説明

コンテンツ配信装置、受信装置およびこれらを備えた放送システム

【課題】配信されるコンテンツデータを短時間でダウンロード受信できるシステム。
【解決手段】コンテンツ配信装置はコンテンツデータを先頭からの順方向に配信すると同時に、終端からの逆方向のコンテンツデータも配信する。受信装置では、配信される順方向のコンテンツデータと逆方向のコンテンツデータをそれぞれ受信し、バッファを介して並び替え、該並び替えられたコンテンツデータを順次記憶する蓄積部を有し、該蓄積部から該コンテンツデータを読み出し、再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチメディアコンテンツを配信するコンテンツ配信装置、また配信装置より配信(無線または有線での配信)されるコンテンツを受信し表示部等を介して再生させることを可能にする受信装置、およびコンテンツを配信し、これを受信装置で受信再生可能にしてなる放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
提供される多数の情報のなかから所望する情報を選択し、これを表示媒体等を介して視聴できるように再生させるようにしたシステムがある。例えば、インターネットを介して各種情報の中から、使用者が所望する情報を簡単に取得できる。
【0003】
また、情報を無線または有線を利用して配信する放送システムにおいては、コンテンツ配信装置を備える放送局(配信部)から各種情報(コンテンツ)を配信し、ユーザ側では、配信されてくる情報等のコンテンツを選択するためのチューナ、また表示部を備えた受信装置を用いて受信し、表示再生するようにしている。例えば、各種コンテンツとして、動画等の映像(音声を含め)、テキスト等の情報を、無線配信するような場合、放送局から決められた搬送周波数に載せてコンテンツファイルを送信(配信)している。この送信されてくるコンテンツファイルを、チューナおよび表示部を備える端末機器である受信装置を用いて受信し、表示部で表示、また音声出力部で音を再生できるデータに変換し、ユーザが視聴できるようにしている。
【0004】
以上のように放送システムは、放送局側からコンテンツ配信装置を介してたとえば映像コンテンツを決められた搬送周波数に載せて無線送信している。そして、受信側では、目的の搬送周波数の映像コンテンツをチューナを介して選択受信し、これを再生表示できるデータに復調し、映像コンテンツを再生表示し、視聴可能にしている。
【0005】
配信される各種マルチメディアコンテンツを受信し、視聴できる受信装置としては、携帯電話端末機に代表される携帯端末機器が広く利用されるようになっている。この携帯端末機器は、電話だけでなく、各種情報をネットワークを介して入手、また他の携帯端末機器へと送信することが可能である。
【0006】
上記マルチメディアコンテンツの送信システムとしては、ISDB−T(Integrated Service Digital Broadcasting‐Terrestrial)方式による携帯機器向けの地上デジタル放送(ワンセグ放送)が開始されている。また、携帯機器向けの放送技術には、その他、携帯電話端末への映像コンテンツのストリーミング配信、又はダウンロード配信を行うためのMediaFLO(forward link only)方式などがある。
【0007】
上述したワンセグ方式やMediaFLO方式により、映画や各種情報にかかるコンテンツを無線送信することで、これを受信、再生機能が付加された受信装置である携帯端末機器で、視聴可能となるため、目的のコンテンツを視聴できる場所の制約が解消されるようになった。つまり、所定の位置に設置された受信装置(テレビジョン等)で、ユーザが所望するコンテンツを選択し、視聴できるだけでなく、任意の場所に持ち運び、任意の位置での視聴が可能になった。そのため、任意の場所で、任意の時間帯で自由に視聴できる。
【0008】
そこで、特許文献1(特開2008−306520号公報)には、上述した方式を利用し、各種コンテンツを受信し、再生する携帯電話端末機器(以下携帯電話機と称す)において、さらなる顧客満足度を向上させる発明が提案されている。つまり、携帯電話機が有するデータ通信機能と連携されることで、携帯電話機で目的のコンテンツの新たな視聴形態を創造し、携帯電話機を所持するユーザの満足度を向上させるものである。
【0009】
一方、2011年にはアナログ放送が終了する。その周波数帯を利用した新たな活用方法が想定され、実施されようとしている。例えば、携帯端末向けのマルチメディア放送サービスの開始が予定されている。同マルチメディア放送サービスとしては、サービスを提供する事業者によって上述のMediaFLO方式、またISDB−Tmm(Integrated Service Digital Broadcasting Terrestrial Mobile Multi−Media Broadcasting)方式などの放送システムが検討されている。
【0010】
携帯端末向けマルチメディア放送サービスの中で、新しい放送サービスとして、放送する音声を含む動画等の映像データを受信装置(携帯電話機等)で蓄積せずに受信して再生するリアルタイム放送サービスに加え、音声を含む映像データを受信端末で一度蓄積してから再生するダウンロード放送サービスの実施が想定される。このダウンロード放送サービスとしては、ISDB−Tmmにおけるファイルキャスティングサービス、MediaFLOにおけるクリップキャストがそれに該当する。これらの方式においては、総務省が設置する情報通信審議会情報通信技術分科会の2008年11月の報告内容に記載(非特許文献1,2)されている通りでる。
【0011】
上述のダウンロード放送サービスは、リアルタイム放送サービスに比べ、即時性に欠ける代わりに、画質等コンテンツ自体の品質を柔軟に変えられるといったメリットがある。また、先行する携帯端末向けのマルチメディア放送サービスとして先に説明したようにワンセグ放送が挙げられるが、ワンセグ放送は伝送レートを400bps程度に抑えているため、映像中の字幕が読みにくいなど、固定端末向けの従前の地上波によるTV放送に比べて不十分な画質となっている。
【0012】
これに対し、蓄積方式のダウンロード放送サービスによれば、伝送レートが低くても即時性は不要なため、伝送に時間をかけることで、データ量を増やし、品質のよいコンテンツを提供、つまり配信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−306520号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「携帯端末向けマルチメディア放送システムISDB−Tmmの概要」(URL:www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/housou_system/pdf/081128_1_si16-3-1.pdf)
