コンテンツ再生装置及びコンテンツ再生方法
【課題】コンテンツファイルの再生を再開するために記憶部に保存するデータ量を削減可能なコンテンツ再生装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係るコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部104に保存するバックアップ部103を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が中断されると、バッファ102にバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部104に保存するバックアップ部106を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が再開されると、先頭メタデータを示すコンテンツデータと、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、未再生のコンテンツデータとをバッファ102に順次バッファリングさせる再開処理部107を含む。
【解決手段】実施形態に係るコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部104に保存するバックアップ部103を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が中断されると、バッファ102にバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部104に保存するバックアップ部106を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が再開されると、先頭メタデータを示すコンテンツデータと、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、未再生のコンテンツデータとをバッファ102に順次バッファリングさせる再開処理部107を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コンテンツファイルの再生に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンテンツ再生装置がネットワーク経由でコンテンツサーバからコンテンツファイルをダウンロードできるコンテンツ配信システムが運用されている。コンテンツファイルは、所定のファイル形式(例えばMP4)で保存されて配信される。
【0003】
このようなコンテンツ配信システムを利用可能なコンテンツ再生装置には、例えば携帯電話機、パーソナルコンピュータ、TV受信機、ビデオレコーダ、ビデオゲーム機などの様々な機器が含まれる。これらコンテンツ再生装置が利用可能なハードウェア資源も様々であって、大容量のコンテンツファイルを保存できる記憶容量を備える機器もあれば、そうでない機器もある。
【0004】
コンテンツファイルのダウンロードをバックグラウンドで実行しながら、当該コンテンツファイルのうち再生可能な(ダウンロード済みの)コンテンツデータを再生する機能が提案されている。このような機能によれば再生済みのコンテンツデータを順次破棄することもできるので、記憶容量の乏しいコンテンツ再生装置であっても大容量のコンテンツファイルをダウンロードしながら再生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−46944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンテンツ再生装置が、例えば携帯電話機のような多機能な機器である場合、コンテンツファイルの再生中に呼の着信などの割り込み処理が発生することがある。割り込み処理が発生するとコンテンツファイルの再生は中断され、割り込み処理の終了後にコンテンツファイルの再生を再開することになる。また、ユーザがコンテンツファイルの再生の中断を希望することもある。
【0007】
しかしながら、ファイル全体が常に参照可能であることを前提としている形式(例えばMP4)のコンテンツファイルを再生する場合には、再生済みのコンテンツデータを破棄するとコンテンツファイルの整合性を維持できない。故に、再生を再開するためには未再生のコンテンツデータだけでなく、コンテンツファイルの先頭からこの未再生のコンテンツデータの先頭までのデータも必要となる。コンテンツファイルを先頭から再ダウンロードすることによってコンテンツファイルの再生の再開は可能であるが、この再ダウンロードに伴う遅延及び通信コストは好ましくない。また、ダウンロード済みの全てのコンテンツデータを記憶部に保存しておくことによっても再生の再開は可能であるが、保存処理の負荷、記憶領域の圧迫などが好ましくないし、コンテンツデータの量が記憶部の記憶容量を超えていれば保存は不可能である。また、コンテンツ配信元は、コンテンツの再生回数、再生可能時期などに制限を課す(例えばコンテンツの再生を1回に制限する)ことを希望する場合がある。コンテンツの再生が1回に制限されているならば、再生済みのコンテンツデータを記憶部に保存したとしてもコンテンツファイルの整合性を維持するために利用できるに過ぎない。
【0008】
従って、本発明の実施形態は、コンテンツファイルの再生を再開するために記憶部に保存するデータ量を削減可能なコンテンツ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るコンテンツ再生装置は、バッファと、コンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを受信し、バッファにバッファリングさせるダウンローダを含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部に保存する第1のバックアップ部と、コンテンツデータをバッファのバッファリング順に従って再生する再生部を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が中断されると、バッファにバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部に保存する第2のバックアップ部を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が再開されると、先頭メタデータを示すコンテンツデータと、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、未再生のコンテンツデータとをバッファに順次バッファリングさせる再開処理部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係るコンテンツ再生装置を示す機能ブロック図。
【図2】一実施形態に係るコンテンツ再生装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図3】コンテンツ配信システムを示すブロック図。
【図4】一実施形態に係るコンテンツ再生装置のソフトウェア構成を示すブロック図。
【図5】コンテンツファイルの構造を示す図。
【図6】一実施形態に係るコンテンツ再生装置が行う再生再開処理の説明図。
【図7】再生再開時にファイルの整合性を保つためのデータを示す図。
【図8】再生再開地点の説明図。
