるように構成されている請求項3に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項17】
前記ツリー構造記憶手段は、外部記憶装置における各フォルダごとにフォルダ内に存在するファイル数をNa、当該のフォルダにつき自己が所属している1つ上位のフォルダの識別子番号をNb、自己が所属するしている1つ上位のフォルダ内で自己が先頭からの何番目のフォルダであるかを表すフォルダ内順位番号をNcとして、これら3つの情報Na,Nb,Ncの組である配列(Na,Nb,Nc)を現在装着の外部記憶装置のファイルシステム上のファイル・フォルダのツリー構造として記憶するように構成されている請求項15または請求項16に記載のコンテンツデータ再生装置。
【請求項18】
電源オンに伴って、前記各手段を動作させるように構成されている請求項1から請求項17までのいずれかに記載のコンテンツデータ再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−113594(P2011−113594A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267479(P2009−267479)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】