【非特許文献2】「MediaFLOの概要説明資料」(URL:www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/housou_system/pdf/081128_1_si16-3-2.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した携帯端末向けマルチメディア放送サービスは、補助的にIPを利用した配信も想定されるが、サービスの中心として使用するのはワンセグ放送と同じく無線放送波による配信(送信)である。そのため、配信されるコンテンツを良好に受信できる環境に、携帯端末機器を設置される必要がある。例えば、移動中に配信されるコンテンツをダウンロード受信する場合、途中で受信が行われない環境になれば、映像コンテンツの一部が正常に受信できず、その部分が欠けた状態で再生されることにもなる。
【0016】
そのため、目的のコンテンツを受信し、順次蓄積している途中で、受信不能な位置への移動が制限されることになる。すなわち、受信中に全ての一連のコンテンツファイルのデータの受信を完了するまでは、移動が制限される。
【0017】
また、ダウンロード放送サービスにより、目的のコンテンツをダウンロードし、視聴しようとする場合、予め決められた時間を予約しておけば、問題なく目的のコンテンツを受信順に蓄積できる。しかし、その予約を忘れ、また放送時間開始が過ぎてから、目的のコンテンツのダウンロードの開始を行っても、初期の映像コンテンツのデータを得ることができず、最初から最後までの一連のコンテンツファイルを視聴することができない。例えば、PM10時から放送が開始され、開始後からダウンロードサービスを受けても、当然のこととしてすべてのコンテンツを視聴できなくなる。これは、ダウンロード放送サービスに限ることではなく、リアルタイム方式サービスによる受信についても同様である。
【0018】
本発明は、上述した問題点を解消することを目的とするものである。
【0019】
そのため、本発明の目的は、ダウンロードサービスを受ける時間を短縮できるコンテンツ配信装置、また受信装置、ならびに放送システムを提供する。
【0020】
この目的を達成することで、受信環境を維持できる短時間でのダウンロードサービスを受けることが可能になる。例えば、コンテンツファイルのデータを配信(送信)する時間(ダウンロードする時間)が1時間の場合、最短で30分でダウンロードを完了でき、移動の制限等を抑制できる。
【0021】
また、本発明は、放送開始の時間を経過した後でも、全ての一連のコンテンツファイルのダウンロードサービスを受けることを可能にした配信装置、受信装置、ならびに放送システムを提供することにある。
【0022】
さらに、本発明は、リアルタイム方式のサービスでは受けることができない、コンテンツの提供を可能にしている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、マルチメディアコンテンツを配信するためのコンテンツ配信装置であって、一連のコンテンツファイルの全長を複数に分割し、これらを順方向および逆方向にパケットとしてマッピングし、これらを順方向および逆方向にマッピングした各パケットを配信するようにしている。
【0024】
そのため、コンテンツ配信装置は、例えば一連のコンテンツファイルを複数に分割し、分割した各分割データを識別するための識別番号を順方向に順番(初期番号から昇順)に付与(ナンバーリング)する。この場合、順方向に識別番号を付与する場合、一連のコンテンツファイルの先頭の分割データには、例えば初期番号の識別番号「1」が付与され、順次コンテンツファイルの終端の分割データには、最終番号である識別番号「N」が付与される。このようにマッピングされた先頭の分割データ(識別番号は「1」)から順に順方向に配信が開始され、配信終了時点では終端の分割データ(識別番号は「N」)の配信が行われる。
【0025】
この順方向の配信と同時に、逆方向による配信が行われる。これは、分割されたコンテンツファイルの終端の分割データ(最終番号の識別番号「N」)から逆順に配信が開始され、最後に先頭の分割データ(識別番号は「1」)の配信が行われる。
【0026】
このようなコンテンツ配信装置によれば、順方向による配信と、逆方向による配信のためにも、少なくとも2チャンネル構成で複数に分割されたコンテンツファイルのデータが順次配信される。
【0027】
また、放送システムとしては、上述した構成のコンテンツ配信装置を備え、該配信装置から配信されたコンテンツを受信し、ダウンロードする。そのためにも、順方向に配信されるコンテンツファイルのデータを受信すると同時に、逆順に配信されるコンテンツファイルのデータを受信する手段を備えた受信装置を有する。
【0028】
そこで、受信装置は、配信されるコンテンツファイルのデータを受信する手段を備え、受信したコンテンツファイルを表示媒体等を介して視聴できるように復調する処理部、また該処理部で復調した分割データを、並び替え処理部を介して並び替え、これを順次記憶部に記憶させる。この場合、並び替え処理部は、上記配信装置側でマッピングされた分割データの識別番号「1」〜「N」を参照し、記憶部(蓄積部)に例えば番号順に記憶させる。そして、マッピングされた分割データの「1」〜「N」の識別番号の分割データを記憶することで受信を完了、つまりダウンロードが完了することになる。
【0029】
上記受信装置は、受信手段で順方向に配信されてくる先頭の分割データの識別番号「1」から順に「2」、「3」、・・の分割データを受信し、この分割データを復調し一時的に記憶していく。また受信手段は、逆方向に配信されてくる最終の識別番号「N」から順に「N−1」、「N−2」、・・の分割データを受信する。受信装置は、分割データを復調し、これを一時的に記憶させる。そして、並び替え処理部は、一時的に記憶された分割データに対応する識別番号を参照し、その番号順にデータを並び替え、記憶部に順次記憶させ、受信装置は分割データの識別番号「1」〜「N」が全て揃った状態で、一連のコンテンツデータを受信したと判断し、ダウンロードの処理を終了する。
【0030】
以上のように、受信装置においては、ダウンロード配信の途中で一連の全てのコンテンツファイルを取得することができ、配信の開始(放送開始)から受信している場合には、全ての一連のコンテンツファイルのデータを配信する時間に対し、少なくとも半分(1/2)の時間で一連のコンテンツファイルを受信でき、そのダウンロードを完了することができる。
【0031】
また、ダウンロードサービスの配信開始から受信できなくても、途中からダウンロードサービスを受ける場合、全ての一連のコンテンツファイルのデータをダウンロードすることが可能となる。例えば、ダウンロードの放送時間帯(例えば1時間)の、少なくとも30分(半分)が経過していない場合、配信開始時間を過ぎていても、視聴したいコンテンツファイルのデータの全てを視聴することができる。これは、リアルタイム放送サービスでは受けることができない本発明によるダウンロード放送サービスにより初めて提供できるものである。