【図9】一実施形態に係るコンテンツ再生装置が行うコンテンツ再生処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
(一実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るコンテンツ再生装置は、ダウンローダ101、バッファ102、第1のバックアップ部103、記憶部104、再生部105、第2のバックアップ部106及び再開処理部107を有する。図1の各機能ブロックは、本実施形態に係るコンテンツ再生装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成と併せて後述する。
【0012】
本実施形態に係るコンテンツ再生装置のハードウェア構成を図2に例示する。図2のコンテンツ再生装置30は、典型的には携帯電話機であるが、これに限られない。コンテンツ再生装置30は、図3に示すように、コンテンツサーバ31からネットワーク32を介して所望のコンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを順次ダウンロードしつつ、再生可能なコンテンツデータを再生する。
【0013】
CPU(Central Processing Unit)10は、記憶部16に保存されたコンテンツ再生プログラムを実行することにより、本実施形態に係るコンテンツ再生装置の機能を実現する。メモリ11は、CPU10などによって使用されるデータを一時的に記憶する揮発性記憶媒体である。
【0014】
入力装置12は、複数のキースイッチ(例えば、テンキー)、タッチパネルなどのデバイスである。入力処理部13は、この入力装置12を介してユーザからの要求を受け付けるユーザインタフェースである。
【0015】
通信部14は、CPU10からの指示に従って、データの送受信に必要な処理を行う。アンテナ15は、送信データに基づくRF(Radio Frequency)帯の信号を送信したり、受信データの基礎となるRF帯の信号を受信したりする。尚、コンテンツ再生装置が有線通信を行う場合には、アンテナ15は有線通信のための端子などに置き換えられてもよい。記憶部16は、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性記憶媒体である。前述の通り、記憶部16には、コンテンツ再生プログラムなどが記憶される。
【0016】
音声処理部17は、音声データのデコード及びその他の音声処理を行う。音声出力部18は例えばスピーカであり、音声処理部17からの音声信号を出力する。映像処理部19は、映像データのデコード及びその他の映像処理を行う。映像出力部20は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどであり、映像処理部19からの映像信号を出力する。
【0017】
本実施形態に係るコンテンツ再生装置のソフトウェア構成を図4に例示する。CPU10がコンテンツ再生プログラムを実行することにより、再生アプリケーション110、ダウンローダ120、バッファ130、パーサ140及びデコーダ150が実現される。
【0018】
再生アプリケーション110は、入力装置12及び入力処理部13を介してユーザからの入力を受理し、所望のコンテンツファイルの再生を開始するための処理を行う。例えば、再生アプリケーション110は、所望のコンテンツファイルのダウンロードをダウンローダ120に指示する。その他、再生アプリケーション110は、ダウンローダ120、バッファ130、パーサ140及びデコーダ150の動作を指示する。また、再生アプリケーション110は、呼の着信などの割り込み処理が発生するとオペレーティングシステムなどからの要求に応じてコンテンツファイルの再生を中断するための処理を行う。再生アプリケーション110は、割り込み処理が終了するとコンテンツファイルの再生を再開するための処理を行う。
【0019】
ダウンローダ120は、通信部14及びアンテナ15を介して所望のコンテンツファイルに含まれるコンテンツデータをコンテンツサーバからネットワーク経由で順次ダウンロードする。ダウンローダ120によってダウンロードされたコンテンツデータは、バッファ130によって図示しないバッファメモリに順次バッファリングされる。
【0020】
バッファ130は、メモリ11の一部の記憶領域を利用して、ダウンロード済みコンテンツデータをバッファリングするソフトウェアである。バッファ130は、バッファリングしているコンテンツデータをパーサ140に渡す。バッファ130は、引き渡すコンテンツデータの先頭のファイル位置及び引き渡すコンテンツデータのデータサイズをパーサ140に通知する。尚、バッファ130は、パーサ140からの要求に従って当該パーサ140に渡すコンテンツデータを決定してもよいし、パーサ140に渡すコンテンツデータを自律的に決定してもよい。
【0021】
パーサ140は、バッファ130から渡されたコンテンツデータを解析し、当該コンテンツデータを映像データ及び音声データに分離してデコーダ150に入力する。尚、パーサ140は、再生に必要なコンテンツデータの引き渡しをバッファ130に要求してもよい。
【0022】
デコーダ150は、映像処理部19及び音声処理部17を制御して映像データ及び音声データを所定の符号化方式に従ってデコードし、映像出力部20及び音声出力部18を介して出力する。
【0023】
以下、前述のハードウェア構成及びソフトウェア構成を参照しながら図1の各機能ブロックを説明する。
ダウンローダ101は、図2のダウンローダ120と同一または類似の機能を備える。ダウンローダ101は、CPU10によって実行中の再生アプリケーション110からの指示に従って、所望のコンテンツファイルに含まれるコンテンツデータをコンテンツサーバからネットワーク経由で順次ダウンロードする。ダウンローダ101は、ダウンロードしたコンテンツデータをバッファ102に順次バッファリングさせる。
【0024】
ここで、図5を用いて、コンテンツファイルの構造を説明する。本実施形態に係るコンテンツ再生装置が再生対象とするコンテンツファイルは、ファイル全体が常に参照可能であることを前提としている形式(例えばMP4)である。故に、コンテンツファイル内のコンテンツデータを部分的に除去して前詰めすると、整合性を維持できない。
【0025】
コンテンツファイルは、映像または音声データであるメディアデータと、このメディアデータを再生するために必要な情報(コンテンツファイルの構造、各フレームの再生時刻など)を示すメタデータとを含む。即ち、コンテンツデータとは、メディアデータまたはメタデータである。
【0026】
コンテンツファイル内においてメディアデータは複数に分割して配置され、その分割されたメディアデータの各々には分割されたメタデータが付与される。この分割されたメタデータ及び分割されたメディアデータの組み合わせは、一般的にフラグメントと呼ばれる。フラグメント内のメタデータは、同一のフラグメント内のメディアデータを再生するために必要な情報(このメディアデータに含まれる各フレームの再生時刻など)を示す。コンテンツファイルの再生を開始するために必要な情報(コンテンツファイルの構造など)は、先頭メタデータの一部としてフラグメントよりも前に配置される。また、この先頭メタデータは、先頭メディアデータを再生するために必要な情報(この先頭メディアデータに含まれる各フレームの再生時刻など)も含んでいる。フラグメントは、先頭メタデータ及び先頭メディアデータに続けて配置される。先頭メタデータは、先頭メディアデータよりも前に配置されることもあるし、先頭メディアデータよりも後に配置されることもある。例えば、コンテンツファイルがMP4形式であれば、先頭メタデータはmoov boxなどの複数のboxの組み合わせに相当し、フラグメント内のメタデータはmoof boxに相当する。