【発明の効果】
【0032】
以上説明した本発明によるコンテンツ配信装置によれば、コンテンツファイルを順方向(コンテンツファイルの先頭から順)および逆方向(コンテンツファイルの終端から逆順)に配信している。
【0033】
そのため、受信装置側では、順方向および逆方向に配信されるデータを順次つなぎ合わせることで、全てのコンテンツファイルを短時間で受信でき、それを自由に視聴することができる。
【0034】
また、コンテンツ配信開始時間後であっても、全ての一連のコンテンツファイルのダウンロードサービスを受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明におけるコンテンツ配信装置、受信装置としての携帯端末機器によるコンテンツデータの配信サービスにかかるシステム構成を説明するための図。
【図2】本発明にかかるコンテンツデータを受信し、再生するための受信装置の一例を示すブロック図。
【図3】本発明の受信装置におけるコンテンツデータの受信開始にかかる制御手順の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明の受信装置におけるコンテンツデータの受信処理のための制御手順の一例を示すフローチャート。
【図5】本発明の放送システム全体の構成を示すブロック図。
【図6】本発明によるコンテンツデータを分割し配信するためのマッピング処理手順の一例を示す図。
【図7】FDTインスタンスパケットの構造を示す図。
【図8】図7におけるLCTヘッダの構造を示す図。
【図9】コンテンツファイルを分割したデータパケットに識別番号を付与した際の配信処理にかかる一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明による実施の形態を説明する。
【0037】
本発明のダウンロード配信サービスにおける放送システムについて、理解を早めるために図1および図2を参照に全体の構成を説明する。図1において、放送局側は、本発明によるダウンロード配信サービスを提供するためのコンテンツ配信装置1を備えている。この放送局側より、放送電波を通じて無線配信を行う。そこで、放送局側は、一連のコンテンツファイルを固定長毎に分割し、パケット配信するために、予め決められた条件で分割する。例えば、一連のコンテンツファイルを分割し、その分割した分割データを1つのパケットとして、コンテンツファイルの先頭から順番に認識番号(ID)を付与(ナンバリング)する。
【0038】
図1の例では、一連のコンテンツファイルを分割することでn分割された場合、コンテンツファイルの先頭の分割データの識別番号を「1」とし、コンテンツファイルの終端の分割データを「n」として示している。このように分割された各パケットを順番に放送局(コンテンツ配信装置)1から無線配信する際に、配信に割り当てられたチャンネル1からは、コンテンツファイルの先頭のパケットの識別番号「1」から順に「2」、「3」の順方向に、配信終了となる最終のパケット「n」を配信する。一方、チャンネル2からは、コンテンツファイルの終端のID番号が付与されたパケットを逆順に配信する。
【0039】
以上のように、従来では、単純にコンテンツファイルを配信する場合、割り当てられた1つのチャンネルを通じて、分割されたパケットを決められた順番(順方向)に配信していた。
【0040】
これに対し、本発明においては、分割されたパケットの先頭から順方向に配信すると共に、他のチャンネルを通じて、それとは逆順に終端のパケットから逆方向に配信するサービスを提供している。
【0041】
本発明によるコンテンツの配信により、受信装置、図1の例では携帯受信端末として携帯電話機A、又はBで受信し、受信したパケットに含まれるコンテンツファイルの各分割データを復調し、繋ぎ合わせ、一連のコンテンツファイルのデータを受信した後、表示装置および音声出力部を介してコンテンツを再生し、視聴する。
【0042】
この点、例えば携帯電話機Bが、1つのチャンネルにのみ対応できる装置でも再生、視聴が可能となる。この携帯電話機Bは、1つのチャンネルを通じて、例えばチャンネル1を通じて配信されてくる分割された各パケットを受信し、これをパケット順に復調し、一旦記憶部に記憶させる。その後、ユーザの指示により再生制御部を介して表示部および音声出力部を通じて携帯電話機Bの持ち主のユーザが必要時に視聴できる。なお、携帯電話機Bでは、チャンネル2を受信した場合、配信されるパケットの最終から受信するため、受信されるパケットの識別番号に応じて並び替え処理を行い、最終的に先頭パケットを受信した時点で、記憶部に並び替えられた一連の全てのコンテンツファイルを記憶することになる。
【0043】
これに対し、本発明によるコンテンツ配信サービスを行う放送システムにおける受信装置では、図1における携帯電話機Aで受信する。この携帯電話機Aは、複数のチャンネルを同時に受信できる例えばダブルチューナを内臓したものである。そのため、携帯電話機Aは、チャンネル1において配信される一連のコンテンツファイルの分割された先頭パケット「1」から順に終端のパケット「n」を、またチャンネル2においてパケットの終端から順次受信する。
【0044】
そこで、携帯電話機Aは、チャンネル1を通じて、分割されたパケットの半分、例えば「n/2」を受信し、チャンネル2を通じて、パケット「n/2+1」を受信すれば、一連のコンテンツファイルの全てのデータを受信したことになる。そのため、従来では、放送時間tをかけて全てのコンテンツファイルを受信する場合に比べ、本発明によるコンテンツ配信サービスによる放送システムにおいては、コンテンツファイルのデータ全てを配信する放送時間tに対し、1/2の時間(t/2)で受信を完了(ダウンロード完了)することができる。
【0045】
従って、携帯電話機Aでダウンロードサービスを受ける場合、受信できる環境にいる時間が大幅に節約でき、節約できた時間を例えば受信環境の悪い場所への移動、また他の作業等を自由に活用することができる。
【0046】
上記携帯電話機Aは、その構成として複数チャンネルを受信できる機能を備えたものである。その構成を図2を参照して説明する。
【0047】
受信装置である携帯電話機Aは、受信手段として無線放送を受信するために、少なくとも2つのチューナ12、13を備えている。受信手段としては、電話網、またインターネットとの接続を可能とするアンテナ部分を備えている。その電話およびインターネットの接続部分については、省略している。
【0048】