【0027】
バッファ102は、図2のバッファ130と同一または類似の機能を備える。バッファ102は、メモリ11の一部の記憶領域をバッファメモリとして利用して、ダウンロード済みコンテンツデータをバッファリングする。バッファ102は、バッファリングしているコンテンツデータを再生部105に渡す。
【0028】
第1のバックアップ部103は、先頭メタデータを示すコンテンツデータを複製し、記憶部104に保存する。この第1のバックアップ部103は、図2の再生アプリケーション110、バッファ130またはパーサ140によって実現される。先頭メディアデータの再生時間が15秒間程度であれば、先頭メタデータのサイズは数kbyte程度である。尚、先頭メタデータを記憶部103に保存するタイミングをコンテンツファイルの再生開始前に設定すれば、コンテンツファイルの再生処理に負荷を掛けることなく保存処理を実行できる。
【0029】
記憶部104は、図1の記憶部16に相当する不揮発性記憶媒体である。再生部105は、図2のパーサ140及びデコーダ150の組み合わせと同一または類似の機能を備える。再生部105は、バッファ102から渡されたコンテンツデータに基づいてコンテンツファイルを再生する。
【0030】
第2のバックアップ部106は、コンテンツファイルの再生が中断されると、バッファ102によってバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部104に保存する。尚、再生再開地点を示す情報は後述する。この第2のバックアップ部106は、図2の再生アプリケーション110、バッファ130またはパーサ140によって実現される。
【0031】
再開処理部107は、コンテンツファイルの再生が再開されると、記憶部104に保存されている先頭メタデータと、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、記憶部104に保存されている未再生のコンテンツデータとを読み出す。読み出された各データは、バッファ102によって順次バッファリングされる。尚、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータは後述する。この再開処理部107は、図2の再生アプリケーション110またはバッファ130によって実現される。
【0032】
以下、図6を用いて、本実施形態に係るコンテンツ再生装置が行う再生再開処理を説明する。前述のように、コンテンツファイルは、ファイル全体が常に参照可能であることを前提としている形式(例えばMP4)である。故に、コンテンツファイル内のコンテンツデータを部分的に除去して前詰めすると、整合性を維持できない。
【0033】
先頭メタデータは、コンテンツファイルの再生を開始するために必要な情報を含んでいるので、コンテンツファイルの再生再開に必要である。先頭メタデータは、第1のバックアップ部103によって記憶部104に保存されている。この記憶部104に保存された先頭メタデータは、再生再開時に利用される。尚、コンテンツファイルの構造次第では、先頭メタデータが先頭メディアデータを参照する(例えば先頭フレーム画像を表示するために)こともある。このような場合には、第1のバックアップ部103は先頭メディアデータも先頭メタデータと併せて記憶部104に保存し、この保存された先頭メディアデータ及び先頭メタデータの両方が再生再開時に利用される。
【0034】
再生済みのコンテンツデータは、再生再開時にファイルの整合性を保つためのデータに置換される。この整合性を保つためのデータとは、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータを含む。再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータは、例えばMP4におけるskip boxまたはfree boxに相当する。再生再開時にファイルの整合性を保つためのデータの構造を図7に例示する。図7のサイズフィールド(4byte)にはスキップする対象となるデータ量を示す情報が格納される。例えば、先頭メタデータの末尾(または再生部105からの参照先)から未再生のコンテンツデータの先頭までのデータ量を示す情報がサイズフィールドに格納される。また、図7の種別フィールド(4byte)には、このデータの種別を示す情報が格納される。再生部105(パーサ140)は、通常、スキップを指示するデータに従って再生再開地点まで解析をスキップするように設計されるので、バッファ102はこのサイズフィールド及び種別フィールドに格納された情報を再生部105に渡すだけでコンテンツファイルの整合性を維持できる。もし、バッファ102が再生部105から再生済みコンテンツデータを要求されたとしても、要求されたデータ量に応じたダミーデータを生成して渡すことにより、コンテンツファイルの整合性を維持できる。
【0035】
未再生のコンテンツデータは、第2のバックアップ部106によって記憶部104に保存されている。この記憶部104に保存された未再生のコンテンツデータも、再生再開時に利用される。
【0036】
このように、再生済みのコンテンツデータを、スキップを指示するデータに置換することにより、再生済みのコンテンツデータを保存することなくコンテンツファイルの整合性を維持できる。また、先頭メタデータ(場合によっては、先頭メディアデータを含む)は再生開始前に、未再生のコンテンツデータは再生中断後に記憶部104に夫々保存できるので、保存処理が再生処理に負荷を掛けずに済む。また、仮に再生済みのコンテンツデータを保存していたとしても、このコンテンツデータの再生を行わないのであればスキップを指示するデータを利用した方がよい。再生済みのコンテンツデータを、スキップを指示するデータに置換すれば、このコンテンツデータを記憶部104からバッファ102、バッファ102から再生部105へ転送することによる処理遅延を回避できる。
【0037】
以下、図8を用いて再生再開地点を説明する。図8において、ファイル位置はコンテンツデータ(メディアデータ及びメタデータ)のコンテンツファイル内の位置を示しており、再生時刻は対応するファイル位置に配置されるコンテンツデータ(メディアデータ)に付与される再生時刻を示している。中断地点は、再生が中断された地点に対応する再生時刻を示している。再生再開地点は、再生を再開する地点に対応するファイル位置を示している。具体的には、再生再開地点は、中断地点が属するフラグメントの先頭位置を示している。即ち、フラグメントの途中で再生が中断された場合、このフラグメントの先頭から再生が再開される。従って、厳密には再生済みの映像または音声であっても、再生再開時には未再生コンテンツデータの一部として再生されることになる。フラグメントの先頭から再生を再開させることの目的の一つは、未再生の映像の復号が実行できることを担保するためである。映像を構成するフレームは、時間的に過去のフレームを参照しなければ復号できない場合があり、再生済みのフレームを破棄すると未再生のフレームの復号が実行できないことがある。尚、第2のバックアップ部106によって記憶部104に保存される再生再開地点を示す情報は、ファイル位置を示す情報に加えてこのファイル位置に対応する再生時刻を示す情報を含んでもよい。再生時刻を示す情報を保存することにより、再生再開時にコンテンツファイルの再生時刻を正確に復元することができる。例えば、図8に示すように「01:00:00」という再生時刻を示す情報を保存しておけば、再生再開時にこの「01:00:00」を基準に正しい再生時刻をカウントできる。一方、再生時刻を示す情報を保存しておかなければ、再生再開時にコンテンツファイルの再生時刻が「00:00:00」などにリセットされてしまうので正確な再生時刻が不明となってしまう。尚、再生再開地点を示す情報は、パーサ140の機能を利用することにより取得可能である。