チューナ12、13を通じて受信されたデータは、復調され一時的に記憶するバッファ14に記憶される。このバッファ14には、受信した各パケットの識別番号を含めて記憶される。バッファ14に一時記憶されたデータは、各パケットの識別番号順に、並び替え蓄積処理部15で並び替えられ、記憶部である蓄積部16に順次パケット番号の順番に蓄積されていく。そこで、一連の全ての分割されたデータが受信され蓄積部16に記憶され、受信した一連のコンテンツファイルが全て記憶されると、ユーザの指示に従って、再生制御部17を通じて記憶されたコンテンツデータが、表示部18および音声出力部19を介してユーザに視聴できるように再生される。
【0049】
図2においては、各部を制御する制御装置については、図示していないが、図示していない制御装置を介して上述したようにデータ処理が行われる。そこで、制御装置による制御手順を図3および図4の制御フローチャートを参照して詳細に説明する。
【0050】
まず、図3において、ユーザは配信される複数のコンテンツの中から目的のコンテンツを選択する。そのため、受信チャンネルをセットする。セットされたチャンネルに応じて、制御装置は、配信される目的のコンテンツファイルを受信するためにチューナ12、13を通じて受信させる。このとき、配信されるコンテンツファイルが本発明による配信サービスによるものの場合、2つのチューナを介してそれぞれ配信されるデータを受信する。
【0051】
受信したコンテンツファイルのデータの各パケットには、一連のコンテンツのサイズデータが含まれており、このサイズデータを制御装置が確認する。例えば、一連のコンテンツファイルを分割した総数(n)がパケット中に含まれる。そのパケットの総数が分かることで、コンテンツファイルの総データサイズを認識できる。例えば、一連のコンテンツファイルを決められた固定長毎に分割しているため、分割総数(n)と、決められた固定長のデータ量とで、総データ長が算出できる。
【0052】
そこで、配信され受信するコンテンツファイルのデータ長を取得する(ステップS1)。取得したデータ長を全て記憶、つまり蓄積部16に記憶できるか否かを判断(S2)する。ここでは、蓄積部16には、記憶できる容量(残容量)が制御装置を介して認識されており、上記の受信するコンテンツデータの総データ長(データ量)を記憶できるかを比較する。
【0053】
比較の結果、もし蓄積部16で記憶できる容量が、受信するコンテンツファイルのデータ量よりも少ない場合には、ダウンロード不可となり、受信できないことを表示部18又は音声出力部19を通じて報知(S3)する。
【0054】
上記比較の結果、蓄積部16の空き容量が、コンテンツファイルの総データ量よりも大きい場合には、ダウンロード可能として、蓄積部16に一連の全てのコンテンツファイルを記憶する領域を確保する。つまり、蓄積部16に受信コンテンツの総データを記憶する領域が割り当てられる(S4)。
【0055】
以上、蓄積部16に受信するコンテンツファイルの総データを記憶する領域が割り当てられることで、図4に示す制御手順が順次実行されていく。まず、バッファ14に記憶されているパケットの識別番号を取得(S5)する。これは、先に説明したようにチャンネル1,2にて受信した先頭からのパケットの識別番号と、終端におけるパケットの識別番号をそれぞれ、パケットを受信する毎に確認していく(S5)。
【0056】
確認、つまり取得したパケットの識別番号が、既に受信したパケットの識別番号のものと一致するか否かを判断(S6)する。既に受信したパケット番号のものと一致するものでない場合には、その受信したパケットの識別番号に対応する蓄積部16に記憶させる。蓄積部16は、先に説明したようにコンテンツファイルの全てを蓄積できる空き容量が存在すれば、その空き領域の中で、コンテンツファイルの各分割データを記憶できる領域が割り当てられており、各パケットの識別番号に対応する記憶(蓄積)部分がアドレスとして定められている。従って、一致するパケットの識別番号でなければ、その番号に対応した記憶部分に、パケットに含まれていた分割データが順次記憶(S7)されていく。
【0057】
そして、制御装置は、次に蓄積部16に全てのパケット番号に対応したコンテンツファイルのデータが蓄積されたかを判断(S8)する。そのために、パケットの識別番号の「1」〜「n」を全て受信したかを判断し、全て受信していなければ、ステップS5に戻り、バッファ14に一時記憶されている次のパケットの識別番号のデータを取得する。
【0058】
ここで、ステップS6において、取得したパケットの識別番号と既に蓄積部16に蓄積されたデータの識別番号とが一致した場合、取得したパケットの識別番号のデータ記憶を行わずに、ステップS8に移り、全てのコンテンツファイルのデータを受信したか否かを判断し、受信してない場合には、ステップS5に戻り、次のパケットの識別番号のデータを取得する。
【0059】
以上の制御を配信されてくる信号(パケット)を受信する毎に、処理することで、制御装置は、全てのパケットの受信を完了したことをステップS8で判断すれば、受信を終了し、ダウンロードの処理を完了する。
【0060】
このとき、配信されるコンテンツファイルを最初(放送開始/配信開始)から受信していれば、図1において放送時間(t)に対し、t/2時間に全てのパケットの受信を完了することになる。つまり、順方向からのパケット番号と、逆方向からのパケット番号とが一致した時点で、全てのコンテンツファイルを受信し、記憶されたことになる。
【0061】
一方、放送開始から目的のコンテンツファイルを取得するのを忘れて、途中から受信を開始しても、コンテンツファイルの先頭からのパケットの配信を受けることができないが、チャンネル2側ではコンテンツファイルの終端の分割データに対応するパケットの識別番号から順次配信を行っているため、それをチャンネル2側で受信できる。そのため、従来では受信できなかったデータを受信し、補完することが可能となる。従って、従来では全てのコンテンツファイルを受信できない場合でも、放送の途中からでも全てのコンテンツファイルを受信し、視聴することができる。ただし、放送途中の場合には、放送開始から放送時間(t)のt/2時間以内から受信開始を行えば、配信される全ての一連のコンテンツファイルを受信し、視聴することができる。
【0062】
なお、上述の説明において、図2に示したチューナ12及び13は、それぞれ配信されてくるデータを受信に再生できるデータに復調する手段を含み、それぞれのデータを処理してなる処理部であって、チューナ12は順方向に配信されてくるデータを受信し処理する第1処理部に対応し、チューナ13は逆方向に配信されてくるデータを受信し処理する第2処理部に対応する。
【0063】
以上は、本発明による新しいダウンロードにおけるコンテンツ配信サービスによる放送システムについて説明した。
【0064】
次に、本発明におけるダウンロードサービスを提供する放送システムによるコンテンツ配信サービスの配信処理の具体例について説明する。以下に説明するものは、配信するための一例であり、先に説明した携帯端末向け放送システムのISDB−Tmm方式によるものである。このような方式によるものでなく、既に配信サービスを提供している各種方式を採用することができると共に、その他将来において創出される配信のための方式を利用することで、本発明を実施できることは勿論である。
【0065】
また、本発明に係るダウンロード配信を行うための放送システムは、任意のマルチメディアコンテンツを、下り一方向のみの無線放送電波を用いて、不特定多数の受信端末に短時間で一斉配信することを可能とするものである。
【0066】
図5は、本発明に係るダウンロード配信サービスを提供する放送システムの概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本発明によるダウンロード配信を行うための放送システムは、図1で説明した放送送信側(放送局)であるコンテンツ配信装置(放送送信装置)1、該配信装置から配信(送信)されるコンテンツファイルのデータを受信し視聴するための受信装置である例えば携帯端末装置10、そして2者の間で放送データを伝送する無線伝送路100から構成される。これは、一般的な構成である。本発明においては、先に説明したようにコンテンツ配信装置1における配信形態に特徴があり、また受信する側の受信形態に特徴を有する。
【0067】
(コンテンツ配信装置の構成)
コンテンツ配信装置1は、配信するための一連のコンテンツファイルのデータを記憶したコンテンツファイル蓄積部2、蓄積されたコンテンツファイルのデータを読出し、そのデータを分割し配信するためのデータにマッピング処理する分割処理部3、分割されたデータを本発明による順方向に配信するための順方向配信処理部4、分割データを逆方向から配信するための逆方向配信処理部5、該両配信処理部4、5から出力されたデータを多重化するための多重化部6、そして多重化された信号を符号化するための伝送路符号化部7、および放送波に載せてデータを無線送信するための無線放送波送信部(配信部)8を備えた構成となっている。これらの各構成の要素について以下に説明する。
【0068】
コンテンツファイル蓄積部2は、本発明によるダウンロード配信するための一連のコンテンツファイルのデータを記憶している。このコンテンツファイル蓄積部2に記憶された一連のコンテンツファイルのデータは、任意のファイル長を有している。このデータを配信するために図6に示すように、任意のファイルが分割され、パケット化するために分割処理部3によりマッピング処理が行われる。本発明は、この分割処理部3によるマッピグ処理そのものに特徴はなく、従来同様に図6に示すマッピング処理が行われる。
【0069】
分割処理部3でマッピング処理されたデータは、順方向配信処理部4および逆方向配信処理部5に送られ、マッピングされたデータの配信処理が行われる。特に、順方向配信処理部4では、コンテンツファイル蓄積部2に蓄積されている放送(配信)コンテンツのデータが、上述したように分割処理部3で分割処理され、先頭の分割データ(識別番号「1」)から順に処理され、多重化部6へと送る。
【0070】
これとは逆に、逆方向配信処理部5は、コンテンツファイル蓄積部2に蓄積されている放送コンテンツファイルのデータが、分割処理部3で分割処理されたファイルデータの終端の分割データ(識別番号「N」)から順に処理され、次の多重化処理部6へと送る。
【0071】
上記分割処理部3を含め順方向配信処理部4が、順方向処理部に対応し、分割処理部3を含め逆方向配信処理部5が、逆方向処理部に対応する。
【0072】
ここで、図6に示すデータファイル(一連のコンテンツデータ)が固定長(決まったデータ量:lバイト)毎に分割され、これを各パケットにマッピングする際、FLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport)プロトコルで使用するFDT(File Delivery Table)インスタンスパケットへのIDの付与が行われる。これが、先に説明した各分割データ(パケット)の識別番号(「1」〜「N」)の付与となる。
【0073】
この図6に示すように、ファイルデータを固定長(例えばlバイト)毎に分割し、分割したデータのブロック毎(図6の例では4個の分割データを1ブロックとしている)に、伝送時のエラー等を訂正するためにFEC(Forward Error Correction)パケットが追加挿入される。この図6の例では、1ブロック(1周期)毎に2個のFECパケットが追加挿入される。
【0074】
図7に上記FDTインスタンスパケット30の構造を示す。FDTインスタンスパケット30は、UDPヘッダ31、デフォルトLCTヘッダ32、LCTヘッダ拡張33、FECペイロードID34、およびコンテンツファイルを一連のデータを固定長lで分割したファイルデータ35から構成される。上記LCTヘッダ拡張33は、さらに図8に示すようなデータ構造となっている。
【0075】
図8に示すようにLCTヘッダ拡張33のFDTインスタンスIDは、FDTインスタンスパケットに付与されるID(識別子)である。このIDが、本発明による分割されたデータの識別番号に相当し、先に説明したように先頭の分割データから順次付与され、先頭パケットより昇順で初期番号の識別番号「1」〜終端のパケットに最終番号の識別番号「N」が付与される。
【0076】
FDTインスタンスIDは、図6で示したように各パケットにマッピングする際に付与され、その後、順方向配信処理部4では、マッピングされた識別番号「1」が付与された先頭の分割ファイルデータから順に、昇順で多重化部6へ送る。これとは逆に、逆方向配信処理部5では、マッピングされたデータ(パケット)に付与された終端の最終番号の識別番号「N」のものから順に、降順で多重化部6へ送る。この場合、図6に示すようにコンテンツファイル終端のデータに続き、先に説明したようにFECパケットが追加され、このFECパケットにも同様に識別番号「N」となるIDが付与され、これから多重化部6に送られる。
【0077】
上記FDTインスタンスIDの最終の識別番号「N」は、伝送するファイルデータの総サイズ(Lバイト)と、固定長に分割したデータファイルのサイズ(lバイト)、また上述した追加挿入されるFECパケットの数によって決まる。ここで、FECパケットは伝送時のエラーを訂正するために挿入されるパケットで、分割データファイルにかかる送信するFDTインスタンスパケットに対して一定の間隔で挿入される。K個(図6の例ではK=4)のデータパケットにかかるFDTインスタンスパケットの1組の間に入るFECパケットの数をk個(図6の例ではk=2)とすると、FDTインスタンスIDの最終の識別番号「N」は式(1)で求められる。
【0078】
N=L/l×(1+k/K)−1 ・・・(1)