【0038】
以下、図9を用いて、本実施形態に係るコンテンツ再生装置が行うコンテンツ再生処理を説明する。
まず、ダウンローダ101は、所望のコンテンツファイルのダウンロードを開始する(ステップS201)。ダウンローダ101によってダウンロードされたコンテンツデータは、バッファ102によって順次バッファリングされる。
【0039】
第1のバックアップ部103は、バッファ102によってバッファリングされている先頭メタデータを複製し、記憶部104に保存する(ステップS202)。再生部105は、バッファ102に所定量のコンテンツデータがバッファリングされるとコンテンツファイルの再生を開始する(ステップS203)。ネットワーク経由でコンテンツデータをダウンロードする場合、様々な要因によって通信速度が低下したり、通信が切断されたりすることがある。所定量のコンテンツデータがバッファにバッファリングされるまで再生処理を待機すれば、一時的な通信速度の低下、通信の切断などが生じた場合にこの所定量のコンテンツデータがマージンとして働くのでコンテンツファイルの再生が途切れにくくなる。尚、このマージンが大きくなるほど再生は途切れにくくなるもののダウンロードの開始から再生の開始までの遅延は大きくなる。
【0040】
コンテンツファイルのダウンロード及び再生中に、割り込み処理が発生する(ステップS204)。割り込み処理が発生すると、ダウンローダ101はコンテンツファイルのダウンロードを中断し、再生部105はコンテンツファイルの再生を中断する(ステップS205)。第2のバックアップ部106は、バッファ102によってバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部104に保存する(ステップS206)。
【0041】
割り込み処理が終了すると(ステップS207)、再開処理部107が再生再開のための処理を行う(ステップS208)。具体的には、再開処理部107は、ステップS202において保存された先頭メタデータを記憶部104から読み出し、この先頭メタデータはバッファ102によってバッファリングされる。次に、再開処理部107は、ステップS206において保存された再生再開地点を示す情報を記憶部104から読み出し、この再生再開地点までのスキップを指示するデータを生成する。そして、このデータはバッファ102によってバッファリングされる。次に、再開処理部107は、ステップS206において保存された未再生のコンテンツデータを記憶部104から読み出し、この未再生のコンテンツデータはバッファ102によってバッファリングされる。
【0042】
ステップS208が終了すると、ダウンローダ101はコンテンツファイルのダウンロードを再開し、再生部105はバッファ102によって所定量のコンテンツデータがバッファリングされてから再生を再開する(ステップS209)。
【0043】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生再開時に、再生済みのコンテンツデータを再生再開地点までのスキップを指示するデータに置換する。従って、本実施形態に係るコンテンツ再生装置によれば、再生済みのコンテンツデータを保存しなくてもコンテンツファイルの整合性を維持することができる。即ち、本実施形態によれば、コンテンツファイルの再生を再開するために記憶部に保存するデータ量を削減可能なコンテンツ再生装置を提供することができる。
【0044】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。
【0045】
例えば、上記実施形態の処理を実現するプログラムを、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供することも可能である。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなど、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態の処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10・・・CPU
11・・・メモリ
12・・・入力装置
13・・・入力処理部
14・・・通信部
15・・・アンテナ
16・・・記憶部
17・・・音声処理部
18・・・音声出力部
19・・・映像処理部
20・・・映像出力部
30・・・コンテンツ再生装置
31・・・コンテンツサーバ
32・・・ネットワーク
101・・・ダウンローダ
102・・・バッファ
103・・・第1のバックアップ部
104・・・記憶部
105・・・再生部
106・・・第2のバックアップ部
107・・・再開処理部
110・・・再生アプリケーション
120・・・ダウンローダ
130・・・バッファ
140・・・パーサ
150・・・デコーダ
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コンテンツファイルの再生に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンテンツ再生装置がネットワーク経由でコンテンツサーバからコンテンツファイルをダウンロードできるコンテンツ配信システムが運用されている。コンテンツファイルは、所定のファイル形式(例えばMP4)で保存されて配信される。
【0003】
このようなコンテンツ配信システムを利用可能なコンテンツ再生装置には、例えば携帯電話機、パーソナルコンピュータ、TV受信機、ビデオレコーダ、ビデオゲーム機などの様々な機器が含まれる。これらコンテンツ再生装置が利用可能なハードウェア資源も様々であって、大容量のコンテンツファイルを保存できる記憶容量を備える機器もあれば、そうでない機器もある。
【0004】
コンテンツファイルのダウンロードをバックグラウンドで実行しながら、当該コンテンツファイルのうち再生可能な(ダウンロード済みの)コンテンツデータを再生する機能が提案されている。このような機能によれば再生済みのコンテンツデータを順次破棄することもできるので、記憶容量の乏しいコンテンツ再生装置であっても大容量のコンテンツファイルをダウンロードしながら再生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−46944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンテンツ再生装置が、例えば携帯電話機のような多機能な機器である場合、コンテンツファイルの再生中に呼の着信などの割り込み処理が発生することがある。割り込み処理が発生するとコンテンツファイルの再生は中断され、割り込み処理の終了後にコンテンツファイルの再生を再開することになる。また、ユーザがコンテンツファイルの再生の中断を希望することもある。
【0007】