なお、上記式(1)においては、先頭の分割データ(データパケット)の初期番号の識別番号を「0」とした場合であって、初期番号を「1」とする場合には、上記式の−1が不要となる。
【0079】
なお、図6に示す例では、1組のパケット(FDTインスタンスパケット)数は上述したとおりK=4、FECパケット数はk=2であり、データ分割数(L/l)が200の場合、最終の識別番号「N」は、先頭の初期番号を識別番号を「0」とした場合には、「299」となる。
【0080】
以上のようにして順方向配信処理部4および逆方向配信処理部5により作成した2系統のMPEG−2TSP(Transport Stream Packet)は、それぞれが独立したチャンネルのデータとして多重化部6により他のチャンネルのデータやPMT(Program Map Table)、NIT(Network Information Table)等の制御情報と共に多重化される。このとき、例えば先頭のパケットの初期識別番号「1」のものと、最終のパケットの最終識別番号「N」のものとが同時に多重化され、これ以後のパケット番号の順に多重化される。そして、伝送路符号化部7によりOFDM変調した後に、放送波送信部8により無線伝送路100に送出(配信)される。
【0081】
以上説明したように、一連のコンテンツファイルが分割され、それぞれにコンテンツファイルの各分割データを繋ぎ合わせるためのパケット(分割データ)の識別番号が付与され、同時に配信等に必要な各種制御情報等が付加されマッピング処理が行われ、放送波送信部8を介して送出(配信)される。
【0082】
(受信装置の構成)
続いて、上述したコンテンツ配信装置1を介して配信されるコンテンツファイルのデータを受信し、視聴するための受信装置について、以下に例えば携帯端末装置で受信して視聴できるデータに復元する構成について説明する。
【0083】
この放送受信装置である例えば携帯端末装置10は、先に説明した図2に示すような装置であり、同一部分は同一符号で示しており、詳細は省く。
【0084】
例えば、携帯端末装置10は、受信手段であるチューナ等を含む放送波受信部11、受信信号を復元するために順方向にかかる配信データ信号、逆方向にかかる配信データ信号として処理するために信号を2つに分岐する分岐部20、分岐された受信信号を上述したように順方向の配信データと、逆方向の配信データに復元するための伝送路復号化回路(復号化部)21A,21B、データ復調回路(データ復調部)22B,22Bと、図2にて説明した復調されたデータをそれぞれに一時記憶するバッファ14A,14B、分割データに付加されているID、つまりパケットの識別番号順に並び替え処理するための並び替え処理部15、並び替え処理された分割データを記憶する蓄積部(記憶部)16、記憶された一連のコンテンツファイルのデータを読出し再生し視聴するための再生制御部17、再生されたコンテンツの映像を表示する表示部18、そして音声を出力する音声出力部19を備えた構成となっている。
【0085】
ここで、本発明の受信装置側での大きな特徴は、放送局(送信局)側の配信装置1から配信されてくる順方向の分割データと、逆方向より配信される分割データの両方を同時に、それぞれの受信信号を復調処理するための伝送路復号化回路21A,21B、データ復調回路22A,22B、バッファ14A,14Bの2系統備えていることである。以下にこれらの各要素について説明する。この受信部11を含み、伝送路複合化回路21A、データ復調回路22Aが順方向のデータ処理を行う第1処理部に、伝送路複合化回路21B、データ復調回路22Bが逆方向のデータ処理を行う第2処理部に対応している。
【0086】
上記放送波受信部11は、無線伝送路100を介して伝送される放送波を受信し、電気信号に変換する。ここで、本発明によれば、受信部11は、配信(送信)されてくる信号の中に、先に説明したように順方向(昇順)に配信されてくる信号と、逆方向(降順)に配信されてくる信号を同時に受信する。この受信信号は、次の分岐部20にて分岐されそれぞれ伝送路復号化部21A,21Bに送られる。この伝送路復号化部21A,21Bは、送られてきた信号をOFDM復調し、任意のチャンネルの放送データを抽出する。
【0087】
上記伝送路複合化部(順方向の第1処理部)21Aは、分岐部20を介して送られてきた信号をOFDM復調し、任意のチャンネルのデータとして順方向に配信されてくるデータを抽出する。また、伝送路複合化部(逆方向の第2処理部)21Bは、任意のチャンネルのデータとして逆方向に配信されてくるデータを抽出する。
【0088】
そして、データ復調回路22A,22Bは、抽出されたチャンネルの放送データを復号し、復号した固定長に分割されたコンテンツのデータに、FDTインスタンスID、つまり識別番号をつけて受信順にバッファ14A,14Bに一時的に記憶させる。このデータ復調回路(順方向の第1処理部)22Aが、順方向にかかるデータを復調するもので、データ復調回路(逆方向の第2処理部)22Bが逆方向にかかるデータに復調する。
【0089】
復調されたデータは、次の並び替え処理部14にて正規の一連のコンテンツファイルのデータに復元される。そのため、並び替え処理部14は、2つのバッファ14A,14Bから、固定長に分割されたコンテンツのデータとFDTインスタンスID(識別番号)をセットで読出し、FDTインスタンスIDの番号順に並び替え、コンテンツ蓄積部16に記録する。
【0090】
コンテンツ蓄積部16への記録については、FDTインスタントID(識別番号)の番号順に記憶させる場合、コンテンツファイルのデータとは直接関係ないもの、つまり伝送時の訂正用のFECパケットも存在する。そのため、そのFECパケットに付与されたIDを欠番として処理する必要がある。
【0091】
そのため、以下に示す式(2)に基づいて、FECパケットの識別番号(FDTインスタンスID)を算出し、欠番として処理する。
【0092】
nFEC=(K+k)×m+(K+x) ・・・(2)
上記式(2)において、“nFEC”はFECパケットに付与されている識別番号(FDTインスタンスID)、“m”は「0」を含む自然数、“x”は1組内のデータパケット数Kに対して追加されるFECパケットの数であり1〜kの整数である。また、“K”はコンテンツ配信装置1におけるマッピング処理時の1組内における分割されたデータパケット数、“k”は1組内のデータパケットに挿入されるFECパケットの挿入個数である。
【0093】
従って、先に説明した図6に示すマッピング処理によりFECパケットの追加挿入を行う場合、K=4、k=2。そこで最初のnFECは、m=0のとき、k=1,2であり、よってそのIDは「5」「6」となる。これがFECパケットを示すものとなる。これは、最初のパケットの初期のID番号を「1」とした場合である。順次、m=1,2,3・・の順で計算すれば、FECパケットに付与されるIDを知ることができ、その識別番号を認識することで、FECパケットを認識できる。同時に、それを欠番として処理し、蓄積部16への記録を避けることができる。なお、初期の識別番号が「0」の場合には、上記式(2)において、−1を加えればよい。