しかしながら、ファイル全体が常に参照可能であることを前提としている形式(例えばMP4)のコンテンツファイルを再生する場合には、再生済みのコンテンツデータを破棄するとコンテンツファイルの整合性を維持できない。故に、再生を再開するためには未再生のコンテンツデータだけでなく、コンテンツファイルの先頭からこの未再生のコンテンツデータの先頭までのデータも必要となる。コンテンツファイルを先頭から再ダウンロードすることによってコンテンツファイルの再生の再開は可能であるが、この再ダウンロードに伴う遅延及び通信コストは好ましくない。また、ダウンロード済みの全てのコンテンツデータを記憶部に保存しておくことによっても再生の再開は可能であるが、保存処理の負荷、記憶領域の圧迫などが好ましくないし、コンテンツデータの量が記憶部の記憶容量を超えていれば保存は不可能である。また、コンテンツ配信元は、コンテンツの再生回数、再生可能時期などに制限を課す(例えばコンテンツの再生を1回に制限する)ことを希望する場合がある。コンテンツの再生が1回に制限されているならば、再生済みのコンテンツデータを記憶部に保存したとしてもコンテンツファイルの整合性を維持するために利用できるに過ぎない。
【0008】
従って、本発明の実施形態は、コンテンツファイルの再生を再開するために記憶部に保存するデータ量を削減可能なコンテンツ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るコンテンツ再生装置は、バッファと、コンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを受信し、バッファにバッファリングさせるダウンローダを含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部に保存する第1のバックアップ部と、コンテンツデータをバッファのバッファリング順に従って再生する再生部を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が中断されると、バッファにバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部に保存する第2のバックアップ部を含む。このコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生が再開されると、先頭メタデータを示すコンテンツデータと、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、未再生のコンテンツデータとをバッファに順次バッファリングさせる再開処理部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係るコンテンツ再生装置を示す機能ブロック図。
【図2】一実施形態に係るコンテンツ再生装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図3】コンテンツ配信システムを示すブロック図。
【図4】一実施形態に係るコンテンツ再生装置のソフトウェア構成を示すブロック図。
【図5】コンテンツファイルの構造を示す図。
【図6】一実施形態に係るコンテンツ再生装置が行う再生再開処理の説明図。
【図7】再生再開時にファイルの整合性を保つためのデータを示す図。
【図8】再生再開地点の説明図。
【図9】一実施形態に係るコンテンツ再生装置が行うコンテンツ再生処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
(一実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るコンテンツ再生装置は、ダウンローダ101、バッファ102、第1のバックアップ部103、記憶部104、再生部105、第2のバックアップ部106及び再開処理部107を有する。図1の各機能ブロックは、本実施形態に係るコンテンツ再生装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成と併せて後述する。
【0012】
本実施形態に係るコンテンツ再生装置のハードウェア構成を図2に例示する。図2のコンテンツ再生装置30は、典型的には携帯電話機であるが、これに限られない。コンテンツ再生装置30は、図3に示すように、コンテンツサーバ31からネットワーク32を介して所望のコンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを順次ダウンロードしつつ、再生可能なコンテンツデータを再生する。
【0013】
CPU(Central Processing Unit)10は、記憶部16に保存されたコンテンツ再生プログラムを実行することにより、本実施形態に係るコンテンツ再生装置の機能を実現する。メモリ11は、CPU10などによって使用されるデータを一時的に記憶する揮発性記憶媒体である。
【0014】
入力装置12は、複数のキースイッチ(例えば、テンキー)、タッチパネルなどのデバイスである。入力処理部13は、この入力装置12を介してユーザからの要求を受け付けるユーザインタフェースである。
【0015】
通信部14は、CPU10からの指示に従って、データの送受信に必要な処理を行う。アンテナ15は、送信データに基づくRF(Radio Frequency)帯の信号を送信したり、受信データの基礎となるRF帯の信号を受信したりする。尚、コンテンツ再生装置が有線通信を行う場合には、アンテナ15は有線通信のための端子などに置き換えられてもよい。記憶部16は、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性記憶媒体である。前述の通り、記憶部16には、コンテンツ再生プログラムなどが記憶される。
【0016】
音声処理部17は、音声データのデコード及びその他の音声処理を行う。音声出力部18は例えばスピーカであり、音声処理部17からの音声信号を出力する。映像処理部19は、映像データのデコード及びその他の映像処理を行う。映像出力部20は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどであり、映像処理部19からの映像信号を出力する。
【0017】
本実施形態に係るコンテンツ再生装置のソフトウェア構成を図4に例示する。CPU10がコンテンツ再生プログラムを実行することにより、再生アプリケーション110、ダウンローダ120、バッファ130、パーサ140及びデコーダ150が実現される。
【0018】
再生アプリケーション110は、入力装置12及び入力処理部13を介してユーザからの入力を受理し、所望のコンテンツファイルの再生を開始するための処理を行う。例えば、再生アプリケーション110は、所望のコンテンツファイルのダウンロードをダウンローダ120に指示する。その他、再生アプリケーション110は、ダウンローダ120、バッファ130、パーサ140及びデコーダ150の動作を指示する。また、再生アプリケーション110は、呼の着信などの割り込み処理が発生するとオペレーティングシステムなどからの要求に応じてコンテンツファイルの再生を中断するための処理を行う。再生アプリケーション110は、割り込み処理が終了するとコンテンツファイルの再生を再開するための処理を行う。
【0019】
ダウンローダ120は、通信部14及びアンテナ15を介して所望のコンテンツファイルに含まれるコンテンツデータをコンテンツサーバからネットワーク経由で順次ダウンロードする。ダウンローダ120によってダウンロードされたコンテンツデータは、バッファ130によって図示しないバッファメモリに順次バッファリングされる。
【0020】
バッファ130は、メモリ11の一部の記憶領域を利用して、ダウンロード済みコンテンツデータをバッファリングするソフトウェアである。バッファ130は、バッファリングしているコンテンツデータをパーサ140に渡す。バッファ130は、引き渡すコンテンツデータの先頭のファイル位置及び引き渡すコンテンツデータのデータサイズをパーサ140に通知する。尚、バッファ130は、パーサ140からの要求に従って当該パーサ140に渡すコンテンツデータを決定してもよいし、パーサ140に渡すコンテンツデータを自律的に決定してもよい。
【0021】
パーサ140は、バッファ130から渡されたコンテンツデータを解析し、当該コンテンツデータを映像データ及び音声データに分離してデコーダ150に入力する。尚、パーサ140は、再生に必要なコンテンツデータの引き渡しをバッファ130に要求してもよい。
【0022】
デコーダ150は、映像処理部19及び音声処理部17を制御して映像データ及び音声データを所定の符号化方式に従ってデコードし、映像出力部20及び音声出力部18を介して出力する。
【0023】
以下、前述のハードウェア構成及びソフトウェア構成を参照しながら図1の各機能ブロックを説明する。
ダウンローダ101は、図2のダウンローダ120と同一または類似の機能を備える。ダウンローダ101は、CPU10によって実行中の再生アプリケーション110からの指示に従って、所望のコンテンツファイルに含まれるコンテンツデータをコンテンツサーバからネットワーク経由で順次ダウンロードする。ダウンローダ101は、ダウンロードしたコンテンツデータをバッファ102に順次バッファリングさせる。
【0024】
ここで、図5を用いて、コンテンツファイルの構造を説明する。本実施形態に係るコンテンツ再生装置が再生対象とするコンテンツファイルは、ファイル全体が常に参照可能であることを前提としている形式(例えばMP4)である。故に、コンテンツファイル内のコンテンツデータを部分的に除去して前詰めすると、整合性を維持できない。
【0025】
コンテンツファイルは、映像または音声データであるメディアデータと、このメディアデータを再生するために必要な情報(コンテンツファイルの構造、各フレームの再生時刻など)を示すメタデータとを含む。即ち、コンテンツデータとは、メディアデータまたはメタデータである。
【0026】
コンテンツファイル内においてメディアデータは複数に分割して配置され、その分割されたメディアデータの各々には分割されたメタデータが付与される。この分割されたメタデータ及び分割されたメディアデータの組み合わせは、一般的にフラグメントと呼ばれる。フラグメント内のメタデータは、同一のフラグメント内のメディアデータを再生するために必要な情報(このメディアデータに含まれる各フレームの再生時刻など)を示す。コンテンツファイルの再生を開始するために必要な情報(コンテンツファイルの構造など)は、先頭メタデータの一部としてフラグメントよりも前に配置される。また、この先頭メタデータは、先頭メディアデータを再生するために必要な情報(この先頭メディアデータに含まれる各フレームの再生時刻など)も含んでいる。フラグメントは、先頭メタデータ及び先頭メディアデータに続けて配置される。先頭メタデータは、先頭メディアデータよりも前に配置されることもあるし、先頭メディアデータよりも後に配置されることもある。例えば、コンテンツファイルがMP4形式であれば、先頭メタデータはmoov boxなどの複数のboxの組み合わせに相当し、フラグメント内のメタデータはmoof boxに相当する。
【0027】
バッファ102は、図2のバッファ130と同一または類似の機能を備える。バッファ102は、メモリ11の一部の記憶領域をバッファメモリとして利用して、ダウンロード済みコンテンツデータをバッファリングする。バッファ102は、バッファリングしているコンテンツデータを再生部105に渡す。
【0028】
第1のバックアップ部103は、先頭メタデータを示すコンテンツデータを複製し、記憶部104に保存する。この第1のバックアップ部103は、図2の再生アプリケーション110、バッファ130またはパーサ140によって実現される。先頭メディアデータの再生時間が15秒間程度であれば、先頭メタデータのサイズは数kbyte程度である。尚、先頭メタデータを記憶部103に保存するタイミングをコンテンツファイルの再生開始前に設定すれば、コンテンツファイルの再生処理に負荷を掛けることなく保存処理を実行できる。
【0029】
記憶部104は、図1の記憶部16に相当する不揮発性記憶媒体である。再生部105は、図2のパーサ140及びデコーダ150の組み合わせと同一または類似の機能を備える。再生部105は、バッファ102から渡されたコンテンツデータに基づいてコンテンツファイルを再生する。
【0030】
第2のバックアップ部106は、コンテンツファイルの再生が中断されると、バッファ102によってバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部104に保存する。尚、再生再開地点を示す情報は後述する。この第2のバックアップ部106は、図2の再生アプリケーション110、バッファ130またはパーサ140によって実現される。
【0031】
再開処理部107は、コンテンツファイルの再生が再開されると、記憶部104に保存されている先頭メタデータと、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、記憶部104に保存されている未再生のコンテンツデータとを読み出す。読み出された各データは、バッファ102によって順次バッファリングされる。尚、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータは後述する。この再開処理部107は、図2の再生アプリケーション110またはバッファ130によって実現される。
【0032】
以下、図6を用いて、本実施形態に係るコンテンツ再生装置が行う再生再開処理を説明する。前述のように、コンテンツファイルは、ファイル全体が常に参照可能であることを前提としている形式(例えばMP4)である。故に、コンテンツファイル内のコンテンツデータを部分的に除去して前詰めすると、整合性を維持できない。
【0033】
先頭メタデータは、コンテンツファイルの再生を開始するために必要な情報を含んでいるので、コンテンツファイルの再生再開に必要である。先頭メタデータは、第1のバックアップ部103によって記憶部104に保存されている。この記憶部104に保存された先頭メタデータは、再生再開時に利用される。尚、コンテンツファイルの構造次第では、先頭メタデータが先頭メディアデータを参照する(例えば先頭フレーム画像を表示するために)こともある。このような場合には、第1のバックアップ部103は先頭メディアデータも先頭メタデータと併せて記憶部104に保存し、この保存された先頭メディアデータ及び先頭メタデータの両方が再生再開時に利用される。
【0034】