【0094】
また、上記式(2)でFECパケットのID(nFEC:識別番号)を算出して確認する以外に、以下のような方法でも認識できる。つまり、送信されてくる各パケット(FLUTEインスタンスパケット)の中に、図6に示したように一連のコンテンツファイルのデータそのものとは別に、それらのデータ間に追加挿入されるFECパケットは、受信したデータを復調することで、コンテンツデータでないことが判明する。その時点で、そのパケットのIDを欠番として同様の処理を行える。
【0095】
以上のようにコンテンツ蓄積部16には、受信される各種パケットのID(識別番号)に基づいて、順次分割されたコンテンツの分割データが並び替えられ、記録されていく。そして、先頭から順方向に受信されるデータと、終端から逆方向に受信されるデータが蓄積され、全ての識別番号にかかるデータを受信した時点で、一連の放送コンテンツファイルのデータが揃い、蓄積部16に記録される。この記録(記憶または蓄積)された一連の放送コンテンツファイルのデータは、ユーザの操作もしくはタイマー等により再生開始が要求される。この要求にしたがって、再生制御部17は、コンテンツ蓄積部16に蓄積されたコンテンツファイルのデータを読出し、音声や映像に再生し、表示部18や音声出力部19を介して出力する。これにより、ユーザが所望したコンテンツを視聴できる。
【0096】
上述のように目的のコンテンツを受信し、コンテンツ蓄積部16に一連のコンテンツファイルを全てダウンロードするまでの時間については、図1で説明したとおりであり、放送時間tに対して、t/2の時間でダウンロードサービスを受けることができる。また、放送開始から受信できなくても、方法途中からでも全てのコンテンツのダウンロードサービスを受けることができる。
【0097】
以上の説明において、制御装置については、図示していないが、配信装置1、受信装置(携帯端末装置等)10の各種回路等の各構成要素は、制御装置によって制御されている。
【0098】
(コンテンツファイルの配信処理について)
ここで、図6に示すデータ分割によるマッピング処理によれば、データパケットに加えてFECパケットが通過挿入される。そのため、データパケットに対し追加挿入されるFECパケットについても、識別番号(ID)が付与される。それを含めて識別番号を連番で付与するような場合、図9に示すように、コンテンツファイルの終端データの後にFECパケットが追加挿入され、このFECパケットに最終の識別番号が付与される。
【0099】
これを、逆方向から送信を行う場合、最終番号「N」のパケットがFECパケットであるため、このパケットから順に逆方向に配信することができない。そこで、逆方向からの配信については、1組内のデータパケット数(K=4)に追加挿入されるFECパケットを含む各パケットを1ブロック単位として、このブロック単位で逆順に配信処理を行うようにする。
【0100】
そのため、最適な方法として図5に示した逆方向配信処理部5は、終端を含むデータパケットのブロックD1において、データパケットXから順方向に最終識別番号「N」が付与されたFECパケットの順に多重化部6へ送る。そして、次のブロックD2において、データパケットT(識別番号「N−11」)から識別番号順に識別番号「N−6」が付与されたFECパケットの順に多重化部6へと送る。逆方向配信処理部5は、これを順次、逆方向、つまりコンテンツファイルの先頭へと向けてブロック単位毎に順次繰り返して処理を行う。
【0101】
以上のように、図9にしめした1ブロック単位に逆方向に順次配信処理し、1ブロック内では順方向での処理が行われる。これにより、データパケットの識別番号が、順方向で配信されるものと、逆方向で配信される番号とを一致させて配信処理を行える。
【0102】
上記逆方向配信処理部5は、1ブロックを単位として逆方向の配信処理を行うためにも、1ブロックの“N−(K+k)×p+1”で算出される識別番号から、“N−(K+k)×(p−1)”で算出される識別番号の順(昇順)で処理する。ここで、pは“1”を含む自然数であって、終端を含むブロックD1(最終ブロック)から順にD2、D3へと移るに従って、1から順に増加(「2」「3」・・)させればよい。
【0103】
(識別番号の付与について)
ここで、上述した実施形態の説明によれば、識別番号(ID)について、マッピングされた各データパケットにFECパケットを含めて連続番号(初期番号「1または0」〜最終番号「N」)を順に付与するようにしている。このような付与ではなく、コンテンツファイルのデータパケットに関わるものだけに、連続番号を付与するようにし、FECパケットについては、その他の番号、例えば最上位ビットを1として「1000・・・・0001」、「1000・・・・0010」、「1000・・・・0011」・・といったような番号を付与するようにしてもよい。この場合、データパケットに関わるものについては、「0000・・・・0001」、「0000・・・・0010」、「0000・・・・0011」・・といった番号で付与される。このような番号付与によれば、最上位ビットの“1”を認識することでコンテンツファイルのデータパケットか、FECパケットかを簡単に判別できる。従って、コンテンツファイルを分割する際に、連続番号が付与され、その番号を欠番とする処理が省け、受信装置側での並び替え処理部15の負担が大幅に軽減されることにもなる。
【0104】
以上のような識別番号の付与であれば、コンテンツファイルを分割し、各分割したデータパケットの識別番号を昇順、及び降順に付与する場合、一致させることができる。
【0105】
以上の説明は、あくまでもコンテンツファイルを分割しマッピング処理する場合、データパケットとは別にFECパケットが追加挿入されることで、識別番号が順方向と逆方向で異なるのを解消するためである。このFECがなく、データパケットだけの場合には、以上のような番号付与を行うことなく、単純に連番で昇順、及び降順で番号付与を行えばよい。
【0106】
なお、コンテンツファイルを固定長(lバイト)で分割する場合、終端が固定長であれば問題ない。しかし、固定長に満たないと、先頭から読出し、固定長毎に分割する場合と、終端から読出し、固定長毎に分割する場合とで、分割毎のデータの内容が順方向の配信と逆方向の配信が異なる。そのため、終端が固定長未満の場合には、パディング処理を行う。つまり、終端に固定長となるダミーのデータ(“0”のデータ)を付加する。
【0107】
また、FECパケットを挿入する際、実施形態の説明では、K=4であり、4の倍数でコンテンツファイルを分割できない場合においても、Kの倍数になるようにパディング処理が施される。
【0108】