再生済みのコンテンツデータは、再生再開時にファイルの整合性を保つためのデータに置換される。この整合性を保つためのデータとは、再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータを含む。再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータは、例えばMP4におけるskip boxまたはfree boxに相当する。再生再開時にファイルの整合性を保つためのデータの構造を図7に例示する。図7のサイズフィールド(4byte)にはスキップする対象となるデータ量を示す情報が格納される。例えば、先頭メタデータの末尾(または再生部105からの参照先)から未再生のコンテンツデータの先頭までのデータ量を示す情報がサイズフィールドに格納される。また、図7の種別フィールド(4byte)には、このデータの種別を示す情報が格納される。再生部105(パーサ140)は、通常、スキップを指示するデータに従って再生再開地点まで解析をスキップするように設計されるので、バッファ102はこのサイズフィールド及び種別フィールドに格納された情報を再生部105に渡すだけでコンテンツファイルの整合性を維持できる。もし、バッファ102が再生部105から再生済みコンテンツデータを要求されたとしても、要求されたデータ量に応じたダミーデータを生成して渡すことにより、コンテンツファイルの整合性を維持できる。
【0035】
未再生のコンテンツデータは、第2のバックアップ部106によって記憶部104に保存されている。この記憶部104に保存された未再生のコンテンツデータも、再生再開時に利用される。
【0036】
このように、再生済みのコンテンツデータを、スキップを指示するデータに置換することにより、再生済みのコンテンツデータを保存することなくコンテンツファイルの整合性を維持できる。また、先頭メタデータ(場合によっては、先頭メディアデータを含む)は再生開始前に、未再生のコンテンツデータは再生中断後に記憶部104に夫々保存できるので、保存処理が再生処理に負荷を掛けずに済む。また、仮に再生済みのコンテンツデータを保存していたとしても、このコンテンツデータの再生を行わないのであればスキップを指示するデータを利用した方がよい。再生済みのコンテンツデータを、スキップを指示するデータに置換すれば、このコンテンツデータを記憶部104からバッファ102、バッファ102から再生部105へ転送することによる処理遅延を回避できる。
【0037】
以下、図8を用いて再生再開地点を説明する。図8において、ファイル位置はコンテンツデータ(メディアデータ及びメタデータ)のコンテンツファイル内の位置を示しており、再生時刻は対応するファイル位置に配置されるコンテンツデータ(メディアデータ)に付与される再生時刻を示している。中断地点は、再生が中断された地点に対応する再生時刻を示している。再生再開地点は、再生を再開する地点に対応するファイル位置を示している。具体的には、再生再開地点は、中断地点が属するフラグメントの先頭位置を示している。即ち、フラグメントの途中で再生が中断された場合、このフラグメントの先頭から再生が再開される。従って、厳密には再生済みの映像または音声であっても、再生再開時には未再生コンテンツデータの一部として再生されることになる。フラグメントの先頭から再生を再開させることの目的の一つは、未再生の映像の復号が実行できることを担保するためである。映像を構成するフレームは、時間的に過去のフレームを参照しなければ復号できない場合があり、再生済みのフレームを破棄すると未再生のフレームの復号が実行できないことがある。尚、第2のバックアップ部106によって記憶部104に保存される再生再開地点を示す情報は、ファイル位置を示す情報に加えてこのファイル位置に対応する再生時刻を示す情報を含んでもよい。再生時刻を示す情報を保存することにより、再生再開時にコンテンツファイルの再生時刻を正確に復元することができる。例えば、図8に示すように「01:00:00」という再生時刻を示す情報を保存しておけば、再生再開時にこの「01:00:00」を基準に正しい再生時刻をカウントできる。一方、再生時刻を示す情報を保存しておかなければ、再生再開時にコンテンツファイルの再生時刻が「00:00:00」などにリセットされてしまうので正確な再生時刻が不明となってしまう。尚、再生再開地点を示す情報は、パーサ140の機能を利用することにより取得可能である。
【0038】
以下、図9を用いて、本実施形態に係るコンテンツ再生装置が行うコンテンツ再生処理を説明する。
まず、ダウンローダ101は、所望のコンテンツファイルのダウンロードを開始する(ステップS201)。ダウンローダ101によってダウンロードされたコンテンツデータは、バッファ102によって順次バッファリングされる。
【0039】
第1のバックアップ部103は、バッファ102によってバッファリングされている先頭メタデータを複製し、記憶部104に保存する(ステップS202)。再生部105は、バッファ102に所定量のコンテンツデータがバッファリングされるとコンテンツファイルの再生を開始する(ステップS203)。ネットワーク経由でコンテンツデータをダウンロードする場合、様々な要因によって通信速度が低下したり、通信が切断されたりすることがある。所定量のコンテンツデータがバッファにバッファリングされるまで再生処理を待機すれば、一時的な通信速度の低下、通信の切断などが生じた場合にこの所定量のコンテンツデータがマージンとして働くのでコンテンツファイルの再生が途切れにくくなる。尚、このマージンが大きくなるほど再生は途切れにくくなるもののダウンロードの開始から再生の開始までの遅延は大きくなる。
【0040】
コンテンツファイルのダウンロード及び再生中に、割り込み処理が発生する(ステップS204)。割り込み処理が発生すると、ダウンローダ101はコンテンツファイルのダウンロードを中断し、再生部105はコンテンツファイルの再生を中断する(ステップS205)。第2のバックアップ部106は、バッファ102によってバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを記憶部104に保存する(ステップS206)。
【0041】
割り込み処理が終了すると(ステップS207)、再開処理部107が再生再開のための処理を行う(ステップS208)。具体的には、再開処理部107は、ステップS202において保存された先頭メタデータを記憶部104から読み出し、この先頭メタデータはバッファ102によってバッファリングされる。次に、再開処理部107は、ステップS206において保存された再生再開地点を示す情報を記憶部104から読み出し、この再生再開地点までのスキップを指示するデータを生成する。そして、このデータはバッファ102によってバッファリングされる。次に、再開処理部107は、ステップS206において保存された未再生のコンテンツデータを記憶部104から読み出し、この未再生のコンテンツデータはバッファ102によってバッファリングされる。
【0042】
ステップS208が終了すると、ダウンローダ101はコンテンツファイルのダウンロードを再開し、再生部105はバッファ102によって所定量のコンテンツデータがバッファリングされてから再生を再開する(ステップS209)。
【0043】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るコンテンツ再生装置は、コンテンツファイルの再生再開時に、再生済みのコンテンツデータを再生再開地点までのスキップを指示するデータに置換する。従って、本実施形態に係るコンテンツ再生装置によれば、再生済みのコンテンツデータを保存しなくてもコンテンツファイルの整合性を維持することができる。即ち、本実施形態によれば、コンテンツファイルの再生を再開するために記憶部に保存するデータ量を削減可能なコンテンツ再生装置を提供することができる。
【0044】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。
【0045】
例えば、上記実施形態の処理を実現するプログラムを、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供することも可能である。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなど、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態の処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10・・・CPU
11・・・メモリ
12・・・入力装置
13・・・入力処理部
14・・・通信部
15・・・アンテナ
16・・・記憶部
17・・・音声処理部
18・・・音声出力部
19・・・映像処理部
20・・・映像出力部
30・・・コンテンツ再生装置
31・・・コンテンツサーバ
32・・・ネットワーク
101・・・ダウンローダ
102・・・バッファ
103・・・第1のバックアップ部
104・・・記憶部
105・・・再生部
106・・・第2のバックアップ部
107・・・再開処理部
110・・・再生アプリケーション
120・・・ダウンローダ
130・・・バッファ
140・・・パーサ
150・・・デコーダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッファと、
コンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを受信し、前記バッファにバッファリングさせるダウンローダと、
前記コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部に保存する第1のバックアップ部と、
前記コンテンツデータを前記バッファのバッファリング順に従って再生する再生部と、
前記コンテンツファイルの再生が中断されると、前記バッファにバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを前記記憶部に保存する第2のバックアップ部と、
前記コンテンツファイルの再生が再開されると、前記先頭メタデータを示すコンテンツデータと、前記再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、前記未再生のコンテンツデータとを前記バッファに順次バッファリングさせる再開処理部と
を具備するコンテンツ再生装置。
【請求項2】
前記第1のバックアップ部は、前記コンテンツファイルが再生されるよりも前に前記先頭メタデータを示すコンテンツデータを前記記憶部に保存する、請求項1記載のコンテンツ再生装置。
【請求項3】
前記解析のスキップを指示するデータは、前記解析のスキップの対象となるデータ量を示す情報を含む、請求項1記載のコンテンツ再生装置。
【請求項4】
前記再生再開地点を示す情報は、前記コンテンツファイルにおける前記未再生のコンテンツデータの先頭位置を示す情報と、前記先頭位置に対応する再生時刻を示す情報とを含む、請求項1記載のコンテンツ再生装置。
【請求項5】
コンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを受信し、バッファにバッファリングさせることと、
前記コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部に保存することと、
前記コンテンツデータを前記バッファのバッファリング順に従って再生することと、
前記コンテンツファイルの再生が中断されると、前記バッファにバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを前記記憶部に保存することと、
前記コンテンツファイルの再生が再開されると、前記先頭メタデータを示すコンテンツデータと、前記再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、前記未再生のコンテンツデータとを前記バッファに順次バッファリングすることと
を具備するコンテンツ再生方法。
【請求項1】
バッファと、
コンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを受信し、前記バッファにバッファリングさせるダウンローダと、
前記コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部に保存する第1のバックアップ部と、
前記コンテンツデータを前記バッファのバッファリング順に従って再生する再生部と、
前記コンテンツファイルの再生が中断されると、前記バッファにバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを前記記憶部に保存する第2のバックアップ部と、
前記コンテンツファイルの再生が再開されると、前記先頭メタデータを示すコンテンツデータと、前記再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、前記未再生のコンテンツデータとを前記バッファに順次バッファリングさせる再開処理部と
を具備するコンテンツ再生装置。
【請求項2】
前記第1のバックアップ部は、前記コンテンツファイルが再生されるよりも前に前記先頭メタデータを示すコンテンツデータを前記記憶部に保存する、請求項1記載のコンテンツ再生装置。
【請求項3】
前記解析のスキップを指示するデータは、前記解析のスキップの対象となるデータ量を示す情報を含む、請求項1記載のコンテンツ再生装置。
【請求項4】
前記再生再開地点を示す情報は、前記コンテンツファイルにおける前記未再生のコンテンツデータの先頭位置を示す情報と、前記先頭位置に対応する再生時刻を示す情報とを含む、請求項1記載のコンテンツ再生装置。
【請求項5】
コンテンツファイルに含まれるコンテンツデータを受信し、バッファにバッファリングさせることと、
前記コンテンツファイルにおける先頭メタデータを示すコンテンツデータを記憶部に保存することと、
前記コンテンツデータを前記バッファのバッファリング順に従って再生することと、
前記コンテンツファイルの再生が中断されると、前記バッファにバッファリングされている未再生のコンテンツデータと、再生再開地点を示す情報とを前記記憶部に保存することと、
前記コンテンツファイルの再生が再開されると、前記先頭メタデータを示すコンテンツデータと、前記再生再開地点までの解析のスキップを指示するデータと、前記未再生のコンテンツデータとを前記バッファに順次バッファリングすることと
を具備するコンテンツ再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−228791(P2011−228791A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94187(P2010−94187)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(310022372)富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(310022372)富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
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