以上の処理を含め、コンテンツファイルのデータ終端を固定長(l)で分割でき、Kの倍数(例えばK=4)で分割処理できる場合、コンテンツファイルを終端から読出し、図9に示すような1ブロック単位でデータ分割、FECパケットの追加、ID付与を行い、そのブロック内で順方向に処理するようにすればよい。
【0109】
また、ブロック単位でなく、単純に終端から読出し、FECパックの追加、ID付与を行う。このとき、ID付与については、先に説明したように、分割したデータパケットについては、連続番号で最終番号(N)から降順でID付与を行えば、先頭から初期番号から昇順で付与される番号とそれぞれの分割データと一致させることができる。この場合、追加されるFECパケットのIDは、最上位ビットを“1”とし、データパケットのIDの番号とは異なる番号を付与すればよい。
【0110】
(本発明の実施の形態における全体の構成について)
従来ではコンテンツファイルのデータを決められた順に従って配信処理していた。
【0111】
これに対し、本発明は、ダウンロード放送サービスにおいて、コンテンツファイルのデータを決められた順とは別に、逆順にコンテンツファイルのデータを配信処理する。これにより、受信装置側においては、順方向の配信データを処理すると同時に、逆方向に配信されるデータを処理する。そのために、順方向および逆方向に配信されるデータを処理する2系統の処理部を備えている。これにより、従来では予期し得ない、短時間でダウンロードサービスを受けることを可能にした。
【0112】
そのため、受信装置として持ち運びできる携帯端末機器の場合には、受信可能な場所(位置)に配信時間が過ぎるまで滞留することが強要されることなく、短時間でサービスを受け、残りの時間を自由に活用できる。また移動中にサービスを受けるようにしても、短時間で完了するため、その時間帯に受信可能な位置での移動が行え、その後は自由に移動できる。
【0113】
また、配信を開始した後からでも、全てのコンテンツファイルデータのサービスを受けることができる。そのため、配信(放送)サービスを受けるのを忘れた場合、途中からでも全てのコンテンファイルのデータサービスを受けることが可能となる。
【0114】
なお、本発明の実施形態における説明において、無線配信(送信)する場合を前提として説明したが、有線を利用した配信も可能である。
【0115】
また、携帯端末機器としては、携帯電話機だけなく、PDA(Personal Digital Assistant)、パソコン等にも利用可能であり、なにも携帯端末機器に限るものでなく、所定位置に載置されるTV等(コンテンツファイルを記録、再生するビデオデッキ等)でも利用できる。
【符号の説明】
【0116】
1 コンテンツ配信設備(放送装置)
2 コンテンツ蓄積部(放送装置側)
3 分割処理部
4 順方向処理部
5 逆方向処理部
6 多重化回路(配信部)
7 伝送送信部(配信部)
8 放送波送信部(配信部)
10 受信装置(携帯端末装置)
11 受信部(受信手段)
12 チューナ(第1処理部)
13 チューナ(第2処理部)
14 バッファ(一時記憶部)
15 並び替え処理部
16 コンテンツ蓄積部(受信装置側)
17 再生制御部
18 表示部
19 音声出力部
20 分離処理部
21A 順方向の復号化回路(第1処理部)
21B 逆方向の復号化回路(第2処理部)
22A 順方向の復調回路(第1処理部)
22B 逆方向の復調回路(第2処理部)
100 無線伝送路(配信経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツファイルを配信するためのコンテンツ配信装置であって、
コンテンツファイルの先頭から順方向に処理する順方向処理部、
コンテンツファイルの終端から逆方向に処理する逆方向処理部、
順方向および逆方向処理部からのそれぞれの処理データを同時に配信するための配信部、を有したコンテンツ配信装置。
【請求項2】
上記順方向処理部は、一連のコンテンツファイルを分割し、先頭分割データから終端分割データの順に、昇順で識別番号を付与し、
上記逆方向処理部は、一連のコンテンツファイルを分割し、終端分割データから先頭分割データの順に、降順で識別番号を付与し、
上記配信部は、順方向処理部および逆方向処理部で処理した昇順の分割データと降順の分割データを順次に配信することを特徴とする請求項1記載のコンテンツ配信装置。
【請求項3】
前記配信部は、データを無線配信することを特徴とする請求項1又は2に記載にコンテンツ配信装置。
【請求項4】
請求項1記載のコンテンツ配信装置から配信されるデータを入力し再生出力する受信装置であって、
配信されてくるデータを先頭から受信し復調する第1処理部、
配信されてくるデータを終端から受信し復調する第2処理部、
第1および第2処理部で復調した先頭からのデータと、終端からのデータを繋ぎ合わせ並び替える並び替え処理部、
前記並び替え処理部で並び替えたデータを順次記憶していく蓄積部、
前記蓄積部のコンテンツデータを読出し再生するための再生制御部、
を備える受信装置。
【請求項5】
請求項2記載のコンテンツ配信装置から配信されるデータを受信し再生出力する受信装置であって、
配信されてくる分割データの先頭から受信し復調する第1処理部
配信されてくる分割データを終端から受信し復調する第2処理部、
第1および第2処理部で復調した先頭からの分割データと、終端からの分割データを、各分割データに付与された識別番号に基づいて順次並び替える並び替え処理部、
前記並び替え手段で並び替えたデータを順次記憶していく蓄積部、
前記蓄積部のコンテンツデータを読出し再生するための再生制御部、
を備える受信装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の受信装置は、持ち運び自在で、配信されるデータを受信できる受信手段を備えた携帯端末装置。
【請求項7】
コンテンツファイルのデータを配信するためのコンテンツ配信装置と、
配信されるデータを入力し、再生するための受信装置と、からなる放送システムにおいて、
前記コンテンツ配信装置は、請求項1に記載の配信装置であって、
前記受信装置は、請求項4記載の構成を有した受信装置である放送システム。
【請求項8】
コンテンツファイルのデータを配信するためのコンテンツ配信装置と、
配信されるデータを入力し、再生するための受信装置と、からなる放送システムにおいて、
前記コンテンツ配信装置は、請求項2に記載の配信装置であって、
前記受信装置は、請求項5記載の構成を有した受信装置である放送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−135441(P2011−135441A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294376(P2009−294376)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】